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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】電極群、電池、及び電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20240708BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240708BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20240708BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240708BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20240708BHJP
   H01M 50/429 20210101ALI20240708BHJP
   H01M 50/44 20210101ALI20240708BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20240708BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240708BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M4/13
H01M4/485
H01M10/052
H01M50/414
H01M50/429
H01M50/44
H01M50/449
H01M50/489
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023528929
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2021023248
(87)【国際公開番号】W WO2022264419
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】村司 泰章
(72)【発明者】
【氏名】新居田 善洋
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】並木 佑介
(72)【発明者】
【氏名】志子田 将貴
【審査官】岡田 隆介
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0587
H01M 10/052
H01M 4/485
H01M 4/13
H01M 50/414
H01M 50/429
H01M 50/489
H01M 50/44
H01M 50/449
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質含有層を含む正極と、負極活物質含有層を含む負極と、セパレータとを含んだ積層体が第1方向に沿って中心が位置するように50ターン以上の捲回数で捲回されて成る扁平形状の捲回型構造を有する捲回体と、
前記捲回体の外周に1周以上巻かれている固定テープと
を具備し、
平坦部を含む扁平構造を有し、
前記平坦部における主面と交差する第2方向への前記扁平構造の厚さTは、プロピレンカーボネートで含浸されている状態の前記第2方向への厚さを膨潤厚さTとし、乾燥状態の前記第2方向への厚さを乾燥厚さTとしたとき、1.01<T/T<1.02の関係を満たし、
前記第1方向への両端にて前記正極活物質含有層および前記負極活物質含有層の一方が他方の端部から0.4 mm以上1 mm以下の範囲内の突出幅Wで突出している、電極群。
【請求項2】
前記セパレータは、ポリエチレンテレフタレート繊維を含む基材とセルロース不織布とを含んだ複合体である、請求項1に記載の電極群。
【請求項3】
前記セパレータは、乾燥している状態で15μm以下の厚みを有する、請求項1又は2に記載の電極群。
【請求項4】
前記正極は80μm以下の厚みを有し、前記負極は80μm以下の厚みを有する、請求項1-3の何れか1項に記載の電極群。
【請求項5】
前記負極活物質含有層は、スピネル構造を有するリチウムチタン酸化物を含む、請求項1-4の何れか1項に記載の電極群。
【請求項6】
請求項1-5の何れか1項に記載の電極群と、
電解質と
を具備する、電池。
【請求項7】
請求項6に記載の電池を具備する、電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電極群、電池、及び電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、携帯機器、自動車や蓄電池などに広く用いられている。リチウムイオン二次電池は、市場規模の拡大が見込まれている蓄電デバイスである。
【0003】
典型的なリチウムイオン二次電池は、正極および負極を含む電極と、電解質とを含んでいる。リチウムイオン二次電池の電極は、集電体と、この集電体の主面上に設けられた活物質含有層とを備えている。電極の活物質含有層は、例えば、活物質粒子、導電剤、及び結着剤により構成される層であり、電解質を保持可能な多孔体である。リチウムイオン二次電池の充放電の際、電流の流出入に伴って正極の活物質含有層と負極の活物質含有層の間をリチウムイオンが電荷のキャリアイオンとして行き来することにより、電力の貯蔵および放出が可能になる。
【0004】
リチウムイオン二次電池の負極にチタン酸リチウム(LTO)を用いたリチウムイオン二次電池は、入出力性能や寿命性能に優れるものの、容量が少なめであるという課題を有していた。電池容量を向上させるためには、充放電に寄与する電極面積を増やす、電極を厚くする等の対策が考えられる。負極にLTOを用いるメリットとなる入出力性能を維持する観点からは、電極を厚くする後者の対応は電池としての抵抗が高くなるため、充放電に寄与する電極面積を増加させる前者の対策が好ましい。充放電に寄与する電極面積の増加は、セパレータを薄くしたり、正極と負極とのクリアランスを少なくしたりする事で可能となる。ここでいう正極と負極とのクリアランスとは、正負極のそれぞれの活物質含有層の主面のうち、対極たる他方の電極と対向していない部分の面積割合をいう。活物質含有層の対極と対向していない部分は、充放電へほとんど寄与しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開2019/187130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
容量が高く、且つ、耐振動性能が高い電池および電池パックを実現できる電極群、及び容量が高く、且つ、耐振動性能が高い電池および電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、扁平形状の捲回型構造を有する捲回体と、該捲回体の外周に1周以上巻かれている固定テープとを具備する電極群が提供される。電極群は、平坦部を含む扁平構造を有する。捲回体は、正極活物質含有層を含む正極と、負極活物質含有層を含む負極と、セパレータとを含んだ積層体が第1方向に沿って中心が位置するように50ターン以上の捲回数で捲回されて成る。上記平坦部における主面と交差する第2方向への扁平構造の電極群の厚さTは、プロピレンカーボネートで含浸されている状態の第2方向への厚さを膨潤厚さTとし、乾燥状態の第2方向への厚さを乾燥厚さTとしたとき、1.01<T/T<1.02の関係を満たす。第1方向への両端にて正極活物質含有層および負極活物質含有層の一方が他方の端部から0.4 mm以上1 mm以下の範囲内の突出幅Wで突出している。
【0008】
他の実施形態によれば、電池が提供される。電池は、上記電極群と電解質とを含む。
【0009】
さらに他の実施形態によれば、電池パックが提供される。電池パックは、上記電池を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る一例の電極群を概略的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す仮想面11に沿った断面図である。
図3図3は、実施形態に係る電極群が含む一例の捲回体を概略的に示す部分展開斜視図である。
図4図4は、図3に示す捲回体のIV-IV’線に沿った断面図である。
図5図5は、実施形態に係る電極群における最内周部分を示す概略断面図である。
図6図6は、実施形態に係る一例の電池の概略断面図である。
図7図7は、図6のA部の拡大断面図である。
図8図8は、実施形態に係る他の例の電池を概略的に示す分解斜視図である。
図9図9は、実施形態に係るさらに他の例の電池を概略的に示す一部切欠斜視図である。
図10図10は、実施形態に係る一例の電池パックを概略的に示す分解斜視図である。
図11図11は、図10の電池パックの電気回路を示すブロック図である。
【実施形態】
【0011】
正極と負極との間のクリアランスを少なくすることでそれぞれの活物質含有層のうち充放電に寄与しにくい“デッドウェイト”ともいえる部分を減少させることができる。そのため、クリアランスを少なくすることで電池容量を向上させることができる。その反面、振動などの外部刺激に起因して正負極の配置がずれた際に、クリアランスが少ない方が短絡が生じやすい。
【0012】
以下に、実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる箇所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
【0013】
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係る電極群は、捲回体と、固定テープとを含む。電極群は、捲回体と固定テープとを含み、且つ、平坦部を含む扁平構造を有する。捲回体は、扁平形状の捲回型構造を有する。扁平形状の捲回型構造は、正極と負極とセパレータとを含んだ積層体が第1方向に沿って中心が位置するように捲回されて成る。積層体は、50ターン以上の捲回数で捲回されている。固定テープは、捲回体の外周に1周以上巻かれている。平坦部における主面と交差する第2方向への電極群の扁平構造の厚さTは、1.01<T/T<1.02の関係を満たす。ここで、Tは電極群がプロピレンカーボネートで含浸されている状態の第2方向への膨潤厚さであり、Tは乾燥状態の第2方向への乾燥厚さである。係る電極群における第1方向への両端にて、正極活物質含有層および負極活物質含有層の一方が他方の端部から0.4 mm以上1 mm以下の範囲内の突出幅Wで突出している。
【0014】
実施形態に係る電極群は、電池用の電極群であり得る。係る電極群が含まれ得る電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池などといった二次電池を挙げることができる。また、電池は、例えば、電解質として非水電解質を含んだ非水電解質電池を含む。
【0015】
係る電極群が電解質を含んだ電池に実装された場合に、電解質は電極群に保持され得る。上述した構成を有する電極群は、電解質で含浸されると電池の充電後に膨潤する。電極群が膨潤することで捲回構造が巻き締まった状態になるため、電極群の耐振動性が向上する。このように振動耐性が向上した電極群では、正負極間のクリアランスを少なくしても短絡の発生が抑えられる。その結果、電池の容量を高くするとともに耐振動性能を高くできる。
【0016】
電極群は扁平構造を有する。この扁平構造には、捲回体とその周囲に巻き付けられた固定テープとが含まれている。捲回体は、扁平状捲回型構造を有する。扁平状捲回型構造は、例えば、正極と負極とセパレータとを含んだ積層体が渦巻き状に捲回され、さらに扁平形状にプレスされてなる構造である。或いは、扁平状捲回型構造は、扁平形状になるよう正極と負極とセパレータとを含んだ積層体が捲回された構造であり得る。セパレータは、正極の正極活物質含有層と負極の負極活物質含有層との間に介在し得る。
【0017】
正極は、正極活物質含有層を含む。正極は、正極集電体をさらに含むことができる。正極活物質含有層は、正極集電体上に設けられ得る。
【0018】
正極集電体は、1以上の主面を有し、例えば、第1の主面とその裏側に位置する第2の主面を有する薄板形状を有し得る。正極活物質含有層は、正極集電体の1以上の主面の上に設けられ得る。例えば、正極活物質含有層は、薄板形状の正極集電体の一方の主面の上に設けられ得る。或いは、正極活物質含有層は、正極薄板形状の集電体の表裏の両方の主面(第1の主面および第2の主面の両方)の上に設けられ得る。つまり、正極活物質含有層は、集電体の片面または両面に設けられ得る。
【0019】
正極集電体は、その何れの主面にも正極活物質含有層が設けられていない部分を含み得る。正極集電体のうち正極活物質含有層が設けられていない部分は、正極集電タブとして機能できる。例えば、正極集電体の一辺に沿って形成された正極活物質含有層非保持部が正極集電タブとして機能し得る。正極集電タブは、正極集電体における正極活物質含有層無担持の一辺に限られない。例えば、正極集電体の一側面から突出した複数の帯状部を集電タブとして使用可能である。正極集電タブは、正極集電体と同じ材料から形成されていても良い。または、正極集電体とは別に正極集電タブを用意し、これを正極集電体の少なくとも一端面に溶接等で接続してもよい。
【0020】
負極は、負極活物質含有層を含む。負極は、負極集電体をさらに含むことができる。負極活物質含有層は、負極集電体上に設けられ得る。
【0021】
負極集電体は、その何れの主面にも負極活物質含有層が設けられていない部分を含み得る。負極集電体のうち負極活物質含有層が設けられていない部分は、負極集電タブとして機能できる。例えば、負極集電体の一辺に沿って形成された負極活物質含有層非保持部が負極集電タブとして機能し得る。負極集電タブは、負極集電体における負極活物質含有層無担持の一辺に限られない。例えば、負極集電体の一側面から突出した複数の帯状部を集電タブとして使用可能である。負極集電タブは、負極集電体と同じ材料から形成されていても良い。または、負極集電体とは別に負極集電タブを用意し、これを負極集電体の少なくとも一端面に溶接等で接続してもよい。
【0022】
図1図5を参照して、実施形態に係る電極群を説明する。
【0023】
図1は、実施形態に係る一例の電極群を概略的に示す斜視図である。図2は、図1に示す仮想面11に沿った断面図である。図3は、実施形態に係る電極群が含む一例の捲回体を概略的に示す部分展開斜視図である。図4は、図3に示す捲回体のIV-IV’線に沿った断面図である。図5は、実施形態に係る電極群における最内周部分を示す概略断面図である。
【0024】
図1及び図2は、扁平状捲回型構造を有する捲回体5とその捲回周囲を被覆する固定テープ6とを含んだ電極群1を概略的に示す。図3及び図4は、固定テープ6を省略し部分的に捲回を解いた状態の捲回体5を概略的に示す。図5は、電極群1が含む捲回体5の捲回中心付近の断面を概略的に示す。
【0025】
図示する電極群1は、正極3と、負極2と、セパレータ4と、固定テープ6とを含む。正極3、負極2、及びセパレータ4は、それぞれ帯形状を有する。正極3と、負極2と、セパレータ4とは、図2及び図3に示す捲回体5を構成している。捲回体5は、図3に示すように、正極3と、負極2と、正極3及び負極2の間に配置されているセパレータ4とを含む積層体が、扁平形状に捲回された構造を有する。この捲回型構造は、捲回前の状態の帯形状を有する積層体の長手方向と交差する第1方向100に平行な仮想線C-C’を中心に積層体が捲回されて成る。
【0026】
固定テープ6は、図2に示すとおり捲回体5の外周を少なくとも1周して巻き付けられている。固定テープ6は、捲回体5の捲回が解かれることを防止する捲止めテープとして機能する。固定テープ6は、例えば図1に示すように、捲回体5の最外周のうち、正極集電タブ3c及び負極集電タブ2cを除いた部分を被覆する。
【0027】
図2は、電極群1についての第1方向100と直交する捲回断面を示している。図2にて示す一点鎖線14は、この捲回断面において電極群1の一端から他端までの最長の直線が沿う位置を表している。電極群1は、この最長の直線に沿った両端にて、捲回体5を構成する積層体が曲面形状に湾曲している曲面部12a及び曲面部12bをそれぞれ含み、それらの間に、積層体が平坦または略平坦である平坦部13を含んだ扁平構造を有する。図2に示すとおり、電極群1の扁平構造は、第1方向100と交差する第2方向に平坦または略平坦である。なお、電極群1の扁平構造の曲面部12a、曲面部12b、及び平坦部13は、固定テープ6を省略した状態で、捲回体5の曲面部及び平坦部とそれぞれ見なすことができる。
【0028】
平坦部13における電極群1の主面と交差する第2方向200への厚さTは、電極群1にプロピレンカーボネート(propylene carbonate;PC)等の有機溶媒が含浸されている状態と、電極群1が溶媒を保持していない乾燥状態とで、異なる。つまり、電極群1は溶媒により膨潤し、その厚さTは電極群1が溶媒により膨潤している状態と乾燥状態との間で変化する。膨潤状態での膨潤厚さTと乾燥状態での乾燥厚さTとは、1.01<T/T<1.02の関係を満たす。この比率T/Tが1.01を超える電極群1では、電池に実装された際に電解質の含浸により膨潤して、上述した捲回の締まりによる振動耐性が向上する効果が期待できる。比率T/Tが1.02未満である電極群1は、高い容量を示すことができる。
【0029】
上記比率T/Tは、電極群1に用いるセパレータ4の構成、並びに正極3及び負極2の構成に応じて変化する。例えば、セパレータ4の材質、セパレータ4を構成する繊維の繊維径や繊維の種類、及びセパレータ4の厚みが、比率T/Tに影響し得る。また、正極3及び負極2の厚みや捲回体5の捲回数(ターン数)が比率T/Tに影響し得る。
【0030】
セパレータ4の構成としては、セパレータ4が有機溶媒で含浸された状態になると、膨潤により乾燥した状態と比較して厚みが増加するような構成を採用する。そのような構成の詳細は後述する。有機溶媒が含浸されることで膨潤する構成のセパレータ4を用いることで、1を超える値の比率T/Tを期待できる。膨潤するセパレータ4を用いた電極群1において、比率T/Tは次のような傾向で変化を示す。セパレータ4の厚みが厚い方が、比率T/Tが高くなる傾向がある。逆に、正極3や負極2の厚みが厚いほうが、比率T/Tが低くなる傾向がある。捲回体5において積層体が捲回されている回数(ターン数)が多い方が、比率T/Tが高くなる傾向がある。
【0031】
第2方向200への電極群1の厚さTは、捲回体5の厚み及びその外周に巻き付けられた固定テープ6の厚み(第2方向200に沿った上下両側に配置された部分の厚みを含む)を含む。即ち、厚さTは、電極群1が有する、捲回体5及び固定テープを含めた扁平構造の厚みである。第2方向200は、電極群1の捲回断面における一端から他端までの最長の直線と交差する。
【0032】
正極3は、図4に示すとおり、正極集電体3aと正極活物質含有層3bと正極集電タブ3cとを含む。正極集電体3aは、帯状の形状を有している。正極活物質含有層3bは、正極集電体3aの上に担持されている。正極集電タブ3cは、正極集電体3aの一辺、例えば、帯状形状の長辺に平行な端部に設けられている。
【0033】
正極集電タブ3cは、正極集電体3aの一部であり得る。例えば、正極集電体3aのうち正極活物質含有層3bが担持されていない部分を、正極集電タブ3cとして用いることができる。言い換えると、正極集電タブ3cは正極活物質含有層3bの端部から突出し得る。
【0034】
負極2は、負極集電体2aと負極活物質含有層2bとを含む。負極集電体2aは、帯状の形状を有している。負極活物質含有層2bは、負極集電体2aの上に担持されている。負極集電タブ2cは、負極集電体2aの一辺、例えば、帯状形状の長辺に平行な端部に設けられている。
【0035】
負極集電タブ2cは、負極集電体2aの一部であり得る。例えば、負極集電体2aのうち、負極活物質含有層2bが担持されていない部分を、負極集電タブ2cとして用いることができる。言い換えると、負極集電タブ2cは負極活物質含有層2bの端部から突出し得る。
【0036】
電極群1では、正極3の正極活物質含有層3bと負極2の負極活物質含有層2bがセパレータ4を介して対向している。積層体を捲回させた渦巻きの軸にあたる仮想線C-C’に沿って一方側に、正極集電タブ3cが負極活物質含有層2b及びセパレータ4よりも突出している。また、負極集電タブ2cが正極活物質含有層3b及びセパレータ4よりも反対側に突出している。よって、電極群1において、仮想線C-C’と交差する第一端面に、扁平の渦巻き状に捲回された正極集電タブ3cが位置する。また、電極群1の反対側にある仮想線C-C’と交差する第二端面に、扁平の渦巻き状に捲回された負極集電タブ2cが位置する。このように図示する例の電極群1においては、正極集電タブ3cは、負極集電タブ2cとは捲回されている積層体の反対側に位置する。正極集電タブ3cと負極集電タブ2cとが、捲回されている積層体における同一の端面に配置されていてもよい。
【0037】
この例では図4に示すとおり、正極活物質含有層3bの第1幅Wは、負極活物質含有層2bの第2幅Wより小さい。第1幅Wは、積層体の捲回軸(図2の仮想線C-C’)に平行である第1方向100(図4の横方向)に正極活物質含有層3bが亘る幅である。同様に、第2幅Wは第1方向100に負極活物質含有層2bが亘る幅である。
【0038】
正極活物質含有層3bの第1幅Wは、負極活物質含有層2bの第2幅Wより狭い。そのため、正極活物質含有層3bが第1方向に沿う全領域が負極活物質含有層2bと重なっている。負極活物質含有層2bの第2幅Wは、正極活物質含有層3bの第1幅Wより広い。そのため、負極活物質含有層2bの一部が正極活物質含有層3bの端部よりも幅方向に外側へはみ出している。言い換えると、負極活物質含有層2bが第1方向に沿う一部の領域が正極活物質含有層3bと重なっており、他の領域が正極活物質含有層3bと重ならない。負極活物質含有層2bのうち正極活物質含有層3bと重ならない領域は、正極活物質含有層3bと重なる領域を間に挟んで、幅方向への両端部に配置される。負極活物質含有層2bは、捲回体5における捲回軸に平行な両方向(第1方向100に沿う両方向)へ向かって、正極活物質含有層3bより向こうへ突出している。
【0039】
正極活物質含有層3bは、第1幅Wの全体に亘ってセパレータ4を介して負極活物質含有層2bと対向している。対して負極活物質含有層2bは、セパレータ4を介して正極活物質含有層3bと対向している部分と、正極活物質含有層3bと対向していない部分とを含んでいる。
【0040】
負極活物質含有層2bは、第1方向100に沿う中間部分にて正極活物質含有層3bと対向している部分に該当する対向部分2dを含む。つまり対向部分2dは、負極活物質含有層2bのうち正極活物質含有層3bと面方向に重なる領域である。
【0041】
負極活物質含有層2bは、第2幅Wにおける一方の端部にて正極活物質含有層3bと対向していない部分に該当する第1非対向部分2eと、第2幅Wにおける他方の端部にて正極活物質含有層3bと対向していない部分に対応する第2非対向部分2eとを含む。第1非対向部分2eと第2非対向部分2eとは、負極活物質含有層2bのうち正極活物質含有層3bの第1方向100への両側の端部よりも外側へ突出している部分に対応する。つまりこれら非対向部分は、負極活物質含有層2bのうち正極活物質含有層3bと面方向に重ならない領域である。
【0042】
第1非対向部分2eが第1方向100に沿って突出する突出幅W1と、第2非対向部分2eが第1方向100に沿って突出する突出幅W2との両方が、0.4 mm以上1 mm以下の範囲内にある。これら突出幅W1と突出幅W2とは、等しくてもよく、異なっていてもよい。第1非対向部分2eの突出幅W1と第2非対向部分2eの突出幅W2との和は、負極活物質含有層2bの第2幅Wと正極活物質含有層3bの第1幅Wとの差に等しい。両端の突出幅W1と突出幅W2とを総称して、突出幅Wと呼ぶ。突出幅Wは、正極3と負極2との間のクリアランスに対応する。
【0043】
ここでは、正極活物質含有層3bの第1幅Wが負極活物質含有層2bの第2幅Wより小さい例を図示したが、実施形態に係る電極群は、この例に限られない。即ち、正極活物質含有層3bの第1幅Wは、負極活物質含有層2bの第2幅Wより大きくてもよい。図示しないがこの場合は、負極活物質含有層2bが第2幅Wの全体に亘ってセパレータ4を介して正極活物質含有層3bと対向し、正極活物質含有層3bがセパレータ4を介して負極活物質含有層2bと対向している部分と、負極活物質含有層2bと対向していない部分とを含む。正極活物質含有層3bのうち負極活物質含有層2bと対向していない部分は、負極活物質含有層2bの第1方向100への両側の端部から、第1方向100に沿って0.4 mm以上1 mm以下の範囲内の突出幅W(突出幅W1及び突出幅W2)で突出する。
【0044】
膨潤により巻き締まった電極群1において、突出幅Wが0.4 mm以上であることで、振動による短絡の発生が抑制される。突出幅Wが1 mm以下であることで、高い電池容量を示すことができる。
【0045】
捲回体5における積層体の捲回数は、少なくとも50ターンである。50ターン以上の捲回を含むことにより、上述した捲回体の巻き締まりによる耐振動性能が向上する効果が発揮される。ここでいう捲回数は、正極3又は負極2のうちの何れかの電極を基準とする。具体的には、起点となる電極が捲回中心(例えば、仮想線C-C’に沿った部分)の周りを1周して重なる部分までを、1ターンと数える。例えば、図5にて双方向矢印Dで示す負極2の最内周の端部から負極2が1周捲回されるまでの部分が、負極2を起点とした場合の積層体の捲回の1ターンに対応する。この例では、捲回体の中心側の起点となる電極として負極2を選択したが、正極3を代わりに選択してもよい。なお、図5に示す断面は、図2に示す断面と平行であり得る。即ち、図5は、図1に示す第1方向100と直交する断面を示す図であり得る。負極2の最内周の端部(及び正極3の最内周端部)は、第1方向100に沿った端部であり得る。
【0046】
図1に示すように、電極群1を電池に実装する際、正極リード8及び負極リード7を電極群1に接続することができる。正極リード8は、正極集電タブ3cに電気的に接続される。負極リード7は、負極集電タブ2cに電気的に接続される。
【0047】
以下、負極、正極、セパレータ、及び固定テープについて、より詳細に説明する。
【0048】
(負極)
負極は、負極活物質含有層を含む。また、上述したとおり、負極は、負極活物質含有層が担持される負極集電体をさらに含むことができる。
【0049】
負極活物質含有層は、負極活物質を含むことができる。また、負極活物質含有層は、負極活物質に加え、結着剤、導電剤、又は結着剤と導電剤との両方を含むことができる。
【0050】
負極活物質としては、例えば、金属、金属合金、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、黒鉛質材料、炭素質材料などを用いることができる。金属酸化物としては、例えば、単斜晶型二酸化チタン(例えば、TiO(B))およびリチウムチタン複合酸化物のような、チタンを含む化合物を用いることができる。金属硫化物としては、例えば、TiSのような硫化チタン、MoSのような硫化モリブデン、FeS、FeS、及びLiFeS(添字vは、0.9≦v≦1.2)のような硫化鉄が挙げられる。黒鉛質材料および炭素質材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス、気相成長炭素繊維、メソフェーズピッチ系炭素繊維、球状炭素、樹脂焼成炭素を挙げることができる。なお、複数の異なった負極活物質を混合して用いることも可能である。
【0051】
チタンを含む化合物のより具体的な例として、例えば、Li4+wTi512で表され0≦w≦3であるスピネル型チタン酸リチウムなどのスピネル構造を有するリチウムチタン酸化物を挙げることができる。スピネル型チタン酸リチウムは、リチウムが挿入されている状態(w>0)で電子導電性を示し、リチウム挿入量の上昇に伴って電子導電性が向上する。
【0052】
リチウムチタン複合酸化物のより具体的な例として、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物および直方晶型(orthorhombic)チタン含有複合酸化物などのリチウムチタン複合酸化物を挙げることができる。
【0053】
上記単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の例として、LixTi1-yM1yNb2-zM2z7+δで表される化合物が挙げられる。ここで、M1は、Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つである。M2は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3である。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の具体例として、LixNb2TiO7(0≦x≦5)が挙げられる。
【0054】
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の他の例として、LixTi1-yM3y+zNb2-z7-δで表される化合物が挙げられる。ここで、M3は、Mg,Fe,Ni,Co,W,Ta,及びMoより選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3である。
【0055】
直方晶型チタン含有複合酸化物の例として、Li2+aM42-bTi6-cM5d14+σで表される化合物が挙げられる。ここで、M4は、Sr,Ba,Ca,Mg,Na,Cs,Rb及びKからなる群より選択される少なくとも1つである。M5はZr,Sn,V,Nb,Ta,Mo,W,Y,Fe,Co,Cr,Mn,Ni,及びAlからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦a≦6、0≦b<2、0≦c<6、0≦d<6、-0.5≦σ≦0.5である。直方晶型チタン含有複合酸化物の具体例として、Li2+aNa2Ti614(0≦a≦6)が挙げられる。
【0056】
負極活物質には、充放電時の結晶構造の膨張収縮が少ないチタン酸化物を用いることが好ましい。充放電時に結晶構造が膨張収縮しない、無歪みの特徴を有するLi4Ti512で表されるチタン酸リチウムを負極活物質に含むことがより好ましい。負極活物質に充放電時の膨張収縮が少ない活物質を適用することで、電極群の膨潤による巻き締まり効果が損なわれにくい。
【0057】
結着剤は、負極活物質と負極集電体とを結合させることができる。結着剤の例として、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、スチレン-ブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber;SBR)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、アクリル系共重合体を主成分とするバインダ、及びカルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)を挙げることができる。結着剤として、上記材料のうち1種を選択してもよく、上記材料のうち2種以上を選択してもよい。また、結着剤は、上記した材料に限られない。
【0058】
導電剤は、負極の集電性能を高め、且つ負極活物質と負極集電体との接触抵抗を抑えるために必要に応じて配合される。導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等を挙げることができる。導電剤として、上記材料のうち1種を選択してもよく、上記材料のうち2種以上を選択してもよい。また、導電剤は、上記した材料に限られない。
【0059】
負極活物質含有層における負極活物質、導電剤及び結着剤は、それぞれ70質量%以上96質量%以下、2質量%以上20質量%以下及び2質量%以上10質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤の量を2質量%以上とすることにより、負極活物質含有層の集電性能を向上させることができる。また、結着剤の量を2質量%以上とすることにより、負極活物質含有層と負極集電体との結着性を高めることができ、優れたサイクル性能を期待できる。一方、導電剤及び結着剤はそれぞれ16質量%以下にすることが高容量化を図る上で好ましい。
【0060】
負極集電体としては、例えば、アルミニウム、及び銅などの金属を含む箔を使用することができる。金属を含む箔には、金属箔の他、例えば、アルミニウム合金からなる箔などの合金箔が含まれる。
【0061】
負極は、80μm以下の厚みを有することが望ましい。ここでいう厚みは、捲回体において第1方向と交差する方向への負極の厚みである。負極の厚みは、例えば、負極集電体と負極活物質含有層との積層方向に沿った、負極活物質含有層および負極集電体を含んだ厚みであり得る。また、ここでいう厚みは、完全放電状態における負極の厚みをいう。完全放電状態は、例えば、充電状態(State Of Charge;SOC)が0%の状態である。なお、負極の厚みには、電解質や有機溶媒などといった液体やゲルを含んだ状態と乾燥状態との間で実質的な差がないものの、取り扱いやすさの観点から、後述するように乾燥状態で厚み測定が行われる。
【0062】
負極は、例えば、以下の手順で作製することができる。まず、負極活物質、導電剤及び結着剤を、適当な溶媒に投入してスラリーを調製する。溶媒としては、例えば、N-メチルピロリドン(NMP)を用いることができる。このスラリーを負極集電体の表面に塗布し、塗膜を乾燥させる。スラリーは、負極集電体の一方の主面にのみ塗布してもよい。或いは、スラリーは、負極集電体の一つの主面とそれとは裏側にある他方の主面との両面に塗布してもよい。乾燥させた塗膜をプレスして所望の密度を有する負極活物質含有層を得る。こうすることにより、負極が完成する。
【0063】
(正極)
正極は、正極活物質含有層を含む。また、上述したとおり、正極は、正極活物質含有層が担持される正極集電体をさらに含むことができる。
【0064】
正極活物質含有層は、正極活物質を含む。正極活物質含有層は、必要に応じて、導電剤及び結着剤をさらに含むことができる。
【0065】
正極活物質は、特に限定されるものではないが、充放電において活物質の体積変化が小さいものを用いることが好ましい。このような正極活物質を用いることで、充放電を繰り返しても電極群の膨潤による巻き締まり効果が損なわれにくい。
【0066】
正極活物質としては、例えば、リチウム含有ニッケルコバルトマンガン酸化物(例えば、Li1-pNi1-q-r-sCoqMnrM6s2;式中、M6はMg、Al、Si、Ti、Zn、Zr、Ca及びSnからなる群より選択される1以上であり、-0.2≦p≦0.5,0<q≦0.5、0<r≦0.5、0≦s<0.1、q+r+s<1である)、リチウム含有コバルト酸化物(例えば、LiCoO2)、二酸化マンガン、リチウムマンガン複合酸化物(例えば、LiMn24、LiMnO2)、リチウム含有ニッケル酸化物(例えば、LiNiO2)、リチウム含有ニッケルコバルト酸化物(例えば、LiNi0.8Co0.22)、リチウム含有鉄酸化物(例えば、LiFePO4)、リチウムを含むバナジウム酸化物や、二硫化チタン、二硫化モリブデンなどのカルコゲン化合物などを含んでいてもよい。使用する正極活物質の種類は1種類または2種類以上にすることができる。
【0067】
結着剤は、正極活物質と正極集電体とを結合させることができる。結着剤の例として、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、スチレン-ブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber;SBR)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、アクリル系共重合体を主成分とするバインダ、及びカルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)を挙げることができる。結着剤として、上記材料のうち1種を選択してもよく、上記材料のうち2種以上を選択してもよい。また、結着剤は、上記した材料に限られない。
【0068】
導電剤は、正極の集電性能を高め、且つ正極活物質と正極集電体との接触抵抗を抑えるために必要に応じて配合される。導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等を挙げることができる。導電剤として、上記材料のうち1種を選択してもよく、上記材料のうち2種以上を選択してもよい。また、導電剤は、上記した材料に限られない。
【0069】
正極活物質含有層における正極活物質、導電剤及び結着剤の配合割合は、正極活物質75質量%以上96質量%以下、導電剤3質量%以上20質量%以下、結着剤1質量%以上7質量%以下の範囲内にすることが好ましい。
【0070】
正極集電体としては、例えば、アルミニウム、及び銅などの金属を含む箔を使用することができる。金属を含む箔には、金属箔の他、例えば、アルミニウム合金からなる箔などの合金箔が含まれる。
【0071】
正極は、80μm以下の厚みを有することが望ましい。ここでいう厚みは、捲回体において第1方向と交差する方向への正極の厚みである。正極の厚みは、例えば、正極集電体と正極活物質含有層との積層方向に沿った、正極活物質含有層および正極集電体を含んだ厚みであり得る。また、ここでいう厚みは、完全放電状態における正極の厚みをいう。完全放電状態は、例えば、充電状態(State Of Charge;SOC)が0%の状態である。なお、正極の厚みには、電解質や有機溶媒などといった液体やゲルを含んだ状態と乾燥状態との間で実質的な差がないものの、取り扱いやすさの観点から、後述するように乾燥状態で厚み測定が行われる。
【0072】
正極は、例えば、以下の手順で作製することができる。まず、正極活物質、導電剤及び結着剤を、適当な溶媒に投入してスラリーを調製する。溶媒としては、例えば、N-メチルピロリドン(NMP)を用いることができる。このスラリーを正極集電体の表面に塗布し、塗膜を乾燥させる。スラリーは、正極集電体の一方の主面にのみ塗布してもよい。或いは、スラリーは、正極集電体の一つの主面とそれとは裏側にある他方の主面との両面に塗布してもよい。乾燥させた塗膜をプレスして所望の密度を有する正極活物質含有層を得る。こうすることにより、正極が完成する。
【0073】
(セパレータ)
セパレータは、絶縁性材料からなり、正極と負極との電気的な接触を防止することができる。好ましくは、セパレータは、電解質および/又はキャリアイオン(Liイオン等)が通過できる材料からなるか、又は電解質および/又はキャリアイオンが通過できる形状を有する。
【0074】
実施形態に係る電極群において、セパレータは有機溶媒が浸み込むことによって膨潤するものである。有機溶媒の含浸によりセパレータが膨潤するか否かは、セパレータの材質、セパレータを構成する繊維の繊維径や繊維の種類、及びセパレータの厚み(乾燥状態の厚み)などといったセパレータの構成に影響される。例えば、下記表1に示す構成(乾燥状態の構成)を有するA型セパレータは、有機溶媒に浸漬させると膨潤し、厚みが乾燥時の10μmから10.5μmまで増加する。このA型セパレータは、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)繊維を含む基材とセルロース不織布との複合体である。一方で、表1に示す構成を有するB型セパレータは、有機溶媒を含浸させても膨潤しない。
【0075】
【表1】
【0076】
表1に示したセパレータの構成の各項目(空隙率、厚み、秤量、密度、引張強度、及び気密度)の測定方法は、後述する。
【0077】
セパレータを構成する繊維の材質としては、上記PET及びセルロースの他、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、及びビニロン等を候補として挙げることができる。
【0078】
セパレータは、乾燥している状態で15μm以下の厚みを有することが好ましい。
【0079】
捲回体に含むセパレータの枚数は、1枚であり得る。或いは、2枚以上のセパレータが捲回体に含まれていてもよい。
【0080】
(固定テープ)
固定テープは、捲回体の外周上に設けられ、捲回体を構成する積層体(正極と負極とセパレータとの積層体)の捲回解けを防止し捲回状態を維持するための捲止めテープとして機能する。
【0081】
固定テープの基材としては、例えば、20μmの厚さを有するポリプロピレン(polypropylene;PP)製フィルムを挙げることができる。基材の材質を伸縮性を示さないPPフィルムとする固定テープを用いることで、捲回体を捲止める機能を好適に発揮し、捲回体の膨潤時の巻き締まり効果を促すことができる。
【0082】
固定テープは、捲回体の外周を1周以上周回する。周回した固定テープの少なくとも一部が重なり得るが、重なった部分(オーバーラップ部分)は、例えば、曲面部に位置し得る。
【0083】
好ましくは、固定テープは、負極活物質含有層および/又は正極活物質含有層のうち捲回体の外周表面に露出する部分を被覆する。固定テープが捲回体の外周表面の広い範囲を覆っていることで、膨潤時に捲回体が巻き締まる効果が促進される。
【0084】
<測定方法>
電極群の厚さT(膨潤厚さT及び乾燥厚さT)など、電極群の詳細を確認する方法を次に説明する。確認の対象の電極群が電池に含まれている場合は、電池から電極群を取り出して前処理を行う。また、電極群が含む各電極およびセパレータ等の個別の部材について確認を行う場合は、電極群から電極およびセパレータを分離する。例えば、非水電解質電池に組み込まれている電極群に対しては、以下の手順で前処理を行う。
【0085】
先ず、非水電解質電池を、SOC(State Of Charge) 0%の状態、つまり放電深度(Depth Of Discharge;DOD)100%まで放電する。続いて、電池充電状態がSOC 0%となった非水電解質電池を、アルゴンで満たしたグローブボックス内で分解し、測定対象たる電極群を非水電解質電池から取り出す。次いで、取り出した電極群を、例えば、メチルエチルカーボネート(methyl ethyl carbonate;MEC)でそれぞれ洗浄する。次いで、洗浄した電極群を、25℃及びゲージ圧-90Paの雰囲気下で乾燥させる。電極群が含む個別の部材を確認する際は、乾燥させた電極群から各部材を分離する。以下、測定対象の電極を、正極または負極と区別せず単に「電極」と呼ぶ。
【0086】
(電極群の厚さT)
上記前処理により取得した電極群について、次のようにして第2方向への厚さT(膨潤厚さT及び乾燥厚さT)の測定を行うことができる。
【0087】
プロピレンカーボネート(PC)で含浸されている状態における膨潤厚さTを測定する際は、先ず、乾燥させた電極群をPCに1分間以上浸漬させる。PCから引き上げた電極群に対し160±20Nの荷重を加えた状態で、第2方向への厚さTをデジタルマイクロゲージで測定する。荷重を加える方向は、上述した第2方向とする。言い換えると、扁平構造の電極群の平坦部における表裏の主面同士を押し合わせるように荷重を加える。また、第2方向への厚さTを任意に9点測定したときの平均値を、膨潤厚さTとして採用する。
【0088】
乾燥状態における乾燥厚さTを測定する際は、PCで含浸させた電極群を再度乾燥させてから厚さ測定を行う。或いは、前処理により乾燥させた電極群に対しそのまま厚さ測定を行う。乾燥状態の電極群についても、第2方向に160±20Nの荷重を加えた状態で、第2方向への厚さTをデジタルマイクロゲージで測定する。また、第2方向への厚さTを任意に9点測定したときの平均値を、乾燥厚さTとして採用する。
【0089】
固定テープの重なり部分(オーバーラップ部分)の位置が平坦部に重なってる場合、固定テープの重なり部分を含む領域および重なり部分を含まない領域の何れかを任意に選択して、選択した領域内で9つの測定点にて厚さTを測定する。但し、この選択は、膨潤厚さTと乾燥厚さTとの間で統一させる。
【0090】
(捲回体における捲回数)
捲回体において各電極とセパレータを含む積層体が捲回されている回数(ターン数)は、次のとおり確認する。
【0091】
前処理後の電極群において、捲回体の捲回の向きに基づいて第1方向を特定する。第1方向と交差する端面にて正負極およびセパレータの断面を確認する。電極群の端面にて正負極およびセパレータが確認しづらい場合は、電極群を切断して第1方向と交差する切断面を露出させて、切断面を確認してもよい。
【0092】
第1方向と交差する断面にて、捲回の中心から、起点となる電極が捲回中心の周りを1周して重なる部分までを1ターンと数え、捲回体の外周までのターン数を数える。起点となる電極には、正極および負極の何れかを任意に選択する。
【0093】
(電極の厚み)
上記前処理により取得した電極に対し、次のようにして厚み測定を行うことができる。乾燥させた電極をデジタルマイクロゲージで測定する。電極の寸法のうち短手方向に対して任意に9点測定したときの平均値を、電極の厚みとして採用する。例えば、活物質含有層または集電体の主面と直交する方向が、短手方向、即ち厚み方向であり得る。
【0094】
(電極活物質の組成)
活物質含有層(正極活物質含有層および負極活物質含有層)に含まれている活物質(活物質含有層および活物質含有層)の組成は、次のように確認できる。上記前処理により取得した電極を再度洗浄および乾燥させる。乾燥させた電極から、例えば、スパチュラなどを用いて活物質含有層を剥がし取り、酸加熱処理により結着剤および導電剤を取り除く。かくして得られた試料に対し、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分光測定を実施する。測定対象元素は、Li、Al、Mn、Ba、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Fe、Hf、K、La、Mg、Na、Ni、Pb、Si、Ti、Y、Zn及びZrとする。測定結果から各元素のモル分率を算出することで、電極活物質の全体の組成を同定することができる。
【0095】
また、X線回折(X-Ray Diffraction:XRD)測定により、活物質の結晶構造を確認することができる。乾燥させた電極についてXRD測定を実施する。回折角(2θ)の範囲を10°から90°とし、0.02°ずつX線回折強度を測定する。かくして、XRD測定結果が得られる。一方で、ICP分析による組成の同定結果に基づき、データベースから、活物質組成から推定される活物質の固有ピークのパターンを推定する。推定したX線パターンと、実測のX線パターンとを比較することにより、正極層に含まれている正極活物質の結晶構造を同定することができる。負極活物質についても、同様の測定を行うことで、組成を同定することができる。
【0096】
活物質含有層が複数種類の電極活物質を含んでいる場合、上記XRD測定によって得られる実測のX線パターンは、複数種類の活物質に由来するピークを含む。各活物質に由来するピークは、他の活物質に由来するピークと重なる場合もあれば、重ならない場合もある。ピークが重ならない場合は、上記XRD測定及びICP分析により、電極に含まれる各活物質の組成及び混合比を知ることができる。
【0097】
一方、ピークが重なる場合は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)観察、エネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy;EDX)及び電子エネルギー損失分光法(Electron Energy-Loss Spectroscopy;EELS)分析により、活物質含有層に含まれる各活物質の組成及び混合比を決定する。具体的には、以下のとおりである。
【0098】
まず、乾燥させた電極から、カッターなどで約2cm×2cmの断片を切り出す。切り出した断片の断面に、加速電圧2kV~6kVで加速したアルゴンイオンを照射して、平坦な断面を得る。次に、EDX及びEELSを付属したSEMを用いて、電極断面に含まれる幾つかの活物質粒子の組成を分析する。EDXでは、B~Uまでの元素の定量分析をすることができる。Liについては、EELSによって定量分析することができる。かくして、活物質含有層に含まれる各活物質の組成を知ることができる。次いで、電極活物質の全体の組成と各活物質の組成とから、電極における活物質の混合比を知ることができる。
【0099】
(セパレータの厚み)
上記前処理により取得したセパレータに対し、次のようにして厚み測定を行うことができる。乾燥させたセパレータをデジタルマイクロゲージで測定する。セパレータの寸法のうち短手方向に対して任意に9点測定したときの平均値を、セパレータの厚みとして採用する。例えば、セパレータの主面と直交する方向が、短手方向、即ち厚み方向であり得る。
【0100】
(セパレータの空隙率)
セパレータの空隙率は、例えば、水銀圧入法により求めることができる。
【0101】
測定試料を、測定分析装置に装入する。測定装置としては、例えばマイクロメリティックス社製オートポアIV9510が挙げられる。この装置の測定に際しては、この装置の試料セルに、乾燥させたセパレータを50mm~100mm角程度のサイズに裁断したものを折りたたんで入れ込むことで、細孔直径分布を測定することができる。
【0102】
このような条件で測定を実施した細孔直径分布から、細孔比容積V(cm/g)を算出し、試料質量W(g)と試料体積V(cm)(縦×横×厚み)をもとに、空隙率ε(%)を以下の式(1)又は(2)で算出する。
【0103】
【数1】
【0104】
【数2】
ここで、試料体積V(cm)は、試料の縦寸法(cm)、横寸法(cm)及び厚さ(cm)から算出される。
【0105】
(セパレータの坪量)
セパレータの坪量(g/m)は、日本工業規格JIS P8124:2011に規定された方法で測定することができる。
【0106】
(セパレータ)
セパレータの密度(g/cm)は、上記方法で求めたセパレータの厚み及び坪量に基づいて算出できる。
【0107】
(セパレータの引張強度)
セパレータの引張強度は、JIS P8113:2006で規定された引張強さを基準とする。具体的には、JIS P8113:2006で規定された測定方法によって求められる引張強さの値を、引張強度として記録する。
【0108】
(セパレータの気密度)
セパレータの気密度は、JIS P8117:2009で規定されたガーレー法に基づいて測定される透気抵抗度を基準とする。具体的には、ここでいうセパレータの気密度は、JIS P8117:2009により規定されるガーレー法より得られる透気抵抗度として表す。ガーレー法による透気抵抗度(sec/100 mL)の数値が高いことは、気密度が高いことを意味する。
【0109】
第1の実施形態に係る電極群は、扁平状捲回型構造を有する捲回体と固定テープとを具備する。電極群は、平坦部を含み、且つ捲回体と固定テープとを含んだ扁平構造を有している。捲回体は、正極と、負極と、セパレータとを含んだ積層体が第1方向に沿って中心が位置するように50ターン以上の捲回数で捲回されて構成されている。正極は正極活物質含有層を含み、負極は負極活物質含有層を含む。固定テープは、捲回体の外周に1周以上巻かれている。扁平構造の平坦部における主面と交差する第2方向への厚さTについて、乾燥状態の電極群の乾燥厚さTに対するプロピレンカーボネートで含浸されている状態の電極群の膨潤厚さTの比率T/Tは1.01より多く1.02より少ない。正極活物質含有層および負極活物質含有層の一方が、捲回体の第1方向への両端にて他方の端部から突出する。その突出幅Wは、0.4 mm以上1 mm以下の範囲内にある。係る電極群は、容量が高く、且つ、耐振動性能が高い電池および電池パックを提供することができる。
【0110】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る電池は、第1の実施形態に係る電極群と電解質とを具備している。電解質の少なくとも一部は、電極群に保持される。
【0111】
1つの電池に2以上の電極群が含まれていてもよい。2以上の電極群は、何れも第1の実施形態の構成を満たすことが望ましい。
【0112】
また、係る電池は、例えば、電極群及び電解質を収容する外装部材を更に具備することができる。
【0113】
さらに、係る電池は、負極に電気的に接続された負極端子及び正極に電気的に接続された正極端子を更に具備することができる。負極端子は、負極リードを介して負極に接続され得る。正極端子は、正極リードを介して正極に接続され得る。電極リード(正極リード、又は負極リード)は、束ねられた複数の集電タブに接合され得る。
【0114】
実施形態に係る電池は、例えば、リチウムイオン二次電池であり得る。また、電池は、例えば、電解質として非水電解質を含んだ非水電解質電池を含む。
【0115】
以下、電解質、外装部材、負極端子及び正極端子について詳細に説明する。
【0116】
[電解質]
電解質としては、電極群に含浸させることができる形態の電解質を用いることが望ましい。このような電解質としては、例えば、液状非水電解質又はゲル状非水電解質を用いることができる。液状非水電解質は、溶質としての電解質塩を有機溶媒に溶解することにより調製される。
【0117】
電解質塩には、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)などのリチウム塩を挙げることができる。電解質塩は単独で使用しても、2種以上混合して使用してもよい。
【0118】
電解質塩の濃度、つまり有機溶媒に対する電解質塩の溶解量は、0.5 mol/L以上3 mol/L以下であることが好ましい。電解質塩の濃度が低すぎると十分なイオン伝導性を得ることができない場合がある。一方、濃度が高すぎると電解質塩を完全に溶解できない場合がある。
【0119】
有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(ethylene carbonate;EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate;PC)、ブチレンカーボネート(butylene carbonate;BC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate;DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate;DEC)、エチルメチルカーボネート(ethyl methyl carbonate;EMC)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone;γ-BL)、スルホラン(sulfolane;SL)、アセトニトリル(acetonitrile;AN)、1,2-ジメトキシエタン(1,2-dimethoxy ethane)、1,3-ジメトキシプロパン(1,3-dimethoxy propane)、ジメチルエーテル(dimethyl ether)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-methyl tetrahydrofuran;2MeTHF)などを挙げることができる。有機溶媒は、単独で使用しても、2種以上混合して使用してもよい。
【0120】
ゲル状非水電解質は、液状非水電解質と高分子材料とを複合化することにより調製される。高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile;PAN)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide;PEO)、又はこれらの混合物が含まれる。
【0121】
或いは、非水電解質としては、液状非水電解質及びゲル状非水電解質の他に、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)及び高分子固体電解質を用いてもよい。
【0122】
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンとの組合せからなる有機塩の内、常温(15℃以上25℃以下)で液体として存在し得る化合物を指す。常温溶融塩には、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質塩と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩、又はこれらの混合物が含まれる。一般に、二次電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に4級アンモニウム骨格を有する。
【0123】
高分子固体電解質は、電解質塩を高分子材料に溶解し、固体化することによって調製される。高分子固体電解質を単独で用いる場合は、電解質塩を溶解させた高分子材料を電極群に含浸させてから、固体化する。
【0124】
上記に加え、無機固体電解質をさらに併用してもよい。無機固体電解質は、Liイオン伝導性を有する固体物質である。
【0125】
[外装部材]
外装部材としては、例えば、ラミネートフィルムからなる容器、又は金属製容器を用いることができる。
【0126】
ラミネートフィルムの厚さは、例えば、0.5 mm以下であり、好ましくは、0.2 mm以下である。
【0127】
ラミネートフィルムとしては、複数の樹脂層とこれらの樹脂層間に介在した金属層とを含む多層フィルムが用いられる。樹脂層は、例えば、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)等の高分子材料を含んでいる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔からなることが好ましい。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより、外装部材の形状に成形され得る。
【0128】
金属製容器の壁の厚さは、例えば、1 mm以下であり、より好ましくは0.5 mm以下であり、更に好ましくは、0.2 mm以下である。
【0129】
金属製容器は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、及びケイ素等の元素を含むことが好ましい。アルミニウム合金は、鉄、銅、ニッケル、及びクロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は100質量ppm以下であることが好ましい。
【0130】
外装部材の形状は、特に限定されない。外装部材の形状は、例えば、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、又はボタン型等であってもよい。外装部材は、電池寸法や電池の用途に応じて適宜選択することができる。
【0131】
[負極端子]
負極端子は、上述の負極活物質のLi吸蔵放出電位において電気化学的に安定であり、且つ導電性を有する材料から形成することができる。具体的には、負極端子の材料としては、銅、ニッケル、ステンレス若しくはアルミニウム、又は、Mg,Ti,Zn,Mn,Fe,Cu,及びSiからなる群より選択される少なくとも1つを含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子の材料としては、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることが好ましい。負極端子は、負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料からなることが好ましい。
【0132】
負極リードには、負極端子に用いることのできる材料を用いることができる。接触抵抗を低減するために、負極端子、負極リード、及び負極集電体の材料が同様の物であることが好ましい。
【0133】
[正極端子]
正極端子は、リチウムの酸化還元電位に対し3V以上4.5V以下の電位範囲(vs.Li/Li)において電気的に安定であり、且つ導電性を有する材料から形成することができる。正極端子の材料としては、アルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される少なくとも1つを含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
【0134】
正極リードには、正極端子に用いることのできる材料を用いることができる。接触抵抗を低減するために、正極端子、正極リード、及び正極集電体の材料が同様の物であることが好ましい。
【0135】
次に、係る電池について、図面を参照しながらより具体的に説明する。
【0136】
図6は、実施形態に係る一例の扁平型電池の概略断面図である。図7は、図6のA部の拡大断面図である。
【0137】
図6及び図7に示す電池10は、図6に示す扁平状で捲回型の電極群1を具備している。電極群1は、第1の実施形態に係る電極群の一例である。電極群1は、金属層と、これを挟む2枚の樹脂フィルムとを含んだラミネートフィルムからなる袋状の外装部材9内に収納されている。
【0138】
電極群1は、図7に示すように、外側から負極2、セパレータ4、正極3、セパレータ4の順で積層した積層体を渦巻状に捲回しプレス成型により扁平形状に形成されて成る捲回体と、この捲回体の外周に巻き付けられて捲回止めの役割を果たしている固定テープ6とを含んでいる。負極2のうち最も外側に位置する部分では、図7に示すように負極集電体2aの内面側の片面上に負極活物質含有層2bが形成されている。負極2のその他の部分では、負極集電体2aの両面上に負極活物質含有層2bが形成されている。正極3については、正極集電体3aの両面に正極活物質含有層3bが形成されている。
【0139】
捲回型の電極群1の外周端近傍において、負極端子17が、負極2の最外層の部分の負極集電体2aに接続されており、正極端子18が、内側に位置する正極3の正極集電体3aに接続されている。これらの負極端子17および正極端子18は、外装部材9の開口部から外部に延出されている。
【0140】
図6及び図7に示す電池10は、図示しない電解質を更に具備する。電解質は、電極群1に含浸された状態で、外装部材9内に収容されている。
【0141】
実施形態に係る電池の態様は、図6及び図7に示すものに限られない。図8を参照して、他の例を説明する。
【0142】
図8は、実施形態に係る他の例の電池を概略的に示す分解斜視図である。
【0143】
電池10は、開口部を有する金属製の金属製容器19a及び封口板19bから構成される角型外装部材と、金属製容器19a内に収容された扁平状で捲回型の電極群1と、金属製容器19a内に収納され且つ電極群1に含浸された電解質(図示しない)とを備えている。封口板19bは、金属製容器19aの開口部に溶接されている。
【0144】
捲回型の電極群1は、一対の長辺を有する帯状の正極と、一対の長辺を有する帯状の負極とを備える。図6及び図7を参照して説明した電池における電極群1と同様に、正極(3)及び負極(2)は、一対の長辺を有する帯状のセパレータ(4)を間に挟んで捲回されている。正極、負極、及びセパレータは、長辺の方向が合わされた状態で捲回されている。
【0145】
正極(3)は、正極集電体(3a)とその表面に担持された正極活物質含有層(3b)とを含む。正極集電体は、その表面に正極活物質含有層を担持していない帯状の部分にあたる正極集電タブ3cを含む。
【0146】
負極(2)は、負極集電体(2a)とその表面に担持された負極活物質含有層(2b)とを含む。負極集電体は、その表面に負極活物質含有層を担持していない帯状の部分にあたる負極集電タブ2cを含む。電極群1では、図8に示すように、一方の端面から渦巻状に捲回された正極集電タブ3cが突出し、且つ他方の端面から渦巻状に捲回された負極集電タブ2cが突出している。
【0147】
図8に示すように、電極群1は、2つの挟持部材16を有する。正極集電タブ3cおよび負極集電タブ2cは、それぞれ、その一部が挟持部材16によって挟持されている。
【0148】
電極群1の最外周のうち、正極集電タブ3c及び負極集電タブ2cを除いた部分は、固定テープ6により被覆されている。
【0149】
封口板19bは、矩形形状を有する。封口板19bは、図示しない2つの貫通孔を有している。封口板19bには、例えば液状の電解質を注入するための注液口(図示しない)が更に開口されている。注液口は、電解質の注液後、封止蓋(図示しない)によって封止される。
【0150】
図8に示す電池は、正極リード8と正極端子18と負極リード7と負極端子17とをさらに備える。
【0151】
正極リード8は、正極端子18と電気的に接続するための接続プレート8aと、接続プレート8aに開口された貫通孔8bと、接続プレート8aから二股に分岐し、下方に延出した短冊状の集電部8cとを有する。正極リード8の2つの集電部8cは、その間に正極集電タブ3cを挟持する挟持部材16を挟み、溶接によって挟持部材16に電気的に接続されている。
【0152】
負極リード7は、負極端子17と電気的に接続するための接続プレート7aと、接続プレート7aに開口された貫通孔7bと、接続プレート7aから二股に分岐し、下方に延出した短冊状の集電部7cとを有する。負極リード7の2つの集電部7cは、その間に負極集電タブ2cを挟持する挟持部材16を挟み、溶接によって負極集電タブ2cに電気的に接続されている。
【0153】
正極リード8及び負極リード7を正極集電タブ3cおよび負極集電タブ2cにそれぞれ電気的に接続する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば超音波溶接やレーザー溶接等の溶接が挙げられる。
【0154】
正極端子18及び正極リード8が外部絶縁部材15及び図示しない内部絶縁部材を介して封口板19bにかしめ固定されている。このような配置により、正極端子18及び正極リード8は、互いに電気的に接続されており、かつ封口板19bから電気的に絶縁されている。負極端子17及び負極リード7が外部絶縁部材15及び図示しない内部絶縁部材を介して封口板19bにかしめ固定されている。このような配置により、負極端子17及び負極リード7は、互いに電気的に接続されており、かつ封口板19bから電気的に絶縁されている。
【0155】
図9を参照して、さらに他の例を説明する。図9は、実施形態に係るさらに他の例の電池を概略的に示す一部切欠斜視図である。
【0156】
図9に示す電池10は、正極リード8及び負極リード7が電極群1の同一端面から同じ方向へ向かって延出している点で、図8に示した例と異なる。
【0157】
扁平型の電極群1は、図6図8を参照しながら説明した電極群1と同様に、負極と正極とセパレータとを含んだ捲回体と、固定テープとを含む。また、図6図9の各図における電極群1は、何れも扁平形状の捲回型構造を有する捲回体と固定テープとを含んだ扁平構造を有する。
【0158】
図9に示す電池10では、このような電極群1が、金属製容器19aの中に収容されている。金属製容器19aは、図示しない電解質をさらに収容している。電解質の少なくとも一部は、電極群1に保持されている。金属製容器19aは、金属製の封口板19bにより封止されている。金属製容器19aと封口板19bとは、例えば、外装部材としての外装缶を構成する。
【0159】
負極リード7は、その一端が負極集電体に電気的に接続され、他端が負極端子17に電気的に接続されている。正極リード8は、その一端が正極集電体に電気的に接続され、他端が封口板19bに固定された正極端子18に電気的に接続されている。正極端子18は、封口板19bに外部絶縁部材15を介して固定されている。正極端子18と封口板19bとは、外部絶縁部材15により電気的に絶縁されている。
【0160】
第2の実施形態に係る電池は、第1の実施形態に係る電極群を含む。そのため、高い容量と高い振動耐性を示す。
【0161】
[第3の実施形態]
第3の実施形態によると、電池パックが提供される。この電池パックは、第2の実施形態に係る電池を具備する。
【0162】
実施形態に係る電池パックは、複数の電池を備えることもできる。複数の電池は、電気的に直列に接続することもできるし、又は電気的に並列に接続することもできる。或いは、複数の電池を、直列及び並列の組み合わせで接続することもできる。
【0163】
例えば、電池パックは、第2の実施形態に係る電池を5つ具備することもできる。これらの電池は、直列に接続されることができる。また、直列に接続された電池は、組電池を構成することができる。すなわち、実施形態に係る電池パックは、組電池を具備することもできる。
【0164】
実施形態に係る電池パックは、複数の組電池を具備することができる。複数の組電池は、直列、並列、又は直列及び並列の組み合わせで電気的に接続することができる。
【0165】
実施形態に係る電池パックを図10及び図11を参照して詳細に説明する。単電池には、例えば、図6に示す扁平型電池を使用することができる。
【0166】
図10は、実施形態に係る電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図である。図11は、図10に示す電池パック20の電気回路の一例を示すブロック図である。
【0167】
前述した扁平型電池から構成される複数の単電池21は、外部に延出した負極端子17及び正極端子18が同じ向きに揃えられるように積層され、粘着テープ22で締結することにより組電池23を構成している。これらの単電池21は、図11に示すように互いに電気的に直列に接続されている。
【0168】
プリント配線基板24は、負極端子17及び正極端子18が延出する単電池21の側面と対向して配置されている。プリント配線基板24には、図11に示すようにサーミスタ25、保護回路26及び外部機器への通電用端子27が搭載されている。なお、組電池23と対向するプリント配線基板24の面には組電池23の配線と不要な接続を回避するために絶縁板(図示せず)が取り付けられている。
【0169】
正極側リード28は、組電池23の最下層に位置する正極端子18に接続され、その先端はプリント配線基板24の正極側コネクタ29に挿入されて電気的に接続されている。負極側リード30は、組電池23の最上層に位置する負極端子17に接続され、その先端はプリント配線基板24の負極側コネクタ31に挿入されて電気的に接続されている。これらのコネクタ29及び31は、プリント配線基板24に形成された配線32及び配線33を通して保護回路26に接続されている。
【0170】
サーミスタ25は、単電池21の温度を検出し、その検出信号は保護回路26に送信される。保護回路26は、所定の条件で保護回路26と外部機器への通電用端子27との間のプラス側配線34a及びマイナス側配線34bを遮断できる。所定の条件とは、例えばサーミスタ25の検出温度が所定温度以上になったときである。また、所定の条件とは単電池21の過充電、過放電、過電流等を検出したときである。この過充電等の検出は、個々の単電池21若しくは組電池23全体について行われる。個々の単電池21を検出する場合、電池電圧を検出してもよいし、正極電位もしくは負極電位を検出してもよい。後者の場合、個々の単電池21中に参照極として用いるリチウム電極が挿入される。図10及び図11の場合、単電池21それぞれに電圧検出のための配線35を接続し、これら配線35を通して検出信号が保護回路26に送信される。
【0171】
正極端子18及び負極端子17が突出する側面を除く組電池23の三側面には、ゴムもしくは樹脂からなる保護シート36がそれぞれ配置されている。
【0172】
組電池23は、各保護シート36およびプリント配線基板24と共に収納容器37内に収納される。すなわち、収納容器37の長辺方向の両方の内側面と短辺方向の内側面それぞれに保護シート36が配置され、短辺方向の反対側の内側面にプリント配線基板24が配置される。組電池23は、保護シート36およびプリント配線基板24で囲まれた空間内に位置する。蓋38は、収納容器37の上面に取り付けられている。
【0173】
なお、組電池23の固定には粘着テープ22に代えて、熱収縮テープを用いてもよい。この場合、組電池の両側面に保護シートを配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて組電池を結束させる。
【0174】
図10及び図11では単電池21を直列接続した形態を示したが、電池容量を増大させるためには並列に接続してもよい。組み上がった電池パックを直列及び/又は並列に接続することもできる。
【0175】
第3の実施形態に係る電池パックは、第2の実施形態に係る電池を含む。そのため、高い容量と高い振動耐性を示す。
【0176】
[実施例]
以下、実施例に基づいて上記実施形態をさらに詳細に説明する。
【0177】
(実施例1)
リチウム含有ニッケルコバルトマンガン酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.32(NCM)及びリチウムコバルト酸化物LiCoO2(LCO)を準備した。これらNCM及びLCOをNCM:LCO=80:20の質量比で混合し、正極活物質として用いた。導電剤として、アセチレンブラック(AB)及び黒鉛を準備した。結着剤として、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を準備した。正極活物質(NCM-LCO混合物)を91質量%と、ABを2.5質量%と、黒鉛を3質量%と、PVdFを3.5質量%とを、N-メチルピロリドン(NMP)に投入して混合し、スラリーを調製した。このスラリーを厚さ12μmの帯形状を有するアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。スラリーは、集電体の片面当たり70g/m2の目付で塗布した。次いで、密度が3.1g/cm3(集電体を除く)となるよう、乾燥させた塗膜をプレスした。こうして集電体上に正極活物質含有層を形成し、正極を得た。作製した正極の厚みは57μmであった。
【0178】
負極活物質としてスピネル構造を有するチタン酸リチウムLi4Ti512を準備した。導電剤として、AB及び黒鉛を準備した。結着剤としてPVdFを準備した。負極活物質を85質量%と、ABを3質量%と、黒鉛を5質量%と、PVdFを7質量%とを、NMPに投入して混合し、スラリーを調製した。このスラリーを厚さ12μmの帯形状を有するアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。スラリーは、集電体の片面当たり63g/m2の目付で塗布した。次いで、密度が2.2g/cm3(集電体を除く)となるよう、乾燥させた塗膜をプレスした。こうして集電体上に負極活物質含有層を形成し、負極を得た。作製した負極の厚みは69μmであった。
【0179】
負極活物質含有層の短辺幅(第1方向への幅W)が正極活物質含有層の短辺幅(第1方向への幅W)より1.6mm広くなるよう、正極および負極を裁断して寸法を調節した。
【0180】
セパレータとして、上記表1に示した構成のA型セパレータを準備した。このA型セパレータは、有機溶媒を浸み込ませると膨潤するポリエチレンテレフタレート(PET)繊維からなる基材とセルロース不織布との複合セパレータだった。
【0181】
上記正極、負極、及びセパレータを、“正極-セパレータ-負極-セパレータ”の順で積層させた。これら部材を積層させる際、負極活物質含有層のうち正極活物質含有層と対向しない非対向部分が正極活物質含有層の端部から突出する突出幅W、つまり正極と負極との間のクリアランスが正負極の短辺方向の両側で0.8mmとなるように、正極と負極の配置を調整した。得られた積層体を、最内周および最外周の何れにも負極が位置するように渦巻き状に捲回して、扁平状にプレスして捲回体(電極コイル)を作製した。捲回数は、最内周の負極を基準に50ターンとした。
【0182】
捲止めテープとして、ポリプロピレンを基材とする固定テープを準備した。固定テープが最外周の負極活物質含有層を覆うように固定テープを周回させて捲回体の外周に巻き付けた。
【0183】
このようにして、電極群を作製した。
【0184】
(実施例2-3)
負極活物質含有層の非対向部分が正極活物質含有層の両端部から突出する突出幅W(クリアランス)が下記表2に示す値となるように、正極の寸法を調節した点以外は、実施例1と共通の手順で電極群を作製した。
【0185】
(実施例4-6)
正極および負極の一方または両方について集電体へのスラリー塗布の片面当たりの目付を多くして、正負極の厚みを下記表2に示す値にそれぞれ調整した点以外は、実施例1と共通の手順で電極群を作製した。
【0186】
(比較例1-2)
負極活物質含有層の非対向部分が正極活物質含有層の両端部から突出する突出幅W(クリアランス)が下記表2に示す値となるように、正極の寸法を調節した点以外は、実施例1と共通の手順で電極群を作製した。
【0187】
(比較例3)
セパレータとして、上記表3に示した構成のB型セパレータを準備した。このB型セパレータは、有機溶媒を浸み込ませても膨潤しないセルロース不織布だった。
【0188】
(比較例4-5)
正極および負極の一方または両方について集電体へのスラリー塗布の片面当たりの目付を少なくして、正負極の厚みを下記表2に示す値にそれぞれ調整した点以外は、実施例1と共通の手順で電極群を作製した。
【0189】
(比較例6-8)
負極活物質含有層の非対向部分が正極活物質含有層の両端部から突出する突出幅W(クリアランス)が下記表2に示す値となるように、正極の寸法を調節した点、及び正極および負極のそれぞれについて集電体へのスラリー塗布の片面当たりの目付を少なくして、正負極の厚みを下記表2に示す値にそれぞれ調整した点以外は、実施例1と共通の手順で電極群を作製した。
【0190】
<電極群の厚さTの測定>
実施例1-6及び比較例1-8で作製した各電極群について、先に説明した方法によりプロピレンカーボネート(PC)で含浸されている状態の膨潤厚さT及び乾燥状態の厚さTを測定した。測定結果に基づいて、電極群の厚さTについて、乾燥状態の厚さTに対する膨潤厚さTの比T/Tを算出した。算出結果を下記表2に示す。
【0191】
<評価>
(放電容量測定)
実施例1-6及び比較例1-8で作製した各々の電極群の放電容量を、下記のとおり測定した。
【0192】
各電極群を、アルミニウム製の外装缶にそれぞれ封入し、セルを作製した。作製したセルを乾燥機に投入し、95℃環境下6時間の真空乾燥を行った。乾燥後、露点-50℃以下に管理されたグローブボックスにセルを運んだ。
【0193】
メチルエチルカーボネート(MEC)とプロピレンカーボネート(PC)とを、2:1の体積比で混合させた。得られた混合溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1 mol/Lの濃度で溶解させ、液状非水電解質を調製した。
【0194】
上記液状非水電解質を、外装缶内に注入した。非水電解質を入れた外装缶は、-90 kPaの減圧環境下において封止した。
【0195】
非水電解質を注液した後、セルに対し1CでSOC(State Of Charge)20%まで初充電を行い、70℃の恒温槽で24hのエージングを行った。エージング後、缶を開封し、再度-90 kPaの減圧環境下において封止し、非水電解質電池を作製した。
【0196】
作製した非水電解質電池に対し、25℃環境下で電圧範囲1.8 V~2.8 Vにて放電容量測定を実施した。充電時は、20 Aの電流値で電池電圧2.8 Vまで定電流充電を行った後、2.8 Vで定電圧充電を行い、充電電流値が1 Aとなった時点で充電を終了するCCCV(Constant Current-Constant Voltage)充電を行った。CCCVによる満充電の後、20 Aの電流値で1.8 Vまで放電を行い、この際に放電された電気容量の値を放電容量とした。
【0197】
(振動試験)
実施例1-6及び比較例1-8で作製した各々の電極群に対し、次のとおり振動試験を実施して、耐久性能を評価した。
【0198】
振動試験には、国連試験基準マニュアル(UN Manual of Tests and Criteria)の国連勧告試験UN3480のT3試験条件に準拠する条件を適用して行った。
【0199】
実施例1-6及び比較例1-8で作製した各々の電極群の詳細および評価結果を下記表2にまとめる。具体的には、電極群の詳細として正極厚み、負極厚み、セパレータの種類、乾燥厚さTに対する膨潤厚さTの比T/T、及び負極活物質含有層の非担持部の突出幅W(両側共通)を示す。また、評価結果として、放電容量および振動試験の結果を示す。
【0200】
【表2】
【0201】
表2が示すとおり、実施例1-6で各々作製した電極群は、何れも振動試験にて短絡せず良好な振動耐性を示した。また、実施例1-6の電極群は良好な放電容量を示した。これら実施例1-6の電極群の何れにおいても、乾燥厚さTに対する膨潤厚さTの比T/Tが1.01<T/T<1.02の関係を満たすとともに、負極活物質含有層が正極活物質含有層の両側から突出する突出幅W(クリアランス)が0.4 mm以上1 mm以下の範囲内に収まっていた。
【0202】
比較例1及び4-6で各々作製した電極群では、短絡が生じなかったものの、放電容量が低かった。比較例1及び6では、正負極のクリアランス(負極活物質含有層の非担持部の突出幅W)を多くするために正極活物質含有層と負極活物質含有層との対向面積が減少した結果、電極群のうち充放電に寄与できる部分が少なくなり、放電容量が低下したことが伺える。比較例4及び5では、セパレータの膨潤により捲回体が巻き締まる効果を多くするために乾燥厚さTに対する膨潤厚さTの比T/Tが高くなるように電極群内部に占めるセパレータの割合を多くした結果、充放電に貢献する正負極が少なくなり、放電容量が低下したことが伺える。
【0203】
比較例2、3、7、及び8で各々作製した電極群では、振動試験中に短絡が生じた。比較例2、7、及び8では、正負極のクリアランス(負極活物質含有層の非担持部の突出幅W)が少なすぎたことが原因で、短絡が生じたことが伺える。比較例3では、膨潤しないセパレータ(表1記載のB型)を用いたことで乾燥厚さTに対する膨潤厚さTの比T/Tが1になり、捲回体が巻き締まる効果が得られなかった結果、振動耐性が高められなかったことが伺える。
【0204】
以上説明した1以上の実施例および実施形態によれば、扁平形状の捲回型構造を有する捲回体と固定テープとを具備する電極群が提供される。電極群は、平坦部を含む扁平構造を有する。捲回体は、正極活物質含有層を含む正極と、負極活物質含有層を含む負極と、セパレータとを含んだ積層体が第1方向に沿って中心が位置するように50ターン以上の捲回数で捲回されて構成されている。固定テープは、捲回体の外周に1周以上巻かれている。扁平形状の捲回型構造の平坦部における主面と交差する第2方向への扁平構造の厚さTは、プロピレンカーボネートで含浸されている状態の第2方向への厚さを膨潤厚さTとし、乾燥状態の第2方向への厚さを乾燥厚さTとしたとき、1.01<T/T<1.02の関係を満たす。捲回体の第1方向への両端にて、正極活物質含有層および負極活物質含有層の一方が他方の端部から0.4 mm以上1 mm以下の範囲内の突出幅Wで突出している。上記構成の電極群によれば、容量が高く、且つ、耐振動性能が高い電池および電池パックを提供することができる。
【0205】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
図1
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図11