IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 國家中山科學研究院の特許一覧

<>
  • 特許-炭化物保護層を製造する方法 図1
  • 特許-炭化物保護層を製造する方法 図2
  • 特許-炭化物保護層を製造する方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】炭化物保護層を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/87 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
C04B41/87 S
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023019127
(22)【出願日】2023-02-10
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】514173696
【氏名又は名称】國家中山科學研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】王志行
(72)【発明者】
【氏名】柯政榮
(72)【発明者】
【氏名】葛春明
(72)【発明者】
【氏名】郭志偉
(72)【発明者】
【氏名】陳學儀
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼俊彬
(72)【発明者】
【氏名】趙英▲ソウ▼
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-065651(JP,A)
【文献】国際公開第2013/172286(WO,A1)
【文献】特開2018-145022(JP,A)
【文献】国際公開第2006/085635(WO,A1)
【文献】特開2000-128674(JP,A)
【文献】特開平06-122578(JP,A)
【文献】特開平03-115586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化物粉末、有機物粘結剤、有機溶剤及び助燃剤を混合することにより、スラリーを形成するステップ(A)と、
前記スラリーをグラファイト部材の表面に塗装し、複合部材を形成するステップ(B)と、
前記複合部材に冷間等方圧プレス高密度化製造工程を行うステップ(C)と、
前記複合部材に対して定温熱処理を行うステップ(D)と、
前記複合部材の表面に有効な保護厚さを有するコーティング層を形成するまで、ステップ(B)~(D)を繰り返すステップ(E)と、
前記コーティング層に対して分段式焼結製造工程を行うステップ(F)と、
前記複合部材の表面に用いる炭化物保護層を得るステップ(G)とを有し、
前記ステップ(F)の前記分段式焼結製造工程は、前段階焼結と後段階焼結とに分けられ、
前記前段階焼結は、250~500℃で熱処理を行い、温度上昇速度が0.2~1℃/minであり、温度保持時間が1~3時間であり、
前記後段階焼結は、1800~2300℃で焼結緻密化を行い、温度上昇速度が1~5℃/minであり、温度保持時間が0.5~5時間であることを特徴とする炭化物保護層を製造する方法。
【請求項2】
前記ステップ(A)の前記炭化物粉末には、3B~5B遷移金属元素の二元炭化物が選択され用いられることを特徴とする請求項1に記載の炭化物保護層を製造する方法。
【請求項3】
前記ステップ(A)の前記有機物粘結剤には、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)又はポリビニルピロリドン(PVP)が選択され用いられることを特徴とする請求項1に記載の炭化物保護層を製造する方法。
【請求項4】
前記ステップ(A)の前記有機溶剤には、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ギ酸、酢酸、トルエン又はN-メチルピロリドンが選択され用いられることを特徴とする請求項1に記載の炭化物保護層を製造する方法。
【請求項5】
前記ステップ(A)の前記助燃剤には、チタン、ケイ素、クロム、ニッケル、窒化ケイ素、酸化イットリウム又は酸化イッテルビウムが選択され用いられることを特徴とする請求項1に記載の炭化物保護層を製造する方法。
【請求項6】
前記ステップ(C)の前記冷間等方圧プレス高密度化製造工程の印加圧力が1000~20000psiであり、圧力印加時間が1時間以上であることを特徴とする請求項1に記載の炭化物保護層を製造する方法。
【請求項7】
前記ステップ(D)の前記定温熱処理の温度が50~200℃であることを特徴とする請求項1に記載の炭化物保護層を製造する方法。
【請求項8】
前記ステップ(E)の前記有効な保護厚さが100μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の炭化物保護層を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化物保護層を製造する方法であり、特に、低温焼結で炭化物保護層の製造に関する方法である。
【背景技術】
【0002】
炭化物高温耐食保護層は、物理気相輸送法(physical vapor transport, PVT)で炭化ケイ素の結晶成長環境に応用されるものであり、特定の二元遷移金属元素炭化物コーティング層(例えば、炭化タンタル、炭化ハフニウム等)は、高い融点、耐食性等の物理特性を有するため、ここでは保護層の用途に応用することができる。しかしながら、現在、コーティング層の製造技術には、例えば、基材の外形的な制限、副産物による環境汚染、及び装置コストの高さ等数多くの制限が存在している。
【0003】
炭化物耐火保護層を製造するための二元炭化物材料は、3B~5B遷移金属元素(例えば、炭化タンタル、炭化ハフニウム等の炭化物コーティング層材料)であり、研究者は、耐火材料自体に融点の高い性質があることが多いので、高温熱処理装置を介さなければ、応用技術を実施することができない。さらに、業界でよく使用される化学気相堆積(CVD)製造技術を利用する場合、被メッキ物基材の幾何学的外形の制限があるだけでなく、製造されるコーティング層厚さにも30μm(±15μm)未満の制限もある。
【0004】
中国特許CN1942415Aには、TaCl、TaF等のタンタルのハロゲン化物、及びCH、C、H、Ar等の混合気体を使用し、反応炉で熱分解の作用を働かせると共にそれらが炭基材に堆積してコーティング層が得られることが開示されている。CVD装置を使用して反応させた場合、反応過程においてHCl強酸のような副産物が必然的に生成されるので、一定の環境汚染及びリサイクル加工処理の問題がある。また、この製造工程は、安定した緻密なコーティング層を提供できるが、50μm未満であるコーティング層厚さの規格制限を受けるので、堆積スタック構造が破裂の欠陥を発生しやすく、ひいてはコーティング層の深刻な破裂が生じるリスクがある。
【0005】
米国特許US9315921B2には、TaC粉末と高分子を混合することで結合スリラーを形成し、噴霧塗布技術を介してその結合スリラーを鍍金しようとするグラファイト部材に被覆してから、高温熱処理(好適な温度>2500℃)を行うことにより、グリーン体を焼結させて緻密なコーティング層を形成することが開示されている。この製造技術は、基材の外形的な制限を解消することができ、製造工程の反応において、強烈な又は危険性のある副産物が生成されることはない。また、コーティング層厚さの規格は、50μm以上を達することができるので、保護層の耐食性及び使用寿命を向上させることができる。また、コーティング層の構成は、結晶がランダムに配列されると共に、等方性を有するので、CVD製のコーティング層における規則配列によりコーティング層の深刻な破裂のリスクを克服できるが、高温熱処理(好適な温度>2500℃)を介さないと上記効果を奏することができない。
【0006】
この他、本発明の技術分野において、スラリーの配合には、いくつかの毒性の高い有機物を混合することが含まれているので、作業において一定の危険性があり、高温分解反応により有毒な副産物を放出する可能性もある。また、コーティング層の形成には、高温装置における一定のエネルギー要件があり、好ましくは2500℃より高い温度で製造する。したがって、製造工程全体を実現しようとすると、消費コストが高い。その結果、今日に至るまで依然として研究成果がほとんど出ていないのが現状である。
【0007】
上記をまとめると、本発明は、製作コスト及び環境汚染性を減少させ、基材の外形的な制限等の課題を回避するために、スラリー噴霧塗布法及び低温焼結条件を使用することにより炭化物保護層を完成させる。また、同時に湿式冷間等方圧プレス高密度化製造工程を使用して多重ステップ重ね合わせ法を循環することで炭化物保護層を完成させることにより、炭化ケイ素結晶成長の製造工程環境における耐食性を向上させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記周知技術の欠点を鑑みて、本発明の一比較例は、プレッシャーレス粉末焼結法を使用して炭化物コーティング層材料を製造し、炭化物コーティング層材料は3B~5B遷移金属元素の二元炭化物であり、コーティング層を多重ステップで重ね合わせることにより、耐食性のある保護層を完成させる。一実施例において、ナノスケール炭化物粉末及び高分子粘結剤を混合することでスラリーを形成してから、スラリーを噴霧塗布技術を介してグラファイト部材上に被覆し、50~200℃まで加熱する熱処理をした後、1800~2300℃まで加熱する分段式焼結製造工程を実施することにより、構造が緻密化されたコーティング層を得る。本発明の一実施例は、低温条件(2500℃未満)下で炭化物保護層を完成させ、湿式冷間等方圧プレスの高密度化技術を使用することでコーティング層材料の表面を1000~20000psiまで加圧してから、多重ステップの上記製造工程を循環することにより、炭化物保護層を重ね合わせて完成させ、炭化物保護層は、物理的気相堆積(PVT)で炭化ケイ素の製造工程環境において耐食性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、炭化物保護層を製造する方法を提供する。本発明の一態様として、炭化物保護層を製造する方法は、スラリーを形成するために、炭化物粉末、有機物粘結剤、有機溶剤及び助燃剤を混合することにより、スラリーを形成するステップ(A)と、前記スラリーをグラファイト部材の表面に塗装し、複合部材を形成するステップ(B)と、前記複合部材に対して冷間等方圧プレス高密度化製造工程を行うステップ(C)と、前記複合部材に対して定温熱処理を行うステップ(D)と、前記複合部材の表面に有効な保護厚さを有するコーティング層を形成するまで、ステップ(B)~(D)を繰り返すステップ(E)と、前記コーティング層に対して分段式焼結製造工程を行うステップ(F)と、前記複合部材の表面に用いる炭化物保護層を得るステップ(G)とを有する。
【0010】
上記態様において、前記炭化物粉末には、3B~5B遷移金属元素の二元炭化物が選択され用いられてもよい。
【0011】
上記態様において、前記有機物粘結剤は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)又はポリビニルピロリドン(PVP)であってもよい。
【0012】
上記態様において、前記有機溶剤には、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ギ酸、酢酸、トルエン又はN-メチルピロリドンが選択され用いられてもよい。
【0013】
上記態様において、前記助燃剤は、チタン、ケイ素、クロム、ニッケル、窒化ケイ素、酸化イットリウム又は酸化イッテルビウムが選択され用いられてもよい。
【0014】
上記態様において、前記冷間等方圧プレス高密度化製造工程の印加圧力は1000~20000psiであり、圧力印加時間は1時間以上であってもよい。
【0015】
上記態様において、前記定温熱処理の温度は、50~200℃であってもよい。
【0016】
上記態様において、前記有効な保護厚さは、100μm以上であってもよい。
【0017】
上記態様において、前記分段式焼結製造工程は、前段階焼結と後段階焼結とに分けられ、前記前段階焼結は、250~500℃で熱処理を行い、温度上昇速度が0.2~1℃/minであり、温度保持時間が1~3時間であり、前記後段階焼結は、1800~2300℃で焼結緻密化を行い、温度上昇速度が1~5℃/minであり、温度保持時間が0.5~5時間である。
【0018】
以上の概略の説明と以下の詳細な説明及び図面は、いずれも本発明の目的を達するために用いられる方法、手段、効果を説明するためのものである。本発明の他の目的及び利点については、後続の説明と図面で述べる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の炭化物保護層を製造する方法のフローチャートである。
図2】本発明のTaCコーティング層反応装置の参考図である。
図3】(A)は、本発明の実験Aの製造方法によるコーティング層の断面微構造であり、(B)は、本発明の実験Bの製造方法によるコーティング層の断面微構造である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下は、特定の具体的な実施例により本発明の実施形態を説明するためのものであり、当業者は本明細書の開示する内容に基づき本発明の他の利点及び効果を容易に理解することができる。
【0021】
本発明は、製作コストを有効に減少させることができる炭化物保護層を製造する方法を提供する。上記方法は、グラファイト部材の表面に炭化物保護層を製造し、かつグラファイト部材及び炭化物保護層は複合部材を形成する。
本発明の一実施例の炭化物保護層の製造は、グリーン体の構築から高温緻密化工程を経る。続いて、図1を参照されたい。図1は、本発明の炭化物保護層を製造する方法のフローチャートである。図1に示すように、グリーン体を構築するための塗布スラリーは、炭化物粉末、有機物粘結剤、有機溶剤及び助燃剤が混合されてなり(ステップS1)、そして、スラリーをグラファイト部材の表面に噴霧塗布することにより、転移段階の複合部材を完成させる(ステップS2)。複合部材の表面におけるグリーン体の焼結緻密化能力を向上させるために、表面に対して冷間等方圧プレス高密度化製造工程を行い(ステップS3)、その後、一定の範囲温度下で熱処理製造工程を行う(ステップS4)。複合部材が室温に冷却し戻された後、複合部材の表面におけるグリーン体コーティング層(以下、コーティング層ともいう)が有効な保護厚さになるまで、複合部材の表面のグリーン体構築ステップを複数回繰り返し行う(ステップS5)。そして、分段式焼結製造工程を使用し1800~2300℃まで加熱することにより、複合部材の表面が緻密化し(ステップS6)、その後、複合部材の表面において耐食保護機能を有する炭化物保護層を得る(ステップS7)。
【0022】
さらに、図2を参照されたい。図2は、本発明のTaCコーティング層反応装置の参考図である。このTaCコーティング層反応装置は、本発明の分段式焼結製造工程が1800~2300℃まで加熱するのに使用される装置であり、熱源11と加熱炉体12とを組合して誘導加熱システムになり、熱源11は誘導加熱コイルであり、加熱炉体12のグラファイト担体が渦電流を生成するように、特定の交流磁場を出力する結果、加熱炉体が自己発熱する。本発明が製造しようとする製品は、炭化物保護層を有する複合部材であり、図2のTaCコーティング層13及びグラファイト部材14の通り、TaCコーティング層13は、グラファイト部材14の外表面に被覆され、TaCコーティング層13及びグラファイト部材14は、焼結製造工程を行う複合部材として、熱源11と加熱炉体12からなる誘導加熱システムに収められると共に、一定の環境圧力及び作業温度で焼結製造工程を行う。
【0023】
本発明は、2種類の実施方法で比較を行うために、実験A及び実験Bを実施する。実験Aはプレッシャーレス焼結製造方法であり、実験Bは冷間等方圧プレス高密度化製造工程を導入した焼結製造方法である。また、二つの方法で測定するグラファイト部材はいずれも規格が50x50x10mmであるグラファイト平板であり、配合されたスラリーをグラファイト平板に噴霧塗布した単位コーティング層の重量はいずれも同一である。また、実験Bの冷間等方圧プレスの圧力印加範囲は1000~20000psiであり、作業時間は1時間以上であり、コーティング層を有する複合部材に加温熱処理を行い、分段式焼結製造工程は1800~2300℃まで加熱し、温度が到達すると5時間以上維持することにより、緻密化されたコーティング層を有する複合部材を得る。
【0024】
実験A及び実験Bの製造方法は、いずれも炭化物ナノ粉末を使用して有機物粘結剤のスラリーを混合し、炭化物及び粉末状の焼結助剤の粒経は≦1μmであり、炭化物は、炭化タンタル、炭化ハフニウム、炭化タングステン等3B~5B遷移金属元素の二元炭化物であり、助燃剤は、チタン、ケイ素、クロム、ニッケル、窒化ケイ素、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム等の物質である。また、有機物粘結剤は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)である。また、有機物粘結剤に添加された溶剤は、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ギ酸、酢酸、トルエン、N-メチルピロリドンである。
【0025】
実験A及び実験Bの製造方法は、いずれもスラリーの噴霧塗布技術を使用してグラファイト部材の表面にグリーン体コーティング層を被覆し、複数のグリーン体コーティング層が適当な厚さにまで繰り返し構築され、各グリーン体コーティング層が1時間以上静置された後、温度が50~200℃である熱処理を経て、1時間以上温度を維持し、次の構築に続く。
【0026】
実験A及び実験Bの製造方法は、高温焼結の形成段階において、コーティング層を緻密化させるために、いずれもアルゴンガス陰圧環境で1800~2300℃まで温度を上昇させる。最終的な製造されたコーティング層の品質分析は、電界放出顕微鏡を使用して微細構造の特徴を検測することにより、X線回折装置を介してコーティング層の材料結晶の構造データを得る。
【0027】
実験A及び実験Bの製造方法において、スラリー形成の配合と高温焼結製造工程パラメーターとは同一であり、噴霧塗布されるスラリーの主な成分としては、炭化タンタル粉末が重量百分比で50~70wt%を占め、助燃剤として、ケイ素、窒化ケイ素、酸化イットリウム等粉末1~5wt%を添加し、コーティング層を緻密化させるために、最後に、分段式焼結製造工程を行い1800~2300℃まで加熱する。
【0028】
実験Bは、多層構築されたグリーン体を採用し、湿式冷間等方圧プレス機の作業を行い、表面印加圧力が18000~20000psiであり、かつ2時間以上圧力を維持し、次に50~200℃で定温熱処理を行うと共に、1時間以上温度を維持し、コーティング層を高密度化した後、グリーン体の平均厚さが20~25%低下し、グリーン体の密度が45~60%まで向上する。焼結後の炭化タンタルコーティング層微細構造について、図3(B)を参照されたい。図3(B)に示すように、コーティング層焼結の形成厚さは、60~80μmであり、かつ均等に分布し、深刻な開放孔及び剥離破裂の欠陥が生じることはない。また、図3(A)及び(B)に示すように、実験A(比較例)と比較して、実験B(実施例)はグリーン体の顆粒構築に明らかな改善があり、グリーン体の緻密度が相対的に向上し、基材界面の欠陥が明らかに減少した。
【0029】
本発明は、ハロゲンドープ(例えば、塩素元素)の含量が過度に高くなる結果、炭化ケイ素が成長するときに、電気的な制御が困難になると共に、高濃度のハロゲン(例えば、塩素元素)ドープが原因で、新たなマイクロチューブの欠陥が容易に発生する、という問題を回避するために、一般的な市販品に使用される化学気相堆積技術(CVD)を使用せずに製造するものである。本発明の一実施例の炭化タンタルコーティング層は、高温焼結が完了した後、グロー放電質量分析(GDMS)で測定され、測定結果は表1を参照されたい。
【0030】
表1は、本発明のコーティング層微量元素ドープ量であり、表1において提供されるコーティング層微量元素は、炭化ケイ素インゴットが成長するときに電気性及び品質に影響する元素である。
【表1】
【0031】
表1に示すように、本発明の一実施例に形成されるTaCコーティング層において、コーティング層微量元素のドープ量の濃度は低い。
【0032】
上述をまとめると、本発明の特徴は、比較的低い焼結温度(<2500℃)において、効率的に炭化物コーティング層をグラファイト部材の表面上で製造することができる、冷間等方圧プレス高密度化及び多重ステップを使用してグリーン体を構築する製造方法にある。コーティング層微細構造をSEM測定することにより、コーティング層厚さが50μmより大きくグラファイト部材の表面に均等に分布し、深刻な開放孔及び剥離破裂の欠陥が発生することはないということが確認された。本発明は、化合物の半導体原料を結晶成長するためのグラファイト坩堝及び炭化ケイ素の物理気相結晶成長するためのグラファイト坩堝の表面に応用することができ、ひいては坩堝の使用寿命を伸ばし、炭ドーピングの欠陥を低減させ、スキップめっき粒界の欠陥の生成を減少させることができる。本発明は、エピタキシー製造工程のグラファイトキャリアーの保護層及びSiC-on-SiCエピタキシー製造工程に対する高温耐食保護コーティング層に応用することもできる。上述をまとめると、本発明は、半導体の関連産業の発展に役立つことができる。
【0033】
上記実施例は例示的に本発明の特徴及び効果を説明したものに過ぎず、本発明の実質的な技術内容の範囲を制限するものではない。当業者であれば、本発明の精神及び範疇に反することなく、上記実施例に修正及び変更を加えることができる。よって、本発明の権利保護範囲は、特許請求の範囲に記載されたとおりである。
【符号の説明】
【0034】
11 熱源
12 加熱炉体
13 TaCコーティング層
14 グラファイト部材
S1~S7 ステップ
【要約】
【課題】本発明は、炭化物保護層を製造する方法であり、特に、低温焼結で炭化物保護層の製造に関する方法である。
【解決手段】炭化物保護層を製造する方法は、炭化物粉末、有機物粘結剤、有機溶剤及び助燃剤を混合することにより、スラリーを形成するステップ(A)と、スラリーをグラファイト部材の表面に塗装することにより、複合部材を形成するステップ(B)と、複合部材に対して冷間等方圧プレス高密度化製造工程を行うステップ(C)と、複合部材に対して定温熱処理を行うステップ(D)と、複合部材の表面に有効な保護厚さを有するコーティング層を形成するまで、ステップ(B)~(D)を繰り返すステップ(E)と、コーティング層に対して分段式焼結製造工程を行うステップ(F)と、複合部材の表面に用いる炭化物保護層を得るステップ(G)とを有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3