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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】商用車の手動変速機用のクラッチ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 25/12 20060101AFI20240708BHJP
【FI】
F16D25/12 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023504293
(86)(22)【出願日】2021-07-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2021068792
(87)【国際公開番号】W WO2022017787
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】102020119185.5
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン フーバー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン フィーバー
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-020601(JP,A)
【文献】実開平04-021041(JP,U)
【文献】実開平03-075303(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 25/12
F16D 13/52
F16B 15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用車の手動変速機用のクラッチ装置(1,1’)であって、
クラッチアクチュエータ(30)と、
前記クラッチアクチュエータ(30)の位置を検知するためのセンサ(50)と、
前記センサ(50)の予め規定された位置を前記クラッチアクチュエータ(30)に対する間隔方向で規定するストッパ面(41)を備えたセンサストッパ(40)と
を有し、
前記センサ(50)は、弾性要素(60)を介して前記間隔方向において前記センサストッパ(40)に対して位置不変の関係で保持可能であり、
前記弾性要素(60)は、前記センサ(50)と、前記ストッパ面(41)と反対側に位置する弁ユニット(70)との間に配置されている、クラッチ装置(1,1’)。
【請求項2】
前記センサストッパ(40)は、クラッチアクチュエータハウジング(20)によって形成される、請求項1記載のクラッチ装置(1,1’)。
【請求項3】
前記センサ(50)は、前記ストッパ面(41)に対して平行な平面内に浮動支持されている、請求項1または2記載のクラッチ装置(1,1’)。
【請求項4】
前記弾性要素(60)の、前記センサ(50)と反対側の面がその全面にわたって前記弁ユニット(70)に接触している、請求項1から3までのいずれか1項記載のクラッチ装置(1)。
【請求項5】
前記弾性要素(60)は、ばね鋼から成るばね要素を含む、またはばね鋼から成るばね要素から形成されている、請求項1からまでのいずれか1項記載のクラッチ装置(1,1’)。
【請求項6】
前記弾性要素(60)は、エラストマーから成るばね要素を含む、またはエラストマーから成るばね要素から形成されている、請求項1からまでのいずれか1項記載のクラッチ装置(1,1’)。
【請求項7】
前記弾性要素(60)は、減摩性のコーティングを備える、または減摩性のコーティングから形成されている、請求項1からまでのいずれか1項記載のクラッチ装置(1,1’)。
【請求項8】
前記センサストッパ(40)は、前記ストッパ面(41)から前記センサ(50)の方向に向けられた少なくとも1つの突出部(42)を有し、かつ/または前記センサ(50)は、前記ストッパ面に向けられた面から前記センサストッパの方向に向けられた少なくとも1つの突出部(42)を有する、請求項1からまでのいずれか1項記載のクラッチ装置(1,1’)。
【請求項9】
前記ストッパ面(41)に対して垂直な方向での前記少なくとも1つの突出部(42)の延在長さが、同方向での前記弾性要素(60)の最短延在長さよりも短い、請求項記載のクラッチ装置(1,1’)。
【請求項10】
前記センサ(50)は、前記クラッチアクチュエータ(30)と位置不変の関係にある磁石(31)の位置を検知することにより、クラッチアクチュエータ(30)の位置検出を行うように適合させられている、請求項1からまでのいずれか1項記載のクラッチ装置(1,1’)。
【請求項11】
前記センサ(50)は、磁気センサとして形成されている、または誘導式のセンサとして形成されている、請求項1から10までのいずれか1項記載のクラッチ装置(1,1’)。
【請求項12】
前記センサ(50)は、プラグ、線路および/または打抜き格子体を介して、前記手動変速機を制御するための制御装置に接続可能である、請求項1から11までのいずれか1項記載のクラッチ装置(1,1’)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用車の手動変速機用のクラッチ装置に関する。
【0002】
特に近距離交通および配送交通、遠距離交通ならびに都市間交通および旅行バス交通用の商用車の多くの手動変速機は、多数のギヤ段を備えたグループ構造を有している。この構造は、商用車の場合、自動化された手動変速機(AMT)にますます使用される。
【0003】
商用車用の手動変速機は、原理的に種々異なる自動化グレードを有していてもよい。この場合、構成に応じて、発進動作、シフトクラッチの操作ならびにギヤ選択を自動化して行うことができる。手動変速機の場合には、これらの動作のいずれも自動化されておらず、部分自動化された手動変速機の場合には、これらの動作のうちの1つが自動化されており、完全自動化された手動変速機の場合には、全ての動作が自動化されて行われる。このことから、自動化された発進クラッチ用の適切な操作装置、シフト時の自動化されたクラッチおよび/または自動化されたギヤ選択およびエンジンマネージメントを利用する必要性が生じる。この場合、シフト自動化のために、シフト要素の位置を正確に検出して、自動化されたシフトシーケンスを最適化しかつ効率向上させることが特に重要となる。このためのセンサシステムは、通常、変速機の領域に位置している。クラッチ位置を検出するためには、クラッチアクチュエータのセンシングが必要となる。例えば、位置センサがねじ込まれる。さらに、修理の際の組付けが目に触れることなく行われる。したがって、如何なる事情があろうともまたはより多大な手間をかけてしか、位置センサを予め規定された基準位置に保持することを確保することができない。このことは、位置検出の精度に影響を与える。
【0004】
したがって、前述した構成を考慮して、本発明の課題は、位置検出の精度を改善することができる、商用車の手動変速機用のクラッチ装置を提供することである。
【0005】
この課題は、独立請求項に記載の、商用車の手動変速機用のクラッチ装置によって解決される。本発明の有利な改良形態は、従属請求項に含まれている。
【0006】
本発明によれば、商用車の手動変速機用のクラッチ装置は、クラッチアクチュエータと、このクラッチアクチュエータの位置を検知するためのセンサと、このセンサの予め規定された位置をクラッチアクチュエータに対する間隔方向で規定するストッパ面を備えたセンサストッパとを有し、センサは、弾性要素を介して間隔方向においてセンサストッパに対して位置不変の関係で保持可能である。
【0007】
したがって、弾性要素を介して、センサがセンサストッパのストッパ面に押し付けられる。ゆえに、センサが、予め規定された基準位置をとる。特に、これによって、センサとストッパ面との間の、センサの精度に不利な影響を与えてしまう空隙も回避することができるまたは少なくとも減じることができる。
【0008】
一構成では、センサストッパは、クラッチアクチュエータハウジングによって形成される。
【0009】
したがって、センサは、クラッチアクチュエータハウジングにより形成されたストッパ面に押し付けられる。これによって、クラッチアクチュエータハウジングがクラッチアクチュエータに対して位置基準を成している、つまり、クラッチアクチュエータの位置をクラッチアクチュエータハウジングを基準として説明することができるので、センサが、対応可能な位置基準を成すことができる。
【0010】
一改良形態では、センサは、ストッパ面に対して平行な平面内で浮動支持されている。
【0011】
センサストッパのストッパ面が、センサ用の片側の位置制限部を成している場合でも、センサは、少なくともストッパ方向に対して垂直な平面内で可動であり、これによって、この平面内で、例えば並進補償運動または回転補償運動を実施することができる。さらに、弾性要素は、ストッパ方向に対して平行な平面内、つまり、例えば弾性要素に向かう平面内でも相応の補償運動が可能となるように構成されていてもよい。浮動支持は、1つには、ストッパ面へのセンサの均等な押付けをアシストするために役立つものの、また、振動補償のために利用することもできる。さらに、これに関して、センサの交換可能性も簡略化することができる。
【0012】
一構成によれば、弾性要素は、センサと、ストッパ面と反対側に位置する弁ユニットとの間に配置されている。
【0013】
したがって、弾性要素は弁ユニットに支持されてもよく、組み込まれた状態で弁ユニットとセンサとの間に保持される。したがって、センサにも弾性要素にも必然的に付加的な固定手段が不要となる。さらに、弁ユニットの組付け時には、センサを弾性要素および弁ユニットと共に1回のステップで直接一緒に組み付けることができる。このためには、組付け工程または搬送用のアセンブリを形成すべく、固定手段、例えばねじ締結手段が設けられてもよい。しかしながら、組付け後には、単にセンサ保持体の機能発揮に関して、記載したように、アセンブリ構成要素同士の間のこういった固定手段が省略されてもよい。
【0014】
特に、弾性要素の、センサと反対側の面がその全面にわたって弁ユニットに接触している。
【0015】
したがって、センサは、弾性要素の、弁ユニットに向けられた面全体を介して弁ユニットに支持されてもよく、これによって、押付け力がセンサに均等に分配される。こうして、例えば、センサの望ましくない傾倒を回避することができる。
【0016】
一構成によれば、弾性要素は、ばね鋼から成るばね要素、特にコイルばね、板ばね、皿ばねまたは波形ばねを含む、またはばね鋼から成るばね要素、特にコイルばね、板ばね、皿ばねまたは波形ばねから形成されている。
【0017】
ばね鋼から成るばね要素、特にコイルばね、板ばね、皿ばねまたは波形ばねは、有利に使用可能であり、調整可能なばね力および周辺条件に関して幅広い使用範囲を提供する。
【0018】
代替的にまたは補足的に、弾性要素は、エラストマー、特に打抜き加工されたまたは射出成形されたエラストマーから成るばね要素を含む、またはエラストマー、特に打抜き加工されたまたは射出成形されたエラストマーから成るばね要素から形成されている。
【0019】
エラストマーは、ほぼ任意の形状付与をとることができ、したがって、まさに構造上の観点において多くの形成自由度を提供する。エラストマーに対して付加的に、補足的な構成によれば、ばね鋼から成るばね要素が、エラストマー内でまたはエラストマーと一緒に弾性要素を形成していてもよい。
【0020】
さらに代替的または補足的に、弾性要素は、好適には、少なくとも弾性要素の、センサと反対側の面に設けられた減摩性のコーティング、特にPTFEコーティングを備える、または好適には、少なくとも弾性要素の、センサと反対側の面に設けられた減摩性のコーティング、特にPTFEコーティングから形成されている。
【0021】
減摩性のコーティング、例えばPTFEコーティング、つまり、ポリテトラフルオロエチレンを含んだコーティングは、例えば、弁ユニットと弾性要素との間の摩擦を減じることができ、これによって、センサの浮動支持がアシストされる。相応して、代替的または補足的に、弾性要素の、センサに向けられた面も、このような減摩性のコーティングを有していてもよい。「減摩性」という概念は、例えば、センサと弁ユニットとの間に弾性要素が配置されている場合、センサと弁ユニットとの間の直接的な接触に比べて少ない摩擦を生じさせるコーティングに向けられている。
【0022】
一構成では、センサストッパは、ストッパ面からセンサの方向に向けられた、かつ/またはセンサは、ストッパ面に向けられた面からセンサストッパの方向に向けられた少なくとも1つの突出部、特に、ストッパ面からの間隔が増加するにつれ、もしくはセンサの、ストッパ面に向けられた面からの間隔が増加するにつれ、これから離れる方向に向けられた導入傾斜部としての突出部を有する。
【0023】
突出部は、例えば、ガイド金属薄板から形成されていてもよいし、切欠き、例えば、クラッチアクチュエータハウジングにセンサストッパが割当て可能である場合、クラッチアクチュエータハウジング表面に対して引っ込められたストッパ面として形成されていてもよい。特に、突出部もしくは切欠きは、導入傾斜部を備えて形成されてもよく、つまり、突出元から開いていく角度を有していてもよく、これによって、ストッパ面へのセンサの導入が容易になる。突出部は、ストッパ面全体を含んでいてもよいし、部分的に形成されてもよい。比較させて、例えば、センサを位置決めすべく、センサストッパの対応する突出部または対応する切欠きと協働するために、突出部は、センサに形成されてもよい。
【0024】
特に、ストッパ面に対して垂直な方向での少なくとも1つの突出部の延在長さが、同方向での弾性要素の最短延在長さよりも短い。
【0025】
したがって、例えば、突出部により形成された、ストッパ面の方向におけるセンサのための収容深さは、弾性要素のためにセンサの、ストッパ面と反対の側に設けるべき同方向における組付けスペースよりも小さい。したがって、言い換えると、弾性要素を取り除くことによって、突出部により形成された収容部からセンサも取り出すための十分なスペースを提供することができる。これによって、センサの交換可能性がアシストされる。
【0026】
一構成によれば、センサは、クラッチアクチュエータと位置不変の関係にある磁石の位置を検知するように適合させられている。
【0027】
この構成では、磁石が、クラッチアクチュエータの位置を表す、センサを介して検知すべき目標対象を成しており、かつ/またはクラッチアクチュエータの位置検出のために磁石と協働する。磁石の配置によって、目標対象を、例えば構造上のかつ/または測定技術的な周辺条件に応じてセンサもしくは基準位置に対して有利に配置することができる。
【0028】
特に、センサは、磁気センサ、特にホールセンサ、3Dホールセンサ、GMRセンサまたはAMRセンサとして形成されている、または誘導式のセンサ、特にPLCDセンサとして形成されている。
【0029】
この構成では、磁気センサを、特にクラッチアクチュエータの前述した磁石と共に位置検出のために使用することができる。
【0030】
一構成では、センサは、プラグ、線路および/または打抜き格子体を介して、手動変速機を制御するための制御装置に接続可能である。
【0031】
したがって、クラッチアクチュエータの位置もしくは相応の位置信号を手動変速機の制御部に伝送して、手動変速機の種々異なる自動化グレードを実現することができる。しかしながら、信号伝送は、手動変速機の監視のために利用されてもよい。
【0032】
以下に、本発明を添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】第1の実施形態によるクラッチ装置の概略的な横断面図である。
図2】第2の実施形態によるクラッチ装置の一部の概略的な横断面図である。
図3図2に示したクラッチ装置の一部の横断面図に対して垂直な平面図である。
【0034】
図1は、第1の実施形態によるクラッチ装置1の概略的な横断面図である。このクラッチ装置1は、クラッチハウジング10と、このクラッチハウジング10内に配置されたクラッチアクチュエータハウジング20とを有している。このクラッチアクチュエータハウジング20は、クラッチアクチュエータとして、ピストンシール32を備えたピストン30を有している。このピストン10のピストン運動方向に対して垂直な端面には、磁石31が配置されている。したがって、この磁石31はピストン10と共に位置不変の関係で一緒に運動させられる。磁石31と、クラッチアクチュエータハウジング10の、ピストン運動方向で磁石31に向けられた面との各々の間隔は、ピストン10の各々の位置に対応している。相応して、センサ50が、ピストン30に対する間隔方向において、基準位置として予め規定された位置をとるように配置される。ピストン30もしくは磁石31に対するセンサ50の間隔方向は、図1では、ピストン30の運動方向である。したがって、絶対的または相対的な間隔変化および/またはセンサ50による磁石31の直接的な間隔検出を介して、クラッチアクチュエータとしてのピストン30の、クラッチ装置1の制御および/または監視に必要な位置を検知することができる。
【0035】
基準位置として利用可能な位置にセンサ50を配置するために、クラッチアクチュエータハウジング20は、ピストン運動方向で磁石31に向けられたクラッチアクチュエータハウジング壁にセンサストッパ40を有している。具体的には、図1では、このセンサストッパ40は、クラッチアクチュエータハウジング壁の、磁石31と反対側の面に存在している。図1に示したように、センサストッパは、ストッパ面41と突出部42とを有している。この突出部42は、図1では、ストッパ面41からセンサ50に向かってストッパ面41からの間隔が増加するにつれ、センサ50から離れる方向に向けられたガイド金属薄板を介して形成される。言い換えると、突出部42は、例えば、センサ50を組付けの際により容易にストッパ面41に位置決めすることができるようにするための導入傾斜部を形成している。突出部は、図1では、例示的にストッパ面41の全周にわたって延在するように形成されているが、しかしながら、部分的にしか設けられなくてもよい。
【0036】
センサ50は、ピストン運動方向における磁石31に対する間隔方向でストッパ面41に対して位置不変の関係を維持するために、弾性要素60を介してストッパ面41に押し付けられる。これによって、特に、ストッパ面41に対して位置不変の関係における基準位置が形成される。この基準位置は、センサ50とストッパ面41との間に空隙を全く形成しないまたは少なくとも僅かな空隙しか形成せず、これによって、可能な限り正確な測定を達成することができる。図示の実施形態では、弾性要素60は、センサ50と弁ユニット70との間に配置されている。この弁ユニット70は、例えば、クラッチハウジング10の開口内に導入され、固定手段または別の固定機構によってクラッチハウジング10内に保持される。組付け誤差および/または製作誤差に基づき、弁ユニット70とセンサストッパ40のストッパ面41との間の間隔が変わっていることがあるため、それにもかかわらず、弾性要素60を介してセンサ50を基準位置として予め規定された位置に確実に配置かつ保持することができる。このために、弾性要素60は、弁ユニット70の、センサ50に向けられた面に支持されている。
【0037】
図1では、弾性要素60の、センサ50と反対側の面がその全面にわたって、弁ユニット70の、センサに向けられた面に接触している。これによって、センサ50への弾性要素60を介した押付け力の均等な分配を達成することができる。弾性要素60および/またはセンサ50もまた、均等な荷重分配もしくは荷重吸収が可能となるように構成されている。
【0038】
図2には、第2の実施形態によるクラッチ装置1’の一部の概略的な横断面図が示してある。クラッチ装置1’は、図2に示していない構成要素に関して、図1に示したクラッチ装置1に対応していてもよいため、図2には、別の機能形式および違いだけを説明するために使用すべき部分が示してある。
【0039】
図2に示したクラッチ装置1’では、図1に示したクラッチ装置1と異なり、弁ユニット70が、弾性要素60の、弁ユニットに向けられた面をもはやその全面にわたって支持しないように、弾性要素60が弁ユニット70に配置される。これによって、クラッチ装置1’の構造上の構成において、センサ50の位置決めおよび/またはクラッチ装置構成要素の寸法設定に関する更なる自由度を得ることができる。また、弁ユニット70による弾性要素60の制限された支持は、センサ50が、ピストン運動方向における磁石31に対するセンサ50の間隔方向で弁ユニット70に対して平行な離間から逸脱して配置されている場合に利点を提供することもできる。
【0040】
さらに、図2では、弁ユニット70内の可視稜によって、弁ユニット70のハウジングカバー71が示してある。このハウジングカバー71は、クラッチ装置1に対しては明示的に図示していないが、しかしながら、同様に存在していてもよい。ハウジングカバー71の相応の寸法設定と、このハウジングカバー71の可能な交換とによって、例えば、弾性要素60の当付け面を弁ユニット70に適合させることができる。これによって、荷重分配もしくは押付け力の分配を要求に即した形で適合させることができる。
【0041】
以下では、クラッチ装置1’に基づき、図2および図3を参照しながら、センサ50のための浮動支持の構成を例示的に説明する。このために、図3には、図2に示したクラッチ装置1’の一部の横断面図に対して垂直な平面図が示してある。センサ50の浮動支持は、第2の実施形態によるクラッチ装置1’に限定されるものではなく、第1の実施形態によるクラッチ装置1にも同様に適用されてもよい。
【0042】
弾性要素60の押付け力によって、センサ50は、クラッチアクチュエータハウジング20により形成されたストッパ面41に押し付けられる。それにもかかわらず、弾性要素60の弾性変形性を介して、センサ60は、この押付け力に抗して作用する外的な力に関連して、図2および図3に矢印により示した基本的な自由度を有している。「基本的」という概念は、存在する力状況に応じた運動の前述した関連を表している。これにより達成可能な、ストッパ面41に対して平行な平面内での図3による最大3の自由度および/またはストッパ面41に対して垂直な平面内での図2による最大2の自由度を有するセンサ50の浮動支持によって、例えば、ストッパ面41自体へのセンサ50の確実な位置決めだけでなく、相応の振動相殺および熱に起因した構成部材膨張の補償も可能となる。浮動支持によって、並進補償可能性だけでなく、回転補償可能性も得られる。
【0043】
図3に示したクラッチ装置1’には、さらに、弾性要素60および/またはセンサ50を弁ユニットに固定することができる固定手段80が示してある。ここでも、クラッチ装置1’に基づく例示的な説明が、クラッチ装置1に同様に適用可能となる。固定手段80は、弾性要素60および/またはセンサ50を弁ユニットにねじ締結することができるねじとして形成されていてもよい。この場合、弾性要素60および/またはセンサ50の固定は、センサ50を基準位置に配置するための最終的な位置決めに向けて調整されていない。基準位置は、前述した構成によれば、センサ50をストッパ面41に押し付けるために、ピストン運動方向における磁石31に対するセンサ50の間隔方向での弾性要素60の押付け力を介して得られる。また、これに関して、弾性要素60は、センサ50をストッパ面41および/または弾性要素60に保持することができるように構成されていてもよい。しかしながら、固定手段80は、安全性を高めるために、弾性要素60および/またはセンサ50を付加的に保持していてもよく、かつ/または特に弁ユニット70と、弾性要素60と、センサ50とを有するアセンブリの搬送および組付けのために使用されてもよい。例えば、このようなアセンブリは、クラッチ装置1’のハウジング開口内に挿入されてもよい。センサ50はストッパ面41に位置決めされる。この場合、固定手段80は、例えばセンサ50を保持していて、このセンサ50が、確かに、弁ユニット70によって保持されるが、しかしながら、位置決めおよび補償のために設定された自由度で少なくともある程度の運動区間にわたって相変わらず運動することができるようになっている。したがって、浮動支持を達成することができるようにするために、固定手段80は、組付け後に必ずしも取り外される必要はない。センサ50がストッパ面41に位置決めされた後、弁ユニット70は、クラッチハウジング10またはこれに類するものに拘止されてもよい。弁ユニット70の拘止プロセスが、場合により、磁石31に対するセンサ50の間隔方向での弁ユニット70の位置の変化を再び引き起こしてしまうような場合でも、このことは、弾性要素60によって補償される。このことは、相応の組付けおよび拘止後にセンサ50に対する位置補正のためのアクセス性が存在しないまたは後調整が少なくとも大幅な手間をかけてしか実施することができない場合にまさに有利である。
【0044】
本発明は、記載した実施形態に限定されるものではない。例えばセンサ、一例として回転数検出用または位置検出用のセンサが、外側から変速機内に導入され、ハウジング構成要素、例えばコンソールによって保持されてもよい。基本的には、1つの実施形態の特徴は別の実施形態にも転用可能であり、当然排除されない限り、別の特徴と組合せ可能である。
【符号の説明】
【0045】
1,1’ クラッチ装置
10 クラッチハウジング
20 クラッチアクチュエータハウジング
30 ピストン
31 磁石
32 ピストンシール
40 センサストッパ
41 ストッパ面
42 突出部
50 センサ
60 弾性要素
70 弁ユニット
71 ハウジングカバー(弁ユニット)
80 固定手段
図1
図2
図3