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特許7516652重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型に中和活性を有するペプチド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型に中和活性を有するペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20240708BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20240708BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20240708BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20240708BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
C07K7/08
A61K38/08
A61K38/10
A61P31/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023502628
(86)(22)【出願日】2021-07-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-15
(86)【国際出願番号】 KR2021009080
(87)【国際公開番号】W WO2022015069
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】10-2020-0088076
(32)【優先日】2020-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0030604
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510271129
【氏名又は名称】ケアジェン カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CAREGEN CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン ヨンジ
(72)【発明者】
【氏名】キム ウンミ
(72)【発明者】
【氏名】リ ウンジ
(72)【発明者】
【氏名】リ ヨンミン
(72)【発明者】
【氏名】カン ハンア
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ミンキョン
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-508490(JP,A)
【文献】特表2016-520587(JP,A)
【文献】特開平10-262668(JP,A)
【文献】特表2008-529504(JP,A)
【文献】conidial yellow pigment biosynthesis polyketide synthase, partial [Pyricularia oryzae Y34],Database Genbank [online],2015年03月19日,Accession No.ELQ38032.1, [検索日 2023.12.21],<https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/ELQ38032.1/>
【文献】hypothetical protein H5410_048386 [Solanum commersonii],Database GenBank [online],2021年05月04日,Accession No.KAG5587952.1 [検索日 2023.12.21],<https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/kag5587952.1>
【文献】MAG: polyribonucleotide nucleotidyltransferase [Ignavibacteriales bacterium] ,Database GenBank [online] ,2020年12月21日,Accession No.MBI3586173.1, [検索日 2023.12.21],<https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/mbi3586173.1>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 7/00-7/66
A61K 38/00-38/58
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(Severe acute respiratory syndrome coronavirus2,SARS-CoV-2)のスパイクタンパク質のRBD(Receptor binding domain)を特異的に認知し、配列番号1、配列番号2、配列番号5及び配列番号6の配列より構成された群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列からなる、ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型の表面のスパイクタンパク質のRBD(Receptor binding domain)に結合して宿主細胞の細胞膜受容体とスパイクタンパク質の結合を抑制するものである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2,SARS-CoV-2)のスパイクタンパク質のRBD(Receptor binding domain)を特異的に認知し、配列番号1から配列番号6の配列より構成された群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列からなるペプチドを含む重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(Severe acute respiratory syndrome coronavirus2,SARS-CoV-2)感染の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項4】
前記組成物は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型の表面のスパイクタンパク質のRBD(Receptor binding domain)に結合して宿主細胞の細胞膜受容体とスパイクタンパク質の結合を抑制するものである、請求項に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記薬学的組成物は、薬剤学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤をさらに含むものである、請求項に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記薬学的組成物は、経口用製剤、注射用製剤又は外用剤の形態に剤形化されるものである、請求項に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2,SARS-CoV-2)のスパイクタンパク質のRBD(Receptor binding domain)を特異的に認知し、配列番号1から配列番号6の配列より構成された群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列からなるペプチドを含む重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(Severe acute respiratory syndrome coronavirus2,SARS-CoV-2)検出用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(Severe acute respiratory syndrome coronavirus2,SARS-Cov-2)に中和活性を有するペプチド及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(Severe acute respiratory syndrome coronavirus2,SARS-Cov-2)は、一本鎖RNA(single-stranded RNA)ウイルスでコロナウイルス亜科に属し、2019年12月中国の武漢で発生した原因不明の肺炎患者により初めて原因ウイルスが発見された。重症急性呼吸器症候群の感染症と混同しないように、世界保健機関(WHO)は「2019年コロナウイルス感染症ウイルス」又は「2019年コロナウイルス感染症類索ウイルス」と称したりもする。
【0003】
2019年12月から2020年7月初まで全世界214ヶ国で1,157万名の感染患者が発生し、このうち537,138人が死亡し、致死率は4.64に達するものと知られている。SARS-CoV-2の臨床的症状は、発熱を伴った呼吸器症状が主に現われ、主な脆弱対象は60代以上の基底基礎疾患及び免疫疾患などを患っている高齢者である。以前のウイルスとは異なる力強い伝染性、急速な症状悪化を見せ、最初の発生報告後の3ヶ月余りの2020年3月にWHOでは世界的大流行、パンデミックを宣言した。
【0004】
いまだに特別な治療剤はないが、抗ウイルス剤に関する研究が進められ、RNAポリメラーゼ抑制剤であるレムデシビル、マラリア治療剤であるクロロキン、抗レトロヒト免疫不全ウイルス1型プロテアーゼ抑制剤であるロピナビル/リトナビルなどの抗ウイルス治療剤が細胞水準においてSARS-CoV-2の抑制効果を示すものと報告された。しかし、現在まで効果があると知られている治療剤は、実際の臨床ではその効果が僅かであるか、多様な副作用を引き起こすことがあるため問題となっている。
【0005】
ここに、本発明者達は、SARS-CoV-2を抑制することができる新たな治療剤を開発するために鋭意努力した結果、本発明のペプチドがコロナウイルス感染症の予防、改善又は治療に有用に用いられ得ることを確認し、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一目的は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(Severe acute respiratory syndrome coronavirus2,SARS-CoV-2)のタンパク質又はその一部を特異的に認知するペプチドを提供することにある。
【0007】
本発明の他の一目的は、SARS-CoV-2感染の予防又は治療用組成物を提供することにある。
【0008】
本発明のまた他の一目的は、SARS-CoV-2感染の予防又は治療方法を提供することにある。
【0009】
本発明のまた他の一目的は、SARS-CoV-2感染の予防又は治療に用いるための組成物を提供することにある。
【0010】
本発明のまた他の一目的は、SARS-CoV-2検出用組成物を提供することにある。
【0011】
本発明のまた他の一目的は、SARS-CoV-2を検出する方法を提供することにある。
【0012】
本発明のまた他の一目的は、SARS-CoV-2の検出に用いるための組成物を提供することにある。
【0013】
本発明のまた他の一目的は、SARS-CoV-2感染又は疾患を診断するためのキットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このため、本発明の一側面は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(Severe acute respiratory syndrome coronavirus2,SARS-CoV-2)のタンパク質又はその一部を特異的に認知するペプチドを提供する。
【0015】
また、本発明の他の一側面は、前記ペプチドを含むSARS-CoV-2感染の予防又は治療用組成物を提供する。
【0016】
また、本発明のまた他の一側面は、前記ペプチド又は前記ペプチドを含む組成物を個体に投与する段階を含むSARS-CoV-2感染の予防又は治療方法を提供する。
【0017】
また、本発明のまた他の一側面は、SARS-CoV-2感染の予防又は治療に用いるための、前記ペプチド又は前記ペプチドを含む組成物を提供する。
【0018】
また、本発明の他の一側面は、前記ペプチドを含むSARS-CoV-2検出用組成物を提供する。
【0019】
また、本発明のまた他の一側面は、前記ペプチド又は前記ペプチドを含む組成物を生物学的サンプルと接触させる段階を含むSARS-CoV-2の検出方法を提供する。
【0020】
また、本発明のまた他の一側面は、SARS-CoV-2の検出に用いるための、前記ペプチド又は前記ペプチドを含む組成物を提供する。
【0021】
本発明のまた他の一側面は、SARS-CoV-2の感染又は疾患を診断するためのキットを提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の配列番号1から配列番号6のアミノ酸配列より構成された群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドは、SARS-CoV-2の表面のスパイクタンパク質に結合してSARS-CoV-2を中和させることにより、ウイルスと宿主細胞の膜融合を阻害する効果があるので、SARS-CoV-2感染を予防、治療又は診断する用途として用いられ得る。
【0023】
但し、本発明の効果は、前記で言及した効果に制限されず、言及されなかったまた他の効果は、下記の記載から当業者に明確に理解され得るであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の配列番号1から6のペプチドがSARS-CoV-2スパイクタンパク質のRBDに結合する能力をELISAで確認した結果を示したグラフである。
図2】本発明の配列番号1から6のペプチドが、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のRBDが宿主細胞のアンジオテンシン変換酵素2(Angiotensin-converting enzyme2,ACE2)タンパク質に結合することを阻害する活性をELISAで確認した結果を示したグラフである。
図3】ヒト肺癌細胞株A549の細胞表面に発現するACE2に対するRBDの結合を本発明の配列番号1から4のペプチドが阻害させる能力があるのかをウエスタンブロックで確認した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
本発明の一側面は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(Severe acute respiratory syndrome coronavirus2,SARS-CoV-2)のタンパク質又はその一部を特異的に認知し、配列番号1から配列番号6の配列より構成された群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドを提供する。
【0027】
本明細書において、用語「ペプチド」は、ペプチド結合によりアミノ酸残基が互いに結合して形成された線状又は環状の分子を意味する。前記ペプチドの製作は、本技術分野において公知の通常の生物学的又は化学的合成方法により達成され得ることであり、一例として、固相合成技術(solid-phase synthesis techniques)のような方法により達成され得る。
【0028】
前記「ペプチド」は、機能に影響を及ぼさない範囲内で、アミノ酸残基の欠失、挿入、置換又はこれらの組み合わせにより異なる配列を有するアミノ酸の変異体、又は断片であってよい。前記ペプチドの活性を全体的に変更させないアミノ酸交換は本技術分野に公知となっている。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)などに変形されてよい。したがって、本発明は、配列番号1から6より構成された群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドと実質的に同一のアミノ酸配列を有するペプチド及びその変異体、又はその活性断片を含む。前記実質的に同一のタンパク質とは、前記配列番号1から6より構成された群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列と75%以上、好ましくは80%以上、例えば、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、又は99%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を意味するが、これに限定されず、75%以上のアミノ酸配列の相同性を有して同一の活性を有するならば本発明の範囲に含まれる。また、本発明のペプチドは、標的化配列、タグ(tag)、標識された残基、半減期又はペプチド安定性を増加させるための特定の目的で製造されたアミノ酸配列をさらに含むことができる。
【0029】
また、より良い化学的安定性、強化された薬理特性(半減期、吸収性、力価、効能など)、変更された特異性(例えば、広範囲な生物学的活性スペクトラム)、減少した抗原性を獲得するために、本発明のペプチドのN-末端又はC-末端に保護基が結合されていてよい。例えば、前記保護基は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基又はポリエチレングリコール(PEG)であってよいが、ペプチドの改質、特に、ペプチドの安定性を増進させることができる成分であれば、制限なく含むことができる。前記「安定性」は、生体内タンパク質切断酵素の攻撃から本発明のペプチドを保護する生体内(in vivo)での安定性だけでなく、貯蔵安定性(例えば、常温貯蔵安定性)も含む意味として用いられる。
【0030】
一具現例において、本発明のペプチドは、次に構成された群から選択される:
RSYMTTHHEQF(配列番号1);
KFNRRHH(配列番号2);
KYLLVHRPYYRR(配列番号3);
WVPYQARVPYPR(配列番号4);
RLYCKNGGFFLR(配列番号5);及び
KHRGGGNRR(配列番号6)。
【0031】
本発明のペプチドは、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質(Spike protein,S protein)に特異的に結合することができる。さらに具体的に、本発明のペプチドは、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に存在するRBD(Receptor binding domain)に特異的に結合することができる。
【0032】
本明細書における用語「特異的に結合」は、関心対象のタンパク質、すなわち、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質又はその一部であるRBDに結合するが、サンプル中の他の分子は実質的に認識せず結合しないことを意味する。
【0033】
本発明のペプチドは、SARS-CoV-2の表面のスパイクタンパク質に特異的に結合して宿主細胞の細胞膜受容体とスパイクタンパク質の結合を抑制することができる。
【0034】
前記宿主細胞の細胞膜受容体は、アンジオテンシン変換酵素2(Angiotensin-convering enzyme2,ACE2)であり、アンジオテンシン変換酵素2は、真核生物と細菌で発見される膜貫通タンパク質であって、SARS-CoV-2を含むコロナウイルスが細胞に侵入する際に用いる受容体である。
【0035】
一具現例において、本発明のペプチドがSARS-CoV-2の表面のスパイクタンパク質RBDに特異的に結合してSARS-CoV-2を中和させることができ、SARS-CoV-2が宿主細胞の細胞膜に結合することを阻害し得ることを確認した。
【0036】
本明細書における用語「中和」は、中和が達成されるメカニズムに関係なく、生体内において及び/又は試験管内においてSARS-CoV-2が複製されることを阻害する能力を意味する。一具現例において、本発明のペプチドは、標的細胞にSARS-CoV-2が付着してウイルス膜と細胞膜が融合されることを阻害することによりSARS-CoV-2を中和させる。
【0037】
本発明の他の一側面は、前記ペプチドを含む重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(Severe acute respiratory syndrome coronavirus2,SARS-CoV-2)感染の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0038】
また、本発明は、前記ペプチド又は前記ペプチドを含む組成物を個体に投与する段階を含むSARS-CoV-2感染の予防又は治療方法を提供する。
【0039】
また、本発明は、SARS-CoV-2感染の予防又は治療に用いるための、前記ペプチド又は前記ペプチドを含む組成物を提供する。前記組成物は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型の表面のスパイクタンパク質に結合して宿主細胞の細胞膜受容体とスパイクタンパク質の結合を抑制することによりSARS-CoV-2の感染を予防したり治療することができる。
【0040】
本発明のSARS-CoV-2感染の予防又は治療用薬学的組成物は、それぞれ通常の方法により散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口用製剤、外用剤、坐剤、及び滅菌注射溶液の形態に剤形化されて用いることができ、剤形化のために前記ペプチド以外に薬剤学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤をさらに含むことができる。
【0041】
前記薬学的に許容される担体は、製剤時に通常用いられるラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシア、ゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微小結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ミネラルオイルなどを含むことができる。
【0042】
前記薬学的組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁液剤、保存剤などを追加でさらに含むことができる。
【0043】
前記薬学的組成物は、目的とする方法により経口投与するか非経口投与(例えば、筋肉内、静脈内、腹腔内、皮下、皮内、又は局所に適用)することができ、投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び時間により異なるが、当業者により適切に選択されてよい。
【0044】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明における「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な受恵/危険の比率で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量の水準は、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時に用いられる薬物を含んだ要素、及びその他医学分野によく知られている要素により決定されてよい。前記薬学的組成物は、個別治療剤で投与するか他の治療剤と併用して投与されてよく、従来の治療剤とは同時に、別途に、又は順次に投与されてよく、単一又は多重投与されてよい。前記要素を全て考慮して副作用なく最小限の量で最大の効果を得ることができる量を投与するのが重要であり、これは当業者により容易に決定されてよい。
【0045】
前記薬学的組成物の有効量は、患者の年齢、性別、状態、体重、体内への活性成分の吸収度、不活性率、排泄速度、疾病の種類、併用する薬物に応じて異なり得るし、投与経路、肥満の重症度、性別、体重、年齢などに応じて増減してもよく、例えば、前記薬学的組成物を1日当たり、患者体重1kg当たり約0.0001μgから500mg、好ましくは0.01μgから100mgで投与してもよい。
【0046】
本発明の薬学的組成物は、さらに、少なくとも1つの他の治療剤を含むことができる。例えば、前記ペプチドとともに、インターフェロン、抗-Sタンパク質モノクローナル抗体、抗-Sタンパク質ポリクローナル抗体、ヌクレオシド類似体、DNAポリメラーゼ阻害剤、siRNA製剤又は治療ワクチンを抗ウイルス薬物としてさらに含むことができる。これらは、本発明のペプチドと組み合わせて用いられ得る。本明細書における「組み合わせて」は、別個の剤形として又は1つの単一の併用剤形として同時に、又は任意の順序で別個の剤形で順次投与する療法によることを意味する。
【0047】
前記「個体(subject)」は、本願のペプチド又は前記ペプチドを含む組成物の投与を要する個体(subject in need thereof)であってよく、前記投与を要する個体は、SARS-CoV-2感染症に対して診断を受けた個体、SARS-CoV-2感染症状が発現された個体だけではなく、前記疾患や症状の発現を予防するか健康改善のために投与を希望する個体を含むものであってよい。
【0048】
前記「投与」は、任意の適切な方法で患者に所定の物質を提供することを意味し、本発明のペプチドの投与経路は、目的の組織に到達することができる限り、一般的な全ての経路を介して経口又は非経口投与されてよい。また、前記ペプチド又は前記ペプチドを含む組成物は、活性物質が標的細胞に移動することができる任意の装置により投与されてよい。
【0049】
また他の一側面において、本発明は、前記ペプチドを含む重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(Severe acute respiratory syndrome coronavirus2,SARS-CoV-2)検出用組成物を提供する。
【0050】
また、本発明は、前記ペプチド又は前記ペプチドを含む組成物を生物学的サンプルと接触させる段階を含むSARS-CoV-2の検出方法を提供する。
【0051】
また、本発明は、SARS-CoV-2の検出に用いるための、前記ペプチド又は前記ペプチドを含む組成物を提供する。
【0052】
本発明のSARS-CoV-2検出用組成物は、生物学的サンプルと前記ペプチドを接触させた後反応を確認して生物学的サンプル内にSARS-CoV-2の存否を検出するのに用いることができる。
【0053】
本発明のペプチドは、検出可能に標識されてよい。本発明に用いられ得る標識の例としては、酵素、放射性同位元素、コロイド金属、蛍光化合物、化学発光化合物及び生物発光化合物がある。通常用いられる標識は、蛍光物質(例えば、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッドなど)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ)、放射性同位元素(例えば、32P又は125I)、ビオチン、ジゴキシゲニン、コロイド金属、化学発光又は生物発光化合物(例えば、ジオキセタン、ルミノール又はアクリジニウム)を含む。酵素又はビオチニル基の共有結合法、ヨウ素化法、リン酸化法、ビオチン化法などの標識方法が当分野によく知られている。
【0054】
前記SARS-CoV-2の存否の検出は、酵素免疫分析法(ELISA)、ウェスタンブロッティング(Western Blotting)、免疫蛍光(Immunofluorescence)、免疫組織化学染色(Immunohistochemistry staining)、フローサイトメトリー(Flow cytometry)、兔疫細胞化学法、放射能免疫分析法(RIA)、免疫沈澱分析法(Immunoprecipitation Assay)、免疫拡散分析法(Immunodiffusion assay)、補体固定分析法(Complement Fixation Assay)及びタンパク質チップ(Protein Chip)よりなる群から選択されたいずれか1つにより実施されてよい。
【0055】
前記酵素免疫吸着法(ELISA)には、固体支持体に付着されたペプチドを認知する標識された抗体を用いる直接的ELISA、固体支持体に付着されたペプチドを認知する抗体の複合体において捕獲抗体を認知する標識された二次抗体を用いる間接的ELISAなど、多様なELISA方法を含む。
【0056】
前記生物学的サンプルは、対象体の痰、唾、血液、汗、呼吸器組織及び唾液よりなる群から選択されたいずれか1つであってよいが、これに限定されず、当業界に知られている通常の方法でサンプルを準備することができる。
【0057】
本発明はまた、前記ペプチドを含むSARS-CoV-2感染又は疾患を診断するためのキットを提供する。
【0058】
本明細書における用語「SARS-CoV-2感染又は疾患」は、SARS-CoV-2による細胞又は対象体の感染で生じる病理学的状態を意味し、例えば、前記疾患は、SARS-CoV-2により引き起こされる呼吸器疾患であってよい。
【0059】
本発明の診断用キットにおいて、キットには固体担体が含まれてよい。本発明のペプチドは、固体担体に付着されてよく、このような固体担体は、多孔性又は非多孔性、平面又は非平面であってよい。
【実施例
【0060】
以下、本発明を実施例及び実験例により詳細に説明する。
【0061】
但し、下記実施例及び実験例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の内容が下記実施例及び実験例によって限定されるものではない。
【0062】
[実施例1]
本発明のペプチドの選別
SARS-CoV-2のスパイクタンパク質(Spike protein、S protein)とアンジオテンシン変換酵素2(Angiotensin-converting enzyme2,ACE2)の結合を阻害するペプチドを開発するために、ペプチドライブラリからスクリーニングを介して6種のペプチドを選別した。選別されたペプチドの配列と分子量測定器を用いて測定したペプチドの分子量を下記表1に記載した。
【0063】
【表1】
【0064】
[実施例2]
本発明のペプチドのSARS-CoV-2スパイクタンパク質RBDに対する結合能の確認
本発明のペプチドがSARS-CoV-2の宿主細胞の侵入を遮断することができるのかを確認するため、先ず、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質内のRBDを本発明のペプチドが認識して結合することができるのかを確認した。
【0065】
具体的に、実験例1において選別した6種のペプチドを2mMのナトリウムバイカーボネートと同一の体積で混合し、96-ウェルプレートに100μLずつ分注した後、4℃で一晩中培養し、ウェル表面をペプチドでコーティングした。0.1% PBS-T(0.1% Tween-20 in PBS)で3回洗浄してから、3% BSAを100μLずつ分注した後、室温で1時間ブロッキングさせ、0.1% PBS-Tで3回洗浄した。その後、組換えSARS-CoV-2スパイクRBD-His(Sino Biological,Cat.No.:40592-V08B,China)をウェル当たり100ng処理して室温で2時間反応させた。0.1% PBS-Tで3回洗浄した後、抗-His抗体-HRP(Abcam,Cat.No.:ab1187,US)を1:1000でPBSに希釈して処理し、室温で1時間反応させた後、0.1% PBS-Tで3回洗浄した。TMB溶液(ThermoFisher,Cat.No.:N301,US)を100μLずつ分注して約5分反応させた後、1Mの硫酸50μLを処理して反応を終結させた。分光器を用いて、450nm波長でO.D.値を測定した。
【0066】
その結果、[図1]に示されているように、配列番号1から6のペプチドそれぞれのRBDに対する結合パターンをELISAで観察したとき、ペプチドの濃度依存的にRBDに対する結合フォルド(fold)が増加することを確認した。
【0067】
これを介し、本発明のペプチドがSARS-CoV-2のスパイクタンパク質のRBDを認識し、結合する能力があることが分かる。
【0068】
[実施例3]
本発明のペプチドのACE2-RBD結合阻害能の確認
本発明のペプチドがSARS-CoV-2の宿主細胞の侵入を遮断することができるのかを確認するため、本発明のペプチドが宿主細胞の膜タンパク質であるACE2とSARS-CoV-2のRBDとの結合を阻害するのかを確認した。
【0069】
具体的に、2mMのナトリウムバイカーボネートとACE2-FCタンパク質(Sino Biological,Cat.No.:10108-H02H,China)を同一の体積で混合し、96-ウェルプレートに100ng/100μL/ウェルずつ分注した後、4℃で一晩中培養し、ウェル表面をACE2タンパク質でコーティングした。0.1% PBS-T(0.1% Tween-20 in PBS)で3回洗浄してから、3% BSAを100μLずつ分注した後、室温で1時間ブロッキングさせた。PBSに組換えSARS-CoV-2スパイクRBD His(Sino Biological,Cat.No.:40592-V08B,China)100ngと濃度別のペプチド溶液を混合し、室温で1時間反応させた。ウェルを0.1% PBS-Tで3回洗浄した後、前記タンパク質ペプチド混合物をウェルに処理した。室温で2時間反応させた後、0.1% PBS-Tで3回洗浄した。抗-His抗体-HRP(Abcam,Cat.No.:ab1187,US)を1:1000でPBSに希釈して処理し、室温で1時間反応させた後、0.1% PBS-Tで3回洗浄した。TMB溶液(ThermoFisher,Cat.No.:N301,US)を100μLずつ分注して約5分反応させた後、1Mの硫酸50μLを処理して反応を終結させた。分光器を用いて、450nm波長でO.D.値を測定した。
【0070】
その結果、[図2]に示されているように、配列番号1から6のペプチドのそれぞれは、濃度依存的にACE2タンパク質に対するRBDの結合を阻害することを確認した。
【0071】
これを介し、本発明のペプチドがSARS-CoV-2のスパイクタンパク質のRBDに結合することにより、ACE2タンパク質にスパイクタンパク質が結合することを阻害することが分かる。
【0072】
[実施例4]
ヒト肺癌細胞における本発明のペプチドのACE2-RBD結合阻害能の確認
本発明のペプチドに哺乳動物細胞のコロナウイルス感染の予防、改善及び治療の能力があるのかを確認するため、ヒト肺癌細胞株にペプチドを処理した後、宿主細胞のACE2に対するSARS-CoV-2スパイクタンパク質RBDの結合能が減少するのかを確認した。
【0073】
具体的に、ヒト肺癌細胞株(adenocarcinomic human alveolar basal epithelial cells)であるA549細胞(Korean Cell Line Bank,Cat.No.:10185,Korea)を6ウェルプレートに5x10細胞/ウェルの密度で接種し、24時間培養した。DMEM培地1mLに組換えSARS-CoV-2スパイクRBD His(Sino Biological,Cat.No.:40592-V08B,China)500ngと濃度別のペプチド溶液を混合して室温で1時間反応させて準備した。一日間培養したA549細胞をDMEM培地で洗浄した後、900μLの組換えSARS-CoV-2スパイクRBD/ペプチド混合物を細胞に添加した。37℃のCOインキュベーターで2時間培養した後、PBSで細胞を2回洗浄し、溶解バッファー200μL処理して細胞を溶解させた。5Xサンプルバッファーを処理してサンプルを準備した後、10%SDS-PAGEゲルを用いてSDS-PAGEを進行した。SDS-PAGEを介して分離したタンパク質をPVDFメンブレンに移動させた後、5%スキームミルクを用いて1時間室温でブロッキングさせた。次に、抗-His抗体-HRP(Abcam,Cat.No.:ab1187,US)を1:1000で5%スキームミルクに希釈してメンブレンと2時間反応させ、0.1% PBS-T(0.1% Tween-20 in PBS)で10分ずつ3回洗浄した。ECL溶液(GE Healthcare,Cat.No.:RPN2232,US)を用いてフィルムで検出した。
【0074】
その結果、[図3]に示されているように、本発明の配列番号1から4のペプチドそれぞれがいずれも濃度依存的に宿主細胞のACE2とSARS-CoV-2スパイクRBDとの結合を阻害することを確認した。
【0075】
これを介し、本発明のペプチドがSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合し、宿主細胞のACE2にスパイクタンパク質が結合することを阻害することにより、ウイルスが宿主細胞に感染することを予防又は治療することができることが分かる。
【0076】
[実施例5]
本発明のペプチドのSARS-CoV-2細胞感染抑制効果の確認
本発明のペプチドがSARS-CoV-2による細胞感染を抑制する効果があるのかを直接的に確認するため、Focus Reduction Neutralizing Test(FRNT)を行った。
【0077】
具体的に、Vero E6細胞(ATCC,USA)を96-ウェルプレートに2x10細胞/ウェルの密度で接種した後、90-100% confluencyまで培養した。500 focus-forming units(FFU)/wellのSARS-CoV-2と濃度別のペプチドサンプルを1:1で混合した後、37℃で1時間反応させた。ペプチドとウイルス混合物をVero E6細胞monolayerに処理し、37℃で1時間培養した。上澄液を除去した後、1.6%カルボキシメチルセルロース(CMC)が含まれているDMEM培地を処理し、37℃で24時間培養した。上澄液の除去後、4%パラホルムアルデヒドを処理して細胞を固定した後、PBSで洗浄した。0.2% Triton X-100と1% BSAを含むPBSを30分間処理し、cell permeabilizationを進行した後、PBSで洗浄した。1% BSAが含まれているPBSにSARS-CoV-2ヌクレオカプシドに対する1次抗体(Sino Biological,China)を1:1000で希釈した後、細胞に1時間処理し、PBST(PBS containing 1% Tween-20)で洗浄した。1% BSAが含まれているPBSに2次抗体(Sino Biological,China)を1:2000で希釈した後、細胞に1時間処理し、PBSTで洗浄した。KPL TrueBlue(登録商標) Peroxidase Substrate(SeraCare Life Sciences,USA)を処理した後、蒸溜水で洗浄してSARS-CoV-2 fociの数をエリスポットリーダー(Elispot reader)(Cellular Technology Limited,USA)で分析した。下記数式を利用してウイルス感染阻害率を計算した。
【0078】
[数式1]
ウイルス感染阻害率(%)=(対照群foci数 - 処理群foci数)/対照群foci数 × 100
【0079】
その結果、表2に示されているように、本発明の配列番号1から4のペプチドをそれぞれ処理したとき、4種のペプチドのいずれも濃度依存的にウイルスの感染阻害率が上昇することを確認した。
【0080】
これを介し、本発明のペプチドがSARS-CoV-2による細胞感染を抑制することにより、SARS-CoV-2の感染を予防、改善及び治療することができることが分かる。
【0081】
【表2】
図1
図2
図3
【配列表】
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