(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240708BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
G03G15/20 505
G03G21/16 185
(21)【出願番号】P 2023025875
(22)【出願日】2023-02-22
(62)【分割の表示】P 2018235979の分割
【原出願日】2018-12-18
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小國 敦
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-072337(JP,A)
【文献】特開2014-063010(JP,A)
【文献】特開2006-017794(JP,A)
【文献】特開平11-322107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材にトナー像を形成する画像形成装置であって、
二つの側板と、前記二つの側板の間で前記二つの側板に支持されており、記録材の搬送方向と直交する記録材の幅方向に亘って設けられた材質が金属であるステーと、を有する前記画像形成装置の本体フレームと、
記録材に形成されたトナー像を記録材に定着する定着器であって、前記定着器の定着ニップ部を通過した記録材をガイドする材質が樹脂である搬送ガイド
を有する前記定着器と、を有し、
前記搬送ガイドは、前記幅方向における前記搬送ガイドの中央部に前記ステーに向かって突出する突出部を備え、
前記突出部と前記ステーが当接することにより前記搬送ガイドの反りが抑えられる構造になっていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ステーは、曲げ線が前記幅方向と平行な曲げ部を有し、
前記突出部と前記ステーの前記曲げ部に相当する位置が当接することにより前記搬送ガイドの反りが抑えられる構造になっていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記突出部は前記ステーから離間しており、前記突出部と前記ステーとの隙間は、前記搬送ガイドの前記幅方向における前記突出部以外の部分と前記ステーとの隙間よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材に形成されたトナー像を加熱して定着する定着器を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置において、定着器に送られた記録材は、加熱ローラと加圧ローラからなる定着ローラ対の圧接部にてトナー像が加熱されて定着される。定着ローラ対を通過した記録材は、定着器内に設けられた上ガイドと下ガイドとの間を通過する。ここで、上ガイドと下ガイドとの間には、記録材の先端および後端が検知可能なセンサフラグが配置されている。
【0003】
上ガイドと下ガイドで形成される搬送路の広さは、センサフラグでの記録材の先端および後端の検知精度を向上させるために狭い方が良い。これは搬送路が狭いほど、搬送中の記録材の姿勢の変化が小さくなるためである。一方、記録材が厚い場合や硬い場合、搬送路が狭すぎると記録材自身の屈曲により搬送抵抗が増加し、搬送速度が低下することがある。よって、搬送路の広さは、記録材が厚い場合や硬い場合でも速度が低下することなく、かつ、センサ検知精度を向上させるために、適度な広さを保つことが重要である。
【0004】
ここで、上ガイドおよび下ガイドは、記録材の搬送方向に対して直交する幅方向(以下、長手方向と呼ぶ)に長い部品であり、樹脂材料でもあるため、成形時に変形が発生し、搬送路が広くなることがある。
【0005】
また、上ガイドと下ガイドの間の搬送路が上ガイド側に湾曲している場合、記録材が厚い場合や硬い場合、記録材の剛性によって、上ガイドが搬送路が広がる側に押し上げられる場合がある。この場合、記録材の加熱ローラ側の面を案内する上ガイドは、押し上げられた状態で加熱ローラからの熱を受け、押し上げられた状態を維持するように変形し、その結果、搬送路が広くなることがある。
【0006】
これに対して従来は、上ガイドの肉厚を増やすことで剛性を高めたり、あるいは外力や熱による変形に強い特殊な樹脂材料を使用するという手段で対応してきた。
【0007】
また、特許文献1の定着器が開示されている。特許文献1の定着器は、定着ローラ対を通過した記録材を搬送方向の下流側に導く搬送路を構成する上ガイドおよびフラッパを有しており、画像形成装置の本体フレームに取り付けられている。さらに特許文献1の定着器は、前記上ガイドとは別に定着器のフレーム部材に対して固定の上カバーを設け、前記上ガイドに前記上カバーと当接するように突起部を設けている。これにより、上ガイドが加熱ローラ側からの熱で搬送路と反対方向に向かって変形しようとしても、上ガイドの突起部が上カバーに当接して変形が押さえられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の定着器では、突起部を突き当てる上カバーの追加により定着器がコストアップするとともに大型化してしまい、その定着器の設置スペースを確保するために画像形成装置が大型化してしまうという課題がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、定着器の部品を追加することなく、安定して定着器の搬送路の広さを確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明の代表的な構成は、記録材にトナー像を形成する画像形成装置であって、二つの側板と、前記二つの側板の間で前記二つの側板に支持されており、記録材の搬送方向と直交する記録材の幅方向に亘って設けられた材質が金属であるステーと、を有する前記画像形成装置の本体フレームと、記録材に形成されたトナー像を記録材に定着する定着器であって、前記定着器の定着ニップ部を通過した記録材をガイドする材質が樹脂である搬送ガイドを有する前記定着器と、を有し、前記搬送ガイドは、前記幅方向における前記搬送ガイドの中央部に前記ステーに向かって突出する突出部を備え、前記突出部と前記ステーが当接することにより前記搬送ガイドの反りが抑えられる構造になっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、定着器の部品を追加することなく、安定して定着器の搬送路の広さを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】(a)定着器の背面下側からの斜視図、(b)定着器の概略断面図
【
図3】定着器内に記録材が搬送されている状態を示した図
【
図4】(a)実施例1の本体フレームと定着器を本体背面から見た図、(b)(c)要部拡大図
【
図5】(a)実施例1の定着器とスキャナステーの断面図、(b)(c)要部拡大図
【
図6】(a)実施例1の変化形の本体フレームと定着器を本体背面から見た図、(b)要部拡大図
【
図7】実施例2の定着カバーを本体斜め下から見た図
【
図9】(a)実施例3のスキャナステーの斜視図、(b)定着カバーの斜視図
【
図10】(a)実施例3の定着器とスキャナステーの断面図、(b)要部拡大図
【
図11】実施例3の変化形の定着器とスキャナステーの斜視図、(b)定着カバーの斜視図
【
図12】(a)実施例3の定着器とスキャナステーの断面図、(b)要部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。従って、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0015】
〔実施例1〕
実施例1に係る画像形成装置について
図1から
図6を用いて説明する。
【0016】
(画像形成装置全体の説明)
まず画像形成装置の動作について
図1を用いて説明する。
図1の右側が画像形成装置の本体前面側、左側が本体背面側としている。また、画像形成装置における定着器の構成については
図2を用いて説明する。
【0017】
図1に示すように、記録材Sは、画像形成装置1の下部に設けられたカセット2に積載収納される。カセット2に積載収納された記録材Sは、給紙ローラ3によってカセット2から給紙される。給紙された記録材Sは、搬送ローラ対4、レジストローラ対5を経て、感光体601を備えた画像形成プロセスユニット6に搬送される。スキャナユニット7から照射されたレーザー光が
図1中時計回り方向に回転している感光体601上に照射され、感光体601上に静電潜像が形成される。この静電潜像は画像形成プロセスユニット6内の現像部(不図示)にてトナー像が現像される。感光体601上に形成されたトナー像は転写ローラ8により記録材Sに転写される。トナー像が転写された記録材Sは、定着器9内の加熱ローラ901aと加圧ローラ901bとからなる定着ローラ対901により熱、圧力が加えられる。これによりトナー像は記録材Sに定着される。その後、記録材Sは排紙ローラ対10を通過し、排紙トレイ11上に排出される。
【0018】
ここで、図中の矢印Aは記録材の通紙方向を示している。また、定着器9は画像形成装置1の本体フレーム15(
図4(a)参照)に対して取り付けられ、固定ビス(不図示)により固定されている。従って、メンテナス等において、定着器9は固定ビス(不図示)を外すことによって、画像形成装置1の本体フレーム15に対して着脱可能である。
【0019】
図2に示すように、定着器9は、加熱部材である加熱ローラ901aと加圧部材である加圧ローラ901bとからなる定着ローラ対901を備えている。ヒーターを有する加熱ローラ901aと加圧ローラ901bの圧接部にて記録材を挟持搬送し記録材に形成されたトナー像を加熱して定着する。
【0020】
定着器9内には、定着ローラ対901の圧接部に対して、記録材Sの搬送方向に対する上流側の下方に定着入口ガイド909、下流側の下方に下搬送ガイド903、定着ローラ対901を覆うように定着カバー905が設けられている。また、定着カバー905には定着ローラ対901に対して記録材Sの搬送方向に対する下流側の上方に上搬送ガイド904が一体的に形成されている。定着カバー905及び搬送ガイド904は、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂やPBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂などの耐熱性を重視した樹脂材料で形成されている。上搬送ガイド904は、下搬送ガイド903と対向する面に、複数の上搬送リブ904aを備えている。上搬送ガイド904の上搬送リブ904aは、記録材Sの加熱部材側の面を搬送方向にガイドするリブである。また、上搬送ガイド904には定着出口アイドラローラ910が回転可能に設けられている。定着出口アイドラローラ910は、上搬送ガイド904の上搬送リブ904aより搬送路に突出するように配置されている。
【0021】
感光体601と転写ローラ8を通過した記録材Sは、定着入口ガイド909に案内されながら定着ローラ対901に到達する。定着ローラ対901を通過した記録材Sは、定着器9内に設けられた下搬送ガイド903と上搬送ガイド904および定着出口アイドラローラ910との間を通過する。ここで、下搬送ガイド903と上搬送ガイド904との間には、上搬送ガイド904と下搬送ガイド903との間の搬送路において記録材Sの先端および後端を検知するためのセンサフラグ911が設けられている。
【0022】
(下搬送ガイドの説明)
下搬送ガイド903は、上搬送ガイド904と対向し、定着ローラ対901の圧接部よりも記録材の搬送方向の下流側で記録材Sの加圧部材側である加圧ローラ側の面をガイドする第2の搬送ガイドである。下搬送ガイド903は、上搬送ガイド904と対向する面に、複数の下搬送リブ903aを備えている。下搬送ガイド903の下搬送リブ903aは、記録材Sの加圧部材側の面を搬送方向にガイドするリブであり、記録材Sの搬送方向と直交する幅方向に複数設けられている。
【0023】
本実施例における下搬送ガイド903は樹脂材料で形成されたものであり、下搬送ガイド903は、記録材Sの搬送方向に対して直交する幅方向に長い部品である。そのため、成形時の変形(ソリと呼ぶ)が発生する場合があり、下搬送リブ903aの位置精度を維持することが難しい。なお、記録材Sの搬送方向に対して直交する幅方向を、以下、搬送ガイドの長手方向とも呼ぶ。
図2(b)に示す矢印A方向は定着ローラ対901の圧接部を通過する記録材Sの搬送方向である。
図4(a)に示す矢印H方向は前記記録材Sの搬送方向である矢印A方向と直交する記録材Sの幅方向であり、定着カバー905の長手方向である。
【0024】
ここで、本実施例における定着器9は、金属製で剛性が高く、精度が良い定着下ステー902と、定着右側板912と、定着左側板913とにより構成された定着フレームを備えている。定着右側板912は定着下ステー902の長手方向の一方側に設けられ、定着左側板913は定着下ステー902の長手方向の他方側に設けられている。定着下ステー902の長手方向両側に設けた側板912,913により加熱ローラ901aと加圧ローラ901bを支持している。
【0025】
なお、ここでは定着フレームとして、定着下ステー902に対して定着右側板912と定着左側板913を別体で設けた構成を例示したが、これに限定されるものではない。定着フレームは、定着下ステー902の長手方向の両側を曲げ加工するなどして定着右側板912と定着左側板913を定着下ステー902に一体に設けた構成としても良い。
【0026】
また、本実施例における定着左側板913と定着右側板912は加圧機構(不図示)を備えている。加熱ローラ901aは加圧機構によって加圧ローラ901bに向かって押し付けられる構成となっている。
【0027】
下搬送ガイド903は、記録材Sの搬送方向と直交する幅方向にわたって設けられた定着下ステー902にならわせて固定されている。これにより、下搬送ガイド903は、成形時に発生したソリが定着下ステー902によって矯正され、対向する上搬送ガイド904との間の搬送路の広さの精度の向上を実現している。
【0028】
(上搬送ガイドの説明)
上搬送ガイド904は、定着ローラ対901の圧接部よりも記録材の搬送方向の下流側で記録材Sの加熱部材側である加熱ローラ側の面をガイドする搬送ガイドである。
【0029】
本実施例における上搬送ガイド904は、定着ローラ対901の上部を覆う定着カバー905に一体に形成されている。定着カバー905は複雑な形状を一体に形成するため、樹脂材料で形成されている。また、上搬送ガイド904は、下搬送ガイド903と対向する面に、複数の上搬送リブ904aを備えている。上搬送ガイド904の上搬送リブ904aは、記録材Sの加熱部材側の面を搬送方向(
図2(b)に示す矢印A方向)にガイドするリブであり、記録材Sの搬送方向と直交する幅方向(
図4(a)に示す矢印H方向)に複数設けられている。また、前述したように、上搬送ガイド904には、定着出口アイドラローラ910が記録材の搬送方向に回転可能に設けられている。定着出口アイドラローラ910は、その外周面が上搬送ガイド904の搬送リブ904aから搬送路に突出するように配置されている。本実施例において上搬送リブ904aと定着出口アイドラローラ910の位置は、上搬送ガイド904の成形条件の調整により精度を向上させている。また、本実施例に係る定着器9においては、省スペース化と部品点数削減のため、上搬送ガイド904のソリを矯正するための金属製のステーは追加しない。
【0030】
ここで記録材Sが厚い場合や硬い場合(厚紙と呼ぶ)の通紙中における上搬送ガイド904の変形について
図3を用いて説明する。
【0031】
定着器9を通紙中の記録材Sは、下流側の排紙ローラ対10(
図1参照)により搬送されることで
図2(b)に示す矢印A方向に引っ張られる。これにより、記録材Sは、上搬送ガイド904に備えらえた定着出口アイドラローラ910に対して、
図3に示す矢印F方向に力を付与される。この矢印F方向の力は、記録材Sが厚く、硬いほど大きくなる。また、この矢印F方向の力は、定着ローラ対901を抜けた後の下搬送リブ903aと上搬送リブ904aによって形成される搬送路の立ち上がりが急激なほど大きくなる。この矢印F方向の力により、上搬送ガイド904は
図3における上方向に押し上げられる。
【0032】
ここで、加熱ローラ901aの熱により上搬送ガイド904は熱せられている状態となっている。すなわち、初期に上搬送ガイドの部品精度を向上させたとしても、記録材Sが厚紙であった場合は、通紙中の上搬送ガイドは上向きの強い力で押し上げられると共に熱が加えられる。これにより、上搬送ガイド904は上向きに変形する。この変形は上搬送ガイド904が冷却されても元には戻りにくく、その結果、対向する下搬送ガイド903との間に形成される搬送路が広い状態になってしまう。
【0033】
これに対して、本実施例では、定着器9を取り付ける画像形成装置の本体フレームを構成する部品を用いて解決する。
図4(a)は本体フレーム構成と定着器9を抜粋して背面から見た図である。また、
図4(b)は中央部(
図4(a)に示すC部)を拡大したものである。また、
図4(c)は中央部(
図4(a)に示すC部)を拡大したものであり、
図4(b)の他の構成例を示すものである。
【0034】
画像形成装置1の本体フレーム15は、記録材Sの搬送方向と直交する幅方向の一方側に設けられた本体右側板13と、幅方向の他方側に設けられた本体左側板14と、本体右側板13と本体左側板14に支持されたスキャナステー12とにより構成されている。本体フレーム15は、本体右側板13と本体左側板14とスキャナステー12とによって、記録材Sの搬送方向と直交する幅方向にわたって設けられている。定着器9の定着カバー905の上部には、本体フレーム15を構成するスキャナステー12が配置されている。本体フレーム15のスキャナステー12には、画像形成プロセスに係るプロセス装置が取り付けられている。ここでは、プロセス装置として、像担持体である感光体601に画像情報に応じたレーザー光を走査する光走査装置を例示している。すなわち、本体フレーム15を構成するスキャナステー12は、
図1に示すように感光体601にレーザー光を照射する光走査装置であるスキャナユニット7を支持している。スキャナユニット7は、
図4に示す本体フレーム15において、スキャナステー12の取付部12bに取り付けられる。スキャナステー12は、剛性が高く、精度が高い板金部品である。
【0035】
また、定着器9とスキャナステー12の間において定着カバー905には、記録材Sの搬送方向と直交する幅方向の中央部に周辺形状より本体フレーム側に突出した、前記スキャナステー12に当接可能な突出部906が設けられている。
【0036】
ここで、記録材Sの搬送方向と直交する幅方向とは、
図4(a)に示す定着カバー905の長手方向である。突出部906が設けられた、定着カバー905の長手方向の中央部とは、前記幅方向の中央を基準に搬送される記録材Sの幅方向の最小サイズの領域である。本実施例では、前記幅方向の最小サイズの記録材Sに合わせて、幅方向の中央を基準に対称な位置に定着出口アイドラローラ910,910を設けている。なお、ここでは、突出部906が設けられた、定着カバー905の長手方向の中央部とは、
図4(a)に示すように定着出口アイドラローラ910,910の内側の領域Gとしている。定着出口アイドラローラ910は、
図3に示すように、上搬送ガイド914に回転可能に設けられ、上搬送ガイド914の上搬送リブ914aよりも搬送路内に突出するように設けられている。このため、定着器9を通紙中の記録材Sは、下流側の排紙ローラ対10(
図1参照)により搬送されることで
図2(b)に示す矢印A方向に引っ張られる。これにより、記録材Sは、上搬送ガイド904に設けられた定着出口アイドラローラ910に対して、
図3に示す矢印F方向に力を付与される。定着カバー905は、長手方向の中央部が両側に比べて変形しやすい。このため、突出部906を、定着カバー905の長手方向の中央部に設けている。これにより、定着カバー905に一体形成された上搬送ガイド914の変形を防ぐことができ、搬送路の広さを精度良く保つことができる。
【0037】
なお、ここでは、突出部906が設けられた、定着カバー905の長手方向の中央部を、
図4(a)に示す定着出口アイドラローラ910,910の内側の領域Gとしたが、これに限定されるものではない。例えば、定着カバー905(の上搬送ガイド)に定着出口アイドラローラを設けない構成であっても、
図4(a)に示す長手方向の中央部(領域G)に突出部906を設けることで同様の効果が得られる。また、定着カバー905の長手方向の中央部に突出部を設けるのは、長手方向の両側に比べて中央部が変形しやすいからである。そのため、突出部を設ける、定着カバーの長手方向の中央部の領域は、定着カバーを形成する材料・肉厚、配置構成などに応じて、適宜設定されるべき範囲であり、
図4(a)に示す領域Gは、おおよその範囲である。
【0038】
また、定着出口アイドラローラ910を定着カバー905(の上搬送ガイド)の長手方向中央部(領域G)の両側に設けた構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、前記長手方向の中央(領域Gの中央)に1つ設けるなど、定着出口アイドラローラ910の数、配置は適宜設定すれば良い。
【0039】
また、
図4(b)に示すように、突出部906はスキャナステー12に当接している。なお、ここでは突出部906とスキャナステー12の間は0mmに設定されており、定着カバー905の突出部以外の部分905aとスキャナステー12との隙間t2は1mmに設定されている。
【0040】
しかし、この構成に限定されるものではない。例えば、
図4(c)に示すように、突出部906はスキャナステー12から離間していても良い。この場合、定着カバー905とスキャナステー12の間において、前記突出部906とスキャナステー12との隙間t1は、定着カバー905の突出部以外の部分905aとスキャナステー12との隙間t2よりも小さい設定となっている。例えば、突出部906とスキャナステー12との隙間t1を0.5mm、定着カバー905の突出部以外の部分905aとスキャナステー12との隙間t2を1mmに設定しても良い。なお、隙間t1,t2は適宜設定されるべきものであり、これに限定されるものではない。
【0041】
また、
図5(a)はスキャナステー12と定着器9の概略断面図である。
図5(b)および
図5(c)は
図5(a)に示すD部の拡大図である。
図5(b)は
図4(b)に示す突出部906とスキャナステー12との当接部の拡大図である。
図5(c)は
図4(c)に示す突出部906とスキャナステー12との対向部の拡大図である。
図5(a)および
図5(b)に示すように、スキャナステー12は、定着カバー905の上方において定着器9とは反対側に曲げられた曲げ部12aを有している。定着カバー905の突出部906はスキャナステー12の曲げ部12aの下方に当接されている。
【0042】
すなわち、本体フレームの構成要素の一つであるスキャナステー12に定着カバー905の突出部906を突き当てることで、定着器に新たなステーを追加することなく、上搬送ガイド904の矢印F方向(
図3参照)の変形を防止することができる。これにより、上搬送ガイド904と下搬送ガイド903により形成される搬送路が広くなることを防止することができる。
【0043】
本実施例においては、突出部906は定着カバー905において記録材の幅方向の全域ではなく、中央部に配置している。これは、定着器9を画像形成装置1の本体フレーム15へ装着する際、微干渉であっても定着器9の長手方向の中央部であるので、撓みにより組み付けを可能にするためである。定着カバーの長手方向の全域に突出部を設けた場合、長手方向の端部側は撓み難いため、微干渉であっても定着器9の本体フレーム15への組み付けが非常に困難になる。以上より、突出部906は定着カバー905の長手方向の中央部であれば1つでも良いし、複数でも良い。
【0044】
なお、
図5(b)では突出部906がスキャナステー12と当接した構成を例示したが、これに限定されるものではない。
図5(c)に示すように、突出部906はスキャナステー12から離間していても良い。この場合、定着カバー905とスキャナステー12の間において、前記突出部906とスキャナステー12との隙間t1は、定着カバー905の突出部以外の部分905aとスキャナステー12との隙間t2よりも小さい設定となっている。
【0045】
また、本実施例では、
図5(a)および
図5(b)に示すように、定着カバー905に突出部906を設けた構成を例示したが、これに限定されるものではない。
図6(a)および
図6(b)に示すように、スキャナステー12の長手方向の中央部に定着カバー側に突出した、定着カバー905に当接可能な突出部122を設けた構成としても良い。この構成の場合でも、定着カバーに突出部を設けた構成と同様の効果を得ることができる。
【0046】
また本実施例では、画像形成装置は
図1に示すように定着器9内の定着ローラ対901の搬送方向が略水平であるものを例示して説明したが、本実施例で示した構成は、定着器9の配置に限定されるものではない。例えば、定着ローラ対901の搬送方向が略垂直である場合でも、同様な構成が可能であり、かつ、同様の効果を得ることができる。
【0047】
上述したように、本実施例によれば、定着カバーに設けた突出部を本体フレームに当接することで定着カバーの変形を防いでいる。そのため、従来のように定着器に上カバーを追加することなく、安定して定着器の搬送路の広さを確保することができる。また、定着器の部品点数の増加によるコストアップおよび大型化を防止し、その定着器の設置スペースを確保するための画像形成装置の大型化を防止することができる。
【0048】
〔実施例2〕
次に実施例2に係る画像形成装置について
図7および
図8を用いて説明する。
【0049】
なお、本実施例において、画像形成装置の動作、定着器の基本構成は、前述した実施例1と同様であるため、ここでは説明を省略する。また、下搬送ガイドの説明も同様なので省略する。以下、本実施例の特徴部分となる定着カバーにおける上搬送ガイドについて説明する。
【0050】
(上搬送ガイドの説明)
図7は本実施例における定着カバー905を斜め下から見た図であり、
図8は本実施例における定着カバー905を本体背面側から見た図である。
【0051】
本実施例では、上搬送ガイド904の形状によって、対向する下搬送ガイドとの間に形成される搬送路の広さを更に安定させる。
【0052】
本実施例における上搬送ガイド904は、前述した実施例と同様に複数の上搬送リブ904aを有しており、上搬送リブ904aと下搬送ガイドの下搬送リブで搬送路が形成される。この搬送路が狭いほど、
図3に示すセンサフラグ911で検知する記録材の端部位置の精度が向上する。
【0053】
しかしながら、上搬送ガイド904は記録材Sの搬送方向に対して直交する幅方向(長手方向と呼ぶ)に長い部品であり、成形時の変形(ソリと呼ぶ)により、上搬送リブ904aの位置を安定して作成することが難しい。特に、
図2における下側にソリが発生して搬送路が狭くなりすぎた場合、記録材Sの搬送速度が低下する可能性がある。そのため、搬送路の最小広さは、上搬送ガイド904の成形時のソリを考慮して広くする必要があった。
【0054】
そこで本実施例においては、予めソリが発生する方向を
図7における上方に凸形状になるように定着カバー905の上搬送ガイド904を形成している。これにより、記録材搬送方向に対して直交する幅方向の略中央部に配置してある突出部906がスキャナステー12に接触した時に、上搬送リブ904aの位置が決まる構成としている。
【0055】
すなわち、上搬送ガイド904は、
図8に破線Bで示すように、スキャナステー側に向かって凸形状になるように、記録材Sの搬送方向と直交する幅方向にわたって湾曲するように形成されている。本実施例においては、定着カバー905に一体形成した上搬送ガイド904は、上搬送リブ904a間を繋いでいるつなぎ部908をスキャナステー側に向かって凸形状になるように湾曲させている。そして、突出部906がスキャナステー12に当接した時に、下搬送リブに対して上搬送リブ904aの位置が適正になるようにリブ位置を設定する。
【0056】
スキャナステー12は、剛性が高く、精度が高い板金部品である。突出部906がスキャナステー12に突き当たることで、上搬送ガイド904は初期にスキャナステー側に凸状に湾曲するようにソリを形成していた部分が矯正される。その結果、上搬送ガイド904の上搬送リブ904aは適正な位置に戻り、対向する下搬送ガイド903の下搬送リブとの間の搬送路の広さが適正な搬送路広さとなる。ここで、上搬送ガイド904のつなぎ部908は長手方向に対して大きな樹脂バネとして働き、上搬送ガイド904が常にスキャナステー12に押し付けられる。これにより、搬送路が狭くなる方向への成形時のソリを考慮する必要がない。
【0057】
また、実施例1で述べたように記録材Sが厚い場合や硬い場合であっても、突出部906がスキャナステー12に突き当たっているため、下搬送ガイドとの間に形成される搬送路が広くなることはない。
【0058】
よって、上搬送ガイド904の上搬送リブ904aの位置は、部品として特別な精度管理を必要とせず、また、特別な材質を選ぶ必要がない。
【0059】
これにより、コストアップを避けると共に、搬送路の広さを精度よく管理することができ、センサフラグの検知精度を向上させることができる。
【0060】
〔実施例3〕
次に実施例3に係る画像形成装置について
図9および
図10を用いて説明する。
【0061】
なお、本実施例において、画像形成装置の動作、定着器の基本構成は、前述した実施例1と同様であるため、ここでは説明を省略する。また、下搬送ガイドの説明も同様なので省略する。以下、本実施例の特徴部分となる定着カバーにおける上搬送ガイドについて説明する。
【0062】
(上搬送ガイドの説明)
本実施例では、定着カバー905の上部に、スキャナステー12に係合可能なフック部931を設けている。また、スキャナステー12には、前記フック部931と係合する穴部121を設けている。
【0063】
フック部931は、定着カバー905の記録材Sの搬送方向と直交する幅方向の中央部に配置している。穴部121は、スキャナステー12の記録材Sの搬送方向と直交する幅方向の中央部に配置し、前記フック部931に対応する位置に配置している。
【0064】
これまで述べたように定着カバー905は長手方向に長い部品であり、成形時の変形(ソリと呼ぶ)により、搬送リブの位置を安定して作成することが難しい。
図2における上側にソリが発生した場合は搬送路が広がり、下側にソリが発生した場合は搬送路が狭まる。
【0065】
本実施例では、定着器9を画像形成装置1の本体フレーム15に装着する際、フック部931をスキャナステー12の穴部121に挿入する。スキャナステー12は剛性が高く、精度が高い板金部品であるため、スキャナステー12に設けた穴部121も剛性が高く、精度が高い。
【0066】
従って、スキャナステー12の穴部121に定着カバー905のフック部931を挿入することにより、成形時のソリが上側(スキャナステー側)であった場合は定着カバー905の上搬送ガイドを押し下げるように矯正される。一方、成形時のソリが下側(下搬送ガイド側)であった場合は、定着カバー905の上搬送ガイドを押し上げるように矯正される。
【0067】
さらに前記穴部121は本体フレームに対して定着器を取り付ける方向(
図10(b)に示す矢印E方向)に穴が空けられている。そして、前記フック部931は、穴部121に係合する部分が、本体フレームに対して定着器を取り付ける方向(
図10(b)に示す矢印E方向)に突出した形状を有している。これにより、本体フレームに対して定着器を取り付ける際に、定着器側の突出部906を、スキャナステー側の穴部121にスムーズに係合させることが可能となる。
【0068】
このように本実施例の構成によって、定着カバーの成形時のソリに関係なく、定着器が画像形成装置の本体フレームに取り付けられた時に定着カバーの上搬送ガイドは下搬送ガイドとの間の搬送路の広さが適正な位置に矯正される。
【0069】
これにより、上搬送ガイド904の搬送リブ904aの位置は、部品として特別な精度管理を必要とせず、また、特別な材質を選ばないなど、コストアップすることなく搬送路の広さを精度よく管理することができる。また、センサフラグの検知精度を向上させることができる。
【0070】
また、本実施例では、
図9および
図10に示すように定着カバー905にスキャナステー12と係合可能なフック部931を設け、スキャナステー12にフック部931と係合する穴部121を設けた構成を例示したが、これに限定されるものではない。
図11および
図12に示すようにスキャナステー12に定着カバー905と係合可能なフック部123を設け、定着カバー905にフック部123と係合する穴部932を設けた構成としても良い。この構成によっても、前述した実施例と同様の効果を得ることができる。
【0071】
〔他の実施例〕
前述した実施例では、搬送ガイドを一体形成した定着カバー又はスキャナステーの幅方向中央部に1つの突出部を設けた構成を例示したが、これに限定されるものではない。定着カバー又はスキャナステーの幅方向中央部に複数の突出部を設けた構成としても良い。
【0072】
また前述した実施例では、画像形成装置としてプリンタを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば複写機、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置や、或いはこれらの機能を組み合わせた複合機等の他の画像形成装置であっても良い。あるいは、記録材担持体を使用し、該記録材担持体に担持された記録材に各色のトナー像を順次重ねて転写する画像形成装置であっても良い。あるいは、中間転写体を使用し、該中間転写体に各色のトナー像を順次重ねて転写し、該中間転写体に担持されたトナー像を記録材に一括して転写する画像形成装置であっても良い。これらの画像形成装置に本発明を適用することにより同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0073】
S …記録材
1 …画像形成装置
7 …スキャナユニット
9 …定着器
12 …スキャナステー
12a …曲げ部
13 …本体右側板
14 …本体左側板
15 …本体フレーム
121 …穴部
122 …突出部
123 …フック部
901 …定着ローラ対
901a …加熱ローラ
901b …加圧ローラ
902 …定着下ステー
903 …下搬送ガイド
903a …下搬送リブ
904 …上搬送ガイド
904a …上搬送リブ
905 …定着カバー
906 …突出部
911 …センサフラグ
912 …定着右側板
913 …定着左側板
931 …フック部
932 …穴部