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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】銅促進ゼオライトを調製する方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/30 20060101AFI20240708BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240708BHJP
   B01J 29/76 20060101ALI20240708BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20240708BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
B01J37/30 ZAB
B01D53/94 222
B01J29/76 A
B01J37/02 301C
B01J37/08
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022571304
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 US2021038875
(87)【国際公開番号】W WO2021262966
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】63/044,198
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】シュエ,ウェン-メイ
(72)【発明者】
【氏名】モイニ,アーマド
(72)【発明者】
【氏名】ペトロヴィチ,イヴァン
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-519038(JP,A)
【文献】特表2010-527877(JP,A)
【文献】特表2013-514167(JP,A)
【文献】特表2016-536126(JP,A)
【文献】特表2022-508041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属イオン交換ゼオライトを含む選択的触媒還元触媒を調製するためのプロセスであって、
アンモニウム形態のゼオライトを、遷移金属イオン源、及び任意選択的に、酸を含む、水性混合物と混合して、遷移金属イオン交換ゼオライトを含むスラリーを形成することを含そして前記遷移金属イオン源が、酸化銅である、プロセス。
【請求項2】
前記水性混合物が、前記酸を含み、前記酸が、酢酸である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記ゼオライトが、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AVL、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOF、BOG、BOZ、BPH、BRE、BSV、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EEI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、EZT、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IFY、IHW、IMF、IRN、ISV、ITE、ITG、ITH、ITW、IWR、IWS、IWV、IWW、JBW、JRY、JSR、JST、KFI、LAU、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTF、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MRE、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MVY、MTW、MWF、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NPT、NSI、OBW、OFF、OKO、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PCR、PHI、PON、PUN、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAF、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SCO、SEW、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SFS、SFW、SGF、SGT、SIV、SOD、SOF、SOS、SSF、SSY、STF、STI、STO、STT、STW、SVR、SZR、TER、THO、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOS、UOZ、USI、UTL、UWY、VET、VFI、VNI、VSV、WIE、WEN、YUG、ZON、及びそれらの混合物又は連晶から選択される骨格タイプを有する、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ゼオライトが、CHA及びAEIから選択される骨格タイプを有する、請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ゼオライトが、CHA骨格タイプを有する、請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ゼオライトが、Si、Al、及びOからなる骨格を有するアルミノシリケートであり、前記骨格内のSiO:Alのモル比が、約2~約300、約10~約100、及び/又は約20~約50である、請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記水性混合物が、バインダー成分を更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記バインダー成分が、Al、Si、Ti、Zr、Ce、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つを含む、請求項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記バインダー成分が、酢酸ジルコニウムである、請求項又はに記載のプロセス。
【請求項10】
前記水性混合物が、糖、分散剤、表面張力低減剤、レオロジー調整剤、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの添加剤を更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記混合が、約1時間~約48時間、約12時間~約24時間の一定期間、少なくとも約12時間、又は少なくとも約18時間起こる、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記混合が、約10℃~約50℃、又は約15℃~約25℃の温度で行われる、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記混合前及び/又は前記混合中に前記水性混合物を粉砕することを更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記混合に続いて、前記スラリーに耐火性金属酸化物担体材料を添加することを更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
基材を、前記金属イオン交換ゼオライトを含む前記スラリーと接触させて、前記基材上にコーティングを形成することであって、前記基材が、入口端部、出口端部、前記入口端部から前記出口端部まで延在する軸方向長さ、及びそれを通って延在する前記基材の内壁によって画定された複数の通路を含む、形成することと、
前記コーティングされた基材を乾燥させることと、
前記コーティングされた基材を焼成することと、
任意選択的に、前記接触、乾燥、及び焼成ステップを1回以上繰り返すことと、を更に含み、
前記基材を前記スラリーと接触させる前に、前記スラリーが、濾過又は洗浄されていない、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記乾燥が、約100℃~約150℃の温度で実施される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記焼成が、約400℃~約600℃の温度で実施される、請求項15又は16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記基材が、フロースルー基材又はウォールフローフィルタである、請求項1517のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記遷移金属イオン交換ゼオライトが、前記遷移金属イオン交換ゼオライトの重量に基づいて、かつ遷移金属酸化物として計算して、約2重量%~約10重量%、約2.5重量%~約5.5重量%、又は約3重量%~約5重量%の範囲の遷移金属の量を有する、請求項1~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、2020年6月25日に出願された米国仮特許出願第63/044,198号に対する優先権を主張し、この内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、エンジン排気中の窒素酸化物を選択的に還元するための金属促進ゼオライト触媒などの排気ガス処理触媒の分野、及びそのような触媒を調製するための方法に関する。
【0003】
長い年月にわたって、窒素酸化物(NO)の有害な成分が大気汚染を引き起こしてきた。NOは、内燃エンジン(例えば、自動車及びトラック)、燃焼設備(例えば、天然ガス、石油、又は石炭によって加熱を行う発電所)、並びに硝酸生成プラントなどからの排気ガスに含有されている。
【0004】
NO含有ガス混合物を処理して、大気汚染を減少させるために、様々な処理方法が使用されてきた。1つの処理タイプは、窒素酸化物の接触還元を伴う。(1)一酸化炭素、水素、又は低分子量炭化水素が還元剤として使用される非選択的還元プロセス、及び(2)アンモニア又はアンモニア前駆体が還元剤として使用される選択的還元プロセス、という2つのプロセスがある。選択的還元プロセスでは、化学量論量の還元剤を用いて高度な窒素酸化物除去を達成することができる。
【0005】
選択的還元プロセスは、SCR(選択的触媒還元)プロセスと称される。SCRプロセスは、大気中の酸素の存在下で還元剤(例えば、アンモニア)を用いて窒素酸化物の触媒還元を使用し、結果として、主に窒素及び蒸気の形成をもたらす:
4NO+4NH+O→4N+6HO(標準SCR反応)
2NO+4NH+O→3N+6HO(低速SCR反応)
NO+NO+2NH→2N+3HO(高速SCR反応)
【0006】
SCRプロセスで用いられる触媒は、水熱条件下で、広い使用温度条件範囲、例えば、200℃~600℃以上にわたって良好な触媒活性を維持し得る。SCR触媒は、一般に、粒子の除去に使用される排気ガス処理システムの構成要素である煤フィルタの再生中などに、水熱条件で用いられる。
【0007】
SCRプロセスで用いられる現在の触媒は、酸素の存在下でアンモニア、尿素、又は炭化水素のような還元剤とともに窒素酸化物のSCRで使用されている金属促進ゼオライトを含む。様々な金属促進ゼオライトSCR触媒及びそれらの調製方法が知られている。金属促進ゼオライトを調製するために、一般に、ゼオライトのアンモニウム(NH )形態及び金属前駆体(例えば、可溶性金属塩)を溶液中でイオン交換に供することによって、卑金属がゼオライトにイオン交換される。このプロセスは、液相イオン交換と称される(LPIE)。例えば、LPIEプロセスを開示する米国特許第8,293,199号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。イオン交換ステップの後には、一般に、イオン交換されたゼオライトの濾過、洗浄、及び乾燥が続く。この金属イオン交換プロセスは、労力及び時間集約型である。例えば、イオン交換反応を実施するには、一般に、数時間がかかり、濾過及び洗浄に時間が費やされる。金属促進ゼオライトの金属含有量(例えば、銅)を制御するには、金属前駆体濃度、pH、温度、洗浄プロセスなどのイオン交換プロセスパラメータの精密な制御が必要である。そのようなプロセスにおける濾過及び洗浄ステップは、処分を必要とする大量の金属溶液廃棄物を生成する場合がある。例えば、100グラムの銅イオン交換ゼオライトの調製には、約10リットルの銅排気物溶液が生成され得る。
【0008】
代替プロセス(インサイチュイオン交換、ISIE)は、これらのステップのいくつかを回避することができる。ISIEは、NH 形態ではなく水素形態のゼオライトを使用する。このようなプロセスは、例えば、KimらのUS2019/0322537に記載されており、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。しかしながら、ゼオライトの水素形態を調製するには、NH 形態を焼成する追加のステップが必要である。この高温焼成プロセスは、エネルギー必要量に起因してコストがかかる。更に、焼成中、ゼオライト脱アルミニウム化の可能性がある。したがって、先行するプロセスの不利益のいくつかを回避する、金属促進ゼオライトSCR触媒を調製するための改善された金属イオン交換プロセスを提供することが当技術分野において依然として必要である。
【0009】
本開示は、一般に、選択的触媒還元(SCR)触媒を調製するためのインサイチュイオン交換(ISIE)プロセスに関する。本開示は、遷移金属(例えば、銅)イオンをゼオライトに交換するための単純かつ迅速な方法を提供する。驚くべきことに、本方法のある特定の実施形態は、従来的に調製された触媒に匹敵する活性有するSCR触媒を提供しながら、遷移金属充填量の精密な制御を容易にし、従来の液相イオン交換(LPIE)プロセスで必要とされる濾過及び洗浄ステップを不要にし、金属溶液廃棄物を排除又は削減する。
【0010】
したがって、一実施形態では、遷移金属イオン交換ゼオライトを含むSCR触媒を調製するためのプロセスであって、(i)アンモニウム(NH )形態のゼオライトを、水、遷移金属イオン源、及び任意選択的に、酸を含む、水性混合物と混合して、遷移金属イオン交換ゼオライトを含むスラリーを形成することを含む、プロセスが提供される。
【0011】
いくつかの実施形態では、遷移金属は、銅、マンガン、鉄、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、遷移金属イオン源は、遷移金属の酸化物、硝酸塩、塩化物、硫酸塩、酢酸塩、水酸化物、シュウ酸塩、アセチルアセトネート、及び炭酸塩である。いくつかの実施形態では、遷移金属イオン源は、酸化銅(CuO)である。
【0012】
いくつかの実施形態では、酸は、酢酸である。
【0013】
いくつかの実施形態では、ゼオライトは、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AVL、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOF、BOG、BOZ、BPH、BRE、BSV、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EEI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、EZT、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IFY、IHW、IMF、IRN、ISV、ITE、ITG、ITH、ITW、IWR、IWS、IWV、IWW、JBW、JRY、JSR、JST、KFI、LAU、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTF、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MRE、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MVY、MTW、MWF、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NPT、NSI、OBW、OFF、OKO、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PCR、PHI、PON、PUN、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAF、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SCO、SEW、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SFS、SFW、SGF、SGT、SIV、SOD、SOF、SOS、SSF、SSY、STF、STI、STO、STT、STW、SVR、SZR、TER、THO、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOS、UOZ、USI、UTL、UWY、VET、VFI、VNI、VSV、WIE、WEN、YUG、ZON、及びそれらの混合物又は連晶からなる群から選択される骨格タイプを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、CHA及びAEIからなる群から選択される骨格タイプを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、CHA骨格タイプを有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、ゼオライトは、Si、Al、及びOからなる骨格を有するアルミノシリケートであり、骨格内のSiO:Alのモル比が、約2~約300、約10~約100、又は約20~約50である。
【0015】
いくつかの実施形態では、水性混合物は、バインダー成分を更に含む。いくつかの実施形態では、バインダー成分は、Al、Si、Ti、Zr、Ce、又はそれらの2つ以上の混合物を含む。いくつかの実施形態では、バインダー成分は、酢酸ジルコニウムである。
【0016】
いくつかの実施形態では、水性混合物は、糖、分散剤、表面張力低減剤、レオロジー調整剤、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の添加剤を更に含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、混合は、約1時間~約48時間、若しくは約12時間~約24時間の一定期間、又は少なくとも約12時間若しくは少なくとも約18時間起こる。
【0018】
いくつかの実施形態では、混合は、約10~約50℃、又は約15~約25℃の温度で行われる。
【0019】
いくつかの実施形態では、このプロセスは、混合前及び/又は混合中に水性混合物を粉砕することを更に含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、このプロセスは、混合に続いて、スラリーに耐火性金属酸化物担体材料を添加することを更に含む。
【0021】
このプロセスは、(ii)基材を、金属イオン交換ゼオライトを含むスラリーと接触させて、基材上にコーティングを形成することであって、基材が、入口端部、出口端部、入口端部から出口端部まで延在する軸方向長さ、及びそれを通って延在する基材の内壁によって画定された複数の通路を含む、形成することと、(iii)コーティングされた基材を乾燥させることと、(iv)(iii)で得られたコーティングされた基材を焼成することと、(v)任意選択的に、(ii)~(iv)を1回以上繰り返すことと、を更に含み、(ii)の接触の前に、前記スラリーが、濾過又は洗浄されていない。
【0022】
いくつかの実施形態では、乾燥は、約100~約150℃の温度で実施される。
【0023】
いくつかの実施形態では、焼成は、約400~約600℃の温度で実施される。
【0024】
いくつかの実施形態では、基材は、フロースルーフィルタ又はウォールフローフィルタである。
【0025】
いくつかの実施形態では、遷移金属イオン交換ゼオライト中に含まれる遷移金属の量は、遷移金属として計算して、遷移金属イオン交換ゼオライトの重量に基づいて、約2~約10重量%、約2.5~約5.5重量%、又は約3~約5重量%の範囲にある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本開示の実施形態の理解を提供するために、参照番号が本開示の例示的な実施形態の構成要素を指す、添付図面が参照される。図面は、例示的にすぎず、本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載される開示は、添付の図において、限定としてではなく、例として図示される。図を簡潔かつ明確にするために、図に図示される特徴は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。例えば、一部の特徴の寸法は、分かりやすくするために他の特徴に対して誇張されている場合がある。更に、適切であると考えられる場合、対応する又は類似の要素を示すために、図の中で参照符号が繰り返される。
【0027】
図1A】ハニカムタイプの基材の斜視図。
図1B図1Aと比べて拡大され、図1Aの基材の端面に対して平行な平面に沿って見た部分断面図であり、基材がフロースルー基材である実施形態における、図1Aに示された複数のガス流路の拡大図を示す。
図2】代表的なウォールフローフィルタの切り欠き図。
図3】本開示の実施形態についての様々な温度でのNOx転化の棒グラフ。
図4A】650℃でエージングした後の本開示の実施形態についての温度に対するNOx転化のプロット。
図4B】800℃でエージングした後の本開示の実施形態についての温度に対するNOx転化のプロット。
図5A】650℃でエージングした後の本開示の実施形態についての温度に対するNOx転化のプロット。
図5B】800℃でエージングした後の本開示の実施形態についての温度に対するNOx転化のプロット。
【0028】
本開示は、一般に、選択的触媒還元(SCR)触媒組成物を調製するためのプロセスに関する。驚くべきことに、本開示によれば、本明細書に開示されるインサイチュイオン交換(ISIE)プロセスは、有利には、銅充填量の精密な制御を提供し、プロセス全体を単純化し、銅溶液廃棄物を排除することが見出された。
【0029】
定義
本明細書における冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、文法的目的語の1つ又は1つより多く(例えば、少なくとも1つ)を指す。本明細書で引用される任意の範囲は、包括的である。
【0030】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、±5%を指す。全ての数値は、明示的に示されているかどうかに関係なく、「約」という用語で修飾される。「約」という用語によって修飾された数値には、特定の識別された値が含まれる。例えば、「約5.0」は、5.0を含む。本明細書での値の範囲の列挙は、本明細書で別途指示がない限り、範囲内に含まれる各個別の値を個別に参照する簡略法として機能することのみを意図し、各個別の値は、本明細書で個別に列挙されているのと同様に本明細書に組み込まれる。
【0031】
「平均粒径」はD50と同義であり、つまり、粒子の個数の半分がこれより大きな粒径を有し、半分がこれより小さな粒径を有することを意味する。粒径は、一次粒子を指す。粒径は、例えば、ASTM法D4464による、分散又は乾燥粉末を用いたレーザー光散乱技術によって測定され得る。D90の粒径分布は、サブミクロンサイズの粒子については走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定された場合、担体含有粒子(ミクロンサイズ)については粒径分析器によって測定された場合に、粒子の90%(数による)が、ある特定のサイズより小さいフェレー径を有することを示す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「BET表面積」は、N吸着によって表面積を決定するためのBrunauer、Emmett、Tellerの方法に関連するその通常の意味を有する。細孔径及び細孔容積は、BETタイプのN吸着又は脱着実験を使用して決定することもできる。
【0033】
「触媒」という用語は、化学反応を促進する材料を指す。触媒活性種は、化学反応を促進するため、「促進剤」とも呼ばれる。
【0034】
「触媒性物品(catalytic article)」又は「触媒物品(catalyst article)」という用語は、所望の反応を促進するために使用される成分を指す。本触媒性物品は、少なくとも1つの触媒性コーティングがその上部に配置された「基材」を含む。
【0035】
本明細書で使用される場合、「含浸された」又は「含浸」は、担体材料の多孔質構造の中への触媒性材料の浸透を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、「モレキュラーシーブ」という語句は、ゼオライト及び他の骨格材料(例えば、同形置換材料)などの骨格材料を指し、これらは、微粒子形態で、1つ以上の促進剤金属と組み合わせて、触媒として使用され得る。モレキュラーシーブは、一般的に四面体型の部位を含み、かつ実質的に均一な細孔分布を有し、平均孔径が20Å以下の、広範な三次元網目構造の酸素イオンに基づく材料である。
【0037】
モレキュラーシーブは、主に、(SiO)/AlO四面体の頑強な網目構造によって形成される空隙の形状に従って区別することができる。空隙への入口は、入口開口部を形成する原子について、6個、8個、10個、又は12個の環原子から形成される。モレキュラーシーブは、モレキュラーシーブのタイプ、並びにモレキュラーシーブ格子に含まれるカチオンのタイプ及び量に依存して、直径が約3~約10Åの範囲である、かなり均一な細孔径を有する結晶性材料である。CHAは、八環細孔開口部及び二重六環二次構造単位を有し、かつ4個の環接続による二重六環構造単位の接続から生じるケージ様構造を有する、「八環」モレキュラーシーブの例である。モレキュラーシーブは、小細孔、中細孔、及び大細孔のモレキュラーシーブ又はそれらの組み合わせを含む。細孔径は、最大環径によって画定される。
【0038】
「NO」という用語は、NO、NO、又はNOなどの窒素酸化物化合物を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「促進された」という用語は、ゼオライト中の固有の不純物とは対照的に、典型的にはイオン交換によって、例えばゼオライト性材料に意図的に添加される成分を指す。ゼオライトは、例えば、銅(Cu)及び/又は鉄(Fe)で促進され得るが、マンガン、コバルト、ニッケル、セリウム、白金、パラジウム、ロジウム、又はそれらの組み合わせなどの他の触媒金属を使用することができる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「選択的触媒還元」(SCR)という用語は、窒素性還元剤を使用して、窒素酸化物を二窒素(N)に還元する触媒性プロセスを指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「基材」という用語は、触媒組成物、すなわち触媒性コーティングが、典型的にはウォッシュコートの形態でその上に配置されているモノリシック材料を指す。1つ以上の実施形態では、基材は、フロースルーモノリス及びモノリシックウォールフローフィルタである。「モノリシック基材」への言及は、入口から出口まで均質かつ連続的である単一構造を意味する。
【0042】
本明細書で使用される場合、「上流」及び「下流」という用語は、エンジンからテールパイプに向かうエンジン排気ガス流の流れに応じた相対的方向を指し、エンジンが上流位置にあり、テールパイプ並びにフィルタ及び触媒などの任意の汚染削減物品がエンジンの下流にある。基材の入口端部は、「上流」端部又は「前」端部と同義である。出口端部は、「下流」端部又は「後」端部と同義である。上流ゾーンは、下流ゾーンの上流にある。上流ゾーンは、エンジン又はマニホールドのより近くにあり得、下流ゾーンは、エンジン又はマニホールドから更に離れ得る。
【0043】
「ウォッシュコート」は、「基材」、例えば、ハニカムフロースルーモノリス基材又は処理されるガス流の通過を可能にするのに十分に多孔性であるフィルタ基材に適用される材料(例えば、触媒)の薄くて付着性のあるコーティングの当技術分野におけるその通常の意味を有する。本明細書において使用され、Heck,Ronald,and Farrauto,Robert,Catalytic Air Pollution Control,New York:Wiley-Interscience,2002,pp.18-19に記載されているように、ウォッシュコート層は、モノリス基材又は下側のウォッシュコート層の表面に配置された材料の、組成的に区別される層を含む。ウォッシュコートは、液体中に特定の固形物含有量(例えば10重量%~50重量%)の触媒を含有するスラリーを調製し、それから、これを基材にコーティングし、乾燥させてウォッシュコート層を提供することによって形成される。基材は、1つ以上のウォッシュコート層を含有し得、各ウォッシュコート層は、何らかの態様が異なることができ(例えば、粒径又は結晶子相のような、ウォッシュコートの物理的特性が異なり得る)、かつ/又は化学触媒機能が異なり得る。
【0044】
別途指示されない限り、全ての部分及び割合は、重量による。「重量パーセント(重量%)」は、別途指示されない場合、いずれの揮発物も含まない組成物全体に基づく、すなわち、乾燥固形物含量に基づく。
【0045】
本明細書に記載されている全ての方法は、本明細書で別途指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる実施例又は例示的文言(例えば、「など」)の使用は、材料及び方法をより良好に説明することのみを意図したものであり、別途請求されない限り、範囲に限定を課さない。本明細書におけるいかなる文言も、特許請求されていない要素を、開示される材料及び方法の実践に必須であるものとして示すものと解釈されるべきではない。
【0046】
本明細書で参照される全ての米国特許出願、公開特許出願及び特許は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0047】
I.SCR触媒を調製するためのプロセス
本開示の一実施形態では、遷移金属イオン交換ゼオライトを含む選択的触媒還元(SCR)触媒を調製するためのプロセスであって、該SCRが、遷移金属イオン交換ゼオライトを含む、プロセスが提供される。このプロセスは、アンモニウム(NH )形態のゼオライトを、一定期間、水、酸、及び遷移金属イオン源を含む水性混合物と混合して、遷移金属イオン交換ゼオライトを含むスラリーを形成することを含む。水性混合物の個々の成分は、本明細書で以下に詳細に記載される。
【0048】
ゼオライト
ゼオライトとは、様々な寸法の細孔及びチャネルを含む多孔質固体である。本明細書で使用される場合、「ゼオライト」という用語は、ケイ素及びアルミニウム原子を更に含む、モレキュラーシーブの特定の例を指す。一般に、ゼオライトは、角を共有するTO四面体(Tは、Al若しくはSiであるか、又は任意選択的にPである)で構成された開口三次元骨格構造を有する。SiO/AlO四面体は、三次元網目構造を形成するように共通の酸素原子によって連結される。アルミノシリケートゼオライト構造は、骨格において同形置換されたリン又は他の金属を含まない。すなわち、「アルミノシリケートゼオライト」は、SAPO、AlPO、及びMeA1PO材料のようなアルミノホスフェート材料を除外し、一方、より広い用語「ゼオライト」は、アルミノシリケート及びアルミノホスフェートを含む。いくつかの実施形態では、ゼオライト材料は、アルミノシリケートゼオライトである。
【0049】
ゼオライト骨格の四面体中心として2価又は3価のカチオンが存在するため、ゼオライトは、対応するカチオン位置がその付近に位置する、いわゆるアニオン部位の形態で負電荷を受け取る。負電荷は、ゼオライト材料の細孔にカチオンを組み込むことによって補償される。アニオン性骨格の電荷のバランスを取るカチオンは、骨格酸素原子と緩く会合しており、残りの細孔容積は、水分子で満たされている。多種多様なカチオンが、これらの細孔を占め得、これらのチャネルを通って移動し得る。非骨格カチオンは一般に交換可能であり、水分子は除去可能である。「交換部位」とは、化学反応を促進するためにゼオライトに意図的に添加されるイオン交換金属カチオン(例えば、Cu又はFeなどの遷移金属カチオン)によって主に占められる、カチオンに利用可能な部位を指す。
【0050】
1つ以上の実施形態によれば、ゼオライトは、構造が識別される骨格トポロジーに基づき得る。典型的には、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、SCO、CFI、SGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IHW、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NSI、OBW、OFF、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PHI、PON、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SGT、SOD、SOS、SSY、STF、STI、STT、TER、THO、TON、TSC、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WIE、WEN、YUG、ZON、又はそれらの組み合わせの構造タイプなどの任意の構造タイプのゼオライトが使用され得る。本ゼオライトは、小細孔、中細孔、又は大細孔のゼオライトであり得る。
【0051】
小細孔ゼオライトは、最大8個の四面体原子によって画定されるチャネルを含有する。本明細書で使用されているように、「小細孔」という用語は、約5オングストロームよりも小さい細孔開口部、例えば約3.8オングストロームオーダーの細孔開口部を指す。小細孔ゼオライトの例としては、骨格タイプACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、ZON、及びそれらの混合物又は連晶が挙げられる。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、小細孔ゼオライトである。
【0052】
中細孔ゼオライトは、10員環によって画定されるチャネルを含有する。中細孔ゼオライトの例としては、骨格タイプAEL、AFO、AHT、BOF、BOZ、CGF、CGS、CHI、DAC、EUO、FER、HEU、IMF、ITH、ITR、JRY、JSR、JST、LAU、LOV、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MVY、MWW、NAB、NAT、NES、OBW、PAR、PCR、PON、PUN、RRO、RSN、SFF、SFG、STF、STI、STT、STW、SVR、SZR、TER、TON、TUN、UOS、VSV、WEI、WEN、及びそれらの混合物又は連晶が挙げられる。
【0053】
大細孔ゼオライトは、12員環によって画定されるチャネルを含有する。大細孔ゼオライトの例としては、骨格タイプAFI、AFR、AFS、AFY、ASV、ATO、ATS、BEA、BEC、BOG、BPH、BSV、CAN、CON、CZP、DFO、EMT、EON、EZT、FAU、GME、GON、IFR、ISV、ITG、IWR、IWS、IWV、IWW、JSR、LTF、LTL、MAZ、MEI、MOR、MOZ、MSE、MTW、NPO、OFF、OKO、OSI、RON、RWY、SAF、SAO、SBE、SBS、SBT、SEW、SFE、SFO、SFS、SFV、SOF、SOS、STO、SSF、SSY、USI、UWY、VET、及びそれらの混合物又は連晶が挙げられる。
【0054】
いくつかの実施形態では、ゼオライトは、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、KFI、LEV、LTN、MSO、SAS、SAT、SAV、SFW、及びTSCからなる群から選択される構造タイプを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、CHA、AEI、AFX、それらの2つ以上の混合物、及びそれらの2つ以上の混ぜ合わされたタイプからなる群から選択される骨格構造タイプを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、CHA及びAEIからなる群から選択される骨格構造タイプを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、骨格タイプCHAを有する。本開示において有用であるCHA構造を有する特定のゼオライトとしては、SSZ-13、SSZ-62、天然チャバザイト、ゼオライトK-G、Linde D、Linde R、LZ-218、LZ-235、LZ-236、ZK-14、SAPO-34、SAPO-4、SAPO-47、及びZYT-6が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、CHA結晶構造を有するゼオライトは、アルミノシリケートゼオライトである。いくつかの実施形態では、アルミノシリケートゼオライトは、SSZ-13である。
【0055】
本ゼオライトのシリカ対アルミナのモル比(「SAR」)は、広範囲にわたって変動し得るが、一般に2以上である。例えば、本ゼオライトは、約5~約1000のSARを有し得る。1つ以上の実施形態では、ゼオライトは、5~250、5~200、5~100、及び5~50を含む、2~300の範囲のシリカ対アルミナのモル比(SAR)を有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、10~200、10~100、10~75、10~60、及び10~50、15~100、15~75、15~60、及び15~50、20~100、20~75、20~60、及び20~50の範囲のSARを有する。いくつかの実施形態では、シリカ対アルミナのモル比(SiO:Al)は、約2~約50である。いくつかの実施形態では、SiO対Alのモル比は、約25である。
【0056】
ゼオライトの粒径は様々であり得る。一般に、ゼオライトの粒径は、約1~約40マイクロメートル、約1~約20マイクロメートル、又は約1~約10マイクロメートルのD90粒径を特徴とし得る。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約1~約5マイクロメートルのD50値、及び約4~約10マイクロメートルのD90値を有する粒子を含む。
【0057】
本ゼオライトは、高表面積、例えば、DIN66131に従って決定して、少なくとも約200m/g、少なくとも約400m/g、少なくとも約500m/g、又は少なくとも約750、又は少なくとも約1000m/g、例えば、約200~約1000m/g、又は約500~約750m/gのBET表面積を呈し得る。1つ以上の実施形態では、BET表面積は、約550~約700m/gである。
【0058】
遷移金属イオン源
本明細書に開示されるように、SCR触媒を調製するためのプロセスは、遷移金属イオン源を含む。「遷移金属」とは、周期表における中央のブロック(IVB~VIII族、IB及びIIB族、又は4~12族)を占める一連の金属元素のうちのいずれかを意味する。好適な遷移金属の例としては、バナジウム(V)、チタン(Ti)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、若しくは銀(Ag)、又はそれらの組み合わせが挙げられ、これらは、NOxの還元に対して触媒的に活性である。いくつかの実施形態では、遷移金属は、銅、マンガン、鉄、又はそれらの組み合わせである。
【0059】
「イオン源」という用語は、水性条件下で、遷移金属のイオンを提供する化合物、錯体、塩などを指し、次いで、これが拡散し、本明細書に上述されたようなゼオライトの交換部位に入ることができる。いくつかの実施形態では、遷移金属イオン源は、遷移金属の酸化物、硝酸塩、塩化物、硫酸塩、酢酸塩、水酸化物、シュウ酸塩、アセチルアセトネート、及び炭酸塩の塩である。いくつかの実施形態では、遷移金属イオン源は、酸化銅、水酸化銅、炭酸銅、硝酸銅、塩化銅、酢酸銅、銅アセチルアセトネート、シュウ酸銅、又は硫酸銅のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、遷移金属イオン源は、炭酸銅である。いくつかの実施形態では、遷移金属イオン源は、塩基性炭酸銅(Cu(OH) Cu(CO))である。いくつかの実施形態では、遷移金属イオン源は、酸化銅(CuO)である。理論に束縛されることを望むものではないが、低い溶解度を有する銅源(例えば、CuO)は、高い溶解度の銅塩(例えば、酢酸銅)から調製された銅イオン交換ゼオライトと比べて優れた触媒活性(例えば、高温NOx転化)を有する銅イオン交換ゼオライトを提供すると考えられている。特に、本開示によれば、本明細書に開示される方法に従って酢酸銅から調製された銅イオン交換ゼオライトは、高温NOx転化について劣った結果を与えることが見出された。再び、理論に束縛されることを望むものではないが、イオン交換反応中に酢酸銅がゼオライト表面に沈殿し、触媒活性の低下をもたらすと考えられている。
【0060】
いくつかの実施形態では、ゼオライトは、銅とイオン交換され得る。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、鉄とイオン交換され得る。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、銅及び鉄の両方とイオン交換され得る。両方の遷移金属が遷移金属イオン交換ゼオライト中に含まれるべき場合、多数の遷移金属前駆体(例えば、銅及び鉄前駆体)が同時にイオン交換され得る。いくつかの実施形態では、銅及び鉄は、同時にゼオライトに交換される(すなわち、遷移金属イオン源は、酸化銅及び酸化鉄などの銅塩及び鉄塩の混合物である。
【0061】

本明細書に開示されるプロセスは、酸性条件下で実施され得る。スラリーについての典型的なpH範囲は、約3~約6である。酸性又は塩基性の種をスラリーに添加してpHを調整してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、スラリーのpHは、酸性水溶液、特にギ酸、酢酸、プロパン酸、又はブタン酸などのカルボン酸の添加によって調整される。いくつかの実施形態では、酸は、酢酸である。
【0062】
バインダー成分
いくつかの実施形態では、このプロセスは、混合ステップ中にバインダー成分を添加することを更に含む。「バインダー成分」という用語は、バインダー、又は焼成時に所望のバインダーに変換されるその前駆体を指す。バインダーは、例えば、触媒が少なくとも約600℃、例えば、約800℃以上の高温及び約5%以上の高水蒸気環境に曝露されたとき、熱エージング後に均質かつ無傷なままの触媒を提供する。いくつかの実施形態では、バインダー成分は、Al、Si、Ti、Zr、Ce、又はそれらの2つ以上の混合物を含む。いくつかの実施形態では、バインダーは、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、又はそれらの2つ以上の混合物若しくは混合酸化物を含む。いくつかの実施形態では、バインダーは、ジルコニアである(ZrO)。いくつかの実施形態では、バインダー成分は、酢酸ジルコニル又は硝酸ジルコニルなどの任意の好適なジルコニア前駆体である。
【0063】
バインダーの粒径は様々であり得る。一般に、バインダーの粒径は、約0.1~約40マイクロメートル、約0.1~約30マイクロメートル、又は約0.1~約25マイクロメートルのD90粒径を特徴とし得る。いくつかの実施形態では、バインダーは、約0.5~約20マイクロメートルのD90値を有する粒子を含む。
【0064】
バインダーは、高表面積、例えば、DIN66131に従って決定して、少なくとも約200m/g、少なくとも約400m/g、少なくとも約500m/g、少なくとも約750、又は少なくとも約1000m/g、例えば、約200~約1000m/g、又は約500~約750m/gのBET表面積を呈し得る。1つ以上の実施形態では、バインダーのBET表面積は、約550~約700m/gである。
【0065】
添加剤
スラリーは、任意選択的に、様々な追加の成分(すなわち、添加剤)を含有し得る。典型的な追加の成分としては、例えば、スラリーの粘度を制御するための添加剤が挙げられるが、これらに限定されない。追加の成分としては、水溶性若しくは水分散性の安定剤(例えば、酢酸バリウム)、促進剤(例えば、硝酸ランタン)、増粘剤、界面活性剤(アニオン性、カチオン性、非イオン性、又は両性界面活性剤を含む)、分散剤、表面張力調整剤、糖、レオロジー調整剤、又はそれらの組み合わせが挙げられ得る。スラリーの特性は、意図された使用状況に依存して変動し得る。例えば、スラリーの固体含有量が変動し得る。いくつかの実施形態では、スラリーは、該スラリーの重量に基づいて、約15~約45重量%の固体含有量を有する。
【0066】
混合
このプロセスは、アンモニウム形態のゼオライトを、水、任意選択的な酸、及び遷移金属イオン源を含む水性混合物と混合して、遷移金属イオン交換ゼオライトを含むスラリーを形成することを含む。混合ステップは、遷移金属イオン源のゼオライトとのイオン交換反応を促進する。理論に束縛されることを望むものではないが、イオン交換プロセスは、混合ステップ中に少なくとも始まり、得られたスラリーは、ある量の金属イオン交換ゼオライトを含むと考えられている。しかしながら、混合ステップで開始されたイオン交換プロセスは、例えば、焼成又はその後の処理ステップ中に更に進行し得る。
【0067】
混合のための期間は変動し得るが、一般に、遷移金属イオン源の実質的に全てがゼオライトの交換部位に入ることを可能にするのに十分な期間行われる。例えば、いくつかの実施形態では、混合は、約1時間~約48時間、若しくは約12~約24時間の一定期間、又は少なくとも約12時間若しくは少なくとも約18時間起こる。いくつかの実施形態では、時間は、約24時間である。いくつかの実施形態では、期間は、約6時間以上、約12時間以上、約18時間以上、又は約24時間以上である。
【0068】
混合ステップは、様々な温度で、例えば、約10、約15、又は約20~約25、約30、約35、約40、約45、又は約50℃などの約10℃~約50℃の温度で実行され得る。ある特定の実施形態では、温度は、約15℃~約25℃、例えば、約20℃であり得る。
【0069】
粉砕
いくつかの実施形態では、この方法は、混合ステップ前又は混合ステップ中に、水性混合物を粉砕することを更に含む。いくつかの実施形態では、スラリーを粉砕して、特定の粒径範囲を提供し、粒子の混ぜ合わせを向上させるか、又は均質な材料を形成する。粉砕は、ボールミル、連続ミル、又は他の同様の装置で達成することができる。いくつかの実施形態では、スラリー中に存在する成分の粒子(例えば、ゼオライト、遷移金属イオン源、バインダーなど)は、約0.5~約20マイクロメートルのD90値を有する。
【0070】
遷移金属イオン交換ゼオライト
混合、及び任意選択的に、粉砕に続いて、スラリーは、遷移金属イオン交換形態のゼオライトを含有する。本プロセスでは、水性混合物と混合する前のゼオライトは、イオン交換部位がNH カチオンで占められていることを意味するアンモニウムイオン(NH )形態であり、これは、プロセス中に遷移金属カチオンに置き換えられる。遷移金属イオンはゼオライトの細孔の中に拡散し、常在するイオン、すなわちNH と交換して、遷移金属イオン交換ゼオライトを形成する。「遷移金属イオン交換」とは、ゼオライトイオン交換部位の少なくとも一部分が遷移金属イオンによって占められていることを意味する。例えば、いくつかの実施形態では、交換部位の50%超が交換され、より具体的には、ある特定の実施形態では、交換部位の70%超が所望の遷移金属イオンと交換される。
【0071】
この文脈における「遷移金属イオン」への言及は、任意の原子価状態での遷移金属の存在を考慮に入れている。例えば、ゼオライトを促進する遷移金属の一部分又は全ては、イオン形態であっても、酸化物形態であってもよい。一般に、ゼオライト中で交換された遷移金属の一部分又は全ては、焼成及び/又は触媒の通常の動作条件への曝露後、酸化物形態で存在するであろう。
【0072】
金属イオン交換ゼオライト中でイオン交換された金属の量は、変動し得る。1つ以上の実施形態では、酸化物として計算した、ゼオライト材料の遷移金属含有量は、揮発物を含まない基準で報告して、少なくとも約0.1重量%である。いくつかの実施形態では、金属イオン交換ゼオライト中に含まれる金属の量は、金属酸化物として計算して、金属イオン交換ゼオライトの重量に基づいて、約1~約15重量%、約2~約10重量%、約2.5~約5.5重量%、約3~約5重量%、又は約3.5~約4重量%の範囲にある。1つ以上の実施形態では、遷移金属は、全ての場合において、ゼオライト性材料の総重量に基づいて、約2~約6重量%の範囲、及び約4~約6重量%の範囲を含む、約1~約10重量%の範囲の量で存在する。1つ以上の特定の実施形態では、遷移金属はCuを含み、CuOとして計算したCu含有量は、いずれの場合も、揮発物を含まない基準で報告して、焼成されたゼオライト性材料の総重量に基づいて、酸化物基準で9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、及び0.1重量%を含む、最大約10重量%の範囲にある。特定の実施形態では、CuOとして計算したCu含有量は、約3~約5重量%の範囲内である。
【0073】
II.SCR触媒性物品を調製するためのプロセス
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される選択的触媒還元(SCR)触媒を調製するためのプロセスは、基材、及び本明細書に開示される調製された遷移金属イオン交換ゼオライトを含むSCR触媒物品の調製を対象とするステップを更に含む。プロセス及びその成分は、本明細書において以下で更に詳細に記載される。
【0074】
耐火性金属酸化物担体
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるSCR触媒を調製するためのプロセスは、耐火性金属酸化物担体材料をスラリーに添加することを更に含む。耐火性金属酸化物は、ガソリン又はディーゼルエンジンの排気に関連付けられた温度などの高温で、化学的かつ物理的な安定性を呈する。好適な耐火性金属酸化物の例としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、プラセオジム、スズ酸化物など、並びにそれらの物理的混合物又は化学的組み合わせ、例えば、原子的にドープされた組み合わせ、及び例えば活性化アルミナなどの高表面積又は活性化合物が挙げられる。高表面積の耐火性金属酸化物担体は、20Åより大きい細孔及び広い細孔分布を有する。「ガンマアルミナ」又は「活性化アルミナ」とも称される、アルミナ担体材料などの高表面積金属酸化物担体は、典型的には、60m/gを超える、多くの場合、最大約200m/g以上のBET表面積を呈する。例示的な耐火性金属酸化物は、約50~約300m/gの比表面積を有する高表面積のγ-アルミナを含む。そのような活性アルミナは、通常、アルミナのガンマ相とデルタ相との混合物であるが、相当量のエータ、カッパ、及びシータアルミナ相も含有し得る。
【0075】
耐火性金属酸化物担体は、ガンマアルミナ、シリカアルミナ、アルミナ上にコーティングされたセリア、アルミナ上にコーティングされたチタニア、又はアルミナ上にコーティングされたジルコニアである。シリカ-アルミナ、セリア-ジルコニア、プラセオジミア-セリア、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-セリア-ジルコニア、ランタナ-アルミナ、ランタナ-ジルコニア-アルミナ、バリア-アルミナ、バリア-ランタナ-アルミナ、バリア-ランタナ-ネオジミアアルミナ、及びアルミナ-セリアなどの金属酸化物の組み合わせが含まれる。例示的なアルミナとしては、大細孔ベーマイト、ガンマ-アルミナ、及びデルタ/シータアルミナが挙げられる。ある特定のプロセスにおいて出発材料として使用される有用な市販のアルミナとしては、高仮比重ガンマ-アルミナ、低又は中仮比重大細孔ガンマ-アルミナ、並びに低仮比重大細孔ベーマイト及びガンマ-アルミナなどの活性化アルミナが挙げられる。いくつかの実施形態では、耐火性金属酸化物は、シリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、セリア-ジルコニア複合材料、チタニア、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、耐火性金属酸化物は、ベーマイト、ガンマ-アルミナ、又はデルタ/シータアルミナである。
【0076】
基材コーティングプロセス
1つ以上の実施形態では、遷移金属イオン交換ゼオライトを含む本SCR触媒は、SCR触媒物品を形成するために基材上に配置される。基材を含む触媒性物品は、一般に、排気ガス処理システムの一部として用いられる(例えば、触媒物品としては、本明細書に開示されているSCR触媒を含む物品が挙げられるが、これらに限定されない)。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるプロセスは、
(ii)基材を、金属イオン交換ゼオライトを含むスラリーと接触させて、基材上にコーティングを形成することであって、基材が、入口端部、出口端部、入口端部から出口端部まで延在する軸方向長さ、及びそれを通って延在する基材の内壁によって画定された複数の通路を含む、形成することと、
(iii)コーティングされた基材を乾燥させることと、
(iv)(iii)で得られたコーティングされた基材を焼成することと、
(v)任意選択的に、(ii)~(iv)を1回以上繰り返すことと、を更に含む。
【0077】
「接触」という用語は、金属イオン交換ゼオライトを含むスラリーと接触して、典型的には当技術分野で知られている任意のウォッシュコート技術を使用してコーティングを提供する(すなわち、スラリーが基材上に配置される)、本明細書に記載の基材を指す。次いで、ウォッシュコートされた基材を乾燥及び焼成して、コーティング層を提供する。複数のコーティングが適用される場合、各ウォッシュコートが適用された後、及び/又は所望の数の複数のウォッシュコートが適用された後、基材は、乾燥及び/又は焼成される。いくつかの実施形態では、遷移金属イオン交換形態のゼオライトを含有するスラリーを形成することと、基材をスラリーと接触させるステップとの間に、追加のステップは実施されない。したがって、いくつかの実施形態では、遷移金属イオン交換ゼオライトを含むスラリーは、更に処理ステップを介在させることなく、基材をコーティングするために直接使用される。いくつかの実施形態では、開示された方法は、濾過、洗浄、乾燥、再スラリー化などの追加の処理ステップを必要とする旧来のプロセスと比べて有利である。いくつかの実施形態では、開示されたプロセスは、ゼオライトのアンモニウム形態の焼成、又はイオン交換ゼオライトの中間乾燥などのエネルギー集約型ステップを回避する。いくつかの実施形態では、開示された方法は、使用される水の分量を削減する、生み出される有害金属廃棄物の分量を削減する、プロセスに必要な時間量を削減する、プロセスに必要な労力を削減する、又はそれらの組み合わせにおいて、旧来のプロセスと比べて有利である。いくつかの実施形態では、開示された方法は、従来のプロセスと比較した同じ生成物に比べて実質的に同一の特徴及び性能を有する生成物(遷移金属イオン交換ゼオライト、又は遷移金属イオン交換ゼオライトを含むコーティングされた基材)を提供しながら、金属前駆体濃度、pH、温度、洗浄プロセスなどのイオン交換プロセスパラメータの精密な制御の必要性を回避することにおいて、旧来のプロセスと比べて有利である。
【0078】
基材
有用な基材は、三次元であり、円柱と同様の長さ、直径、及び体積を有する。形状は、必ずしも円柱に一致する必要はない。現在の基材は、入口端及び出口端を有し、長さは、入口端及び出口端によって画定された軸方向長さである。
【0079】
1つ以上の実施形態によると、開示される触媒のための基材は、自動車触媒を調製するために典型的に使用されるあらゆる材料から構成されてもよく、典型的には、金属又はセラミックのハニカム構造を含む。基材は、典型的には、それを通って延在する基材の内壁、並びにウォッシュコート組成物が適用及び接着される複数の壁面によって画定される複数の通路を提供し、それによって触媒のための基材として機能する。
【0080】
セラミック基材は、任意の好適な耐火性材料、例えば、コーディエライト、コーディエライト-α-アルミナ、チタン酸アルミニウム、チタン酸ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコンムライト、リシア輝石、アルミナ-シリカ-マグネシア、ケイ酸ジルコン、珪線石、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、葉長石、α-アルミナ、アルミノケイ酸塩などから作製され得る。
【0081】
基材はまた、1つ以上の金属又は金属合金を含む、金属であり得る。金属性基材は、チャネル壁に開口部又は「パンチアウト」を有するものなどの任意の金属性基材を含み得る。金属性基材は、ペレット、圧縮金属性繊維、波形シート、又はモノリシック形態などの様々な形状で用いられ得る。金属性基材の具体例としては、耐熱卑金属合金、特に、鉄が実質的又は主要な成分であるものが挙げられる。そのような合金は、ニッケル、クロム、及びアルミニウムのうちの1つ以上を含有し得、これらの金属の合計は、有利には、いずれの場合も、基材の重量に基づいて、少なくとも約15重量%(重量パーセント)の合金、例えば、約10~約25重量%のクロム、約1~約8重量%のアルミニウム、及び0~約20重量%のニッケルを含み得る。金属性基材の例としては、直線的なチャネルを有するもの、ガス流を妨害し、チャネル間のガス流の連通を開くために軸方向チャネルに沿って突出したブレードを有するもの、並びにブレード及びモノリス全体にわたる半径方向のガス輸送を可能にする、チャネル間のガス輸送を向上させるための穴も有するものが挙げられる。
【0082】
通路がそれを通した流体流に対して開放するように、基材の入口又は出口面からそれを通して延在する、微細な平行ガス流路を有するタイプのモノリシック基材(「フロースルー基材」)などの本明細書に開示される触媒性物品のための任意の好適な基材が、採用され得る。別の好適な基材は、基材の長手方向軸線に沿って延在する複数の微細な実質的に平行なガス流路を有するタイプのものであり、典型的には、各通路は、基材本体の一方の端部において遮断されており、1つおきに通路が、反対側の端面において遮断されている(「ウォールフローフィルタ」)。フロースルー及びウォールフロー基材はまた、例えば、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる国際出願公開第2016/070090号に教示されている。
【0083】
いくつかの実施形態では、触媒基材は、ウォールフローフィルタ又はフロースルー基材の形態のハニカム基材を含む。いくつかの実施形態では、基材は、ウォールフローフィルタである。いくつかの実施形態では、基材は、フロースルー基材である。フロースルー基材及びウォールフローフィルタが、本明細書で以下に更に考察される。
【0084】
フロースルー基材
いくつかの実施形態では、基材は、フロースルー基材(例えば、フロースルーハニカムモノリシック基材を含むモノリシック基材)である。フロースルー基材は、通路が流体流に対して開いているように、基材の入口端部から出口端部まで延在している微細で平行なガス流路を有する。流体の入口から流体の出口までの本質的に直線の経路である通路は、壁によって画定されており、壁の上又は壁の中において、触媒性コーティングは、通路を通って流れるガスが触媒性材料と接触するように、配置されている。フロースルー基材の流路は、薄い壁のチャネルであり、台形、長方形、正方形、正弦波、六角形、楕円形、円形などのあらゆる好適な断面形状及びサイズであり得る。フロースルー基材は、上記のようにセラミック又は金属であり得る。
【0085】
フロースルー基材は、例えば、約50in~約1200inの体積と、約60セル毎平方インチ(cpsi)~約500cpsi又は最大で900cpsi、例えば、約200~約400cpsiのセル密度(入口開口部)と、約50~約200ミクロン又は約400ミクロンの壁厚とを有する。
【0086】
図1A及び1Bは、本明細書に記載されているような触媒組成物でコーティングされたフロースルー基材の形態の例示的な基材2を例示する。図1Aを参照すると、例示的な基材2は、円筒形状及び円筒外表面4、上流端面6、及び端面6と同一である対応する下流端面8を有する。基材2は、内部に形成された複数の微細で平行なガス流路10を有する。図1Bに見られるように、流路10は、壁12によって形成され、上流端面6から下流端面8まで担体2を通って延在し、通路10は、流体、例えば、ガス流が担体2を、そのガス流路10を介して長手方向に流れることを許容するように閉塞されていない。図1Bでより容易に見られるように、壁12は、ガス流路10が実質的に規則的な多角形形状を有するように寸法決めされ、構成されている。示されるように、触媒組成物は、必要に応じて、複数の別個の層として適用され得る。図示される実施形態では、触媒組成物は、担体部材の壁12に接着された別個のボトム層14、及びボトム層14上にコーティングされた第2の別個のトップ層16の両方で構成される。いくつかの実施形態では、1つ以上(例えば、2つ、3つ、又は4つ以上)の触媒組成物層を使用することができる。更なるコーティング構成は、本明細書で以下に開示される。
【0087】
ウォールフローフィルタ基材
いくつかの実施形態では、基材はウォールフローフィルタであり、これは一般に、基材の長手方向軸線に沿って延在する複数の微細で実質的に平行なガス流路を有する。典型的には、各通路は、基材本体の一端で遮断され、1つおきに通路は、反対の端面で遮断される。そのようなモノリスウォールフローフィルタ基材は、断面の平方インチ当たり最大約900以上の流路(又は「セル」)を含んでもよいが、はるかに少ない数が用いられてもよい。例えば、基材は、約7~600、より通常は、平方インチ当たり約100~400個のセル(「cpsi」)を有し得る。セルは、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、又は他の多角形である断面を有することができる。ウォールフローフィルタ基材は、上記に説明されるようにセラミック又は金属であり得る。
【0088】
モノリシックウォールフローフィルタ基材セクションの断面図を図2に図示してあり、交互になっている閉塞流路と開放流路(セル)が示されている。遮断又は閉塞端部100は、開放流路101と交互になっていて、各対向端はそれぞれ開放及び遮断されている。フィルタは、入口端102及び出口端103を有する。多孔質セル壁104を横切る矢印は、開放セル端に進入し、多孔質セル壁104を通って拡散し、開放出口セル端から退出する、排気ガス流を表す。閉塞端100は、ガス流を妨げ、セル壁を通して拡散を促進する。各セル壁は、入口側104a及び出口側104bを有する。通路は、セル壁によって包囲されている。
【0089】
ウォールフローフィルタ物品基材は、例えば、約50cm、約100in、約200in、約300in、約400in、約500in、約600in、約700in、約800in、約900in、又は約1000inから、約1500in、約2000in、約2500in、約3000in、約3500in、約4000in、約4500in、又は約5000inまでの体積を有し得る。ウォールフローフィルタ基材は、典型的には、約50ミクロン~約2000ミクロン、例えば、約50ミクロン~約450ミクロン、又は約150ミクロン~約400ミクロンの壁厚を有する。
【0090】
ウォールフローフィルタの壁は、多孔質であり得、一般に、機能的コーティングの配置の前に、少なくとも約10ミクロンの平均細孔径を伴って、少なくとも約40%又は少なくとも約50%の壁多孔度を有する。例えば、いくつかの実施形態におけるウォールフローフィルタ物品基材は、≧40%、≧50%、≧60%、≧65%、又は≧70%の多孔度を有する。例えば、ウォールフローフィルタ物品基材は、触媒性コーティングを配置する前に、約50%、約60%、約65%、又は約70%から、約75%までの壁多孔度及び約10ミクロン又は約20ミクロンから、約30ミクロン又は約40ミクロンまでの平均細孔径を有するであろう。「壁多孔度」及び「基材多孔度」という用語は、同じ意味であり、置き換え可能である。多孔度は、空隙容量(又は細孔容積)を基材材料の総体積で割った比率である。細孔径及び細孔径分布は、典型的には、Hgポロシメトリー測定によって決定される。
【0091】
乾燥
接触に続いて、本明細書に記載のスラリーのウォッシュコートをその上に適用した基材を乾燥させて、過剰な水分及び揮発性成分を除去することができる。いくつかの実施形態では、乾燥は、約100℃~約150℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、乾燥は、ガス雰囲気中で実施される。いくつかの実施形態では、ガス雰囲気は、酸素を含む。いくつかの実施形態では、乾燥は、10分~4時間、より具体的には20分~3時間、又は50分~2.5時間の範囲の期間にわたって実施される。
【0092】
焼成
乾燥に続いて、ウォッシュコートされた基材は、焼成され得る。いくつかの実施形態では、焼成は、約300℃~900℃、約400℃~約650℃、又は約450℃~約600℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、焼成は、ガス雰囲気中で実施される。いくつかの実施形態では、ガス雰囲気は、酸素を含む。いくつかの実施形態では、焼成は、10分~約8時間、約20分~約3時間、又は約30分~約2.5時間の範囲の期間にわたって実施される。
【0093】
焼成後、上記のウォッシュコート技法によって得られた触媒充填量は、基材のコーティングされた重量とコーティングされていない重量との差を計算することによって決定することができる。当業者に明白であるように、触媒充填量は、例えば、スラリーのレオロジーを改変することによって、修正されることができる。加えて、ウォッシュコート層(コーティング層)を生成するためのコーティング/乾燥/焼成プロセスは、コーティングを所望の充填量レベル又は厚さに構築するために、必要に応じて繰り返されることができ、1つより多いウォッシュコートが適用され得ることを意味する。本SCRコーティングは、1つ以上のコーティング層を含むことができ、少なくとも1つの層は、本SCR触媒を含む。触媒性コーティングは、基材の少なくとも一部上に配置され、かつこれに付着している、1つ以上の薄い付着性コーティング層を含み得る。コーティング全体は、個々の「コーティング層」を含む。いくつかの実施形態では、触媒ウォッシュコート充填量は、約0.8g/in~2.6g/in、約1.2g/in~2.2g/in、又は約1.5g/in~約2.2g/inの範囲である。
【0094】
焼成に続いて、触媒物品は、「未使用」であってもよく、これは、それが最近調製され、高熱又は熱的ストレスに長期間曝露されていないことを意味する。「未使用」とはまた、触媒が任意の排気ガスに曝露されていないことを意味し得る。同様に、「エージングした」触媒物品は、最近調製されておらず、長時間(すなわち、3時間より長い)排気ガス及び/又は高温(すなわち、500℃より高い)に曝露されている。
【0095】
追加の実施形態:
限定するものではないが、本開示のいくつかの実施形態は以下を含む。
1.遷移金属イオン交換ゼオライトを含む選択的触媒還元触媒を調製するためのプロセスであって、
アンモニウム形態のゼオライトを、遷移金属イオン源、及び任意選択的に、酸を含む、水性混合物中で混合して、遷移金属イオン交換ゼオライトを含むスラリーを形成することを含む、プロセス。
2.遷移金属が、銅、マンガン、鉄、及びそれらの組み合わせから選択される、実施形態1に記載のプロセス。
3.遷移金属イオン源が、酸化物、硝酸塩、塩化物、硫酸塩、酢酸塩、水酸化物、シュウ酸塩、アセチルアセトネート、及び炭酸塩から選択される遷移金属の塩である、実施形態1又は2に記載のプロセス。
4.遷移金属イオン源が、酸化銅である、実施形態1~3のいずれか1つに記載のプロセス。
5.水性混合物が、酸を含み、酸が、酢酸である、実施形態1~4のいずれか1つに記載のプロセス。
6.ゼオライトが、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AVL、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOF、BOG、BOZ、BPH、BRE、BSV、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EEI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、EZT、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IFY、IHW、IMF、IRN、ISV、ITE、ITG、ITH、ITW、IWR、IWS、IWV、IWW、JBW、JRY、JSR、JST、KFI、LAU、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTF、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MRE、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MVY、MTW、MWF、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NPT、NSI、OBW、OFF、OKO、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PCR、PHI、PON、PUN、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAF、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SCO、SEW、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SFS、SFW、SGF、SGT、SIV、SOD、SOF、SOS、SSF、SSY、STF、STI、STO、STT、STW、SVR、SZR、TER、THO、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOS、UOZ、USI、UTL、UWY、VET、VFI、VNI、VSV、WIE、WEN、YUG、ZON、及びそれらの混合物又は連晶から選択される骨格タイプを有する、実施形態1~5のいずれか1つに記載のプロセス。
7.ゼオライトが、CHA及びAEIから選択される骨格タイプを有する、実施形態1~6のいずれか1つに記載のプロセス。
8.ゼオライトが、CHA骨格タイプを有する、実施形態1~7のいずれか1つに記載のプロセス。
9.ゼオライトが、Si、Al、及びOからなる骨格を有するアルミノシリケートであり、骨格内のSiO:Alのモル比が、約2~約300、約10~約100、及び/又は約20~約50である、実施形態1~8のいずれか1つに記載のプロセス。
10.水性混合物が、バインダー成分を更に含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載のプロセス。
11.バインダー成分が、Al、Si、Ti、Zr、Ce、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つを含む、実施形態10に記載のプロセス。
12.バインダー成分が、酢酸ジルコニウムである、実施形態10又は11に記載のプロセス。
13.水性混合物が、糖、分散剤、表面張力低減剤、レオロジー調整剤、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの添加剤を更に含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載のプロセス。
14.混合が、約1時間~約48時間、及び/若しくは約12時間~約24時間の一定期間、並びに/又は少なくとも約12時間及び/若しくは少なくとも約18時間起こる、実施形態1~13のいずれか1つに記載のプロセス。
15.混合が、約10℃~約50℃、及び/又は約15℃~約25℃の温度で行われる、実施形態1~14のいずれか1つに記載のプロセス。
16.混合前及び/又は混合中に水性混合物を粉砕することを更に含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載のプロセス。
17.混合に続いて、スラリーに耐火性金属酸化物担体材料を添加することを更に含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載のプロセス。
18.基材を、金属イオン交換ゼオライトを含むスラリーと接触させて、基材上にコーティングを形成することであって、基材が、入口端部、出口端部、入口端部から出口端部まで延在する軸方向長さ、及びそれを通って延在する基材の内壁によって画定された複数の通路を含む、形成することと、
コーティングされた基材を乾燥させることと、
コーティングされた基材を焼成することと、
任意選択的に、接触、乾燥、及び焼成ステップを1回以上繰り返すことと、を更に含み、
基材をスラリーと接触させる前に、スラリーが、濾過又は洗浄されていない、実施形態1~17のいずれか1つに記載のプロセス。
19.乾燥が、約100℃~約150℃の温度で実施される、実施形態18に記載のプロセス。
20.焼成が、約400℃~約600℃の温度で実施される、実施形態18又は19に記載のプロセス。
21.基材が、フロースルー基材又はウォールフローフィルタである、実施形態18~20のいずれか1つに記載のプロセス。
22.遷移金属イオン交換ゼオライトが、遷移金属イオン交換ゼオライトの重量に基づいて、かつ遷移金属酸化物として計算して、約2重量%~約10重量%、約2.5重量%~約5.5重量%、及び/又は約3重量%~約5重量%の範囲の遷移金属の量を有する、実施形態1~21のいずれか1つに記載のプロセス。
23.水性混合物が、酸を含む、実施形態1~4及び6~22のいずれか1つに記載のプロセス。
24.スラリーが、スラリーの総重量に対して0.01重量%~10重量%、スラリーの総重量に対して0.1重量%~10重量%、スラリーの総重量に対して1重量%~10重量%、及び/又はスラリーの総重量に対して0.1重量%~5重量%の範囲の酸の量を有する、実施形態5又は23に記載のプロセス。
25.スラリーが、スラリーの総重量に対して0.01重量%~10重量%、スラリーの総重量に対して0.1重量%~10重量%、スラリーの総重量に対して1重量%~10重量%、及び/又はスラリーの総重量に対して0.1重量%~5重量%の範囲の遷移金属イオン源の量を有する、実施形態1~24のいずれか1つに記載のプロセス。
26.混合ステップにおいて、アンモニウム形態のゼオライトの遷移金属イオン源に対する重量比が、2:1~100:1、2:1~50:1、2:1~50:1、5:1~50:1、及び/又は10:1~30:1の範囲である、実施形態1~24のいずれか1つに記載のプロセス。
27.実施形態1~26のいずれか1つに記載のプロセスに従って調製された、選択的触媒還元触媒。
28.排気ガスを、実施形態27に記載の選択的触媒還元触媒に接触させることを含む、排気ガスを処理するためのプロセス。
29.遷移金属イオン交換ゼオライトを調製するためのプロセスであって、アンモニウム形態のゼオライトを、遷移金属イオン源、及び任意選択的に、酸を含む、水性混合物と混合して、スラリーを形成することを含む、プロセス。
30.遷移金属が、銅、マンガン、鉄、及びそれらの組み合わせから選択される、実施形態29に記載のプロセス。
31.遷移金属イオン源が、酸化物、硝酸塩、塩化物、硫酸塩、酢酸塩、水酸化物、シュウ酸塩、アセチルアセトネート、及び炭酸塩から選択される遷移金属の塩である、実施形態29又は30に記載のプロセス。
32.遷移金属イオン源が、酸化銅である、実施形態29~31のいずれか1つに記載のプロセス。
33.水性混合物が、酸を含む、実施形態29~32のいずれか1つに記載のプロセス。
34.ゼオライトが、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AVL、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOF、BOG、BOZ、BPH、BRE、BSV、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EEI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、EZT、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IFY、IHW、IMF、IRN、ISV、ITE、ITG、ITH、ITW、IWR、IWS、IWV、IWW、JBW、JRY、JSR、JST、KFI、LAU、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTF、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MRE、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MVY、MTW、MWF、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NPT、NSI、OBW、OFF、OKO、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PCR、PHI、PON、PUN、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAF、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SCO、SEW、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SFS、SFW、SGF、SGT、SIV、SOD、SOF、SOS、SSF、SSY、STF、STI、STO、STT、STW、SVR、SZR、TER、THO、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOS、UOZ、USI、UTL、UWY、VET、VFI、VNI、VSV、WIE、WEN、YUG、ZON、及びそれらの混合物又は連晶から選択される骨格タイプを有する、実施形態29~33のいずれか1つに記載のプロセス。
35.ゼオライトが、CHA及びAEIから選択される骨格タイプを有する、実施形態29~34のいずれか1つに記載のプロセス。
36.ゼオライトが、CHA骨格タイプを有する、実施形態29~35のいずれか1つに記載のプロセス。
37.ゼオライトが、Si、Al、及びOからなる骨格を有するアルミノシリケートであり、骨格内のSiO:Alのモル比が、約2~約300、約10~約100、及び/又は約20~約50である、実施形態29~36のいずれか1つに記載のプロセス。
38.酸が、酢酸である、実施形態33~37のいずれか1つに記載のプロセス。
39.スラリーが、スラリーの総重量に対して0.01重量%~10重量%、スラリーの総重量に対して0.1重量%~10重量%、スラリーの総重量に対して1重量%~10重量%、及び/又はスラリーの総重量に対して0.1重量%~5重量%の範囲の酸の濃度を有する、実施形態33~38のいずれか1つに記載のプロセス。
40.スラリーが、スラリーの総重量に対して0.01重量%~10重量%、スラリーの総重量に対して0.1重量%~10重量%、スラリーの総重量に対して1重量%~10重量%、及び/又はスラリーの総重量に対して0.1重量%~5重量%の範囲の遷移金属イオン源の濃度を有する、実施形態29~39のいずれか1つに記載のプロセス。
41.スラリー中で、アンモニウム形態のゼオライトの遷移金属イオン源に対する重量比が、2:1~100:1、2:1~50:1、2:1~50:1、5:1~50:1、及び/又は10:1~30:1の範囲である、実施形態29~40のいずれか1つに記載のプロセス。
【0096】
本明細書に記載される組成物、方法、及び用途に対する好適な修正及び適合が、任意の実施形態又はそれらの態様の範囲から逸脱することなく行われ得ることは、関連技術の当業者には容易に明らかであろう。提供される組成物及び方法は、例示的であり、請求される実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に開示されている様々な実施形態、態様、及び選択肢の全ては、全ての変更で組み合わされ得る。本明細書に記載される組成物、配合物、方法、及びプロセスの範囲には、本明細書の実施形態、態様、選択肢、例、及び選好の全ての実際の又は潜在的な組み合わせが含まれる。本明細書で引用された全ての特許及び刊行物は、組み込まれた他の具体的な記述が具体的に提供されない限り、記載されるように、それらの具体的な教示について参照によって本明細書に組み込まれる
【実施例
【0097】
本開示の態様は、以下の実施例によってより完全に示され、これらは、本開示のある特定の態様を示すために記載され、態様を限定するものとして解釈されるべきではない。いくつかの例示的な実施形態を記載する前に、本開示は、以下の説明に記述される構成又はプロセスステップの詳細に限定されず、かつ他の実施形態が可能であり、様々な方法で実践又は実行することができることを理解されたい。別段の定めがない限り、全ての部分及びパーセンテージは重量によるものであり、全ての重量パーセントは乾燥ベースで表され、すなわち、別途指示がない限り、含水量は除外される。
【0098】
実施例1.銅イオン交換ゼオライト触媒物品(基準)の溶液相調製。
CHA骨格、及び19のシリカ対アルミナ比(SAR)を有する合成ゼオライトのアンモニウム形態からの溶液相イオン交換プロセスによって、銅イオン交換ゼオライトを調製した。ここで、SSZ-13ゼオライトを、水酸化トリメチルアダマンチルアンモニウム(TMAdaOH)をテンプレートとして使用して結晶化し、合成ゲルは、以下のモル比を有する組成物を有していた:20 SiO:1.0 Al:1.42 TMAdaOH:2.6 NaOH:220 HO。170℃で30時間の水熱結晶化後、懸濁液を濾過、乾燥、及び540℃で6時間焼成して、XRDによって特徴付けられるようなSSZ-13ゼオライトのNa形態を得た。SSZ-13ゼオライトの得られたNa形態のICP分析は、材料が19のSiO対Al比(SAR)を有することを示した。焼成に続いて、SSZ-13ゼオライトのNa形態を、NaOとして<500ppmのNa含有量を有するSSZ-13ゼオライトのNH4形態に交換した。アンモニウム形態のチャバザイトゼオライト(12kg)を、室温で撹拌された反応器内の脱イオン水66kgに添加した。反応器を、約30分で60℃まで加熱した。酢酸銅一水和物(4.67kg、23.38モル)を、酢酸(96g、1.6モル)とともに添加した。60℃の反応温度を維持しながら、混ぜ合わせを60分間継続した。反応器の内容物をプレート及びフレームフィルタプレスに移送した。固体Cu交換ゼオライトを、濾液伝導率が200マイクロシーメン未満になるまで脱イオン水で洗浄し、次いで、Cu交換ゼオライトをフィルタプレス上で空気乾燥した。銅の充填量は、CuOとして及びゼオライトの総重量に基づいて測定して、5%であった。
【0099】
銅イオン交換CHAゼオライトを酢酸ジルコニウムと混ぜ合わせて、スラリーを形成し、これを、Sympatec粒径分析器で測定したときに、5μm~8μmの範囲のD90を有する標的粒径に粉砕した。次いで、スラリーをコーディエライト基材(400cpsiのセル密度及び6ミルの壁厚さを有するセル状セラミックモノリス)上にコーティングし、続いて130℃で乾燥させ、550℃で1時間焼成した。
【0100】
実施例2.銅イオン交換ゼオライト触媒物品(本発明)の調製
実施例1のCHA骨格を有する同じアンモニウム形態のゼオライト90.25g、酸化銅(CuO)4.75g、酢酸ジルコニウム水溶液16.67g(30%の酸化ジルコニウムを含有する)、及び酢酸1.8gからスラリーを調製した。追加の水を添加して、約38%の固体を有するスラリーを得た。混合物を、Sympatec粒径分析器で測定した5μm~8μmの範囲のD90を有する標的粒径に粉砕し、スラリーを室温で24時間混ぜ合わせて、ゼオライト骨格への銅イオン交換を可能にした。
【0101】
スラリーをコーディエライト基材(400cpsiのセル密度及び6ミルの壁厚さを有するセル状セラミックモノリス)上にコーティングし、続いて130℃で乾燥させ、550℃で1時間焼成した。銅の重量での充填量は、CuOとして及びゼオライトの総重量に基づいて測定して、5%であった。
【0102】
実施例3.銅イオン交換ゼオライト触媒物品(基準)のインサイチュイオン交換(ISIE)調製。
CHA骨格及び18のシリカ対アルミナ比(SAR)を有する合成ゼオライトのH形態からのインサイチュイオン交換(ISIE)プロセスによって、銅イオン交換ゼオライトを調製した。H形態のCHAゼオライト(90.73g)を、CuO4.28g及び酢酸ジルコニウム水溶液(30%の酸化ジルコニウムを含有する)16.67gでスラリー化した。混合物を、Sympatec粒径分析器で測定した3.5μm~5.5μmの範囲のD90を有する標的粒径に粉砕し、スラリーを室温で24時間混ぜ合わせて、ゼオライト骨格への銅イオン交換を可能にした。銅の充填量は、CuOとして及びゼオライトの総重量に基づいて測定して、4.5%であった。
【0103】
次いで、スラリーをコーディエライト基材(400cpsiのセル密度及び6ミルの壁厚さを有するセル状セラミックモノリス)上にコーティングし、続いて130℃で乾燥させ、550℃で1時間焼成した。
【0104】
実施例4.銅イオン交換ゼオライト触媒物品(本発明)の調製
実施例3で使用したが、アンモニウム形態の同じCHAゼオライトを使用して、銅イオン交換チャバザイトゼオライトを調製した。アンモニウム形態のCHAゼオライト(90.73g)、CuO4.28g、酢酸ジルコニウム水溶液16.67g(30%の酸化ジルコニウムを含有する)、及び酢酸1.8gを含有するスラリーを調製した。スラリーを、Sympatec粒径分析器で測定した3.5μm~5.5μmの範囲のD90を有する標的粒径に粉砕し、スラリーを室温で24時間混ぜ合わせて、ゼオライト骨格への銅イオン交換を可能にした。銅の充填量は、CuOとして及びゼオライトの総重量に基づいて測定して、4.5%であった。非分散性ベーマイトアルミナを、24時間の混ぜ合わせ期間後にスラリーに添加した。
【0105】
最終的なスラリーをコーディエライト基材(400cpsiのセル密度及び6ミルの壁厚さを有するセル状セラミックモノリス)上にコーティングし、続いて130℃で乾燥させ、550℃で1時間焼成した。
【0106】
実施例5.銅イオン交換ゼオライト触媒物品(基準)の液相イオン交換(LPIE)調製。
銅イオン交換ゼオライトを、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,293,199号に開示されている手順に従って、従来の液相イオン交換(LPIE)プロセスによって、CHA骨格及び25のシリカ対アルミナ比(SAR)を有するH形態の合成ゼオライトから調製した。H形態のチャバザイトゼオライト(12kg)を、室温で撹拌された反応器内の脱イオン水78kgに添加した。反応器を約30分で60℃まで加熱し、続いて、酢酸銅一水和物(2.24kg、11.24モル)及び酢酸(96g、1.6モル)を添加した。60℃の反応温度を維持しながら、混ぜ合わせを60分間継続した。反応器の内容物をプレート及びフレームフィルタプレスに移送した。Cu交換チャバザイトゼオライトを、濾液伝導率が200マイクロシーメン未満になるまで脱イオン水で洗浄し、次いで、フィルタプレス上で空気乾燥した。銅の充填量は、CuOとして及びゼオライトの総重量に基づいて測定して、3.7%であった。
【0107】
銅イオン交換ゼオライトを含有するスラリーを酢酸ジルコニウムと混ぜ合わせ、スラリーを、Sympatec粒径分析器で測定したときに、4μm~7μmの範囲のD90を有する標的粒径に粉砕した。スラリーをコーディエライト基材(400cpsiのセル密度及び6ミルの壁厚さを有するセル状セラミックモノリス)上にコーティングし、続いて130℃で乾燥させ、550℃で1時間焼成した。
【0108】
実施例6.銅イオン交換ゼオライト触媒物品(本発明)の調製
実施例5で使用したが、アンモニウム形態の同じ合成ゼオライトを、CuO(3.7重量%のCuOの充填量を提供する分量で)、酢酸ジルコニウム水溶液(30%の酸化ジルコニウムを含有する)16.67g、及び酢酸1.8gでスラリー化した。混合物を標的粒径に粉砕し、スラリーを室温で24時間混ぜ合わせて、ゼオライト骨格への銅イオン交換を可能にした。スラリーをコーディエライト基材(400cpsiのセル密度及び6ミルの壁厚さを有するセル状セラミックモノリス)上にコーティングし、続いて130℃で乾燥させ、550℃で1時間焼成した。
【0109】
実施例7.NOx転化結果
実施例1~6の触媒物品の試料を、NOx転化性能について評価した。NOx転化を、200℃~600℃の温度範囲で、500ppmのNO、525ppmのNH、10%のO、10%のHOのガス流で、N,でバランスを取って、80,000h-1の空間速度での疑似定常状態条件下で試験した。触媒物品を、10%蒸気/空気中で、650℃で50時間及び800℃で16時間エージングした後に試験した。
【0110】
本発明の実施例2のSCR触媒物品は、650℃でエージングした試料について、基準SCR触媒物品(実施例1)のものと同様のNOx転化を示した(図3)。
【0111】
同様に、本発明の実施例4のSCR触媒物品は、650℃及び800℃でエージングした試料の両方(それぞれ、図4A及び4B)について、基準SCR触媒物品(実施例3)のものと同様のNOx転化を示した。
【0112】
本発明の実施例6のSCR触媒物品は、650℃及び800℃でエージングした試料の両方(それぞれ図5A及び5B)について、基準SCR触媒物品(実施例5)のものと同様のNOx転化を示した。
【0113】
NOx転化結果によって示されるように、いずれの場合も、アンモニウム形態のゼオライトから調製したイオン交換ゼオライト触媒は、H形態のゼオライトから調製したイオン交換ゼオライト触媒に匹敵する性能特性を提供する。しかしながら、アンモニウム形態のゼオライトからイオン交換ゼオライト触媒を調製する方法は、イオン交換前に中間体H形態ゼオライトを生み出すために、いかなる煩雑で労力集約型の濾過又は洗浄も必要とせず、コストがかかるエネルギー集約的な高温焼成も必要としなかった。更に、この方法は、金属イオン源が過剰に必要とされない(すなわち、特定の充填量に必要とされる正確な量が添加された)ため、いかなる水性金属廃棄物の処分をもたらさず、金属充填量が精密に制御された。更に、アンモニウム形態のゼオライトからイオン交換ゼオライト触媒を調製する方法は、基材がイオン交換スラリーから直接コーティングされるため、基材をコーティングするための別個のスラリー形成ステップを必要としなかった。したがって、本開示は、例えば、H形態のゼオライトからイオン交換ゼオライト触媒を調製する方法よりも資源、労力、及びエネルギー効率が高く、環境に優しい方法を提供する。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B