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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/00 20060101AFI20240708BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20240708BHJP
   H01Q 1/24 20060101ALI20240708BHJP
   H01Q 21/28 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
H05K7/00 F
H05K9/00 L
H01Q1/24 Z
H01Q21/28
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023515465
(86)(22)【出願日】2022-04-18
(86)【国際出願番号】 JP2022018066
(87)【国際公開番号】W WO2022224937
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】P 2021070604
(32)【優先日】2021-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】310021766
【氏名又は名称】株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勝志
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 和孝
(72)【発明者】
【氏名】小田桐 一哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 翔
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特許第6820492(JP,B1)
【文献】国際公開第2014/136243(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0245513(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/00
H05K 9/00
H01Q 1/24
H01Q 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、
前記回路基板に形成されている、又は前記回路基板に取り付けられているグランド部と、
第1アンテナと、
少なくとも1つの緩衝部材と、
前記第1アンテナから延びており、前記回路基板に接続され、前記グランド部と前記少なくとも1つの緩衝部材との間を通過しているケーブルと、
前記緩衝部材を前記グランド部に押している部材と
を有している電子機器。
【請求項2】
前記回路基板、前記グランド部、前記少なくとも1つの緩衝部材、及び前記ケーブルを収容しているハウジングをさらに有し、
前記緩衝部材を前記グランド部に付勢している前記部材は前記ハウジングである
請求項1に記載される電子機器。
【請求項3】
前記グランド部として、前記回路基板に実装されている電子部品を覆うシールドを有している
請求項1に記載されている電子機器。
【請求項4】
前記少なくとも1つの緩衝部材から離れた位置で、前記ケーブルを前記グランド部に取り付ける複数の取付部材を有している
請求項1に記載されている電子機器。
【請求項5】
第2アンテナをさらに有し、
前記少なくとも1つの緩衝部材と前記第1アンテナとの距離は、前記複数の取付部材のうち前記第1アンテナに最も近い取付部材と前記第1アンテナとの距離よりも小さい
請求項4に記載されている電子機器。
【請求項6】
第2アンテナをさらに有し、
前記少なくとも1つの緩衝部材と前記第2アンテナとの距離は、前記複数の取付部材のうち前記第2アンテナに最も近い取付部材と前記第2アンテナとの距離よりも小さい
請求項4に記載されている電子機器。
【請求項7】
前記ケーブルは、前記少なくとも1つの緩衝部材によって前記グランド部に押しつけられている部分を有し、
前記ケーブルの前記部分から前記第1アンテナまでの距離は前記第1アンテナから送信される電波の波長の1/4よりも小さい
請求項1に記載されている電子機器。
【請求項8】
第2アンテナをさらに有し、
前記ケーブルは、前記少なくとも1つの緩衝部材によって前記グランド部に押しつけられている部分を有し、
前記ケーブルの前記部分から前記第2アンテナまでの距離は前記第2アンテナから送信される電波の波長の1/4よりも小さい
請求項1に記載されている電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲーム機やパーソナルコンピュータなど、無線通信機能を有している電子機器のなかには、アンテナと回路基板とがケーブルで接続されているものがある。下記特開2018-22752号公報及び特開2013-222776号公報の電子機器は、回路基板を覆い集積回路からの電磁波を遮蔽するシールドを有している。シールドは回路基板に形成されているグランドパターンに接している。ケーブルはシールドに取り付けられ、シールドに沿って配置されている。こうすることで、ケーブルを流れる信号に生じるノイズを低減できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
接着テープによってケーブルをシールドの表面に取り付ける場合がある。ところが、この方法では、例えば集積回路の熱やシールドの凹凸に起因して接着テープの接着性が下がり、ケーブルがシールドから離れてしまうことがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示で提案する電子機器は、回路基板と、前記回路基板に形成されている、又は前記回路基板に取り付けられているグランド部と、第1アンテナと、少なくとも1つの緩衝部材と、前記第1アンテナから延びており、前記回路基板に接続され、前記グランド部と前記少なくとも1つの緩衝部材との間を通過しているケーブルと、前記緩衝部材を前記グランド部に押している部材とを有している。この電子機器によると、ケーブルがグランド部に接している状態が長期間に亘って安定的に維持され得る。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本開示で提案する電子機器の斜視図である。
図2図1で示すII-II線での断面図である。
図3】電子機器のハウジングに収容されている回路基板とシールドの斜視図である。
図4】回路基板の平面図である。
図5図4で示す一点鎖線Vで規定される領域におけるシールドの拡大図である。
図6図4で示す一点鎖線VIで規定される領域におけるシールドの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、本開示で提案する電子機器について説明する。以下では、電子機器の例として、図1等で示す電子機器1について説明する。以下の説明では、図1において、Fr及びBcが示す方向をそれぞれ前方及び後方と称し、Up及びDwが示す方向をそれぞれ上方及び下方と称し、R及びLが示す方向をそれぞれ右方及び左方と称する。これらの方向は、電子機器が備える部品、部位、及び部材の相対位置を説明するために使用されており、電子機器の姿勢を限定するものではない。
【0007】
電子機器1は、例えば、ゲーム装置やオーディオ・ビジュアル機器として機能するエンタテインメント装置である。電子機器1は、ゲームプログラムの実行により生成した動画像データや、ネットワークを通して取得した映像・音声データ、光ディスクなどの記録媒体から取得した映像・音声データをテレビジョンなどの表示装置に出力する。電子機器は、例えばパーソナルコンピュータであってもよい。
【0008】
図1で示すように、電子機器1は、回路基板40(図2参照)を収容しているハウジング30を有している。ハウジング30は、例えば上ハウジング部材31A(図2参照)と下ハウジング部材31B(図2参照)とを有する。上ハウジング部材31Aと下ハウジング部材31Bは、上下方向において互いに組み合わされる。電子機器1は、フロントパネル39を有してもよい。フロントパネル39は、ハウジング30の前側と左側とに取り付けられてよい。
【0009】
ハウジング30には、回路基板40に実装されている電子部品41(例えば、central processing unitや、graphics processor unitなどの集積回路(図4参照))を冷却するための冷却ファンが収容されていてよい。そして、ハウジング30には、冷却ファンの駆動時に、ハウジング30に空気を取り込んだり、或いはハウジング30内の空気を排出するための通気口31bが形成されてよい。
【0010】
電子機器1は、回路基板40に実装されている電子部品41を覆い、電子部品41から出る電磁波を遮蔽したり、外部からの電磁波を遮蔽するシールド50(図3参照)を有している。シールド50は導体(鉄や、アルミニウム、ステンレスなど金属)で形成されている。回路基板40の上面にはグランドパターン40a(図4参照)が形成されている。(図4において網掛けが付与されている領域がグランドパターン40aである。)グランドパターン40aは、例えば回路基板40の外周縁に沿って形成される。シールド50の外周部50aはグランドパターン40aに接しており、グランド部として機能している。電子機器1は、回路基板40に実装されている電子部品を冷却するためのヒートシンク59を有してもよい。
【0011】
図3で示すように、電子機器1は、ハウジング30内に配置されている前アンテナ45を有している。前アンテナ45は、Wi-Fiや、Bluetooth(登録商標)など規格による無線通信のためのアンテナである。前アンテナ45は、例えば金属板で形成される。前アンテナ45は、回路基板40やシールド50とは異なる部品によって支持されている。例えば、前アンテナ45は、ハウジング30の内面に取り付けられていたり、或いは、ハウジング30に収容されている部品(例えば、ケース61(図2))の外面に取り付けられていてよい。ケース61は、例えば電源ユニットや、光ディスクドライブなどの装置のケースである。
【0012】
図で示す例では、前アンテナ45は電子機器1の前右部に配置されている。前アンテナ45は、回路基板40の前縁40bの右部に沿って配置されている。前アンテナ45の配置はこれに限られない。前アンテナ45は、例えば、回路基板40の上側、下側、右側、左側、又は後側に配置されてよい。
【0013】
図6で示すように、電子機器1は、後アンテナ40cを有している。後アンテナ40cは回路基板40に印刷されているパターンアンテナである。後アンテナ40cは、前アンテナ45と同様、Wi-Fiや、Bluetooth(登録商標)など規格による無線通信のためのアンテナである。後アンテナ40cは、回路基板40に形成されている配線パターン(不図示)を介して無線通信モジュール47に接続されている。無線通信モジュール47は、例えば、Wi-Fi信号を処理するWi-Fiモジュールと、Bluetooth信号を処理するBluetoothモジュールとを含む。
【0014】
後アンテナ40cは、前アンテナ45から離れた位置に形成されている。具体的には、後アンテナ40cは、回路基板40の後縁の左部に形成されている。前アンテナ45と後アンテナ40cは回路基板40の対角線L1(図4参照)を挟んで互いに反対側に位置している。図で示す例とは異なり、電子機器1は、後アンテナ40cとして、金属板で形成されているアンテナを有してもよい。
【0015】
図3で示すように、電子機器1はケーブル46を有している。ケーブル46は同軸ケーブルである。前アンテナ45にケーブル46の端部が接続されている。図で示す例では、前アンテナ45にケーブル46が接続されている。ケーブル46の反対側の端部に、コネクタ46aが設けられている。ケーブル46はこのコネクタ46aによって回路基板40に接続され、アンテナ45は、ケーブル46と、回路基板40に形成されている配線パターンとを介して、無線通信モジュール47(具体的には、Wi-Fiモジュール且つBluetoothモジュール)に接続されている。
【0016】
ケーブル46は、図3に示すように、シールド50の上面に配置されている。ケーブル46は、電子機器1の右部において前アンテナ45から後方に延びている。そして、ケーブル46は、電子機器1の後部において、屈曲し、その屈曲部から左方に延びている。ケーブル46は、その端部(左端)に、コネクタ46aを有している。コネクタ46aは無線通信モジュール47の近くに位置している。図で示すように、コネクタ46aは無線通信モジュール47とアンテナ40cとの間に位置してよい。
【0017】
図3で示すように、シールド50には複数の接着テープ72(取付部材)が貼り付けられている。接着テープ72は、紙、布、樹脂フィルム、金属箔など、柔軟性を有する基材と、基材の片面に塗布されている接着剤とを有している。ケーブル46は、複数の接着テープ72によってシールド50の上面に取り付けられている。ケーブル46は、接着テープ72が設けられている部分において、シールド50の上面に接している。複数の接着テープ72は、ケーブル46の延伸方向で間隔をあけて並んでいる。各接着テープ72はケーブル46をシールド50の上面に取り付けている。接着テープ72を利用することによって、シールド50に加工を施すことなく、ケーブル46をシールド50に取り付けることができる。接着テープ72は薄い部材であり、後述する緩衝部材71A・71B・71Cとは異なり、ハウジング30の内面に接していない。図で示す例とは異なり、シールド50にフック(取付部材)が形成されてもよい。そして、ケーブル46は、このフックに引っかけられて、シールド50に取り付けられてもよい。
【0018】
図3で示すように、電子機器1は、前アンテナ45に近い位置に、第1緩衝部材71Aを有している。第1緩衝部材71Aは、図2で示すように、シールド50の上面とハウジング30の内面との間に配置され、シールド50の上面とハウジング30の内面(上ハウジング部材31Aの下面)とに接している。第1緩衝部材71Aは回路基板40の厚さ方向での変形が可能な材料で形成されている。例えば、第1緩衝部材71Aの材料は、ゴムや、スポンジなどである。ケーブル46は第1緩衝部材71Aとシールド50との間を通過している。ハウジング30の内面は第1緩衝部材71Aをシールド50に押している。
【0019】
図6で示すように、電子機器1は、後アンテナ40cに近い位置に、第2緩衝部材71Bを有している。第2緩衝部材71Bも、第1緩衝部材71Aと同様に、シールド50の上面とハウジング30の内面(上ハウジング部材31Aの下面)とに接している。第2緩衝部材71Bの材料も、ゴムや、スポンジであってよい。ケーブル46は第2緩衝部材71Bとシールド50との間を通過している。ハウジング30の内面は第2緩衝部材71Bをシールド50に押している。
【0020】
この構造によると、ケーブル46がシールド50に接している状態が長期間に亘って安定的に維持され得る。例えば、CPUやGPUが発する熱やシールド50の凹凸に起因して接着テープ72の接着性が低下する場合でも、緩衝部材71A・71Bの位置でのケーブル46とシールド50との接触は安定的に維持される。また、このような緩衝部材71A・71Bを利用することによって、シールド50に加工を施すことなく、ケーブル46をシールド50に接触させることができる。
【0021】
図3で示すように、電子機器1は第3緩衝部材71Cをさらに有してもよい。第3緩衝部材71Cは、ケーブル46の延伸方向において2つの緩衝部材71A・71Bの間に位置している。第3緩衝部材71Cも、緩衝部材71A・71Bと同様に、シールド50の上面とハウジング30の内面(上ハウジング部材31Aの下面)とに接している。第3緩衝部材71Cの材料も、ゴムや、スポンジであってよい。ケーブル46は第3緩衝部材71Cとシールド50との間を通過している。ハウジング30の内面は第3緩衝部材71Cをシールド50に押している。
【0022】
緩衝部材71A・71B・71Cの下面に接着剤が塗布され、緩衝部材71A・71B・71Cは接着剤によってシールド50に貼り付けられていてよい。この構造によると、電子機器1の組み立て工程において上ハウジング部材31Aと下ハウジング部材31Bとを組み合わせる前に、緩衝部材71A・71B・71Cによってケーブル46の位置を固定できる。
【0023】
上述したように、電子機器1では、ケーブル46のシールド50への取り付けに、緩衝部材71A・71B・71Cだけでなく、接着テープ72も利用されている。このように、緩衝部材71A・71B・71Cと接着テープ72とを共用することによって、ケーブル46の固定に要する費用を抑えつつ、ケーブル46のシールド50への接触をより確実に維持できる。
【0024】
ケーブル46は、複数の接着テープ72と、緩衝部材71A・71B・71Cとによってシールド50に取り付けられている。第1緩衝部材71Aは前アンテナ45に近い位置に設けられている。具体的には、第1緩衝部材71Aと前アンテナ45との距離は、複数の接着テープ72のうち前アンテナ45に最も近い接着テープ72(図3において接着テープ72-1)と前アンテナ45との距離よりも小さい。
【0025】
ケーブル46において前アンテナ45に近い部分がシールド50から離れていると、シールド50から離れている部分もアンテナとして作用してしまい、後アンテナ40cによる受信性能に悪影響が生じる。例えば、シールド50から離れている部分が前アンテナ45から放射された電波を受信してしまい、受信された電波が、ケーブル46(より具体的には、同軸ケーブルの外導体)によってコネクタ46aまでノイズとして伝送され、コネクタ46aの近くにある後アンテナ40cの受信性能に悪影響を生じ得る。これに対し、電子機器1では、前アンテナ45に近い部分が第1緩衝部材71Aによってシールド50に確実に接するので、後アンテナ40cの受信性能に悪影響が生じることを効果的に抑えることができる。
【0026】
第1緩衝部材71Aに押しつけられている部分から前アンテナ45までのケーブル46の長さは、前アンテナ45から送信される電波(無線通信モジュール47から出力される信号)の波長λの4分の1よりも短いのが望ましい。すなわち、図3において部分46bの長さはλ/4よりも短いのが望ましい。これによって、前アンテナ45から放射された電波を、部分46bが受信してしまうことを効果的に抑えることができる。
【0027】
第2緩衝部材71Bは後アンテナ40cに近い位置に設けられている。具体的には、第2緩衝部材71Bと後アンテナ40cとの距離は、複数の接着テープ72のうち後アンテナ40cに最も近い接着テープ72(図3において接着テープ72-3)と後アンテナ40cとの距離よりも小さい。このように、後アンテナ40cに近い部分が第2緩衝部材71Bによってシールド50に確実に接する。
【0028】
ケーブル46において後アンテナ40cに近い部分がシールド50から離れていると、シールド50から離れている部分もアンテナとして作用する場合がある。例えば、後アンテナ40cから放射された電波をケーブル46(シールド50から離れている部分)が受信してしまう場合がある。この場合、受信された電波がケーブル46(より具体的には、同軸ケーブルの外導体)によって前アンテナ45までノイズとして伝送され得る。これに対し、電子機器1では、後アンテナ40cに近い部分が第2緩衝部材71Bによってシールド50に確実に接するので、ケーブル46を伝わるノイズを効果的に低減でき、前アンテナ45の受信性能に悪影響が生じることを効果的に抑えることができる。
【0029】
また、第2緩衝部材71Bに押しつけられている部分から後アンテナ40cまでのケーブル46の長さは、後アンテナ40cから送信される電波(無線通信モジュール47から送信される信号)の波長λの4分の1よりも短いのが望ましい。すなわち、図6において部分46cの長さはλ/4よりも短いのが望ましい。これによって、後アンテナ40cから放射された電波を、部分46cが受信してしまうことを効果的に抑えることができる。
【0030】
前アンテナ45と後アンテナ40cは、例えば、同じ周波数帯の電波を使用し相互に異なっている2つの通信規格(例えば、Wi-Fi規格とBluetooth規格)において使用されてよい。このような使用時に、ケーブル46において前アンテナ45に近い部分と後アンテナ40cに近い部分とがシールド50から離れていると、シールド50から離れている2つの部分がそれぞれ受信アンテナ及び送信アンテナとして作用してしまい、2つの通信規格による電波の干渉が生じえる。そして、前アンテナ45による受信性能と、後アンテナ40cによる受信性能とに悪影響が生じ得る。電子機器1では、2つのアンテナ45に近い部分と後アンテナ40cに近い部分が、2つの緩衝部材71A・71Bによってケーブル46がシールド50に確実に接するので、そのような干渉を抑えることができる。また、電子機器1では、2つの緩衝部材71A・71Bの間には第3緩衝部材71Cが設けられ、この緩衝部材71Cによっても、ケーブル46がシールド50に確実に接するので、そのような干渉を効果的に抑えることができる。
【0031】
図で示す例では、第3緩衝部材71Cと後アンテナ40cとの距離も、複数の接着テープ72のうち後アンテナ40cに最も近い接着テープ72(図3において接着テープ72-3)と後アンテナ40cとの距離よりも小さい。
【0032】
図2で示すように、ハウジング30の内面(上ハウジング部材31Aの下面)は、緩衝部材71Aに向かって突出する凸部31aを有している。ケーブル46は凸部31aの下方に位置している。この構造によると、ケーブル46とシールド50との間の接触圧が確保し易くなる。ハウジング30の内面は、この凸部31aを、他の緩衝部材71B・71Cの位置にも有してよい。そして、凸部31aは緩衝部材71B・71Cをシールド50に向けて押してもよい。
【0033】
図2で示すように、シールド50は、その前部に、凸部51aを有している。凸部51aは、シールド50の外周部50a(図3参照)とは異なり、回路基板40の上面に接していない部分である。凸部51aの下面は回路基板40に実装されている電子部品(不図示)を覆っている。緩衝部材71Aは凸部51aとハウジング30の内面とによって挟まれている。この構造によると、緩衝部材71Aの厚さを低減できる。
【0034】
図3で示すように、シールド50は、その後部に、凸部51bを有している。凸部51bの下面は回路基板40に実装されている電子部品(不図示)を覆っている。第2緩衝部材71Bは凸部51bとハウジング30の内面とによって挟まれている。この構造によると、第2緩衝部材71Bの厚さを低減できる。また、図3で示すように、シールド50は、第3緩衝部材71Cの位置にも凸部51cを有している。第3緩衝部材71Cは凸部51cとハウジング30の内面とによって挟まれている。
【0035】
図3で示すように、シールド50には、上述した凸部51a・51b・51cの他にも、回路基板40に実装されている電子部品を覆う複数の凸部51mが形成されている。第1緩衝部材71Aが設けられているシールド50の凸部51aは、シールド50が有している複数の凸部のうち最も前アンテナ45に近い凸部である。すなわち、ケーブル46は、前アンテナ45から延びる方向(後方)において最初に通過する凸部51aに対して、第1緩衝部材71Aによって取り付けられている。ケーブル46は、凸部51aより後方の位置では、接着テープ72(取付部材)やシールド50に形成されるフック(取付部材)によってシールド50に取り付けられていてよい。
【0036】
また、図3で示すように、第2緩衝部材71Bが設けられているシールド50の凸部51bは、シールド50が有している複数の凸部のうち最も後アンテナ40cに近い凸部である。すなわち、ケーブル46は、後アンテナ40c寄りの端部に設けられているコネクタ46aから延びている方向(右方)において最初に通過する凸部51bに対して、第2緩衝部材71Bによって取り付けられている。
【0037】
図5で示すように、回路基板40を平面視したとき、緩衝部材71Aと前アンテナ45との距離D1は、前アンテナ45のサイズD2よりも小さい。サイズD2は、例えば、左右方向での幅である。前アンテナ45の高さ(上下方向での幅)が前アンテナ45の左右方向での幅よりも大きい場合、緩衝部材71Aと前アンテナ45との距離D1は、前アンテナ45の高さより小さくてもよい。
【0038】
シールド50は、緩衝部材71A・71Bが配置され且つケーブル46が通過する位置に目印を有してもよい。例えば、図5及び図6で示されるように、シールド50の上面に、ケーブル46が通過する領域Ra・Rbを示す線が描かれてもよい。
【0039】
以上説明したように、電子機器1は、回路基板40のグランドパターン40aに接しており、グランド部として機能しているシールド50を有している。ケーブル46は前アンテナ45から延びており、回路基板40に接続され、シールド50と第1緩衝部材71Aとの間を通過している。また、ケーブル46は、シールド50と第2緩衝部材71Bとの間を通過している。ハウジング30の内面(上ハウジング部材31Aの下面)は緩衝部材71A・71Bをシールド50に押している。この構造によると、ケーブル46がシールド50に接している状態が長期間に亘って安定的に維持され得る。なお、緩衝部材71A・71B・71Cと接着テープ72がシールド50に押さえるケーブルの数は1本より多くてもよい。
【0040】
また、第1緩衝部材71Aと前アンテナ45との距離は、複数の接着テープ72のうち前アンテナ45に最も近い接着テープ72(図3において接着テープ72-1)と前アンテナ45との距離よりも小さい。これによって、ケーブル46によってノイズが伝送され、そのノイズが後アンテナ40cの受信性能に悪影響を生じることを、効果的に抑えることができる。
【0041】
また、第2緩衝部材71Bと後アンテナ40cとの距離は、複数の接着テープ72のうち後アンテナ40cに最も近い接着テープ72(図3において接着テープ72-3)と後アンテナ40cとの距離よりも小さい。これによって、ケーブル46によってノイズが伝送され、そのノイズが前アンテナ45の受信性能に悪影響を生じることを、効果的に抑えることができる。
【0042】
なお、図で示した電子機器1では、緩衝部材71A・71B・71Cはハウジング30の内面によってシールド50の上面に押されていた。これとは異なり、緩衝部材71A・71B・71Cはハウジング30が収容し且つシールド50の上側に配置される部材によって押されてもよい。例えば、ハウジング30には光ディスクドライブが収容されたり、冷却ファンが収容されてよい。緩衝部材71A・71B・71Cの一部又は全部は、光ディスクドライブや冷却ファンによって、シールド50の上面に押されてもよい。
【0043】
また、図で示した電子機器1では、緩衝部材71A・71B・71Cはシールド50の上面に押され、ケーブル46はシールド50に接していた。これとは異なり、緩衝部材71A・71B・71Cの一部又は全部は、回路基板40のグランドパターン40aに押され、ケーブル46はグランドパターン40aに接してもよい。これとは異なり、電子機器1は、回路基板40のグランドパターン40aに接しており且つシールド50とは異なる導体部材を有してもよい。この場合、緩衝部材71A・71B・71Cの一部又は全部はこの導体部材に押され、ケーブル46は導体部材に接していてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1:電子機器、30:ハウジング、31A:上ハウジング部材、31B:下ハウジング部材、31a:凸部、31b:通気口、39:フロントパネル、40:回路基板、40a:グランドパターン、40b:前縁、40c:後アンテナ、41:電子部品、45:前アンテナ、46:ケーブル、50:シールド、50a:外周部、51a・51b・51c・51m:凸部、61:ケース、71A・71B・71C:緩衝部材、72:接着テープ。

図1
図2
図3
図4
図5
図6