(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】アンテナアレイモジュール
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/22 20060101AFI20240708BHJP
H01Q 13/08 20060101ALI20240708BHJP
H01Q 21/20 20060101ALI20240708BHJP
H01Q 25/00 20060101ALI20240708BHJP
H01Q 21/24 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
H01Q1/22 Z
H01Q13/08
H01Q21/20
H01Q25/00
H01Q21/24
(21)【出願番号】P 2022557162
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(86)【国際出願番号】 EP2021056950
(87)【国際公開番号】W WO2021185970
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2024-03-11
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522372153
【氏名又は名称】マリタイム アイオーティー ソリューションズ ビーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マーティン バートリナ,アルバロ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァツクエツ ロイ,ジョセ,ルイス
(72)【発明者】
【氏名】デ インクラン サンチェス,ルイス,フェルナンド
(72)【発明者】
【氏名】ラジョ イグレシアス,エヴァ
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/188386(US,A1)
【文献】米国特許第10025960(US,B1)
【文献】国際公開第2014/086452(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/211630(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/229262(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/159187(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/248454(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0231459(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/22
H01Q 13/08
H01Q 21/20
H01Q 25/00
H01Q 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物船
上にアンテナアレイモジュールを設置するための方法であって、
前記方法は、
・
前記貨物船上の通信システムのためのアンテナアレイモジュールを得ること
であって、前記アンテナアレイモジュールは、アンテナ給電を各々包含する、少なくとも第1のアンテナ素子(11)、第2のアンテナ素子(12)、および第3のアンテナ素子(16)を備えることと、
・前記貨物船の船橋
上に前記アンテナアレイモジュールを取り付けることであって、
前記船橋は、前記貨物船をその長さ軸に沿って長部および短部に分割するように配置され、前記第
1のアンテナ素子は前記第
2のアンテナ素子に対して傾斜しており、前記第1
のアンテナ素子および前記第2のアンテナ素子は、それらの指向性パターンのメインローブが、前記長部に対応する第1の経路の方向を向くように配置され、前記第
3のアンテナ素子は、主に前記第1の経路の反対側の第2の経路に向かって放射するように配置されることと
、
を備える
、方法。
【請求項2】
前記第1のアンテナ素子、前記第2のアンテナ素子、および前記第3のアンテナ素子のうちの少なくとも1つはパッチアンテナである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のアンテナ素子および前記第2のアンテナ素子は、5°~70°の範囲内の角度にわたり互いに対して傾斜している、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のアンテナ素子、前記第2のアンテナ素子、および前記第3のアンテナ素子のうちの少なくとも1つは、円偏波で放射するために配列される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のアンテナ素子、前記第2のアンテナ素子、および前記第3のアンテナ素子のうちの少なくとも1つは、2つの直交放射モードを励起する摂動を提供される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のアンテナ素子、前記第2のアンテナ素子、および前記第3のアンテナ素子は、誘電材料の基板上に配列される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記アンテナアレイモジュールは、少なくとも前記第1のアンテナ素子、前記第2のアンテナ素子、および前記第3のアンテナ素子を介して送信されるように信号を分割し、少なくとも前記第1のアンテナ素子、前記第2のアンテナ素子、および前記第3のアンテナ素子から受信された信号を結合するように配列された電力分割器/結合器を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のアンテナ素子は、設置されるときに、垂直面に対して傾斜しており、前記第2のアンテナ素子は、垂直方向における指向性を改善するように配置される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも前記第1のアンテナ素子、前記第2のアンテナ素子、および前記第3のアンテナ素子は、略垂直スタックを形成する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のアンテナ素子、前記第2のアンテナ素子、および前記第3のアンテナ素子は、印刷技術で製造される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アンテナアレイモジュールは、前記第1のアンテナ素子、前記第2のアンテナ素子、および前記第3のアンテナ素子のためのハウジングを備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第3のアンテナ素子は、前記第2のアンテナ素子に対して傾斜していない、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
複数の前記アンテナアレイモジュールが前記船橋
上に取り付けられる、請求項
1~12のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項14】
前記アンテナアレイモジュールは、前記船橋の、前記長部の方向への直接見通しが得られる側に取り付けられる、請求項
1~13のいずれか一項に記載
の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、物品を監視するためのシステムにおいて用いられるアンテナシステムの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、世界中のバラ積みではない貨物の大半は、コンテナ船、すなわち全ての積荷を標準規格寸法のコンテナで運搬する貨物船によって輸送される。これらは、長距離にわたり効率的に積み降ろし、積載、輸送することができ、開封されることなく1つの交通機関から別の交通機関に(たとえばコンテナ船だけではなく鉄道やトラックなどで)運ぶことができる。
【0003】
様々なサイズのコンテナ船が存在し、最も大きなものは、約400mの長さがあり、10000TEU(twenty-foot equivalent unit)をはるかに超える容量を有する。一般的な積荷は、20フィートおよび40フィートのISO規格コンテナの混合であり、後者が主である。専用コンテナ船のための貨物艙は、荷積みおよび荷降ろしを速やかにし、海上でコンテナの安全を効率的に保つように特別に構成される。貨物艙内には、セルガイド、すなわち荷積み工程においてコンテナを明確な列に導き、海上での船の揺動に対しコンテナをある程度支持する、頑丈な金属垂直構造体が設置される。貨物艙の上にハッチカバーが載せられ、その上に更に多くのコンテナが積載され得る。
【0004】
手動手順の必要なく輸送中の貨物を監視するためのシステムが開発されている。そのような従来技術のシステムは、通信システムのための基地局として単純なアンテナを用いる。たとえば、US2004/246104A1号は、各コンテナに、たとえばプラスチック化合物や布製のポケットなどの支持要素を用いてコンテナの波形外壁に取り付けられたトランスポンダが提供された解決策を説明する。トランスポンダは、通信バスシステムを介して相互接続された以下の構成要素を備える:
・対応するアンテナを有する高速受信モジュールおよび別の送信/受信モジュール
・プロセッサモジュールおよびメモリモジュール
・センサ接続のためのインタフェースモジュール
・バッテリを有する電源
トランスポンダとの通信は、高速受信モジュールが適当な信号によってトランスポンダをスリープモードからウェイクアップするように構成され得る。トランスポンダは、たとえば868MHz範囲内の周波数で動作可能な第2の送信/受信モジュールを備える。
【0005】
トランスポンダは、船の甲板に位置する通信ユニットとの双方向通信を行うことを可能にする。ただし、この分野における経験により、上述したような仕組みにおいて通信ユニットとトランスポンダとの間の通信に関する許容可能なレベルのリンク品質を得ることは、特にトランスポンダが貨物艙の奥深くに位置する場合、困難であることが多いと示されている。
【0006】
特許出願US2008/231459A1号は、貨物コンテナ監視システムに関する。このシステムは、複数の貨物コンテナに関する貨物コンテナ状態情報を収集するために貨物船に位置する構成要素を含む。構成要素は、少なくとも1つの結合データロガーおよびゲートウェイデバイスを含む。結合デバイスは、第1のアンテナおよび第2のアンテナを含む。第1のアンテナは、データロガーデバイスに含まれ、またはデータロガーデバイスの保護ハウジングに取り付けられ得る。第1のアンテナは、コンテナに設けられたタグからの無線通信信号を受信し、および/またはコンテナに設けられたタグへ無線通信信号を送信する。第1のアンテナに関する更なる詳細は提供されない。第2のアンテナは、衛星との通信のために構成される。
【0007】
US2009/016308A1号は、貨物コンテナ監視システムにおけるアンテナを開示する。アンテナシステムは、各コンテナに関連付けられ、短距離無線通信トランシーバデバイスおよび少なくとも1つの長距離通信デバイス通信デバイス、GPS要素、および各コンテナの壁、扉、または屋根の構造に一体化されたアンテナシステムを含む。アンテナシステムは、BluetoothまたはWiFi通信に適合されたアンテナと、衛星通信用のアンテナとを備える。
【0008】
US2007/188386号において、反射ユニット、第1の放射ユニット、第2の放射ユニット、およびいくつかの構成において(三角柱を形成するための)第3の放射ユニットおよび(四角柱を形成するための)第4の放射ユニットを含む立体平面アンテナが提示される。
【0009】
US10025960B1号、US2013/229262A1号、およびUS2008/211630A1号などの特許および特許出願は、複数のアンテナを円形アレイ構成で有するアンテナ構造を開示する。
【0010】
WO2014/086452号は、複数のアンテナ素子が積み重ねられてアンテナ柱を形成する二重偏波型全方位アンテナに関する。アンテナ素子は、上記セクタアンテナの中心軸に沿って互いに対してオフセットして配置され、それによってセクタアンテナは、方位面における様々なセクタをカバーする。
【0011】
US2005/248454号において、海洋資産保障および追跡システムが提示される。これは、コンテナを有する貨物船上の複数のRFIDタグリーダを開示する。
【0012】
現代のコンテナ船のサイズが増大し続ける場合、船内または船上の固定位置に配置された、またはコンテナに接続されたトランスポンダと甲板との間の通信に関する良好なリンク品質を保証するアンテナアレイモジュールの必要性がある。
【発明の概要】
【0013】
本発明の実施形態の目的は、船内または船上に提供された、および/または船によって輸送している物品に提供されたトランスポンダと通信ユニットとの間の貨物船上での通信のためのアンテナアレイモジュールを提供することである。
【0014】
上記目的は、本発明に係る解決策によって実現される。
【0015】
第1の態様において、本発明は、貨物船上の通信システムのためのアンテナアレイモジュールに関する。モジュールは、各々がアンテナ給電を含む、少なくとも第1、第2、および第3のアンテナ素子を備える。第1および第2のアンテナ素子は、主に第1の経路に向けて放射するように構成され、第3のアンテナ素子は、主に第1の経路の反対側の第2の経路に向けて放射するように構成される。第1のアンテナ素子は第2のアンテナ素子に対して傾斜している。
【0016】
提案される解決策は、実際、許容可能な品質の通信リンクを確立することが可能である。互いに対して傾斜している2つのアンテナ素子は主に、これらのアンテナ素子の指向性パターンによって決定された方向に放射する。第1および第2のアンテナ素子の間に特定の傾斜角度を適用することにより、品物が保管されている貨物艙の最深部および/または最遠方部を含む経路をカバーし得る放射パターンを結果として実現することが可能である。第3のアンテナ素子は、主に反対側に向けて放射するように略反対方向に配置される。したがって、提案されるアンテナアレイモジュールは基本的に、セクタアンテナアレイと同様に作用し、一方で第1および第2のアンテナ素子ならびに第3のアンテナ素子は各々が主に異なるセクタに向けて放射する。
【0017】
好適な実施形態において、アンテナ素子の少なくとも1つはパッチアンテナである。これにより、他のアンテナ型に比べて小さなサイズであるという利点が提供される。パッチアンテナは実装が容易であり、低コストでもある。また、それらは、多数の周波数帯域をサポートすることができる。
【0018】
第1のアンテナ素子は、貨物艙の深部にあり、および/または船の末端に位置するコンテナにも届くことが可能な角度にわたり、第2のアンテナ素子に対して傾斜している。好適には、第1および第2のアンテナ素子は、3°~80°の範囲内、または5°~70°の範囲内、または10°~60°の範囲内、または約45°の角度にわたり互いに対して傾斜している。
【0019】
本発明の実施形態において、アンテナ素子の少なくとも1つは、円偏波で放射するために構成される。円偏波を用いることは、たとえば反射率および吸収率に関する特性によって有利であり得る。また、見通し経路が損なわれる場合、円偏波は、たとえば直線偏波よりも効果的であり得る。1つの実施形態において、少なくとも1つのアンテナ素子には、円偏波を適用するために2つの直交放射モードを励起する摂動が提供される。
【0020】
本発明の実施形態において、アンテナ素子は、誘電材料の基板上に構成される。好適な実施形態において、誘電材料として空気が利用される。
【0021】
有利な実施形態において、アンテナアレイモジュールは、3つのアンテナ素子、すなわち、互いに対して特定の角度にわたり傾斜し、主に第1の経路に向けて放射するように構成された2つのアンテナと、主に上記第1の経路の反対側の第2の経路において放射するように構成された第3のアンテナとを備える。
【0022】
1つの実施形態において、アンテナアレイモジュールは、少なくとも3つのアンテナ素子を介して送信されるように信号を分割し、少なくとも3つのアンテナ素子から受信された信号を結合するように構成された電力分割器/結合器を備える。
【0023】
好適には、第1のアンテナ素子は、設置時、垂直面に対して傾斜しており、第2のアンテナ素子は、垂直方向への指向性が改善されるように配置される。好適な実施形態において、アンテナアレイモジュールは、設置時、アンテナ素子のスタックを形成する。傾斜したアンテナ素子を別として、スタックは略垂直である。
【0024】
好適な実施形態において、アンテナ素子は、小さなサイズのアンテナ素子を可能にするためにプリント技術で製造される。
【0025】
他の実施形態において、アンテナアレイモジュールは、アンテナ素子のためのハウジングを備える。アンテナアレイモジュールは、悪条件、たとえば外洋での使用を意図されているため、この実施形態は好適である。
【0026】
1つの実施形態において、第3のアンテナ素子は、第2のアンテナ素子に対して傾斜していない。
【0027】
他の態様において、本発明は、貨物船にアンテナアレイモジュールを設置するための方法に関する。この方法は、
・上述したようなアンテナアレイモジュールを得ることと、
・貨物船の船橋上のプラットフォームにアンテナアレイモジュールを取り付けることであって、上記船橋は、貨物船を長さ軸に沿って長部および短部に分割するように配置され、第1のアンテナ素子は第2のアンテナ素子に対して傾斜しており、第1および第2のアンテナ素子は、それらの指向性パターンのメインローブが、長部に対応する第1の経路の方向を向くように配置され、第3のアンテナ素子は、主に第1の経路の反対側の第2の経路に向かって放射するように配置されることと
を備える。
【0028】
別に明記すると、この態様において、本発明は、貨物船にアンテナアレイモジュールを設置するための方法に関し、この方法は、
・各々がアンテナ給電を含む少なくとも第1、第2、および第3のアンテナ素子を備える、貨物船上の通信システムのためのアンテナアレイモジュールを得ることと、
・上記貨物船の船橋にアンテナアレイモジュールを取り付けることであって、上記船橋は、貨物船を長さ軸に沿って長部および短部に分割するように配置され、第1のアンテナ素子は第2のアンテナ素子に対して傾斜しており、第1および第2のアンテナ素子は、それらの指向性パターンのメインローブが、長部に対応する第1の経路の方向を向くように配置され、第3のアンテナ素子は、主に第1の経路の反対側の第2の経路に向かって放射するように配置されることと
を備える。
【0029】
有利には、複数のアンテナアレイモジュールが船橋に取り付けられる。
【0030】
好適な実施形態において、アンテナアレイモジュールは、船橋の、長部の方向への直接見通しが得られる側に取り付けられる。
【0031】
本発明および従来技術に優って実現される利点を要約するために、本発明の特定の目的および利点が上記で説明された。当然、必ずしもそのような目的または利点の全てが本発明の任意の特定の実施形態に従って実現され得るわけではないことを理解すべきである。したがって、たとえば当業者は、本明細書において教示または提示され得る他の目的または利点を必ずしも実現することなく、本明細書で教示される1つの利点または利点のグループを実現または最適化する方法で本発明が具体化または実行され得ることを認識する。
【0032】
本発明の上記態様および他の態様は、以下で説明する実施形態(複数も可)から明らかになり、これを参照して解明される。
【0033】
以下、本発明は添付図面を参照して例として詳しく説明され、図面において、同様の参照番号が様々な図内の同様の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明に係るアンテナアレイモジュールのアンテナ素子の実施形態を斜視図で示す。
【
図2】
図1のアンテナ素子の実施形態を上面図および側面図で示す。
【
図3】船を長さ軸に沿って2つの部分に分割する船橋が表示された貨物船の概略図を示す。
【
図4】船の長部に向けて放射するための2つのアンテナ素子および短部に向けて放射するための1つのアンテナ素子を有するアンテナアレイモジュールの実施形態を示す。
【
図5】様々な傾斜角度で得られる、いくつかの放射パターンを示す。
【
図6】垂直面および水平面の両方におけるアンテナビーム幅の計算を示す。
【
図7】本発明に係るアンテナアレイモジュールの実施形態を示す。
【
図8】
図7のアンテナアレイモジュールに関する傾斜角度αの変更の影響を示す。
【
図10】アンテナ(7)を保護するために用いられるレドームならびにアンテナを船に固定するための機械的支持体(8)の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、特定の実施形態に関して、特定の図面を参照して説明されるが、それらに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【0036】
また、本説明および特許請求の範囲における第1、第2などの用語は、同様の要素を区別するために使用され、必ずしも時間、空間、等級、またはそれ以外の順序を説明するために使用されるのではない。理解すべき点として、そのように使用される用語は、適当な状況下で入替え可能であり、本明細書で説明される本発明の実施形態は、本明細書で説明または例示されたもの以外の順序で動作することが可能である。
【0037】
特許請求の範囲において使用される「備える」という用語は、その後に挙げられる手段に限定されるものと解釈されてはならず、他の要素またはステップを排除するものではない。したがってこの用語は、記述された特徴、整数、ステップ、または構成要素の存在が言及されることを明示していると解釈すべきであるが、1または複数の他の特徴、整数、ステップ、または構成要素、またはそれらのグループの存在または追加を妨げるものではない。よって、「手段AおよびBを備えるデバイス」という表現の範囲は、構成要素AおよびBのみで構成されるデバイスに限定されてはならない。これは、本発明に関して、デバイスの唯一の関連構成要素がAおよびBであることを意味する。
【0038】
本明細書を通して、「1つの実施形態」または「実施形態」への言及は、その実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の様々な箇所における「1つの実施形態において」または「実施形態において」という表現の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態に言及するものではないが、その可能性もある。また、特定の特徴、構造、または特性は、1または複数の実施形態において、本開示から当業者には明らかであるような任意の適当な方法で組み合わせられてよい。
【0039】
同様に、本発明の典型的な実施形態の説明において、本開示を合理化し、様々な発明的態様の1または複数の理解を助けるために、本発明の様々な特徴は、単一の実施形態、図面、または説明にまとめられる場合もある。ただし、この開示方法は、特許請求の範囲に係る発明が各クレームに明確に記載されたもの以外の特徴を必要とするという意図を反映していると解釈されてはならない。むしろ、後続のクレームが示すように、発明的態様は、単一の上記開示される実施形態の全ての特徴より少ないものに存する。したがって、この詳細な説明に続く特許請求の範囲は、ここにおいて、この詳細な説明に明確に組み込まれ、各クレームは、本発明の個別の実施形態として自立している。
【0040】
また、本明細書で説明されるいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかの特徴のみを含むが、当業者によって理解されるように、様々な実施形態の特徴の組み合わせが本発明の範囲内に収まり、異なる実施形態を形成することが意図される。たとえば、以下の特許請求の範囲において、特許請求の範囲に係る実施形態のいずれかは、任意の組み合わせで用いられ得る。
【0041】
留意すべき点として、本発明の特定の特徴または態様を説明する際の特定の用語の使用は、その用語が関連付けられた本発明の特徴または態様の任意の具体的な特性を含むように制限されるものとして本明細書で再定義されることを示すと受け取られてはならない。
【0042】
本明細書に提供される説明において、数々の具体的な詳細が記載される。ただし、本発明の実施形態はこれらの具体的な詳細がなくとも実施され得ることが理解される。他の例において、周知の方法、構造、および技術は、この説明の理解を不明瞭にしないように詳しく示されていない。
【0043】
本発明は、第1の態様において、コンテナ船に、たとえばコンテナ船の甲板上または甲板下の貨物艙内に位置するコンテナに取り付けられたセンサと、一般に船橋に位置する通信ユニットとの間の通信を確立するために配置されたアンテナアレイモジュールを提案する。
【0044】
最新の貨物船は一般に、300~400メートル以上に及び得る長さ、およびたとえば50~60メートルの幅を有する。貨物艙は、デッキの下25メートル以上の深さにあってよい。本発明に係るアンテナアレイモジュールは、アンテナ素子がこれらの巨大な寸法に対応し、良好な全体カバレージを提供することができるように設計される。アンテナ素子は、放射を垂直面に閉じ込め、船の全幅をカバーするように設計される。
【0045】
提案されるアンテナアレイモジュールは、3つ以上のアンテナ素子を備える。単一のアンテナ素子の実施形態が
図1に示される。
図1のアンテナ素子は、マイクロストリップパッチアンテナとして実装される。他の実施形態において、アンテナ素子は、たとえばモノポール、ダイポール、スロット、または当業者に周知の他の典型的なアンテナ型であってよい。特定の実施形態において、モジュールの1または複数のアンテナ素子は、たとえば2×2スロットのアレイなど、それ自体が小さなアンテナサブアレイとして実現され得る。
【0046】
特に、
図1は、円偏波を有するマイクロストリップパッチアンテナ(すなわちマイクロストリップ技術で製造されたアンテナ)の実施形態を示す。マイクロストリップパッチアンテナは、何年も前から当技術分野において周知のものである。マイクロストリップパッチアンテナは、ロープロファイル、軽量、小型性、製造の容易さなどの魅力的な利点を提供することにより、無線通信システムでの応用に関して非常に一般的になっている。
【0047】
図1のようなマイクロストリップパッチアンテナ(1)は、接地面(2)、以下でパッチと称される、誘電材料(3)の基板上の金属沈着(4)(すなわち金属層)を備える。
図1のパッチは、略長方形状を有する。他の実施形態において、パッチは、たとえば円形または環状など、異なる形状を有してよい。誘電材料は、直に空気であってよく、または、たとえばテフロン、PVC、ポリプロピレン、FR4など、任意の市販の基板であってよい。有利な実施形態において、誘電材料は空気である。
【0048】
一般的に知られているように、極性とは、電磁波の電界強度ベクトルの向きを表す。
図1のアンテナ素子の実施形態において、略長方形パッチには、円偏波を可能にするいくつかの摂動(5)が提供される。他の実施形態において、たとえばアンテナごとに2つのポートおよびそれらに給電する90°ハイブリッドを用いることなど、円偏波を得るための他の方法が用いられ得る。円偏波は、(電界ベクトルの先端が、伝搬方向と交差し垂直である任意の固定平面上で楕円を描く)楕円偏波の特定例である。よって、他の実施形態において、アンテナ素子は、楕円偏波を用いるために構成され得る。楕円偏波は、直角位相において2つの直線偏波に分解されてよく、それらの偏光面は、互いに直角を成す角度にある。また他の実施形態において、アンテナ素子は、たとえば垂直または水平または45°回転など、直線偏波のために構成される。
【0049】
アンテナ素子(1)は、パッチと同じ層に、パッチフィードとも称される小さな金属部(6)によって実現される静電結合によって給電される。同軸コネクタは、接地面(2)および小さな金属沈着(6)に連結されたパッチアンテナに給電するために提供され得る。他の実施形態において、パッチアンテナは、同軸コネクタによって、マイクロストリップ送電線によって、または接地面の開口部を介して直接給電され得る。基板の上に給電素子を有する実施形態も想定され得る。
【0050】
図2は、既に
図1に示したアンテナ素子の上面図および側面図を提供する。
【0051】
アンテナアレイモジュールは、有利には、船上の高い位置や、船を見下ろす船橋またはその付近に設置される。好適には、モジュールは、甲板上または甲板下のコンテナまで多くの見通し線が得られるように、モンキーブリッジ、すなわち船橋上の最も高い航海プラットフォームに位置する。ほとんどの場合、貨物船の船橋は、
図3に示すように、船の一方の端部に対し他方の端部よりも近くにある。そのような場合、船の長さ軸に沿って考えた時、船の長部(20)および短部(30)が示され得る。この用語は、本説明の以下の部分を通して用いられる。ただし、船橋が真ん中にある場合、等しい長さの2つの部分(20、30)も存在する。概念上、これは、以下に記載する更なる説明に相違をもたらすものではない。
【0052】
アンテナアレイモジュールに関して、船の長部に向かう改善された指向性は、全幅にわたり船の上記長部をカバーする経路に向かって主に放射状に延びる、互いに対して傾斜した少なくとも2つのアンテナ素子(11、12)を提供することによって得られる。
図4は、そのようなアンテナアレイモジュールの図を提供する。
図4の実施形態において、アンテナ素子(11)は、他の2つのアンテナ素子によって形成された垂直面から傾斜している。船の短部に向かう無線カバレージは、長部をカバーする少なくとも2つのアンテナ素子が指す側の反対側を指す第3のアンテナ素子(16)を少なくとも備えるアンテナアレイモジュールによって確立される。
【0053】
好適な実施形態において、アンテナアレイモジュールは、設置時、アンテナ素子のスタックを形成する。傾斜したアンテナを除き、スタックは略垂直である。様々なアンテナ素子が、電力分割器/結合器を用いて相互接続され得る。いくつかの実施形態において、アンテナ素子は、好適には電力分割器/結合器および送電線も含む同一の印刷回路基板(PCB)に実装され得る。
【0054】
好適な実施形態において、本発明に係るアンテナアレイモジュールは、船の同じ側を指す2つのアンテナ素子(11、12)を備え、これらは、単一のアンテナとして協働し、主に船の長部に向かって放射する。実質的に反対方向を指す1または複数のより小さなサイドローブも存在し得ることが明らかであるが、これらは、ここではこれ以上考慮されない。2つのアンテナ素子のうちの1つ(11)は、他方に対して角度α傾斜しており、この角度は、傾斜したアンテナ素子(11)と、他方のアンテナ素子(12)の延長線との間の角度である。傾斜したアンテナ素子とは異なるアンテナ素子は、好適には垂直スタックを形成するので、角度αは、傾斜したアンテナ素子と上記垂直スタックとの間の角度である。したがって、2つのアンテナ素子が放射線を放出する時にメインローブが同じ側を向く放射パターンを生成するように(言い換えると、2つのアンテナ素子がそれらの接地板に対し同じ側にある時)、角度αは90°未満、好適には80°未満、または70°未満である。この傾斜によって、アンテナのほぼ真下、船橋付近に位置するコンテナを含む、アンテナ位置に対して垂直方向にあるコンテナに、良好な信号レベルが提供され得る。
【0055】
第2のアンテナ素子に対する第1のアンテナ素子の最適傾斜角度αは、とりわけ船の寸法、特に積み重なったコンテナの高さに依存し、その目的は、(必須ではないが通常は甲板上の)積重ねの最上部またはその付近のコンテナと、貨物艙の非常に奥深くに位置するコンテナとの両方との通信を可能にすることでなくてはならない。傾斜アンテナ素子は、他方のアンテナ素子と、好適には3°~80°の角度を作る。更に好適な実施形態において、角度は5°~70°の範囲内である。最も好適な実施形態において、角度は45°である。アンテナ素子アレイは、船橋から見た時に船の最長部に向かって見通し伝搬を提供し得る(すなわち、電磁波が送信源から受信器への直通路を移動する)ように(
図3を参照)、船橋または船橋付近に設置すべきである。
【0056】
最適傾斜角度は、アンテナアレイモジュール内のアンテナ素子の数にも依存することが明らかである。たとえば、(以下で詳述する実施形態のように)船の最長部に向いた追加のアンテナ素子がある場合、最適角度αは、2つのアンテナ素子しか有さない実施形態における最適角度とは異なり得る。
【0057】
適切な傾斜角度は、垂直面において良好なカバレージを得るために重要であるが、水平面において良好なカバレージを有することも等しく重要である。したがってアンテナアレイモジュールは、船の全幅がカバーされるように水平面での放射パターンを提供するように設計される。
【0058】
図5は、
図4の実施形態に関する角度αの効果を示す指向性パターンを示す。傾斜角度は、
図5Aにおいてα=0°、
図5Bにおいてα=30°、
図5Cにおいてα=40°、および
図5Dにおいてα=60°である。アンテナ素子(11)の他方(12)に対する傾斜が大きくなると、放射パターンは指向性が小さくなり、最大放射の方向は水平方向に対して下方移動する。これにより、アンテナ直下にある貨物艙の最深部におけるコンテナにも到達することが可能になる。
【0059】
図6は、アンテナ素子アレイに関してアンテナビーム幅がどのように計算されるかの例を示す。図において、h
aは、船橋または船橋付近に位置するアンテナアレイモジュールのアンテナ素子の(船の底部に対する)高さを表す。最近接コンテナ(最悪の場合)の高さがh
1である。船橋と上記最近接コンテナとの間の距離がd
1である。最遠方コンテナ(最悪の場合)の高さはh
2であり、その船橋からの距離がd
2で表される。アンテナアレイモジュールによってカバーする必要がある角度θ
vは、
【数1】
のように計算され得る。同様に、角度θ
hに関して、次の式を立てることができる。
【数2】
例として、h
a=62、h
1=3、d
1=5、h
2=40、およびd
2=100とすると、
θ
v=θ
h=72°
となる。
【0060】
アンテナアレイモジュールの有利な実施形態において、長い方の経路に向けられた2より多い数のアンテナ素子がモジュール内に存在する。同じ指向を有する2より多い数のアンテナ素子があることにより、指向性が向上する。上述したように、傾斜角度αの最適な選択も、2より多い数のアンテナ素子を有することによる影響を及ぼされ得る。
図7は、長い方の経路を向いた3つのアンテナ素子を有する構成を示す。
図8は、様々な傾斜角度(
図8Aにおいてα=0°、
図8Bにおいてα=30°、
図8Cにおいてα=45°、および
図8Dにおいてα=60°)によって得られる、この構成に関する何らかの指向性パターンを示す。アンテナ素子(11)の他のアンテナ素子(12、17)に対する傾斜が大きくなると、放射パターンは指向性が小さくなり、最大放射の方向は水平方向に対して下方移動する。他の実施形態において、第3のアンテナ素子(17)もアンテナ素子(12)に対して傾斜しているという場合もあってよい。これは、特定の場合、特に船の寸法に依存する。追加の傾斜アンテナ素子があることは、良好なカバレージを実現するために有利であり得る。
【0061】
ここで
図4に示す3つのアンテナ素子を有する最小構成を再び参照すると、このアンテナアレイモジュールの実施形態は、上述したように船の長部をカバーする2つのアンテナ素子(11、12)以外に、他の2つのアンテナ素子、すなわち傾斜したアンテナ素子およびその隣接アンテナ素子が指す側の反対側に向けられたアンテナ素子(16)も備える。後者が(長部に対応する)前方方向と称される場合、反対側への上記アンテナ素子は、(短部に対応する)後方方向を指すと言える。第3のアンテナ素子は主に、第1および第2のアンテナ素子が主に放射する経路と反対側の第2の経路に向かって放射する。ただしこれは、必ずしも第1の経路と第2の経路との間に180°の差があると解釈されるものではない。第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子との間の傾斜角度により、差は180°ではない。ただし、2つの経路が常に船の異なる側を指すということは、それらの差が90°より大きいことを意味する。アンテナ素子(11、12、16)の各々は、モジュールの実施形態において
図1のアンテナ素子(1)として実装され得る。
【0062】
本発明のアンテナアレイモジュールの実施形態は、船の短部(
図3を参照)の無線カバレージが大幅に改善される点で有利である。留意すべき点として、この後方方向において、主要放射メカニズムは他のアンテナ素子と同じではない。これらの他のアンテナ素子は、見通し伝搬を利用するが、後方方向に向けられたアンテナ素子は、水平縁における信号の回折に依拠する。一般にレールの1つにアンテナアレイモジュールが設置されるモンキーブリッジの幅によって、船の短い側で通信を確立する必要がある多くのコンテナ位置との見通し線が存在しない。放射電波は、モンキーブリッジの縁部を、回折をもたらすことによって影部分(すなわち短い方の経路)におけるカバレージを得ることに寄与する金属障害物と見なす。船内で行われた無線カバレージ実地試験および受信信号電力の分析により、アンテナアレイが取り付けられたレールより上の高さに位置する1または複数のアンテナ素子(複数も可)は、船の短い方の部分に良好なカバレージをもたらすことが結論付けられた。好適な実施形態において、後方方向を向いたアンテナ素子は、傾斜していない。複数のそのようなアンテナ素子が存在する場合、好適な実施形態において、それらは垂直に積み重ねられる。
図9は、2つの経路における異なる種類の伝搬を示す。
【0063】
他の実施形態において、アンテナアレイモジュールは4つのアンテナ素子を備えてよく、各方向に2つのアンテナ素子がある。2つのアンテナ素子は、互いに対し傾斜している。好適には、アンテナ素子の1つは垂直面に位置する。他の2つのアンテナ素子は、後方方向を向いている。ここでも、1または複数のアンテナ素子、好適には全てのアンテナ素子は、1つの実施形態において、
図1のアンテナ素子(1)として実装され得る。
【0064】
アンテナアレイモジュールは一般に、船のモンキーブリッジに配置され、モジュールのアンテナ素子は、外洋で生じ得る厳しい状況から保護される必要がある。したがって、アンテナアレイモジュールは好適には、
図10に示すようにハウジングまたはレドーム(7)を備える。この図は更に、支持体(8)も示し、これによってアンテナアレイモジュールがモンキーブリッジのレールに固定される。
【0065】
ハウジングまたはレドーム(7)は、アンテナアレイ全体の寸法を最小限にするとともに、特に、たとえば強風などの悪天候条件下で、また特に船が外洋にいる場合、アンテナアレイ構造の表面に生じる風荷重を低減するように設計される。内部構造またはフレームは、構造全体が機械的応力を受ける、風、船の動揺、衝撃、振動などの外部効果を支持および分配する。この内部構造は、異なるアンテナ素子、電力分割器/結合器、アンテナ素子を電力分割器/結合器に接続するケーブル、および電力分割器/結合器を外部アンテナインタフェースに接続するケーブルもホストする。アンテナアレイモジュールの実施形態(たとえば、一方が他方に対し傾斜している前方方向を向いた2つの素子と、後方方向を向いた第3の素子とを有する実施形態、後方方向を向いた素子を更に多く有する実施形態・・・)に依存して、内部構造は、形状および/または寸法がわずかに異なり得るが、ハウジング(7)および支持体(8)は、アンテナ素子の数にかかわらず同じままである。
【0066】
貨物艙内に保管される物品、たとえばコンテナには、本発明のアンテナアレイモジュールを介して、たとえばモンキーブリッジ上に位置する通信ユニットとの双方向通信を可能にするトランスポンダまたはタグが備わってよい。物品、たとえばコンテナには更に、コンテナの内部または外側の近辺の環境条件を示す1または複数のパラメータの追跡を維持する1または複数の感知手段が設けられる。また、貨物がない場合でも、たとえば貨物艙内の状態に関連する通信が可能であるように、センサが設けられたトランスポンダは船内にも提供され得る。コンテナ(または他の保管物品)のトランスポンダまたは船自体に位置するトランスポンダと通信ユニットとの間でコマンドが交換され、たとえば以下のデータの1または複数を要求および伝達してよい。
・コンテナの識別
・コンテナ内またはコンテナ外の温度
・湿度
・電離放射線
・外気の化学組成
・コンテナで感知された電磁場
・コンテナが受けた衝撃、揺れ、または振動
・トランスポンダでの遠隔処理を可能にするために必要な情報(たとえば性能インジケータ)の交換(たとえばオン/オフの切換え、トランスポンダへのコマンド(複数も可)の送信によるファームウェアのアップグレード、およびアップグレードを実行するために必要なファイルをトランスポンダがダウンロードすること、・・・)。
【0067】
トランスポンダは、基本的に、たとえばUS2004/246104号と同じまたは同様の構成要素を有してよい。トランスポンダは、通信ユニットからのコマンド、たとえば自身の識別データまたは1または複数のパラメータに関するデータの送信要求を受信するために構成されたモジュールを備える。トランスポンダモジュール内のアンテナは、上述したようなアンテナアレイモジュールと協働するように適合される。具体的には、トランスポンダモジュール内のアンテナは、たとえばサイズ、バッテリ、および重量に関する制約を満たす。コンテナが金属である場合、アンテナの位置に関しても制約がある。意図される応用に関して、小型プリントアンテナが最も好適である。
【0068】
トランスポンダは更に、要求された情報を通信ユニットに返送するようにも構成される。これはいくつかの方法で組織化され得る。1つの実施形態において、トランスポンダから通信ユニットへの通信は、半二重形式で、反対方向と同じ周波数を用いてよい。他の実施形態において、通信ユニットへの通信に関して、トランスポンダへの方向で用いられる周波数とは異なる、同じ周波数範囲内の専用周波数が用いられる。
【0069】
エネルギ節減のために、通信システムは、有利には低電力モードを有してよく、この場合、コンテナのトランスポンダは、ウェイクアップ信号の受信までスリープモードに留まる。ウェイクアップ信号は、特定のトランスポンダ、またはトランスポンダのセット、または全てのトランスポンダに向けられ得る。トランスポンダがウェイクアップされる方法は、物理層の上の層に適用されるプロトコルに依存してよい。トランスポンダ挙動は、一般にプログラム可能であり、たとえばX分/時間/日ごとにウェイクアップし、特定の動作セットを行い、これらの動作の1または複数の結果を報告し、その後、スリープに戻る。
【0070】
本発明のアンテナアレイモジュールは、好適には、たとえば433MHz、または868MHz、または915MHzの特定の周波数で動作するように構成される。特定の実施形態において、各々が異なる周波数で動作する複数のアンテナモジュールアレイが隣接して配置される。たとえば、1つが433MHzで、1つが868MHzで、1つが915Mhzで動作する、上述したような3つのアンテナモジュールが提供され得る。いくつかの実施形態において、所与の瞬間に3つのうちの1つのみが動作可能であってよい。用いられる周波数は、通信ユニットによって自動的に選択され、または遠隔オペレータによって手動でトリガされ得る。
【0071】
いくつかの実施形態において、アンテナアレイモジュールは、2つ以上の周波数で切り換わるように構成され得る。
【0072】
通信ユニットは、アンテナアレイモジュールを備える通信システムの好適な実施形態において、ゲートウェイ、すなわち、たとえばホストネットワークと遠隔ネットワークとの間の通信およびインタラクションを可能にするネットワーキングハードウェアデバイスの一部として実装される。ゲートウェイは、ネットワークの入口および出口点の役割を果たす。ゲートウェイは、別個のネットワーク部分、すなわち船上のデバイス、クラウド、陸上のインフラの間のブリッジを提供する。
【0073】
1または複数のコンテナのトランスポンダからの情報の一部が、通信ユニット(たとえばゲートウェイ)内のアンテナアレイモジュールを介して受信されると、通信ユニットは、既定の方法で動作してよい。通信ユニット(たとえばゲートウェイまたはオンボード中央機器)のアンテナアレイモジュール(複数も可)は、船上のセンサまたはコンテナから到来する情報を陸上のインフラに中継する(または逆に、遠隔コマンドを収集し、それらを船上の関連センサまたはコンテナに中継する)ためにどのネットワークが利用可能であるかを知るための認知機構に接続され、これを備える。用いられるネットワークおよびネットワーク取付け方法は、この種類のゲートウェイの特定の実装に依存する。一例において、ゲートウェイ/中央機器は、地上側セルラおよび衛星通信のために適合される場合があり、(ネットワーク可用性、関連するトラフィック/サービスコストなどに関連する、または関連しない)設計に依存して、通信ユニットは、最初にセルラ通信を確認することを選択し、利用可能な地上側セルラネットワークがない場合のみ、衛星ネットワークを確認してよい。他の例において、丁度その逆の場合もある。アンテナは、船内で一種のWiFiローカルネットワーク、すなわち何らかの種類の「内部」または「ローカル」ネットワークインタフェースを生成し、地上側セルラ、衛星、その他は、「外部」ネットワークインタフェース側にある。
【0074】
他の態様において、本発明は、貨物船にアンテナアレイモジュールを設置するための方法に関する。この方法は、上述したようなアンテナアレイモジュールを提供することを備える。次に、アンテナアレイモジュールは、貨物船の船橋上のプラットフォームのレールに取り付けられる。傾斜角度および船の長い方の側への見通し伝搬を最大限に利用するために、アンテナアレイモジュールは、最も好適には、船の長い方の側を向いた設置甲板(典型的にはモンキーブリッジ)側に位置するレールに設置される。上述したように、貨物船の船橋は一般に、船を長さ軸に沿って長部および短部に分割するように配置される。第1(11)のアンテナ素子は、第2(12)のアンテナ素子に対して傾斜している。これらのアンテナ素子は、それらの指向性パターンのメインローブが、長部に対応する第1の経路の方向を向くように配置される。第3(16)のアンテナ素子は、主に第1の経路の反対側の第2の経路に向かって放射するように配置される。
【0075】
本発明は、図面および上記説明において詳しく例示および説明されたが、そのような例示および説明は、実例または典型例と見なされ、限定的なものではない。上記説明は、本発明の特定の実施形態を詳述する。ただし、理解されるように、文書内で上記がいかに詳細に示されようとも、本発明は、多数の方法で実施され得る。本発明は、開示される実施形態に限定されるものではない。
【0076】
開示される実施形態の他の変形例は、図面、本開示、および添付の特許請求の範囲を見本として、特許請求対象である本発明の実施において当業者に理解され遂行され得る。特許請求の範囲において、「備える」という用語は、他の要素またはステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」または「an」は、複数を除外するものではない。単一のプロセッサまたは他のユニットが、特許請求の範囲に記載される複数の事項の機能を果たしてよい。互いに異なる従属クレームに特定の基準が記載されることは、これらの基準の組み合わせを有利に用いることができないことを示すものではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に、またはその一部として供給される、たとえば光学記憶媒体またはソリッドステート媒体などの適当な媒体に格納/分散され得るが、他の形式で、たとえばインターネットや他の有線または無線テレコミュニケーションシステムを介して分散されてもよい。特許請求の範囲における任意の参照符号は、その範囲を限定するものと解釈されてはならない。