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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】無鉛無ホウ素艶消し黒色系瓦用釉薬
(51)【国際特許分類】
   C03C 8/00 20060101AFI20240708BHJP
   C04B 33/34 20060101ALI20240708BHJP
   C04B 41/86 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
C03C8/00
C04B33/34
C04B41/86 A
C04B41/86 R
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024021184
(22)【出願日】2024-02-15
【審査請求日】2024-02-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000161633
【氏名又は名称】宮脇グレイズ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 善孝
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-330471(JP,A)
【文献】特開昭63-230538(JP,A)
【文献】特開昭53-016015(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112759264(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00,
C04B 33/34,41/86,
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、艶消し黒色系瓦用釉薬:
(1)ゼーゲル表示で、
MgO:0~0.25モル
CaO:0.25~0.8モル
BaO及び/又はSrO:0.1~0.55モル
O及び/又はZnOを≦0.25モル(ROはLiO、NaO及びKOの1種又は2種以上を表す);
SiO:1.5~3.5モル
:0~0.05モル
ZrO:0~0.25モル、及び
Al:0.2~0.65モル
(2)前記釉薬全体に対する重量%による表記で、
MnO≧2.5
0<Fe≦9、及び
0<Cr≦4.5。
【請求項2】
:0~0.025モルである、請求項1に記載の釉薬。
【請求項3】
を含まない請求項2に記載の釉薬。
【請求項4】
(i)Feの量が、釉薬全体に対する重量に対して4%以上;
(ii)Feの量が、釉薬全体に対する重量に対して1%以上3%未満であり、Bの量が0モル~0.03モル;又は
(iii)Feの量が、釉薬全体に対する重量に対して3%以上4%未満であり、MnOの量が釉薬全体に対する重量に対して6%以上、
である、請求項1に記載の釉薬。
【請求項5】
(i’)Feの量が、釉薬全体に対する重量に対して5%以上であり、かつMnOの量が、釉薬全体に対する重量に対して6~8%であるか、又は
(iii’)Feの量が、釉薬全体に対する重量に対して3%以上4%未満であり、MnOの量が釉薬全体に対する重量に対して10%以上である、
請求項4に記載の釉薬。
【請求項6】
Feの量が、釉薬全体に対する重量に対して3%以上4%未満であり、MnOの量が釉薬全体に対する重量に対して7%以上であり、Coを、釉薬全体に対する重量%に対して0~0.15重量%の量で含む、請求項4に記載の釉薬。
【請求項7】
さらに含む、請求項1に記載の釉薬。
【請求項8】
ZnOを含み、Coをさらに含む、請求項1に記載の釉薬。
【請求項9】
下表の組成からなるいずれかの釉薬である、請求項1に記載の釉薬(基礎釉はモル比、着色剤(MnO、Fe及びCr)及びその他添加剤は釉薬全体の重量に対する重量%):
【表1-1】

【表1-2】
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の釉薬を用いて製造される艶消し黒色系瓦。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無ホウ素艶消し黒色系瓦用無ホウ素釉薬、すなわちホウ素を少なくとも実質的に含まない艶消し黒色系瓦用釉薬瓦用釉薬に関する。
【背景技術】
【0002】
瓦において、艶消しの黒色は、銀色とともに日本の風土に合った陶器瓦を代表する色である。壁よりも濃色の瓦が採用されることが多いため、銀や黒の採用率は極めて高いといった背景がある。
【0003】
艶消し黒色系瓦用の釉薬には、熔材として従来鉛が用いられていたが、公害問題の解消及び作業環境の改善を指向した無鉛化がなされた。
低・中温焼成域における熔解性を担保するために、鉛の代替としてBが用いられている。
【0004】
アルカリ金属類(LiO、NaO及びKO)も熔材の候補として上げられるが、熱膨張が大きく貫入の発生リスクが高まる。性能、美観を維持するためには貫入の発生を抑制しなければならないところ、退色・貫入を抑えるために、瓦用艶消し釉薬はアルカリマットではなくアルミナマット域とされている(特許文献1)。
ところが、アルミナマットはSiO/Al比率が低くなることから、光沢釉に比べ釉の反応性が悪くなる(=耐火度が高く熔けにくい)。そのため、熔材としてのBに依存しなければならないのが現状である。
【0005】
特許文献2にはBおよびR Oについて所定の基準量より少ない量を用い、アルカリ土類について前記所定の基準量より多い量を用い、PbOを用いずに光沢釉薬を製造する工程を含むPbを含まない釉薬の製造方法及び該製造方法で製造される低温焼成瓦用釉薬が記載されている。しかしながら、同公報に開示されているのは光沢瓦に関する技術のみである。
【0006】
また、特許文献3には黒色系瓦に用いる釉薬が開示されているが、この釉薬においても、Bが0.05~0.2モルが必要とされている。
【0007】
以上のとおり、艶消し黒色系瓦を包含する黒色系瓦の釉薬においては、Bが必須の成分とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭58-88141号公報
【文献】特開2011-173762号公報
【文献】特開2010-180082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年に至り労働衛生及び環境安全の観点から、艶消し黒色系釉薬においても、ホウ素を用いない釉薬が必要とされている。ところが、かかる釉薬の開発・提供は、未だ緒についてさえいないのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題に鑑み、本発明者らはホウ素を少なくとも実質的に用いない艶消し黒色系釉薬を得ることの可能性について検討したところ、特定の成分を調整することにより上記課題が解決できる可能性があることを見出し、さらに鋭意研究を進めて本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、少なくとも以下の各発明に関する:
[1]
以下を含む、艶消し黒色系瓦用釉薬:
(1)ゼーゲル表示で、
MgO:0~0.25モル
CaO:0.25~0.8モル
BaO及び/又はSrO:0.1~0.55モル
O及び/又はZnOを≦0.25モル(ROはLiO、NaO及びKOの1種又は2種以上を表す);
SiO:1.5~3.5モル
:0~0.05モル
ZrO:0~0.25モル、及び
Al:0.2~0.65モル
(2)前記釉薬全体に対する重量%による表記で、
MnO≧2.5
Fe≦9、及び
Cr≦4.5。
[2]
:0~0.025モルである、[1]の釉薬。
[3]
を含まない[2]の釉薬。
[4]
(i)Feの量が、釉薬全体に対する重量に対して4%以上;
(ii)Feの量が、釉薬全体に対する重量に対して1%以上3%未満であり、Bの量が0モル~0.03モル;又は
(iii)Feの量が、釉薬全体に対する重量に対して3%以上4%未満であり、MnOの量が釉薬全体に対する重量に対して6%以上、
である、[1]~[3]のいずれかの釉薬。
[5]
(i’)Feの量が、釉薬全体に対する重量に対して5%以上であり、かつMnOの量が、釉薬全体に対する重量に対して6~8%であるか、又は
(iii’)Feの量が、釉薬全体に対する重量に対して3%以上4%未満であり、MnOの量が釉薬全体に対する重量に対して10%以上である、[4]の釉薬。
[6]
Feの量が、釉薬全体に対する重量に対して3%以上4%未満であり、MnOの量が釉薬全体に対する重量に対して7%以上であり、Coを、釉薬全体に対する重量%に対して0~0.15重量%の量で含む、[4]の釉薬。
[7]
TiO及び/又はPをさらに含む、[1]~[6]のいずれかの釉薬。
[8]
ZnOを含み、Coをさらに含む、[1]~[7]のいずれかの釉薬。
[9]
下表の組成からなるいずれかの釉薬である、[1]~[7]のいずれかの釉薬:
【表1-1】

【表1-2】

[10]
[1]~[9]のいずれかの釉薬を用いて製造される艶消し黒色系瓦。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ホウ素を除いた(かつ鉛を含まない)艶消し黒色系釉薬の提供が可能となり、もって艶消し黒色系釉薬及び艶消し黒色系瓦を製造する際の労働衛生及び環境安全の一層の向上が達成される。
本発明の艶消し黒色系釉薬はホウ素を含まないにもかかわらず、マット様の黒色を十分に発色せしめることができるという格別顕著な効果を奏する。
【0013】
なお、本発明は艶消し黒色系釉薬においてホウ素の使用を回避せしめることに成功したばかりでなく、RO、Al、MnO及びTiOといった成分を特定の量で用い、衛生・環境安全の面において大きな問題がない成分であるCaOを従来より大きい量で用い得る点において従来技術とは顕著に異なるのである。CaOが上記のとおり衛生・環境安全の面において大きな問題がないことを併せ考えれば、このことは従来技術からは当業者といえども想到し得ない格別な効果である。
【0014】
理論に束縛されることを望むものではないが、本発明の釉薬が奏する所期の効果は、以下の組成による相乗的な効果を見出した卓見の成果である可能性がある:
(1)SiO・Alを低くすること
(2)着色だけではなく熔材としての効果も期待できるMnOの量に下限を設けて大きくすること(2.5重量%以上)
(3)逆に、耐火度を高くするFe・Cr(Fe及び/又はCrを意味する。以下において同じ)の添加を、上限により、MnOの量に応じて限定的にするか又は調整すること。
【0015】
(a)本発明の釉薬のうち、ZrOを含むものにおいては、SiO・Alの割合が低いことにより生じえる釉薬の熱膨張を、ZrOにより抑制する効果を奏する。
(b)本発明の釉薬のうち、貫入を発生させない程度のRO(及び/又はP)を含有するものは、RO(及び/又はP)により、より広範な所望の物性を達成することができる。
(c)本発明の釉薬のうち、少量のZnO、TiOを含むものは、より明瞭な黒色を瓦に与えることができる。すなわち、少量のZnO、TiOは釉薬の熔融を促進する作用がある。
(d)本発明の釉薬のうち、BaOとSrOは、相互に一部を置き換えることが可能であり、より広範な所望の物性を達成することができる。
(e)本発明の釉薬のうち、ZnOを0.1モル程度含む釉薬(亜鉛釉)においては、Co・Ni(レアメタル)などの添加により茶色を改変した黒色が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。なお、各成分の量は他の記載がない限りゼーゲル表示でのモル数を表す。本明細書又は本発明において規定される各成分の量又は量の範囲は、本発明における所期の効果を達成すれば、5%程度の幅により改変してよい。
【0017】
本発明の釉薬はホウ素を少なくとも実質的に含まない艶消し黒色系瓦用釉薬であるところ、ホウ素を用いないと釉薬の熔けが悪く耐火度が高くなり、黒色発色の素となる成分(主としてMnO及びFe・Cr)の結晶が発生しにくくなる。その結果として発色不良や発泡等の望ましくない現象が生じ得る。
これらの望ましくない現象、とくに発色不良を抑制するためにSiO、Al、MnO及びFe・Crといった成分を特定の量で用い、CaOの量を調整することが有効であることが本発明において初めて見出された。すなわち、SiO、Al、MnO及びFe・Crといった成分を特定の量で用い、従来技術において用いられる量より多くてもよい量でCaOを用いることによって、上記望ましくない現象が抑制される傾向があることが、本発明において初めて明らかになった。
【0018】
本発明の釉薬は、Bを含んでも含まなくてもよく、含む場合の量は0.05モル以下である。本発明の釉薬における好ましいBの量は0.025モル以下である。本発明の釉薬は、より好ましくはBを含まない。
【0019】
本発明の釉薬はSiOを含むものであるところ、その量は1.5~3.5モルであり、1.8~3.2モルの量は好ましく、2.0~3.0モルの量はより好ましい。
【0020】
また本発明の釉薬においてはAlが0.2~0.65モルの量で含まれる。該Alを前記の量で用いることによって黒色の発色が達成されるばかりでなく、釉面の状態を良好にすることができる。
Alの量として0.3モル~0.6モルは好ましく、0.4~0.5モルの量はより好ましい。
【0021】
本発明の釉薬は、MnOを、釉薬全体に対する重量%による表記により2.5%以上含む。
MnOの量として、3.0%以上は好ましく、3.0~10%はより好ましい。これらの好ましい量は、他の成分の量により調整して決定してよい。
【0022】
本発明の釉薬は、Feを、釉薬全体に対する重量%による表記でFe≦9の量で含む。
本発明の釉薬において、Fe≦8%の量は好ましく、4%以上とすることも好ましい。
本発明の釉薬において、Feの量として1%以上3%未満の量も好ましい。Bの量を低減させやすいからである。Feの量が1%以上3%未満の場合、Bの量が0モル~0.03モルである本発明の釉薬は好ましい。
本発明の釉薬において、Feの量が3%以上4%未満の場合、MnOの量を6%以上とすることは好ましい。
本発明の上記釉薬のうち、
(i’)Feの量が、釉薬全体に対する重量に対して5%以上であり、かつMnOの量が、釉薬全体に対する重量に対して6~8%であるか、又は
(iii’)Feの量が、釉薬全体に対する重量に対して3%以上4%未満であり、MnOの量が釉薬全体に対する重量に対して10%以上である、
釉薬は、黒色の発色がとくに優れておりより好ましい。
本発明の釉薬において、Feの量が、釉薬全体に対する重量に対して3%以上4%未満であり、MnOの量が釉薬全体に対する重量に対して7%以上である場合、Coを、釉薬全体に対する重量%に対して0~0.15重量%の量で含む釉薬は好ましい。
【0023】
本発明の釉薬は、Crを、釉薬全体に対する重量%による表記でCr≦4.5の量で含む。
本発明の釉薬において、Cr≦4%の量は好ましい。
【0024】
以下に本発明の艶消し黒色系釉薬に含まれる他の成分について説明する。
(a)本発明の釉薬はZrOを含んでよく、ZrOにより、SiO・Alの割合が低いことにより生じえる釉薬の熱膨張を抑制し得る。本発明の釉薬におけるZrOの量は0~0.25モルである。
本発明の釉薬において、ZrOの量として0~0.25モルの量は好ましい。
【0025】
(b)本発明の釉薬のうち、RO(及び/又はP)を含有するものは、RO(及び/又はP)により、貫入を発生させない程度のより広範な所望の物性を達成し得る。ここで、ROはLiO、NaO及びKOの1種又は2種以上を表す。
本発明の釉薬におけるROの量は、ZnOとの合計量が0.25モルを越えない範囲で、≦0.25モルであり、≦0.2モルの量は好ましい。
【0026】
本発明の釉薬においてはPを含んでよく、Pの量として、釉薬全体に対する重量%による表記で0.1~3%が例示される。Pの量として、0.5~2%の量は好ましい。
【0027】
(c)本発明の釉薬においては、ROをZnOにより代替してよく、本発明の釉薬のうち、少量のZnOを含むものは、より明瞭な黒色を瓦に与えることができる。したがって、亜鉛により、ホウ素の熔融を補助する作用を補填することができる。
本発明の釉薬におけるZnOの量は、ROとの合計量が0.25モルを越えない範囲で、≦0.25モルであり、≦0.2モルの量は好ましい。
【0028】
(e)本発明の釉薬のうち、ZnOを含む釉薬(亜鉛釉)においては、Co・Ni(レアメタル)などの添加により茶色を改変した黒色が得られる。
本発明の釉薬のうち、TiOを用いてよく、TiOはZnOと併用してもよい。用いられるTiOの量は、例えば、釉薬全体に対して0.1~3%であり、0.5~2%は好ましい。
【0029】
(d)本発明の釉薬のうち、BaO又はSrOを含むところ、これらは相互に一部を置き換えることが可能である。これらの成分により、より広範な所望の物性を達成することができる。
BaO及び/又はSrOの量は、それぞれ0.1~0.55モルであり、合計の量は0.55モルを越えない。
本発明の釉薬において、BaO及び/又はSrOの量として0.2~0.5モルの量は好ましく、0.3~0.4モルの量はより好ましい。
【0030】
本発明の釉薬においては、適宜黒顔料を用いてよい。黒顔料の量は限定されず、黒色を発色させる度合いに応じて決定してよい。黒顔料の量は、例えば、釉薬全体の量に対して1%~5%である。
【0031】
本発明の艶消し黒色系釉薬は従来の方法により製造することができる。例えば珪石、カオリン、蛙目粘土、酸化マンガン、酸化鉄等の原料を用いて所望の組成の調合物を調製すればよい。また、これにCMC、ベントナイトといった添加物を適量加え、ポットミル等にて湿式粉砕して最終的な調製物としてよい。
【0032】
本発明は上記いずれかの艶消し黒色系釉薬を用いて製造される艶消し黒色系瓦にも関するところ、該瓦の製造は本技術分野における通常の方法により行うことができる。すなわち、瓦の焼成温度は約1100℃~約1160℃とすることができ、施釉付着量は50g~90g/和形桟瓦とすることができる。
また、本発明の艶消し黒色系釉薬には、本発明の目的を阻害しない範囲で、当該艶消し黒色系釉薬の製造過程において不回避的に混入する成分として、上記以外の成分を含んでよい。
【実施例
【0033】
以下に具体的な例により本発明をより詳細に説明するが、これは如何なる意味においても本発明を限定するものではない。
【0034】
[試験方法]
珪石、カオリン、蛙目粘土、酸化マンガン、酸化鉄等の原料を用いて表1の各例に示す組成の調合物を調製し、これにCMC、ベントナイト各0.5部を加え、ポットミルにて湿式粉砕したものを和型桟瓦1枚当り60~80gの付着量になるように施釉し、表1に示す温度でそれぞれ焼成して瓦を得た。なお、前記温度は各釉薬の組成を考慮し、黒色となるべき発色及び釉面状態を極力適切なものとするものをそれぞれ設定した。
【0035】
得られた瓦についての発色を目視観察により判断した。所望の黒色の発色が認められた場合を「良好」とし、その他の場合には観察された色を記録した。
また、釉薬の熔解の程度について、釉面状態を目視により観察した。釉薬が十分に熔解している場合には記録はせず、熔解が不足している場合には「熔け不足」とした。
【0036】
[結果]
結果を表2-1~表2-2に示す(基礎釉はモル比、着色剤(MnO、Fe及びCr)及びその他添加剤は釉薬全体の重量に対する重量%。1~10の整数は実施例の番号を示す)。実施例7において用いられた黒顔料は、本発明の釉薬の熔融への影響が大きくないと思われた黒顔料である。
【表2-1】

【表2-2】
【0037】
【表3】
【0038】
本願発明の釉薬(実施例1~10)はいずれも黒色に発色した(表2-1及び表2-2)。
これに対し、比較例1~8はそれぞれ表中において太字で表記した量が本願発明の釉薬に必要な範囲のものでない例であるところ、これらにおいてはいずれも瓦の色は黒くならないか、熔け不足で釉薬としての機能しなかった(表3)。
なお実施例1~10のうち実施例1及び2においては、釉面状態がとくに良好であった。したがって、本発明の釉薬のうち、Feの量が、釉薬全体に対する重量に対して5%以上であり、かつMnOの量が、釉薬全体に対する重量に対して6~8%である釉薬、及びFeの量が、釉薬全体に対する重量に対して3%以上4%未満であり、MnOの量が釉薬全体に対する重量に対して10%以上である釉薬は、とくにすぐれた効果を奏すると考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の方法によれば、実質的にホウ素を含有しない艶消し黒色系瓦用釉薬の提供が可能となる。したがって、本発明は釉薬製造業・艶消し黒色系瓦製造業及び関連産業の発展に寄与するところ大である。
【要約】      (修正有)
【課題】ホウ素を実質的に含まない艶消し黒色系瓦用釉薬の提供。
【解決手段】以下を含む、艶消し黒色系瓦用釉薬。
(1)ゼーゲル表示で、
MgO:0~0.25モル
CaO:0.25~0.8モル
BaO及び/又はSrO:0.1~0.55モル
O及び/又はZnOを≦0.25モル(ROはLiO、NaO及びKOの1種又は2種以上を表す);
SiO:1.5~3.5モル
:0~0.05モル
ZrO:0~0.25モル、及び
Al:0.2~0.65モル
(2)前記釉薬全体に対する重量%による表記で、
MnO≧2.5
Fe≦9、及び
Cr≦4.5。
【選択図】なし