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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】見守り監視装置および見守り監視方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20240708BHJP
   H04N 23/611 20230101ALI20240708BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20240708BHJP
【FI】
H04N7/18 D
H04N7/18 E
H04N23/611
H04N23/60 500
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022530420
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(86)【国際出願番号】 JP2020022794
(87)【国際公開番号】W WO2021250805
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鹿庭 耕治
(72)【発明者】
【氏名】奥 万寿男
【審査官】秦野 孝一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-188771(JP,A)
【文献】特開2014-197263(JP,A)
【文献】特開2012-212967(JP,A)
【文献】特開2017-037385(JP,A)
【文献】特開2006-287287(JP,A)
【文献】国際公開第2018/092378(WO,A1)
【文献】特開2009-225398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
H04N 23/00-23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被見守り人の居る見守り空間を撮影する監視カメラと、
前記監視カメラで取得した撮影画像から人物を検出し、検出した人物を顔部および身体部位に区分する人物検出部と、
前記人物検出部が区分した顔部を除く身体部位に対して加工描画処理を行う加工描画部と、
前記加工描画処理を行った画像と前記撮影画像との合成画像を作成する画像合成部と、
前記合成画像を見守り人の表示端末に送信するネットワーク部と、
を備え、
被見守り人の顔情報を登録した顔情報登録データを有し、
前記人物検出部は、検出した人物の顔情報を前記顔情報登録データの登録データと照合し、検出した人物が登録されているかどうかを判定し、
判定の結果、検出した人物が登録されている場合には、その人物について前記加工描画部による加工描画処理を行い、検出した人物が登録されていない場合には、その人物について前記加工描画部による加工描画処理を行わないことを特徴とする見守り監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の見守り監視装置において、
見守り監視の異常処理として、アラーム情報を作成して前記表示端末へ送信する処理、または前記監視カメラの撮影画像を加工描画処理を行わずに前記表示端末へ送信する処理を行うことを特徴とする見守り監視装置。
【請求項3】
請求項2に記載の見守り監視装置において、
不審者の外観状況を不審者パターンとして登録した不審者パターン登録データを有し、
前記人物検出部は、検出した人物を前記不審者パターン登録データと照合し、不審者パターンに該当すると判定した場合、前記異常処理を実行することを特徴とする見守り監視装置。
【請求項4】
請求項2に記載の見守り監視装置において、
前記人物検出部は、検出した人物が被見守り人以外の意図しない人物と判定した場合、あるいは、前記人物検出部で検出した人物の数が被見守り人として登録された人物の数よりも多い場合、前記異常処理を実行することを特徴とする見守り監視装置。
【請求項5】
請求項1に記載の見守り監視装置において、
前記監視カメラを複数台設置して複数の撮影画像を取得する構成であって、
前記人物検出部により同一の人物が複数の撮影画像に含まれると判定した場合、前記加工描画部は、同一の人物に対しては複数の撮影画像間で共通の加工描画処理を行うことを特徴とする見守り監視装置。
【請求項6】
見守り空間の外部のネットワーク上に配置された管理装置により見守りを行う見守り監視装置において、
前記管理装置は、
被見守り人の居る見守り空間を撮影する監視カメラからの撮影画像を受信するネットワーク部と、
被見守り人の顔情報を登録した顔情報登録データと、
前記監視カメラで取得した撮影画像から人物を検出し、検出した人物を顔部および身体部位に区分する人物検出部と、
前記人物検出部が区分した顔部を除く身体部位に対して加工描画処理を行う加工描画部と、
前記加工描画処理を行った画像と撮影画像との合成画像を作成する画像合成部と、を備え、
前記合成画像を前記ネットワーク部を介して見守り人の表示端末に送信するものであって、
前記人物検出部は、検出した人物の顔情報を前記顔情報登録データの登録データと照合し、検出した人物が登録されているかどうかを判定し、
判定の結果、検出した人物が登録されている場合には、その人物について前記加工描画部による加工描画処理を行い、検出した人物が登録されていない場合には、その人物について前記加工描画部による加工描画処理を行わないことを特徴とする見守り監視装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の見守り監視装置において、
前記加工描画部は、顔部を除く身体部位に対して色付け処理を行うことを特徴とする見守り監視装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の見守り監視装置において、
前記監視カメラは、さらに、撮影対象までの距離を測定する機能を有し、
前記加工描画部は、前記監視カメラが取得した測距データに応じて、顔部を除く身体部位に対して濃淡処理を行うことを特徴とする見守り監視装置。
【請求項9】
被見守り人の居る見守り空間の撮影画像を取得する画像取得ステップと、
前記撮影画像から人物を検出し、検出した人物を顔部および身体部位に区分する人物検出ステップと、
前記人物検出ステップで区分した顔部を除く身体部位に対して加工描画処理を行う加工描画ステップと、
前記加工描画処理を行った画像と前記撮影画像との合成画像を作成する画像合成ステップと、
前記合成画像を見守り人の表示端末に送信する送信ステップと、
を備え、
予め被見守り人の顔情報を顔情報登録データに登録するステップを有し、
前記人物検出ステップでは、検出した人物の顔情報を前記顔情報登録データと照合し、検出した人物が登録されているかどうかを判定し、
判定の結果、検出した人物が登録されている場合には、その人物について前記加工描画ステップによる加工描画処理を行い、検出した人物が登録されていない場合には、その人物について前記加工描画ステップによる加工描画処理を行わないことを特徴とする見守り監視方法。
【請求項10】
請求項9に記載の見守り監視方法において、
予め不審者の外観状況を不審者パターンとして不審者パターン登録データに登録するステップと、
アラーム情報を作成して前記表示端末へ送信する処理、または前記撮影画像を加工描画処理を行わずに前記表示端末へ送信する処理を行う異常処理ステップとを有し、
前記人物検出ステップでは、検出した人物を前記不審者パターン登録データと照合し、不審者パターンに該当すると判定した場合、前記異常処理ステップを実行することを特徴とする見守り監視方法。
【請求項11】
請求項9に記載の見守り監視方法において、
前記画像取得ステップでは、前記見守り空間に対する複数の撮影画像を取得し、
前記人物検出ステップにより同一の人物が複数の撮影画像に含まれると判定した場合、前記加工描画ステップでは、同一の人物に対しては複数の撮影画像間で共通の加工描画処理を行うことを特徴とする見守り監視方法。
【請求項12】
請求項9ないし11のいずれかに記載の見守り監視方法において、
前記加工描画ステップでは、顔部を除く身体部位に対する色付け処理と、撮影対象までの測距データに応じて身体部位に対する濃淡処理のいずれか、もしくは両方の処理を行うことを特徴とする見守り監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視カメラで人物を見守る見守り監視装置および見守り監視方法に関し、見守り対象者(被見守り人)の状況把握とプライバシー保護を両立させる見守り監視技術に係る。
【背景技術】
【0002】
見守り監視装置においては、被見守り人のプライバシー保護のために、監視カメラの撮影画像全体、あるいは人の顔を含む身体部分に対してモザイク処理や摺りガラス処理等の抽象化を行うことが行われるが、被見守り人の状況を把握しにくいという課題がある。
【0003】
これに関し特許文献1には、人物の動作を検知するセンサを備え、センサにより人物の動作が検知されると、撮像した画像データに暈し処理を施して出力し、所定時間人物の動きが検知されないと、撮像した画像データを出力する見守り監視システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-18456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法では、プライバシー保護が考慮されているとしても、人物が動いている時には暈し処理が施されるため、人物の状況を正確に把握しにくくなる。特に、人物の顔を含めて暈し処理を行っているため、その人物が見守り対象の人物かどうかさえ判断しにくくなる。見守り対象者についてはその顔まで隠す必要はなく、むしろ顔を見ることでその人の健康状態等を知ることも可能となる。また特許文献1では、センサにより人物の動作の有無を検知してから画像出力を制御するので、画像出力まで所定の時間を要し、見守りを行う人(見守り人)が見守りを開始しようとした時に、被見守り人の状況を瞬時に把握することができないといった課題がある。
【0006】
本発明は上記の点を鑑みてなされたものであり、その目的は、被見守り人の状況把握とプライバシー保護を両立させ、見守り人が見守りを開始あるいは再開しようとした時に、被見守り人の状況を瞬時に把握できる見守り監視装置および見守り監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の見守り監視装置は、被見守り人の居る見守り空間を撮影する監視カメラと、監視カメラで取得した撮影画像から人物を検出し、検出した人物を顔部および身体部位に区分する人物検出部と、人物検出部が区分した顔部を除く身体部位に対して加工描画処理を行う加工描画部と、加工描画処理を行った画像と撮影画像との合成画像を作成する画像合成部と、合成画像を見守り人の表示端末に送信するネットワーク部と、を備える。
【0008】
また本発明の見守り監視方法は、被見守り人の居る見守り空間の撮影画像を取得する画像取得ステップと、撮影画像から人物を検出し、検出した人物を顔部および身体部位に区分する人物検出ステップと、人物検出ステップで区分した顔部を除く身体部位に対して加工描画処理を行う加工描画ステップと、加工描画処理を行った画像と撮影画像との合成画像を作成する画像合成ステップと、合成画像を見守り人の表示端末に送信する送信ステップと、を備える
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被見守り人の状況把握とプライバシー保護を両立させ、見守り人が見守りを開始する、あるいは再開しようとした時に、被見守り人の状況を瞬時に把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1に係る監視システムの全体構成を示す図。
図2A】監視カメラの構成例を示すブロック図。
図2B】監視カメラの構成例(測距機能付き)を示すブロック図。
図3】ホームサーバの構成例を示すブロック図。
図4A】加工描画部による加工描画処理(色付け処理)の一例を示す図。
図4B】加工描画部による加工描画処理(濃淡処理)の一例を示す図。
図5】見守り監視処理のフローチャートを示す図。
図6】実施例2に係る監視システムの全体構成を示す図。
図7】ホームサーバの構成例を示すブロック図。
図8】表示端末に表示される監視画像の例を示す図。
図9】見守り監視処理のフローチャートを示す図。
図10】実施例3におけるホームサーバの構成例を示すブロック図。
図11】表示端末に表示される監視画像の例を示す図。
図12】見守り監視処理のフローチャートを示す図。
図13A】実施例4に係るサーバ一体型監視カメラの構成例を示すブロック図。
図13B】サーバ一体型監視カメラの構成例(測距機能付き)を示すブロック図。
図14】実施例5に係る監視システムの全体構成を示す図。
図15A】表示される監視画像(監視カメラ101)の例を示す図。
図15B】表示される監視画像(監視カメラ102)の例を示す図。
図16】見守り監視処理のフローチャートを示す図。
図17】実施例6に係る監視システムの全体構成を示す図。
図18】サーバの構成例を示すブロック図。
図19】見守り監視処理のフローチャートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0012】
実施例1では、見守り監視装置の基本構成と基本動作(人物検出、加工描画処理)について説明する。
【0013】
図1は、実施例1に係る監視システムの全体構成を示す図である。監視システムは見守り監視装置として、監視カメラ1とホームサーバ2を備え、被見守り人3が存在する見守り空間4を監視する。ホームサーバ2はネットワーク5とアクセスポイント6を介して、見守り人7の所持する表示端末8に接続される。監視カメラ1は見守り空間4の撮影を行う。監視カメラ1で撮影した画像データは、通信信号1a、2aによって、ホームサーバ2に送信される。ホームサーバ2では画像データに対し後述する加工描画処理を施し、ネットワーク5、アクセスポイント6を経由して、通信信号6a、8aにて表示端末8へ送信する。表示端末8では加工描画処理された画像が表示され、見守り人7はこれを視認することで被見守り人3の状況を把握することができる。
【0014】
図2A図2Bは、監視カメラ1の2つの構成例を示すブロック図である。
図2Aに示す監視カメラ1は、撮影機能のみを有する構成の場合で、レンズ部10、撮像素子11、信号処理部12、ネットワーク部13、コントローラ14を有する。レンズ部10で集光された撮影対象は、撮像素子11上で結像し、信号処理部12で画像データに変換され、ネットワーク部13から通信信号1aでホームサーバ2に向けて送信される。コントローラ14は、これらの動作全体を制御する。
【0015】
図2Bに示す監視カメラ1は、図2Aの撮影機能の他に測距機能を有している。そのため、照射部16、受光部17、赤外光発生部18、TOF(Time of Flight)検出部19を追加している。赤外光発生部18で発生した赤外光は照射部16から外部(見守り空間4)に照射する。受光部17では、照射した赤外光が撮影対象(被見守り人3)で反射された反射光を受光する。TOF検出部19は、照射光と反射光との時間差から、監視カメラから撮影対象までの距離を測定し、測距データを得る。なお測距機能を実現する手段としては、特定の2次元パターンを有する赤外光を照射し、受光した赤外光の2次元パターンの歪から距離を計算する方式や、赤外光に替えてレーザ光を用いる方式など、TOF以外の方式であってもよい。
【0016】
図3は、ホームサーバ2の構成例を示すブロック図である。ホームサーバ2は、ネットワーク部21、CPU22、RAM23、ストレージ部24を備える。ストレージ部24には、処理プログラムやデータとして、基本プログラム24a、見守り監視プログラム24bを有する。処理プログラムやデータはRAM23に展開して、CPU22で実行することで見守り監視動作の各種の制御を行う。ストレージ部24はフラッシュROMなどの半導体で構成されるもの、ハードディスクと組み合わせて構成されるものなど、その構成方法が限定されるものではない。ネットワーク部21は、監視カメラ1から撮影画像データを受信し、表示端末8に表示用の画像データを送信する。
【0017】
ストレージ部24には見守り監視プログラム24bが格納されており、CPU22がこれを実行することで、人物検出部201や加工描画部202や画像合成部203などの機能部を実現する。人物検出部201はカメラの撮影画像から人物(被見守り人)を検出するとともに、検出した人物領域を顔や胴体などの身体部位に区分する処理を行う。また加工描画部202は、被見守り人のプライバシーを保護するため、人物の各身体部位に対する色付け処理や、人物の各部分までの距離に応じて濃淡処理を施す。画像合成部203は、撮影画像と加工描画処理を施した画像とを合成し、合成後の画像は監視画像としてネットワーク部21を介して見守り人7の表示端末8へ送信される。このように本実施例のホームサーバ2は、カメラ撮影画像に対して画像処理を施して見守り人へ提供する機能を有し、「管理装置」と呼ぶことができる。
【0018】
図4A図4Bは、加工描画部202による加工描画処理の一例を示す図である。
図4Aは、人物の身体部位に色付け処理を行った例である。人物検出部201は撮影画像から人物30を検出すると、これを顔31、胴体32、手33、足34などの身体部位に区分する。そして加工描画部202は、顔31以外の部位32,33,34にそれぞれ異なる色を付与している(ここでは色の違いをパターンで表記している)。
【0019】
図4Bは、監視カメラ1が図2Bの構成(測距機能付き)の場合に、測距データに応じて身体部位に濃淡処理を行った例である。濃淡処理は、顔31以外の部位に対し、画素単位に、あるいは複数画素単位に行い、距離の近い画素は明るく、距離の遠い画素は暗くする処理である。濃淡処理は、図4Aで付与した色付け処理の後これと組み合わせて行うが、色付け処理を行わず、濃淡処理単独としてもよい。
【0020】
上記の加工描画処理が施された監視画像は、撮影画像と合成され、表示端末8に送信されて表示される。その結果見守り人7は、人物30の身体部の細部詳細は認識できないが、身体部の動きは分かり易くなる。特に濃淡処理により、前後の位置関係を濃淡で表現でき、動きの把握が容易になる。
【0021】
本実施例の加工描画処理は、人物30の顔部に対しては行わない。このため、顔の表情による状況把握は何ら支障なく行える。そして、身体部位ごとの描画を行っているため、人物の挙動を把握し易くなるという効果がある。
【0022】
なお、人物(被見守り人)が複数いる場合には、被見守り人毎に付与する色を異ならせ、被見守り人を区別しやすいようにしてもよい。また、被見守り人の顔の向きによっては、監視カメラの撮影画像内に被見守り人の顔が検出されず、頭部のみが検出される場合がある。この場合においても、被見守り人のプライバシー保護を優先させて、上記の処理を行うのが良い。
【0023】
図5は、見守り監視処理のフローチャートを示す図である。以下の処理は、ホームサーバ2のCPU22が見守り監視プログラム24bを実行することで実現する。
【0024】
S100で処理を開始し、S101で見守り監視プログラムにログインする。ログインにより、ホームサーバ2と監視カメラ1とを紐付ける。S102で監視カメラ1からネットワーク部21を介して撮影画像データを受信する。なお、図2Bに示す監視カメラ1を使用する場合には、撮影画像データとともに測距データを受信する。
【0025】
S103では、人物検出部201により、撮影画像データから人物を検出する。さらにS104では、人物検出部201により、検出した人物の領域を、顔、胴体、手、足、などの身体部位に区分する。S106では、検出した全ての人物について身体部位の区分が終了したかどうかを判定する。未処理の人物があればS104に戻り繰り返し実行する。
【0026】
S107では、加工描画部202により、身体部位に対して異なる色データを付与する。さらにS108では、画像データとともに測距データがある場合には、測距データに応じで濃淡データを付与する。S109では、付与された色や濃淡のデータに従い、画像データの加工描画処理を行う。S110では、全ての身体部位に対して加工描画処理を終了したかどうかを判定する。またS111では、全ての人物に対して加工描画処理を終了したかどうかを判定する。未処理の身体部位または人物があれば、S107に戻り繰り返し実行する。
【0027】
S112では、加工描画処理した画像データを、撮影画像データと合成する。S113では、合成した画像データを、ネットワーク部21によりネットワーク5を介して表示端末8に向けて送信する。
【0028】
S114では、ログオフ等により監視処理の終了が指示されている場合には、S115で処理を終了する。終了が指示されていない場合には、S102に戻り監視処理を継続する。
【0029】
上記したように、本実施例の加工描画処理は、人物の顔部に対しては行わず、顔部以外の身体部位に対して行う。見守り監視は、例えば、老親が自宅にいる状況を見守る場合や、保育所で園児や保母の様子を見守る場合などのように、見守り人にとって被見守り人は予め意図された人物であり、被見守り人の顔部画像をそのまま表示するのはプライバシーの問題にはならない場合が多い。
【0030】
一方、本実施例で加工描画処理を行うことは、被見守り人の身体部分の詳細状況を隠すことが目的であり、例えば着替えや風呂上がりの時のように、被見守り人がラフな格好でいる状況がそのまま見られることがなくなる。また、見守り人にとっても必要以上に被見守り人、特に老親のプライバシーを見ることを抑制することができる。さらに、全身が写った画像データが表示端末から漏洩することを防止することができる。これにより被見守り人は、プライバシーのために生活や活動のスタイルを意識することなく、見守り監視を受けることができる。また、本実施例の加工描画処理では、被見守り人の動き等に関わらず同一様式の処理画像を表示させることができる。
【0031】
以上のように、実施例1によれば、顔の表情や身体部位の動きによって被見守り人の状況把握ができるとともに、被見守り人の生活スタイルをあいまいにさせるプライバシー保護とを両立させることができる。また、被見守り人の状況にかかわらず同一様式の見守り画像を提供しており、見守り人が見守りを開始する、あるいは再開しようとした時でも、瞬時に見守り状況を把握可能であるという効果がある。
【実施例2】
【0032】
実施例2では、見守り空間に複数の人物が存在し、それぞれの人物が被見守り人かどうかを判定して各描画処理を行う場合について説明する。
【0033】
図6は、実施例2に係る監視システムの全体構成を示す図である。見守り空間4には、複数の人物3a~3cが存在する例を示す。実施例1(図1)に示した見守り監視装置と同一機能を有する要素には同一の符号を付与しており、重複する説明を省略する。
【0034】
図7は、実施例2におけるホームサーバ2の構成例を示すブロック図である。実施例1(図3)のホームサーバ2の構成と比較し、ストレージ部24は、基本プログラム24a、見守り監視プログラム24bに加えて、顔情報登録データ24cを含む。顔情報登録データ24cは、見守り対象である被見守り人の顔情報を予め登録したものである。
【0035】
人物検出部201は検出した人物の顔情報を、顔情報登録データ24cの登録データと照合し、対象人物が登録されているかどうかを判定する。対象人物が登録者(被見守り人)の場合には、加工描画部202により加工描画処理を行い、対象人物が未登録者(被見守り人以外)の場合は、加工描画処理を行わない。
【0036】
図8は、表示端末8に表示される監視画像80の例を示す図である。ここでは、複数の人物3a~3cが検出され、そのうち人物3bと3cは顔情報登録データ24cに顔情報が登録された被見守り人であり、人物3aは顔情報登録データ24cに顔情報が登録されておらず、被見守り人ではない場合を想定する。
【0037】
加工描画部202は、登録された人物3bと3cについては、顔以外の身体部位に色付け処理を行っている。一方、未登録の人物3aについては、身体部位の加工描画処理を行わない。
【0038】
図9は、見守り監視処理のフローチャートを示す図である。実施例1(図5)に示した処理と同様の処理を行うステップについては同一符号を付与し、重複する説明を省略する。図9のフローチャートでは、S105aとS105bが追加される。
【0039】
S105aでは、人物検出部201は検出した人物の顔情報を、顔情報登録データ24cの登録データと照合し、対象人物が登録されているかどうかを判別する。またS105bでは、対象人物が被見守り人(登録されている)かどうかで分岐し、被見守り人の場合(S105b、Yes)にはS107以降の加工描画処理を行う。被見守り人でない場合(S105b、No)は、加工描画処理を行わずS111へ進み、次の人物についての処理を進める。
【0040】
上記の処理フローによれば、加工描画処理は、被見守り人として登録された人にのみ行われ、被見守り人のプライバシーを保護することができる。被見守り人以外の人物については、加工描画処理を行わず撮影画像をそのまま表示することで、詳細な状況を把握することができる。
【0041】
以上説明したように、実施例2によれば、実施例1と同様の効果を持つとともに、見守り空間に被見守り人以外の人物が存在するときは意図しない人物として、見守り人はその状況を明確に素早く把握できるという効果がある。
【実施例3】
【0042】
実施例3では、見守り空間に不審者がいることを検知して警報を発する場合について説明する。監視システムの全体構成は、実施例2(図6)と同様である。
【0043】
図10は、実施例3におけるホームサーバ2の構成例を示すブロック図である。実施例2(図7)のホームサーバ2の構成と比較し、ストレージ部24には、基本プログラム24a、見守り監視プログラム24b、顔情報登録データ24cの他に、不審者パターン登録データ24dと、画像データ保存部24eを含む。
【0044】
不審者パターン登録データ24dは、人物が故意に顔を隠すような外観状況を、不審者パターンとして登録したデータである。例えば不審者パターンとしては、人物が、フルフェースのヘルメットや、目出し帽や、マスクとサングラスなどを装着している状況が該当する。画像データ保存部24eは、監視カメラからの撮影画像データ(加工描画処理前)を保存する。
【0045】
人物検出部201は検出した人物について不審者パターン登録データ24dと照合して、不審者パターンに該当するかどうかを判定する。不審者パターンに該当すると判定した場合、アラーム情報を作成して表示端末8へ報知する。またその場合は、加工描画部202は撮影画像に対して、加工描画処理を行なわず、画像データ保存部24eに保存した監視カメラからの撮影画像データ(加工描画処理前)を表示端末8へ送信する。
【0046】
図11は、表示端末8に表示される監視画像80の例を示す図である。ここでは、複数の人物3a~3cが検出され、そのうち人物3bと3cは顔情報登録データ24cに顔情報が登録された被見守り人である。一方人物3aは、顔情報登録データ24cに顔情報が登録されておらず、かつ、不審者パターン登録データ24dに登録された不審者パターン39(例えばヘルメットを装着)に該当している場合を想定する。
【0047】
人物検出部201が人物の中に不審者パターンに該当する人物3aを検出すると、「不審者がいます」等のアラーム情報89を作成し、監視画像80に含めて表示端末8に送信し表示させる。あるいはアラーム情報を表示端末8に音声で伝えてもよい。その場合、加工描画部202は撮影画像に対して、不審者と判定した人物3aは勿論のこと、登録された人物3bと3cについても加工描画処理を行わない。不審者がいる場合は異常事態であるから、見守り人7に対し、検出した各人物の状況を詳細に知らせる必要があるからである。
【0048】
図12は、見守り監視処理のフローチャートを示す図である。実施例2(図9)に示した処理と同様の処理を行うステップについては、同一符号を付与し、重複する説明を省略する。図12のフローチャートでは、S123~S125の異常処理が追加されている。
【0049】
S120では、人物検出部201は不審者パターン登録データ24dと照合して、不審者パターンに該当する人物を検出すると、S123以降の異常処理に進む。またS121では、不審者パターンには該当しないが、顔情報が顔情報登録データ24cの登録データに一致しないときは、被見守り人以外の意図されていない人物としてS123以降の異常処理に進む。
【0050】
さらにS122では、システム権限の上位者(例えば見守り人)から加工描画処理を停止するよう指示された場合にも、S123以降の異常処理に進むようにする。これは、見守り人が詳細画像を要求するような場合である。
【0051】
S123では、アラーム情報89を作成し表示端末2に送信する。見守り人7が表示端末8を見ていない場合も考慮し、音声やメール等で発信してもよい。S124では、撮影画像を画像データ保存部24eに保存する。これにより、異常発生時の画像データを解析し、不審者等の特定などに利用できる。S125では、加工描画処理された画像データではなく、画像データ保存部24eに保存された撮影画像データをそのまま表示端末8へ送信する。
【0052】
上記した異常処理(S123~S125)を行う条件は、上記の場合に限らない。被見守り人が独居老人のように被見守り人の数が限定されている場合で、画像データの中に登録した顔情報の数以上の人を検知した場合、直ちに異常処理を行うように設定してもよい。例えば顔情報登録データ24cに、人物3bと3cの2人分の顔情報が登録されている状況で、図11のように3人の人物3a~3cが検出された状況がこれに該当する。
【0053】
また、異常処理を実行する条件は、システム権限の上位者(見守り者)が適宜設定することで、ユーザにとって使い勝手の良いシステムが実現できる。
【0054】
以上のように実施例3によれば、見守り空間に不審者がいるなどの異常事態を素早く検知して、見守り人に知らせることができるという効果がある。
【実施例4】
【0055】
前記実施例1~3においては、監視カメラ1とホームサーバ2とは別体として説明したが、実施例4では、両者を一体化した構成について説明する。
【0056】
図13A図13Bは、サーバ一体型監視カメラの2つの構成例を示すブロック図である。図13Aは、図2Aの監視カメラ1と、実施例2(図7)のホームサーバ2の機能を一体化した場合を示す。図13Bは、図2Bの監視カメラ1(測距機能付き)と、実施例2(図7)のホームサーバ2の機能を一体化した場合を示す。
【0057】
これらサーバ一体型監視カメラ1bの構成では、ホームサーバ2はコントローラ14aと称し、ストレージ部24には、監視カメラ1の制御を司るカメラ制御プログラム24fを追加している。またネットワーク部21は、加工描画処理した画像の合成画像データを外部ネットワーク5に送出するが、直接ネットワークに送出してもよく、見守り空間4にアクセスポイントを配置してこれを経由して送出してもよい。サーバ一体型監視カメラ1bにおけるコントローラ14aは、他の実施例(図3図10)の構成としてもよいことは言うまでもない。
【0058】
実施例4によれば、監視カメラ1とホームサーバ2とが一体化されているので、監視装置の全体サイズが小型化し、また装置の設置が容易になる効果がある。
【実施例5】
【0059】
実施例5では、複数台の監視カメラを設置して複数の監視画像を表示する場合、同一の人物については共通の加工描画処理を行うことについて説明する。
【0060】
図14は、実施例5に係る監視システムの全体構成を示す図である。見守り空間4には複数台(ここでは2台)の監視カメラ101,102を設置している。各監視カメラ101,102は、図2Aまたは図2Bに示した監視カメラ1と同じ構成であり、これらを共通のホームサーバ2に接続する。ここでは、実施例2(図7)に示すホームサーバ2を適用している。ホームサーバ2は、監視カメラ101,102のそれぞれの撮影画像に対し加工描画処理を行う。そして、見守り人7からの要求で、監視カメラ101,102の画像を切り替えて表示端末8に送信する。複数台の監視カメラを用いることで、見守り空間4が広い場合でも、領域を分割して全体を監視することができる。
【0061】
図15A図15Bは、表示端末8に表示される監視画像の例を示す図で、図15Aは監視カメラ101からの監視画像81、図15Bは監視カメラ102からの監視画像82を示す。監視カメラ101、102の監視領域は、見守り空間4の一部の領域を重複させているため、同一人物が両方の監視画像81、82に出現されることがある。本例では、人物3bが両方の監視画像81、82に含まれている。このような場合、加工描画部202は、同一の人物3bに対しては2つの監視画像間で加工描画処理を共通化し、同じ色付け、同じ濃淡処理を行う。一方、他の人物3a、3cに対してはこれと異なる加工描画処理を行う。これにより、監視カメラ101、102の選択を切り替えたときに、同一人物には同じ加工描画が施されているので、見守り人は、即座に同一人物であることが分かり、監視空間が分割されていてもこれらを統合して容易に認識することできる。
【0062】
図16は、見守り監視処理のフローチャートを示す図である。実施例2(図9)に示した処理と同様の処理を行うステップについては、同一符号を付与している。
【0063】
図16のフローチャートでは、S130のステップを追加し、複数の監視カメラに対応して、S102~S106の人物検出処理を監視カメラの数だけ繰り返す。
【0064】
S131では、人物検出部201は複数の監視カメラに写っている同一人物を特定する。S132では、表示端末8側から、監視画像を送信すべき監視カメラの選択情報を受信する。S107以降では、選択された監視カメラの撮影画像に対して加工描画処理を行うが、S131で同一人物として特定された人物に対しては共通の加工描画を行う。なお、S105の顔データ照合で未登録の人物に対しては、実施例2の場合と同様に加工描画を行わない。S113では、選択された監視カメラの監視画像を表示端末8へ送信する。
【0065】
以上のように実施例5によれば、複数の監視カメラを備える見守り監視装置において、監視カメラを切り替えながら監視を行うことで、分割された見守り空間を連続した空間として捉えるとともに、複数の監視画像間で同一の被見守り人を容易に識別することができるという効果がある。
【実施例6】
【0066】
実施例6では、監視システムの管理装置であるサーバをネットワーク上に配置した構成について説明する。
【0067】
図17は、実施例6に係る監視システムの全体構成を示す図である。本実施例の監視システムは、実施例1(図1)や実施例2(図6)におけるホームサーバ2の機能を、ネットワーク5上に配置したサーバ9により実現する構成である。この構成は、ネットワークを介して見守り監視を商用サービスとして提供するのに好適な形態である。
【0068】
新たな構成として、ネットワーク5上に配置される管理装置であるサーバ9と、監視カメラ1の撮影画像を中継するアクセスポイント60を追加している。アクセスポイント60は、監視カメラ1で撮影された画像データを、通信信号60a、ネットワーク5を介して、サーバ9に送信する。サーバ9では監視カメラ1の撮影画像に加工描画処理を行い、アクセスポイント6を介して表示端末8へ送信する。
【0069】
図18は、実施例6におけるサーバ9の構成例を示すブロック図である。基本構成は実施例2(図7)の構成を適用した場合で、ネットワーク部91、CPU92、RAM93、ストレージ部94を備える。ストレージ部94には、処理プログラムやデータとして、基本プログラム94a、ユーザ管理プログラム94b、見守り監視サービスプログラム94c、顔情報登録データ94dを含む。ここでユーザ管理プログラム94bは、見守り監視サービスの提供先であるユーザを管理する。図17の見守り空間4は、サービスの提供先である特定のユーザの空間となる。顔情報登録データ94dには、ユーザ毎の被見守り人の顔データを予め登録したものである。また処理プログラムやデータは、RAM93に展開して、CPU92で実行する。ストレージ部94はフラッシュROMなどの半導体で構成されるもの、ハードディスクと組み合わせて構成されるものなど、その構成方法が限定されるものではない。
【0070】
図19は、見守り監視処理のフローチャートを示す図である。以下の処理は、見守り監視サービスプログラム94cにより実行される。実施例2(図9)に示した処理と同様の処理を行うステップについては、同一符号を付与している。
【0071】
S100で処理を開始し、S140で見守り監視サービスへのログインを行う。ログインは、サーバ9とユーザの監視カメラ1とを紐付ける。
【0072】
S102で監視カメラからの画像データを受信する。以降のステップは、図9の処理フローと同様である。
【0073】
以上説明したように実施例6によれば、複数のユーザに対応した商用の見守り監視サービスに適用できるという効果を有する。
【0074】
なお、上記の各実施例において、通信信号1a、2a、6a、8a等は、無線信号をイメージした図になっているが、これは有線信号であってもよく、さらに、通信部におけるデータ量を削減するために、例えばH.264等の画像圧縮伸長技術を用いても、本発明の目的、効果を損なうものではない。
【0075】
以上説明した各実施例は、これらに限られるものではなく、ある実施例の構成の一部を他の実施例に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に、他の実施例の構成を加えることも可能である。これらは全て本発明の範疇に属するものであり、さらに文中や図中に現れる数値やメッセージ等もあくまで一例であり、異なるものを用いても本発明の効果を損なうものでない。
【0076】
また、実施例で述べた機能ブロック等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実装しても良い。また、マイクロプロセッサユニット、CPU等が動作プログラムを解釈して実行することによりソフトウェアで実装しても良い。また、ソフトウェアの実装範囲を限定するものでなく、ハードウェアとソフトウェアを併用しても良い。
【符号の説明】
【0077】
1、1b、101、102:監視カメラ、2:ホームサーバ、3、3a~3c、30:人物(被見守り人)、4:見守り空間、5:ネットワーク、6、60:アクセスポイント、7:見守り人、8:表示端末、9:サーバ、21:ネットワーク部、22:CPU、23:RAM、24、94:ストレージ部、24b:見守り監視プログラム、94c:見守り監視サービスプログラム、24c、94d:顔情報登録データ、24d:不審者パターン登録データ、24e:画像データ保存部、24f:カメラ制御プログラム、31:頭部、32~34:身体部位、39:不審者パターン、80、81、82:監視画像、201:人物検出部、202:加工描画部、203:画像合成部。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19