(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】流体流量制御装置
(51)【国際特許分類】
G05D 7/06 20060101AFI20240708BHJP
F16K 31/02 20060101ALI20240708BHJP
F16K 7/16 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
F16K31/02 A
F16K7/16 Z
(21)【出願番号】P 2022504614
(86)(22)【出願日】2020-07-23
(86)【国際出願番号】 IL2020050822
(87)【国際公開番号】W WO2021014451
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-03-23
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500211542
【氏名又は名称】ハム-レット (イスラエル-カナダ) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルゴル、ボリス
(72)【発明者】
【氏名】マイゼルス、シャヤ
(72)【発明者】
【氏名】ミムラン、アリック
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-110050(JP,A)
【文献】国際公開第2019/059043(WO,A1)
【文献】特開2010-230159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/06
F16K 31/02
F16K 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口と、出口と、作動機構と、ダイヤフラムと、を備えるプロセス流体流量制御装置であって、
前記ダイヤフラムは、前記出口および/または前記入口と直接操作的連通を行い、
前記作動機
構は、圧電駆動部
品を備えて、
前記プロセス流体流量制御装
置が、前記圧電駆動部品を作動させて前記ダイヤフラムに加わる力を調
整し、前記プロセス流体流量制御装置を通過するプロセス流体の流量を第1定格範囲内に規制するこ
とができるように構成され、
前記作動機構は、頂部が前記圧電駆動部品に隣接しシリンダにぴったり封入されて前記ダイヤフラムと直接操作的連通を行う中空なピストンをさらに備えて、
前記プロセス流体流量制御装置が、前記圧電駆動部品を作動させて前記中空なピストンに加わる力を調
整し、前記中空なピストンが前記ダイヤフラムに力を加えることによって、前記プロセス流体流量制御装置を通過するプロセス流体の流量を減らすか流れを遮断するこ
とができるようにさらに構成され、
前記プロセス流体流量制御装置は、ノーマルクローズ(常時閉)であって、前記中空なピストンに力を加える空気圧手段をさらに備えて、
前記プロセス流体流量制御装置が、前記圧電駆動部品を作動させて前記空気圧手段を介し前記中空なピストンに圧縮空気が流れることによって、プロセス流体が前記プロセス流体流量制御装置を通過して流れるように構成され、
前記圧電駆動部品は、作動しないときは前記シリンダを遮断して、圧縮空気が前記中空なピストンを介して通過しないようにする
ことを特徴とするプロセス流体流量制御装置。
【請求項2】
入口と、出口と、作動機構と、ダイヤフラムと、を備えるプロセス流体流量制御装置であって、
前記ダイヤフラムは、前記出口および/または前記入口と直接操作的連通を行い、
前記作動機
構は、圧電駆動部
品を備えて、
前記プロセス流体流量制御装
置が、前記圧電駆動部品を作動させて前記ダイヤフラムに加わる力を調
整し、前記プロセス流体流量制御装置を通過するプロセス流体の流量を第1定格範囲内に規制するこ
とができるように構成され、
前記作動機構は、第1端が前記ダイヤフラムと接触し第2端が前記圧電駆動部品と接触している少なくとも一つのピストンをさらに備えて、
前記プロセス流体流量制御装置が、前記圧電駆動部品を作動させて前記少なくとも一つのピストンに加わる力を調
整し、前記少なくとも一つのピストンが前記ダイヤフラムに力を加えることによって、前記プロセス流体流量制御装置を通過するプロセス流体の流量を減らすか遮断するこ
とができるようにさらに構成され、
前記プロセス流体流量制御装置は、ノーマルオープン(常時開)であって、前記少なくとも一つのピストンに力を加える空気圧手段をさらに備えることによって、前記プロセス流体流量制御装置を通過する流れを遮断する
ことを特徴とするプロセス流体流量制御装置。
【請求項3】
前記第2端が前記圧電駆動部品の自由端と接触し、
前記圧電駆動部品は屈曲型である
ことを特徴とする、請求
項2に記載のプロセス流体流量制御装置。
【請求項4】
前記圧電駆動部品は、屈曲動作しててこの原理で増幅される圧電駆動部品から成る
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のプロセス流体流量制御装置。
【請求項5】
前記圧電駆動部品が作動すると、前記ピストンを前記ダイヤフラムに押し付けているバネを前記圧縮空気が押して、前記プロセス流体が前記プロセス流体流量制御装置を通過して流れるようにする
ことを特徴とする、請求項1に記載のプロセス流体流量制御装置。
【請求項6】
入口から出口へ流体流量の制御方法であって、前記方法は、
前記入口および/または出口と直接操作的連通を行うダイヤフラムを提供することと、
圧電駆動部品を提供することと、
前記ダイヤフラムに加わる力を調整するために前記圧電駆動部品を作動させることによって、
請求項1または2に記載の前記プロセス流体流量制御装置を通過するプロセス流体の流量を第1定格範囲内に規制することと、
頂部が前記圧電駆動部品に隣接し、シリンダにぴったり封入されて前記ダイヤフラムと直接操作的連通を行う中空なピストンを提供することと、
前記中空なピストンに圧縮空気を当てることと、
前記中空なピストンに加わる力を調整するために前記圧電駆動部品を作動させることと、
続いて、前記中空なピストンが前記ダイヤフラムに力を加えることによって、前記プロセス流体流量制御装置を通過する前記プロセス流体の流量を減らすか流れを遮断することと、
前記中空なピストンに圧縮空気が流れるようにするために前記圧電駆動部品を作動させることによって、前記プロセス流体が前記入口から前記出口へ流れるようにすることと、を含み、
前記圧電駆動部品は、作動しないときは前記シリンダを遮断して、圧縮空気が前記中空なピストンを介して通過しないようにする
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
マスフローコントローラ(MFC)は、液体やガスの流量を測定し制御する装置である。マスフローコントローラは、特定種類の液体やガスを具体的な流量率範囲に収まるべく制御するように設計・調整される。MFCは、そのフルスケールである0~100%の範囲で設定できるが、通常は、フルスケールのうち最高の精度が得られる10~90%で運用される。その結果、当該装置は、流量率が所与の設定になるように制御する。MFCは、アナログでもデジタルでもよい。デジタルフローコントローラは二種類以上の流体を制御可能であり、アナログフローコントローラはそれに合わせて調整された流体に限られる。
【背景技術】
【0002】
マスフローコントローラは、すべて、入口ポートと、出口ポートと、質量流量センサと、比例制御弁と、を有する。MFCは、オペレータ(または外部回路、外部コンピュータ)から入力信号が与えられ、それを質量流量センサからの値と比較することによって比例弁を調整して必要な流量にする閉ループ制御システムを装着している。流量率は、調整されたフルスケール流量の割合として指定され、電圧信号としてMFCに供給される。
【0003】
マスフローコントローラは、供給されるガスや流体が特定の圧力範囲に収まる必要がある。圧力が低すぎるとMFC内の流体が不足して設定値に届かなくなる。圧力が高すぎると、流量率が不安定になる。
【発明の概要】
【0004】
一態様によれば、圧電駆動部品を有する作動機構を各々が備える流体流量制御装置が提供される。このような装置は、例えばMFCである。
【0005】
新規の各装置は、当該装置を通過する流体の流量を変える命令を完全に実行する応答時間を大幅に改善し得る。
【0006】
また、これらの装置は、当該装置を通過する流体用の規定値の範囲において、市販MFCのいくつかのように当該範囲の終点だけでなく、オン・オフ設定によって任意の流量率を正確に設定できるように改善され得る。
【0007】
装置に関する各実施形態のいくつかは、複数の作動機構を備え、これらの作動機構の少なくとも一つは、圧電駆動部品を備える。
【0008】
一態様によればプロセス流体流量制御装置が提供され、前記プロセス流体流量制御装置は、入口と、出口と、作動機構と、ダイヤフラムと、を備え、前記ダイヤフラムは、前記出口および/または前記入口と作用的直接連通を行い、前記作動機構は、圧電駆動部品を備え、前記プロセス流体流量制御装置は、前記ダイヤフラムに加わる力を調整するために前記圧電駆動部品を作動させることによって、前記プロセス流体流量制御装置を通過するプロセス流体の流量を第1定格範囲内に規制するように構成される。例えば、高純度ガス管網は、前記プロセス流体流量制御装置を備え得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、駆動用圧電部品は、スタック型圧電駆動部品と、屈曲型圧電駆動部品と、から成るグループから選択される。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記作動機構は、前記ダイヤフラムと作用的直接連通を行う少なくとも一つの非圧電駆動部品をさらに備え、前記プロセス流体流量制御装置は、前記圧電駆動部品を作動させて前記非圧電駆動部品に加わる力を調整することと、前記少なくとも一つの非圧電駆動部品が前記ダイヤフラムに力を加えることによって、前記プロセス流体流量制御装置を通過するプロセス流体の流量を減らすか遮断することと、ができるようにさらに構成される。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも一つの非圧電駆動部品はピストンを備える。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記プロセス流体流量制御装置は、ノーマルオープン(常時開)であって、前記少なくとも一つの非圧電駆動部品に力を加える空気圧手段をさらに備えることによって、前記プロセス流体流量制御装置を通過する流れを遮断する。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記ピストンは、第1端が前記ダイヤフラムと接触し、第2端が前記圧電駆動部品と接触している。
いくつかの実施形態では、前記第2端が前記圧電駆動部品の自由端と接触し、前記圧電駆動部品は屈曲型である。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記プロセス流体流量制御装置は、ノーマルクローズ(常時閉)であって、前記少なくとも一つの非圧電駆動部品に力を加える空気圧手段をさらに備え、前記プロセス流体流量制御装置は、前記圧電駆動部品を作動させて前記空気圧手段を介し前記少なくとも一つの非圧電駆動部品に圧縮空気が流れることによって、プロセス流体が前記プロセス流体流量制御装置を通過して流れるように構成される。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも一つの非圧電駆動部品は、頂部が前記圧電駆動部品に隣接しシリンダにぴったり封入された中空なピストンを備え、前記圧電駆動部品は、作動しないときは前記シリンダを遮断して、圧縮空気が前記ピストンを介して通過しないようにする。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記圧電駆動部品が作動すると、前記ピストンを前記ダイヤフラムに押し付けているバネを前記圧縮空気が押して、前記プロセス流体が前記プロセス流体流量制御装置を通過して流れるようにする。
【0017】
いくつかの実施形態は、前記ピストンの第1位置を測定する手段をさらに備え、測定された前記第1位置に従って、前記圧電駆動部品を作動させて前記ピストンの位置を所定の第2位置に調整することによって、前記プロセス流体流量制御装置を通過する前記プロセス流体の流量を所定の所望流量に調整する。
【0018】
別の態様によれば、上述したそれぞれの前記プロセス流体流量制御装置のいずれかと、代替の圧電駆動部品を備える少なくとも一つの代替作動機構と、を備える集合体が提供され、前記プロセス流体流量制御装置は、前記少なくとも一つの代替作動機構を作動させて前記プロセス流体流量制御装置を通過する前記プロセス流体の流量を、前記第1定格範囲ではない定格範囲内になるよう調整するように構成される。
【0019】
さらに別の態様によれば、入口から出口へ流体流量の制御方法が提供され、前記方法は、前記入口および/または出口と作用的直接連通を行うダイヤフラムを提供することと、圧電駆動部品を提供することと、前記ダイヤフラムに加わる力を調整するために前記圧電駆動部品を作動させることによって、前記プロセス流体流量制御装置を通過するプロセス流体の流量を第1定格範囲内に規制することと、を含む。
【0020】
いくつかの実施形態は、前記ダイヤフラムと作用的直接連通を行う少なくとも一つの非圧電駆動部品を提供することと、前記非圧電駆動部品に加わる力を調整するために前記圧電駆動部品を作動させることと、前記少なくとも一つの非圧電駆動部品が前記ダイヤフラムに力を加えることによって、前記プロセス流体流量制御装置を通過する前記プロセス流体の流量を減らすか遮断することと、をさらに含む。
【0021】
いくつかの実施形態は、前記少なくとも一つの非圧電駆動部品に圧縮空気を当てることによって、プロセス流体が前記入口から前記出口へ流れるのを遮断すること、をさらに含む。
【0022】
いくつかの実施形態は、前記少なくとも一つの非圧電駆動部品に圧縮空気を当てることと、前記少なくとも一つの非圧電駆動部品に圧縮空気が流れるようにするために前記圧電駆動部品を作動させることによって、プロセス流体が前記入口から前記出口へ流れるようにすることと、をさらに含む。
【0023】
いくつかの実施形態は、前記非圧電駆動部品の第1位置を測定することと、前記ピストンの位置を所定の第2位置に調整するために、測定された前記第1位置に従って前記圧電駆動部品を作動させることによって、前記プロセス流体の前記入口から前記出口への流量を所定の所望流量に調整することと、をさらに含む。
【0024】
いくつかの実施形態は、前記プロセス流体の前記出口からの質量流量を測定することと、測定された前記質量流量を前記出口からの所定の所望質量流量と比較することと、前記ダイヤフラムに加わる力を調整するために前記圧電駆動部品を作動させることによって、前記プロセス流体の前記出口からの流量を前記所望質量流量に調整することと、をさらに含む。
【0025】
この概要は、以下で図面の簡単な説明と、発明を実施するための形態と、でさらに説明される選りすぐりの各概念を単純化して紹介するためのものである。この概要は、本発明の請求項の重要な特徴や本質的な特徴を特定することを意図したものではないし、本発明の請求項の範囲を限定するために使用されることを意図したものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
各図は、制限することによってではなく例示することによって、本明細書に記載された様々な実施形態を一般的に説明している。
【0027】
図面の単純化と明確化のため、各図に示した構成要素は、必ずしも正確な比率で描かれてはいない。例えば、各構成要素のいくつかは、表現の明確化のために、他の構成要素に対して相対的に誇張されている可能性がある。また、参照番号は、対応する構成要素または類似の構成要素であることを示すために、各図で繰り返される可能性がある。各図の一覧を以下に記す。
【0028】
各図で示した構成要素の数は、決して限定することと解釈されるべきではなく、説明を分かりやすくするためだけのものである。
【0029】
【
図1】従来技術のMFCを概略的に示した図である。
【
図2】圧電駆動部品を有するMFCの概略ブロック図である。
【
図3a】従来技術によるスタック型圧電駆動部品の斜視図である。
【
図3b】スタック型圧電駆動部品を備える弁の斜視図である。
【
図4a】弾性カバーで覆われた典型的な市販の部品である、従来技術による屈曲型圧電駆動部品の斜視図である。
【
図4b】カバーを剥がした前述の部品の斜視図である。
【
図4c】所定の表面に固定された従来技術による圧電駆動部品の移動を示す側面図である。
【
図5a】自らの作動機構の一部である屈曲型圧電駆動部品を備え、ノーマルオープン(常時開)型であってオープン状態のMFC装置の側面図である。
【
図5b】
図5aに示したMFC装置がクローズ状態の図である。
【
図6a】ピストンを備える空気圧手段と、屈曲型圧電駆動部品と、を有し、ピストン位置を調整することによって、自らを通過する流体流量を所定の所望流量に調整するノーマルクローズ(常時閉)型MFC装置の部分切り欠き図である。
【
図6b】
図6aに示したMFC装置がオープン状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、従来技術によるMFC1000'を図示したものである。MFC1000'は、電子部品100と、センサ200と、従来技術による制御弁400'と、迂回路500と、を備える。
【0031】
従来技術によるガス流制御用の制御弁400'は、典型的にはソレノイド駆動ピストン(図示せず)である。電子部品100は、流量を変更するコマンドを受信し得る。このようなコマンドは、制御弁400'を通過する流体の現在流量のセンサ読取り値と比較され得る。比較結果および電子部品100の各設定値に従って、この制御弁400'は、ピストンを完全後退させたり完全伸展させたりすることができるので、流体流量を変更することができる。ただし、このような流量規制は、二値間に限られる。また、ピストンの移動が遅いので、所望の設定点に到達するのが不必要に長くなるかもしれない。もし別の流量が必要となれば、制御弁400'および電子部品100の両方とも、恐らくはセンサ200も、交換する必要があるので、必然的にMFC1000'全体を交換することになる。
【0032】
一つの目的は、応答性が改善した簡素なMFCを提供することである。別の目的は、ガス管網の新しい所望流量設定への適用しやすさを改善することである。一態様によれば流体流量制御装置が提供され、前記流体流量制御装置は、入口と、出口と、作動機構と、ダイヤフラムと、を備え、前記ダイヤフラムは、前記出口および/または前記入口と作用的直接連通を行い、前記作動機構は、圧電駆動部品を備え、前記プロセス流体流量制御装置は、前記ダイヤフラムに加わる力を調整するために前記圧電駆動部品を作動させることによって、前記プロセス流体流量制御装置を通過するプロセス流体の流量を第1定格範囲内に規制するように構成される。「作用的直接連通」とは、以下でいくつかの実施形態を詳細に説明するときに図示して説明されるように、ダイヤフラムが、作動中のある状態で、入口および/または出口と直接接触するか、および/または、入口および/または出口の間に位置することを意味する。
【0033】
特開H04-370401は、流体を通過させることができる装置に関する。この装置は、ダイヤフラム、または弁ロッドに接続されたピストンに掛かる圧力を制御して入口ポートと出口ポートとの間の連通を中断するノズルフラッパ駆動機構を備える。上述文書には、出口ポート側の検出圧力に基づいてノズルフラッパの変位を制御することによって、出力圧を制御する電空レギュレータが記載されている
【0034】
ノズルフラッパ駆動機構は、圧電部品を備える。ただし、特開H04-370401のダイヤフラムは、入口(上述文書では入口ポート2)および/または出口(上述文書では出口ポート3)と直接に連通してはいない。それどころか、上述文書のダイヤフラムは、入口および出口から離れた制御圧室に置かれて、出力圧を調整する役目を果たす。ダイヤフラムを作動させると、ダイヤフラムがピストンを押す。
【0035】
特開H04-370401に記載された装置は、質量流量を微調整することはできない。我々は、流量制御を改善するという別の目的のために、全体としてはるかに簡素化された装置を考案するに至った。
【0036】
図2は、アクチュエータ、つまり圧電駆動部品422’’を備えた作動機構420’’を有する弁400’’を備えるMFC1000’’の概略ブロック図である。出口および/または入口(図示せず)と作用的直接連通するダイヤフラムがある。
【0037】
典型的には弁400’’の下流に位置する、質量流量のセンサ200は、アクチュエータ420’’にコマンドを送るPLC(プログラマブル論理制御装置)300へ結果報告し得る。新しい流量形態用にMFC1000’’を変えることは、正確に測定できる質量流量の範囲に従って、(圧電駆動部品422’’からアクチュエータ420’’に至る二本の電線をはずして)圧電駆動部品422’’を異なる能力範囲の別のものに変えてPLC300を、および時にはセンサ200も、再使用することと同じくらい簡単で単純である。
【0038】
一般的に言って、三種類の圧電モータがある。最もありふれた種類は、インパクト駆動スティック・スリップ圧電モータである。二番目は、ステッパ型圧電モータであって、ウォーキング圧電モータとも呼ばれ、典型的には強い力を要する応用例に使われる。三番目は、超音波圧電モータつまり共鳴圧電モータである。三種類の圧電モータには全て、動作原理を詳細に検証することによって説明できる固有の優位点と用途があり、例えば HYPERLINK "https://xeryon.com/technology/how-do-piezo-motors-work/" https://xeryon.com/technology/how-do-piezo-motors-work/ を参照されたい。
【0039】
図3aは、MFC用装置(図示せず)に使用できる、従来技術によるスタック型圧電駆動部品422’’’の斜視図である。
図3bは、アクチュエータ本体423’’’内に位置しダイヤフラム(図示せず)に結合されてダイヤフラムに加えられる力を調整することによって、当該装置を通過する流体の流量を第1定格範囲内に規制するスタック型圧電駆動部品(図示せず)を備える弁400’’’の斜視図である。
【0040】
質量流量制御用のこの特定種類の駆動部品の優位点は、典型的には数マイクロ秒という非常に高速な反応速度であり、比較的強力なので、いくつかの実施形態では、必要とあらば流れを完全に遮断することができる。
【0041】
いくつかの市販の駆動機構も強力で高速であり、したがって良い遮断弁であるが、これらの市販装置にはスタック型圧電駆動部品が無く、流量はゼロにするか特定値にするかしか設定できない。一方、上述したスタック型圧電駆動部品を有する本発明の装置は、強力で高速な遮断ができると同時に、流量を最大流量までの複数の離散値に微調整できるという両方の特徴を備える。
【0042】
この部品の最大移動距離は典型的には約80μmであり、最大駆動力は9600Nである。この部品に印加された電圧が止まるとすぐに、この部品は元の位置に戻る。
【0043】
このような部品を備える流量制御装置は、弁を完全に遮断できるので追加の遮断部品を省くことができ、予め質量流量速度の範囲(当該部品のゼロから最大までの広がり)が判るので、MFC用に既成のセンサを使用できる。
【0044】
図4aは、弾性カバー425で覆われた典型的な市販の部品422’’である、従来技術による屈曲型圧電駆動部品422’’の斜視図である。
【0045】
図4bは、カバー425を剥がした前述の部品422’’の斜視図である。この屈曲型圧電駆動部品422’’は、カンチレバーの形状であって、すなわち細長くて自由な第1端427bを有する。
図4cは、第2端427aで表面8に固定された従来技術による圧電駆動部品422’’の移動を示す側面図である。固定点は、自由端42bで身をそらすことができるてこの支点として機能する。
【0046】
この部品は、極めて速い応答もでき、完全に遮断させることもでき得る。最大移動距離はスタック型圧電駆動部品のものよりかなり長く、典型的には400μmであり、この点で多くのアクチュエータ用として、より好適であり得る。一方、最大駆動力はより小さくて150Nである。したがって、極めて高い信頼性を要するいくつかの用途では、完全に遮断するために追加部品をアクチュエータに加え得る。この部品に印加された電圧が止まるとすぐに、この部品は元の位置に戻る。
【0047】
このような屈曲に基づき、てこ状に増幅される部品は、典型的には非常に小型なので、サイズが特に重要な考慮事項であるガスキャビネットのサイズを最小化する助けとなる。屈曲型部品は、典型的には、解像度がナノメータ未満の範囲の高い位置決め精度を有しているので、応答速度と併せると、動的用途および静的用途の両方によく適している。
【0048】
次に、いくつかの実施形態についてより詳細に説明する。
図5aは、ノーマルオープン(常時開)型であるMFC装置400’’の側面図であって、自らのための作動機構420’’の一部であって
図4a~4cにも示した屈曲型圧電駆動部品422’’を備える。MFC装置400’’は、
図5aではオープン状態であって、圧電駆動部品422’’は止まっている。また、プロセス流体MFC装置400’’は、入口412と、出口414と、ダイヤフラム430と、を備える。ダイヤフラム430は、出口414と作用的直接連通している。
【0049】
なお、他の実施形態では、ダイヤフラムは、入口と、または入口および出口と、直接連通し得る。MFC装置400’’は、圧電駆動部品422’’を作動させてダイヤフラム430に掛かる力を調整する。これによって、圧電駆動部品422’’は、MFC装置400’’を通過するプロセス流体10の流量を第1定格範囲423a内に規制する。
【0050】
MFC装置400’’は、
図5bではクローズ状態であって、圧電駆動部品422’’全体に電圧が印加されて、ダイヤフラムは出口414を閉じている。
【0051】
作動機構420’’は、非圧電駆動部品と、ピストン424と、を備え、ダイヤフラム430と作用的直接連通している。したがって、MFC装置400’’は、圧電駆動部品422’’を作動させて非圧電駆動部品424に掛かる力を調整し得る。非圧電駆動部品424は、次にダイヤフラム430に力を加えることによって、MFC装置400’’を通過する流体10の流量を減らす。
【0052】
言い換えれば、圧電駆動部品422’’は電圧を印加されるとピストン424を押し、次にピストン424がダイヤフラム430を押す。ダイヤフラム430は、この作動状態で出口414と直接接触している。
【0053】
また、MFC装置400’’は、非圧電駆動部品424に力を掛けることによって、MFC装置400’’全体に亘って流れを遮断する空気圧手段440をさらに備える。
【0054】
なお、ピストン424は、ダイヤフラムと接触する第1端426aと、圧電駆動部品422’’と接触する第2端426bと、を有する。
【0055】
具体的には、第2端426bは、圧電駆動部品422’’の自由端427bと接触する。
【0056】
第2端426bは、圧電駆動部品422’’に対してその自由端427bの先端部の真下に位置するのが好ましい。ピストンの長さ方向は、移動方向に平行であって、圧電駆動部品422’’のおおまかな屈曲方向でもある。したがって、圧電駆動部品422’’に印加すると、ピストン424が最大限移動し、具体的に迅速で高精度の質量流量調整を行うことができる。
【0057】
図5aおよび5bに示した実施形態、および、実際に、本明細書に記載した他の各実施形態は、著しく簡素な構造でありながら、質量流量の調整を行う役目を果たす。例えば、圧電駆動部品422’’は、屈曲に基づき、てこで増幅され、小型である必要があるMFCシステム内で質量流量調整に使用するのに特に好適であり得る。また、MFC装置400’’は、ダイヤフラム430が空気圧にさらされて流れを遮断することができるように作られる。他の実施形態では、当該装置に備え得る非圧電機械部品を電気的に作動させることによって、遮断機能が提供される。
【0058】
なお、圧電駆動部品422’’を作動させるだけでMFC装置400’’がクローズ状態になるわけではなく、正確に言えば、MFC装置400’’を通過する質量流量が圧電駆動部品422’’に印加された電圧に正比例して減少する。
【0059】
MFC装置400’’は、圧縮空気11による空気圧がピストン424に当たってダイヤフラム430に加圧するように構成される。圧電駆動部品422’’による力と、圧縮空気11による力と、が組み合わされた力を使ってプロセス流体10の流れを遮断し得る。いくつかの実施形態では、空気圧手段440は、流れを遮断するためだけに作動される。いくつかの実施形態では、流れを遮断するのに、空気圧手段440だけが作動される。
【0060】
現段階では、上述した各実施形態が最高の機能を発揮するが、他の実施形態でも十分である。
【0061】
いくつかの他のノーマルオープン(常時開)型の実施形態では、圧電部品がダイヤフラムと直接連通する、つまり、ピストンは省略される。
【0062】
いくつかの実施形態は、圧電部品が圧縮空気の流れを制限することによって、MFC装置を通過する流体を規制するように構成される。例えば、空気圧手段が、ダイヤフラムの表面に空気を供給する少なくとも一つの導管を備え、圧電駆動部品を作動させて当該導管内に進入し死容積・乱流を生成させることによって、ダイヤフラムに掛かる圧力を減少させて流れを増やし得る。
【0063】
MFC装置のいくつかの実施形態は、ノーマルクローズ(常時閉)型である。これらの実施形態のうちいくつかは、(例えばピストンのような)非圧電駆動部品に力を加える空気圧手段を備える。このMFC装置は、圧電駆動部品を作動させて圧縮空気が空気圧手段を介して非圧電駆動部品に流れることによって、流体がMFC装置を通過して流れるようにできる。
【0064】
MFC装置の上述の実施形態は、前記ピストンの第1位置を測定する手段をさらに備え得る。測定された前記第1位置に従って、前記圧電駆動部品を作動させて前記ピストンの位置を所定の第2位置に調整し得る。こうして、前記MFC装置は、自らを通過する前記流体の流量を所定の所望流量に調整する。
【0065】
このような実施形態の例を
図6aに図示してある。
図6aに示したように、MFC装置500は、ノーマルクローズ(常時閉)型である。ピストン524は、中空であって、圧電駆動部品522に隣接する頂部525を有し、シリンダ528にぴったり封入されている。圧電駆動部品522が作動していないとき、つまり、圧電駆動部品522に電圧が印加されていないとき、圧電駆動部品522はシリンダ528を遮断して、圧縮空気11がピストン524を介して通過するのを防止する。
【0066】
図6bに示したように、圧電駆動部品522が作動すると、圧電駆動部品522が撓むことによってシリンダの遮断が解消され、圧縮空気11がシリンダ528に入り込んで中空のピストン524を通り抜け得る。圧縮空気11は次に、ピストン524をダイヤフラム530に押し付けているバネ527を押して、プロセス流体がMFC装置500を通過して流れるようにする。
【0067】
ピストン524は、軸方向に目盛り529が付けられており、エンコーダ550に読み込まれて特定の目盛りが特定の流量に置き換えられる。
【0068】
エンコーダ550は、目盛りを読み込むと、圧電駆動部品522にコマンドを発行して、圧縮空気11がシリンダ528に入り込むのを増減する。このフィードバック制御は、圧電駆動部品522の応答性が極めて速いおかげで、何回も行われて正確な所望流量を達成し得る。
【0069】
上述した各実施形態は、二値制御ではなく連続的な流量制御を行うことが可能であり、流れの遮断および流量調整の両方を行うことができるのではるかに効果的であり得る。
【0070】
いくつかの高純度ガス管網の実施形態は、上述したようなMFC装置を備える。
【0071】
当該の圧電駆動部品は、例えば、スタック型圧電駆動部品、屈曲型圧電駆動部品、およびモータ型圧電駆動部品から成るグループから選択し得る。
【0072】
これらのMFC装置は、いずれも、いくつかの実施形態において非圧電駆動部品をさらに備え、この非圧電駆動部品がダイヤフラムに力を掛けることによって、自らを通過する流体の流れを遮断することができるようにさらに構成される。
【0073】
別の態様によれば、上述した各MFC装置のいずれかと、互換性のある複数の作動機構と、を備える集合体が提供され、互換性のある複数の作動機構の少なくとも一つは、上述の圧電駆動部品を備える。
【0074】
<用語の明確化>
記載において、特に断らない限り、本発明に係る実施形態の特徴または各特徴の状態や関係特性を修飾する、「略」および「約」のような形容詞は、前述の状態や特性が、当該実施形態が意図する用途のための動作としてふさわしい許容範囲内に規定されることを意味すると理解されたい。
【0075】
なお、本明細書で使用する「項目」という用語は、一括されるか一括されていない物または複数の物のうち、物理的に有形で個別に区別可能な任意の単位を指す。本明細書で使用され得る「上側」、「下側」、「右」、「左」、「下部」、「下方」、「下げられた」、「低い」、「最も上」、「上方」、「上げられた」、「高い」、「垂直」、および「水平」等の位置用語並びにそれらの文法的変形は、かかる方向、構成要素または両方が空間内で反転、回転、移動され、斜めの方向または位置に配置され、水平または垂直に配置され、または同様に変更され得るので、例えば、「下部」にある構成要素が「最も上」の構成要素より下にあること、または「下方」にある構成要素が実際に他の構成要素の「下方」にあること、または「上方」にある構成要素が実際に他の構成要素の「上」にあることを必ずしも示さない。したがって、用語「下部」、「下方」、「最も上」、および「上方」は、本明細書では、特定の構成要素の相対的な位置または配置を説明するため、第1および第2の構成要素を示すため、またはその両方を行うために、例示的な目的でのみ使用され得ることが理解されるであろう
【0076】
「と連結される」という用語は、間接的に「と連結される」か、または直接的に「と連結される」ことを意味する。
【0077】
上述した各方法は、対応する各記載内容に限定されない。例えば、当該方法は、本明細書および/または添付図面に記載されたものと比較して、追加の処理や工程、またはより少ない処理や工程を含み得る。また、各方法の実施形態は、図示され本明細書に記載された時系列順に必ずしも限定されない。
【0078】
なお、各請求項または本明細書が「一つの」要素または特徴を参照する場合、このような参照は、当該の要素だけしかないと解釈されるべきではない。したがって、例として「一つの要素」または「少なくとも一つの要素」は、「一つ以上の要素」も包含したものであり得る。
【0079】
特に断らない限り、選択肢リストのうち最後の二つ選択肢の間に「および/または」という表現を使用するのは、リスト化された各選択肢のうち一つ以上の選択が適切であって、そのように選択され得るということを示す。
【0080】
本明細書で用いられる「斜視図」という用語は「等角図」も指し得るし、その逆もあり得る。
【0081】
明確にするために別々の実施形態という文脈で説明されている特定の各特徴は、単一の実施形態で組み合わせて提供されることもあり得ることを理解されたい。逆に、簡潔にするために単一の実施形態、実施例、および/またはオプションという文脈で説明されている様々な特徴も、別々に、または任意の適切な部分的組合せで、または任意の他の説明された実施形態において好適なように提供され得る。様々な実施形態という文脈で説明されている特定の特徴は、実施形態、実施例、および/またはオプションがそれらの要素なしでは動作不能である場合を除き、それらの実施形態の必須の特徴とはみなされないものとする。したがって、本明細書に開示され、明確にするために別々の実施例という文脈で説明されている特徴、構造、特性、段階、方法、モジュール、要素、実体、またはシステムは、単一の例で組み合わせて提供されることもあり得る。逆に、本明細書に開示され、簡潔にするために単一の実施例という文脈で説明されている様々な特徴、構造、特性、段階、方法、モジュール、要素、実体、またはシステムは、別々にまたは任意の適切な部分的組合せで提供されることもあり得る。
【0082】
なお、「典型的な」という用語は、本明細書では、各実施形態および/または各実装の例を指すために使われ、必ずしもより望ましい使用例を伝えることを意味するわけではない。
【0083】
代替および/または他の実施形態においては、追加の、より少ない、および/または異なる要素が使用され得る。
【0084】
本明細書の説明を通じて、様々な実施形態は、範囲形式で示され得る。範囲形式での説明は、単に便宜上および簡潔さのためであって、各実施形態の範囲に関する柔軟性のない限定事項として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、その範囲内の個々の数値だけでなく、可能性のあるすべての部分的範囲を具体的に開示したとみなされるべきである。例えば、1~6のような範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の部分的範囲と、例えば1、2、3、4、5、6等のその範囲内の個々の数値を具体的に開示したものとみなされるべきである。これは、範囲の広さに関係なく当てはまる。
【0085】
本明細書で数値範囲を示すときには、該当する場合、その範囲内にある引用数字(分数または整数)を含むことを意味する。第一指示数と第二指示数「との間の範囲の/範囲にある」、および第一指示数「から」第二指示数「までの範囲の/範囲にある」という表現は、本明細書では言い換え可能であって、第一指示数および第二指示数、およびその間のすべての分数および整数を含むことを意味する。
【0086】
各態様を限られた数の実施形態に関して説明してきたが、これらは発明の範囲を限定するものとしてではなく、各実施形態のいくつかの例示として解釈されるべきである。