(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】混合剤
(51)【国際特許分類】
A01N 47/18 20060101AFI20240708BHJP
A01N 43/90 20060101ALI20240708BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240708BHJP
A01P 21/00 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
A01N47/18 101A
A01N43/90 105
A01P3/00
A01P21/00
(21)【出願番号】P 2022576643
(86)(22)【出願日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 JP2022001075
(87)【国際公開番号】W WO2022158382
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2021006207
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】福島 悠介
(72)【発明者】
【氏名】山田 茂雄
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/163946(WO,A1)
【文献】特開2020-015765(JP,A)
【文献】国際公開第2010/001563(WO,A1)
【文献】堀田佳祐ほか,ベンジルアミノプリンのベントグラスかさ枯病に対する防除効果,芝草研究,2017年,Vol. 46, No. 1,p. 91,左欄〔A4〕
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 47/18
A01N 43/90
A01P 3/00
A01P 21/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピカルブトラゾクスとベンジルアミノプリンとを含有する、
農園芸植物の病害の防除作用を有する組成物。
【請求項2】
病害が細菌に起因する病害である、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
農園芸植物がシバである、請求項
1または
2に記載の組成物。
【請求項4】
ピカルブトラゾクスとベンジルアミノプリンとの質量比が1:100~100:1である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物を施用することを含む、農園芸植物の病害の防除方法。
【請求項6】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物を施用することを含む、農園芸植物の葉色の改善方法。
【請求項7】
ピカルブトラゾクスを施用すること、およびベンジルアミノプリンを施用することを含む、農園芸植物の病害の防除方法。
【請求項8】
ピカルブトラゾクスを施用すること、およびベンジルアミノプリンを施用することを含む、農園芸植物の葉色の改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農園芸植物の病害の防除作用などを有する組成物および農園芸植物の病害の防除方法などに関する。より詳細には、本発明は、農園芸植物の細菌などに起因する病害の防除作用などを有し、薬害の軽減や葉色の改善などができる組成物、ならびに農園芸植物の病害の防除方法、および農園芸植物の葉色の改善方法に関する。本願は、2021年1月19日に出願された日本国特許出願第2021-006207号に対し優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ベンジルアミノプリンは公知の植物成長調整剤である。ベンジルアミノプリンは合成サイトカイニンの一種であり、花を咲かせ、細胞分裂を促進することによって果実を豊富にする効果があると言われている。また、ベンジルアミノプリンは植物の呼吸キナーゼを抑制する効果があるとも言われている。例えば、特許文献8は、ベンジルアミノプリンなどのサイトカイニンを含有する組成物を開示している。特許文献8は、この組成物に、殺虫剤、除草剤、殺真菌剤又はこれらの組み合わせをさらに含んでもよいと述べている。
【0003】
ところで、特許文献1および2は、化合物群Aから選ばれる農薬化合物(a1)と化合物群Aから選ばれる農薬化合物(a2)とを含み、農薬化合物(a1)と農薬化合物(a2)との重量比が、農薬化合物(a2)/農薬化合物(a1)で1/1,000またはそれ以下である農薬組成物を開示している。化合物群Aには、多数の化合物が示されているが、その中に、殺菌剤化合物の一つとしてピカルブトラゾクスが示され、植物成長調整剤化合物の一つとしてベンジルアミノプリンが示されている。しかしながら、特許文献1及び2では、化合物群Aから選ばれた農薬化合物の組合せが網羅的列挙されているのみで、ピカルブトラゾクスとベンジルアミノプリンの組合せは示されておらず、また、効果についてのデータも全く示されていない。
【0004】
一方、ピカルブトラゾクスは公知の殺菌剤である。ピカルブトラゾクスの作用機構は不明であるが、菌糸の伸長を阻害することにより殺菌作用を示すと考えられている。このようなピカルブトラゾクスと他の農薬成分とを含有する組成物が提案されている。
例えば、特許文献3は、ピカルブトラゾクスと、イミダクロプリド、トリフルミゾール、スピノサド、ヒドロキシイソキサゾール、チオファネートメチル、トリシクラゾール、クロチアニジン、ベノミルまたはアセタミプリドとを含有する組成物を開示している。
特許文献4は、ピカルブトラゾクスと、ホセチル、塩基性塩化銅、フォルペット、プロパモカルブ塩酸塩、クロロタロニル、マンゼブ、シモキサニル、イミノクタジンアルベジル酸塩、ジアゾファミド、メタラキシルM、フルジオキソニル、テブコナゾール、プロチオコナゾール、チアメトキサムまたはアゾキシストロビンとを含有する組成物を開示している。
特許文献5は、ピカルブトラゾクスと、ピコキシストロビン、フルトラニル、イソプロチオラン、および塩基性硫酸銅からなる群から選ばれる少なくとも一つとを含有する農園芸用殺菌剤を開示している。
特許文献6は、ピカルブトラゾクスを含有して成る除草剤用薬害軽減剤、ならびにピカルブトラゾクスと除草活性成分とを含有する薬害軽減組成物を開示している。
特許文献7は、ピカルブトラゾクスなどのテトラゾイルオキシム誘導体を有効成分として含有する植物成長促進剤を開示している。特許文献7は、テトラゾイルオキシム誘導体を各種の植物生長調節剤などと混合して用いることができると述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020―15768号公報
【文献】特開2020―15765号公報
【文献】WO 2011/115029 A
【文献】WO 2009/119072 A
【文献】特開2016-79140号公報
【文献】WO 2019/221089 A
【文献】WO 2010/001563 A
【文献】特表2008-500344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、農園芸植物の細菌などに起因する病害の防除作用などを有し、薬害の軽減や葉色の改善などができる組成物、ならびに農園芸植物の病害の防除方法、および農園芸植物の葉色の改善方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために検討した結果、下記の態様を包含する本発明を完成するに至った。
【0008】
〔1〕ピカルブトラゾクスとベンジルアミノプリンとを含有する、組成物。
〔2〕農園芸植物の病害の防除作用を有する、〔1〕に記載の組成物。
〔3〕病害が細菌に起因する病害である、〔2〕に記載の組成物。
〔4〕農園芸植物がシバである、〔2〕または〔3〕に記載の組成物。
〔5〕ピカルブトラゾクスとベンジルアミノプリンとの質量比が1:100~100:1である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の組成物。
〔6〕〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の組成物を施用することを含む、農園芸植物の病害の防除方法。
〔7〕〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の組成物を施用することを含む、農園芸植物の葉色の改善方法。
〔8〕ピカルブトラゾクスを施用すること、およびベンジルアミノプリンを施用することを含む、農園芸植物の病害の防除方法。
〔9〕ピカルブトラゾクスを施用すること、およびベンジルアミノプリンを施用することを含む、農園芸植物の葉色の改善方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組成物又は方法は、細菌などに起因する病害を予防的または治療的に軽減し、また対象農園芸植物への薬害を軽減し、さらに対象農園芸植物の色味を良好にする効果を有する。本発明の防除方法によれば、細菌などによる農園芸植物の病害を予防的または治療的に軽減し、薬害を軽減し、さらに対象農園芸植物の色味を良好にできる。なお、「予防的に軽減できる」とは、本発明の組成物を細菌などに感染する前の農園芸植物に施用し、その後、細菌などに感染しても、その細菌などに起因する病害を軽減できることを意味する。「治療的に軽減できる」とは、本発明の組成物を細菌などに既に感染してしまった農園芸植物に施用し、その細菌などに起因する病害を軽減できる若しくは該病害の進行を遅延できることを意味する。
【0010】
本発明の組成物又は方法は、特に、シバの葉、茎、根、及びその周囲の土壌を含む表層部分を指すターフに好ましく用いることができる。
このターフが形成される前や気温が高い等の時に、葉の色が黄色や褐色に変化することがある。本発明の組成物および本発明の防除方法によれば、薬害を低減することができ、病害による色味悪化を抑えることができ、さらに芝生自体の色味を改善することができ、芝生の商品価値を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の組成物は、ピカルブトラゾクスとベンジルアミノプリンとを含有してなるものである。
【0012】
ピカルブトラゾクスは、式(I)で表される化合物(tert-ブチル=(6-{[(Z)-(1-メチル-1H-5-テトラゾリル)(フェニル)メチレン]アミノオキシメチル}-2-ピリジル)カルバマート〔CAS番号500207-04-5〕)である。
ピカルブトラゾクスの原体は、白色結晶性粉末として、通常、提供される。ピカルブトラゾクスを含有する製品としては、クインテクト(登録商標)顆粒水和剤(20%含有、日本曹達社製)、ピシロック(登録商標)フロアブル剤(5%含有、日本曹達社製)、ナエファイン(登録商標)粉剤(0.7%含有、日本曹達社製)などを挙げることができる。
【0013】
【0014】
ベンジルアミノプリンは、式(II)で表させる化合物(6-ベンジルアミノプリン、ベンジルアデニン、またはBAP(CAS番号1214-39-7))である。
ベンジルアミノプリンの原体は、白色粉末として、通常、提供される。
ベンジルアミノプリンを含有する製品としては、ビーエー(登録商標)液剤(クミアイ化学工業株式会社製)、ドラード(登録商標)液剤(株式会社理研グリーン社製)、プレリュード(登録商標)液剤(アグロ カネショウ株式会社製)などを挙げることができる。
【0015】
【0016】
本発明の組成物は、ベンジルアミノプリンに対するピカルブトラゾクスの質量比によって、特に限定されない。例えば、ベンジルアミノプリンに対するピカルブトラゾクスの質量比は、好ましくは1/100~100/1、より好ましくは1/50~50/1、さらに好ましくは1/20~20/1である。
【0017】
本発明の組成物は、ピカルブトラゾクスとベンジルアミノプリンとを混合することにより得られる。ピカルブトラゾクスとベンジルアミノプリンとの混合は、施用する前に行われてもよいし、施用した後にin situにて行われてもよい。
【0018】
本発明の組成物は、ピカルブトラゾクスの原体とベンジルアミノプリンの原体とを用いて製剤化したものであってもよいし、ピカルブトラゾクスを含有する製品およびベンジルアミノプリンを含有する製品としてそれぞれ提供されているものの組合せまたはそれらを用いて製剤化したものであってもよい。
【0019】
製剤は、通常の農園芸用薬のとり得る形態であることができる。剤型としては、例えば、粉剤(DP、Dustable Powder)、水和剤(WP、Wattable Powder)、乳剤(EC、Emulsifiable Concentrate)、フロアブル剤(FL、flowable)、懸濁剤(SC、Suspension Concentrate)、水溶剤(SP、Water Soluble Powder)、顆粒水和剤(WG、Water Dispersible Granule)、錠剤(Tablet)、粒剤(GR、Granule)、SE剤(Suspo Emulsion)、OD剤(Oil Dispersion)、EW剤(Emulsion oil in water)等を挙げることができる。
【0020】
製剤化は、特にその手法や手順によって制限されず、公知の手法や手順によって行うことができる。
製剤化において、担体、溶剤、補助剤、添加剤などの製剤副資材;殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、殺土壌害虫剤、駆虫剤、除草剤、植物成長調整剤、肥料などの非殺菌性成分などを製剤に含有させることができる。
【0021】
製剤に含有させ得る担体、溶剤および補助剤は、本発明の目的を阻害しない限り、特に制限されない。担体および補助剤の具体例は、WO2003/016303Aに列挙されるものを引用して、本願明細書に記載したものとする。溶剤としては、水または有機溶媒を用いることができる。製剤に含有させる場合における担体または補助剤の質量は、本発明の目的を阻害しない限り、特に制限されない。
【0022】
製剤に含有させ得る添加剤としては、例えば、界面活性剤、分散剤、酸化防止剤、着色剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防腐剤、pH調整剤、消泡剤、比重調整剤、ドリフト防止剤、混用改良材、保湿剤、拡展剤、固着剤、キレート剤、香料などを挙げることができる。界面活性剤の具体例は、WO2019/221089Aに列挙されるものを引用して、本願明細書に記載したものとする。製剤に含有させる場合における各添加剤の質量は、本発明の目的を阻害しない限り、特に制限されない。
【0023】
製剤に含有させ得る殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、殺土壌害虫剤、駆虫剤、除草剤、植物成長調整剤、葉色向上剤および肥料は、本発明の目的を阻害しない限り、特に制限されない。製剤に含有させる場合におけるこれらの質量は、特に制限されないが、ピカルブトラゾクスの質量に対して、好ましくは1/1000~1000/1、より好ましくは、1/100~100/1である。
殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤および殺土壌害虫剤の具体例は、WO2009/119072Aに列挙されるものを引用して、本願明細書に記載したものとする。除草剤(除草活性成分)の具体例は、WO2019/221089Aに列挙されるものを引用して、本願明細書に記載したものとする。
葉色向上剤としては、グリーンフェラム(登録商標)(有機酸キレート鉄、硫酸第一鉄含有、株式会社ニッソーグリーン社製)や、ペンタキープ(登録商標)(アミノレブリン酸含有、株式会社誠和社製)などをあげることができる。これらは肥料としても用いることができる。
【0024】
本発明の農園芸植物の病害の防除方法、および農園芸植物の葉色の改善方法の一態様は、本発明の組成物を施用することを含む。本発明の方法においては、剤型に応じて、本発明の組成物またはそれを含む製剤をそのまま施用してもよいし、水などで希釈して施用してもよい。本発明の方法においては、本発明の組成物またはそれを含む製剤と他の農園芸薬剤とを併せて若しくは混ぜ合わせて施用してもよい。
【0025】
本発明の農園芸植物の病害の防除方法、および農園芸植物の葉色の改善方法の別の一態様は、ピカルブトラゾクスを施用すること、およびベンジルアミノプリンを施用することを含む。ピカルブトラゾクスの施用とベンジルアミノプリンの施用は、同時に行ってもよいし、順不同に行ってもよい。本発明の方法においては、剤型に応じて、ピカルブトラゾクスを含む製剤とベンジルアミノプリンを含む製剤をそのままそれぞれ施用してもよいし、水などで希釈してそれぞれ施用してもよい。本発明の方法においては、ピカルブトラゾクスを含む製剤および/またはベンジルアミノプリンを含む製剤と他の農園芸薬剤とを併せて若しくは混ぜ合わせて施用してもよい。
【0026】
施用の対象は、植物体(葉、茎、柄、花、蕾、果実、種子、スプラウト、根、塊茎、塊根、苗条、挿し木など)、土壌または水耕地などである。
【0027】
水和剤、乳剤、またはフロアブル剤の場合には水で所定の濃度に希釈して懸濁液または乳濁液の状態にて施用することができる。
粒剤または粉剤の場合にはそのままの状態にて施用することができる。粒剤または粉剤は、種子処理、茎葉散布、土壌施用または水面施用に好ましく用いることができる。
【0028】
栽培土壌への施用は、植物を植える前に行ってもよいし、植物を植えた後に行ってもよい。
【0029】
土壌施用または水面施用は、ピカルブトラゾクスおよびベンジルアミノプリンの合計量が1ヘクタール当たり0.1g以上の量となるように行うことができる。
【0030】
種子処理は、ピカルブトラゾクスおよびベンジルアミノプリンの合計量が種子重100kg当たり0.1g以上の量となるように行うことができる。なお、種子処理は、例えば、種子若しくは塊茎に本発明の組成物のコーティング若しくは粉衣をすることによって、または種子若しくは塊茎を本発明の組成物に浸漬することによって行うことができる。また、植物苗の根部を本発明の組成物に浸漬する方法を採用することもできる。
【0031】
茎葉処理は、ピカルブトラゾクスおよびベンジルアミノプリンの合計量が1ヘクタール当たり0.1g以上の量となるように行うことができる。
【0032】
本発明の方法における散布は、スプレーガン、薬剤散布器、無人航空機(ドローン、ラジコンヘリ、ラジコン飛行機など)、有人航空機(ヘリコプター、軽飛行機など)、送風装置(ブラワーなど)などを用いて行うことができる。本発明の方法における散布量は、気象条件、施用時期、施用方法、施用機材などに応じて適宜設定でき、例えば、ピカルブトラゾクスおよびベンジルアミノプリンの合計量が、10アール当たり、好ましくは1~500,000g、より好ましくは10~100,000g、さらに好ましくは50~10,000gとなる量に設定することができる。
【0033】
本発明の組成物および防除方法によって防除できる病害としては、例えば、
青枯病細菌(Ralstonia solanacearumなど)に起因する青枯病(トマト、イチゴ、カブ、カボチャ、キュウリ、シソ、ジャガイモ、シュンギク、ダイコン、トウガラシ、ナス、ピーマンなど)、
桿状細菌(Erwinia carotovora subsp.carotovora、Pectobacterium carotovorumなど)に起因する軟腐病(カブ、キャベツ、キュウリ、サトイモ、ジャガイモ、セルリー、ダイコン、タマネギ、トウガラシ、トマト、ナス、ニラ、ニンジン、ハクサイ、パセリ、ピーマン、ブロッコリー、ラッキョウ、レタスなど)、
放射菌(Streptomyces spp.など)に起因するそうか病(ジャガイモ)、
褐条病細菌(Acidovorax avenae subsp.avenaeなど)に起因する褐条病(イネ、シバなど)、
かさ枯病細菌(Pseudomonas syringae pv. Atropurpreaなど)に起因するかさ枯病[ハローブライト](シバなど)、
桿状細菌(Xanthomonas axonopodis pv. Glycinesなど)に起因する葉焼病(インゲンなど)、
細菌(Xanthomonas campestris pv. graminis = Xanthomonas translucens など)に起因する葉枯細菌病[バクテリアルリーフブライト](シバなど)、
細菌(Pseudomonas fuscovaginaeなど)に起因する葉鞘腐敗病[シースブラウンスポット](シバなど)、
細菌(Acidovolax avenae supsp. Avenaeなど)に起因する褐条病[ブラウンストライプ](シバなど)、
細菌(Burkholderia plantariiなど)に起因する株枯細菌病[バクテリアルフットブライト](シバなど)、
細菌に起因する葉白化症[ミルキーリーフ](シバなど)、
桿状細菌(Pseudomonas syringae pv. lachrymansなど)に起因する斑点細菌病(キュウリ、ダイズ、レタス、ピーマンなど)、
などを挙げることができる。なお、丸括弧内は対象農園芸植物の一例である。
【0034】
本発明の組成物および方法が対象としうる農園芸植物は、細菌などに起因する病害を発生しうるものであれば、特に限定されない。例えば、
トマト(Solanum lycopersicum)、ナス(Solanum melongena)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、トウガラシ(Capsicum annuum)、ピーマンなどのナス科(Solanaceae)の植物;
ダイコン(Raphanus sativus)、ハクサイ(Brassica rapa var. pekinensis)、キャベツ(Brassica oleracea var. capitata)、カブ(Brassica rapa var. glabra)、ブロッコリー(Brassica oleracea var. italica)、コマツナ(Brassica rapa var. perviridis)、カリフラワー(Brassica oleracea var. botrytis)などのアブラナ科(Brassicaceae)の植物;
キュウリ(Cucumis sativus L.)、西洋カボチャ(Cucurbita maxima)、東洋カボチャ(Cucurbita moschata)、スイカ(Citrulus lanatus)、ズッキーニ(Cucurbita pepo L.)などのウリ科(Cucurbitaceae)の植物;
ダイズ(Glycine max)、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)、などのマメ科(Fabaceae syn. Leguminosae)の植物;
リンゴ(Malus pumila)、ナシ(Pyrus pyrifolia var. culta)、モモ(Prunus persica)、バラ(Rosa sp.)、イチゴ(Fragaria spp.)などのバラ科 (Rosaceae)の植物;
シソ(Perilla frutescens var. crispa)などのシソ科(Lamiaceae)の植物;
シュンギク(Glebionis coronaria)、レタス(Lactuca sativa)、キク(C. morifolium)、ヒマワリ(H. annuus)などのキク科(Asterales)の植物;
サトイモ(Colocasia esculenta (L.) Schott)などのサトイモ科(Araceae)の植物;
セロリ(Apium graveolens var. dulce)、ニンジン(Daucus carota subsp. sativus)、パセリ(Petroselinum crispum)、ミツバ(Cryptotaenia canadensis)などのセリ科(Apiaceae)の植物;
タマネギ(Allium cepa)、ネギ(Allium fistulosum L)ニラ(Allium tuberosum)、ラッキョウ(Allium chinense)、わけぎ(Allium cepa var. proliferum)などのヒガンバナ科(Amaryllidaceae)の植物;
オクラ(Abelmoschus esculentus)などのアオイ科(Malvaceae)の植物;
アスパラガス(Asparagus)などのキジカクシ科 (Asparagaceae)の植物;
テンサイ(Beta vulgaris ssp. vulgaris)、ホウレンソウ(Spinacia oleracea)などのヒユ科 (Amaranthaceae)の植物;
ショウガ(Hedychium spp.)、ミョウガ(Zingiber mioga)などのショウガ科 (Zingiberaceae)の植物;
ウンシュウミカン(Citrus unshiu)などのミカン科(Rutaceae)の植物;
ブドウ(Vitis spp.)などのブドウ科(Vitaceae)の植物;
バナナ(Musa spp.)などのバショウ科(Musaceae)の植物;
カキノキ(Diospyros kaki)などのカキノキ科 (Ebenaceae)の植物;
エンバク(Avena sativa)、ハトムギ(Coix lacryma-jobi var. ma-yuen)、オーチャードグラス(Dactylis glomerata)、オオムギ(Hordeum vulgare)、イネ(Oryza sativa)、チモシー(Phleum pratense)、サトウキビ(Saccharum officinarum)、ライムギ(Secale cereale)、アワ(Setaria italica)、パンコムギ(Triticum aestivum)、トウモロコシ(Zea mays)、シバ(Zoysia spp.)などのイネ科(Gramineae)の植物;
などを挙げることができる。
好ましくはシバが挙げられる。
【0035】
本発明の対象となるシバには、例えば、以下のものが含まれる。
(1)スズメガヤ亜科
ノシバ、コウシュンシバ、ビロードシバなどの日本芝類;
ギョウギシバ、バミューダグラス、アフリカンバミューダグラス、ティフトンシバなどのバミューダグラス類;
ウィーピングラブグラス、バッファローグラスなど
(2)キビ亜科
センチペドグラス、カーペットグラス、バヒアグラス、シマスズメノヒエ・ダリスグラス、キクユグラス(アフリカチカラシバ)、セントオーガスチングラス(イヌシバ)など
(3)ウシノケグサ亜科
レッドトップ、コロニアルベントグラス、クリーピングベントグラス、ベルベットベントグラスなどのベントグラス類;
ケンタッキーブルーグラス(ナガハグサ)、ラフストークドメドウグラス(オオスズメノカタビラ)、スズメノカタビラ、カナダブルーグラス(イチゴツナギ)などのブルーグラス類;
レッドフェスク(オオウシノケグサ)、チューイングフェスク(イトウシノケグサ)、ハードフェスク(コウライウシノケグサ)、シープフェスク、トールフェスクなどのフェスク類;
ペレニアルライグラス、イタリアンライグラスなどのライグラス(ホソムギ)類;
オーチャードグラス、チモシー、スムーズブロムグラス、トールオートグラス、クレステッドホイートグラス、ウエスタンホイートグラス、スイートバーナルグラスなどの寒地型芝草など。
本発明の防除剤および方法が対象としうる農園芸植物は、これら植物類の改良品種・変種、栽培品種、さらには突然変異体、ハイブリッド体、遺伝子組み換え体(GMO)であってもよい。
【0036】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
本実施例等で使用した物質は以下のとおりである。
細菌1: Acidovorax avenae(褐条病菌)
【0038】
(芝褐条病菌のポット評価試験)
実施例1
市販のクインテクト顆粒水和剤(ピカルブトラゾクス 20%含有、日本曹達株式会社製)0.5g、市販のビーエー液剤(ベンジルアミノプリン 3%含有、クミアイ化学工業社製)0.1ml、および水500mlを混ぜ合わせ、ピカルブトラゾクス200ppmおよびベンジルアミノプリン6ppmを含む薬液1を作成した。
市販のクインテクト顆粒水和剤0.5gおよび水500mlを混ぜ合わせ、ピカルブトラゾクス200ppmを含む薬液2を作成した。
市販のビーエー液剤0.1mlおよび水500mlを混ぜ合わせ、ベンジルアミノプリン6ppmを含む薬液3を作成した。
【0039】
ポット(縦7cm×横7cm×高さ3cm)にシバ(品種:ベントグラス、播種1~2週間後のもの)を移植した。これを12個作成し、試験ポット1~12とし、温室内に置いた。
【0040】
試験ポット1~3を、1m2の枠内(縦1m、横1m)に置き、500mlの薬液1を該枠内に噴霧にて均一散布した。
試験ポット4~6を、1m2の枠内(縦1m、横1m)に置き、500mlの薬液2を該枠内に噴霧にて均一散布した。
試験ポット7~9を、1m2の枠内(縦1m、横1m)に置き、500mlの薬液3を該枠内に噴霧にて均一散布した。
試験ポット10~12(無処理ポット)には何も行わなかった。
薬液の散布の翌日に、100,000,000個/mlの細菌1(褐条病菌)を付着させたハサミを用いて、シバの長さが約1cm程度になるように、各ポットのシバを刈ってシバに細菌を付着させた。
薬液の散布から7日経過した後、最大長さが2mm以上ある病斑の数をカウント(以後、このカウント数を発病個体数と呼ぶ。)した。防除価を式(C)にて算出した。
その結果を表1に示す。本発明の防除剤は、シバ褐条病を予防的に軽減する効果があることがわかる。
防除価[%]=100-[(試験ポットの発病個体数)
/(無処理ポットの発病個体数)]×100 (C)
【0041】
薬液の散布から14日経過した後、シバの葉色を、JISカラーコードに対応するFHK葉色カラースケール(株式会社富士平工業)を用いて、1(淡緑)~7(濃緑)で数値化した。数値化した葉色の結果を表1に示す。
【0042】
FHK葉色カラースケール JISZ8721 標準色票
1 5―GY C8 V7
2 5―GY C8 V6
3 5―GY C6 V6
4 5―GY C6 V5
5 7.5―GY C6 V4
6 7.5―GY C4 V4
7 7.5―GY C3 V3
【0043】
【0044】
実施例2
ビーエー液剤の量を0.1mlから0.2mlに変えた以外は実施例1と同じ方法で試験ポット13~24にて試験した。結果を表2に示す。
【0045】
【0046】
実施例3
ビーエー液剤の量を0.1mlから0.4mlに変えた以外は実施例1と同じ方法で試験ポット25~36にて試験した。結果を表3に示す。
【0047】
また、薬液の散布から7日経過後、先端付近が赤褐に変化した葉の数を数え、薬害個体数とした。その結果を表3に示す。
【0048】
【0049】
以上の結果から、ピカルブトラゾクスとベンジルアミノプリンとを含有する組成物を施用すると、良好な病害防除価を示し、葉色が良好である。また、薬害の発生するような濃度のベンジルアミノプリンが含まれている場合(試験ポット31~33)でも、ピカルブトラゾクスをベンジルアミノプリンと共に含有する組成物を施用すると(試験ポット25~26)は、ベンジルアミノプリンに起因する薬害の発生を低減できる。