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特許75165763次元造形装置、およびパレット移載方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】3次元造形装置、およびパレット移載方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/30 20170101AFI20240708BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240708BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240708BHJP
【FI】
B29C64/30
B33Y30/00
B33Y10/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022581045
(86)(22)【出願日】2021-02-09
(86)【国際出願番号】 JP2021004766
(87)【国際公開番号】W WO2022172322
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】川尻 明宏
(72)【発明者】
【氏名】森川 俊治
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-82417(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0070421(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3456518(EP,A1)
【文献】特開2014-37042(JP,A)
【文献】特開2005-46920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/30
B33Y 30/00
B33Y 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレットを載置するためのステージと、
前記ステージに載置された前記パレットの上に3次元造形物を造形する造形ユニットと、
前記パレットの互いに対向する側縁を支持する1対のアームにより前記ステージから前記パレットを移載する移載装置と、
を備え、
前記側縁の一方が前記アームの一方に支持される高さと前記側縁の他方が前記アームの他方に支持される高さとが異なる3次元造形装置。
【請求項2】
前記アームの一方の支持部の高さと、前記アームの他方の支持部の高さとが異なる請求項1に記載の3次元造形装置。
【請求項3】
前記側縁の一方の被支持部の高さと、前記側縁の他方の被支持部の高さとが異なる請求項1に記載の3次元造形装置。
【請求項4】
前記パレットの前記側縁の一方に連続する切欠部が前記パレットの底面に形成されており、
前記切欠部と前記パレットの底面との境界が、前記側縁の一方の延びる方向と異なる方向に延びる請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の3次元造形装置。
【請求項5】
パレットを載置するためのステージと、前記ステージに載置された前記パレットの上に3次元造形物を造形する造形ユニットとを備えた3次元造形装置におけるパレット移載方法であって、
1対のアームにより前記パレットの互いに対向する側縁を支持して前記ステージから前記パレットを移載する際に、前記パレットの側縁の一方が前記1対のアームの一方に支持された後に、前記パレットの側縁の他方が前記1対のアームの他方に支持されるパレット移載方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレットを載置するためのステージと、ステージに載置されたパレットを移載する移載装置とを備える3次元造形装置、およびパレット移載方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献には、パレットの上に3次元造形物を造形する3次元造形装置の一例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-037040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステージに載置されたパレットの下面とステージの上面との界面に非常に高い密着力が生じるため、例えば、パレットを挟持している保持装置を上昇させても、パレットを持ち上げることができずに、保持装置のみが上昇する虞があった。このため、本明細書では、ステージに載置されたパレットを適切に移載することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本明細書は、パレットを載置するためのステージと、前記ステージに載置された前記パレットの上に3次元造形物を造形する造形ユニットと、前記パレットの互いに対向する側縁を支持する1対のアームにより前記ステージから前記パレットを移載する移載装置と、を備え、前記側縁の一方が前記アームの一方に支持される高さと前記側縁の他方が前記アームの他方に支持される高さとが異なる3次元造形装置を開示する。
【0006】
また、上記課題を解決するために、本明細書は、パレットを載置するためのステージと、前記ステージに載置された前記パレットの上に3次元造形物を造形する造形ユニットとを備えた3次元造形装置におけるパレット移載方法であって、1対のアームにより前記パレットの互いに対向する側縁を支持して前記ステージから前記パレットを移載する際に、前記パレットの側縁の一方が前記1対のアームの一方に支持された後に、前記パレットの側縁の他方が前記1対のアームの他方に支持されるパレット移載方法を開示する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、パレットの互いに対向する1対の側縁の一方をステージから持ち上げた後に、1対の側縁の他方をステージから持ち上げることができる。これにより、パレットをステージから適切に持ち上げて移載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】回路形成装置を示す図である。
図2】回路形成装置の制御装置を示すブロック図である。
図3】樹脂積層体が形成された状態の回路を示す断面図である。
図4】樹脂積層体の上に配線が形成された状態の回路を示す断面図である。
図5】従来の保持装置によりパレットが保持される際の作動図である。
図6】従来の保持装置によりパレットが保持される際の作動図である。
図7】従来の保持装置によりパレットが保持される際の作動図である。
図8】1対の鍔を1対の支持爪により支持することで保持装置によりパレットが保持される際の作動図である。
図9】1対の鍔を1対の支持爪により支持することで保持装置によりパレットが保持される際の作動図である。
図10】1対の鍔を1対の支持爪により支持することで保持装置によりパレットが保持される際の作動図である。
図11】厚さ寸法の異なる1対の鍔を1対の支持爪により支持することで保持装置によりパレットが保持される際の作動図である。
図12】厚さ寸法の異なる1対の鍔を1対の支持爪により支持することで保持装置によりパレットが保持される際の作動図である。
図13】厚さ寸法の異なる1対の鍔を1対の支持爪により支持することで保持装置によりパレットが保持される際の作動図である。
図14】1対の鍔を厚さ寸法の異なる1対の支持爪により支持することで保持装置によりパレットが保持される際の作動図である。
図15】1対の鍔を厚さ寸法の異なる1対の支持爪により支持することで保持装置によりパレットが保持される際の作動図である。
図16】1対の鍔を厚さ寸法の異なる1対の支持爪により支持することで保持装置によりパレットが保持される際の作動図である。
図17】下面に1対の切欠部が形成されたパレットの平面図と側方図と正面図である。
図18】厚さ寸法の異なる1対の鍔を1対の支持爪により支持することで保持装置によりパレットが保持される際の作動図である。
図19】従来の保持装置に保持されたパレットがステージに載置される際の作動図である。
図20】厚さ寸法の異なる1対の鍔を1対の支持爪により支持することで保持装置により保持されたパレットがステージに載置される際の作動図である。
図21】厚さ寸法の異なる1対の鍔を1対の支持爪により支持することで保持装置により保持されたパレットがステージに載置される際の作動図である。
図22】パレットの1対の側縁の下端を厚さ寸法の異なる1対の支持爪により支持することで保持装置によりパレットが保持される際の作動図である。
図23】パレットの1対の側縁の下端を厚さ寸法の異なる1対の支持爪により支持することで保持装置によりパレットが保持される際の作動図である。
図24】パレットの1対の側縁の下端を厚さ寸法の異なる1対の支持爪により支持することで保持装置によりパレットが保持される際の作動図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。
【0010】
図1に回路形成装置10を示す。回路形成装置10は、ステージ移動装置20と、樹脂層造形ユニット22と、配線造形ユニット24と、搬入装置26と、搬出装置28と、移載装置30と、制御装置(図2参照)32とを備える。それらステージ移動装置20と樹脂層造形ユニット22と配線造形ユニット24と搬入装置26と搬出装置28と移載装置30とは、回路形成装置10のベース33の上に配置されている。ベース33は、概して長方形状をなしており、以下の説明では、ベース33の短手方向をX軸方向、ベース33の長手方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向の両方に直交する方向をZ軸方向と称して説明する。
【0011】
ステージ移動装置20は、スライドレール34とステージ36とを有している。スライドレール34は、ベース33の中央においてY軸方向に延びるように配設されており、ステージ36がスライドレール34によってY軸方向にスライド可能に保持されている。そして、ステージ36は、電磁モータ(図2参照)38の駆動により、Y軸方向の任意の位置に移動する。ステージ36は、パレット50を載置するための載置台であり、ステージ36の上に載置されたパレット50の上に回路が形成される。このため、パレット50の上面及び下面は鏡面状態とされており、パレット50が載置されるステージ36の上面も、非常に凹凸が少ない平坦面とされている。これにより、ステージ36の上面に載置されたパレット50の高さの寸法精度は非常に高くされており、パレット50の上面に精度良く回路を形成することができる。
【0012】
樹脂層造形ユニット22は、ステージ36に載置されたパレット50の上面に樹脂層を造形するユニットであり、樹脂吐出装置60と、平坦化装置62と、照射装置64とを有している。樹脂吐出装置60は、ガイドレール66とインクジェットヘッド68とにより構成されている。ガイドレール66は、ベース33のY軸方向での一方側の端部において、X軸方向に延びるようにベース33の上方に配設されており、インクジェットヘッド68がガイドレール66によってX軸方向にスライド可能に保持されている。そして、インクジェットヘッド68は、電磁モータ(図2参照)69の駆動により、X軸方向の任意の位置に移動する。また、インクジェットヘッド68は、ステージ36に載置されたパレット50の上に紫外線硬化樹脂を吐出する。なお、インクジェットヘッド68は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式でもよく、樹脂を加熱して気泡を発生させノズルから吐出するサーマル方式でもよい。
【0013】
平坦化装置62は、樹脂吐出装置60のY軸方向での隣において、スライドレール34の上方に配設されている。平坦化装置62は、インクジェットヘッド68によってパレット50の上に吐出された紫外線硬化樹脂の上面を平坦化するものであり、例えば、紫外線硬化樹脂の表面を均しながら余剰分の樹脂を、ローラもしくはブレードによって掻き取ることで、紫外線硬化樹脂の厚みを均一させる。また、照射装置64は、平坦化装置62を挟んで樹脂吐出装置60の反対側において、スライドレール34の上方に配設されている。照射装置64は、光源として水銀ランプもしくはLEDを備えており、パレット50の上に吐出された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する。これにより、パレット50の上に吐出された紫外線硬化樹脂が硬化し、樹脂層が造形される。
【0014】
配線造形ユニット24は、ステージ36に載置されたパレット50の上面に配線を造形するユニットであり、インク吐出装置70と、赤外線照射装置72とを有している。インク吐出装置70は、ガイドレール74とインクジェットヘッド76とにより構成されている。ガイドレール74は、照射装置64を挟んで平坦化装置62の反対側において、X軸方向に延びるようにベース33の上方に配設されており、インクジェットヘッド76がガイドレール74によってX軸方向にスライド可能に保持されている。そして、インクジェットヘッド76は、電磁モータ(図2参照)78の駆動により、X軸方向の任意の位置に移動する。また、インクジェットヘッド76は、ステージ36に載置されたパレット50の上に、金属インクを線状に吐出する。金属インクは、金属の微粒子が溶剤中に分散されたものである。なお、インクジェットヘッド76は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式によって複数のノズルから導電性材料を吐出する。
【0015】
赤外線照射装置72は、ベース33のY軸方向での樹脂吐出装置60が配設されている側と反対側の端部において、スライドレール34の上方に配設されている。赤外線照射装置72は、パレット50の上に吐出された金属インクに赤外線を照射する装置であり、赤外線の照射により金属インクが乾燥する。この際、金属インクの乾燥により、溶剤が気化し、金属微粒子が互いに接触または凝集することで、金属製の配線が形成される。若しくは、赤外線の照射により金属インクが焼成し、金属製の配線が形成される。なお、金属インクの焼成とは、エネルギーを付与することによって、溶媒の気化や金属微粒子の保護膜、つまり、分散剤の分解等が行われ、金属微粒子が接触または融着をすることで、導電率が高くなる現象である。
【0016】
搬入装置26は、回路形成装置10の内部にパレット50を搬入する装置であり、1対の搬送レーン80を有している。1対の搬送レーン80は、インク吐出装置70と赤外線照射装置72との間において、X軸方向に延びるようにベース33の上面に配設されている。1対の搬送レーン80は、ベース33のX軸方向での一方の縁と、ステージ移動装置20との間において、互いに平行に配設されている。そして、1対の搬送レーン80の上にパレット50が載置されることで、1対の搬送レーン80は、電磁モータ(図2参照)82の駆動により、パレット50を回路形成装置10の内部に搬入し、ステージ移動装置20に向って搬送する。
【0017】
搬出装置28は、回路形成装置10の外部にパレット50を搬出する装置であり、1対の搬送レーン86を有している。1対の搬送レーン86は、ステージ移動装置20を挟んで搬入装置26の1対の搬送レーン80と対称的にベース33の上面に配設されている。つまり、搬出装置28の1対の搬送レーン86は、ステージ移動装置20を挟んで搬入装置26の1対の搬送レーン80の反対側において、X軸方向に延びるようにベース33の上面に配設されている。1対の搬送レーン86は、ベース33のX軸方向での他方の縁と、ステージ移動装置20との間において、互いに平行に配設されている。そして、1対の搬送レーン86の上にパレット50が載置されることで、1対の搬送レーン86は、電磁モータ(図2参照)88の駆動により、パレット50をステージ移動装置20から離れる方向に搬送し、回路形成装置10の外部に搬出する。
【0018】
移載装置30は、パレット50を移載する装置であり、1対の搬送レーン80,86と赤外線照射装置72との間に配設されている。移載装置30は、ガイドレール100と保持装置102と昇降装置(図2参照)104とを有している。ガイドレール100は、1対の搬送レーン80,86と赤外線照射装置72との間において、X軸方向に延びるようにベース33の上方に配設されており、保持装置102がガイドレール100によってX軸方向にスライド可能に保持されている。そして、保持装置102は、電磁モータ(図2参照)105の駆動により、X軸方向の任意の位置に移動する。また、保持装置102は、パレット50を保持する装置であり、1対の搬送レーン80,86の上方に向って延び出している。保持装置102は、1対のアーム106と、1対のアーム106を接近・離間可能に保持する装置本体108と、1対のアーム106を接近・離間させるエアシリンダ(図2参照)110とにより構成されている。そして、保持装置102は、エアシリンダ110の駆動により、1対のアーム106を接近させることでパレット50を保持し、1対のアーム106を離間させることで保持したパレット50を離脱する。また、昇降装置104は保持装置102を昇降させる装置である。なお、昇降装置104の駆動源は、例えば、エアシリンダ若しくは電磁モータである。
【0019】
このような構造により、移載装置30は、搬入装置26の1対の搬送レーン80により搬入されてきたパレット50をステージ移動装置20のステージ36の上に移載する。また、移載装置30は、ステージ36の上に載置されているパレットを搬出装置28の1対の搬送レーン80の上に移載する。詳しくは、搬入装置26の1対の搬送レーン80によりパレット50が回路形成装置10の内部に搬入され、ステージ移動装置20と対向する位置まで搬送される。この際、ステージ移動装置20では、ステージ36が搬入装置26と搬出装置28との間に位置している。そして、保持装置102が電磁モータ105の駆動により、搬入装置26により搬送されてきたパレット50の上方に移動する。次に、保持装置102が昇降装置104の駆動により下降し、搬入装置26により回路形成装置10の内部に搬入されてきたパレットを保持する。続いて、保持装置102が、昇降装置104の駆動により上昇し、電磁モータ105の駆動により、ステージ36の上方に移動する。そして、保持装置102が昇降装置104の駆動により下降し、保持しているパレット50を離脱する。これにより、回路形成装置10の内部に搬入されてきたパレット50がステージ36の上に移載される。また、ステージ36の上に載置されているパレットが搬出装置28に移載される際には、保持装置102が電磁モータ105の駆動により、ステージ36の上方に移動する。次に、保持装置102が昇降装置104の駆動により下降し、ステージ36の上に載置されているパレット50を保持する。続いて、保持装置102が、昇降装置104の駆動により上昇し、電磁モータ105の駆動により、搬出装置28の1対の搬送レーン86の上方に移動する。そして、保持装置102が昇降装置104の駆動により下降し、保持しているパレット50を離脱する。これにより、ステージ36の上のパレット50が搬出装置28の1対の搬送レーン86の上に移載される。
【0020】
また、制御装置32は、図2に示すように、コントローラ120と、複数の駆動回路122とを備えている。複数の駆動回路122は、上記電磁モータ38,69,78,82,88,105,インクジェットヘッド68、平坦化装置62、照射装置64、インクジェットヘッド76、赤外線照射装置72、昇降装置104、エアシリンダ110に接続されている。コントローラ120は、CPU,ROM,RAM等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路122に接続されている。これにより、ステージ移動装置20、樹脂層造形ユニット22、配線造形ユニット24、搬入装置26、搬出装置28、移載装置30の作動が、コントローラ120によって制御される。
【0021】
回路形成装置10では、上述した構成によって、パレット50の上に回路が形成される。具体的には、搬入装置26の作動によりパレット50が回路形成装置10の内部に搬入されて、移載装置30の作動により、搬入装置26の1対の搬送レーン80からステージ36の上にパレットが移載される。そして、ステージ36に載置されたパレット50の上面に、樹脂層造形ユニット22において、図3に示すように、樹脂積層体130が形成される。樹脂積層体130は、インクジェットヘッド68からの紫外線硬化樹脂の吐出と、吐出された紫外線硬化樹脂への照射装置64による紫外線の照射とが繰り返されることにより形成される。
【0022】
詳しくは、ステージ36の上にパレット50が載置されると、ステージ36は、樹脂層造形ユニット22の樹脂吐出装置60の下方に移動する。そして、樹脂吐出装置60において、インクジェットヘッド68が、パレット50の上面に紫外線硬化樹脂を薄膜状に吐出する。続いて、紫外線硬化樹脂が薄膜状に吐出されると、ステージ36が平坦化装置62の下方に移動して、紫外線硬化樹脂の膜厚が均一となるように、紫外線硬化樹脂が平坦化装置62によって平坦化される。そして、ステージ36が照射装置64の下方に移動して、照射装置64が、その薄膜状の紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する。これにより、パレット50の上に薄膜状の樹脂層132が形成される。
【0023】
次に、ステージ36が樹脂吐出装置60の下方に移動して、インクジェットヘッド68が、その薄膜状の樹脂層132の上に紫外線硬化樹脂を薄膜状に吐出する。続いて、ステージ36が平坦化装置62の下方に移動して、平坦化装置62によって薄膜状の紫外線硬化樹脂が平坦化される。そして、ステージ36が照射装置64の下方に移動して、照射装置64が、その薄膜状に吐出された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射することで、薄膜状の樹脂層132の上に薄膜状の樹脂層132が積層される。このように、薄膜状の樹脂層132の上への紫外線硬化樹脂の吐出と、紫外線の照射とが繰り返され、複数の樹脂層132が積層されることで、樹脂積層体130が形成される。
【0024】
上述した手順により樹脂積層体130が形成されると、ステージ36が配線造形ユニット24のインク吐出装置70の下方に移動する。そして、インク吐出装置70において、図4に示すように、インクジェットヘッド76が、樹脂積層体130の上面に金属インク134を、回路パターンに応じて線状に吐出する。次に、ステージ36が赤外線照射装置72の下方に移動して、赤外線照射装置72が、金属インク134に赤外線を照射する。これにより、金属インク134が乾燥し、樹脂積層体130の上に配線136が形成される。続いて、パレット50の上面への樹脂積層体130及び配線136の形成により回路が造形されると、ステージ36が搬入装置26と搬出装置28との間に移動する。そして、パレット50が、移載装置30によりステージ36の上から搬出装置28の1対の搬送レーン86の上に移載されて、搬出装置28の作動により回路形成装置10の外部に搬出される。
【0025】
このように、回路形成装置10では、搬入装置26により搬入されたパレット50が、移載装置30によりステージ36の上に移載されて、そのステージに載置されたパレットの上面に、樹脂積層体130及び配線136が形成されることで、回路が造形される。そして、回路の造形が完了すると、パレット50が、移載装置30によりステージ36の上から搬出装置28の1対の搬送レーン86の上に移載されて、搬出装置28により搬出される。
【0026】
ただし、従来の移載装置では、ステージ36の上に載置されているパレット50を適切に持ち上げることができない虞があった。詳しくは、従来の移載装置では、図5に示す保持装置150が採用されていた。保持装置150は、1対のアーム152と、それら1対のアーム152を保持する装置本体154とを有している。1対のアーム152の各々は、概してL字型をなし、主軸156と、主軸156の端から直角に屈曲する保持軸158とにより構成されている。そして、装置本体154の互いに対向する1対の側面から1対のアーム152の主軸156が互いに離れる方向に向って水平に延び出して、その延び出した主軸156の先端から保持軸158が下方に向って延び出す姿勢で、1対のアーム152が装置本体154により保持されている。なお、1対のアーム152の各々は、主軸156において水平方向にスライド可能に装置本体154により保持されている。そして、エアシリンダ(図示省略)の作動により、1対のアーム152が互いに接近・離間する方向にスライドする。これにより、1対のアーム152の保持軸158の間の距離が変更され、1対のアーム152の保持軸158によりパレット50が挟持される。
【0027】
具体的には、ステージ36に載置されているパレット50が保持装置150により保持される際に、保持装置はパレット50の上方に移動する。この際、1対のアーム152の保持軸158の間の距離が、パレット50の互いに対向する1対の側縁の間の距離より長くなるように、エアシリンダ110の作動が制御される。そして、保持装置150が、図5に示すように、昇降装置104の作動により下降する。これにより、1対のアーム152の保持軸158と、パレット50の互いに対向する1対の側縁とが対向する。続いて、1対のアーム152の保持軸158の間の距離が短くなるように、つまり、1対のアーム152が接近するように、エアシリンダ110の作動が制御されることで、図6に示すように、パレット50が1対のアーム152の保持軸158によって挟持される。そして、保持装置150が昇降装置104の作動により上昇することで、ステージ36に載置されているパレット50がステージ36から持ち上げられる。
【0028】
しかしながら、上述したように、パレット50の上面及び下面は鏡面状態とされており、パレット50が載置されるステージ36の上面も、非常に凹凸が少ない平坦面とされている。このため、ステージ36に載置されているパレット50の下面と、ステージ36の上面とが密着し、パレット50の下面とステージ36の上面との界面に非常に高い密着力が生じている。このように、パレット50の下面とステージ36の上面との界面に非常に高い密着力が生じている場合には、1対のアーム152によりパレット50を挟持している保持装置150を上昇させても、図7に示すように、パレット50を持ち上げることができずに、保持装置150のみが上昇する虞がある。
【0029】
このようなことに鑑みて、回路形成装置10の移載装置30では、図8に示す保持装置102が採用されている。保持装置102は、従来の保持装置150と略同じ構成とされている。つまり、保持装置102も、1対のアーム106と、それら1対のアーム106を保持する装置本体108とを有している。1対のアーム106の各々は、概してL字型をなし、主軸170と、主軸170の端から直角に屈曲する保持軸172とにより構成されている。そして、装置本体108の互いに対向する1対の側面から1対のアーム106の主軸170が互いに離れる方向に向って水平に延び出して、その延び出した主軸170の先端から保持軸172が下方に向って延び出す姿勢で、1対のアーム106が装置本体108により保持されている。また、1対のアーム106の各々は、主軸170において水平方向にスライド可能に装置本体108により保持されている。そして、エアシリンダ(図2参照)110の作動により、1対のアーム106が互いに接近・離間する方向にスライドする。また、保持装置102の1対のアーム106の保持軸172の下端には、従来の保持装置150と異なり、1対の支持爪176が固定されている。1対の支持爪176は同寸法とされており、互いに接近する水平方向に延び出している。なお、支持爪176の下面と保持軸172の下面とは面一とされている。一方、パレット50には、1対のアームにより保持される互いに対向する1対の側縁の上端に、1対の鍔178が形成されている。1対の鍔178は同寸法とされており、互いに離間する水平方向に延び出している。なお、鍔178の上面とパレット50の上面とは面一とされている。また、支持爪176の上下方向の寸法、つまり、厚さ寸法は、パレット50の下面と鍔178の下面との鉛直方向における長さ寸法より小さくされている。つまり、支持爪176の厚さ寸法は、パレット50の厚さ寸法から鍔178の厚さ寸法を減じた値より小さくされている。
【0030】
このような構造の保持装置102によって、ステージ36に載置されているパレット50が保持される際に、保持装置102は、図8に示すように、パレット50の上方に移動する。この際、1対のアーム106の支持爪176の互いに対向する面(以下、「先端面」と記載する)の間の距離が、パレット50の1対の鍔178の互いに反対側を向く面(以下、「先端面」と記載する)の間の距離より長くなるように、エアシリンダ110の作動が制御される。そして、保持装置102が、昇降装置104の作動により下降する。これにより、1対のアーム106の支持爪176の先端面と、パレット50の1対の鍔178が形成された1対の側縁とが対向する。続いて、1対のアーム106の支持爪176の間の距離が短くなるように、つまり、1対のアーム106が接近するように、エアシリンダ110の作動が制御されることで、図9に示すように、1対のアーム106の支持爪176がパレット50の1対の鍔178の下方に入り込む。この際、支持爪176の先端面とパレット50の側縁とが接触せずに、鍔178の先端面とアーム106の保持軸172とが接触しないように、エアシリンダ110の作動が制御される。なお、支持爪176によってパレット50の側面が挟み込まれなければ、支持爪176の先端面とパレット50の側縁とが接触してもよい。そして、保持装置102が昇降装置104の作動により上昇することで、図10に示すように、パレット50の1対の鍔178が1対のアーム106の支持爪176により下方から支持された状態で持ち上げられる。つまり、パレット50が、1対の鍔178において下方から1対のアーム106の支持爪176に支持された状態で保持装置102により保持されて、保持装置102を上昇させることで、パレット50がステージ36から持ち上げられる。この際、パレット50は1対の鍔178において下方から1対の支持爪176に支持されているため、パレット50の下面とステージ36の上面との界面に非常に高い密着力が生じている場合であっても、昇降装置104に保持されたパレット50を適切にステージ36から持ち上げることができる。
【0031】
また、上述したように、パレット50の1対の鍔178を1対のアーム106の支持爪176により支持することで、パレット50を適切にステージ36から持ち上げることができるが、その際に、鍔178及び支持爪176に大きな負荷が生じる虞がある。つまり、パレット50の1対の鍔178を1対のアーム106の支持爪176により支持した状態でパレット50をステージ36から持ち上げる際に、パレット50のステージ36への密着面が一気にステージの上面から剥がされる。このため、パレット50の下面とステージ36の上面との界面に生じている密着力の全体が、鍔178及び支持爪176に大きな負荷としてかかる。そこで、1対の鍔の一方が1対のアームの支持爪の一方に支持される高さと、1対の鍔の他方が1対のアームの支持爪の他方に支持される高さとを異ならせることで、鍔及び支持爪への負荷を小さくすることができる。
【0032】
具体的には、上述した1対の鍔178は互いに同じ寸法であったが、図11に示すように、異なる厚さ寸法の1対の鍔180をパレット50の互いに対向する1対の側縁に固定する。なお、鍔180の上面とパレット50の上面とは面一とされている。これにより、1対の鍔180の一方の下面の高さと他方の下面の高さとが異なる。なお、1対の鍔180のうちの一方の鍔180aの厚さ寸法が、1対の鍔180のうちの他方の鍔180bの厚さ寸法より小さくされている。一方、それら1対の鍔180を支持する1対の支持爪176は互いに同じ寸法である。つまり、1対の鍔180を支持する1対の支持爪176の厚さ寸法は同じである。なお、鍔180bの厚さ寸法は、パレット50の厚さ寸法から支持爪176の厚さ寸法を減じた値より小さくされている。このため、1対のアーム106によりパレット50を保持するべく、1対のアーム106を接近させた場合に、図11に示すように、1対のアーム106の支持爪176がパレット50の1対の鍔180の下方に入り込む。
【0033】
そして、保持装置102を上昇させると、図12に示すように、まず、1対の鍔180のうちの厚さ寸法の大きい鍔180bが、1対の支持爪176のうちの一方の支持爪176bにより支持される。つまり、1対の鍔180のうちの下面の高さの低い鍔180bが支持爪176bにより支持される。この際、1対の鍔180のうちの厚さ寸法の小さい鍔180aは、1対の支持爪176のうちの他方の支持爪176aにより支持されていない。このため、1対の鍔180が固定されているパレット50の1対の側縁のうちの鍔180bが固定されている側縁のみが支持爪176bにより持ち上げられる。このように、1対の側縁のうちの鍔180bが固定されている側縁のみが持ち上げられる際に、そのパレット50の側縁の下端とステージ36とが接触している箇所、つまり、パレット50の側縁の下端とステージ36とが線接触している箇所がステージから剥がされる。このため、ステージからパレット50が持ち上げられる際に、パレット50の下面とステージ36の上面との界面に生じている密着力の全体でなく、その密着力の一部のみ、例えば、パレット50の側縁の下端とステージとの線接触している部分の密着力のみが、鍔178及び支持爪176にかかる。これにより、パレット50がステージから持ち上げられる際の鍔及び支持爪への負荷を小さくすることができる。
【0034】
そして、鍔180bが支持爪176bにより支持されて持ち上げられた後に、保持装置102が更に上昇することで、1対の鍔180のうちの厚さ寸法の小さい鍔180aが支持爪176aにより支持される。つまり、1対の鍔180のうちの下面高さの低い鍔180bが支持爪176bにより支持された後に、下面の高さの高い鍔180aが支持爪176aにより支持される。そして、保持装置102が更に上昇することで、1対の鍔180が固定されているパレット50の1対の側縁のうちの鍔180aが固定されている側縁も持ち上げられる。これにより、パレット50が、図13に示すように、厚さ寸法の大きい鍔180bから厚さ寸法の小さい鍔180aに向って下降するように傾斜した状態で、保持装置102により保持されて、ステージから持ち上げられる。このように、パレット50を傾斜させた状態でステージから持ち上げることで、パレット50がステージから持ち上げられる際の鍔及び支持爪への負荷を小さくすることができる。
【0035】
また、1対の支持爪の高さ寸法を異ならせることでも、1対の鍔の一方が1対のアームの支持爪の一方に支持される高さと、1対の鍔の他方が1対のアームの支持爪の他方に支持される高さとを異ならせることができる。具体的には、上述した1対の支持爪176は互いに同じ寸法であったが、図14に示すように、異なる厚さ寸法の1対の支持爪186を1対のアーム106の保持軸172に固定する。なお、支持爪186の下面と保持軸172の下面とは面一とされている。これにより、1対の支持爪186の一方の上面の高さと他方の上面の高さとが異なる。なお、1対の支持爪186のうちの一方の支持爪186aの厚さ寸法が、1対の支持爪186aのうちの他方の支持爪186bの厚さ寸法より小さくされている。一方、それら1対の支持爪186により支持されるパレット50の1対の鍔178は互いに同じ寸法である。つまり、1対の支持爪186により支持される1対の鍔178の厚さ寸法は同じである。なお、支持爪186bの厚さ寸法は、パレット50の厚さ寸法から鍔178の厚さ寸法を減じた値より小さくされている。このため、1対のアーム106によりパレット50を保持するべく、1対のアーム106を接近させた場合に、図14に示すように、1対のアーム106の支持爪186がパレット50の1対の鍔178の下方に入り込む。
【0036】
そして、保持装置102を上昇させると、図15に示すように、まず、1対の支持爪186のうちの厚さ寸法の大きい支持爪186bによって、1対の鍔178のうちの一方の鍔178bが支持される。つまり、1対の支持爪186のうちの上面の高さの高い支持爪186bによって、鍔178bが支持される。この際、1対の支持爪186のうちの厚さ寸法の小さい支持爪186aによって、1対の鍔178のうちの他方の鍔178aは支持されない。このため、1対の鍔178が固定されているパレット50の1対の側縁のうちの鍔178bが固定されている側縁のみが支持爪186bにより持ち上げられる。このように、1対の側縁のうちの鍔178bが固定されている側縁のみが持ち上げられることで、1対の鍔180の厚さ寸法が異なる場合と同様に、パレット50がステージから持ち上げられる際の鍔及び支持爪への負荷を小さくすることができる。
【0037】
そして、鍔178bが支持爪186bにより支持されて持ち上げられた後に、保持装置102が更に上昇することで、1対の支持爪186のうちの厚さ寸法の小さい支持爪186aによって鍔178aが支持される。つまり、1対の支持爪186のうちの上面の高さの高い支持爪186bによって鍔178bが支持された後に、上面の高さの低い支持爪186aによって鍔178aが支持される。そして、保持装置102が更に上昇することで、1対の鍔178が固定されているパレット50の1対の側縁のうちの鍔178aが固定されている側縁も持ち上げられる。これにより、パレット50が、図16に示すように、厚さ寸法の大きい支持爪186bにより支持された鍔178bから厚さ寸法の小さい支持爪186aにより支持された鍔178aに向って下降するように傾斜した状態で、保持装置102により保持されて、ステージから持ち上げられる。このように、パレット50を傾斜させた状態でステージから持ち上げることで、パレット50がステージから持ち上げられる際の鍔及び支持爪への負荷を小さくすることができる。
【0038】
また、パレットの下面に切欠部を形成することで、パレットがステージから持ち上げられる際の鍔及び支持爪への負荷を更に小さくすることができる。具体的には、図17に示すパレット190では、互いに対向する1対の側縁に、上述した厚さ寸法の異なる1対の鍔180が固定されている。そして、パレット190の下面には、パレット190の1対の側縁のうちの鍔180bが固定されている側の側縁(以下、「切欠連続側縁」と記載する)に連続するように、1対の切欠部192が形成されている。1対の切欠部192のうちの一方の切欠部192aは、切欠部192aとパレットの下面との境界線196aが、切欠連続側縁の延びる方向の中央から切欠連続側縁の端に向うほど、その切欠連続側縁から離れるようにパレットの下面に形成されている。つまり、切欠部192aは、その切欠部192aとパレットの下面との境界線196aが切欠連続側縁の延びる方向と異なる方向に延びるようにパレットの下面に形成されている。これにより、切欠部192aは、パレットの下面が切欠連続側縁を一辺とする三角形状に切り欠かれた形状とされている。また、1対の切欠部192のうちの他方の切欠部192bは、切欠連続側縁の延びる方向の中央を中心として、切欠部192aと対称的な形状に切り欠かれている。このため、切欠部192bとパレットの下面との境界線196bと、切欠部192aとパレットの下面との境界線196aとは、切欠連続側縁の1点において交差している。
【0039】
このように切欠部192が形成されたパレット190を保持装置102によりステージ36から持ち上げる際に、1対の鍔180が固定されたパレット50(図12参照)と同様に、パレット190は傾斜した状態で持ち上げられる。このため、保持装置102を上昇させると、図18に示すように、まず、厚さ寸法の大きい鍔180bが支持爪176bにより支持されて、パレット190の1対の側縁のうちの鍔180bが固定されている側縁のみが持ち上げられる。このように、1対の側縁のうちの鍔180bが固定されている側縁のみが持ち上げられる際に、パレット190の下面は、1対の切欠部192が形成されている側の端から順次、ステージ36の上面から離間する。また、切欠部192とパレット190の下面との境界線196は切欠連続側縁の延びる方向と異なる方向に延びており、切欠部192bとパレットの下面との境界線196bと、切欠部192aとパレットの下面との境界線196aとは、切欠連続側縁の1点において交差している。このため、パレット190の下面がステージ36の上面から離間する際に、パレット190の切欠連続側縁の下端、つまり、パレット190の下面の境界線196aと境界線196bとが交差する1点とステージ36とが点接触している箇所がステージから剥がされる。このように、ステージからパレット190が持ち上げられる際に、パレットの下面とステージ36の上面との界面に生じている密着力の一部のみ、例えば、パレットの下面の境界線196aと境界線196bとが交差する1点とステージとの点接触している部分の密着力のみが、鍔及び支持爪にかかる。これにより、パレット190がステージから持ち上げられる際の鍔及び支持爪への負荷を、更に小さくすることができる。
【0040】
また、パレットを保持装置102により傾斜させた状態で保持することで、鍔及び支持爪への負荷を小さくしてパレットを適切に持ち上げることができるが、保持装置102により保持されたパレットを適切にステージ36の上に載置することもできる。詳しくは、回路形成装置10では、上述したように、搬入装置26により回路形成装置10の内部に搬入されたパレット50が、保持装置により保持されて、ステージ36の上に載置される。この際、従来の保持装置150では、図19に示すように、1対のアーム152の保持軸158により挟持されたパレット50では、そのパレット50の下面は概して水平となり、保持装置150が下降することで、水平な状態のパレット50の下面が、水平な状態のステージ36の上面に載置される。このように、水平な状態のパレット50の下面が、水平な状態のステージ36の上面に載置される際に、パレット50の下面とステージ36の上面との界面に空気が入り込み、ステージの上に載置されたパレット50の高さ寸法が予め設定されている高さ寸法からズレる場合がある。そして、そのようにパレット50の高さ寸法が予め設定されている高さ寸法からズレる場合には、精度良く回路を形成できない虞がある。
【0041】
一方で、図20に示すように、保持装置102では、厚さ寸法の異なる1対の鍔180が下方から1対の支持爪176により支持されることで、パレット50が傾斜した状態で保持される。そして、保持装置102がステージ36の上方において下降することで、図21に示すように、パレット50の互いに対向する1対の側縁のうちの鍔180aが固定されている側縁の下端が、まず、ステージ36の上面に接触する。この際、支持爪176aによる鍔180aの支持が解除される。そして、保持装置102が下降することで、ステージ36の下面が、パレット50の1対の側縁のうちの鍔180aが固定されている側縁の下端から鍔180bが固定されている側縁の下端に向って、順次、ステージ36の上面に接触する。この際、鍔180aが固定されているパレットの側縁の下端から鍔180bが固定されている側縁の下端に向って、空気がパレット50の下面とステージ36の上面との間から好適に抜ける。このように、傾斜した状態で保持されたパレット50をステージ36の上に載置することで、ステージに載置されたパレット50の下面とステージの上面との界面への空気の入り込みを防止することが可能となり、パレットを適切にステージ36の上に載置することができる。
【0042】
なお、上記実施例において、回路形成装置10は、3次元造形装置の一例である。樹脂層造形ユニット22は、造形ユニットの一例である。配線造形ユニット24は、造形ユニットの一例である。移載装置30は、移載装置の一例である。ステージ36は、ステージの一例である。パレット50は、パレットの一例である。アーム106は、アームの一例である。鍔180は、被支持部の一例である。支持爪186は、支持部の一例である。切欠部192は、切欠部の一例である。
【0043】
また、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。例えば、上記実施例では、パレット50の1対の側縁に固定された1対の鍔178,180が、1対のアーム106の支持爪176,186により支持されることで、パレットが保持装置102に保持されている。つまり、パレット50の1対の側縁に形成された1対の凸部が、1対のアーム106の凸部により支持されることで、パレットが保持装置102に保持されている。一方、パレット50の1対の側縁に形成された1対の凹部に、1対のアーム106の凸部が挿入されて、パレットの1対の凹部が1対のアーム106の凸部により支持されることで、パレットが保持装置に保持されてもよい。また、パレット50の1対の側縁に形成された1対の凸部が、1対のアーム106の凹部に挿入されて、パレットの1対の凸部が1対のアーム106の凹部により支持されることで、パレットが保持装置に保持されてもよい。
【0044】
また、上記実施例では、パレット50が互いに対向する1対の側縁に固定された1対の鍔178,180が1対の支持爪176,186により支持されているが、パレット50の互いに対向する1対の側縁の下端が1対の支持爪により支持されてもよい。具体的には、図22に示すように、ステージ36の上面に、1対の凹部200が形成されている。1対の凹部200は、ステージ36に載置されるパレット50の互いに対向する1対の側縁に対応する位置に形成されており、パレット50がステージ36の上に載置されることで、パレット50の互いに対向する1対の側縁が1対の凹部200の上方に延び出す姿勢となる。このため、ステージの上に載置されたパレット50の互いに対向する1対の側縁の下端及び、その下端に連続するパレットの下面の一部が1対の凹部200の上方で露出する。
【0045】
このようなステージ36に載置されたパレット50の上方に、保持装置102を移動させる。この際、1対のアーム106の支持爪186の互いに対向する先端面の間の距離が、パレット50の互いに対応する1対の側縁の間の距離より長くなるように、エアシリンダ110の作動が制御される。そして、保持装置102が、昇降装置104の作動により下降することで、図22に示すように、1対の支持爪186が1対の凹部200の内部に入り込む。なお、凹部200の深さ寸法は、支持爪186bの厚さ寸法より大きくされており、1対の支持爪186の全体が1対の凹部200の内部に入り込む。続いて、1対のアーム106の支持爪186の間の距離が短くなるように、エアシリンダ110の作動が制御されることで、図23に示すように、1対のアーム106の支持爪186がパレット50の1対の側縁の下端の下方に入り込む。そして、保持装置102が昇降装置104の作動により上昇することで、図24に示すように、パレット50の1対の側縁の下方が1対のアーム106の支持爪186により下方から支持された状態で持ち上げられる。このように、パレット50の1対の側縁の下方が1対のアーム106の支持爪186により下方から支持されることでも、パレットを傾斜した状態で保持することが可能となり、パレット50を適切にステージ36から持ち上げることができる。
【0046】
また、上記実施例では、厚さ寸法の異なる1対の支持爪186若しくは、厚さ寸法の異なる1対の鍔180を用いることで、側縁の一方がアームの一方に支持される高さと側縁の他方がアームの他方に支持される高さとを異ならせている。一方で、同じ厚さ寸法の1対の把持爪、若しくは、同じ厚さ寸法の1対の鍔を上下方向の異なる位置に配設することで、側縁の一方がアームの一方に支持される高さと側縁の他方がアームの他方に支持される高さとを異ならせてもよい。
【0047】
また、上記実施例では、3次元造形物として回路を形成する回路形成装置10に本発明が適用されているが、フィギュアなどの種々の3次元造形物を形成する3次元造形装置に本発明が適用されてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10:回路形成装置(3次元造形装置) 22:樹脂層造形ユニット(造形ユニット) 24:配線造形ユニット(造形ユニット) 30:移載装置 36:ステージ 50:パレット 106:アーム 180:鍔(被支持部) 186:支持爪(支持部) 192:切欠部
図1
図2
図3
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