(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】部材用の平坦な補強構造体の縁部の設計
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20240708BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20240708BHJP
B29C 48/00 20190101ALI20240708BHJP
B62D 29/04 20060101ALI20240708BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20240708BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20240708BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C45/26
B29C48/00
B62D29/04 A
B62D25/08 D
B62D25/20 N
B60J5/00 P
(21)【出願番号】P 2022529678
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(86)【国際出願番号】 EP2020082571
(87)【国際公開番号】W WO2021099409
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】102019131625.1
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598001467
【氏名又は名称】カウテックス テクストロン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン・シギア
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ヒュッツェン
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-028935(JP,A)
【文献】国際公開第2018/189635(WO,A1)
【文献】特表2007-533545(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01048442(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 - 45/84
B62D 29/04
B62D 25/08
B62D 25/20
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の剛性を有する平坦な補強構成要素(2)と、第2の剛性を有する平坦な材料(3)と、を含む、部材(1)であって、前記第1の剛性は、前記第2の剛性よりも高く、前記補強構成要素(2)は、第1の狭い側面(5a)に第1の端部(4)を有し、前記材料(3)は、第2の狭い側面(7a)に2つの棚状突起部(8、9)に分割された第2の端部(6)を有し、前記第2の端部(6)の前記2つの棚状突起部(8、9)は、前記第1の端部(4)を包囲領域(U)において両側で包囲する、部材(1)において、
前記棚状突起部それぞれの最大の壁厚(h
1、h
2)は、基材壁厚の半分以上である、すなわち、前記包囲領域(U)の外側の前記材料(3)の壁厚(a)の半分以上であ
り、前記材料(3)の壁厚(h
1
、h
2
)は、前記第1の端部(4)が前記平坦な補強構成要素(2)の前記第1の狭い側面(5a)を形成する位置で最大になることを特徴とする、部材(1)。
【請求項2】
前記材料(3)は、前記包囲領域(U)全体にわたって円弧状に延びることを特徴とする、請求項1に記載の部材(1)。
【請求項3】
前記材料(3)の壁厚(h
1、h
2)は、前記平坦な補強構成要素(2)の前記第1の狭い側面(5a)が前記平坦な材料(3)の前記第2の端部(6)に接触する位置で最大になることを特徴とする、請求項1又は2に記載の部材(1)。
【請求項4】
前記補強構成要素(2)と前記材料(3)との間の重なり領域(L)の長さは、前記基材壁厚の1.5倍~8倍、1.7倍~6倍、又は2倍~4倍であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の部材(1)。
【請求項5】
前記棚状突起部(8、9)のうちの少なくとも1つの端面に、凹部(12、13)が設けられていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の部材(1)。
【請求項6】
両方の前記棚状突起部(8、9)に凹部(12、13)が設けられており、両方の前記棚状突起部(8、9)のうちの一方が第1の棚状突起部(8)であり、両方の前記棚状突起部(8、9)のうちの他方が第2の棚状突起部(9)であることを特徴とする、請求項5に記載の部材(1)。
【請求項7】
前記第1の棚状突起部(8)の前記凹部(12、13)は、前記第2の棚状突起部(9)の前記凹部(12、13)に対してオフセットされて配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の部材(1)。
【請求項8】
前記第1の棚状突起部(8)の前記凹部(12、13)は、前記第2の棚状突起部(9)の前記凹部(12、13)に対して対向して配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の部材(1)。
【請求項9】
前記凹部(12、13)の長さは、全ての凹部(12、13)について同じであることを特徴とする、請求項6~8のいずれか一項に記載の部材(1)。
【請求項10】
前記棚状突起部(8、9)のうちの1つに、第1の長さを有する第1の群の凹部(13)及び第2の長さを有する第2の群の凹部(12)が存在し、前記第1の長さは、前記第2の長さよりも長いことを特徴とする、請求項6~9のいずれか一項に記載の部材(1)。
【請求項11】
前記第1の棚状突起部(8)に加えて前記第2の棚状突起部(9)にも、前記第1の群の凹部(13)及び前記第2の群の凹部(12)が存在することを特徴とする、請求項10に記載の部材(1)。
【請求項12】
前記第1の棚状突起部(8)の前記第2の群の凹部(12)の前記凹部は、前記第2の棚状突起部(9)の前記第1の群(13)の前記凹部に対向しており、前記第1の棚状突起部(8)の前記第1の群の凹部(13)の前記凹部は、前記第2の棚状突起部(9)の前記第2の群(12)の前記凹部に対向していることを特徴とする、請求項10又は11に記載の部材(1)。
【請求項13】
前記第1の棚状突起部(8)の前記第2の群の凹部(12)の前記凹部は、前記第2の棚状突起部(9)の前記第2の群(12)の前記凹部に対向しており、前記第1の棚状突起部(8)の前記第1の群の凹部(13)の前記凹部は、前記第2の棚状突起部(9)の前記第1の群(13)の前記凹部に対して対向していることを特徴とする、請求項9~12のいずれか一項に記載の部材(1)。
【請求項14】
前記補強構成要素(2)は、プラスチック、熱可塑性若しくは熱硬化性の種類の繊維複合体、金属板、又は木製板であることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の部材(1)。
【請求項15】
前記材料(3)は、射出成形材料又は衝撃押出材料であることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の部材(1)。
【請求項16】
前記平坦な材料(3)の前記棚状突起部(8、9)は前記補強構成要素の前記第1の狭い側面全体を含む縁部を完全に包囲するか、又は前記縁部の部分的な領域のみを包囲することを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の部材(1)。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の部材(1)を含む、フロントエンドモジュールキャリア、座席構造体、ドアシステム、燃料タンクハウジング、車両アンダーボディ構造体、後部侵入防止装置、バッテリシステム用の構造部材、又はバッテリハウジング。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか一項に記載の部材(1)を製造するための方法であって、
a.前記補強構成要素(2)を少なくとも2プレート構成の金型に準備することと、
b.前記金型に前記材料(3)を投入することと、
c.前記金型内での射出成形又は衝撃押出により前記部材を成形することと、
d.得られた前記部材(1)を開けた前記金型から取り出すことと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
部材の重量を低減し、部材の性能を向上させるために、繊維複合材料が自動車分野でますます使用されている。射出成形法で製造される高応力部材のためのアプローチは、熱可塑性の連続繊維強化半製品(いわゆるオルガノシート)の単段再成形及び逆射出成形(いわゆる「インモールド成形」)である。対応する手順は、衝撃押出法でも可能である。これらの技術は、連続繊維で強化した繊維強化プラスチック(FRP)の優れた機械的特性と、射出成形法又は衝撃押出法での高い費用対効果及び機能化の可能性と、を結びつける。既存の製品用途は、とりわけ、フロントエンドモジュールキャリア、座席構造体、ドアシステム、車両アンダーボディ構造体、又は後部侵入防止装置であり、また燃料タンクハウジング及びバッテリハウジングシステムもある。
【0002】
対応する部材は、繊維複合材からなる領域及び(射出成形/衝撃押出)材料からなる領域があり、これらはそれぞれ移行領域で接続されている。そのような部材の特徴は、射出成形/衝撃押出構成要素の剛性が繊維複合構成要素の剛性よりも明らかに低いことである。剛性の急激な変化に起因して、両方の領域の移行部には応力集中が発生し、それにより、機械的負荷の場合に、特に衝突負荷又は衝撃負荷の場合に脆弱点が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
射出成形/衝撃押出材料とFRP半製品との接続は、通常、半製品縁部領域のオーバーモールド又は再成形によって行われる。全面的なオーバーモールド/再成形は、軽量構築の観点から、一般的に賢明ではない。これらの移行領域、並びに力誘導要素及び機能要素のための既存の設計ガイドラインでは、前面及び片側で重なり合う射出/成形の組み合わせについて説明している。この場合、とりわけ、部材の視覚的特性及び触覚的特性(トリミング)が中心であり、機械的特性はそれほど重要ではない。この場合の欠点は、既知の構造体が高負荷における高い機械的結合強度及びエネルギー吸収に適していないことである。本発明の課題は、高負荷における高い機械的結合強度及びエネルギー吸収に適しており、かつ/又は視覚的に魅力的な構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本課題を解決するために、添付の請求項で定義されているように、部材及びこの部材を製造するための方法が提供される。
【0005】
本発明は、第1の剛性を有する平坦な補強構成要素と、第2の剛性を有する平坦な材料と、を含む、部材であって、第1の剛性は、第2の剛性よりも高く、補強構成要素は、第1の狭い側面に第1の端部を有し、材料は、第2の狭い側面に第2の端部を有し、第2の端部の2つの棚状突起部は、第1の端部を包囲領域において両側で包囲する、部材、に関する。平坦な材料によって平坦な補強構成要素を両側で囲むことにより、部材は、強い力が結合部に作用した場合であっても、平坦な補強構成要素と材料との結合部の安定性が維持されるという利点を提供する。部材は、部材の表面に対して特に垂直に作用する力に、より良好に耐えることができる。両側で平坦な補強構成要素を囲むこのような部材は、垂直方向に作用する力(例えば、部材の内側若しくは外側からの力、又は部材の対向側に正圧及び負圧がある場合)に対して側面又は方向に関係なく、機械的に等しく安定しており、したがって、力の方向に応じて安定している。
【0006】
本発明の意味での「平坦な」とは、物体が平面状に延在し、その物体の垂直方向の広がりが、その物体の水平方向の広がりと比較して非常に小さいことを意味する。平坦な物体には、水平方向の広がりの端部に1つ以上の狭い側面があり、その狭い側面は、水平方向に延在する上側面及び下側面によって縁取りされる。本発明では、平坦な材料の狭い側面は、平坦な材料の狭い側面の長さにわたって互いに並行に延在する2つの棚状突起部によって形成される。したがって、2つの棚状突起部は、それらの間の平坦な補強構成要素の端部を(例えば、間隙なしに、形状接続式に、かつ/又は材料接続式に)収容することができる。平坦な補強構成要素及び平坦な材料の上側面又は下側面は、1つの平面内又は複数の平面内に広がり、平面の延在部全体若しくは延在部の一部にわたって互いに平行である。その場合、平坦な補強構成要素に加えて平坦な材料もまた、上側面及び下側面が湾曲している区分を含むことができる。水平配置では、部材は、a)平坦な補強構成要素の領域、b)包囲領域、及びc)平坦な材料の基材領域をこの順序で有する。本発明の意味での包囲領域とは、i)重なり領域、すなわち、その領域内で棚状突起部が補強構成要素と表面で重なる領域と、ii)重なり領域に隣接し、重なりが生じない傾斜領域と、から構成される、水平配置からなる。傾斜領域では、平坦な材料は、基材領域の平坦な材料の壁厚よりも大きな壁厚を有する。傾斜領域は、重なり領域と基材領域との間に配置されている。
【0007】
平坦な材料の棚状突起部の壁厚は、重なり領域における材料の壁厚として理解される。重なり領域の外側の材料の壁厚は、単にその領域における平坦な材料の壁厚に相当する。平坦な材料の2つの棚状突起部は、互いに非対称又は対称の構造を有することができ、平坦な補強構成要素の水平方向中心を通る仮想平面は、対称面を形成する。好適には、構造は、対称である。第1の棚状突起部の端面に加えて第2の棚状突起部の端面もまた、平坦な補強構成要素の狭い側面に対して同じ距離を有してもよい。これは、棚状突起部の端面が正確に重なり合うように配置されているか、又は20%~0%若しくは10%~0%のわずかな度合だけ互いにオフセットされていることを意味する。
【0008】
本発明の意味での剛性は、軸剛性、せん断剛性、曲げ剛性、及び/又はねじり剛性である。第1の剛性が第2の剛性よりも高いということは、平坦な補強構成要素の軸剛性、せん断剛性、曲げ剛性及び/又はねじり剛性が、平坦な材料の対応する軸剛性、せん断剛性、曲げ剛性及び/又はねじり剛性よりも高いことを意味する。特に引張剛性(弾性係数)として表される第1の剛性は、特に引張剛性(弾性係数)として表される第2の剛性の少なくとも2倍、2倍~250倍、3倍~200倍、又は20倍~100倍の大きさであり得る。
【0009】
平坦な材料は、包囲領域全体にわたって(断面で、すなわち、材料の表面の広がりに対して横断して)円弧状に延びる。
【0010】
それにより、負荷時に最も強い力が発生する重なり領域において、材料が特に厚く作製されているという利点をもたらす。更に、円弧状に延びることで、材料の壁厚は、側面上の円弧の開始点から材料の基材領域まで、平坦な補強構成要素に接する弧の終点に向かって、最初に最大値まで次第に増加し、次いで再び連続的に減少することができる。したがって、平坦な補強構成要素と平坦な材料との間の急に区切られる移行部が回避され、部材に追加の安定性が与えられ、負荷時に部材が脱落することを回避する。本発明の意味での円弧状とは、移行領域における材料の壁厚の連続する一定の増加/減少、すなわち、実際の円弧形状を意味してもよい。しかし、円弧状とは、複数の直線区分からなる形状であって、移行部は、複数の直線区分に縁部が形成されている、かつ/又は円弧によって形成される、形状を意味してもよい。
【0011】
材料の壁厚は、第1の端部が平坦な補強構成要素の狭い側面を形成する位置で最大であり得る、すなわち、材料の表面が、第1の端部が平坦な補強構成要素の狭い側面を形成する位置で、補強構成要素の対向する表面に対して最大距離を有するということである。一方の棚状突起部又は両方の棚状突起部のそれぞれの材料の壁厚は、この位置で基材厚さの半分以上であり得る。すなわち、全体として、材料の壁厚は、この位置で棚状突起部において基材厚さ以上であり得る。第1の端部が平坦な補強構成要素の狭い側面を形成する、材料の壁厚の位置により、平坦な補強構成要素の狭い側面の囲まれた第1の端部にろう付けを行うことができる材料の表面上の位置、すなわち、平坦な補強構成要素の狭い側面が平坦な材料の第2の端部に接触する点が表されている。
【0012】
それにより、材料の壁厚、又は材料がこの位置で形成する複数の棚状突起部のうちの一方の棚状突起部の壁厚は、平坦な補強構成要素と平坦な材料との間の移行領域で最も大きい。この位置は、負荷時に部材の破断が最も起こりやすい恐れがある位置である。したがって、この位置での材料の壁厚によって、部材の破断が妨げられる。
【0013】
更に、最小壁厚は、基材壁厚、すなわち、包囲領域の外側の材料の壁厚以上であり得る。したがって、この位置での材料の壁厚によって、部材の破断は、特に有利な様式で妨げられる。
【0014】
基材壁厚は、0.8mm超10mm未満、1mm超5mm未満、1.5mm超4.5mm未満、2.0mm超3.5mm未満、2.0mm超3mm未満、又は2.25mm超2.75mm未満であり得る。
【0015】
傾斜領域は、長さが1.5mm超15mm未満、1.5mm超5.0mm未満、2.0mm超4.5mm未満、2.5mm超4.0mm未満、又は3.00mm超3.50mm未満であり得る。傾斜領域の長さは、円弧の開始点(材料の基材領域に向かう側)と、円弧において材料の壁厚が最大である位置のうち、基材領域において平坦な材料の表面の仮想延長部上でろう付けが行われる点と、の間の距離として定義されている。
【0016】
重なり領域は、長さが1.5mm超15mm未満、5.0mm超15.0mm未満、7.0mm超12.0mm未満、8.0mm超11.0mm未満、又は9.00mm超10.00mm未満であり得る。
【0017】
最大壁厚は、基材壁厚の0.5倍~2倍、1倍~2倍、1倍~1.75倍、1倍~1.5倍、又は1倍~1.25倍であり得る。
【0018】
補強構成要素と材料との間の重なり領域の長さは、基材壁厚の0.5倍~10倍、1.5倍~8倍、1.7倍~6倍、又は2倍~4倍であり得る。
【0019】
重なり領域の長さと材料との間のこの比率は、部材の特に高い安定性を保証することが明らかとなった。少なくとも1つの棚状突起部の端面には、凹部(すなわち、切り欠き部又はくぼみ)を設けることができる。
【0020】
これらの凹部は、部材の製造に使用される金型又はダイに設けられたホールドダウン装置によって製造することができる。ホールドダウン装置は、流れ込む(プラスチック)溶融物による補強構成要素の変位又は「断裂」(例えば、オルガノシートの場合は繊維層間の結合の緩み)を低減又は回避し、平坦な補強構成要素をメルトフロー又はプレスされた材料に対して安定化することができ、その結果、メルトフローは、理想的には壁厚の中央に保持される(又は、メルトフローは、壁部の縁部領域に片側で押し付けられない)。
【0021】
棚状突起部の端面とは、平坦な補強構成要素に対向し、重なり領域にある棚状突起部の側面を意味する。したがって、棚状突起部の端面の凹部は、80°~100°、好適には90°の角度で棚状突起部内に突出している。
【0022】
両方の棚状突起部には、凹部を設けることができる。
【0023】
これは、製造プロセス中に、メルトフロー又はプレスされた材料に対して平坦な補強構成要素の最大限の対称的な安定化が行われるという利点を提供する。
【0024】
第1の棚状突起部の凹部は、第2の棚状突起部の凹部に対して対向して配置することができる。
【0025】
したがって、2つの棚状突起部のそれぞれの凹部は、直接重なり合って位置する。これは、製造プロセス中に、メルトフロー又はプレスされた材料に対して平坦な補強構成要素の非常に対称的な安定化が行われるという利点を提供する。
【0026】
凹部は、2つの異なる長さを有してもよく、2つの異なる長さを有する凹部は、交互に配置されてもよい。
【0027】
特に、棚状突起部のうちの1つに、ある長さを有する第1の群の凹部及び第2の長さを有する第2の群の凹部が存在してもよく、第1の長さは、第2の長さよりも長い。
【0028】
第1の棚状突起部に加えて第2の棚状突起部にも、この第1の群の凹部及びこの第2の群の凹部が存在してもよい。
【0029】
第1の棚状突起部の第2の群の凹部の凹部は、第2の棚状突起部の第1の群の凹部に対向してもよく、第1の棚状突起部の第1の群の凹部の凹部は、第2の棚状突起部の第2の群の凹部に対向してもよい。それにより、凹部の長さは、1つの棚状突起部の範囲内に加えて棚状突起部間でも互い違いになる。
【0030】
この配置には、例えば、流体容器内で使用される場合、完成した部材が流体に対して特に液密性であるという利点がある。更に、視認可能なウェルドラインが回避される。
【0031】
あるいは、第1の棚状突起部の第2の群の凹部の凹部は、第2の棚状突起部の第2の群の凹部に対向してもよく、第1の棚状突起部の第1の群の凹部の凹部は、第2の棚状突起部の第1の群の凹部に対向してもよい。それにより、凹部の長さは、それぞれの棚状突起部の範囲内でのみ互い違いになる。
【0032】
これは、流体に対する改善された封止を達成するという利点を有することができ、また、この実施形態を製造するために必要とされるより単純な金型のために、製造プロセスは、比較的単純である。
【0033】
凹部は、重なり領域の長さの100%~25%の長さを有してもよい。好適には、凹部は、重なり領域の長さの95%~70%の長さで設けられてもよい、かつ/又は、凹部は、重なり領域の長さの25%~50%の長さで設けられてもよい(特に、これらの異なる長さは、異なる長さを有する第2の群の凹部が設けられている場合に、組み合わせることができる)。
【0034】
更に、一方の棚状突起部の範囲内又は両方の棚状突起部の範囲内の凹部は、互いにほぼ等距離であってもよい(距離の平均値を中心として、全ての凹部の間の距離の最大25%の偏差をほぼ意味する)。特に、2つの棚状突起部における凹部間の距離は、ほぼ同じであってもよい。ただし、設計仕様に応じて、一方又は両方の棚状突起部の範囲内の凹部間の距離は、それぞれの棚状突起部の少なくとも部分領域(例えば、最大30%)で自由に調整してもよいか、可変であることもまた開示される。
【0035】
等距離であることによって、負荷時の圧力分布は、更に改善される。
【0036】
補強構成要素は、プラスチック、熱可塑性又は熱硬化性の種類の繊維複合体、特に繊維強化プラスチック(製の板材)、金属板又は木製板であり得る。
【0037】
繊維強化プラスチックは、マトリックス及び強化繊維からなる。
【0038】
マトリックスは、熱可塑性マトリックス(ポリエーテルエーテルケトン、PEEK;ポリフェニレンスルフィド、PPS;ポリスルホン、PSU;ポリエーテルイミド、PEI;ポリテトラフルオロエテン、PTFE;ポリアミド、例えば、PA6、PA66、PA612、若しくはポリプタルアミド、PPA;ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、PE、若しくはポリプロピレン、PP;及び/若しくはポリカーボネート、PC)、又は熱硬化性マトリックス(エポキシ樹脂、EP、例えば、2%;不飽和ポリエチレン樹脂、UP、例えば、8%;ビニルエステル樹脂、VE;フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、PF、38%;フタル酸ジアリル樹脂、DAP;メタクリレート樹脂、MMA;ポリウレタン、PUR;及び/若しくはアミノ樹脂)であり得る。
【0039】
強化繊維は、無機の非金属強化繊維(バサルト繊維、ボロン繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、シリカ繊維、炭素繊維及び/若しくは石英繊維)、有機強化繊維(アラミド繊維、PBO繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維、及び/若しくはポリメチルメタクリレート繊維)、並びに/又は金属強化繊維(鋼繊維)であり得る。
【0040】
強化繊維は、強化繊維の長さに関して、短繊維(0.1mm~1mm)、長繊維(1mm~50mm)、又はエンドレス繊維(50mm超)であり得る。エンドレス繊維は、それが与える非常に高い剛性のために好ましい。強化繊維の配列を織るか又は敷設することができる。強化繊維の配列は、単層又は複層であり得る。
【0041】
補強構成要素は、平坦な材料のプラスチックと相溶性のあるプラスチックからなっていてもよく、その結果、補強構成要素と平坦な材料との間に材料接続式の結合が生じ得る。更に、補強構成要素は、平坦な材料のプラスチックと相溶性がある材料からなってもよいが、少なくとも補強構成要素が平坦な材料と接触する箇所で、又は全体がプラスチックでコーティングされてもよく、その結果、補強構成要素と平坦な材料との間に材料接続式の結合が更に生じ得る(この場合、コーティングされた補強構成要素の剛性は、コーティングされていない補強構成要素の剛性に対応する)。加えて、形状接続もまた生じ得る。
【0042】
補強構成要素は、平坦な材料のプラスチックと相溶性がない材料からなってもよく、その結果、補強構成要素と平坦な材料との間に形状接続式の結合が生じ得る。
【0043】
(平坦な)材料は、射出成形材料、特に熱可塑性の種類の射出成形材料であり得る。熱可塑性の種類の射出成形材料は、ポリオレフィン(ポリプロピレン、PP、ポリエチレン、PE)、プレキシガラス、PMMA、ポリカーボネート、PC、ポリスチレン、PS及びそのコポリマー(例えば、ABS=アクリロニトリルブタジエンスチレン)、ポリアミド、PA、又はポリオキシメチレンであり得る。
【0044】
材料は、熱可塑性又は熱硬化性の種類の衝撃押出材料であり得る。熱可塑性衝撃押出材料は、長繊維熱可塑性プラスチック(ガラス繊維又は炭素繊維を含むLFT)、直接成形長繊維熱可塑性プラスチック(D-LFT)、ガラスマット熱可塑性プラスチック、GMT、又は炭素繊維強化ポリマー、CFRPであり得る。熱硬化性衝撃押出材料は、シート成形コンパウンド(ガラス繊維又は炭素繊維を含むSMC)、直接シート成形コンパウンド、D-SMC、又はバルク成形コンパウンド、BMCであり得る。材料及び補強構成要素の選択は、所望の使用分野に左右され、当業者は、使用分野に適合する材料及び補強構成要素を選択することができる。唯一重要なことは、補強構成要素の剛性が材料の剛性よりも高いことである。
【0045】
平坦な材料の棚状突起部は、補強構成要素の第1の狭い側面全体を含む縁部を、完全に囲んでもよい。あるいは、平坦な材料は、この縁部を部分的にのみ、すなわち、例えば、補強構成要素の一方の端面のみを囲んでもよく、補強構成要素コンポーネントの縁部/狭い側面の領域は、覆われていないままである。
【0046】
したがって、補強構成要素の周縁部全体は、平坦な材料によって安定化される。
【0047】
更に、本発明は、フロントエンドモジュールキャリア、座席構造体、ドアシステム、車両アンダーボディ構造体、後部侵入防止装置、燃料タンクハウジング、バッテリシステム若しくはバッテリ(例えば、セルモジュールエンドプレート)又は上記の部材を含むバッテリハウジング用の平坦な(構造)部材に関する。
【0048】
特に、フロントエンドモジュールキャリア、座席構造体、ドアシステム、車両アンダーボディ構造体、後部侵入防止装置、燃料タンクハウジング、又はバッテリハウジングは、特に衝突負荷又は衝撃負荷の場合に、高い機械的負荷にさらされる可能性がある。したがって、本明細書に記載の部材は、これらの構成要素の設計に特に適している。
【0049】
本発明はまた、
a.補強構成要素を少なくとも2プレート構成の金型に準備することと、
b.金型に材料を投入することと、
c.金型内での射出成形又は衝撃押出により部材を成形することと、
d.得られた部材を取り出すことと、を含む、上述した部材を製造するための方法に関する。
【0050】
金型とは、本明細書では、平坦な補強構成要素を収容することができ、閉じた状態で、材料をチャネルを介して注入(射出成形)することができる、又は材料をプレス(衝撃押出)することができるキャビティを補強構成要素の周りに設けている、あらゆる適切な金型又はダイであると理解される。射出成形では、部材の取り出しは、材料(3)の凝固点に達した後に実施することができる。キャビティは、上記の部材によって定義された形状を材料に与えることができるように形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図3】凹部が視認可能な、本発明による部材の平坦な材料の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0052】
以下の説明では、同じ参照符号は、同じ1つの構成要素又は同じ複数の構成要素を示しているため、ある図を参照して行われた部材の説明は、他の図にも適用されるため、繰り返しの説明が回避される。更に、ある実施形態に関連して説明されてきた個々の特徴は、他の実施形態でも別個に使用することができる。
【0053】
【0054】
部材1は、平坦に作製されている、高い剛性を有する補強構成要素2を含む。本明細書では、熱可塑性又は熱硬化性の種類の繊維複合材料が可能であるが、金属板及び他の板材もまた可能である。
【0055】
補強構成要素2は、第1の端部4(
図1の右側に示されている)において、上側面5b及び下側面5cによって限定される狭い側面5aを有する。補強構成要素の反対側の端部は、図面には示されていない。
【0056】
この補強構成要素2は、長さuの包囲領域Uにおいて、剛性の低い(射出成形)材料3で両側がオーバーモールドされている。この材料3も同様に最大限平坦に作製されている。両側のオーバーモールドにより、材料3は、第2の端部6(
図1で材料3の左側)に、材料3からなる2つの棚状突起部8、9を形成し、棚状突起部8、9は、補強構成要素2に重なり領域Lで(直接、すなわち、空洞形成なしで)接している。材料3の反対側の縁部は、図面には示されていない。補強構成要素2がない2つの棚状突起部8、9を含む材料3の図示が
図3にある。
図2及び
図3において、2つの棚状突起部は、材料3の狭い側面に重なり合うように配置され、補強構成要素2上にほぼ等間隔で突出していることが分かる。包囲領域Uは、基材領域Aと比較して傾斜領域Rにおいて材料3が、基材領域Aから開始して最初に厚くなるが、補強プレートとはまだ重ならない領域と、材料3が補強プレートと重なっている重なり領域Lと、を含む。
【0057】
平坦な材料3は、
図1に示すように、包囲領域U全体にわたって(断面で、すなわち、材料3の表面の広がりに対して横断して)円弧状に延びてもよい。
【0058】
本発明の意味での円弧状とは、包囲領域Uにおける材料3の壁厚の連続する一定の増加/減少、すなわち、実際の円弧形状を意味してもよい。しかし、円弧状とは、
図1に示すように、複数の直線区分からなる形状であって、移行部は、複数の直線区分の間で角度が付いている、かつ/又は円弧によって形成される、形状を意味してもよい。
【0059】
特に、材料3又は棚状突起部8、9の最大壁厚h1、h2は、補強構成要素2と材料3との境界面の上の領域にあり得る。したがって、材料3の壁厚h1、h2は、第1の端部4が平坦な補強構成要素2の狭い側面5aを形成する位置で最大になり得る。第1の端部4が平坦な補強構成要素2の狭い側面5aを形成するこの位置では、材料3の表面(上側面7b又は下側面7c)は、補強構成要素2の対向する表面(上側面5b又は下側面5c)に対して最大距離を有する。
【0060】
それにより、材料3の最大壁厚h1、h2、又は材料3がこの位置で形成する複数の棚状突起部8、9のうちの一方の棚状突起部8、9の最大壁厚h1、h2は、平坦な補強構成要素2と平坦な材料3との間の移行領域で最大である。この位置は、負荷時に部材1の破断が最も起こりやすい恐れがある位置である。したがって、この位置での材料3の壁厚によって、部材1の破断が効果的に妨げられる。
【0061】
更に、最大壁厚h1、h2は、基材壁厚の1/2a以上である、すなわち、包囲領域Uの外側の材料3の壁厚の1/2a以上である。
【0062】
したがって、この位置での材料3の壁厚h1、h2によって、部材1の破断は、特に有利な様式で妨げられる。更にそれによって、壁厚が移行領域、すなわち、補強構成要素の狭い側面5aが平坦な材料3と接触する領域においてもまた、少なくとも基材領域Aの壁厚の1/2aに相当し、したがってこの領域での強度が、部材1のそれ以外の部分で見出される強度にほぼ相当することが保証される。
【0063】
重なり領域Lの長さは、例えば、基材壁厚aの2倍~4倍である。
【0064】
重なり領域Lの長さと材料3との間のこの比率は、同時に材料3の過剰な使用を回避しながら、部材1の特に高い安定性を保証することが明らかとなった。
【0065】
図2は、本発明による部材1を上面図で示し、
図3は、
図2からの材料3の斜視詳細図を示している。
【0066】
図2及び
図3に示すように、重なり領域からの棚状突起部8、9の端面11に凹部12、13(すなわち、切り欠き、くぼみ)を設けることができる。これらの凹部12、13は、部材1の製造に使用される金型又はダイに設けられたホールドダウン装置によって製造することができる。ホールドダウン装置は、流れ込む(プラスチック)溶融物、プレスされた材料による補強構成要素2の変位又は「断裂」(例えば、オルガノシートの場合は繊維層間の結合の緩み)を低減又は回避し、平坦な補強構成要素2をメルトフローに対して安定化することができ、その結果、メルトフローは、理想的には材料の壁厚の中央に保持される(又は、メルトフローは、壁部の縁部領域に片側で押し付けられない)。
【0067】
図3では、両方の棚状突起部8、9に凹部12、13が設けられている。
【0068】
これは、製造プロセス中に、メルトフローに対して平坦な補強構成要素2の最大限の対称的な安定化が行われるという利点を提供する。
【0069】
図3に例示的に示すように、第1の棚状突起部8の凹部12、13は、第2の棚状突起部9の凹部12、13に対して対向して配置することができる。
【0070】
したがって、2つの棚状突起部8、9のそれぞれの凹部12、13は、直接重なり合って位置する。
【0071】
これは、製造プロセス中に、メルトフロー又はプレスされた材料に対して平坦な補強構成要素2の最大限の対称的な安定化が行われるという利点を提供する。
【0072】
図2及び
図3に示すように、凹部12、13は、2つの異なる長さを有してもよく、2つの異なる長さを有する凹部12、13は、交互に配置されてもよい。この場合、
図3の左右に配置された凹部の場合のように、上側棚状突起部8における長さが長い凹部13は、下側にある棚状突起部9における長さが短い凹部12に対向してもよい。同様に、
図3の中央に配置された凹部12の場合のように、上側棚状突起部8における長さが短い凹部12は、下側にある棚状突起部9における長さが長い凹部13に対向してもよい。この配置には、例えば、流体容器内で使用される場合、完成した部材1が流体に対して特に液密性であるという利点がある。更に、視認可能なウェルドラインが回避される。
【0073】
図2に示すように、材料3は、平坦な補強構成要素2の狭い側面5aを完全に囲んでもよい。しかし、材料3が、平坦な補強構成要素2の1つ以上の部分領域にのみ取り付けられていることもまた考えられる。
【符号の説明】
【0074】
1 部材
2 (平坦な)補強構成要素
3 (平坦な)材料
4 平坦な補強構成要素の第1の端部
5a 平坦な補強構成要素の狭い側面
5b 平坦な補強構成要素の上側面
5c 平坦な補強構成要素の下側面
6 平坦な補強構成要素の第2の端部
7a 平坦な材料の狭い側面
7b 平坦な材料の上側面
7c 平坦な材料の下側面
8 第1の棚状突起部
9 第2の棚状突起部
10 材料の最大壁厚の位置
11 重なり領域の端面
12 凹部、短い
13 凹部、長い
U、u 包囲領域、包囲領域の長さ
R、r 傾斜領域
A、a 基材領域、基材厚さ
L、l 重なり領域、重なり領域の長さ
h1 第1の棚状突起部の壁厚
h2 第2の棚状突起部の壁厚