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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】実機環境腐食性評価方法および試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/04 20060101AFI20240708BHJP
【FI】
G01N17/04
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023062136
(22)【出願日】2023-04-06
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳生 里紗
(72)【発明者】
【氏名】幡野 浩
(72)【発明者】
【氏名】松本 純平
(72)【発明者】
【氏名】寺田 慎一
(72)【発明者】
【氏名】井山 浩一
(72)【発明者】
【氏名】木村 賢一
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-164942(JP,A)
【文献】特開2012-194034(JP,A)
【文献】特開平11-287888(JP,A)
【文献】再公表特許第2010/117086(JP,A1)
【文献】特開2019-113424(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0072146(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価の対象となる実機の内部の任意の箇所に設置される1つ以上の試験部と、
前記試験部を設置した状態で前記実機の形状の変化に追従して変形可能な1つ以上の変形部と、
を備え、
前記変形部がコイルバネ状を成す1つ以上の治具であり、この治具の少なくとも一部が少なくとも1つの前記試験部である、
試験装置を用いて行う方法であり、
前記実機を構成する1つ以上の部材の表面に接触または近接する位置であり、かつ前記部材の表面に生じる腐食環境を前記部材と前記試験部とで共有する共有位置に、前記試験部を設置し、
前記試験部を設置してから評価の対象となる期間が経過した後に、前記試験部を取り外し、
取り外した前記試験部の表面の腐食を解析した結果に基づいて、前記部材の表面に生じる腐食性の評価を行う、
実機環境腐食性評価方法。
【請求項2】
評価の対象となる実機の内部の任意の箇所に設置される1つ以上の試験部と、
前記試験部を設置した状態で前記実機の形状の変化に追従して変形可能な1つ以上の変形部と、
を備える、
試験装置を用いて行う方法であり、
前記実機である排熱回収ボイラを構成する1つ以上の部材である伝熱管の表面に接触または近接する位置であり、かつ前記部材の表面に生じる腐食環境を前記部材と前記試験部とで共有する共有位置である前記伝熱管のフィンの隙間に、前記試験部を設置し、
前記試験部を設置してから評価の対象となる期間が経過した後に、前記試験部を取り外し、
取り外した前記試験部の表面の腐食を解析した結果に基づいて、前記部材の表面に生じる腐食性の評価を行う、
実機環境腐食性評価方法。
【請求項3】
前記共有位置は、前記部材の表面に生じる腐食成分を含む水膜を共有する位置、前記部材の表面に生じる流体の流れを共有する位置、または、前記部材の表面に付着する腐食生成物、付着物もしくは湿分を共有する位置の少なくともいずれかである、
請求項1に記載の実機環境腐食性評価方法。
【請求項4】
前記試験部が板状を成す1つ以上の板状試験片であり、
前記変形部がコイルバネ状を成して前記板状試験片を前記共有位置に設置する1つ以上の治具であり、
前記試験装置は、前記板状試験片を前記治具に対して相対的に可動する状態で接続する1つ以上の接続具を備え、
前記板状試験片が前記接続具により前記実機の形状の変化に追従し、前記共有位置に維持される、
請求項1または請求項2に記載の実機環境腐食性評価方法。
【請求項5】
前記試験部は、前記部材の一部と同一または類似の形状を成す1つ以上の模擬試験片であり、
前記変形部がコイルバネ状を成して前記模擬試験片を前記共有位置に設置する1つ以上の治具である、
請求項1または請求項2に記載の実機環境腐食性評価方法。
【請求項6】
評価の対象となる実機の内部の任意の箇所に設置される1つ以上の試験部と、
前記試験部を設置した状態で前記実機の形状の変化に追従して変形可能な1つ以上の変形部と、
を備え、
前記試験部は、1つ以上の第1形態部と1つ以上の第2形態部とを含み、
板状を成す1つ以上の板状試験片が前記第1形態部であり、
前記変形部がコイルバネ状を成して前記板状試験片を共有位置に設置する1つ以上の治具であり、この治具の少なくとも一部が前記第2形態部である、
試験装置を用いて行う方法であり、
前記実機を構成する1つ以上の部材の表面に接触または近接する位置であり、かつ前記部材の表面に生じる腐食環境を前記部材と前記試験部とで共有する前記共有位置に、前記試験部を設置し、
前記試験部を設置してから評価の対象となる期間が経過した後に、前記試験部を取り外し、
取り外した前記試験部の表面の腐食を解析した結果に基づいて、前記部材の表面に生じる腐食性の評価を行う、
実機環境腐食性評価方法。
【請求項7】
前記試験部は、1つ以上の第1種部と1つ以上の第2種部とを含み、
前記第1種部と前記第2種部は、形状、材質、物性、表面の状態の少なくとも1つが互いに異なる、
請求項1または請求項2に記載の実機環境腐食性評価方法。
【請求項8】
評価の対象となる実機の内部の任意の箇所に設置される1つ以上の試験部と、
前記試験部を設置した状態で前記実機の形状の変化に追従して変形可能な1つ以上の変形部と、
を備え、
前記変形部がコイルバネ状を成す1つ以上の治具であり、この治具の少なくとも一部が前記試験部であ
試験装置を用いて行う方法であり、
前記実機を構成する1つ以上の部材の表面に接触または近接する位置であり、かつ前記部材の表面に生じる腐食環境を前記部材と前記試験部とで共有する共有位置に、前記試験部を設置し、
この設置するときにおいて、前記実機が有する少なくとも2つの前記部材の間の狭隘部を前記治具が通過するときに、前記治具の幅が前記狭隘部よりも狭くなるように変形させるものであり
前記試験部を設置してから評価の対象となる期間が経過した後に、前記試験部を取り外し、
取り外した前記試験部の表面の腐食を解析した結果に基づいて、前記部材の表面に生じる腐食性の評価を行う、
実機環境腐食性評価方法。
【請求項9】
評価の対象となる実機の内部の任意の箇所に設置される1つ以上の試験部と、
前記試験部を設置した状態で前記実機の形状の変化に追従して変形可能な1つ以上の変形部と、
を備え、
前記変形部がコイルバネ状を成す1つ以上の治具であり、この治具の少なくとも一部が前記試験部であ
試験装置を用いて行う方法であり、
前記実機を構成する1つ以上の部材の表面に接触または近接する位置であり、かつ前記部材の表面に生じる腐食環境を前記部材と前記試験部とで共有する共有位置に、前記試験部を設置し、
この設置するときにおいて、前記実機が有する少なくとも2つの前記部材の間に前記治具が設けられ、少なくとも2つの前記試験部のそれぞれを一方と他方の前記部材の前記共有位置に設置
前記試験部を設置してから評価の対象となる期間が経過した後に、前記試験部を取り外し、
取り外した前記試験部の表面の腐食を解析した結果に基づいて、前記部材の表面に生じる腐食性の評価を行う、
実機環境腐食性評価方法。
【請求項10】
前記試験部の設置前と取り外し後に、前記試験部の重量、厚み、表面粗さ、表面付着成分の少なくとも1つを測定し、測定値の変化量に基づいて、前記部材の表面に生じる腐食性の評価を行う、
請求項1または請求項2に記載の実機環境腐食性評価方法。
【請求項11】
前記試験部の表面に付着した成分の分析、前記試験部の構造の解析、前記試験部の形態の分析、前記試験部の表面の観察、前記試験部の断面の分析、前記試験部の重量の測定、前記試験部の厚みの測定、前記試験部の表面粗さの測定の少なくともいずれかを行い、前記部材の表面に生じる腐食性の評価を行う、
請求項1または請求項2に記載の実機環境腐食性評価方法。
【請求項12】
コンピュータを用いて行う方法であり、
前記コンピュータは、前記試験部の表面の腐食を解析した結果の入力に応じて、前記部材の表面に生じる腐食性の推定を行い、かつ推定した結果または前記実機の腐食対策を示す情報の少なくとも一方を出力する、
請求項1または請求項2に記載の実機環境腐食性評価方法。
【請求項13】
前記試験部の表面の腐食を解析した結果に基づいて、前記腐食環境を模擬する模擬機を構築し、
前記模擬機の内部の任意の箇所に前記試験部を設置し、
前記試験部を設置してから評価の対象となる期間が経過した後に、前記模擬機の内部から前記試験部を取り外し、
取り外した前記試験部の表面の腐食を解析した結果に基づいて、前記部材の表面に生じる腐食性の評価を行う、
請求項1または請求項2に記載の実機環境腐食性評価方法。
【請求項14】
評価の対象となる実機の内部の任意の箇所に設置される1つ以上の試験部と、
前記試験部を設置した状態で前記実機の形状の変化に追従して変形可能な1つ以上の変形部と、
を備え、
前記変形部がコイルバネ状を成す1つ以上の治具であり、この治具が部材に括り付けられる部分を有する、
試験装置を用いて行う方法であり、
前記実機を構成する1つ以上の前記部材の表面に接触または近接する位置であり、かつ前記部材の表面に生じる腐食環境を前記部材と前記試験部とで共有する共有位置に、前記試験部を設置し、
前記試験部を設置してから評価の対象となる期間が経過した後に、前記試験部を取り外し、
取り外した前記試験部の表面の腐食を解析した結果に基づいて、前記部材の表面に生じる腐食性の評価を行う、
実機環境腐食性評価方法。
【請求項15】
前記部材は、排熱回収ボイラの伝熱管、前記排熱回収ボイラのドレイン管、前記排熱回収ボイラの給水管、前記排熱回収ボイラの煙道、前記排熱回収ボイラの管束板、前記排熱回収ボイラの防振板、前記排熱回収ボイラの架台の少なくともいずれかであり、
前記腐食環境は、前記部材の表面に、燃焼ガス、蒸気、液体、二相流の少なくともいずれかが通過する環境である、
請求項1に記載の実機環境腐食性評価方法。
【請求項16】
前記腐食環境は、前記部材の表面に、硫化物または硫黄を含むイオン、塩化物または塩素を含むイオン、硝酸化合物または硝酸を含むイオン、アンモニア化合物またはアンモニアを含むイオン、炭酸化合物または炭酸を含むイオン、水素または水蒸気の水素を含むイオンの少なくともいずれかが付着する環境である、
請求項1または請求項2に記載の実機環境腐食性評価方法。
【請求項17】
評価の対象となる実機の内部の任意の箇所に設置される1つ以上の試験部と、
前記試験部を設置した状態で前記実機の形状の変化に追従して変形可能な1つ以上の変形部と、
を備え、
前記変形部がコイルバネ状を成す1つ以上の治具であり、この治具の少なくとも一部が前記試験部であり、
前記実機を構成する1つ以上の部材の表面に接触または近接する位置であり、かつ前記部材の表面に生じる腐食環境を前記部材と前記試験部とで共有する共有位置に、前記試験部を設置し、
前記試験部を設置してから評価の対象となる期間が経過した後に、前記試験部を取り外し、
取り外した前記試験部の表面の腐食を解析した結果に基づいて、前記部材の表面に生じる腐食性の評価を行う、
実機環境腐食性評価方法に用いる、
試験装置。
【請求項18】
評価の対象となる実機の内部の任意の箇所に設置される1つ以上の試験部と、
前記試験部を設置した状態で前記実機の形状の変化に追従して変形可能な1つ以上の変形部と、
を備え、
前記実機である排熱回収ボイラを構成する1つ以上の部材である伝熱管の表面に接触または近接する位置であり、かつ前記部材の表面に生じる腐食環境を前記部材と前記試験部とで共有する共有位置である前記伝熱管のフィンの隙間に、前記試験部を設置し、
前記試験部を設置してから評価の対象となる期間が経過した後に、前記試験部を取り外し、
取り外した前記試験部の表面の腐食を解析した結果に基づいて、前記部材の表面に生じる腐食性の評価を行う、
実機環境腐食性評価方法に用いる、
試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、実機環境腐食性評価技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギーの脱炭素化を主軸とした、サステイナブルな社会の実現に向けて、様々な取り組みがなされている。再生可能エネルギー、いわゆる再エネと呼ばれる、太陽光発電、風力発電、水力発電などは、その重要性を増している。しかし、各種再エネ方式は、そのエネルギー供給の安定性に、一朝一夕では達成し得ない複数の課題を有し、電力の安定供給の実現と維持に向けた研究と開発が数多く進められている。現状のエネルギー供給の主力であり、エネルギー供給の安定性から、今後再生エネルギーを支える柱のひとつに、コンバインドサイクル発電方式がある。コンバインドサイクル発電方式のプラントは、ガスタービンを燃焼ガスによって駆動し、このガスタービンから排気される排ガスを排熱回収ボイラ(Heat Recovery Steam Generator:HRSG)に送る。この排熱回収ボイラは、その主たる部分が、伝熱管と呼ばれるフィン付きの配管で構成されており、伝熱管の外面に排ガスを流通させ、伝熱管内を流通する熱水または蒸気により、排ガスの余熱を移送する。このコンバインドサイクル発電方式は、排ガスの余熱を利用して蒸気を生成し、得られた蒸気を蒸気タービンに導いて発電機を駆動している。これにより、従来の各種発電方式以上の高効率の発電が実現される。
【0003】
排熱回収ボイラは、コンバインドサイクル発電方式に不可欠な機器である。しかし、その機器の性質上、伝熱面に腐食環境が形成され易い機器でもある。排熱回収ボイラは、運転時は高温となり、停止時は外気温度と同等の温度となることから、その機器内部に高湿度の環境が形成され易く、特に停止時にリスクが高まる。機器内部の高湿度化は、例えば、機器のマンホール解放時などに生じ、降雨または外部の多湿などによる外部環境の湿度の影響を受ける。また、熱交換器の伝熱管またはスタブなどの部材が、腐食発生のリスクを有する。また、排熱回収対象である排ガスに含まれる成分には、腐食成分が含まれるケースもあり、より腐食し易い環境が形成されてしまうことも想定される。また、腐食成分は、排ガスに由来するのみならず、機器の立地にも大きく影響する。例えば、沿岸部または工業地域に設置された排熱回収ボイラは、その周辺環境からの飛来成分などもその腐食リスクを高める原因となる。
【0004】
排熱回収ボイラは、数階建ての規模を有する大型機器であり、伝熱管の本数は、数百から数千本にもなる。伝熱管の腐食により錆層が形成される場合、伝熱管の主たる要求性能である熱伝達は、錆層により阻害され、この錆層部分で熱伝達効率が低下し、機器自体の熱伝達効率が低下する深刻な問題となる。また、腐食により機器の損傷が生じた場合、部材の減肉または局部腐食による薄肉化が生じ、機器としての耐久性が低下する。薄肉化が甚大な場合には、熱水または蒸気の漏洩を誘発させる。また、伝熱管の外面に腐食が発生し、粗錆層が形成されると、プラントの起動時に、ガスタービンから排熱回収ボイラに送り込まれる排ガスの気流によって剥離が生じる。この剥離した錆は、煙突などを通って排熱回収ボイラから外部環境へと排出されるおそれがある。加えて、腐食の進行と錆層の剥離が繰り返されると、伝熱管自体の減肉と薄肉化を加速する要因となり得る。そのため、排熱回収ボイラに腐食が発生しないよう、排熱回収ボイラに設置前に、その部材に対して、防錆対策として塗装または溶射を行うことが検討されている。
【0005】
排熱回収ボイラの構成は、高い熱回収効率を得るために最適化されており、多くの場合、伝熱管が密集して配置されている。従って、排熱回収ボイラをプラントに設置した後に、伝熱管またはスタブなどの部材に対し、塗装または溶射による防錆対策を施すことは、実質的に不可能であるとされている。特に、塗装または溶射は、防錆対象表面を適切に被覆する必要がある。また、不充分な塗膜または溶射層の形成は、機能発現を阻害して有効な効果を得られないリスクを有する。また、排熱回収ボイラの設置後に発生し、進行した錆については、排熱回収ボイラを起動させる前に、錆の除去を行う気吹掃除などのメンテナンスが行われる。しかし、排熱回収ボイラの内部は、伝熱管などが密集し、入り組んでいるため、腐食対策、錆の飛散対策の作業が困難である。
【0006】
これら背景に加え、プラントにおける伝熱管の腐食対策の難しさの一因として、プラント毎の腐食性の差が挙げられる。国内のプラントにおいても、その実機環境が有する腐食性、例えば、伝熱管を腐食させる程度は、排ガスが含有する成分の種類、その濃度、周辺環境、運転状況により大きく異なる。さらに、燃料ガスの変更、燃料ガスに付随する付臭剤の変更、周辺施設の変遷などの腐食の原因となる成分が付着する要因が多数あり、伝熱管の腐食程度の予測が非常に困難である。
【0007】
この様な背景を受け、実機の表面における、硫酸による腐食を検知する手段として、実機に直接腐食センサを設置する技術が知られている。例えば、低圧節炭器近傍に、硫酸による腐食電流を測定するための腐食センサが設置され、この腐食センサが硫酸による腐食電流を検知する。この手法では、腐食センサを張り付けた箇所において生じる硫酸起因の腐食程度を測定することができる。一方、排熱回収ボイラの伝熱管の形状は、非常に複雑で、通液のための母管部分と無数の伝熱フィンからなり、腐食センサを安定して設置可能な箇所が限られる。また、腐食要因がひとつでないプラントにおいては、別要因の影響を含めて腐食速度を算出することが難しい。
【0008】
また、材料側の組成制御により、伝熱管の伸びと腐食性の制御を実現している技術が知られている。しかし、既設機の腐食性を把握することは難しく、代替材料が提案される。材料の変更の適切性は、環境の腐食性を適切に把握して適切な判断が可能となるため、相補技術が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第6137772号公報
【文献】特開平8-28297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、実機の内部の部材が晒される環境における腐食の程度を部材に過大な負担を与えずに把握することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態に係る実機環境腐食性評価方法は、評価の対象となる実機の内部の任意の箇所に設置される1つ以上の試験部と、前記試験部を設置した状態で前記実機の形状の変化に追従して変形可能な1つ以上の変形部と、を備え、前記変形部がコイルバネ状を成す1つ以上の治具であり、この治具の少なくとも一部が少なくとも1つの前記試験部である、試験装置を用いて行う方法であり、前記実機を構成する1つ以上の部材の表面に接触または近接する位置であり、かつ前記部材の表面に生じる腐食環境を前記部材と前記試験部とで共有する共有位置に、前記試験部を設置し、前記試験部を設置してから評価の対象となる期間が経過した後に、前記試験部を取り外し、取り外した前記試験部の表面の腐食を解析した結果に基づいて、前記部材の表面に生じる腐食性の評価を行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態により、実機の内部の部材が晒される環境における腐食の程度を部材に過大な負担を与えずに把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態の試験装置と伝熱管を示す側面図。
図2図1のII-II断面図。
図3】第1実施形態の板状試験片を示す平面図。
図4図3のIV-IV断面図。
図5】第2実施形態の試験装置と伝熱管を示す側面図。
図6図5のVI-VI断面図。
図7】第3実施形態の試験装置と伝熱管を示す側面図。
図8】第3実施形態の試験装置の治具と伝熱管のフィンを示す拡大断面図。
図9】第4実施形態の試験装置と伝熱管を示す側面図。
図10図9のX-X断面図。
図11】第5実施形態の試験装置と伝熱管を示す側面図。
図12図11のXII-XII断面図。
図13】試験装置の模擬試験片と伝熱管のフィンを示す拡大断面図。
図14】第6実施形態の試験装置と伝熱管を示す側面図。
図15】第7実施形態の試験装置と伝熱管を示す正面図。
図16】第7実施形態の試験装置と伝熱管を示す平面図。
図17】第8実施形態の試験装置と伝熱管を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら、実機環境腐食性評価方法および試験装置の実施形態について詳細に説明する。まず、第1実施形態について図1から図4を用いて説明する。
【0015】
図1の符号1は、第1実施形態の部材としての伝熱管である。この伝熱管1は、腐食性の評価の対象となる実機としての排熱回収ボイラの内部に設けられており、複数の伝熱管1で熱交換器が構成されている。図1は、垂直方向に延びる1本の伝熱管1が図示されているが、水平方向に延びる1本の伝熱管1であってもよい。
【0016】
排熱回収ボイラとしては、コンバインドサイクル発電方式の発電プラントに設けられているものがある。コンバインドサイクル発電方式とは、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた二重の発電方式である。例えば、最初に圧縮空気の中で燃料を燃焼して燃焼ガスを発生させて、その燃焼ガスでガスタービンを回して発電が行われる。そして、ガスタービンから排出される排ガスの余熱を使って水を蒸気にして、その蒸気で蒸気タービンを回して発電が行われる。このコンバインドサイクル発電方式は、通常の火力発電方式より多くの電力を発生させることができる。
【0017】
排熱回収ボイラは、排ガスの余熱を使って水を蒸気にする装置である。排熱回収ボイラの伝熱管1の内部を水と蒸気が流れ、伝熱管1の外部を排ガスが通過する。この排ガスには、伝熱管1を腐食させる様々な成分が含まれている。
【0018】
また、運転中の発電プラントが停止すると、排熱回収ボイラに対する排ガスの供給が停止し、伝熱管1の周囲の雰囲気の温度が下がる。すると、伝熱管1の周囲の雰囲気に含まれている水分が凝縮し、伝熱管1の表面に水膜(結露水、凝縮水)が生じるようになる。この水膜にも、伝熱管1を腐食させる様々な成分が含まれている。
【0019】
発電プラントの起動と停止が繰り返されると、伝熱管1の表面に対する排ガスと水膜の付着が繰り返されることになる。排ガスと水膜のような腐食因子の付着により伝熱管1の表面の腐食が進行してしまう。
【0020】
環境の腐食性の確認可能な方法としては、例えば、排ガス計測がある。排ガス計測は、排熱回収ボイラの全体を通過するガス成分を捉えることができる。一方、排ガスを継続して計測・分析することは、コスト的にも負担が大きく、時間軸として、スポットでの不定期の測定に留まることが多かった。そのため、従来は、排熱回収ボイラを構成する部材、例えば、伝熱管1の一部を切って抜管し、抜管した部分を補修または閉止し、採取した伝熱管1の一部を用いて腐食性の確認を行っていた。
【0021】
この方法では、環境の腐食性の把握は困難であるが、環境の腐食性により生ずる腐食層、腐食成分、減肉程度などを把握することができる。また、伝熱管1の母管2(図2)の残肉厚計測も可能である。従って、この方法は、経年の腐食程度、耐用年数の確認には有効な方法である。しかし、この方法は、破壊測定、破壊検査となってしまうため、多数の伝熱管1が密集して配列される排熱回収ボイラの内部の補修溶接作業などの実際に困難を伴う作業が発生する。さらに、溶接箇所の健全性の確保の課題がある。また、伝熱管1の採取箇所については、補修せずに閉止板を打って一部の流れを使用しないようにする運用方法も行われている。しかし、排熱回収ボイラの本来の性能を犠牲にするため、影響が懸念される。
【0022】
この他、伝熱管1のフィン3(図2)のみを、樹脂で固めて切り出すことで、フィン3を採取する方法もなされている。しかし、この方法でも、伝熱管1の一部が、フィン3の採取のため破壊されてしまうため、破壊測定、破壊検査となってしまう。健全な機器では影響が少ない、僅かな破壊採取、破壊測定であっても、破壊を伴う採取による排熱回収ボイラへのリスクと影響が強く懸念される。
【0023】
また、他の従来の技術として、実機を、破壊または破損させずに、かつ破損させるリスクが低い手法の1つに、所定の固定具(図示略)を用いて、板状の試験片(図示略)を実機に設置する方法がある。この方法は、一般的な機器では有効であり、試験片が同一空間に暴露され、実機の表面の腐食性を把握することが可能となる場合がある。しかし、例えば、熱交換器、排熱回収ボイラのように、運転と停止などの作動状態により温度変化が生じる機器では、各種部材が温度による影響を受ける。その一例として、部材の変形と変位量があり、例えば、機器運転中の高温時は、部材が熱伸し、停止中の低温時は、部材に熱収縮が生じるケースがある。
【0024】
例えば、試験片を固定具により実機に固定し、その実機が運転中に高温となると、固定具に熱伸びが生じる。ここで、熱伸びを懸念して、固定具に強度の低い材料、または伸びの小さい材料を適用した場合、固定具の破損、試験片の脱離が生じ、実機の表面近傍の腐食環境の共有を維持できないおそれがある。また、試験片の実機からの脱離を懸念し、固定具に強度の高い材料を固定具に適用した場合、固定具と試験片の固定は維持されるものの、試験片が実機の一部、例えば、伝熱管1のフィン3を変形させるおそれがある。この場合、実機の表面近傍の腐食環境の共有を維持できないおそれがあり、かつ実機の一部に悪影響を与えてしまうおそれがある。無論、いずれの方法も、実機に変形と変量が伴わない状況では、非常に有効な方法であるが、運転時と停止時の際に生じる温度変化への材料変化に対応できない場合には、実機を破損させるリスクを有する。
【0025】
そこで、本実施形態では、実機に高負荷をかけずに、実機の内部の部材が晒される環境における腐食の程度を部材に過大な負担を与えずに把握することを目的としている。さらに、本実施形態は、実機が暴露される環境の腐食性を、半定量的に検出、把握し、効果的な抑制手法、腐食対策の提案を実現するものである。
【0026】
図1から図2に示すように、伝熱管1は、母管2とその周囲に多数設けられたフィン3から成る。1枚のフィン3は、平面視で四角形状を成している。複数のフィン3は、母管2の周方向に円盤状に並んでいる。円盤状に並んだフィン3の部分が、母管2の軸方向(上下方向)に沿って多段に配置されている。例えば、伝熱管1のフィン3が円盤状に並んだ部分は、母管2の軸方向に均等に並んで配置されている。
【0027】
なお、フィン3の配置形態には、様々な態様がある。例えば、フィン3が母管2の周囲に螺旋状(スパイラル状)に並んで配置されているものもある。さらに、フィン3の形状にも、様々な形態がある。例えば、それぞれのフィン3に折り目が着いている所謂ドックイヤーと呼ばれるフィン3もある。また、平面視で三角形状または他の形状を成すフィン3もある。
【0028】
第1実施形態の実機環境腐食性評価方法は、試験装置10を用いて伝熱管1の腐食性の評価を行うものである。図1に示すように、第1実施形態の試験装置10は、治具11と板状試験片20とを備える。
【0029】
板状試験片20は、平板状を成し、かつ平面視で長方形を成している(図3)。治具11は、コイルバネ状(スパイラル状)を成し、弾性変形可能な金属などの材質で形成されている。例えば、2枚の板状試験片20が、1個の治具11に保持されている。治具11は、隣接する伝熱管1同士を繋ぐ所定のフレーム4に対し、複数のワイヤ12で取り付けられている。このようにすれば、実機である排熱回収ボイラの性能に影響をきたす改造をすることなく、かつ実機への過大な負荷を加えることなく、板状試験片20を実機に取り付けることができる。
【0030】
なお、ワイヤ12は、板状試験片20を伝熱管1の任意の箇所に設置するための治具11の一部を構成する。例えば、ステンレス製のワイヤ12が用いられている。また、ワイヤ12は、伝熱管1の母管2に括り付けられてもよい。また、治具11は、管束板、防振板、架台など、伝熱管1以外の実機の補助具に括り付けることが可能な取り付け具を有することも可能である。治具11が伝熱管1以外の部材に固定されることで、伝熱管1に対してワイヤ12が接触することによる、伝熱管1への機械的な影響を抑止することができる。
【0031】
第1実施形態において、実機の内部の任意の箇所に設置される試験部は、板状試験片20で構成されている。また、試験部を設置した状態で実機の形状の変化に追従して変形可能な変形部は、治具11で構成されている。この治具11(試験装置10)は、少なくとも一部が屈曲され、伸縮可能な部分を有している。
【0032】
例えば、停止時に低温である伝熱管1は、運転を開始すると高温になり、その上下寸法が長くなる。ここで、治具11は、伝熱管1の延伸に追従し、その上下寸法が長くなる。また、運転時に高温である伝熱管1は、運転が停止されると低温になり、その上下寸法が短くなる。ここで、治具11は、伝熱管1の収縮に追従し、その上下寸法が短くなる。そのため、板状試験片20の位置が維持され、フィン3に負荷が加わることが抑制される。
【0033】
なお、「実機の形状の変化に追従」するという用語は、「実機の形状が変化しない場合にその変化しない実機の形状に追従」することができる意味を含んでいる。
【0034】
例えば、伝熱管1は、その内部に冷却水が流れているため、その外周に高温の排ガスが当たっても、治具11よりも低温に維持される。つまり、伝熱管1の寸法が殆ど変化しない場合があり得る。一方、治具11は、高温の排ガスが当たることにより、熱伸びが生じる。ここで、治具11がコイルバネ状を成すことで、その延伸が抑制される。そのため、板状試験片20の位置が維持され、フィン3に負荷が加わることが抑制される。
【0035】
板状試験片20は、排熱回収ボイラを構成する部材である伝熱管1の表面に接触または近接する位置に治具11で設置されている。ここで、板状試験片20の先端縁は、伝熱管1の表面に生じる腐食環境を、伝熱管1と板状試験片20とで共有する共有位置に設置される。なお、伝熱管1の表面に生じる腐食環境とは、伝熱管1の「表面のみ」に生じるものであり、伝熱管1の表面から離れた位置では異なる環境であることを示す。
【0036】
この共有位置は、伝熱管1の表面に生じる腐食成分を含む水膜を共有する位置、伝熱管1の表面に生じる流体の流れを共有する位置、または、伝熱管1の表面に付着する、腐食生成物41、付着物もしくは湿分を共有する位置の少なくともいずれかである。このようにすれば、伝熱管1の表面に生じる腐食環境を、伝熱管1と板状試験片20とで共有することができる。
【0037】
第1実施形態の共有位置は、伝熱管1の軸方向に並ぶ複数のフィン3の隙間Gである。このようにすれば、板状試験片20が伝熱管1のフィン3に接触または近接した位置に設けられるため、伝熱管1の腐食の評価をすることができる。熱交換器としての排熱回収ボイラの伝熱管1は、その内部と外部で温度差がある流体が流れるため腐食し易い。本実施形態では、板状試験片20の解析により、その腐食環境を把握することができる。
【0038】
試験装置10が取り付けられる位置は、作業者であるユーザが、手作業で取り付け易い位置でよい。また、取り付ける時期は、任意の時期でよく、例えば、排熱回収ボイラのメンテナンス時でもよいし、排熱回収ボイラの製造時でもよい。
【0039】
そして、試験装置10を取り付けてから評価の対象となる期間が経過した後に、ユーザは、試験装置10を取り外す。この取り外した試験装置10の板状試験片20の表面の腐食を解析した結果に基づいて、ユーザが、伝熱管1の表面に生じる腐食性の評価を行う。なお、腐食性の評価には、腐食環境における耐食性と耐久性の評価が含まれる。
【0040】
板状試験片20が平板状を成すことで(図3)、ユーザが顕微鏡などを用いて板状試験片20の表面の腐食箇所40(図4)を観察し易くなる。さらに、ユーザが板状試験片20の表面の付着物または腐食生成物41(図4)の採取もし易くなる。なお、板状試験片20には、治具11に保持させるために用いる2つの孔部21(図3)が形成されている。これらの孔部21に、図2に示すように治具11の一部(線材)が通される。
【0041】
また、板状試験片20の孔部21は、板状試験片20のぐらつきを許容する箇所となっている。例えば、孔部21の内径が、治具11を構成する線材の外径よりも大きくなるように形成されている。そして、この孔部21に治具11の一部が遊嵌された状態で、治具11が伝熱管1に取り付けられている。このようにすれば、板状試験片20を、伝熱管1に対する親和性、熱伸び熱収縮に対する追従性を確保し得る構造とすることができる。
【0042】
また、板状試験片20は、伝熱管1を構成する材料と同じ材料で形成されてもよいし、伝熱管1を構成する材料よりも腐食性が劣る材料で形成されてもよい。例えば、板状試験片20が伝熱管1を構成する材料と同じ材料である場合には、実際の腐食の状態を再現することができる。また、板状試験片20が劣る材料で形成されている場合には、実際の腐食の期間よりも短い期間で板状試験片20を腐食させることができ、将来の腐食の状態を早期に再現することができる。
【0043】
図1に示すように、板状試験片20が伝熱管1に取り付けられると、伝熱管1のフィン3の隙間Gに、板状試験片20が入り込む。このとき、板状試験片20の表面は、伝熱管1のフィン3の表面に接触または近接する。
【0044】
なお、近接する場合において、その間の距離は、少なくともフィン3の表面に発生する水膜が、板状試験片20の表面に伝わる距離であればよい。また、接触する場合には、伝熱管1のフィン3の隙間Gに、板状試験片20が嵌合されてもよい。
【0045】
なお、伝熱管1は、排熱回収ボイラの運転時と停止時の温度変化を受け、熱により伸縮する。従って、フィン3のピッチも一様でなく、規則性が乱れた箇所も存在する。これに対して本実施形態では、板状試験片20のぐらつきを許容しているため、フィン3の規則性が乱れた箇所にも取り付けることができる。
【0046】
排熱回収ボイラは、排ガスが排圧を有する状態で通過する機器であり、従来の不充分な固定では、試験片の離脱、落下が生じるおそれがある。また、実機に高い負荷をかけて試験片を固定することは、実機の損傷などに直結する。しかし、第1実施形態では、板状試験片20の離脱が防止できるようになり、治具11の調整によって板状試験片20と実機との接触の調整も可能となる。
【0047】
図2に示すように、板状試験片20が伝熱管1のフィン3に接触または近接されている。このようにすれば、腐食環境、例えば、結露による水膜、腐食成分が溶け込んだ腐食成分を含む水膜を、板状試験片20が共有することができる。
【0048】
また、板状試験片20は、フィン3の突出寸法よりも長い寸法となっている。そして、板状試験片20の端縁が、伝熱管1の母管2の外周面に接触または近接される。このようにすれば、フィン3のみならず、母管2の表面に生じる腐食環境を、板状試験片20が共有することができる。
【0049】
例えば、図3から図4に示すように、伝熱管1から取り外した板状試験片20には、フィン3が接触していた部分が腐食箇所40となる。ユーザは、この腐食箇所40を観察したり、腐食箇所40の付着物を採取したりすることで、その腐食の程度を把握することができる。
【0050】
また、ユーザは、板状試験片20の取り付け前(設置前)と取り外し後に、板状試験片20の重量、厚み、表面粗さ、表面付着成分の少なくとも1つを測定する。そして、ユーザは、この測定したときの測定値の変化量に基づいて、伝熱管1の表面に生じる腐食性の評価を行う。このようにすれば、板状試験片20の変化量に基づいて、伝熱管1の表面に生じる腐食性の評価を行うことができる。
【0051】
特に、腐食による変化量を定量的に把握することができる。腐食状況は、実機の運転開始から確認時期までの総時間の蓄積が実機の状況に影響した結果であり、その腐食の進行レベルを把握することが極めて困難である。しかし、本実施形態では、定量的な数値を把握、例えば、試験開始前の状況を定量的に把握可能な板状試験片20を設けることにより、試験開始から採取までの期間によって生じた結果として腐食程度を把握することができる。
【0052】
なお、板状試験片20の解析の際、色彩判定による面積算出が併用されてもよい。例えば、板状試験片20の表面において、伝熱管1の腐食環境を共有していた箇所の面積が算出され、かつ重量増加の主要範囲として計算される。このようにすれば、高い精度で腐食環境を把握することができる。さらに、板状試験片20が、非破壊で伝熱管1から取外しができることにより、伝熱管1を切断する必要がない。そのため、伝熱管1の切断時の振動などによる、腐食層の剥離または破損などが生じ難く、腐食により生成された影響層の損失を回避することもできる。
【0053】
また、ユーザは、板状試験片20の表面に付着した成分の分析、板状試験片20の構造の解析を行う。また、ユーザは、板状試験片20の形態の分析、板状試験片20の表面の観察を行う。また、ユーザは、板状試験片20の断面の分析、板状試験片20の重量の測定を行う。また、ユーザは、板状試験片20の厚みの測定、板状試験片20の表面粗さの測定を行う。
【0054】
そして、ユーザは、これらの分析などに基づいて、伝熱管1の表面に生じる腐食性の評価を行う。このようにすれば、腐食因子の推定と腐食量の算出を行うことができる。また、腐食性の半定量化を行うことができる。なお、後述する他の実施形態の試験部でも、第1実施形態と同様の解析を行うことで、腐食因子の推定と腐食量の算出を行うことができる。
【0055】
本実施形態の実機環境腐食性評価方法は、その一部にコンピュータが用いられてもよい。例えば、本実施形態のコンピュータは、板状試験片20の表面の腐食を解析した結果の入力に応じて、伝熱管1の表面に生じる腐食性の推定を行い、かつ推定した結果または排熱回収ボイラの腐食対策を示す情報の少なくとも一方を出力する。このようにすれば、コンピュータによる推定に基づいて、ユーザが腐食対策を提案することができる。
【0056】
コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などのハードウェア資源を有し、CPUが各種プログラムを実行することで、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて実現される。さらに、本実施形態の実機環境腐食性評価方法は、各種プログラムをコンピュータに実行させることで実現される。
【0057】
なお、コンピュータは、腐食の解析に必要な情報が蓄積されたデータベースを備える。このデータベースは、メモリ、HDD、クラウドコンピューティングのリソースに記憶され、検索または蓄積ができるよう整理された情報の集まりである。
【0058】
第1実施形態で評価の対象となる部材として、排熱回収ボイラの伝熱管1が例示されているが、その他の態様でもよい。例えば、評価の対象となる部材は、排熱回収ボイラのドレイン管、排熱回収ボイラの給水管、排熱回収ボイラの煙道、排熱回収ボイラの管束板、排熱回収ボイラの防振板、排熱回収ボイラの架台など、伝熱管1以外の実機の補助具などでもよい。また、腐食環境は、部材の表面に、燃焼ガス、蒸気、液体、二相流の少なくともいずれかが通過する環境、または部材の表面に腐食生成物41、付着物もしくは湿分が付着する環境である。このようにすれば、排熱回収ボイラで生じる様々な腐食環境を評価することができる。
【0059】
また、腐食環境は、部材の表面に、硫化物または硫黄を含むイオン、塩化物または塩素を含むイオン、硝酸化合物または硝酸を含むイオンの少なくともいずれかが付着する環境である。さらに、腐食環境は、アンモニア化合物またはアンモニアを含むイオン、炭酸化合物または炭酸を含むイオン、水素または水蒸気の水素を含むイオンの少なくともいずれかが付着する環境でもよい。このようにすれば、様々な腐食因子に起因する腐食環境を評価することができる。
【0060】
例えば、板状試験片20には、腐食環境に応じて、腐食の他、硫酸アンモニウムの成分の付着、飛来微細粒子による摩耗などの変化が生じる。これらの変化に対し、イオンクロマトグラフィー(Ion Chromatography:IC)、プラズマ発光分析(Inductively Coupled Plasma:ICP)、エネルギー分散型X線分光法(Energy dispersive X-ray spectrometry:EDS)、電子線マイクロアナライザー(Electron Probe Micro Analyzer:EPMA)などの成分分析により、腐食成分の推定が行われる。
【0061】
また、腐食成分、付着成分の構造分析としては、フーリエ変換赤外分光装置(Fourier Transform Infrared Spectroscopy:FT-IR)、ラマン分光法(Raman spectrometric method raman spectroscopy)、X線回折法(X-Ray Diffraction:XRD)、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)、オージェ電子分光法(Auger Electron Spectroscopy:AES)などの構造分析が用いられる。
【0062】
また、形態分析としては、走査線電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy:SEM)などによる拡大分析が行われる。また、錆、付着成分は、これらが呈する色彩の情報も重要であり、顕微鏡による表面観察なども行われる。また、断面分析は、顕微鏡観察、SEM観察などにより、マクロ的およびミクロ的な情報が得られる。
【0063】
また、半定量的な腐食量の算定方法としては、板状試験片20の重量測定により、腐食環境への暴露前と暴露後の重量変化が変化量として測定される。同様に、厚み測定、表面粗さ測定が行われる場合もある。ここで、重量変化、厚み変化は、腐食または付着により、その変位量の意味づけが異なる。例えば、錆形成による重量増加と成分付着による重量増加は、その増加量が持つ意味が同義でない。本実施形態では、重量変化、厚み変化、粗さ変化のいずれかに際し、その要因を併行して検証することで、板状試験片20の腐食程度が適切に把握される。
【0064】
例えば、重量変化のデータについては、板状試験片20の分析または解析が行われ、付着物または腐食に起因する成分が観察または分析される。ユーザは、純水またはそれに準ずる液体を用いた抽出方法で、板状試験片20から腐食成分を抽出し、その腐食成分の含有濃度を算出する。この腐食成分の含有濃度は、板状試験片20の全体に付着した腐食成分から、その濃度を算出するものである。
【0065】
この方法では、図3に示すように、板状試験片20の暴露により影響を受けた箇所が可視化される。この影響を受けた箇所は、例えば、結露水の影響を受け、伝熱管1の表面における腐食成分の溶け込み、付着に準ずる状況を形成し得る。この可視化された部分の面積の板状試験片20の表面全体に占める割合が算出さることで、本来の付着成分の濃度が算出される。この比率の算出には、画像データによる解析を用いることもできるし、設計値基準での算出もできる。
【0066】
また、伝熱管1のフィン3が幅方向に減肉を呈するケースでは、その分を加味して算出が行われる。また、構造解析が併用されることで、分析された成分が、実機でどのような化合物が存在するかを推定する手助けになる。特に、板状試験片20の採取時に得られる乾いた状態での化合物の分析のみならず、湿式状態での化合物の状態の分析、板状試験片20に対する反応の推定にも用いることができる。
【0067】
板状試験片20が腐食環境に暴露されると、板状試験片20の影響を受ける箇所において腐食する事象が生じるケースがある。なお、図4では、板状試験片20の腐食箇所40が例示されているが、後述する他の実施形態の試験部でも、以下の説明と同様の現象が生じる。
【0068】
図4に示すように、伝熱管1のフィン3の腐食が進行すると、フィン3の減肉が進行する。ここで、板状試験片20における、フィン3との接触箇所または近接箇所に、腐食生成物41が生じる。ユーザは、腐食生成物41に含まれる元素の分析、腐食生成物41の同定を行い、腐食要因を推定するとともに、板状試験片20の重量測定により、腐食により生じる重量の変化を測定する。併せて、ユーザは、板状試験片20から腐食成分、腐食による生成物、付着物の成分の抽出と、ふき取りによる除去後、板状試験片20の断面の観察により、板状試験片20の残肉厚を測定する。
【0069】
従来の試験法では、実機からの水膜の供与、腐食成分の溶け込みが無く、軽微な腐食しか生じないケースもあった。しかし、本実施形態の実機環境腐食性評価方法では、板状試験片20が減肉されるばかりか、板状試験片20の表面に腐食生成物41、付着物、湿分が生じるようになる。このように、実機の表面で生じる腐食に類似した事象が生じた板状試験片20を解析することができる。
【0070】
腐食生成物41などの付着物層、付着物、湿分は、腐食に関与し得る成分、またはその一部を推定し得る一因となる。腐食生成物41は、腐食の反応機構、腐食に関与し得る成分、またはその一部を推定し得る一因となる。減肉量は、実機の腐食環境における腐食速度を推定し得る一因となる。また、板状試験片20の腐食箇所40の面積比率および腐食箇所40以外の面積比率は、重要な要素となる。
【0071】
なお、板状試験片20の材料には、実機の部材と同じ材料が好ましい。その他、実機の部材と腐食速度の相関性が見える材料、例えば、腐食の進行が2倍の材料などを使用し、比較的短時間で実機の腐食環境およびその腐食性を半定量化することも有効である。
【0072】
なお、腐食環境の異なる2つ以上のプラントに、本実施形態の板状試験片20が設けられ、それぞれのプラントで解析が行われてもよい。このようにすれば、2つのプラント間における環境の腐食性の差を可視化および比較することができる。また、同一プラントにおいて、経時的に板状試験片20の経過を確認することにより、運用による影響、ガス種の影響、外部因子による急速な腐食環境の悪化などについても差分として検出することができる。
【0073】
本実施形態の実機環境腐食性評価方法が用いられることで、実機の腐食環境を半定量化、可視化し、その腐食環境に即した、有効な腐食対策、腐食抑制手法の提案をすることができる。さらに、ユーザが、その腐食抑制手法の妥当性を検証することにより、抑制技術の信頼性を向上し得る。
【0074】
また、試験部は、第1種部と第2種部とを含む。第1種部と第2種部は、形状、材質、物性、表面の状態の少なくとも1つが互いに異なる。このようにすれば、1つの試験装置10で、形状、材質、物性、表面の状態などの様々な腐食形態に対応する評価を行うことができる。
【0075】
例えば、ユーザは、所定の板状試験片20(図3)に腐食対策を施す。複数枚の板状試験片20が用いられる場合には、それぞれ異なる腐食対策を施してもよい。ここで、ユーザは、板状試験片20に防錆塗装を施してもよい。
【0076】
図4に示すように、防錆塗装を施した板状試験片20のうち、フィン3に接触または近接している箇所が腐食環境の影響を受ける。腐食抑制手法として、防錆塗料が有効性を有する場合、板状試験片20のフィン3に接触または近接している箇所に、顕著な減肉は生じない。また、過剰な腐食環境により、防錆塗料に変化が生じる場合にも、その可視化が可能である。なお、防錆塗料は、一例にすぎず、代替え材料の提案、ガス種の変更などについても、その影響を半定量化、可視化することが可能となる。また、対策の有効性を実機の環境で検証できるのみならず、実機から得られた板状試験片20の解析データを元に、実機の模擬環境試験が可能となる。併せて、同一の対策であっても、複数のプラント間による腐食環境の差異により、その効果の持続性の有無を検証することができる。
【0077】
また、ユーザは、板状試験片20の表面の腐食を解析した結果に基づいて、腐食環境を模擬する模擬機を構築してもよい。そして、ユーザは、模擬機の内部の任意の箇所に板状試験片20を取り付け、取り付けてから評価の対象となる期間が経過した後に、模擬機の内部から板状試験片20を取り外す。さらに、ユーザは、取り外した板状試験片20の表面の腐食を解析した結果に基づいて、伝熱管1の表面に生じる腐食性の評価を行ってもよい。このようにすれば、実機のみならず、模擬機を用いて様々な腐食環境を再現し、腐食対策の効果を可視化しつつ、その有効性を検証することができる。
【0078】
板状試験片20は、低圧節炭器を始めとする、比較的温度の低い箇所への配置が有効である。例えば、低圧節炭器は、伝熱管1または関連する配管の内部を流通する熱交換媒体、例えば、水の温度が低く、伝熱管1の外面温度が、内部を流通する排ガス温度よりも低くなる場合がある。これは、一時的または断続的に、結露または相対的に湿度の高い環境を形成する場合がある。このような実機の動作により生ずる特殊な温度環境、水膜環境は、炉内への単純な暴露では再現されない。本実施形態によれば、板状試験片20が、接触または近接による実機の腐食環境を共有し得る状態を形成するため、実機に近い腐食程度を把握できる。
【0079】
また、板状試験片20は、脱硝触媒の後方に位置する、高圧域の伝熱管1の近傍に配置することが有効である。この領域は、高温の排ガスが高速で伝熱管1または他の部材に接触する箇所である。排ガス中に含まれる腐食成分、不純物濃度が高いプラントでは、この領域に板状試験片20を設けることで、熱交換効率に最も影響を与える箇所の腐食環境レベルを把握することができる。そして、実機の性能に影響を与える領域の健全性、損傷リスクを検出することができる。
【0080】
例えば、温度による影響で伝熱管1(実機)または治具11の寸法(形状)が変形しても、板状試験片20が設置された位置がずれることなく、板状試験片20が、伝熱管1または治具11の寸法の変化に追従できるようになる。そのため、伝熱管1と試験装置10との間の温度差による影響を低減させることができる。
【0081】
また、治具11は、伝熱管1などの所定の部材に括り付けるためのワイヤ12を含む。このワイヤ12が治具11の一部となっていることで、実機である排熱回収ボイラの性能に影響をきたす改造をすることなく、かつ実機への過大な負荷を加えることなく、試験部を実機に取り付けることができる。
【0082】
また、実機には、管束板、防音板、筐体、固縛具などの多くの部品が各所に存在する。例えば、実機の内部に設置されている部材を用いて治具11を固定または支持することで、実機の改造および実機への過大な負荷を加えることなく、板状試験片20を設置することができる。なお、防音版の一部延長、管束板への治具11の固定など、実機の機能を逸脱しない範囲での改造または追加の加工などが行われてもよい。
【0083】
また、実機の環境が有する変化を、板状試験片20の変化量として捉え、特に、運転と動作により実機の温度と形状に変動があるものに適用することができる。併せて、適用される環境としては、排熱回収ボイラを代表とする熱交換器で、実機環境腐食性評価方法の効果が高い。例えば、燃焼ガスによるガス、蒸気、または、気体と液体の二層流が通過するものに適用され、排熱回収ボイラの伝熱管1、ドレイン管、給水管、その他配管、または、煙道などに適用すれば、実機環境腐食性評価方法の効果が期待できる。
【0084】
また、腐食成分濃度に依存せず、板状試験片20の変化、または、その変化量から、実機の表面が有する腐食環境を把握し得る。特に、コンバインドサイクル発電方式、水素混焼、アンモニア燃料における、排熱回収ボイラの熱交換器などの、一部に腐食成分を含む環境を有する場合に、実機環境腐食性評価方法の有効性が高い。
【0085】
(第2実施形態)
つぎに、第2実施形態について図5から図6を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0086】
図5に示すように、第2実施形態の試験装置10Aは、治具11Aと接続具13と板状試験片20とを備える。例えば、2枚の板状試験片20が、1個の治具11Aに保持されている。治具11Aは、伝熱管1のフレーム4に対し、ワイヤ12で取り付けられている。接続具13は、板状試験片20を治具11Aに対して相対的に可動する状態で接続するリング状を成す金具(Oリング)である。
【0087】
第2実施形態において、板状試験片20が試験部となっている。治具11Aが変形部となっている。ここで、板状試験片20の先端縁は、伝熱管1の表面に生じる腐食環境を、伝熱管1と共有する共有位置に設置される。
【0088】
図6に示すように、接続具13は、板状試験片20の孔部21に通される。さらに、この接続具13に治具11Aが通される。
【0089】
板状試験片20が接続具13により伝熱管1の形状の変化に追従し、共有位置に維持される。例えば、伝熱管1の上下寸法が温度変化により、延伸または収縮しても、板状試験片20が接続具13の部分を軸として揺動し、板状試験片20の先端縁がフィン3の隙間Gに維持される。
【0090】
また、伝熱管1のフィン3のピッチも一様でなく、規則性が乱れた箇所も存在する。これに対し、板状試験片20の位置が固定されていると、フィン3の位置と親和性が得られ難いケースもあり得る。併せて、経年機または運転条件を変更した実機では、実機の変化量に対する治具11Aの追従性が必ずしも想定と一致しないケースもあり得る。そこで、治具11Aと板状試験片20とをリング状の接続具13で接続することで、伝熱管1の伸縮方向への追従性が増すようになる。
【0091】
追加的または代替的に、板状試験片20の厚みを、フィン3同士の隙間Gよりも薄いもの、例えば、半分以下の厚みにして、伝熱管1の熱伸び、または熱収縮に対する追従性を確保することもできる。
【0092】
なお、接続具13の形状は、リング状に限らず、例えば、ピンチのように、挟み形状にバネを具備したものでもよい。さらに、接続具13は、チェーンのように可動し、かつ板状試験片20を捕捉可能な金具でもよい。
【0093】
第2実施形態では、板状試験片20と板状試験片20、または、板状試験片20と治具11Aの、支持機能、捕捉機能、固定機能が、寸法的または構造的な尤度を有するようになり、実機の形状が変化しても、板状試験片20を共有位置に維持することができる。なお、「尤度」とは、許容可能な範囲に余裕があることである。
【0094】
(第3実施形態)
つぎに、第3実施形態について図7から図8を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0095】
図7に示すように、第3実施形態の試験装置10Bは、治具11Bと接続具13と板状試験片20とを備える。例えば、2枚の板状試験片20が、複数の接続具13を介して1個の治具11Bに保持されている。治具11Bは、伝熱管1のフレーム4に対し、ワイヤ12で取り付けられている。
【0096】
第3実施形態において、試験部は、第1形態部と第2形態部とを含む。板状試験片20が第1形態部(試験部)となっている。治具11Bが変形部となっている。さらに、この治具11Bは、その一部が第2形態部(試験部)となっている。ここで、板状試験片20の先端縁と治具11Bの一部は、伝熱管1の表面に生じる腐食環境を、伝熱管1と共有する共有位置に設置される。
【0097】
例えば、治具11Bは、上下方向の中央部の直径よりも、上部および下部の直径が大きくなっている。つまり、治具11Bは、径の異なる箇所を有するコイルバネ状となっている。ここで、治具11Bの中央部に接続具13を介して板状試験片20が保持されている。治具11Bの上部および下部は、その一部が伝熱管1のフィン3の隙間Gに入り込んでいる。治具11Bにおいて、この入り込んだ部分が第2形態部(試験部)となっている。この治具11Bは、試験部として機能する形状、構造、材料、材質の少なくともいずれかを有する。
【0098】
図8に示すように、治具11Bを構成する線材の断面は、長円形状を成す。例えば、その外周面の一部に平坦な部分が形成されている。この平坦な部分が、フィン3に接触または近接される。また、治具11Bを構成する線材の横幅が広く形成され、平坦な部分が拡大されてもよい。このようにすれば、板状試験片20と同様の、半定量的な腐食性の把握も可能となる。
【0099】
また、治具11Bは、伝熱管1を構成する材料と同じ材料で形成されてもよいし、伝熱管1を構成する材料よりも腐食性が劣る材料で形成されてもよい。
【0100】
伝熱管1のフィン3の腐食が進行すると、フィン3の減肉が進行する。ここで、治具11Bにおける、フィン3との接触箇所または近接箇所に、腐食生成物41が生じる。ユーザは、腐食生成物41に含まれる元素の分析、腐食生成物41の同定を行い、腐食要因を推定するとともに、治具11Bの重量測定により、腐食により生じる重量の変化を測定する。併せて、ユーザは、治具11Bから腐食成分、腐食による生成物、付着物の成分の抽出と、ふき取りによる除去後、治具11Bの断面の観察により、治具11Bの残肉厚を測定する。このように、実機の表面で生じる腐食に類似した事象が生じた治具11Bを解析することができる。
【0101】
第3実施形態では、試験部の機能と変形部の機能の双方を1つの治具11Bに持たせて、試験装置10Bの構成を簡素化することができる。また、1つの治具11Bで試験部と変形部を兼用させることができる。つまり、1つの試験装置10Bで、形状により異なる腐食形態に対応する評価を行うことができる。
【0102】
(第4実施形態)
つぎに、第4実施形態について図9から図10を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0103】
図9に示すように、第4実施形態の試験装置10Cは、治具11Cと板状試験片20とを備える。例えば、2枚の板状試験片20が、1個の治具11Cに保持されている。第4実施形態では、ワイヤ12(図1)が用いられておらず、治具11Cが伝熱管1に巻き付けてられている。例えば、治具11Cを構成する線材がフィン3の隙間Gに沿って巻き付けられている。なお、1本の線材が伝熱管1に螺旋状に巻き付けられてもよいし、複数のリング状を成す線材が伝熱管1に巻き付けられていてもよい。つまり、治具11Cが複数本の線材で構成されていてもよい。
【0104】
第4実施形態において、試験部は、第1形態部と第2形態部とを含む。板状試験片20が第1形態部(試験部)となっている。治具11Cが変形部となっている。さらに、この治具11Cは、ほぼ全体が第2形態部(試験部)となっている。ここで、板状試験片20の先端縁と治具11Cのほぼ全体は、伝熱管1の表面に生じる腐食環境を、伝熱管1と共有する共有位置に設置される。
【0105】
例えば、治具11Cは、上部および下部の直径よりも、中央部の直径が大きくなっている。つまり、治具11Cは、径の異なる箇所を有するコイルバネ状となっている。ここで、治具11Cの中央部に板状試験片20が保持されている。例えば、板状試験片20の孔部21(図10)の治具11Cの中央部の線材が通される。
【0106】
治具11Cの上部および下部は、伝熱管1のフィン3の隙間Gに入り込んでいる。治具11Cにおいて、この入り込んだ部分が第2形態部(試験部)となっている。この治具11Cは、試験部として機能する形状、構造、材料、材質の少なくともいずれかを有する。
【0107】
第4実施形態では、治具11Cの全体が伝熱管1のフィン3の隙間Gに入り込むため、母管2の近傍の腐食性をより把握することができる。また、治具11Cを伝熱管1に固定するワイヤ12(図1)などの固定具を不要とすることができる。なお、治具11Cの固定のために補助的にワイヤ12が用いられてもよい。それでもワイヤ12の使用が最低限の長さで済む。また、伝熱管1の近傍での治具11C自体の変位量を低減する効果も得られる。
【0108】
また、治具11Cが、伝熱管1に巻き付ける形状を成していることで、伝熱管1の延設方向への依存性が低く、いわゆる竪型方式、横型方式、いずれの伝熱管1の場合でも、親和性の高い構成とすることができる。このように、治具11Cが試験部としての機能を有し、かつ伝熱管1の形状の変化に追従する機能を有する。そのため、一点で伝熱管1と接することなく、多点で支持も可能となり、伝熱管1への負荷を軽微とし、治具11Cの部分でも腐食性を把握することが可能となる。
【0109】
(第5実施形態)
つぎに、第5実施形態について図11から図13を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0110】
図11に示すように、第5実施形態の試験装置10Dは、治具11Dと板状試験片20と模擬試験片30とを備える。例えば、2枚の板状試験片20と1個の模擬試験片30が、1個の治具11Dに保持されている。治具11Dは、伝熱管1のフレーム4に対し、ワイヤ12で取り付けられている。
【0111】
第5実施形態において、試験部は、第1形態部と第2形態部とを含む。板状試験片20および模擬試験片30が第1形態部(試験部)となっている。治具11Dが変形部となっている。さらに、この治具11Dは、その一部が第2形態部(試験部)となっている。ここで、板状試験片20の先端縁と治具11Dの一部は、伝熱管1の表面に生じる腐食環境を、伝熱管1と共有する共有位置に設置される。さらに、模擬試験片30の一部も、伝熱管1の表面に生じる腐食環境を、伝熱管1と共有する共有位置に設置される。
【0112】
例えば、治具11Dは、上下方向の中央部の直径よりも、上部および下部の直径が大きくなっている。つまり、治具11Dは、径の異なる箇所を有するコイルバネ状となっている。ここで、治具11Dの中央部に板状試験片20と模擬試験片30が保持されている。治具11Dの上部および下部は、その一部が伝熱管1のフィン3の隙間Gに入り込んでいる。治具11Dにおいて、この入り込んだ部分が第2形態部(試験部)となっている。この治具11Dは、試験部として機能する形状、構造、材料、材質の少なくともいずれかを有する。
【0113】
模擬試験片30は、治具11Dにより共有位置に保持されるものである。この模擬試験片30は、伝熱管1の一部と同一または類似の形状を成す。この模擬試験片30は、伝熱管1と親和性がある類似形状となっている。この模擬試験片30は、円筒形状を成す管部31と、その周囲に設けられた円盤状を成す円盤部32を備える。例えば、1本の管部31の周面に1枚の円盤部32が配置されている。
【0114】
実機を構成する各種の部材には、特徴的な形状を有するものがある。例えば、伝熱管1は、配管である母管2と伝熱の多くを担うフィン3を有する。また、スタブ、管寄せも、各種の特徴的な形状を有する。ガス(流体)が通過する場所は、その形状効果も考慮に入れる必要があるケースも多い。そこで、第5実施形態は、模擬試験片30を設置する構造としている。
【0115】
図12に示すように、模擬試験片30の管部31は、伝熱管1と同じ外径および内径を有している。この管部31に治具11Dの中央部が配置され、模擬試験片30が保持されている。この模擬試験片30の円盤部32は、伝熱管1のフィン3が円盤状に並んだ部分とほぼ同じ形状を成す。例えば、フィン3の突出寸法と円盤部32の突出寸法が同一となっている。また、円盤部32の厚みは、フィン3の厚みと同一となっている。このようにすれば、伝熱管1の形状により生じる腐食性の変化を、模擬試験片30により評価することができる。
【0116】
なお、模擬試験片30は、伝熱管1の構造と同じ構造でもよい。例えば、模擬試験片30の円盤部32が、伝熱管1の複数枚のフィン3で構成される円盤状の部分のような形態にされてもよい。さらに、模擬試験片30は、伝熱管1の構造と異なる構造でもよい。例えば、模擬試験片30において、伝熱管1に対向する側面のみが、伝熱管1と同一形状にされてもよい。
【0117】
なお、伝熱管1が螺旋状に並ぶフィン3を有する場合、模擬試験片30の円盤部32が螺旋状であってもよい。
【0118】
図12に示すように、模擬試験片30の円盤部32が伝熱管1のフィン3に接触または近接されている。このようにすれば、腐食環境、例えば、結露による水膜、腐食成分が溶け込んだ腐食成分を含む水膜を、模擬試験片30が共有することができる。
【0119】
図13に示すように、伝熱管1から取り外した模擬試験片30の円盤部32には、フィン3が接触していた部分が腐食箇所40となる。ユーザは、この腐食箇所40を観察したり、腐食箇所40の付着物を採取したりすることで、その腐食の程度を把握することができる。
【0120】
第5実施形態では、模擬試験片30により、伝熱管1の形状効果を把握することができる。例えば、母管2とフィン3の表面での腐食性の違い、溶接の違い、実機特有の腐食状況の違いを、実機に近い形で把握することができる。また、模擬試験片30の大きさと重量を変更してもよく、重量を含めた、実機への負担を軽減する事も可能となる。このように、模擬試験片30が実機に類似の形状を有し、治具11Dにより、伝熱管1の形状の変化に追従することで、伝熱管1の特有の腐食形態を有するケースも把握が可能となる。
【0121】
(第6実施形態)
つぎに、第6実施形態について図14を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0122】
図14に示すように、第6実施形態の試験装置10Eは、治具11Eと板状試験片20とを備える。例えば、2枚の板状試験片20が、1個の治具11Eに保持されている。治具11Eは、伝熱管1のフレーム4に対し、ワイヤ12で取り付けられている。
【0123】
第6実施形態において、試験部は、第1形態部と第2形態部とを含む。板状試験片20が第1形態部(試験部)となっている。そして、治具11Eが変形部となっている。さらに、この治具11Eは、その一部が第2形態部(試験部)となっている。ここで、板状試験片20の先端縁と治具11Eの一部は、伝熱管1の表面に生じる腐食環境を、伝熱管1と共有する共有位置に設置される。
【0124】
例えば、治具11Eは、上下方向の中央部の直径よりも、上部および下部の直径が大きくなっている。つまり、治具11Eは、径の異なる箇所を有するコイルバネ状となっている。ここで、治具11Eの中央部に接続具13を介して板状試験片20が保持されている。治具11Eの上部および下部は、その一部が伝熱管1のフィン3の隙間Gに入り込んでいる。治具11Eにおいて、この入り込んだ部分が第2形態部(試験部)となっている。この治具11Eは、試験部として機能する形状、構造、材料、材質の少なくともいずれかを有する。
【0125】
さらに、治具11Eの一部である第2形態部(試験部)は、第1種部と第2種部とを含む。例えば、治具11Eにおいて、フィン3の隙間Gに入り込んだ部分のうち、防錆塗装されていない部分(無塗装部)が第1種部であり、防錆塗装されている塗装部14が第2種部となっている。図14の例では、治具11Eの最上段のターンの部分に防錆塗料が塗られた塗装部14が設けられている。つまり、治具11Eには、腐食性の把握箇所が複数設けられており、それぞれの把握箇所が異なる態様となっている。例えば、複数の把握箇所が2種以上の異なる物性を有する。
【0126】
第6実施形態では、治具11Eにおいて、無塗装の部分と塗装部14とが、実機の環境に暴露されることにより、防錆塗料の定性的な効果を可視化することが可能となる。また、治具11Eは、極めて近接した箇所の腐食性を個別に把握することが可能であり、多数の箇所の腐食性を把握することができる。また、防錆塗料の塗装有無を、極めて近傍で比較することで、腐食の発生箇所の可視化、その傾向の違い、半定量的な評価および比較までが可能となる。
【0127】
また、塗装の有無に限らず、治具11Eのそれぞれの部分が、それぞれ異なる材料で形成されてもよい。このようにすれば、材料による腐食性への反応性と、受ける影響の違いなどの把握も可能となる。また、短期間しか暴露が見込めないケース、または、至急のケースにおいて、耐食性の低い材料を試験部として用いることで、早期に試験を行うこともできる。その他、同一条件の個数を増やすことも可能となる。このようにすれば、塗装の有無、材質違いなど異なる条件の試験部に対し、実機の環境において、どの程度の腐食が生じるかを把握することができる。
【0128】
(第7実施形態)
つぎに、第7実施形態について図15から図16を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0129】
図15から図16に示すように、第7実施形態の試験装置10Fは、試験片を兼ねる1個の治具11Fを備える。治具11Fは、伝熱管1の母管2に対し、ワイヤ12で取り付けられている。なお、この例では、板状試験片20(図1)が省略されているが、治具11Fに板状試験片20が保持されてもよい。
【0130】
第7実施形態において、治具11Fが変形部となっている。さらに、この治具11Fは、その一部が試験部となっている。治具11Fは、実機が有する複数の部材の間の狭隘部Nを通過可能となっている。図15の例では、2本の伝熱管1の間が狭隘部Nとなっている。狭隘部Nとは、少なくとも治具11Fの幅(直径)よりも狭い箇所を示す。
【0131】
例えば、図16に示すように、伝熱管1の背面側は、ユーザの手が届かず、治具11Fを設置し難い位置となっている。まず、ユーザは、手が届く位置である伝熱管1の正面側にワイヤ12で治具11Fを取り付ける。ワイヤ12は、伝熱管1の母管2に括り付けられ、この母管2を中心軸として治具11Fを背面側に回転(移動)させることができる。
【0132】
ここで、図15に示すように、2本の伝熱管1の間の狭隘部Nを治具11Fが通過するときに、ユーザは、治具11Fを上下方向に延ばし、治具11Fの幅(直径)が狭隘部Nよりも狭くなるように変形させる。このようにすれば、治具11Fが狭隘部Nを通過し、伝熱管1の背面側に移動させることができる。
【0133】
第7実施形態では、試験部の機能と変形部の機能の双方を1つの治具11Fに持たせることができる。さらに、治具11Fが狭隘部Nを通過できるようになり、設置が難しい部材の裏面に試験装置10Fを設置することができる。
【0134】
排熱回収ボイラの複数の伝熱管1は、極めて密集して配置されている。従来、ユーザがアクセス可能な伝熱管1の正面側への試験片の設置は検討されてきたが、昨今、伝熱管1の正面側、背面側などの同じ伝熱管1でも、ガスの当たる側、流れ去る側での腐食性の違いなどが確認されている。そこで、第7実施形態では、治具11F(試験部)の形状を実機の伝熱管1の狭隘部Nよりも狭く、または、小さくすることで、ユーザが容易にアクセスできない箇所、かつ伝熱管1が障害となり設置が難しい箇所への設置が可能となる。このようにすれば、伝熱管1の広範囲の腐食性の把握が可能となる。
【0135】
また、治具11Fが試験部の機能と伝熱管1の形状の変化に対する追従性を有し、かつ、狭隘部Nを通過可能であることにより、伝熱管1の管群奥行き方向への設置が可能となる。これにより、伝熱管1の周方向の腐食性の違い、奥行き列の腐食程度も把握が可能となる。
【0136】
(第8実施形態)
つぎに、第8実施形態について図17を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0137】
図17に示すように、第8実施形態の試験装置10Gは、試験片を兼ねる1個の治具11Gを備える。治具11Gは、2本の伝熱管1の間に取り付けられる。なお、この例では、板状試験片20(図1)が省略されているが、治具11Gに板状試験片20が保持されてもよい。
【0138】
第8実施形態において、治具11Gが変形部となっている。さらに、この治具11Gは、その一部が試験部となっている。ここで、治具11Gの一部は、2本の伝熱管1の表面に生じる腐食環境を、それぞれの伝熱管1と共有する共有位置に設置される。例えば、コイルバネ状を成す治具11Gのそれぞれのターンにおいて、左側の端部と右側の端部のそれぞれが、左右のそれぞれの伝熱管1のフィン3の隙間Gに入り込んでいる。つまり、少なくとも2つの試験部のそれぞれが、一方と他方の伝熱管1の共有位置に設置されている。
【0139】
第8実施形態では、試験部の機能と変形部の機能の双方を1つの治具11Gに持たせることができる。さらに、複数の伝熱管1の腐食の程度を1つの治具11Gで把握することができる。また、一度の治具11Gの設置で、多くの点数の腐食状況の把握が可能となる。また、隣接した伝熱管1同士の腐食の有無の把握が可能となる。さらに、伝熱管1の周方向の腐食性の違い、奥行き列の腐食の違いの把握も可能となる。
【0140】
以上、本発明が第1実施形態から第8実施形態に基づいて説明されているが、いずれかの実施形態において適用された構成が他の実施形態に適用されてもよいし、各実施形態において適用された構成が組み合わされてもよい。
【0141】
なお、前述の実施形態は、実機として排熱回収ボイラを例示しているが、実機は、プラントに設置される排熱回収ボイラ以外の他の構造物でもよい。
【0142】
なお、前述の実施形態は、1個の試験装置10が伝熱管1に取り付けられる態様を例示しているが、その他の態様でもよい。例えば、2個以上の試験装置10が伝熱管1に取り付けられてもよい。また、隣接して並ぶ複数の伝熱管1のそれぞれに試験装置10が取り付けられてもよい。
【0143】
1つの試験装置10が備える板状試験片20は1枚でもよい。また、1つの試験装置10が備える治具11は複数個でもよい。また、1つの試験装置10が備える模擬試験片30は複数個でもよい。
【0144】
変形部は、弾性変形可能な部分であり、かつ少なくとも一部が湾曲または屈曲された部分である。また、変形部と試験部とが、同一の部材の同一の部分であってもよい。
【0145】
なお、治具11の形状は、コイルバネ状のみならず、その他の形状でもよい。例えば、治具11が、板バネ、波状板バネ、さらバネなどの各種のバネ形状でもよいし、治具11が、滑移動可能な可動部を有する構造でもよい。
【0146】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、部材の表面に生じる腐食環境を部材と試験部とで共有する共有位置に、試験部を設置することにより、実機の内部の部材が晒される環境における腐食の程度を部材に過大な負担を与えずに把握することができる。
【0147】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態またはその変形は、発明の範囲と要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0148】
1…伝熱管、2…母管、3…フィン、4…フレーム、10,10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G…試験装置、11,11A,11B,11C,11D,11E,11F,11G…治具、12…ワイヤ、13…接続具、14…塗装部、20…板状試験片、21…孔部、30…模擬試験片、31…管部、32…円盤部、40…腐食箇所、41…腐食生成物、G…隙間、N…狭隘部。
【要約】
【課題】実機の内部の部材が晒される環境における腐食の程度を部材に過大な負担を与えずに把握する。
【解決手段】実機環境腐食性評価方法は、評価の対象となる実機の内部の任意の箇所に設置される1つ以上の試験部20と、試験部20を設置した状態で実機の形状の変化に追従して変形可能な1つ以上の変形部11と、を備える試験装置10を用いて行う方法であり、実機を構成する1つ以上の部材1の表面に接触または近接する位置であり、かつ部材1の表面に生じる腐食環境を部材1と試験部20とで共有する共有位置に、試験部20を設置し、試験部20を設置してから評価の対象となる期間が経過した後に、試験部20を取り外し、取り外した試験部20の表面の腐食を解析した結果に基づいて、部材1の表面に生じる腐食性の評価を行う。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17