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特許7516630温度応答が改善されたカテーテルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】温度応答が改善されたカテーテルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20240708BHJP
【FI】
A61B18/14
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023118099
(22)【出願日】2023-07-20
(62)【分割の表示】P 2018199798の分割
【原出願日】2018-10-24
(65)【公開番号】P2023126608
(43)【公開日】2023-09-07
【審査請求日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】15/793,433
(32)【優先日】2017-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・トーマス・ビークラー
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-100709(JP,A)
【文献】特開2015-226768(JP,A)
【文献】特開平09-140801(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0257130(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0265931(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/3205 - A61B 17/3207
A61B 18/12 - A61B 18/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用プローブの製造方法において、
電気エネルギーを伝達するための導電体(79)を有するルーメン(78)を含む、挿入管(42)を用意することと、
前記挿入管(42)の遠位端に導電性キャップ(70)を取り付け、かつ前記導電性キャップ(70)を前記導電体(79)に電気的に結合させることであって、前記導電性キャップ(70)が、内部に複数の長手方向のボア(72)を有する側壁(74)を含む、ことと、
前記長手方向のボア(72)の各々に一対の熱電対(48)を配置することであって、
前記長手方向のボアのうちの対応するボア(72)に沿って延在するコンスタンタンワイヤ(82)の第1の側の露出した領域と、前記コンスタンタンワイヤ(82)の前記第1の側に隣接して延在する第1の銅ワイヤ(84)の露出した領域との間の第1の接合部(94)をはんだ付けすることと、
前記コンスタンタンワイヤ(82)の第2の側の露出した領域と、前記コンスタンタンワイヤ(82)の前記第2の側に隣接して延在する第2の銅ワイヤ(86)の露出した領域との間の第2の接合部(96)をはんだ付けすることと、
を含み、前記コンスタンタンワイヤ(82)は、前記第1及び第2の銅ワイヤ(84、86)からそれぞれ絶縁材(90)によって隔てられおり、前記第1の側の露出した領域、及び前記第1の銅ワイヤ(84)の露出した領域は、前記コンスタンタンワイヤ(82)と前記第1の銅ワイヤ(84)とが前記絶縁材(90)によって隔てられていない領域であり、前記第2の側の露出した領域、及び前記第2の銅ワイヤ(86)の露出した領域は、前記コンスタンタンワイヤ(82)と前記第2の銅ワイヤ(86)とが前記絶縁材(90)によって隔てられていない領域である、ことと、
前記熱電対(48)と前記導電性キャップ(70)との間に導電性の接触がありながらも、前記長手方向のボア(72)内の前記熱電対(48)を固定するために、導電性セメント(98)で前記長手方向のボア(72)を充填し、前記熱電対(48)を前記導電性セメント(98)中に埋め込むことと、を含む、製造方法。
【請求項2】
前記導電性セメントが熱伝導性である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記導電性キャップがキャップ熱伝導度を有し、前記導電性セメントが前記キャップ熱伝導度の少なくとも25%のセメント熱伝導度を有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記一対の熱電対のうち第1の熱電対が前記コンスタンタンワイヤと前記第1の銅ワイヤとの間の前記第1の接合部によって形成されており、前記一対の熱電対のうち第2の熱電対が前記コンスタンタンワイヤと前記第2の銅ワイヤとの間の前記第2の接合部によって形成されている、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記コンスタンタンワイヤ及び前記第1及び第2の銅ワイヤが、前記絶縁材によって互いに接続されている、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第1の熱電対が、前記長手方向のボアのうち所与のボアにおいて遠位位置に配置され、前記第2の熱電対が、前記所与のボアにおいて近位位置に配置される、請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
前記電気エネルギーが、患者の身体内の組織をアブレーションするための高周波エネルギーを含む、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね、侵襲性医療用装置に関し、具体的には、身体内の組織をアブレーションするために使用されるプローブに関連する。
【背景技術】
【0002】
心臓内の低侵襲的なアブレーションは、各種不整脈の治療の選択肢である。このような治療を実施するために、医師は、典型的には、血管系を介して心臓にカテーテルを挿入し、異常な電気活動の区域においてカテーテルの遠位端を心筋組織と接触させ、続いて、組織壊死を生じさせるために、遠位端の又は遠位端の近傍の1つ又は2つ以上の電極に通電する。壊死を生じさせながら、外傷を回避するために組織の温度を推定することが重要である。
【0003】
以下の参考文献は、温度の測定に関係する。
【0004】
米国特許出願第2014/0257130号(Caoら)は、アブレーションカテーテル用の動力付きプルワイヤ設計について記載している。この出願では、カテーテルの遠位端領域が熱電対接合部を有し得ると述べている。
【0005】
米国特許出願第2003/0176816号(Maguireら)は、実質的に組織の円周方向の領域に沿って損傷を形成するための組織アブレーションカテーテルについて記載している。このカテーテルは、アブレーションされている組織の温度をモニタリングするための1つ又は2つ以上のセンサを備える。
【0006】
米国特許出願第2002/0087156号(Maguireら)は、実質的に組織の円周方向の領域に沿って損傷を形成するための組織アブレーションカテーテルの構築について記載し、ここで、アブレーションされている組織の温度をモニタリングためにセンサが使用されている。
【0007】
米国特許出願第2011/0224573号(Bar-Talら)は、プローブ、並びに外側表面及びプローブに接続される内側表面を有する電極について記載している。装置はまた、電極の外側表面から突出する温度センサを含み、これは体腔の温度を測定するように構成されている。
【0008】
米国特許第5,800,432号(Swanson)は、ダイオードを用いてアブレーション電極を能動的に冷却するシステム及び方法について記載している。冷却されるアブレーション電極は、実際の組織温度を感知するための少なくとも1つの温度感知素子を担持すると述べられている。
【0009】
米国特許出願第2011/0230906号(Modesittら)は、組織において管を形成するためのキットについて記載している。この出願では、いくつかの変形形態において、温度センサを用いて組織の位置を特定することができると述べられている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態は、
患者の身体内に挿入されるように構成された遠位端を有し、かつ電気エネルギーを伝達するための導電体を有するルーメンを含む、挿入管と、
挿入管の遠位端に取り付けられ、かつ導電体に電気的に結合した導電性キャップであって、内部に複数の長手方向のボアを有する側壁からなる、導電性キャップと、
長手方向のボアの各々に配置された複数の熱電対と、
熱電対と導電性キャップとの間に導電性の接触を形成させながらも、ボア内の熱電対を固定するために少なくとも部分的に長手方向のボアを充填する導電性セメントと、を含む、医療用プローブを提供する。
【0011】
開示する実施形態では、導電性セメントは、熱伝導性である。導電性キャップは、キャップ熱伝導度を有し得、導電性セメントは通常、キャップ熱伝導度の少なくとも25%のセメント熱伝導度を有する。
【0012】
更に開示する実施形態では、複数の熱電対は、第2の組成物を有する多数の第2の導電体に各接合部で電気的に接続される第1の組成物を有する第1の導電体からなる。一実施形態では、第1の導電体及び多数の第2の導電体は、絶縁材によって互いに接続されている。
【0013】
更に開示する実施形態では、複数の熱電対は、所与の長手方向のボアにおいて遠位位置に配置される第1の熱電対と、所与の長手方向のボアにおいて近位位置に配置される第2の熱電対とを含む。
【0014】
一般に、電気エネルギーは、患者の身体内の組織をアブレーションするための高周波エネルギーを含む。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、方法であって、
患者の身体内に挿入されるように構成された遠位端を有し、かつ電気エネルギーを伝達するための導電体を有するルーメンを含む、挿入管を設けることと、
挿入管の遠位端に導電性キャップを取り付け、かつそのキャップを導電体に電気的に結合させることであって、キャップが内部に複数の長手方向のボアを有する側壁からなる、ことと、
長手方向のボアの各々に複数の熱電対を配置することと、
熱電対と導電性キャップとの間に導電性の接触がありながらも、ボア内の熱電対を固定するために、導電性セメントで少なくとも部分的に長手方向のボアを充填することと、を含む方法が更に提供される。
【0016】
本発明は、以下の発明を実施するための形態を図面と併せて考慮すると、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態による、心臓内アブレーションのためのシステムの概略的な図である。
図2A】本発明の実施形態による、カテーテルキャップの概略的な図である。
図2B】本発明の実施形態による、図2Aのカテーテルキャップの概略的な端面図である。
図2C】本発明の実施形態による、図2A及び図2Bのカテーテルキャップの概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
概論
心臓内アブレーション手術は、組織及びその付近における、急速な温度変化、及び不均一な温度分布を特徴とする。したがって、アブレーションカテーテルの先端部におけるセンサによって測定される温度は、組織内の実際の現在温度を正確に反映しないことがある。発明者らは、このことが、低接触力及び低焼灼力でアブレーションが実施されるときに起こることを発見した。これらの場合において、センサは組織ではなく血液プールの温度を読んでいると発明者らは考えている。
【0019】
以下に記載される本発明の実施形態は、正確な組織温度評価をもたらす、温度センサとして機能する埋め込まれた熱電対有するアブレーション電極を提供する。このような電極は典型的には、心臓カテーテルなどの、侵襲性プローブの挿入管の遠位先端部に取り付けられた導電性キャップを含む。通常、冷却流体流は、治療中に組織に灌注するために、電極内の穿孔の配列を通じて流れ出る。
【0020】
熱電対は、電極内部のボア中の熱伝導性セメント内に埋め込まれ、その結果、電極の外表面に近接した様々な位置にある。したがって、熱電対は外表面に近接し、外表面と熱連通する。このように、熱電対は先端の電極の様々な位置における複数の温度読み取り値をもたらす。
【0021】
一般に、最も高温の温度読み取り値をもたらす熱電対は、アブレーションされている組織と最適な接触状態にあるものであり、この熱電対は通常、キャップの最も遠位にある。この熱電対によって測定される温度は、実際の組織温度とともに直線的に変化する。(電極内の穿孔を通じた冷却流体の流れは、組織と強く接触させている領域で最も弱く、これらの領域のセンサは、典型的に最も高温の温度読み取り値をもたらす。)したがって、この熱電対からの最も高温な読み取り値は、過度に組織を損傷させずに所望の治療効果を得るために、組織温度をモニタリングし、アブレーション手術の適用電力及び持続時間を制御するために使用され得る。あるいは、又は加えて、カテーテル先端部の領域にわたる温度のマップをもたらすために、複数の熱電対の温度読み取り値が組み合わされ、補間される。
【0022】
熱電対を埋め込むのに使用されるセメントが熱伝導性であることに加えて、このセメントはまた、導電性となるように構成される。セメントを導電性にすることによって、典型的には、熱伝導度の値を高くすることができる。更に、設計によって、熱電対が互いに、及び導電性キャップに本質的にゼロ抵抗で電気的に接続されることが保証される。これにより、ばらつきのない電気的仕様を有するための熱電対読み取り回路が可能になる(すなわち、全ての熱電対が互いに、及び導電性キャップに電気的に接続される)。もし設計などによって非導電性エポキシが使用され、かつ先端の熱電対がボアの底に達していないならば、この熱電対は、熱電対読み取り回路において意図しない結果をもたらす可能性のある導電性キャップから電気的に絶縁されるであろう。熱電対をキャップ及び結果として互いに意図的に短絡させることによって、空孔の内壁に短絡する可能性を排除するために、はんだ接合部を電気的に絶縁する必要もなくなる。
【0023】
開示される実施形態は特に、心臓内カテーテル、及びアブレーション手術に関連するが、本発明の原理は、実質的にあらゆる種類の侵襲性熱治療において使用するために、必要であれば変更を加えて、他の種類のプローブに同様に適用され得る。
【0024】
詳細な説明
図1は、本発明の実施形態による、心臓アブレーション療法のためのシステム20の概略的な図である。操作者28(例えば、治療的介入専門の心臓医)は、患者26の血管系を通じて患者の心臓24の心室に、カテーテル22を挿入する。例えば、心房細動を処置するため、操作者はカテーテルを左心房に前進させ、アブレーションすることになる心筋組織とカテーテルの遠位端30とを接触させてもよい。
【0025】
カテーテル22はその近位端において、所望の治療を適用及びモニタリングするために、操作者28によって制御されるコンソール32に接続される。コンソール32は、標的組織をアブレーションするために、カテーテル22を介して遠位端30に電力を供給するRFエネルギー発生器34を備える。モニタリング回路36は、以下のように、遠位端の温度センサの出力を処理することによって、遠位端30の組織の温度を追跡する。灌注ポンプ38は、カテーテル22を介して灌注遠位端30に、食塩水など冷却流体を供給する。コンソール32は、モニタリング回路36によりもたらされた情報に基づいて、RFエネルギー発生器34により適用される電力、及び/又はポンプ38によってもたらされる流体流を、自動的に又は操作者28による入力に応答して制御してもよい。
【0026】
システム20は、例えば、Biosense Webster Inc.(Irvine,CA)によって製造される統合されたマッピング及びアブレーションシステムであるCARTO(登録商標)に基づいてもよい。このシステムは、カテーテル22のナビゲーション及び制御を支援する豊富な機能を提供する。しかしながら、モニタリング回路36、及びコンソール32の機能のモニタリング及び制御の詳細を含むこれらのシステム機能は一般的に、本特許出願の範囲を超えている。
【0027】
図2A図2Cは、本発明の実施形態による、カテーテル22の遠位端30を概略的に例示する。挿入管42は、カテーテルの長手に沿って延在し、その遠位端において導電性キャップ70に接続される。図2Aはキャップ70及び管42の一部の概略的な図であり、図2Bは、キャップの内側を示す概略的端面図であり、図2Cは、図2Bの線IIC-IICに沿ってとった断面図である。
【0028】
典型的に、挿入管42は、可撓性の生体適合性ポリマーを含むが、キャップ70は、例えば、金、パラジウム、プラチナ又はこれらの金属の合金などの、アブレーション電極として機能するために好適な生体適合性金属を含む。キャップ70は、キャップの外側表面からキャップ内の内部空洞76へと開口している灌注開口部46の列によって穿孔される。典型的な心臓内アブレーション用途のため、キャップ70の直径は約2.5mmであり得、おおよその範囲として0.05~0.2mmの直径の開口部46を備える。上記の寸法及び材料は、単に例として記載されるが、より大きい又はより小さい寸法の特徴を有する好適な材料が、同様に使用されてもよい。
【0029】
空洞76は、挿入管42の長手を通って延びるルーメン78と流体連通している。このルーメンはその近位端において灌注ポンプ38に連結され、これにより灌注流体を空洞76に送達し、ここから流体流が開口部46を通じて流れる。導電体79は、RF発生器34から、挿入管42のルーメン78を通じてキャップ70へと電気エネルギーを伝達し、よって、キャップにエネルギー印加して、キャップが接触する心筋組織をアブレーションする。アブレーション中、開口部46を通じて流れ出る流体は、治療中に組織に灌注される。
【0030】
以下により詳細に説明される温度センサ48は、カテーテルの遠位先端部の周囲に軸方向及び周方向の両方に配列された位置において、導電性キャップ70内に取り付けられる。この実施例において、キャップ70は、6つのセンサを含み、一群は、先端部の末端近くの遠位位置にあり、他方の群はより近位の位置にある。この分布は単に例として示されるが、より多い又はより少ない数のセンサが、キャップ内の任意の好適な位置に取り付けられてもよい。本明細書における説明において、センサ48は、熱電対を含むことが想定され、熱電対48とも称される。
【0031】
キャップ70は、温度センサ48のための十分なスペースを提供するために約0.4mm厚の相対的に厚い側壁74を含み、センサ48は側壁74内の長手方向のボア72の内部に取り付けられている。説明を明瞭にするために、図2A及び図2Bはボア72のみを示し、ボア内部のセンサ、すなわち、センサがどのように構成されているかは示していない。図2Cは1つのボア72内に取り付けられた2つのセンサ48を示し、本明細書に記載される例においては、他の2つのボア72の各々は、その中に取り付けられた2つのセンサを有し、各ボアの2つのセンサは、図2Cの2つのセンサと実質的に類似している。センサの構造が以下に記載される。
【0032】
所与のボア72内の一対のセンサ48は、1つの遠位センサ48と1つの近位センサ48とを含む。センサ48の各対は、コンスタンタンワイヤ82及び2本の銅ワイヤ84、86を含むトリフィラーアセンブリ80から形成される。これらワイヤは、それらがトリフィラーアセンブリを形成するようにワイヤを物理的に接続する絶縁材90、通常はワイヤをコーティングする薄いエナメルによって隔てられる。この図では、近位センサ48は、銅ワイヤ84及びコンスタンタンワイヤ82の隣り合う領域を露出させ、この2つの露出した領域をはんだビード94ではんだ付けすることによって、銅-コンスタンタン熱電対接合部(すなわち、第1の接合部)として形成されている。遠位センサ48は、銅ワイヤ86及びコンスタンタンワイヤ82の隣り合う領域を露出させ、この2つの露出した領域をはんだビード96ではんだ付けすることによって、銅-コンスタンタン熱電対接合部(すなわち、第2の接合部)として形成されている。
【0033】
センサの対が形成されたら、ボア72は、熱伝導性及び導電性のセメント98で充填される。セメント98は通常、エポキシ樹脂を含み、一実施形態では、EPOXY TECHNOLOGY,INC(Billerica、MA)によって製造されたEpo-tek EK2000エポキシ樹脂が使用される。アセンブリ80は、遠位センサ48がボアの底に達するように充填されたボアに挿入され、エポキシはオーブン内で硬化させられる。硬化すると、各センサ48は、露出したはんだビード94又はビード96を含むためセメント98中に埋め込まれ、壁74と熱的及び電気的に接触する。トリフィラーアセンブリ80を用いるセンサ48を製造することによって、それぞれのボア72内部の複数のセンサの構築が容易になることが理解されよう。
【0034】
一実施形態では、キャップ80は、約40W/(m・K)の熱伝導度を有する、80%Pdと20%Ptの合金である。代替的実施形態では、キャップ80は、約32W/(m・K)の熱伝導度を有する、90%Ptと10%Irの合金である。一般に、硬化セメントの熱伝導度は、キャップ80の熱伝導度の少なくとも25%になるように構成される。
【0035】
上記を実施することにより、遠位センサ48、すなわち図2Cの下方のセンサが、キャップ70の遠位端に極めて近接することが可能になる。これは、センサが先端壁と熱的に接触するという事実と合わせて、センサ読み取り値と、先端壁が接触する血液又は組織などの物質の温度とが合致することを意味する。
【0036】
一部の実施形態では、上記で使用される熱伝導性及び導電性エポキシの代わりに、窒化ホウ素及び/又は合成ダイヤモンドでドープされたエポキシなど、熱伝導性のみのエポキシが使用される。
【0037】
典型的には、遠位端30は、他の機能構成要素を含み、これらは、本開示の範囲外であり、したがって煩雑さをなくすため省略されている。例えば、カテーテルの遠位端は、ステアリングワイヤ、並びに位置センサ及び/又は接触力センサなど、他の種類のセンサを含む場合がある。これらの種類のセンサを含むカテーテルは、例えば米国特許出願公開第2009/0138007号に記載されている。
【0038】
上に述べた実施形態は例として挙げたものであり、本発明は上記に具体的に示し、説明したものに限定されない点は理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、本明細書の上文に記載された様々な特徴の組み合わせ及び部分組み合わせの両方、並びに前述の説明を一読すると、当業者が想起すると思われる、先行技術に開示されていないそれらの変形及び改変を含む。
【0039】
〔実施の態様〕
(1) 患者の身体内に挿入されるように構成された遠位端を有し、かつ電気エネルギーを伝達するための導電体を有するルーメンを含む、挿入管と、
前記挿入管の前記遠位端に取り付けられ、かつ前記導電体に電気的に結合した導電性キャップであって、内部に複数の長手方向のボアを有する側壁を含む、導電性キャップと、
前記長手方向のボアの各々に配置された複数の熱電対と、
前記熱電対と前記導電性キャップとの間に導電性の接触を形成させながらも、前記ボア内の前記熱電対を固定するために少なくとも部分的に前記長手方向のボアを充填する導電性セメントと、を含む、医療用プローブ。
(2) 前記導電性セメントが熱伝導性である、実施態様1に記載のプローブ。
(3) 前記導電性キャップがキャップ熱伝導度を有し、前記導電性セメントが前記キャップ熱伝導度の少なくとも25%のセメント熱伝導度を有する、実施態様1に記載のプローブ。
(4) 前記複数の熱電対が、第2の組成物を有する多数の第2の導電体に各接合部で電気的に接続される第1の組成物を有する第1の導電体を含む、実施態様1に記載のプローブ。
(5) 前記第1の導電体及び前記多数の第2の導電体が、絶縁材によって互いに接続されている、実施態様4に記載のプローブ。
【0040】
(6) 前記複数の熱電対が、所与の長手方向のボアにおいて遠位位置に配置される第1の熱電対と、前記所与の長手方向のボアにおいて近位位置に配置される第2の熱電対とを含む、実施態様1に記載のプローブ。
(7) 前記電気エネルギーが、前記患者の前記身体内の組織をアブレーションするための高周波エネルギーを含む、実施態様1に記載のプローブ。
(8) 患者の身体内に挿入されるように構成された遠位端を有し、かつ電気エネルギーを伝達するための導電体を有するルーメンを含む、挿入管を設けることと、
前記挿入管の前記遠位端に導電性キャップを取り付け、かつ前記キャップを前記導電体に電気的に結合させることであって、前記キャップが内部に複数の長手方向のボアを有する側壁を含む、ことと、
前記長手方向のボアの各々に複数の熱電対を配置することと、
前記熱電対と前記導電性キャップとの間に導電性の接触がありながらも、前記ボア内の前記熱電対を固定するために、導電性セメントで少なくとも部分的に前記長手方向のボアを充填することと、を含む、方法。
(9) 前記導電性セメントが熱伝導性である、実施態様8に記載の方法。
(10) 前記導電性キャップがキャップ熱伝導度を有し、前記導電性セメントが前記キャップ熱伝導度の少なくとも25%のセメント熱伝導度を有する、実施態様8に記載の方法。
【0041】
(11) 前記複数の熱電対が、第2の組成物を有する多数の第2の導電体に各接合部で電気的に接続される第1の組成物を有する第1の導電体を含む、実施態様8に記載の方法。
(12) 前記第1の導電体及び前記多数の第2の導電体が、絶縁材によって互いに接続されている、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記複数の熱電対が、所与の長手方向のボアにおいて遠位位置に配置される第1の熱電対と、前記所与の長手方向のボアにおいて近位位置に配置される第2の熱電対とを含む、実施態様8に記載の方法。
(14) 前記電気エネルギーが、前記患者の前記身体内の組織をアブレーションするための高周波エネルギーを含む、実施態様8に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図2C