(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】鋳型造型用粘結剤樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22C 1/22 20060101AFI20240708BHJP
【FI】
B22C1/22 C
(21)【出願番号】P 2023525151
(86)(22)【出願日】2021-05-31
(86)【国際出願番号】 JP2021020646
(87)【国際公開番号】W WO2022254503
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 大喜
(72)【発明者】
【氏名】山口 大典
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-522388(JP,A)
【文献】特開2020-163410(JP,A)
【文献】特開2013-063466(JP,A)
【文献】特開2000-246391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルフリルアルコール、ビスヒドロキシメチルフラン、及びフラン樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤樹脂の製造方法であって、
フルフリルアルコールとホルムアルデヒドを、リン酸
又はホウ酸
である触媒aと、
前記触媒aがリン酸である場合にはリン酸の一中和塩であり、前記触媒aがホウ酸である場合にはホウ酸の一中和塩である中和塩aとの存在下で反応させる工程Aを有し、
前記工程Aにおいて、前記触媒aの使用量がフルフリルアルコール1モルに対して0.0002モル以上0.01モル以下であり、前記中和塩aの使用量がフルフリルアルコール1モルに対して酸換算で0.003モル以上である、鋳型造型用粘結剤樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記工程Aにおける反応開始前の反応液のpHが2以上5.5以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程Aにおいて、前記中和塩aの使用量が、フルフリルアルコール1モルに対して酸換算で0.15モル以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記中和塩aがアルカリ金属塩及びアミン塩から選ばれる1種以上である、請求項1~3の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記鋳型造型用粘結剤樹脂中のフルフリルアルコールの含有量が30質量%以下である、請求項1~4の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記鋳型造型用粘結剤樹脂中のビスヒドロキシメチルフランの含有量が8質量%以上である、請求項1~5の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記鋳型造型用粘結剤樹脂中のフルフリルアルコールの含有量が10質量%以上である、請求項1~6の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記鋳型造型用粘結剤樹脂中のビスヒドロキシメチルフランの含有量が40質量%以下である、請求項1~7の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記鋳型造型用粘結剤樹脂中のフラン樹脂の含有量が30質量%以上60質量%以下である、請求項1~8の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記フラン樹脂が、尿素変性フラン樹脂及びフルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物よりなる群から選ばれる1種以上、並びに前記群から選ばれる2種以上の共縮合物よりなる群から選ばれる1種以上である、請求項1~9の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記触媒aの中和度[中和塩a/(触媒a+中和塩a)]が25%以上100%未満である、請求項1~10の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
フルフリルアルコール(成分A)、ビスヒドロキシメチルフラン(成分B)、フラン樹脂(成分C)及び水(成分D)を含有し、
下記の条件(1)~(4)を満たす鋳型造型用粘結剤組成物。
条件(1):前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記成分Aの含有量が30質量%以下
条件(2):前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記成分Bの含有量が7質量%以上
条件(3):前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記成分Dの含有量が25質量%以下
条件(4):前記鋳型造型用粘結剤組成物100g中のリン酸
又はホウ酸
である触媒aの含有量が0.01g以上0.50g以下、かつ
前記触媒aがリン酸である場合にはリン酸の一中和塩であり、前記触媒aがホウ酸である場合にはホウ酸の一中和塩である中和塩aの含有量が酸換算で0.13g以
上
【請求項13】
前記フラン樹脂が、尿素変性フラン樹脂及びフルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物よりなる群から選ばれる1種以上、並びに前記群から選ばれる2種以上の共縮合物よりなる群から選ばれる1種以上を含有する、請求項12に記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
【請求項14】
前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記成分Aの含有量が0質量%超である、請求項12又は13に記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
【請求項15】
前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記成分Bの含有量が30質量%以下である、請求項12~14の何れか1項に記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
【請求項16】
前記鋳型造型用粘結剤組成物100g中の前記中和塩aの含有量が15g以下である、請求項12~15の何れか1項に記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
【請求項17】
前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記成分Bの含有量に対する前記成分Cの含有量の比(前記成分Cの含有量/前記成分Bの含有量)が1以上7以下である、請求項12~16の何れか1項に記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
【請求項18】
前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記成分Cの含有量が25質量%以上50質量%以下である、請求項12~17の何れか1項に記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
【請求項19】
前記触媒aの含有量と前記中和塩aの酸換算での含有量の合計量に対する前記中和塩aの酸換算での含有量の比[中和塩aの酸換算での含有量/触媒aの含有量+中和塩aの酸換算での含有量]が0.25以上1未満である、請求項12~18の何れか1項に記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
【請求項20】
請求項12~19の何れか1項に記載の鋳型造型用粘結剤組成物と、当該鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤を含む硬化剤組成物と、を含有する、鋳型造型用組成物。
【請求項21】
耐火性粒子と、請求項12~19の何れか1項に記載の鋳型造型用粘結剤組成物と、当該鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤を含む硬化剤組成物と、を含有する、鋳型用組成物。
【請求項22】
耐火性粒子と、請求項12~19の何れか1項に記載の鋳型造型用粘結剤組成物と、当該鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤を含む硬化剤組成物と、を混合して鋳型用組成物を得る混合工程、及び前記鋳型用組成物を型枠に詰め、当該鋳型用組成物を硬化する硬化工程を含む鋳型の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳型造型用粘結剤樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、酸硬化性鋳型は、珪砂等の耐火性粒子に、酸硬化性樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤組成物と、スルホン酸、硫酸、リン酸等を含有する硬化剤組成物とを添加し、これらを混練した後、得られた混練砂を木型等の原型に充填し、酸硬化性樹脂を硬化させて製造される。酸硬化性樹脂には、フラン樹脂やフェノール樹脂等が用いられており、フラン樹脂には、フルフリルアルコール・尿素・ホルムアルデヒド樹脂、フルフリルアルコール・ホルムアルデヒド樹脂、フルフリルアルコール・フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、その他公知の変性フラン樹脂等が用いられている。このような鋳型の製造方法は自由度の高い造型作業が可能であり、また鋳型の熱的性質に優れることから高品質の鋳物が製造できるため、機械部品や建設機械部品、あるいは自動車用部品等の鋳物を鋳造する際に広く使用されている。
【0003】
鋳型を製造する上で、重要な条件の一つとして、鋳型製造時(樹脂硬化時)の作業環境の改善が挙げられ、特に、鋳型の製造時に揮発するフルフリルアルコールを低減するため、フラン樹脂中のモノマー状のフルフリルアルコールの低減が望まれている。
【0004】
例えば、特表2014-501175号公報には、モノマー状のフルフリルアルコールの含有量が少ない粘結剤組成物を用いることで、混練時や鋳型造型時のフルフリルアルコールおよびホルムアルデヒドの放出を低減できることが開示されている。
【0005】
また、特開昭56-61420号公報には、反応を充分に行うことで、樹脂構造中に高い割合でフルフリルアルコール骨格が導入された、モノマー状のフルフリルアルコールの含有量が少ない鋳型造型用のフェノール-フルフリルアルコール-ホルムアルデヒド樹脂の製造方法が開示されている。
【0006】
さらに、特開2013-151019号公報には、フルフリルアルコールの代替として、5-ヒドロキシメチルフルフラールや2,5-ビスヒドロキシメチルフランを含有する粘結剤組成物中を用いることで、同じ可使時間で抜型時間を短くすることにより、鋳型生産性を向上させ、かつ硬化速度と鋳型強度を向上させることができることが開示されている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、フルフリルアルコール、ビスヒドロキシメチルフラン、及びフラン樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤樹脂の製造方法であって、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドを、リン酸及びホウ酸から選ばれる1種以上の触媒aと、リン酸及びホウ酸の一中和塩から選ばれる1種以上の中和塩aとの存在下で反応させる工程Aを有し、前記工程Aにおいて、前記触媒aの使用量がフルフリルアルコール1モルに対して0.0002モル以上0.01モル以下であり、前記中和塩aの使用量がフルフリルアルコール1モルに対して酸換算で0.003モル以上である、鋳型造型用粘結剤樹脂の製造方法である。
【0008】
また、本発明は、フルフリルアルコール(成分A)、ビスヒドロキシメチルフラン(成分B)、フラン樹脂(成分C)及び水(成分D)を含有し、下記の条件(1)~(4)を満たす鋳型造型用粘結剤組成物である。
条件(1):前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記成分Aの含有量が30質量%以下
条件(2):前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記成分Bの含有量が7質量%以上
条件(3):前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記成分Dの含有量が25質量%以下
条件(4):前記鋳型造型用粘結剤組成物100g中のリン酸及びホウ酸から選ばれる1種以上である触媒aの含有量が0.01g以上0.50g以下、かつリン酸およびホウ酸の1中和塩から選ばれる1種以上である中和塩aの含有量が酸換算で0.13g以上含有する
【0009】
また、本発明は、前記鋳型造型用粘結剤組成物と、当該鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤を含む硬化剤組成物と、を含有する、鋳型造型用組成物である。
【0010】
また、本発明は、耐火性粒子と、前記鋳型造型用粘結剤組成物と、当該鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤を含む硬化剤組成物と、を含有する、鋳型用組成物である。
【0011】
また、本発明は、耐火性粒子と、前記鋳型造型用粘結剤組成物と、当該鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤を含む硬化剤組成物と、を混合して鋳型用組成物を得る混合工程、及び前記鋳型用組成物を型枠に詰め、当該鋳型用組成物を硬化する硬化工程を含む鋳型の製造方法である。
【発明の詳細な説明】
【0012】
従来から提案されているモノマー状のフルフリルアルコールの含有量が少ない粘結剤組成物では、鋳型強度が不十分であり、改善の余地があった。また、鋳型強度を向上させるためにビスヒドロキシメチルフランを別添することも考えられるが、経済的観点から現実的ではない。
【0013】
本発明は、反応速度が速く、モノマー状のフルフリルアルコールの含有量が少なく、ビスヒドロキシメチルフランの含有量が多く、粘度が低い鋳型造型用粘結剤樹脂の製造方法を提供する。また、本発明は、モノマー状のフルフリルアルコールの含有量が少なく、ビスヒドロキシメチルフランの含有量が多く、粘度が低く、鋳型強度を向上することができる鋳型造型用粘結剤組成物、鋳型造型用組成物、及び鋳型用組成物、並びに鋳型の製造方法を提供する。
【0014】
本発明は、フルフリルアルコール、ビスヒドロキシメチルフラン、及びフラン樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤樹脂の製造方法であって、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドを、リン酸及びホウ酸から選ばれる1種以上の触媒aと、リン酸及びホウ酸の一中和塩から選ばれる1種以上の中和塩aとの存在下で反応させる工程Aを有し、前記工程Aにおいて、前記触媒aの使用量がフルフリルアルコール1モルに対して0.0002モル以上0.01モル以下であり、前記中和塩aの使用量がフルフリルアルコール1モルに対して酸換算で0.003モル以上である、鋳型造型用粘結剤樹脂の製造方法である。
【0015】
また、本発明は、フルフリルアルコール(成分A)、ビスヒドロキシメチルフラン(成分B)、フラン樹脂(成分C)及び水(成分D)を含有し、下記の条件(1)~(4)を満たす鋳型造型用粘結剤組成物である。
条件(1):前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記成分Aの含有量が30質量%以下
条件(2):前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記成分Bの含有量が7質量%以上
条件(3):前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記成分Dの含有量が25質量%以下
条件(4):前記鋳型造型用粘結剤組成物100g中のリン酸及びホウ酸から選ばれる1種以上である触媒aの含有量が0.01g以上0.50g以下、かつリン酸およびホウ酸の1中和塩から選ばれる1種以上である中和塩aの含有量が酸換算で0.13g以上含有する
【0016】
また、本発明は、前記鋳型造型用粘結剤組成物と、当該鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤を含む硬化剤組成物と、を含有する、鋳型造型用組成物である。
【0017】
また、本発明は、耐火性粒子と、前記鋳型造型用粘結剤組成物と、当該鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤を含む硬化剤組成物と、を含有する、鋳型用組成物である。
【0018】
また、本発明は、耐火性粒子と、前記鋳型造型用粘結剤組成物と、当該鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤を含む硬化剤組成物と、を混合して鋳型用組成物を得る混合工程、及び前記鋳型用組成物を型枠に詰め、当該鋳型用組成物を硬化する硬化工程を含む鋳型の製造方法である。
【0019】
本発明によれば、反応速度が速く、モノマー状のフルフリルアルコールの含有量が少なく、ビスヒドロキシメチルフランの含有量が多く、粘度が低い鋳型造型用粘結剤樹脂の製造方法を提供することができる。また、本発明は、モノマー状のフルフリルアルコールの含有量が少なく、ビスヒドロキシメチルフランの含有量が多く、粘度が低く、鋳型強度を向上することができる鋳型造型用粘結剤組成物、鋳型造型用組成物、及び鋳型用組成物、並びに鋳型の製造方法を提供することができる。
【0020】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0021】
<鋳型造型用粘結剤樹脂の製造方法>
本実施形態の鋳型造型用粘結剤樹脂(以下、単に粘結剤樹脂ともいう)の製造方法は、
フルフリルアルコール、ビスヒドロキシメチルフラン(以下、BHMFともいう)、及びフラン樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤樹脂の製造方法であって、
フルフリルアルコールとホルムアルデヒドを、リン酸及びホウ酸から選ばれる1種以上の触媒aと、リン酸及びホウ酸の一中和塩から選ばれる1種以上の中和塩aとの存在下で反応させる工程Aを有し、
前記工程Aにおいて、前記触媒aの使用量がフルフリルアルコール1モルに対して0.0002モル以上0.01モル以下であり、前記中和塩aの使用量がフルフリルアルコール1モルに対して酸換算で0.003モル以上である。
【0022】
本実施形態の粘結剤樹脂の製造方法によれば、反応速度が速く、モノマー状のフルフリルアルコールの含有量が少なく、BHMFの含有量が多く、粘度が低い粘結剤樹脂を製造することができる。前記粘結剤組成物の製造方法がこのような効果を奏する理由は定かではないが、以下の様に考えられる。
【0023】
粘結剤樹脂の製造触媒である前記触媒aの量が少なすぎるとフルフリルアルコール(成分A)の反応が極めて遅くなり、BHMF(成分B)の生成が少なくなる。一方、前記触媒aの量が多すぎるとフルフリルアルコールの反応は早くなるが、BHMFの縮合による消失が起こりやすくなると考えられる。前記中和塩aを一定量以上含有することで、前記触媒aであるリン酸及びホウ酸の解離時の平衡が解離を抑える方向に調節され、フルフリルアルコールの反応が適度に早く、BHMFが生成しやすく、BHMFの反応も適度に抑えられ、フルフリルアルコールの含有量が少なく、BHMFの含有量が高い粘結剤樹脂が得られると考えられる。BHMFは、フルフリルアルコールやフラン樹脂(成分C)よりも反応性が高いため、本実施形態の粘結剤組成物は、フルフリルアルコールの含有量が少ないにもかかわらず、BHMF(成分B)の含有量が高いため、粘度が低く、粘結剤の鋳型強度が高まると考えられる。
【0024】
〔工程A〕
前記工程Aは、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドを、リン酸及びホウ酸から選ばれる1種以上の触媒aと、リン酸及びホウ酸の一中和塩から選ばれる1種以上の中和塩aとの存在下で反応させる工程である。
【0025】
[触媒a]
前記触媒aは、リン酸及びホウ酸から選ばれる1種以上の触媒である。前記触媒aは、反応速度を向上させる観点から、リン酸を含有するのが好ましく、リン酸がより好ましい。
【0026】
前記工程Aにおいて、前記触媒aの使用量は、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドの反応速度を向上させる観点から、フルフリルアルコール1モルに対して0.0002モル以上であり、0.0004モル以上が好ましく、0.0006モル以上がより好ましく、0.0008モル以上が更に好ましく、0.0009モル以上がより更に好ましい。前記工程Aにおいて、前記触媒aの使用量は、粘結剤樹脂中のBHMFの含有量を向上させる観点から、フルフリルアルコール1モルに対して0.01モル以下であり、0.008モル以下が好ましく、0.005モル以下がより好ましく、0.003モル以下が更に好ましく、0.002モル以下がより更に好ましい。
【0027】
[中和塩a]
前記中和塩aは、リン酸及びホウ酸の一中和塩から選ばれる1種以上の中和塩である。前記中和塩aは、反応速度を向上させる観点から、リン酸の一中和塩を含有するのが好ましく、リン酸の一中和塩がより好ましい。
【0028】
前記工程Aにおいて、前記中和塩aの使用量は、粘結剤樹脂中のBHMFの含有量を向上させる観点、及びフルフリルアルコールとホルムアルデヒドの反応速度を向上させる観点から、フルフリルアルコール1モルに対して、酸換算で0.003モル以上であり、0.004モル以上が好ましく、0.005モル以上がより好ましく、0.006モル以上が更に好ましく、0.009モル以上がより更に好ましく、0.010モル以上がより更に好ましく、0.014モル以上がより更に好ましい。前記工程Aにおいて、前記中和塩aの使用量は、粘結剤樹脂中のBHMFの含有量を向上させる観点から、フルフリルアルコール1モルに対して、酸換算で、0.15モル以下が好ましく、0.12モル以下がより好ましく、0.10モル以下が更に好ましく、0.04モル以下がより更に好ましく、0.03モル以下がより更に好ましい。
【0029】
前記中和塩aは、アルカリ金属塩及びアミン塩から選ばれる1種以上であってよい。前記アルカリ金属塩としてはナトリウム塩及びカリウム塩から選ばれる1種以上が例示できる。前記アミン塩としては、アルキル基を有するアミン塩が例示できる。アルキル基はヒドロキシ基を有していてもよく、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドの反応速度を向上させる観点及び粘結剤樹脂中のBHMFの含有量を向上させる観点から、ヒドロキシ基を有することが好ましい。
【0030】
前記アミン塩がアルキル基を有する場合、当該アルキル基の炭素数は、粘結剤樹脂中のBHMFの含有量を向上させる観点から、2以上が好ましく、3がより好ましい。前記アミン塩が、アルキル基を有する場合、当該アルキル基の炭素数は、フルフリルアルコールとの溶解性の観点、及びフルフリルアルコールとホルムアルデヒドの反応速度を向上させる観点から、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下が更に好ましく、4以下がより更に好ましく、3がより更に好ましい。
【0031】
前記アミン塩は、ホルムアルデヒドとの反応性が低い観点から、3級アミンが好ましい。当該3級アミンとしては、トリエタノールアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、及びトリオクチルアミン等が例示できる。
【0032】
前記中和塩aは、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドの反応速度を向上させる観点及び粘結剤樹脂中のBHMFの含有量を向上させる観点から、アミン塩が好ましく、炭素数2以上10以下のアルキル基を有するアミン塩がより好ましく、炭素数2以上10以下のアルキル基を有する3級アミン塩が更に好ましく、ヒドロキシ基を有する炭素数2以上10以下のアルキル基を有する3級アミン塩がより更に好ましい。また、中和塩aは、同様の観点から、トリエタノールアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、及びトリオクチルアミンから選ばれる1種以上が好ましく、トリエタノールアミン及びトリイソプロパノ-ルアミンから選ばれる1種以上がより好ましい。
【0033】
前記触媒a及び前記中和塩aのフルフリルアルコール1モルに対する量は、リン酸及びホウ酸から選ばれる1種以上の量とアルカリ金属及びアミンから選ばれる1種以上の量で調整することができる。
【0034】
前記触媒aの中和度[中和塩a/(触媒a+中和塩a)]は、粘結剤樹脂中のBHMFの含有量を向上させる観点、及びフルフリルアルコールとホルムアルデヒドの反応速度を向上させる観点から、好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上、より更に好ましくは85%以上、より更に好ましくは90%以上、より更に好ましくは93%以上であり、同様の観点から、好ましくは100%未満、より好ましくは97%以下、更に好ましくは96%以下である。
【0035】
[フラン樹脂]
前記フラン樹脂は、フルフリルアルコールを含有するモノマー組成物を重合して得られるものであり、鋳型造型用の粘結剤に使用できる限り、特に限定はない。当該フラン樹脂は、窒素原子を含む樹脂のみでもよいし、窒素原子を含まない樹脂のみでもよいし、窒素原子を含む樹脂と窒素原子を含まない樹脂の混合物でもよい。窒素原子を含むフラン樹脂としては、フルフリルアルコールと尿素とアルデヒド類の縮合物(尿素変性フラン樹脂)、フルフリルアルコールとメラミンとアルデヒド類の縮合物、及びフルフリルアルコールとエチレン尿素とアルデヒド類の縮合物よりなる群から選ばれる1種以上が例示できる。窒素原子を含まないフラン樹脂としては、フルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物、及びフルフリルアルコールとフェノール類とアルデヒド類の縮合物よりなる群から選ばれる1種以上が例示できる。なお、本明細書において、フルフリルアルコールはフラン樹脂に含まれない。
【0036】
前記フラン樹脂は、モノマー状のフルフリルアルコールの含有量が少なく、BHMFの含有量が多く、粘度が低く、鋳型強度を向上させる観点から、フルフリルアルコールと尿素とアルデヒド類の縮合物(尿素変性フラン樹脂)、フルフリルアルコールとメラミンとアルデヒド類の縮合物、フルフリルアルコールとエチレン尿素とアルデヒド類の縮合物、フルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物、及びフルフリルアルコールとフェノール類とアルデヒド類の縮合物よりなる群から選ばれる1種以上、並びに前記群から選ばれる2種以上の共縮合物よりなる群から選ばれる1種以上を含有するのが好ましく、尿素変性フラン樹脂及びフルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物よりなる群から選ばれる1種以上、並びに前記群から選ばれる2種以上の共縮合物よりなる群から選ばれる1種以上を含有するのがより好ましい。
【0037】
前記フラン樹脂中の前記尿素変性フラン樹脂及びフルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物よりなる群から選ばれる1種以上、並びに前記群から選ばれる2種以上の共縮合物よりなる群から選ばれる1種以上の含有量の合計は、モノマー状のフルフリルアルコールの含有量が少なく、BHMFの含有量が多く、粘度が低く、鋳型強度を向上させる観点から、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましく、実質的に100質量%が更に好ましく、100質量%がより更に好ましい。なお、本明細書において、「実質的に」とは、不純物程度の量は含有してもよいことを意味する。
【0038】
前記アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキザール、フルフラール、テレフタルアルデヒド、ヒドロキシメチルフルフラール等が挙げられ、これらのうち1種以上を適宜使用できる。鋳型強度向上の観点からは、ホルムアルデヒドを用いるのが好ましく、造型時のホルムアルデヒド発生量低減の観点からは、フルフラールやテレフタルアルデヒド、ヒドロキシメチルフルフラールを用いるのが好ましい。
【0039】
前記アルデヒド類は、反応速度が速く、モノマー状のフルフリルアルコールの含有量が少なく、BHMFの含有量が多く、粘度が低い鋳型造型用粘結剤樹脂を得る観点、及びモノマー状のフルフリルアルコールの含有量が少なく、BHMFの含有量が多く、粘度が低く、鋳型強度を向上することができる鋳型造型用粘結剤組成物を得る観点から、ホルムアルデヒドを含有する。アルデヒド類中のホルムアルデヒドの含有量は、同様の観点から、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましく、実質的に100質量%がより更に好ましい。ここで「実質的100質量%」とは、意図せずに含まれる成分を含みうることを意味する。意図せずに含まれる成分としては、例えば、不可避的不純物が挙げられる。
【0040】
前記フェノール類としては、フェノール、クレゾール、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールFなどが挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
【0041】
前記工程Aにおいて、所定量の前記触媒a及び前記中和塩aを用い、フルフリルアルコールとアルデヒド類、必要に応じてフェノール類、尿素やエチレン尿素等の尿素類、及びメラミン等を反応させることにより、フラン樹脂を得ることができる。反応温度等の条件は、目的とするフラン樹脂によって適宜調整することができる。例として、目的とするフラン樹脂が「フルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物、又はフルフリルアルコール、フェノール類及びアルデヒド類の縮合物よりなる群から選ばれる1種以上(以下、窒素原子非含有フラン樹脂ともいう)」の場合と、「尿素変性フラン樹脂、フルフリルアルコールとメラミンとアルデヒド類の縮合物、及びフルフリルアルコールとエチレン尿素とアルデヒド類の縮合物よりなる群から選ばれる1種以上(以下、窒素原子含有フラン樹脂ともいう)」の場合の反応条件を示す。
【0042】
[窒素原子非含有フラン樹脂の反応条件例]
(反応温度)
前記窒素原子非含有フラン樹脂を得る場合の前記工程Aにおける反応温度は、生産性を向上させる観点から80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。前記窒素原子非含有フラン樹脂を得る場合の前記工程Aにおける反応温度は、フルフリルアルコール同士の縮合を抑制し、BHMFの含有量を高める観点から、125℃以下が好ましく、115℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。
【0043】
(反応開始前のpH)
前記工程Aにおける反応開始前の反応液のpHは、粘結剤樹脂中のBHMFの含有量を向上させる観点から、2以上が好ましく、2.5以上がより好ましく、3.3以上が更に好ましく、3.7以上がより更に好ましい。前記工程Aにおける反応開始前の反応液のpHは、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドの反応速度を向上させる観点から、5.5以下が好ましく、5.0以下がより好ましく、4.5以下が更に好ましく、4.1以下がより更に好ましい。なお、前記工程Aにおける反応開始前の反応液のpHは、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0044】
(反応時間)
前記窒素原子非含有フラン樹脂を得る場合の前記工程Aにおける反応時間は、フルフリルアルコールの含有量を低減させる観点及びフルフリルアルコール同士の縮合を抑制し、BHMFの含有量を高める観点から、200分以上が好ましく、250分以上がより好ましく、280分以上が更に好ましい。前記窒素原子非含有フラン樹脂を得る場合の前記工程Aにおける反応時間は、生産性を向上させる観点から、750分以下が好ましく、620分以下がより好ましく、600分以下が更に好ましく、570分以下がより更に好ましく、520分以下がより更に好ましく、490分以下がより更に好ましい。
【0045】
(反応圧力)
前記窒素原子非含有フラン樹脂を得る場合の前記工程Aにおける反応圧力は、減圧でも常圧でもよい。反応時間短縮の観点から、減圧が好ましい。
【0046】
[窒素原子含有フラン樹脂の反応条件例]
窒素原子含有フラン樹脂を得る場合、得られる樹脂中のフルフリルアルコール及び遊離アルデヒド含有量を低減する観点から、最初にフルフリルアルコールとアルデヒド類を反応させた後、尿素類及び/又はメラミン等を反応させることが好ましい。すなわち、窒素原子含有フラン樹脂を得る場合、前記工程Aは、得られる樹脂中のフルフリルアルコール及び遊離アルデヒド含有量を低減する観点から、フルフリルアルコールとアルデヒド類を反応させる工程A1と、前記工程A1で得られた反応中間体と、尿素類及び/又はメラミン等を反応させる工程A2を有するのが好ましい。
【0047】
(工程A1)
(反応温度)
前記窒素原子含有フラン樹脂を得る場合の前記工程A1における反応温度は、生産性を向上させる観点から80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。前記窒素原子含有フラン樹脂を得る場合の前記工程A1における反応温度は、フルフリルアルコール同士の縮合を抑制し、BHMFの含有量を高める観点から、125℃以下が好ましく、115℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。
【0048】
(反応時間)
前記窒素原子含有フラン樹脂を得る場合の前記工程A1における反応時間は、フルフリルアルコールの含有量を低減させる観点及びフルフリルアルコール同士の縮合を抑制し、BHMFの含有量を高める観点から、200分以上が好ましく、250分以上がより好ましく、280分以上が更に好ましい。前記窒素原子含有フラン樹脂を得る場合の前記工程A1における反応時間は、生産性を向上させる観点から、750分以下が好ましく、620分以下がより好ましく、600分以下が更に好ましく、570分以下がより更に好ましく、520分以下がより更に好ましく、490分以下がより更に好ましい。
【0049】
(反応圧力)
前記窒素原子含有フラン樹脂を得る場合の前記工程A1における反応圧力は、減圧でも常圧でもよい。反応時間短縮の観点から、減圧が好ましい。
【0050】
(工程A2)
(反応温度)
前記窒素原子含有フラン樹脂を得る場合の前記工程A2における反応温度は、生産性を向上させる観点、及び遊離のフルフリルアルコールやアルデヒド類の含有量を低減する観点から、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、95℃以上が更に好ましい。前記窒素原子含有フラン樹脂を得る場合の前記工程A2における反応温度は、BHMFの含有量の低減を防止する観点、及び粘度の増加を抑制する観点から、135℃以下が好ましく、125℃以下がより好ましく、115℃以下が更に好ましい。
【0051】
(反応時間)
前記窒素原子含有フラン樹脂を得る場合の前記工程A2における反応時間は、遊離のフルフリルアルコールやアルデヒド類の含有量を低減する観点から、30分以上が好ましい。前記窒素原子含有フラン樹脂を得る場合の前記工程A2における反応時間は、生産性を向上させる観点、BHMFの含有量の低減を防止する観点、及び粘度の増加を抑制する観点から、3時間以下が好ましく、2時間以下がより好ましい。
【0052】
(反応圧力)
前記窒素原子含有フラン樹脂を得る場合の前記工程A2における反応圧力は、減圧でも常圧でもよい。反応時間短縮の観点から、減圧が好ましい。
【0053】
前記窒素原子含有フラン樹脂を得る場合、前記工程A2の後に、前記粘結剤樹脂中の遊離アルデヒド類の含有量の低減のための工程A3を設けてもよい。
【0054】
(工程A3)
(反応温度)
前記工程A3における反応温度は、生産性を向上させる観点、及び遊離アルデヒド類の含有量を低減する観点から、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。前記工程A3における反応温度は、BHMFの含有量の低減を防止する観点、及び粘度の増加を抑制する観点から、80℃以下が好ましい。
【0055】
(反応時間)
前記工程A3における反応時間は、遊離アルデヒド類の含有量を低減する観点から、10分以上が好ましい。前記工程A3における反応時間は、生産性を向上させる観点から、1時間以上が好ましく、40分以上がより好ましく、30分以上が更に好ましい。
【0056】
(反応圧力)
前記工程A3における反応圧力は、減圧でも常圧でもよい。反応時間短縮の観点から、減圧が好ましい。
【0057】
前記粘結剤樹脂中のフルフリルアルコールの含有量は、鋳型強度を向上させる観点から、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。前記粘結剤樹脂中のフルフリルアルコールの含有量は、作業環境を改善する観点から、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましい。なお、フルフリルアルコールの含有量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0058】
前記粘結剤樹脂中のBHMFの含有量は、鋳型強度を向上させる観点から、8質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、20質量%以上がより更に好ましい。前記粘結剤樹脂中のBHMFの含有量は、BHMFの析出を抑制する観点から、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。なお、BHMFの含有量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0059】
前記粘結剤樹脂中の前記フラン樹脂の含有量は、鋳型強度を向上させる観点から、30質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、45質量%以上がより更に好ましい。前記粘結剤樹脂中の前記フラン樹脂の含有量は、鋳型強度を向上させる観点から、60質量%以下が好ましく、58質量%以下がより好ましい。なお、前記フラン樹脂の含有量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0060】
<鋳型造型用粘結剤組成物>
本実施形態の鋳型造型用粘結剤組成物(以下、単に粘結剤組成物ともいう)は、フルフリルアルコール(成分A)、BHMF(成分B)、前記フラン樹脂(成分C)及び水(成分D)を含有し、
下記の条件(1)~(4)を満たす。
条件(1):前記粘結剤組成物中の前記成分Aの含有量が30質量%以下
条件(2):前記粘結剤組成物中の前記成分Bの含有量が7質量%以上
条件(3):前記粘結剤組成物中の前記成分Dの含有量が25質量%以下
条件(4):前記粘結剤組成物100g中の前記触媒aの含有量が0.01g以上0.50g以下、かつ前記中和塩aの含有量が酸換算で0.13g以上含有する
【0061】
本実施形態の鋳型造型用粘結剤組成物によれば、モノマー状のフルフリルアルコールの含有量が少なく、BHMFの含有量が多く、粘度が低く、鋳型強度を向上することができる。
【0062】
〔フルフリルアルコール(成分A)〕
前記粘結剤組成物中の前記成分Aの含有量は、作業環境を改善する観点から、30質量%以下であり、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。前記粘結剤組成物中の前記成分Aの含有量は、鋳型強度を向上させる観点、及び粘度を低減させる観点から、0質量%超が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、15質量%以上がより更に好ましく、20質量%以上がより更に好ましい。
【0063】
〔BHMF(成分B)〕
前記粘結剤組成物中の前記成分Bの含有量は、鋳型強度を向上させる観点から、7質量%以上であり、8質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。前記粘結剤組成物中の前記成分Bの含有量は、BHMFの析出を抑制する観点から、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0064】
〔フラン樹脂(成分C)〕
前記粘結剤組成物中の前記成分Cの含有量は、鋳型可撓性を向上させる観点から、25質量%以上が好ましく、27質量%以上がより好ましく、28質量%以上が更に好ましい。前記粘結剤組成物中の前記成分Cの含有量は、粘度を低減する観点、及び鋳型強度を向上させる観点から、50質量%以下が好ましく、49質量%以下がより好ましい。
【0065】
前記粘結剤組成物中の前記成分Bの含有量に対する前記成分Cの含有量の比(前記成分Cの含有量/前記成分Bの含有量)は、鋳型可撓性を向上させる観点から、1以上が好ましく、1.4以上がより好ましく、2以上が更に好ましい。前記粘結剤組成物中の前記成分Bの含有量に対する前記成分Cの含有量の比は、粘度を低減する観点、及び鋳型強度を向上させる観点から、7以下が好ましく、6以下がより好ましく、5以下が更に好ましく、4以下がより更に好ましく、3以下がより更に好ましい。
【0066】
〔水(成分D)〕
前記粘結剤組成物中の前記成分Dの含有量は、鋳型強度を向上させる観点から、25質量%以下であり、20質量%以下が好ましい。前記粘結剤組成物中の前記成分Dの含有量は、粘度を低減させる観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。なお、前記成分Dの含有量は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0067】
〔触媒a〕
前記粘結剤組成物100g中の前記触媒aの含有量は、鋳型強度を向上させる観点から、0.01g以上であり、0.02g以上が好ましく、0.025g以上がより好ましく、0.03g以上が更に好ましい。前記粘結剤組成物100g中の前記触媒aの含有量は、鋳型強度を向上させる観点、及び前記中和塩aの析出を抑制する観点から、0.50g以下であり、0.40g以下がより好ましく、0.20g以下がより好ましく、0.13g以下が更に好ましく、0.10g以下がより更に好ましい。
【0068】
〔中和塩a〕
前記粘結剤組成物100g中の前記中和塩aの含有量は、鋳型強度を向上させる観点から、酸換算で0.13g以上であり、0.19g以上が好ましく、0.3g以上がより好ましい。前記粘結剤組成物100g中の前記中和塩aの含有量は、鋳型強度を向上させる観点、及び前記中和塩aの析出を抑制する観点から、15g以下が好ましく、11g以下がより好ましく、6g以下が更に好ましく、2.2g以下がより更に好ましい。
【0069】
前記粘結剤組成物100g中の、前記触媒aの含有量と前記中和塩aの酸換算での含有量の合計量は、鋳型強度を向上させる観点から、0.2g以上が好ましく、0.3g以上がより好ましく、0.4g以上が更に好ましく、0.5g以上がより更に好ましい。前記粘結剤組成物100g中の、前記触媒aの含有量と前記中和塩aの酸換算での含有量の合計量は、鋳型強度を向上させる観点、前記中和塩aの析出を抑制する観点、及び経済性の観点から、15g以下が好ましく、11g以下がより好ましく、6g以下が更に好ましく、2.5g以下がより更に好ましい。
【0070】
前記粘結剤組成物100g中の、前記触媒aの含有量と前記中和塩aの酸換算での含有量の合計量に対する前記中和塩aの酸換算での含有量の比[中和塩aの酸換算での含有量/触媒aの含有量+中和塩aの酸換算での含有量]が、鋳型強度を向上させる観点から、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.30以上、更に好ましくは0.50以上、より更に好ましくは0.85以上、より更に好ましくは0.90以上、より更に好ましくは0.93以上であり、同様の観点から、好ましくは1未満、より好ましくは0.97以下、更に好ましくは0.96以下である。
【0071】
〔硬化促進剤〕
前記粘結剤組成物には、鋳型強度向上の観点から、硬化促進剤が含まれていてもよい。硬化促進剤としては、鋳型強度向上の観点から、フェノール誘導体、芳香族ジアルデヒド、及びタンニン類からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
【0072】
前記フェノール誘導体としては、例えばレゾルシン、クレゾール、ヒドロキノン、フロログルシノール、メチレンビスフェノール等が挙げられる。前記粘結剤組成物中の前記フェノール誘導体の含有量は、鋳型強度を向上させる観点から、1~25質量%であることが好ましく、2~15質量%であることがより好ましく、3~10質量%であることが更に好ましい。
【0073】
前記芳香族ジアルデヒドとしては、テレフタルアルデヒド、フタルアルデヒド及びイソフタルアルデヒド等、並びにそれらの誘導体等が挙げられる。それらの誘導体とは、基本骨格としての2つのホルミル基を有する芳香族化合物の芳香環にアルキル基等の置換基を有する化合物等を意味する。前記粘結剤組成物中の芳香族ジアルデヒドの含有量は、芳香族ジアルデヒドをフラン樹脂に十分に溶解させる観点、及び芳香族ジアルデヒド自体の臭気を抑制する観点から、好ましくは0.1~15質量%であり、より好ましくは0.5~10質量%であり、更に好ましくは1~5質量%である。
【0074】
前記タンニン類としては、縮合タンニンや加水分解型タンニンが挙げられる。これら縮合タンニンや加水分解型タンニンの例としては、ピロガロール骨格やレゾルシン骨格を持つタンニンが挙げられる。また、これらタンニン類を含有する樹皮抽出物や植物由来の葉、実、種、植物に寄生した虫こぶ等の天然物からの抽出物を添加しても構わない。前記粘結剤組成物中のタンニン類の含有量は、硬化速度を向上させる観点及び鋳型強度向上の観点から、好ましくは0.2~10質量%であり、より好ましくは1.0~7質量%であり、更に好ましくは1.9~5質量%である。
【0075】
前記粘結剤組成物の25℃における粘度は、鋳型用組成物の製造時及び鋳型製造時の作業性の観点から、120mPa・s以下が好ましく、70mPa・s以下がより好ましく、60mPa・s以下が更に好ましい。なお、粘結剤組成物の25℃における粘度は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0076】
前記粘結剤組成物には、更にシランカップリング剤等の添加剤が含まれていてもよい。例えば、前記粘結剤組成物にシランカップリング剤が含まれていると、得られる鋳型の最終強度をより向上させることができるため好ましい。シランカップリング剤としては、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシランや、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、メタクリロキシシラン、アクリロキシシランなどが用いられる。好ましくは、アミノシラン、エポキシシラン、ウレイドシランである。より好ましくはアミノシラン、エポキシシランである。アミノシランの中でも、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。エポキシシランの中でも、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。
【0077】
前記粘結剤組成物中のシランカップリング剤の含有量は、鋳型強度向上の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。前記粘結剤組成物中のシランカップリング剤の含有量は、同様の観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。
【0078】
本実施形態の鋳型造型用粘結剤組成物は自硬性鋳型の造型に好適に用いられる。ここで自硬性鋳型とは、砂に粘結剤組成物と硬化剤を混合すると、時間の経過と共に重合反応が進行し、鋳型が硬化する鋳型である。その際に用いられる砂の温度としては、-20℃~50℃の範囲であり、好ましくは0℃~40℃である。このような温度の砂に対して、それに適した量の硬化剤を選択し砂に添加する事で、鋳型を適切に硬化できる。
【0079】
<鋳型造型用組成物>
本実施形態の鋳型造型用組成物は、前記粘結剤組成物と、当該鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤を含む硬化剤組成物と、を含有する。本実施形態の鋳型造型用組成物は、前記粘結剤組成物と同様の効果を有する。
【0080】
〔硬化剤組成物〕
前記硬化剤組成物は、前記粘結剤組成物を硬化させる硬化剤を含有するものであれば特に限定なく用いることができる。当該硬化剤としては酸系硬化剤が例示でき、キシレンスルホン酸(特に、m-キシレンスルホン酸)やトルエンスルホン酸(特に、p-トルエンスルホン酸)、メタンスルホン酸等のスルホン酸系化合物、リン酸、酸性リン酸エステル等のリン酸系化合物、硫酸等、従来公知のものを1種以上が使用できる。これらの化合物は、取り扱い性の観点から水溶液であることが好ましい。更に、硬化剤組成物中にアルコール類、エーテルアルコール類及びエステル類よりなる群から選ばれる1種以上の溶剤や、カルボン酸類を含有させることができる。
【0081】
前記硬化剤組成物中の前記溶剤の含有量は、作業環境の温度や耐火性粒子の温度に応じて、所望の反応速度及び鋳型強度を得るために適宜調整されるが、一般的には、硬化剤組成物を溶解させる観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。前記硬化剤組成物中の前記溶剤の含有量は、鋳型強度向上の観点から、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。
【0082】
前記硬化剤組成物中の前記硬化剤の含有量は、鋳型強度向上の観点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。前記硬化剤組成物中の前記硬化剤の含有量は、硬化剤組成物を溶解させる観点から、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。
【0083】
前記粘結剤組成物と前記硬化剤の質量比は、硬化速度を向上させ、鋳型強度を向上させる観点から、前記粘結剤組成物100質量部に対して、前記硬化剤10~60質量部が好ましく、10~40質量部がより好ましく、10~30質量部が更に好ましい。
【0084】
〔鋳型用組成物〕
本実施形態の鋳型用組成物は、耐火性粒子と、前記粘結剤組成物と、前記硬化剤組成物と、を含有する。本実施形態の鋳型用組成物は、本実施形態の鋳型用組成物は、前記粘結剤組成物と同様の効果を有する。
【0085】
〔耐火性粒子〕
前記耐火性粒子としては、珪砂、クロマイト砂、ジルコン砂、オリビン砂、アルミナ砂、ムライト砂、合成ムライト砂等の従来公知のもの1種又は2種以上を使用でき、また、使用済みの耐火性粒子を回収したものや再生処理したものなども使用できる。これらの中でも珪砂を含むことが好ましい。
【0086】
前記鋳型用組成物において、前記耐火性粒子と前記粘結剤組成物と前記硬化剤との質量比は適宜設定できるが、硬化速度を向上させ、鋳型強度を向上させる観点から、前記耐火性粒子100質量部に対して、前記粘結剤組成物が0.5~1.5質量部で、前記硬化剤が0.07~1質量部の範囲が好ましい。
【0087】
<鋳型の製造方法>
本実施形態の鋳型の製造方法は、耐火性粒子と、前記粘結剤組成物と、前記硬化剤組成物と、を混合して鋳型用組成物を得る混合工程、及び前記鋳型用組成物を型枠に詰め、当該鋳型用組成物を硬化する硬化工程を含む。当該鋳型の製造方法は、前記粘結剤組成物と同様の効果を有する。
【0088】
前記混合工程において、前記粘結剤組成物及び前記硬化剤組成物、並びに耐火性粒子を添加・混合する順序に特に限定は無く、前記粘結剤組成物と前記硬化剤組成物とを混合し鋳型造型用組成物を製造した後、当該鋳型造型用組成物と耐火性粒子とを混合してもよく、前記粘結剤組成物、前記硬化剤組成物、及び耐火性粒子をそれぞれ添加・混合してもよいが、保存安定性及び鋳型の生産性の観点からは、前記粘結剤組成物、前記硬化剤組成物、及び耐火性粒子を混合し、鋳型用組成物を得るのが好ましい。また、鋳型強度向上の観点から、耐火性粒子に硬化剤組成物を添加して混合し、次いで粘結剤組成物を添加して混合することが好ましい。また、2種以上の硬化剤組成物を用いる場合は、各硬化剤組成物を混合してから添加してもよく、各硬化剤組成物を別々に添加してもよい。
【0089】
前記混合工程において、各原料を混合する方法としては、公知一般の手法を用いることが出来、例えば、バッチミキサーにより各原料を添加して混練する方法や、連続ミキサーに各原料を供給して混練する方法が挙げられる。
【0090】
本実施形態の鋳型の製造方法において、当該混合工程以外は従来の鋳型の製造プロセスをそのまま利用して鋳型を製造することができる。
【0091】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の組成物、製造方法、或いは用途を開示する。
<1>
フルフリルアルコール、ビスヒドロキシメチルフラン、及びフラン樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤樹脂の製造方法であって、
フルフリルアルコールとホルムアルデヒドを、リン酸及びホウ酸から選ばれる1種以上の触媒aと、リン酸及びホウ酸の一中和塩から選ばれる1種以上の中和塩aとの存在下で反応させる工程Aを有し、
前記工程Aにおいて、前記触媒aの使用量がフルフリルアルコール1モルに対して0.0002モル以上0.01モル以下であり、前記中和塩aの使用量がフルフリルアルコール1モルに対して酸換算で0.003モル以上である、鋳型造型用粘結剤樹脂の製造方法。
<2>
フルフリルアルコール、ビスヒドロキシメチルフラン、及びフラン樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤樹脂の製造方法であって、
フルフリルアルコールとホルムアルデヒドを、リン酸及びホウ酸から選ばれる1種以上の触媒aと、リン酸及びホウ酸の一中和塩から選ばれる1種以上の中和塩aとの存在下で反応させる工程Aを有し、
前記工程Aにおいて、前記触媒aの使用量がフルフリルアルコール1モルに対して0.0002モル以上0.01モル以下であり、前記中和塩aの使用量がフルフリルアルコール1モルに対して酸換算で0.003モル以上0.15モル以下であり、
前記中和塩aがアルカリ金属塩及びアミン塩から選ばれる1種以上であり、
前記フラン樹脂が、尿素変性フラン樹脂及びフルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物よりなる群から選ばれる1種以上、並びに前記群から選ばれる2種以上の共縮合物よりなる群から選ばれる1種以上である、<1>に記載の製造方法。
<3>
フルフリルアルコール、ビスヒドロキシメチルフラン、及びフラン樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤樹脂の製造方法であって、
フルフリルアルコールとホルムアルデヒドを、リン酸及びホウ酸から選ばれる1種以上の触媒aと、リン酸及びホウ酸の一中和塩から選ばれる1種以上の中和塩aとの存在下で反応させる工程Aを有し、
前記工程Aにおいて、前記触媒aの使用量がフルフリルアルコール1モルに対して0.0004モル以上0.008モル以下であり、前記中和塩aの使用量がフルフリルアルコール1モルに対して酸換算で0.005モル以上0.04モル以下であり、
触媒aの中和度[中和塩aの使用量/(触媒aの使用量+中和塩aの使用量)]が93%以上97%以下であり、
前記中和塩aがアルカリ金属塩及びアミン塩から選ばれる1種以上であり、
前記フラン樹脂が、尿素変性フラン樹脂及びフルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物よりなる群から選ばれる1種以上、並びに前記群から選ばれる2種以上の共縮合物よりなる群から選ばれる1種以上である、<1>又は<2>に記載の製造方法。
<4>
前記工程Aにおける反応開始前の反応液のpHが2以上5.5以下である、<1>~<3>の何れか1つに記載の製造方法。
<5>
前記鋳型造型用粘結剤樹脂中のフルフリルアルコールの含有量が10質量%以上30質量%以下であり、ビスヒドロキシメチルフランの含有量が8質量%以上40質量%以下であり、フラン樹脂の含有量が30質量%以上60質量%以下である、<1>~<4>の何れか1つに記載の製造方法。
<6>
前記中和塩aがアミン塩であり、アミン塩が炭素数2以上10以下のアルキル基を有する3級アミン塩である、<1>~<5>の何れか1つに記載の製造方法。
<7>
フルフリルアルコール(成分A)、ビスヒドロキシメチルフラン(成分B)、フラン樹脂(成分C)及び水(成分D)を含有し、
下記の条件(1)~(4)を満たす鋳型造型用粘結剤組成物。
条件(1):前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記成分Aの含有量が30質量%以下
条件(2):前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記成分Bの含有量が7質量%以上
条件(3):前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記成分Dの含有量が25質量%以下
条件(4):前記鋳型造型用粘結剤組成物100g中のリン酸及びホウ酸から選ばれる1種以上である触媒aの含有量が0.01g以上0.50g以下、かつリン酸およびホウ酸の1中和塩から選ばれる1種以上である中和塩aの含有量が酸換算で0.13g以上含有する
<8>
フルフリルアルコール(成分A)、ビスヒドロキシメチルフラン(成分B)、フラン樹脂(成分C)及び水(成分D)を含有し、
フラン樹脂が、尿素変性フラン樹脂及びフルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物よりなる群から選ばれる1種以上、並びに前記群から選ばれる2種以上の共縮合物よりなる群から選ばれる1種以上であり、
下記の条件(1)~(4)を満たす、<7>に記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
条件(1):前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記成分Aの含有量が0質量%超30質量%以下
条件(2):前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記成分Bの含有量が7質量%以上30質量%以下
条件(3):前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記成分Dの含有量が5質量%以上25質量%以下
条件(4):前記鋳型造型用粘結剤組成物100g中のリン酸及びホウ酸から選ばれる1種以上である触媒aの含有量が0.01g以上0.50g以下、かつリン酸およびホウ酸の1中和塩から選ばれる1種以上である中和塩aの含有量が酸換算で0.13g以上15g以下であり、中和塩aがアルカリ金属塩及びアミン塩から選ばれる1種以上である
<9>
フルフリルアルコール(成分A)、ビスヒドロキシメチルフラン(成分B)、フラン樹脂(成分C)及び水(成分D)を含有し、
フラン樹脂が、尿素変性フラン樹脂及びフルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物よりなる群から選ばれる1種以上、並びに前記群から選ばれる2種以上の共縮合物よりなる群から選ばれる1種以上であり、
成分Bの含有量に対する成分Cの含有量の比(成分Cの含有量/成分Bの含有量)が1以上7以下であり、
下記の条件(1)~(4)を満たす、<7>又は<8>に記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
条件(1):前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記成分Aの含有量が10質量%以上30質量%以下
条件(2):前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記成分Bの含有量が7質量%以上25質量%以下
条件(3):前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記成分Dの含有量が10質量%以上25質量%以下
条件(4):前記鋳型造型用粘結剤組成物100g中のリン酸及びホウ酸から選ばれる1種以上である触媒aの含有量が0.01g以上0.50g以下、かつリン酸およびホウ酸の1中和塩から選ばれる1種以上である中和塩aの含有量が酸換算で0.13g以上15g以下含有し、中和塩aがアルカリ金属塩及びアミン塩から選ばれる1種以上である
<10>
フルフリルアルコール(成分A)、ビスヒドロキシメチルフラン(成分B)、フラン樹脂(成分C)及び水(成分D)を含有し、
フラン樹脂が、尿素変性フラン樹脂及びフルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物よりなる群から選ばれる1種以上、並びに前記群から選ばれる2種以上の共縮合物よりなる群から選ばれる1種以上であり、
成分Bの含有量に対する成分Cの含有量の比(成分Cの含有量/成分Bの含有量)が1以上7以下であり、
触媒aの含有量と中和塩aの酸換算での含有量の合計量に対する中和塩aの酸換算での含有量の比[中和塩aの酸換算での含有量/触媒aの含有量+中和塩aの酸換算での含有量]が0.93以上0.97以下であり、
下記の条件(1)~(4)を満たす、<7>~<9>の何れか1つに記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
条件(1):前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記成分Aの含有量が10質量%以上30質量%以下
条件(2):前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記成分Bの含有量が7質量%以上25質量%以下
条件(3):前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記成分Dの含有量が10質量%以上25質量%以下
条件(4):前記鋳型造型用粘結剤組成物100g中のリン酸及びホウ酸から選ばれる1種以上である触媒aの含有量が0.025g以上0.40g以下、かつリン酸およびホウ酸の1中和塩から選ばれる1種以上である中和塩aの含有量が酸換算で0.3g以上2.2g以下含有し、中和塩aがアルカリ金属塩及びアミン塩から選ばれる1種以上である
<11>
前記成分Cの含有量が25質量%以上50質量%以下である、<7>~<10>の何れか1つに記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
<12>
前記中和塩aがアミン塩であり、アミン塩が炭素数2以上10以下のアルキル基を有する3級アミン塩である、<7>~<11>の何れか1つに記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
<13>
<7>~<12>の何れか1つに記載の鋳型造型用粘結剤組成物と、当該鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤を含む硬化剤組成物と、を含有する、鋳型造型用組成物。
<14>
耐火性粒子と、<7>~<12>の何れか1つに記載の鋳型造型用粘結剤組成物と、当該鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤を含む硬化剤組成物と、を含有する、鋳型用組成物。
<15>
耐火性粒子と、<7>~<12>の何れか1つに記載の鋳型造型用粘結剤組成物と、当該鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤を含む硬化剤組成物と、を混合して鋳型用組成物を得る混合工程、及び前記鋳型用組成物を型枠に詰め、当該鋳型用組成物を硬化する硬化工程を含む鋳型の製造方法。
【実施例】
【0092】
以下、本発明を具体的に示す実施例等について説明する。
【0093】
<物性の測定方法>
〔水の含有量〕
自動水分測定装置(平沼産業株式会社製、AQV―2200A)を用いて、JIS K 0068に示されるカールフィッシャー法に基づいて測定を行った。
【0094】
〔フルフリルアルコール及びビスヒドロキシメチルフランの含有量〕
ガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製、GC―2014S)を用いて下記の条件のガスクロマトグラフィー分析にて測定を行った。
・検量線:フルフリルアルコール及びビスヒドロキシメチルフランを用いて作成した。
・内部標準溶液:1,6-ヘキサンジオール
・カラム:PEG-20M Chromosorb WAW DMCS 60/80mesh(ジーエルサイエンス社製)
・カラム温度:80~200℃(8℃/min)
・インジェクション温度:210℃
・検出器温度:250℃キャリアーガス:50mL/min(He)
【0095】
〔フラン樹脂の含有量〕
フラン樹脂の含有量は、フルフリルアルコール、水、BHMF及びシランカップシング剤の含有量を差し引いて算出した。
【0096】
〔反応開始前の反応液のpHの測定〕
pHメータ(横河電機株式会社製、パーソナルpHメータPH71)を用いて、50%水溶液にして、25℃にて測定した。
【0097】
〔未中和のリン酸及びホウ酸の含有量及びリン酸及びホウ酸一中和塩の含有量〕
電位差滴定装置(株式会社HIRANUMA製、COM-A19S、滴定液:0.1mol/Lシクロヘキシルアミン)を用いて測定した。約pH4に現れる一つ目の変曲点までの滴定量から、未中和のリン酸及びホウ酸の含有量を測定し、一つ目の変曲点から約pH9に現れる二つ目の変曲点までの滴定量からリン酸及びホウ酸の含有量を測定し、それらの差分からリン酸及びホウ酸一中和塩の含有量を算出した。
【0098】
〔粘度〕
E型粘度計(RE-80R、東機産業株式会社製)を用いて、25℃、標準ローター(コーン角度1°34’コーン半径:24mm)使用し、回転数100rpmで粘度の測定を行った。
【0099】
<実施例>
〔実施例1-1〕
撹拌機と冷却管、温度計を備えた三ツ口フラスコに、フルフリルアルコール713.86g、48質量%水酸化ナトリウム水溶液7.04g、92質量%パラホルムアルデヒド 201.88gを撹拌しながら投入し、マントルヒーターで60℃まで昇温させた。それを30℃まで水冷させた後、85質量%リン酸水溶液10.04gを投入した。リン酸はフルフリルアルコール1モルに対して0.0003モル、リン酸1中和塩はフルフリルアルコール1モルに対して0.0117モルであった。この反応液について、反応開始前のpHを測定した後、100℃に昇温し、フルフリルアルコールモノマーが33%になるまで反応させ、中間品製造例1の樹脂を得た。フルフリルアルコールが33質量%になるまでの時間、及びその時点でのBHMF量を表1に示す。
【0100】
〔実施例1-2~1-17及び比較例1-1~1-6〕
表1に示す塩基種を用いて、リン酸量、及びリン酸1中和塩の量になるように塩基種の量を変えた以外は実施例1-1と同様に行って、中間品製造例2~17、51~56の樹脂を得た。反応液中のフルフリルアルコール濃度(含有量)が33質量%になるまでの時間、及びその時点でのBHMF濃度(含有量)を表1に示す。
【0101】
〔実施例1-18〕
酸触媒としてホウ酸を用い、ホウ酸量、及びホウ酸1中和塩の量が表1になるように塩基種の量を変えた以外は実施例1-1と同様に行って、中間品製造例18の樹脂を得た。フルフリルアルコールが33%になるまでの時間、及びその時点でのBHMF量を表1に示す。なお、各表において、FFAはフルフリルアルコールを意味する。
【0102】
【0103】
〔実施例2-1~2-18、比較例2-1~2-6〕
中間品製造例1~18及び中間品製造例51~56で得られた樹脂932.82gに対し、それぞれ同じ反応装置に尿素57.10gを投入し、105℃で1時間反応させ、その後、70℃まで空冷させて尿素10.08gを投入し、70℃で20分間反応させ、反応終了品1~18及び反応終了品51~56を得た。それぞれの反応終了品の組成を表2に示す。
【0104】
〔実施例2-19〕
中間品製造例2で得られた樹脂932.82gに対し、同じ反応装置に尿素57.10gを投入し、105℃で1時間反応させ、反応終了品19を得た。反応終了品19の組成を表2に示す。
【0105】
〔実施例2-20〕
中間品製造例2を反応終了品20とした。
【0106】
〔実施例3-1~3-19、比較例3-1~3-6〕
上記製造例で得られた反応終了品1~19及び51~56と、フルフリルアルコール、水、シランカップリング剤を用いて、フルフリルアルコールの含有量が約19質量%、水の含有量が約24質量%になるように配合し、実施例3-1~3-19、比較例3-1~3-6の鋳型造型用粘結剤組成物を得た。
【0107】
〔実施例4-1、比較例4-1〕
上記製造例で得られた反応終了品2及び54と、フルフリルアルコール、水、シランカップリング剤を用いて、フルフリルアルコールの含有量が約19質量%、水の含有量が約15質量%になるように配合し、実施例4-1及び比較例4-1の鋳型造型用粘結剤組成物を得た。
【0108】
〔実施例5-1、比較例5-1〕
上記製造例で得られた反応終了品2及び54と、フルフリルアルコール、水、シランカップリング剤を用いて、フルフリルアルコールの含有量が約25質量%、水の含有量が約15質量%になるように配合し、実施例5-1及び比較例5-1の鋳型造型用粘結剤組成物を得た。
【0109】
〔実施例6-1~6-2、比較例6-1〕
上記製造例で得られた反応終了品2、20及び54と、フルフリルアルコール、水、シランカップリング剤を用いて、フルフリルアルコールの含有量が約25質量%、水の含有量が約24質量%になるように配合し、実施例6-1、実施例6-2及び比較例6-1の鋳型造型用粘結剤組成物を得た。
【0110】
【0111】
<鋳型用組成物の製造例>
25℃、55%RHの条件下で、フラン再生珪砂100質量部に対し、硬化剤組成物を添加し、次いで表4~6に示した鋳型造型用粘結剤組成物0.8質量部を添加し、これらを混合して鋳型用組成物を得た。尚、硬化剤組成物はキシレンスルホン酸/硫酸系硬化剤(カオーライトナーUS-3、カオーライトナーC-21:花王クエーカー社製)を用いた。硬化剤組成物の添加量は、フラン再生珪砂100質量部に対して0.32質量部とし、後述のテストピースの30分後の圧縮強度が0.20~0.35MPaとなるように、カオーライトナーUS-3とカオーライトナーC-21の比率を調整した。
【0112】
<鋳型圧縮強度の評価>
混練直後の鋳型用組成物を直径50mm、高さ50mmの円柱形状のテストピース枠に充填し、30分経過した時に抜型を行いJIS Z 2604-1976に記載された方法で、圧縮強度(MPa)を測定し、この強度を30分後の圧縮強度とした。30分後の圧縮強度を、硬化速度の目安とし、硬化剤量が適正であることを確認した。また、別途、鋳型用組成物を同様にテストピース枠に充填し、2時間経過した時に抜型を行い、充填から24時間後に、JIS Z 2604-1976に記載された方法で、圧縮強度(MPa)を測定し、「24時間後の圧縮強度」とした。数値が高いほど鋳型強度が高いことを示す。評価結果を表3~6に示す。
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】