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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】光子検出システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/69 20130101AFI20240708BHJP
   H04B 10/70 20130101ALI20240708BHJP
【FI】
H04B10/69 110
H04B10/70
【請求項の数】 23
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023023739
(22)【出願日】2023-02-17
(65)【公開番号】P2024038972
(43)【公開日】2024-03-21
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】2213116.3
(32)【優先日】2022-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミルコ サンザロ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ミヤーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス エフ ダインズ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー シンプキンス
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ジェームス シールズ
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/102430(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/012865(WO,A1)
【文献】特表2006-510247(JP,A)
【文献】特開2005-114712(JP,A)
【文献】特開2003-243694(JP,A)
【文献】特開2003-142724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/69
H04B 10/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光子に応答してフォトダイオード信号を生成するように構成されたアバランシェフォトダイオードと、
前記アバランシェフォトダイオードにゲーティング信号を供給するように構成されたバイアス回路であって、ここにおいて、前記ゲーティング信号が、各期間中に光子検出のためにその降伏電圧を上回っておよび下回って前記アバランシェフォトダイオードに逆バイアスをかけるように構成された周期的信号である、バイアス回路と
入力ポートにおいて、前記フォトダイオード信号を受信し、
第1の出力ポートにおいて、前記受信されたフォトダイオード信号に、前記ゲーティング信号の周波数以下である第1のカットオフ周波数をもつローパスフィルタを適用することによって、第1のフィルタ処理された出力信号を提供する
ように構成された無反射フィルタ回路と、
を備える光子検出システム。
【請求項2】
前記ゲーティング信号が、前記第1のカットオフ周波数よりも高いゲート周波数を有する、請求項1に記載の光子検出システム。
【請求項3】
前記無反射フィルタ回路が、第2の出力ポートにおいて、前記受信されたフォトダイオード信号に、第2のカットオフ周波数をもつハイパスフィルタを適用することによって、第2のフィルタ処理された出力信号を提供するようにさらに構成される、請求項1に記載の光子検出システム。
【請求項4】
前記第1のカットオフ周波数と前記第2のカットオフ周波数が同じである、請求項3に記載の光子検出システム。
【請求項5】
前記第2のフィルタ処理された出力信号に基づいて信号電力を決定するように構成された電力計測回路をさらに備える、請求項3に記載の光子検出システム。
【請求項6】
前記バイアス回路が、前記決定された信号電力に基づいて生成されたフィードバック信号を受信し、前記フィードバック信号に基づいて、ターゲットゲーティング信号を整合させるように前記ゲーティング信号を調整するようにさらに構成される、請求項5に記載の光子検出システム。
【請求項7】
前記無反射フィルタ回路がダイプレクサである、請求項1に記載の光子検出システム。
【請求項8】
前記第1のフィルタ処理された出力信号に基づいて電気パルスを出力するように構成されたディスクリミネータ回路をさらに備える、請求項1に記載の光子検出システム。
【請求項9】
前記ゲーティング信号が矩形波または正弦曲線の形をとる、請求項1に記載の光子検出システム。
【請求項10】
前記ゲーティング信号が、1GHzよりも大きいゲート周波数を有する、請求項1に記載の光子検出システム。
【請求項11】
前記アバランシェフォトダイオードがInGaAs/InP単一光子アバランシェフォトダイオードである、請求項1に記載の光子検出システム。
【請求項12】
少なくとも2つの基底から選択された基底を用いて符号化された光パルスを送信するように構成された送信機と、
請求項1に記載の光子検出システムを備える受信機と
を備える量子通信システム。
【請求項13】
アバランシェフォトダイオードを用いて光子を検出する方法であって、
前記アバランシェフォトダイオードにゲーティング信号を供給することであって、ここにおいて、前記ゲーティング信号が、各期間中に光子検出のためにその降伏電圧を上回っておよび下回って前記アバランシェフォトダイオードに逆バイアスをかけるように構成された周期的信号である、ゲーティング信号を供給することと
無反射フィルタ回路に、入射光子に応答して前記アバランシェフォトダイオードによって生成されたフォトダイオード信号を提供することと、
前記無反射フィルタ回路の第1の出力ポートにおいて、前記提供されたフォトダイオード信号に、前記ゲーティング信号の周波数以下である第1のカットオフ周波数をもつローパスフィルタを適用することによって、第1のフィルタ処理された出力信号を提供することと
を備える方法。
【請求項14】
前記ゲーティング信号が、前記第1のカットオフ周波数よりも高いゲート周波数を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記無反射フィルタ回路の第2の出力ポートにおいて、前記提供されたフォトダイオード信号に、第2のカットオフ周波数をもつハイパスフィルタを適用することによって、第2のフィルタ処理された出力信号を提供すること
をさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のカットオフ周波数と前記第2のカットオフ周波数が同じである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
電力計測回路によって、前記第2のフィルタ処理された出力信号に基づいて信号電力を決定すること
をさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記決定された信号電力に基づいて生成されたフィードバック信号を受信することと、
前記フィードバック信号に基づいて、ターゲットゲーティング信号を整合するように前記ゲーティング信号を調整することと
をさらに備える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記無反射フィルタ回路がダイプレクサである、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記第1のフィルタ処理された出力信号内の光子励起スパイクの存在または不在を決定することと、
前記第1のフィルタ処理された出力信号内の前記光子励起スパイクの存在を決定することに応答して、電気信号を出力として生成することと
をさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記ゲーティング信号が矩形波または正弦曲線の形をとる、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記ゲーティング信号が、1GHzよりも大きいゲート周波数を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記アバランシェフォトダイオードがInGaAs/InP単一光子アバランシェフォトダイオードである、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において説明される実施形態は、光子検出システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単一光子検出器は、単一光子のレベルで弱い光パルスを検出するために、飛行時間型測距、医療イメージング、および量子通信などの適用例において用いられる。単一光子アバランシェダイオード(SPAD)は、可視および近赤外線(NIR)光学的測距における高速単一光子検出に一般に用いられる単一光子検出器のタイプである。
【0003】
InGaAs/InP SPADは、電気通信波長における光子検出に用いられる。ダークカウントおよびアフターパルスの可能性を低減するために、InGaAs/InP SPADは通常、ゲート制御モードで動作される。一般に「ゲート」と呼ばれる周期的バイアス信号が、各期間中にデバイスを作動状態にし、クエンチするためにSPADに印加される。ゲート制御モード動作は典型的には、ゲート信号とのパルス光源同期を用いた適用例において、すなわち光子の潜在的到達時間が知られている適用例において、信号対雑音比を向上させる。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、アバランシェフォトダイオードとバイアス回路と無反射フィルタ回路とを備える光子検出システムが提供される。アバランシェフォトダイオードは、入射光子に応答してフォトダイオード信号を生成するように構成される。バイアス回路は、アバランシェフォトダイオードにゲーティング信号を供給するように構成される。ゲーティング信号は、各期間中に光子検出のためにその降伏電圧を上回っておよび下回ってアバランシェフォトダイオードに逆バイアスをかけるように構成された周期的信号である。無反射フィルタ回路は、入力ポートにおいて、フォトダイオード信号を受信し、第1の出力ポートにおいて、受信されたフォトダイオード信号に、第1のカットオフ周波数をもつローパスフィルタを適用することによって、第1のフィルタ処理された出力信号を提供するように構成される。ゲーティング信号は、第1のカットオフ周波数よりも高いゲート周波数を有してよい。
【0005】
無反射フィルタ回路は、第2の出力ポートにおいて、受信されたフォトダイオード信号に、第2のカットオフ周波数をもつハイパスフィルタを適用することによって、第2のフィルタ処理された出力信号を提供するようにさらに構成されることがある。第1のカットオフ周波数と第2のカットオフ周波数は、実質的に同じであってよい。
【0006】
光子検出システムは、第2のフィルタ処理された出力信号に基づいて信号電力を決定するように構成された電力計測回路をさらに備えることがある。バイアス回路は、決定された信号電力に基づいて生成されたフィードバック信号を受信し、このフィードバック信号に基づいて、ターゲットゲーティング信号を整合させるようにゲーティング信号を調整するようにさらに構成されることがある。
【0007】
無反射フィルタ回路は、ダイプレクサであってよい。
【0008】
光子検出システムは、第1のフィルタ処理された出力信号に基づいて電気パルスを出力するように構成されたディスクリミネータ回路をさらに備えることがある。
【0009】
ゲーティング信号は、矩形波または正弦曲線の形をとってよい。ゲーティング信号は、1GHzよりも大きいゲート周波数を有してよい。アバランシェフォトダイオードは、InGaAs/InP単一光子アバランシェフォトダイオードであってよい。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、少なくとも2つの基底から選択された基底を用いて符号化された光パルスを送信するように構成された送信機と、光子検出システムを備える受信機とを備える量子通信システムが提供される。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、アバランシェフォトダイオードを用いて光子を検出する方法が提供される。この方法は、アバランシェフォトダイオードにゲーティング信号を供給すること、ここにおいて、このゲーティング信号は、各期間中に光子検出のためにその降伏電圧を上回っておよび下回ってアバランシェフォトダイオードに逆バイアスをかけるように構成された周期的信号である、を備える。方法は、無反射フィルタ回路に、入射光子に応答してアバランシェフォトダイオードによって生成されたフォトダイオード信号を提供することをさらに備える。方法は、無反射フィルタ回路の第1の出力ポートにおいて、提供されたフォトダイオード信号に、第1のカットオフ周波数をもつローパスフィルタを適用することによって、第1のフィルタ処理された出力信号を提供することをさらに備える。
【0012】
方法は、無反射フィルタ回路の第2の出力ポートにおいて、受信されたフォトダイオード信号に、第2のカットオフ周波数をもつハイパスフィルタを適用することによって、第2のフィルタ処理された出力信号を提供することをさらに備える。
【0013】
方法は、電力計測回路によって、第2のフィルタ処理された出力信号に基づいて信号電力を決定することをさらに備える。
【0014】
方法は、決定された信号電力に基づいて生成されたフィードバック信号を受信することと、このフィードバック信号に基づいて、ターゲットゲーティング信号を整合するようにゲーティング信号を調整することとをさらに備えることがある。
【0015】
方法は、第1のフィルタ処理された出力信号内の光子励起スパイクの存在または不在を決定することと、第1のフィルタ処理された出力信号内の光子励起スパイクの存在を決定することに応答して、電気信号を出力として生成することとをさらに備えることがある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】光子検出システムの概略図。
図2図1のSPADにバイアスをかけるために印加される電圧に関する、時間に対する電圧の概略プロット。
図3】SPADによって生成される電気信号の電力スペクトルを示す、周波数に対する電力の概略プロット。
図4】ローパスフィルタを通過した後の、SPADによって生成される電気信号の電力スペクトルを示す、周波数に対する電力の概略プロット。
図5図1の光子検出システムの変形形態の概略図。
図6】ハイパスフィルタを通過した後の、SPADによって生成される電気信号の電力スペクトルを示す、周波数に対する電力の概略プロット。
図7図5の光子検出システムの動作中にローパスフィルタ出力およびディスクリミネータによって出力される電気信号に関する、電圧対周波数のプロットのセット。
図8図5の光子検出システムに関する光子検出効率に対するダークカウント確率のプロット。
図9図5の光子検出システムのさらなる変形形態の概略図。
図10図5の光子検出システムのさらに別の変形形態の概略図。
図11】本発明による光子検出システムを用いる量子通信システムの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、到来する単一光子の検出に用いられ得る光子検出システム1の概略図である。光子検出システム1は、単一光子アバランシェダイオード(SPAD)2と、バイアス回路とを備える。SPAD2が、その降伏電圧を上回ってバイアスがかけられるとき、SPAD2によって吸収される光子は電子-正孔対を生成し、このことは、過剰キャリアのアバランシェをトリガすることができる。過剰キャリアのこのアバランシェ増倍は、SPAD2を通る巨視的な電流の流れを起こす。SPAD2に接続された電気回路は、アバランシェ電流を検出し、検出された光子を示すディジタル信号を出力する。
【0018】
図1をさらに参照すると、光子検出システム1は、DC入力電圧を受信するための第1の入力端子8と、AC入力電圧を受信するための第2の入力端子5とを備える。第2の入力端子5は、受けられたAC入力電圧を増幅させるように構成された増幅器6に接続される。光子検出システム1は、第1の入力端子8および増幅器6の出力に接続されたバイアスティー回路4をさらに備える。バイアスティー回路4は、キャパシタ9と、インダクタ10とを含み、バイアスティー回路4の出力上で合成電圧を作成するためにAC入力電圧とDC入力電圧を結びつけるように構成される。
【0019】
SPAD2のカソードは、第1の伝送線路11を通じてバイアスティー回路4の出力に接続され、バイアスティー回路4から合成電圧を受信するように構成される。キャパシタ13と抵抗器14とを備え、バイアスティー回路4からの合成電圧によって起こされた反射を抑えるように構成されたAC終端回路12も、SPAD2のカソードに接続される。
【0020】
SPAD2のアノードは、抵抗器3を通じて接地7に接続される。キャパシタ15の第1の端子は、SPAD2のアノードと抵抗器3との間に接続される。キャパシタ15の第2の端子は、第2の伝送線路16を通じて無反射フィルタ回路17の入力ポートに接続される。無反射フィルタ回路17は、カットオフ周波数fLPによって特徴づけられるローパスフィルタ18を備える。カットオフ周波数fLPは、ゲート繰り返し周波数fgateよりも低い。
【0021】
無反射フィルタ回路17の入力ポートは、周波数fnon-reflまで第2の伝送線路16にインピーダンス整合される。言い換えれば、無反射フィルタ回路17は、SPAD2に戻る反射を回避するように構成される。周波数fnon-reflは、ゲート繰り返し周波数fgateよりも高く、ゲート繰り返し周波数fgateよりも3倍高くてよい。周波数fnon-reflよりも低い周波数における信号の場合、無反射フィルタ回路17のリターンロスは、3dBよりも高くてよく、または好ましくは、10dBよりも高くてよい。周波数fnon-reflを下回り、カットオフ周波数fLPを上回る周波数における信号は、無反射フィルタ回路17によって吸収されてよい。
【0022】
無反射フィルタ回路17の出力は、増幅器19に接続される。増幅器19は、低雑音増幅器であってよい。増幅器19の出力は、ディスクリミネータ20の第1の入力ポートに接続される。ディスクリミネータ20は、増幅器19の出力信号が、ディスクリミネータ20の第2の入力ポート21に印加される所定の電圧レベルと判別されるように構成される。ディスクリミネータ20は、検出器出力22を送るために、ディジタル信号、たとえばTTLパルスを出力するようにさらに構成される。
【0023】
光子検出システム1の動作中、SPAD2は、第1の入力端子8と接地7との間に印加されるDCバイアスVbiasおよび第2の入力端子5と接地7との間に印加されるゲーティング信号Vgateによって、逆バイアスがかけられる。
【0024】
ゲーティング信号Vgateは、ゲート繰り返し周波数fgateをもつ周期的電圧信号である。ゲート繰り返し周波数fgateは、1GHz以上であってよい。ゲーティング信号Vgateは、調整可能なデューティサイクルをもつ矩形波、正弦曲線、または恣意的な周期波の形をとってよい。DCバイアスVbiasは、SPAD2の降伏電圧Vbを下回る、これに等しい、またはこれよりも高い、のいずれかに設定される。いずれの場合にも、重畳ゲーティング信号Vgateは、次いで、SPAD2を所定の量の時間にわたって単一光子の感度が高くするために、降伏電圧を上回るようにSPAD2に周期的にバイアスをかける。たとえば、図2は、降伏電圧24を周期的に超過するDCバイアス23と結びつけられた矩形波形のゲーティング信号25を示す。
【0025】
SPAD2が、その降伏電圧を上回るようにバイアスがかけられるとき、吸収された光子は、SPAD2内で電子-正孔対を生成し、これは、分離時に、過剰キャリアのアバランシェをトリガすることができる。過剰キャリアのこのアバランシェ増倍は、SPAD2を通る巨視的な電流の流れを起こし、抵抗器3上での過渡電圧降下をもたらす。言い換えれば、吸収された光子は、抵抗器3上の電圧スパイクの形をとる検出可能な信号につながる。光子吸収によって起こされる信号の電力スペクトルは、図3に示される広い電力スペクトル26を有することがある。電力スペクトル26は、増加する周波数とともに減少する。光子信号の全(bulk)スペクトル重みは一般的には、1GHzに等しいまたはこれを上回るゲート繰り返し周波数のためのゲート繰り返し周波数fgateよりも低い。
【0026】
SPAD2は有限の静電容量を有するので、ゲーティング信号Vgateは、抵抗器3上でさらなる電圧パルスを起こす。ゲーティング信号Vgateが矩形波の形をとるとき、ゲーティング信号Vgateの立ち上がりエッジに到達するとき、SPAD2によって正の電圧パルスが生成され、これに続いて、ゲーティング信号Vgateの立ち下がりエッジに到達するとき、負の電圧パルスが生成される。ゲーティング信号Vgateによって起こされるこれらの疑似過渡事象の振幅は、光子吸収によって起こされる信号の振幅よりも大きくすることができる。その結果、疑似過渡事象は、光子吸収信号を不明瞭にすることができる。疑似過渡事象は一般的には、光子信号の電力スペクトル26とは実質的に相違する電力スペクトルを有する。ゲーティング信号Vgateが矩形波の形をとるとき、疑似過渡事象の電力スペクトルは、ゲート繰り返し周波数fgateおよびその高調波における狭帯域のセットからなる。図3を参照すると、疑似過渡事象の電力スペクトルは、ゲート繰り返し周波数27ならびにその第2次調波28および第3次調波29においてかなりの成分を含むことがあり、それによって、電力は、より高い周波数とともに減少する。
【0027】
SPAD信号は、キャパシタ15および第2の伝送線路16を通して、無反射フィルタ回路17の入力ポートに結合される。無反射フィルタ回路17に含まれるローパスフィルタ18は、カットオフ周波数fLPを下回る入力信号の周波数成分を通過させ、カットオフ周波数fLPを上回る周波数において周波数成分を強く減衰させる。ローパスフィルタ18は、図4に示される周波数依存透過31を有してよい。
【0028】
カットオフ周波数fLPはゲート繰り返し周波数fgateよりも低いので、ローパスフィルタ18は、ゲート繰り返し周波数fgateおよびその高調波における狭帯域のセットからなる疑似過渡事象の周波数成分を透過しない、または少なくとも、無視できるレベルまで減衰させる。にもかかわらず、カットオフ周波数fLPは、光子吸収によって起こされる信号の広い電力スペクトル26の大部分を通過させるのに十分に高い。言い換えれば、ローパスフィルタ18は、光子吸収によって起こされる信号のかなりの部分を通過させながら、疑似過渡事象の周波数成分を除去する。例では、図3の破線30は、カットオフ周波数fLPを示す。
【0029】
図4は、ローパスフィルタ18を通過した後の、光子吸収によって起こされる信号の電力スペクトル32を示す。ローパスフィルタ18は、光子吸収によって起こされる信号の広い電力スペクトル26の50%、75%、または90%よりも多く通過させるように構成されることがある。好ましくは、カットオフ周波数fLPは、SPAD2の-3dBアバランシェ帯域幅、すなわち、それを上回ると光子吸収によって起こされる信号のスペクトル電力がそのピーク電力の半分よりも小さい周波数、に整合するかまたはこれに近い。
【0030】
無反射フィルタ回路17は第2の伝送線路16にインピーダンス整合されるので、ローパスフィルタ18を通って透過されないSPAD信号、すなわち大部分は疑似ゲート過渡現象、のエネルギーは、SPAD2に反射されない。これは、SPAD2は、光子検出システム1の性能を妨げることができるそのような帰還エネルギーに対する感度が高いので、有利である。たとえば、ゲーティング信号Vgateが矩形波の形をとるとき、反射されたゲート過渡事象は、SPAD2において干渉することがあり、その後のゲーティング信号は、ゲート持続時間内の有効検出効率の平坦性を損なう。
【0031】
無反射フィルタ回路17を通過した後、フィルタ処理されたSPAD信号は、SPAD信号内の光子励起スパイクの存在または不在を決定するために、増幅器19、次いでディスクリミネータ20に通過される。フィルタ処理されたSPAD信号が所定の電圧レベルを超える場合、ディスクリミネータ20は、フィルタ処理されたSPAD信号を論理的ハイ信号、たとえばハイTTLパルスに変換させ、この論理的ハイ信号は、検出器出力21において出力される。
【0032】
一実施形態では、カットオフ周波数とゲート繰り返し周波数の正確な整合が必要とされるので、ローパスフィルタ18は、SPAD信号をフィルタ処理するために用いられる。これは、高度な製作公差を用い、工場校正を実行し、メンテナンスを実行する必要性を緩和するので、システムの製造の容易性を向上させる。さらに、ローパスフィルタ18の使用は、光子検出システム1が、その性能を著しく劣化させることなくゲート繰り返し周波数の範囲にわたって働くことを可能にする。ゲート繰り返し周波数の変動の許容差は特に、量子通信における適用例に有利であり、ゲート繰り返し周波数は、多くの場合、他のシステム構成要素、たとえば光子源または光学干渉計に整合される。
【0033】
一実施形態では、光子検出システム1は、増幅器6を含まないことがある。この場合、第2の端子5で受信されたAC入力電圧は、さらなる増幅が必要とされないように、十分な振幅であってよい。
【0034】
図5は、図1の光子検出システムの変形形態を示す。不必要な繰り返しを回避するために、同じ参照番号は、同じ特徴を表すために用いられる。SPAD2のバイアスおよびSPAD2によって生成される信号は、図1を参照しながら説明されたとおりである。
【0035】
SPAD信号は、キャパシタ15および第2の伝送線路16を通して、無反射フィルタ回路34の入力ポートに結合される。無反射フィルタ回路34は、ローパスフィルタ18を含む。ローパスフィルタ18の出力は、図1を参照しながら説明されたように、増幅器19、次いでディスクリミネータ20に通過される。
【0036】
光子検出システム33の無反射フィルタ回路34は、ハイパスフィルタ35をさらに含む。ハイパスフィルタ35は、カットオフ周波数fHPによって特徴づけられる。カットオフ周波数fHPは、繰り返し周波数fgateよりも低い。好ましくは、カットオフ周波数fHPとカットオフ周波数fLPは実質的に同じである。ハイパスフィルタ35は、図6に示されるように、周波数依存透過37を有してよい。無反射フィルタ回路34は、ダイプレクサであってよい。カットオフ周波数fHPとカットオフ周波数fLPが実質的に同じであり、無反射フィルタ回路34がダイプレクサであるとき、カットオフ周波数fLPとfHPは電気的に同調可能であってよい。
【0037】
ハイパスフィルタ35の入力ポートとローパスフィルタ18の入力ポートは両方とも、無反射フィルタ回路34の入力ポートに接続される。ハイパスフィルタ35の出力は、電力計測デバイス36に接続される。電力計測デバイス36は、ハイパスフィルタ35の出力における電力レベルを決定するように構成される。電力計測デバイス36は、ハイパスフィルタ35および/またはSPAD2に戻る反射を回避するように、入力インピーダンスを有するようにさらに構成される。
【0038】
図1の光子検出システム1の無反射フィルタ回路17のように、光子検出システム33の無反射フィルタ回路34は、周波数fnon-reflまで第2の伝送線路16にインピーダンス整合される。言い換えれば、無反射フィルタ回路34は、SPAD2に戻る反射を回避するように構成される。
【0039】
光子検出システム33の動作中、SPAD信号は、無反射フィルタ回路34の入力ポートに結合される。無反射フィルタ回路34に含まれるローパスフィルタ18は、図1を参照しながら説明されたように、カットオフ周波数fLPを下回る入力信号の周波数成分を、増幅器19、次いでディスクリミネータ20に通過させる。無反射フィルタ回路34に含まれるハイパスフィルタ35は、カットオフ周波数fHPを上回る入力信号の周波数成分を電力計測デバイス36に通過させる。
【0040】
図6は、ハイパスフィルタ35を通過した後の、光子吸収によって起こされる信号の電力スペクトル38と、疑似過渡事象の電力スペクトルとを示す。カットオフ周波数fHPはゲート繰り返し周波数fgateよりも低いので、ハイパスフィルタ35は、ゲート繰り返し周波数fgate25およびその高調波26、27における狭帯域のセットからなる疑似過渡事象の周波数成分を通過させる。にもかかわらず、カットオフ周波数fHPは、光子吸収によって起こされる信号の広い電力スペクトル38の大部分をブロックするのに十分に高い。言い換えれば、ハイパスフィルタ35は、ハイパスフィルタ35の出力において電力計測デバイス36によって決定される電力レベルが主に疑似過渡事象によって起こされるように構成される。
【0041】
電力計測デバイス36によって決定される電力レベルは、光子検出システム33の動作中にゲーティング信号Vgateの電力を監視するために用いられることがある。計測された電力レベルは、たとえば、温度変化、振動、または構成要素の経年変化によるドリフトにもかかわらず、ゲーティング信号Vgateの均一な振幅を維持するためにフィードバック信号としてさらに用いられることがある。このために、受信されたAC入力電圧を増幅させるために用いられる増幅器6の利得は、自動利得(AGC)サーボループを実行するように調整されることがある。温度変化、振動、および/または構成要素の経年変化が、所定のしきい値よりも低くするために電力計測デバイス36によって決定される電力レベルを起こす例では、受信されたAC入力電圧を増幅させるために用いられる増幅器6の利得は、増加されることがある。温度変化、振動、および/または構成要素の経年変化が、所定のしきい値よりも高くするために電力計測デバイス36によって決定される電力レベルを起こす例では、受信されたAC入力電圧を増幅させるために用いられる増幅器6の利得は、減少されることがある。
【0042】
光子検出システム33の動作中にゲーティング信号Vgateの振幅を監視および安定化させることは、このことが、一般にシステムの、特に検出効率、ダークカウント率、アフターパルシング、およびタイミング応答の、長期安定性を向上させるので、有利である。
【0043】
無反射フィルタ34としてダイプレクサを用いることは、このことが、光子検出システム33の複雑さ要件と、コスト要件と、占有面積要件とを低減するので、さらに有利である。
【0044】
図7および図8に示される実験結果が、以下の仕様とともに図5で説明される光子検出システム33を用いて得られた。ゲーティング信号Vgateは矩形波の形をとる。ゲート繰り返し周波数fgateは1GHzである。無反射フィルタ回路34は、ローパスフィルタ18とハイパスフィルタ35とを備える表面実装ダイプレクサである。カットオフ周波数fLPおよびfHPは、約800MHzである。
【0045】
図7の上部パネル39は、SPAD2による光子の吸収に応答して生成されるローパスフィルタ18の出力における信号40と、対応するディスクリミネータ20の出力信号41に関する、時間に対する電圧を示す。図7の中央パネル42は、上部パネル39に示される信号40の繰り返される収集の蓄積43を示す。対応して、下部パネル44は、繰り返される収集に対応する、ディスクリミネータ20の出力信号41の蓄積45を示す。
【0046】
図8は、光子検出システム33の検出効率に対するダークカウント確率を示す。データセット46に関して、ゲーティング信号Vgateのデューティサイクルは50%に設定され、SPAD2は-30℃に冷却される。データセット47、48、および49に関して、ゲーティング信号Vgateのデューティサイクルは22%に設定され、SPAD2はそれぞれ、-30℃、-40℃、および-50℃に冷却される。検出効率は、DCバイアスVbiasを変えることによって、変えられる。
【0047】
図5の光子検出システム33の変形形態では、ハイパスフィルタ35の出力は、電力計測デバイス36ではなく、電力吸収擬似負荷へと終端される。電力吸収擬似負荷は、ハイパスフィルタ35および/またはSPAD2に戻る反射を回避する。
【0048】
図9は、図5の光子検出システムのさらなる変形形態を示す。SPAD2のバイアスおよびSPAD2によって生成される信号は、図1を参照しながら説明されたとおりである。無反射フィルタ回路51は、ローパスフィルタ18と、ハイパスフィルタ52とを含む。ローパスフィルタ18の出力は、図1を参照しながら説明されたように、増幅器19、次いでディスクリミネータ20に通過される。ハイパスフィルタ52の出力は、電力計測デバイス36に接続される。
【0049】
無反射フィルタ回路51は、第1の帯域周波数および第2の帯域周波数fBP1およびfBP2によって特徴づけられるバンドパスフィルタ53をさらに含む。バンドパスフィルタ53の出力は、第2の電力計測デバイス54に接続される。バンドパスフィルタ53は、第1の帯域周波数fBP1を上回り第2の帯域周波数fBP2を下回る周波数成分を第2の電力計測デバイス54に通過させるように構成される。第1の帯域周波数fBP1は、ゲート繰り返し周波数fgateよりも低い。第2の帯域周波数fBP2は、第1の帯域周波数fBP1よりも高く、ゲート繰り返し周波数fgateの2倍よりも低い。言い換えれば、バンドパスフィルタ53は、ゲート繰り返し周波数fgateの第2次調波または高調波をブロックしながら、ゲート繰り返し周波数fgateにおける信号を主に通過させるように構成される。カットオフ周波数fLPと第1の帯域周波数fBP1が実質的に同じであることが好ましい。カットオフ周波数fHPと第2の帯域周波数fBP2が実質的に同じであることがさらに好ましい。
【0050】
第2の電力計測デバイス54は、バンドパスフィルタ53の出力における電力レベルを決定するように構成される。第2の電力計測デバイス54は、バンドパスフィルタ53および/またはSPAD2に戻る反射を回避するように、入力インピーダンスを有するようにさらに構成される。
【0051】
図1の光子検出システム1の無反射フィルタ回路17のように、光子検出システム50の無反射フィルタ回路51は、周波数fnon-reflまで第2の伝送線路16にインピーダンス整合される。言い換えれば、無反射フィルタ回路51は、SPAD2に戻る反射を回避するように構成される。
【0052】
光子検出システム50の動作中、SPAD信号は、無反射フィルタ回路51の入力ポートに結合される。無反射フィルタ回路51に含まれるローパスフィルタ18は、図1を参照しながら説明されたように、カットオフ周波数fLPを下回る入力信号の周波数成分を、増幅器19、次いでディスクリミネータ20に通過させる。第2の電力計測デバイス54によって決定される電力レベルは主に、ゲート繰り返し周波数fgateにおける疑似過渡事象の狭いスペクトル帯域によって起こされる。電力計測デバイス36によって決定される電力レベルは主に、ゲート繰り返し周波数fgateの高調波における疑似過渡事象の狭いスペクトル帯域のセットによって起こされる。
【0053】
電力計測デバイス36および第2の電力計測デバイス54によって決定される電力レベルは、光子検出システム50の動作中にゲーティング信号Vgateの電力を監視するために用いられることがある。図5を参照しながら説明されたように、ゲーティング信号Vgateの振幅は、たとえば、温度変化、振動、または構成要素の経年変化によるドリフトにもかかわらず、決定された電力レベルに基づいて安定化され得る。
【0054】
電力計測デバイス36および第2の電力計測デバイス54によって決定される電力レベルは、ゲーティング信号Vgateの形状を監視および安定化するためにさらに用いられることがある。たとえば、所定の形状に対するゲーティング信号Vgateの形状の変化は、第2の電力計測デバイス54によって決定される電力レベルに対する電力計測デバイス36によって決定される電力レベルの変化から決定されることがある。そのようなゲーティング信号Vgateの形状の変化が決定されるとき、フィードバック信号は、ゲーティング信号Vgateの形状が復元され、所定の形状に整合するように、ゲーティング信号Vgateを生成するゲート波形ジェネレータに提供されることがある。ゲート波形ジェネレータは、RF DAC(無線周波数ディジタル‐アナログ変換器)であってよい。
【0055】
一実施形態では、ゲーティング信号Vgateの形状は、光子検出システム50の動作中に監視および安定化される。このことは、一般にシステムの、特に検出効率、ダークカウント率、アフターパルシング、およびタイミング応答の、長期安定性をさらに向上させる。
【0056】
図9の光子検出システム50の変形形態では、無反射フィルタ回路は、バンドパスフィルタ53ではなく、複数のバンドパスフィルタを含む。複数のバンドパスフィルタは、複数の電力計測デバイスの各々が、疑似過渡事象の電力スペクトルを作成する狭帯域のセットに対応する複数の狭いスペクトル帯域の1つにおいて電力レベルを決定するように構成されるように、対応する複数の電力計測デバイスに接続される。
【0057】
図10は、図5の光子検出システムのさらに別の変形形態を示す。SPAD2のバイアスおよびSPAD2によって生成される信号は、図1を参照しながら説明されたとおりである。図10の光子検出システム60は、第1のゲート繰り返し周波数fgate,1または第2のゲート繰り返し周波数fgate,2において動作可能である。
【0058】
SPAD信号は、キャパシタ15および第2の伝送線路16を通して、第1のスイッチ61の入力に結合される。第1のスイッチ61は、第1の出力ポートまたは第2の出力ポートのどちらかに入力信号をルーティングするように構成される。第1のスイッチ61の第1の出力ポートは、第1の無反射フィルタ回路62の入力ポートに接続され、第1のスイッチ61の第2の出力ポートは、第2の無反射フィルタ63の入力ポートに接続される。
【0059】
第1の無反射フィルタ回路62は、カットオフ周波数fLP,1によって特徴づけられる第1のローパスフィルタ65と、カットオフ周波数fHP,1によって特徴づけられる第1のハイパスフィルタ64とを含む。カットオフ周波数fHP,1およびカットオフ周波数fLP,1は、第1のゲート繰り返し周波数fgate,1よりも低い。一実施形態では、カットオフ周波数fHP,1とカットオフ周波数fLP,1は、実質的に同じである。無反射フィルタ回路62は、ダイプレクサであってよい。
【0060】
第2の無反射フィルタ回路63は、カットオフ周波数fLP,2によって特徴づけられる第2のローパスフィルタ66と、カットオフ周波数fHP,2によって特徴づけられる第2のハイパスフィルタ67とを含む。カットオフ周波数fHP,2およびカットオフ周波数fLP,2は、第2のゲート繰り返し周波数fgate,2よりも低い。好ましくは、カットオフ周波数fHP,2とカットオフ周波数fLP,2は、実質的に同じである。無反射フィルタ回路63は、ダイプレクサであってよい。
【0061】
第1のローパスフィルタ65の出力ポートおよび第2のローパスフィルタ66の出力ポートはそれぞれ、第2のスイッチ68の第1の入力ポートおよび第2の入力ポートに接続される。第2のスイッチ68は、第1の入力ポートまたは第2の入力ポートのどちらかにおいて、スイッチ68の出力ポートに入力信号をルーティングするように構成される。第2のスイッチ68の出力は、図1を参照しながら説明されたように、増幅器19、次いでディスクリミネータ20に通過される。
【0062】
第1のハイパスフィルタ64の出力ポートおよび第2のハイパスフィルタ67の出力ポートはそれぞれ、第3のスイッチ69の第1の入力ポートおよび第2の入力ポートに接続される。第3のスイッチ69は、第1の入力ポートまたは第2の入力ポートのどちらかにおいて、スイッチ69の出力ポートに入力信号をルーティングするように構成される。第3のスイッチ69の出力ポートは、電力計測デバイス36に接続される。
【0063】
図1の光子検出システム1の無反射フィルタ回路17のように、光子検出システム60の第1の無反射フィルタ回路および第2の無反射フィルタ回路62、63は、SPAD2に戻る反射を回避するようにインピーダンス整合される。
【0064】
光子検出システム60が第1のゲート繰り返し周波数fgate,1で動作されるとき、第1のスイッチ61は、第1の出力ポートに、それによって、第1の無反射フィルタ回路62の入力ポートに、入力信号をルーティングするように設定される。この場合、第2のスイッチ68は、第1の入力ポートにおいて、増幅器19、次いでディスクリミネータ20に入力信号を通過させるように構成される。さらに、第3のスイッチ69は、第1の入力ポートにおいて、電力計測デバイス36に入力信号を通過させるように構成される。
【0065】
光子検出システム60が第2のゲート繰り返し周波数fgate,2で動作されるとき、第1のスイッチ61は、第2の出力ポートに、それによって、第2の無反射フィルタ回路63の入力ポートに、入力信号をルーティングするように設定される。この場合、第2のスイッチ68は、第2の入力ポートにおいて、増幅器19、次いでディスクリミネータ20に入力信号を通過させるように構成される。さらに、第3のスイッチ69は、第2の入力ポートにおいて、電力計測デバイス36に入力信号を通過させるように構成される。
【0066】
第1のゲート繰り返し周波数fgate,1は、1GHzであってよい。カットオフ周波数fHP,1およびカットオフ周波数fLP,1は、800MHzであってよい。第2のゲート繰り返し周波数fgate,2は、1.5GHzであってよい。カットオフ周波数fHP,2およびカットオフ周波数fLP,2は、1.2GHzであってよい。
【0067】
第1のスイッチから第3のスイッチは、光子検出システムがその性能を妨げることなく2つの異なるゲート繰り返し周波数で動作可能であるように、SPAD信号のルーティングを可能にする。このことは、特に量子暗号の分野における適用例に関して、システムの柔軟性と実用的な有用性とを増やすので、有利である。
【0068】
図10の光子検出システム60の変形形態では、光子検出システムは、複数のN個の無反射フィルタ回路を含み、複数のN個の異なるゲート繰り返し周波数のいずれか1つで動作可能であり、ここで、Nは2よりも大きい整数である。複数のN個の異なるゲート繰り返し周波数から選択された、選択されたゲート繰り返し周波数に基づいて、第1のスイッチは、複数のN個の無反射フィルタ回路の1つへのSPAD信号のための信号経路を選択するように構成される。第2のスイッチおよび第3のスイッチはそれぞれ、増幅器19(次いでディスクリミネータ20)に、および電力計測デバイス36に、選択された無反射フィルタ回路の出力を通過させるように構成される。
【0069】
図11は、本発明の一実施形態による量子通信システム70の概略図である。量子通信システム70は、アリスと呼ばれる送信機71と、受信機であるボブ72とを備える。アリス71は、光ファイバ73に沿ってボブ72に符号化パルスを送信する。これは、一人の送信機と一人の受信機とをもつ単純なシステムであるが、同じ原理は、量子もつれシステムおよび複数の受信機またはルーターをもつシステムに適用可能であることは、留意されるべきである。
【0070】
その最も単純な形の送信機は、エンコーダ75に光子パルスを出力するソース74を備える。エンコーダは、2つ以上の基底の1つでパルスを符号化することができる。パルスを送信するために用いられる基底は、コントローラ76によって制御される。デコーダ77は、制御下の計測基底78を選択することによって、パルスを復号する。計測基底が選択されると、デコーダは、検出器D1 79または検出器D2 80のどちらかにパルスを向ける。計測基底が、アリスの送信基底のそれを整合するためにデコーダによって適切に選択される場合、結果は、100%の理論的精度とともに決定可能である。誤った基底が用いられる場合、どちらかの検出器は、50%精度でカウントを登録することがある。検出器D1および/またはD2は、図1から図10のいずれかを参照しながら説明されたタイプの光子検出システムである。
【0071】
当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、上記で説明された実施形態に対して、さまざまな変形がなされ得ることを了解するであろう。たとえば、図1図5図9、または図10の光子検出システムは、ローパスフィルタの出力を入力として受信し、出力が増幅器19に通過される、従来のゲートキャンセル回路(gate cancellation circuit)をさらに含んでよい。従来のゲートキャンセル回路は、自己差分法(self-differencing technique)に基づいてよい。
【0072】
いくつかの実施形態が説明されてきたが、これらの実施形態は、例として提示されているにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。実際、本明細書において説明される新規なデバイス、および方法は、さまざまな他の形態で実施されてよい。そのうえ、本明細書において説明されるデバイス、方法、および製品の形態におけるさまざまな省略、置き換え、および変更は、本発明の趣旨から逸脱することなく、なされてよい。添付の特許請求の範囲およびその等価物は、本発明の範囲および趣旨に含まれるそのような形態または変形例を包含することを意図するものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11