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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ドアクローザ装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 79/02 20140101AFI20240709BHJP
   E05B 81/20 20140101ALI20240709BHJP
   E05B 79/20 20140101ALI20240709BHJP
【FI】
E05B79/02
E05B81/20 B
E05B79/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020169172
(22)【出願日】2020-10-06
(65)【公開番号】P2022061272
(43)【公開日】2022-04-18
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】多賀 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】奥山 恵一郎
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-244892(JP,A)
【文献】特開2015-175096(JP,A)
【文献】特開2019-019618(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0089105(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 - 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被係合部と係合することによりドアを全閉位置に保持可能な全閉ラッチと、
前記ドアが前記全閉位置となる方向に前記全閉ラッチを動作させるクローズ機構部、前記クローズ機構部の一方側を覆うベースプレート、及び、前記ベースプレートに対向して前記クローズ機構部の他方側の少なくとも一部を覆うカバープレート、を有する本体ユニットと、
前記クローズ機構部に連結するインナケーブル、及び、前記インナケーブルが挿通する中空のアウタケーシング、を有し、前記クローズ機構部を動作させるケーブルユニットと、を備えるドアクローザ装置であって、
前記ケーブルユニットは、前記カバープレート及び前記ベースプレートとは別体の取付ブラケットに係止され、
前記取付ブラケットは、前記カバープレート及び前記ベースプレートの少なくとも一方に固定され
前記本体ユニットには、前記ベースプレートと前記カバープレートとによって囲まれ、前記クローズ機構部の少なくとも一部が収容される収容部が形成されており、
前記収容部は、前記本体ユニットの外部に向かって開口する開口部を備え、
前記開口部は、前記ベースプレートと前記カバープレートとが離間して形成され、
前記アウタケーシングから露出した前記インナケーブルの一端部を、前記開口部から前記収容部に挿入可能である、ドアクローザ装置。
【請求項2】
被係合部と係合することによりドアを全閉位置に保持可能な全閉ラッチと、
前記ドアが前記全閉位置となる方向に前記全閉ラッチを動作させるクローズ機構部、前記クローズ機構部の一方側を覆うベースプレート、及び、前記ベースプレートに対向して前記クローズ機構部の他方側の少なくとも一部を覆うカバープレート、を有する本体ユニットと、
前記クローズ機構部に連結するインナケーブル、及び、前記インナケーブルが挿通する中空のアウタケーシング、を有し、前記クローズ機構部を動作させるケーブルユニットと、を備えるドアクローザ装置であって、
前記ケーブルユニットは、前記カバープレート及び前記ベースプレートとは別体の取付ブラケットに係止され、
前記取付ブラケットは、前記カバープレート及び前記ベースプレートの少なくとも一方に固定され、
前記アウタケーシングの一端部には、該一端部における前記インナケーブルの牽引方向から見て、前記アウタケーシングの外周面から外側に突出した突出部が設けられており、
前記突出部は、前記牽引方向で、前記本体ユニットの外側から、前記カバープレート及び前記ベースプレートの少なくとも一方に当接する、ドアクローザ装置。
【請求項3】
請求項に記載のドアクローザ装置であって、
前記突出部は、前記牽引方向から見て、前記アウタケーシングの全周に亘って前記アウタケーシングの外側に突出したフランジ部と、前記フランジ部からさらに外側に突出した突起部と、を有し、
前記フランジ部及び前記突起部は、前記牽引方向で、前記本体ユニットの外側から、前記カバープレートに当接し、
前記フランジ部及び前記突起部と当接する前記カバープレートの当接部は、前記牽引方向から見て、前記アウタケーシングを取り囲むように湾曲した形状を有する、ドアクローザ装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のドアクローザ装置であって、
前記アウタケーシングの一端部には、前記アウタケーシングよりも剛性が高いケーシングキャップが設けられており、
前記突出部と、前記取付ブラケットの係止部に係止される被係止部とは、前記ケーシングキャップに設けられている、ドアクローザ装置。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか一項に記載のドアクローザ装置であって、
前記取付ブラケットは、前記カバープレートに固定され、
前記カバープレートには、前記牽引方向において、前記突出部が当接する前記カバープレート及び前記ベースプレートの少なくとも一方から前記突出部が離れる方向に、前記取付ブラケットが前記カバープレートに対して相対移動することを規制する位置規制部が形成されている、ドアクローザ装置。
【請求項6】
被係合部と係合することによりドアを全閉位置に保持可能な全閉ラッチと、
前記ドアが前記全閉位置となる方向に前記全閉ラッチを動作させるクローズ機構部、前記クローズ機構部の一方側を覆うベースプレート、及び、前記ベースプレートに対向して前記クローズ機構部の他方側の少なくとも一部を覆うカバープレート、を有する本体ユニットと、
前記クローズ機構部に連結するインナケーブル、及び、前記インナケーブルが挿通する中空のアウタケーシング、を有し、前記クローズ機構部を動作させるケーブルユニットと、を備えるドアクローザ装置であって、
前記ケーブルユニットは、前記カバープレート及び前記ベースプレートとは別体の取付ブラケットに係止され、
前記取付ブラケットは、前記ドアのドアパネルと、前記カバープレート及び前記ベースプレートの少なくとも一方と、によって挟持されて固定される、ドアクローザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドア等に用いられるドアクローザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ストライカと係合することによりドアを閉鎖位置に保持可能なラッチ、及び、ラッチをストライカと係合する方向に回転動作させる動作部、を有する本体ユニットと、動作部に連結するインナケーブル、及びインナケーブルが挿通する中空のアウタケーシングを有し、動作部を動作させるケーブルユニットと、を備えるドアクローザ装置が知られている。このようなドアクローザ装置は、ドアが閉められて、ラッチがストライカとハーフラッチ位置で係合すると、ドアクローザ装置の外部に設けられたアクチュエータによってケーブルユニットのインナケーブルが牽引され、動作部が動作して、ラッチがストライカとフルラッチ位置で係合する方向に回転動作する。
【0003】
この種のドアクローザ装置では、ケーブルユニットは本体ユニットとアクチュエータとに固定されている。したがって、アクチュエータからドアクローザ装置の本体ユニットまでのケーブルユニットの経路が湾曲している場合、アウタケーシングを挿通するインナケーブルがアクチュエータにより牽引されると、インナケーブルは最短経路をとろうとするためにたるみがなくなり、インナケーブルの経路が通常時よりも短くなる。そして、インナケーブルの経路がアウタケーシングの長さよりも短くなろうとする場合、アウタケーシングは、本体ユニット及びアクチュエータに対して、インナケーブルの先端側に向かう押し出し方向の荷重を作用させることとなる。したがって、インナケーブルが繰り返し牽引されると、アウタケーシングを係止する本体ユニットの係止部が、アウタケーシングから受ける押し出し方向の荷重によって破損する場合があるという問題があった。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、カバープレートに押え部が設けられており、アウタケーシングの一端部に、鍔状部が形成されたケーシングキャップが設けられているドアクローザ装置が開示されている。特許文献1に記載のドアクローザ装置は、ベースプレートとカバープレートの押え部とで、ケーシングキャップを押さえることによって、係止部から浮き上がろうとするアウタケーシングを保持するので、アウタケーシングの被係止部を確実に係止することができる。したがって、特許文献1に記載のドアクローザ装置は、インナケーブルが牽引されることによってアウタケーシングから受ける押し出し方向の荷重によって、アウタケーシングを係止するカバープレートの係止部が破損することを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-244892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のドアクローザ装置は、アウタケーシングの先端部に、被係止部及び鍔状部が形成されたケーシングキャップが設けられており、ベースプレートに対向してアウタケーシングを挟む状態に設けたカバープレートに、ケーシングキャップを係止する係止部が設けられており、ベースプレートに、押え部が設けられている。そして、特許文献1のドアクローザ装置は、ベースプレートの押え部とカバープレートの係止部とが、ケーシングキャップを挟み込んで押さえるとともに、アウタケーシングの先端部に長手方向に沿って鍔状部が係止部から離れる方向への荷重が作用した場合に鍔状部が当接するように構成されている。したがって、特許文献1のドアクローザ装置は、本体ユニットを製造する際、ケーブルユニットをベースプレートに配置した後に、ケーシングキャップを挟み込んでカバープレートをベースプレートに固定する必要がある。そのため、特許文献1のドアクローザ装置は、本体ユニットを製造した後にケーブルユニットを本体ユニットに取り付けることができず、本体ユニットとケーブルユニットとが一体となった状態で搬送することとなるので、荷姿が大きくなり搬送コストが高くなってしまう、という課題があった。
【0007】
本発明は、本体ユニットが破損することを防止しつつ、本体ユニットとケーブルユニットとを別個に搬送可能なドアクローザ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
被係合部と係合することによりドアを全閉位置に保持可能な全閉ラッチと、
前記ドアが前記全閉位置となる方向に前記全閉ラッチを動作させるクローズ機構部、前記クローズ機構部の一方側を覆うベースプレート、及び、前記ベースプレートに対向して前記クローズ機構部の他方側の少なくとも一部を覆うカバープレート、を有する本体ユニットと、
前記クローズ機構部に連結するインナケーブル、及び、前記インナケーブルが挿通する中空のアウタケーシング、を有し、前記クローズ機構部を動作させるケーブルユニットと、を備えるドアクローザ装置であって、
前記ケーブルユニットは、前記カバープレート及び前記ベースプレートとは別体の取付ブラケットに係止され、
前記取付ブラケットは、前記カバープレート及び前記ベースプレートの少なくとも一方に固定され
前記本体ユニットには、前記ベースプレートと前記カバープレートとによって囲まれ、前記クローズ機構部の少なくとも一部が収容される収容部が形成されており、
前記収容部は、前記本体ユニットの外部に向かって開口する開口部を備え、
前記開口部は、前記ベースプレートと前記カバープレートとが離間して形成され、
前記アウタケーシングから露出した前記インナケーブルの一端部を、前記開口部から前記収容部に挿入可能である
また、本発明は、
被係合部と係合することによりドアを全閉位置に保持可能な全閉ラッチと、
前記ドアが前記全閉位置となる方向に前記全閉ラッチを動作させるクローズ機構部、前記クローズ機構部の一方側を覆うベースプレート、及び、前記ベースプレートに対向して前記クローズ機構部の他方側の少なくとも一部を覆うカバープレート、を有する本体ユニットと、
前記クローズ機構部に連結するインナケーブル、及び、前記インナケーブルが挿通する中空のアウタケーシング、を有し、前記クローズ機構部を動作させるケーブルユニットと、を備えるドアクローザ装置であって、
前記ケーブルユニットは、前記カバープレート及び前記ベースプレートとは別体の取付ブラケットに係止され、
前記取付ブラケットは、前記カバープレート及び前記ベースプレートの少なくとも一方に固定され、
前記アウタケーシングの一端部には、該一端部における前記インナケーブルの牽引方向から見て、前記アウタケーシングの外周面から外側に突出した突出部が設けられており、
前記突出部は、前記牽引方向で、前記本体ユニットの外側から、前記カバープレート及び前記ベースプレートの少なくとも一方に当接する。
また、本発明は、
被係合部と係合することによりドアを全閉位置に保持可能な全閉ラッチと、
前記ドアが前記全閉位置となる方向に前記全閉ラッチを動作させるクローズ機構部、前記クローズ機構部の一方側を覆うベースプレート、及び、前記ベースプレートに対向して前記クローズ機構部の他方側の少なくとも一部を覆うカバープレート、を有する本体ユニットと、
前記クローズ機構部に連結するインナケーブル、及び、前記インナケーブルが挿通する中空のアウタケーシング、を有し、前記クローズ機構部を動作させるケーブルユニットと、を備えるドアクローザ装置であって、
前記ケーブルユニットは、前記カバープレート及び前記ベースプレートとは別体の取付ブラケットに係止され、
前記取付ブラケットは、前記ドアのドアパネルと、前記カバープレート及び前記ベースプレートの少なくとも一方と、によって挟持されて固定される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ケーブルユニットは、カバープレート及びベースプレートとは別体の取付ブラケットに係止され、取付ブラケットが、カバープレート及びベースプレートの少なくとも一方に固定されることによって、ケーブルユニットが本体ユニットに固定されるので、インナケーブルが牽引されることによってアウタケーシングから受けるインナケーブルの先端側に向かう押し出し方向の荷重を、取付ブラケットで受けることができる。これにより、本体ユニットのベースプレートやカバープレートが破損することを防止できる。さらに、本体ユニットを製造した後に、取付ブラケットをカバープレート及びベースプレートの少なくとも一方に固定することによって、ケーブルユニットを本体ユニットに固定することができるので、本体ユニットとケーブルユニットとを別個に搬送可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態のドアクローザ装置が搭載された車両の車体及びドアの概略を示した側面図である。
図2】本発明の一実施形態のドアクローザ装置を、車内側後方から見た斜視図である。
図3図1のドアクローザ装置を、ベースプレートを取り外した状態で、前方正面からハーフラッチ状態の要部を示した正面図である。
図4図1のドアクローザ装置を、ベースプレートを取り外した状態で、前方正面からフルラッチ状態の要部を示した正面図である。
図5図1のドアクローザ装置を、ベースプレートを取り外した状態で、右方正面からハーフラッチ状態の要部を示した側面図である。
図6図1のドアクローザ装置を、ベースプレートを取り外した状態で、右方正面からフルラッチ状態の要部を示した正面図である。
図7図1のドアクローザ装置を、ベースプレートを取り外した状態で、右方正面からキャンセル動作の要部を示した正面図である。
図8図1のドアクローザ装置のケーブルユニットの一端部周辺を示した図である。
図9図1のドアクローザ装置の取付ブラケットと取付ブラケット周辺のカバープレートとを示した斜視図である。
図10図1のドアクローザ装置を、車内側下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のドアクローザ装置が搭載された車両の一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。また、本明細書等では説明を簡単かつ明確にするために、前後、左右、上下の各方向は、車両の運転者から見た方向に従って記載し、図面には、車両の前方をFr、後方をRr、左方をL、右方をR、上方をU、下方をD、として示す。また、左右方向を車幅方向ともいう。
【0012】
<車両>
図1に示すように、本実施形態に係るドアクローザ装置1は、車両VのドアDに設けられている。本実施形態のドアDは、車両Vの車体Bの右側面に配置されており、前後方向にスライドして開閉可能に支持されたスライドドアである。したがって、以下の説明において、車外側というときは、右側を指し、車内側というときは左側を指す。
【0013】
ドアDには、ドアDを閉鎖位置に保持するためのドアクローザ装置1と、ドアDを全開位置に保持するための全開保持装置2と、ドアクローザ装置1に連結しており、ドアDを半ドア状態から全閉ロック状態に強制的に閉め込むためのクローザアクチュエータDCと、が設けられている。
【0014】
ドアクローザ装置1は、ドアDの後部に配置されている。ドアクローザ装置1は、車体Bに固定される全閉ストライカS(図3及び図4参照)と噛合することでドアDを閉鎖位置に保持するための全閉ラッチユニット10(図3及び図4参照)を備える。ドアクローザ装置1の全閉ラッチユニット10が、車体Bに固定される全閉ストライカSとわずかに噛合しているとき、ドアDは半ドア状態となり、ドアクローザ装置1の全閉ラッチユニット10が、車体Bに固定される全閉ストライカと完全に噛合しているとき、ドアDは全閉位置に保持される全閉ロック状態となる。
【0015】
クローザアクチュエータDCは、モータ(図示略)を備え、ドアクローザ装置1の全閉ラッチ機構部に連結している。クローザアクチュエータDCは、ドアDの閉作動時に、モータの電動力をもって、ドアクローザ装置1の全閉ラッチユニット10をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に作動させる。これにより、ドアDは、クローザアクチュエータDCによって、半ドア状態から全閉状態に強制的に閉め込まれる。
【0016】
全開保持装置2は、ドアDの前下部に配置されている。全開保持装置2は、公知の構造であって、車体Bに固定される全開ストライカ(図示略)と噛合することでドアDを全開位置に保持するための全開ラッチ機構部(図示略)と、ドアDを閉める際に全開ラッチ機構部と全開ストライカとの噛合を解除するための全開リリース機構部(図示略)と、を備える。全開保持装置2の全開ラッチ機構部が、車体Bに固定される全開ストライカ噛合しているとき、ドアDは全開位置に保持される全開ロック状態となる。
【0017】
ドアDは、車体Bの側面に固定される前後方向のアッパーガイドレールG1、ウェストガイドレールG2及びロアガイドレールG3により前後方向にスライドして開閉可能に支持される。アッパーガイドレールG1は、車体Bのドア開口部の上部で前後方向に延びるように固定されている。ウェストガイドレールG2は、車体Bのドア開口部の後方でドア開口部の上下方向略中央の位置を前後方向に延びるように固定されている。ロアガイドレールG3は、車体Bのドア開口部の下部で前後方向に延びるように固定されている。
【0018】
ドアDの車内側の側面を構成するインナパネルには、ドアDを車内から開閉する際に操作されるインサイドハンドルIHと、手動操作でドアDを開錠状態及び施錠状態に切り替える際に操作される施錠レバーLLと、が取り付けられている。インサイドハンドルIH及び施錠レバーLLは、ドアDの車内側に配置され、車両Vの車内から操作可能になっている。
【0019】
ドアDの車外側の側面を構成するアウタパネルには、ドアDを車外から開閉する際に操作されるアウトサイドハンドルOHが取り付けられている。アウトサイドハンドルOHは、ドアDの車外側に配置され、車両Vの車外から操作可能になっている。
【0020】
なお、開錠状態とは、アウトサイドハンドルOH及びインサイドハンドルIHを開操作するとドアDを開くことができる状態をいい、施錠状態とは、アウトサイドハンドルOH及びインサイドハンドルIHを開操作してもドアDを開くことができない状態をいう。
【0021】
車体Bのドア開口部の後方の側面内部には、ドアDを電動で開閉するための電動ドア開閉装置PSDが設けられている。電動ドア開閉装置PSDは、公知の構造であって、駆動部M1と、回転ドラムに巻き取り、繰り出し可能に巻き付けられた開用ケーブルM2及び閉用ケーブルM3とを備える。駆動部M1は、モータと、及び該モータの回転を減速する減速機構及び当該減速機構により回転する回転ドラムと、を有する。電動ドア開閉装置PSDは、回転ドラムから繰り出される開用ケーブルM2及び閉用ケーブルM3をウェストガイドレールG2に支持された反転プーリ(図示略)にそれぞれ掛け回した状態でドアDに連結することで、駆動部M1のモータの動力を開用ケーブルM2又は閉用ケーブルM3を介してドアDに伝達し、ドアDを電動で開閉する。
【0022】
<ドアクローザ装置>
(全体構成)
図2に示すように、ドアクローザ装置1は、ドアDの後部に配置されている。ドアクローザ装置1は、車体Bに固定される全閉ストライカSと噛合することでドアDを全閉位置に保持するための全閉ラッチユニット10と、全閉ラッチユニット10を駆動する本体ユニット30と、一端側が本体ユニット30に連結し、他端側がクローザアクチュエータDCに連結するケーブルユニット60と、を備える。
【0023】
(ラッチユニット)
図2図4に示すように、全閉ラッチユニット10は、車体Bのドア開口部の後端に前後方向に延びるように設けられた全閉ストライカSと係合する全閉ラッチ11と、全閉ラッチ11の後方を覆うカバープレート12と、を備える。
【0024】
カバープレート12には、車内側から車外側に向かって全閉ストライカSが挿入可能な挿入溝13が形成されている。挿入溝13は、車内側に向かって開口した開口部13aを有し、ドアDが閉操作されて全閉位置に近づくと、全閉ストライカSは、開口部13aから挿入溝13に挿入される。
【0025】
全閉ラッチ11は、カバープレート12から前方に向かって前後方向やや車外側に突出するラッチ軸110に支持されている。全閉ラッチ11は、ラッチ軸110を中心に、前方から見て時計回り方向及び反時計回り方向に回動可能となっている。全閉ラッチ11は、ラッチ軸110が挿通する挿通孔11aが形成されたラッチボディ部111と、前方から見てラッチボディ部111の外周縁から下方かつ車内側に向かって延びるアーム部112と、ラッチボディ部111の前面から前方に突出する突起部113と、を有する。
【0026】
ラッチボディ部111には、前方から見て、ラッチボディ部111の外周縁から挿通孔11aに向かって窪んだ凹形状を有し、全閉ストライカSが挿入される係合溝114が形成されている。係合溝114は、前後方向から見て、カバープレート12の挿入溝13と一部が重なるように配置されている。そして、ドアDが閉操作されて全閉位置に近づくと、全閉ストライカSは、カバープレート12の開口部13aから挿入溝13に挿入されるとともに、全閉ラッチ11の係合溝114に挿入される。
【0027】
係合溝114の内壁面114aの底部周辺には、フルラッチ係合部115aが形成されている。フルラッチ係合部115aよりもラッチボディ部111の外周縁側で、前方から見て、係合溝114の時計回り方向側の内壁面114aには、ハーフラッチ係合部115bが形成されている。
【0028】
図3は、全閉ストライカSがハーフラッチ係合部115bに係合している状態を示しており、この状態において、係合溝114は、前方から見て、ラッチ軸110の軸心より上方かつ車外側の位置で、ラッチボディ部111の外周縁から挿通孔11aに向かって、やや車外側に湾曲して窪んだ凹形状を有するように形成されている。したがって、全閉ストライカSは、ハーフラッチ係合部115bに係合しているとき、全閉ラッチ11に辛うじて係合する状態となり、この状態で、ハーフラッチ係合部115bに全閉ストライカSから車内側方向の荷重がかかると、全閉ラッチ11は、前方から見て時計回り方向に回動する場合がある。この場合、全閉ラッチ11は、全閉ストライカSとの係合が解除される。
【0029】
図4は、全閉ストライカSがフルラッチ係合部115aに係合している状態を示しており、この状態において、係合溝114は、前方から見て、ラッチ軸110の軸心より上方かつ車内側の位置で、ラッチボディ部111の外周縁から挿通孔11aに向かって、やや車外側に湾曲して窪んだ凹形状を有するように形成されている。したがって、全閉ストライカSは、フルラッチ係合部115aに係合しているとき、全閉ラッチ11に完全に係合する状態となり、全閉ストライカSから車内側方向の荷重がフルラッチ係合部115aにかかっても、全閉ラッチ11にかかる前方から見て時計回り方向のモーメントは小さいので、全閉ラッチ11は、前方から見て時計回り方向には回動しにくく、全閉ストライカSとの係合が維持される。
【0030】
なお、以下の説明において、全閉ラッチ11の「フルラッチ位置」とは、フルラッチ係合部115aに全閉ストライカSが係合し、全閉ストライカSが全閉ラッチ11に完全に係合する状態となる全閉ラッチ11の位置を指し、全閉ラッチ11の「ハーフラッチ位置」とは、ハーフラッチ係合部115bに全閉ストライカSが係合し、全閉ストライカSが全閉ラッチ11に辛うじて係合する状態となる全閉ラッチ11の位置を指し、全閉ラッチ11の「アンラッチ位置」とは、全閉ラッチ11に全閉ストライカSが係合しない状態となる全閉ラッチ11の位置を指す。
【0031】
全閉ラッチ11がフルラッチ位置にあるとき、ドアDは全閉位置で全閉状態の「フルラッチ状態」となる。全閉ラッチ11がハーフラッチ位置にあるとき、ドアDは、全閉位置の直前の位置で、全閉ストライカSが全閉ラッチ11に辛うじて係合して、ドアDに荷重がかからなければ開動作しないものの全閉状態ではない「ハーフラッチ状態」となり、全閉ラッチ11がアンラッチ位置にあるとき、ドアDは自由に開動作が可能な「アンラッチ状態」となる。
【0032】
全閉ラッチ11の前側には、ラッチ軸110を取り囲むようにねじりコイルばね14が配置されている。ねじりコイルばね14の一端部は、前方から見て、ラッチ軸110の下方から時計回り方向に延出して、ドアクローザ装置1の任意の非可動部材に係止され、ラッチ軸110の径方向外側方向への変位が規制されている。ねじりコイルばね14の他端部は、ラッチ軸110の下方から反時計回り方向に延出している。そして、ねじりコイルばね14の他端部は、全閉ラッチ11がアンラッチ位置にあるときは、他の部材には係止されず自由に移動可能な位置に配置され、全閉ラッチ11がハーフラッチ位置又はフルラッチ位置にあるときは、ラッチボディ部111に設けられた突起部113のラッチ軸110と対向する面に係止され、ラッチ軸110の径方向外側方向への変位が規制されている。
【0033】
したがって、全閉ラッチ11は、ハーフラッチ位置又はフルラッチ位置にあるときは、コイルばね14の付勢力によって、前方から見て時計回り方向、すなわちアンラッチ位置の方向に付勢される。そして、全閉ラッチ11の中立位置は、アンラッチ位置となっている。
【0034】
全閉ラッチユニット10は、ラッチボディ部111に設けられた突起部113の位置を検出する不図示のラッチ位置検出部をさらに備える。ラッチ位置検出部は、検出したラッチボディ部111の突起部113の位置に基づいて、全閉ラッチ11が、アンラッチ位置、ハーフラッチ位置、及びフルラッチ位置のどの位置にあるかの位置信号を、車両Vの不図示の制御ユニットに出力する。そして、制御ユニットは、全閉ラッチ11がハーフラッチ位置にあることを示す位置信号がラッチ位置検出部から入力されると、クローザアクチュエータDCを駆動させる。
【0035】
(本体ユニット)
図2に戻って、ドアクローザ装置1の本体ユニット30は、ベースプレート31と、ベースプレート31の車外側に配置され、全閉ラッチユニット10の全閉ラッチ11と全閉ストライカSとの係合を解除する方向に全閉ラッチ11を回転動作させるリリース機構部40と、ベースプレート31の車内側に配置され、全閉ラッチユニット10の全閉ラッチ11と車体Bのドア開口部の後端に設けられた全閉ストライカSとを係合する方向に全閉ラッチ11を回転動作させるクローズ機構部50と、を備える。さらに、ドアクローザ装置1の本体ユニット30は、ベースプレート31に車幅方向で対向して、クローズ機構部50の車内側の少なくとも一部を覆うカバープレート32と、を備える。
【0036】
なお、リリース機構部40は、公知の構造であってよく、本発明に直接関係しないため、本明細書において、具体的な構成の詳細説明は省略する。
【0037】
本体ユニット30には、クローズ機構部50の車外側を覆うベースプレート31と、ベースプレート31に車幅方向で対向して、クローズ機構部50の車内側の少なくとも一部を覆うカバープレート32と、によって囲まれ、クローズ機構部50の少なくとも一部が収容される収容部33が形成されている。
【0038】
図5図7に示すように、クローズ機構部50は、カバープレート32に固定された第1クローザレバー51、第2クローザレバー52、第3クローザレバー53、及びキャンセルレバー54を備える。
【0039】
第1クローザレバー51は、カバープレート32から車外側に向かって(すなわちベースプレート31に向かって)車幅方向に突出する第1レバー軸341に支持されている。第1クローザレバー51は、第1レバー軸341を中心に、車外側から見て時計回り方向及び反時計回り方向に回動可能となっている。第1クローザレバー51は、第1レバー軸341が挿通する挿通孔51aが形成された中央部511と、中央部511から下方に向かって延びる下側部512と、を有する。
【0040】
第1クローザレバー51の中央部511の外縁には、第1レバー軸341を中心とする円弧状に形成された歯車部51bが設けられている。第1クローザレバー51の中央部511の外縁には、前方に突出したフック形状を有する係止部51cが設けられている。係止部51cには、コイルばね351の一端部が係止されている。コイルばね351の他端部は、係止部51cよりも下方かつ前方で、カバープレート32に係止されている。したがって、第1クローザレバー51は、コイルばね351の弾性力によって、車外側から見て、時計回り方向に付勢されている。
【0041】
第1クローザレバー51の下側部512の下端部には、下方に突出して後方に湾曲したフック形状を有する連結部513が設けられている。連結部513には、ケーブルユニット60のインナケーブル61の一端部61aが連結される。
【0042】
したがって、クローザアクチュエータDCが駆動しない状態においては、第1クローザレバー51は、コイルばね351の付勢力によって中立位置に保持される。クローザアクチュエータDCが駆動し、ケーブルユニット60のインナケーブル61が牽引されると、第1クローザレバー51は、コイルばね351の付勢力に抗して、車外側から見て、反時計回り方向に回動する。そして、クローザアクチュエータDCの駆動が終了し、ケーブルユニット60のインナケーブル61が牽引されない状態に戻ると、第1クローザレバー51は、コイルばね351の付勢力によって中立位置に戻る。
【0043】
第2クローザレバー52は、カバープレート32から車外側に向かって(すなわちベースプレート31に向かって)車幅方向に突出する第2レバー軸342に支持されている。第2クローザレバー52は、第2レバー軸342を中心に、車外側から見て時計回り方向及び反時計回り方向に回動可能となっている。第2クローザレバー52は、第2レバー軸342が挿通する挿通孔52aが形成された中央部521と、中央部521から後方に向かって延びる後側部522と、を有する。
【0044】
第2クローザレバー52の中央部521の外縁には、第2レバー軸342を中心とする円弧状に形成された歯車部52bが設けられている。歯車部52bは、第1クローザレバー51の歯車部51bと噛合している。したがって、車外側から見て、第1クローザレバー51が反時計回り方向に回動すると、第2クローザレバー52は、時計回り方向に回動する。車外側から見て、第1クローザレバー51が時計回り方向に回動すると、第2クローザレバー52は、反時計回り方向に回動する。
【0045】
第2クローザレバー52の後側部522には、第3クローザレバー53を軸支する第3レバー軸343が設けられている。第3レバー軸343は、第2クローザレバー52の後側部522から車外側に向かって(すなわちベースプレート31に向かって)車幅方向に突出している。
【0046】
第2クローザレバー52には、第2クローザレバー52の外縁から下方に突出したフック形状を有する係止部52cが、さらに設けられている。係止部52cには、ねじりコイルばね353の一端部が係止されている。
【0047】
第3クローザレバー53は、第2クローザレバー52の後側部522に設けられた第3レバー軸343に支持されている。第3クローザレバー53は、第3レバー軸343を中心に、車外側から見て時計回り方向及び反時計回り方向に回動可能となっている。第3クローザレバー53は、第3レバー軸343が挿通する挿通孔53aが形成された中央部531と、中央部531から前方に向かって延びる前側部532と、中央部531から後方に向かって延びる後側部533と、中央部531及び後側部533の上縁から、車外側に向かって(すなわちベースプレート31に向かって)車幅方向に延びる当接部534を有する。
【0048】
第3クローザレバー53の車外側には、第3レバー軸343を取り囲むようにねじりコイルばね353が配置されている。
【0049】
第3クローザレバー53の前側部532の前端には、車外側に向かって(すなわちベースプレート31に向かって)車幅方向に延びる円環状のカラー部53dが設けられている。
【0050】
ねじりコイルばね353は、一端部が第3レバー軸343の下方から前方に延出して第2クローザレバー52の係止部52cに係止され、他端部が第3レバー軸343の上方から前方に延出して、第3クローザレバー53の当接部534の下面に当接する。
【0051】
第3クローザレバー53は、コイルばね353の付勢力によって、中立位置に保持される。コイルばね353の付勢力によって、第3クローザレバー53の中立位置は、カラー部53dがキャンセルレバー54に当接しない位置となっている。これにより、第3クローザレバー53の中立位置にあるとき、キャンセルレバー54は、第3クローザレバー53のカラー部53dに引っ掛かることなく動作できる。
【0052】
キャンセルレバー54は、第3クローザレバー53の中立位置におけるカラー部53dの略鉛直上方で、カバープレート32から車外側に向かって(すなわちベースプレート31に向かって)車幅方向に突出する第4レバー軸344に支持されている。キャンセルレバー54は、第4レバー軸344が挿通する挿通孔54aが形成された中央部541と、中央部541の上端部から車内側に向かって(すなわちカバープレート32に向かって)延びる屈曲部542と、屈曲部542の車内側端部から上方に向かって延びる上側部543と、中央部541から下方に向かって延びる下側部544と、を有する。下側部544の下端部には、ストッパ部54bが設けられている。
【0053】
第4レバー軸344には、車幅方向においてカバープレート32とキャンセルレバー54との間で、第4レバー軸344を取り囲むようにねじりコイルばね354が設けられている。ねじりコイルばね354の一端部は、第4レバー軸344の下方から後方に延出し、ドアクローザ装置1の任意の非可動部材に係止されている。ねじりコイルばね354の他端部は、第4レバー軸344の上方から後方に延出し、キャンセルレバー54の屈曲部542に下方から当接している。
【0054】
キャンセルレバー54は、ねじりコイルばね354の付勢力によって、中立位置に保持される。キャンセルレバー54の中立位置は、下側部544が中央部541から鉛直下方に向かって延び、ストッパ部54bが、第3クローザレバー53のカラー部53dの鉛直上方で第3クローザレバー53のカラー部53dの近傍に対向配置される位置となっている。したがって、車外側から見て、第3クローザレバー53が反時計回りに回動しようとすると、第3クローザレバー53のカラー部53dは、キャンセルレバー54のストッパ部54bに下方から当接する。そして、第3クローザレバー53のカラー部53dは、キャンセルレバー54のストッパ部54bに上方から支持され、上方に変位することを規制されるので、第3クローザレバー53は、車外側から見て反時計回りに回動することが規制される。
【0055】
(ケーブルユニット)
ケーブルユニット60は、一端部61aが本体ユニット30のクローズ機構部50に連結するインナケーブル61と、インナケーブル61が挿通する中空のアウタケーシング62と、を備える。
【0056】
インナケーブル61は、一端部61aが、クローズ機構部50の第1クローザレバー51に設けられた連結部513と連結し、他端部(不図示)が、クローザアクチュエータDCの牽引レバー(不図示)と連結する。インナケーブル61は、第1クローザレバー51に設けられた連結部513と連結する一端部61aから、前方やや下方に向かって延びる。
【0057】
アウタケーシング62は、可撓性を有し、例えば、可撓性を有する樹脂や、細線をメッシュ状に編組加工したものに樹脂コーティングを施したもの等によって形成されている。アウタケーシング62は、一端部が本体ユニット30のカバープレート32に固定され、他端部(不図示)がクローザアクチュエータDCのハウジング部材(不図示)に固定される。
【0058】
したがって、ケーブルユニット60は、本体ユニット30の外部では、インナケーブル61がアウタケーシング62の中空部分に収容されており、本体ユニット30内部の収容部33では、インナケーブル61がアウタケーシング62の中空部分に収容されておらずアウタケーシング62から露出している。したがって、インナケーブル61の一端部61aは、アウタケーシング62から露出している。
【0059】
全閉ラッチ11がハーフラッチ位置にあることを示す位置信号が、ラッチ位置検出部から制御ユニットに入力され、制御ユニットによってクローザアクチュエータDCが駆動し、クローザアクチュエータDCの牽引レバーが動作すると、ケーブルユニット60のインナケーブル61は、他端部が牽引レバーに巻き取られ、一端部61aが前方やや下方に向かって牽引される。
【0060】
次に、全閉ラッチ11がハーフラッチ位置にあり、クローザアクチュエータDCの牽引レバーが動作して、ケーブルユニット60のインナケーブル61の一端部61aが前方やや下方に向かって牽引された場合の動作について説明する。
【0061】
(クローズ動作)
図5及び図6に示すように、キャンセルレバー54が中立位置にあるとき、クローザアクチュエータDCが駆動し、ケーブルユニット60のインナケーブル61の一端部61aが前方やや下方に向かって牽引されると、車外側から見て、インナケーブル61の一端部61aが第1クローザレバー51の連結部513に連結されているので、第1クローザレバー51が反時計回りに回動し、第1クローザレバー51の歯車部51bと第2クローザレバー52の歯車部52bとの噛合によって、第2クローザレバー52が時計回りに回動する。そして、第2クローザレバー52が時計回りに回動することによって、第2クローザレバー52の後側部522に設けられた第3レバー軸343が上方に変位するのに伴い、第3クローザレバー53は、自重によって反時計回りに回動しようとするが、第3クローザレバー53のカラー部53dがキャンセルレバー54のストッパ部54bに下方から当接する。そして、第3クローザレバー53のカラー部53dがキャンセルレバー54のストッパ部54bに上方から支持された状態で、第2クローザレバー52がさらに時計回りに回動すると、第3レバー軸343がさらに上方に変位する。すると、第3クローザレバー53は、キャンセルレバー54のストッパ部54bに上方から支持されたカラー部53dを中心に、時計回りに回動する。これにより、第3クローザレバー53の当接部534の先端部は、上方に向かって回動し、全閉ラッチユニット10の全閉ラッチ11のアーム部112に当接し、全閉ラッチ11のアーム部112を下方から上方に強制的に押し上げる。
【0062】
第3クローザレバー53の当接部534の先端部によって、全閉ラッチ11のアーム部112が強制的に上方に押し上げられると、全閉ラッチ11は、前方から見て、反時計回りに強制的に回動し、全閉ラッチ11は、ハーフラッチ位置からフルラッチ位置へと変位して、全閉ストライカSは、全閉ラッチ11のフルラッチ係合部115aに係合し、ドアDは、全閉位置で全閉状態のフルラッチ状態となる。
【0063】
なお、キャンセルレバー54が中立位置にあり、ケーブルユニット60のインナケーブル61が牽引され、第3クローザレバー53のカラー部53dがキャンセルレバー54の下側部544の下端部に当接した状態のとき、本実施形態では、第3クローザレバー53のカラー部53dは、カラー部53dの円環中心と第2レバー軸342の軸心とが略一致する位置に維持される。
【0064】
このようにして、全閉ラッチ11がハーフラッチ位置にあり、キャンセルレバー54が中立位置にあるとき、クローザアクチュエータDCの駆動によって、クローズ機構部50は、全閉ラッチ11をハーフラッチ位置からフルラッチ位置へと強制的に変位させて、ドアDを全閉位置で全閉状態のフルラッチ状態となるように動作する、クローズ動作を行う。
【0065】
(キャンセル動作)
キャンセルレバー54の上側部543には、車幅方向に延びる当接部54cが形成されている。当接部54cには、ベースプレート31の車外側に配置されたリリース機構部40のリリースレバー(不図示)が前方から当接可能となっている。なお、リリース機構部40のリリースレバーは、ユーザによるインサイドハンドルIH及びアウトサイドハンドルOHの操作に応じて、全閉ラッチユニット10の全閉ラッチ11と全閉ストライカSとの係合を解除する方向に全閉ラッチ11が回転動作するように駆動するレバーである。
【0066】
図7に示すように、リリース機構部40のリリースレバーが、キャンセルレバー54の当接部54cに前方から当接すると、キャンセルレバー54は、第4レバー軸344を中心に、車外側から見て反時計回りに回動する。すると、キャンセルレバー54のストッパ部54bは、前方に回動し、第3クローザレバー53のカラー部53dと当接しない退避位置に移動する。キャンセルレバー54のストッパ部54bが、第3クローザレバー53のカラー部53dと当接しない退避位置に移動すると、第3クローザレバー53は、車外側から見て、反時計回り方向の回動が自由となる。
【0067】
この状態で、クローザアクチュエータDCが駆動し、ケーブルユニット60のインナケーブル61が前方やや下方に牽引されると、車外側から見て、第1クローザレバー51が反時計回りに回動し、第2クローザレバー52が時計回りに回動するが、第2クローザレバー52の回動によって第3レバー軸343が上方に変位するのに伴い、第3クローザレバー53は、自重によって反時計回りに回動する。このとき、キャンセルレバー54のストッパ部54bは、第3クローザレバー53のカラー部53dと当接しない退避位置に移動しているので、第3クローザレバー53のカラー部53dはキャンセルレバー54のストッパ部54bに上方から支持されず、第3クローザレバー53の当接部534の先端部は、下方に向かって回動する。そして、第3クローザレバー53は、第3レバー軸343を中心に、自重によるつり合いの状態となる。したがって、第3クローザレバー53の当接部534の先端部は、上方に変位しないため、全閉ラッチユニット10の全閉ラッチ11には当接しない。このように、リリース機構部40のリリースレバーがキャンセルレバー54の当接部54cに前方から当接し、キャンセルレバー54の下側部544のストッパ部54bが、前方に回動し、第3クローザレバー53のカラー部53dと当接しない退避位置にあるとき、クローズ機構部50は、クローザアクチュエータDCが駆動し、ケーブルユニットの60インナケーブル61が牽引されても、全閉ラッチユニット10の全閉ラッチ11を駆動しない、キャンセル状態となる。
【0068】
このようにして、クローズ機構部50は、全閉ラッチ11がハーフラッチ位置にあり、クローザアクチュエータDCが駆動しても、全閉ラッチ11を変位させない、キャンセル動作を行うことが可能となっている。
【0069】
なお、キャンセルレバー54の当接部54cに当接していたリリース機構部40のリリースレバーが、キャンセルレバー54の当接部54cから離れると、キャンセルレバー54は、ねじりコイルばね354の付勢力によって、中立位置に戻り、上述のクローズ動作が可能な状態に保持される。
【0070】
(ケーブルユニットの本体ユニットへの固定)
図8に示すように、ケーブルユニット60のアウタケーシング62の一端部には、ケーシングキャップ63が外嵌されている。ケーシングキャップ63は、アウタケーシング62よりも剛性が高い。ケーシングキャップ63は、例えば金属等、高剛性の材料によって形成されている。
【0071】
ケーシングキャップ63は、アウタケーシング62の一端部における外周面よりもやや大径の円筒部631と、インナケーブル61の一端部61a側で円筒部631と隣接し、インナケーブル61の一端部61a側の先端部に形成され、アウタケーシング62の一端部におけるインナケーブル61の牽引方向、すなわち前方やや下方から見て、円筒部631の外周面から外側に突出した突出部632が設けられている。突出部632は、インナケーブル61の一端部61a側で円筒部631と隣接し、円筒部631の外周面の全周に亘って円筒部631より大径の外周面を有する略円環形状の鍔状部633と、インナケーブル61の一端部61a側で鍔状部633と隣接し、後述する取付ブラケット70の係止部72に係止される被係止部634と、インナケーブル61の一端部61a側で被係止部634と隣接してケーシングキャップ63のインナケーブル61の一端部61a側の先端に形成され、アウタケーシング62の一端部におけるインナケーブル61の牽引方向、すなわち前方やや下方から見て、全周に亘って円筒部631の外周面より外側に突出した外周面を有するフランジ部635と、フランジ部635の車内側の外周面からさらに車内側に突出した突起部636と、を有する。
【0072】
ケーシングキャップ63に設けられた被係止部634は、ケーブルユニット60の長手方向において、鍔状部633とフランジ部635との間に設けられており、アウタケーシング62の一端部におけるインナケーブル61の牽引方向、すなわち前方やや下方から見て、アウタケーシング62を取り囲むように、ケーシングキャップ63の外周面に設けられた溝により構成されている。
【0073】
ケーシングキャップ63よりもインナケーブル61の一端部61a側には、弾性部材により形成されたパッキン64が設けられている。パッキン64は、アウタケーシング62の一端部でアウタケーシング62の中空部を封止しており、アウタケーシング62の中空内部に砂や塵等が入り込むことを防止する。これにより、インナケーブル61と、アウタケーシング62とが、アウタケーシング62の中空内部に入り込んだ砂や塵等挟んで摩擦することによって、インナケーブル61が損傷することを防止できる。
【0074】
ケーシングキャップ63の被係止部634は、本体ユニット30のベースプレート31及びカバープレート32とは別体の取付ブラケット70に係止される。
【0075】
図9及び図10に示すように、取付ブラケット70は、例えば金属等、高剛性の材料によって形成されている。取付ブラケット70は、本体ユニット30のカバープレート32と車内側で対向し、上下方向及び前後方向に延びる平板状の固定部71と、アウタケーシング62の一端部におけるインナケーブル61の牽引方向に垂直な平板状の係止部72と、固定部71の下端部と係止部72の上端部とを接続し、車幅方向及び前後方向に延びる平板状の接続部73と、を有する。接続部73の車内側端部が固定部71の下端部と接続し、接続部73の後端部が係止部72の上端部と接続する。
【0076】
取付ブラケット70の係止部72には、車内側に向かって開口した略U字型の嵌合凹部721が形成されている。そして、この嵌合凹部にケーシングキャップ63の被係止部634が嵌入されることにより、ケーシングキャップ63の被係止部634が取付ブラケット70の係止部72に係止される。このとき、ケーシングキャップ63の被係止部634を取付ブラケット70の係止部72にガタつきなく係止するため、取付ブラケット70の嵌合凹部721の周囲における係止部72の厚さと、ケーシングキャップ63の被係止部634を構成する溝幅と、を略同一長さに設定し、取付ブラケット70の嵌合凹部721の周囲における係止部72が、ケーシングキャップ63の被係止部634を構成する溝に隙間なく嵌入されるようにすることが好ましい。
【0077】
取付ブラケット70の固定部71には、車幅方向に貫通する挿通孔71aが形成されている。本体ユニット30のカバープレート32には、車内側から見て、取付ブラケット70の固定部71に形成された挿通孔71aと同じ位置に、車幅方向に貫通する挿通孔321が形成されている。本体ユニット30のベースプレート31には、車内側から見て、取付ブラケット70の固定部71に形成された挿通孔71a、及び本体ユニット30のカバープレート32に形成された挿通孔321と同じ位置に、車内側の端面から車外側に向かって車幅方向に形成されたネジ穴311が形成されている。ネジ穴311の内周面にはネジ溝が形成されている。そして、締結ネジ36が、車内側から取付ブラケット70の固定部71に形成された挿通孔71a、及び本体ユニット30のカバープレート32に形成された挿通孔321を挿通して、本体ユニット30のベースプレート31に形成されたネジ穴311に螺合する。これにより、締結ネジ36は、取付ブラケット70と本体ユニット30のカバープレート32とを共締めして本体ユニット30のベースプレート31に締結され、取付ブラケット70は、本体ユニット30のカバープレート32及びベースプレート31に固定される。
【0078】
取付ブラケット70の固定部71には、挿通孔71aとは別個に、車幅方向に貫通する挿通孔710がさらに形成されている。本体ユニット30のカバープレート32には、車内側から見て、取付ブラケット70の固定部71に形成された挿通孔710と同じ位置に、車幅方向に貫通する挿通孔320が形成されている。本体ユニット30のベースプレート31には、車内側から見て、取付ブラケット70の固定部71に形成された挿通孔710、及び本体ユニット30のカバープレート32に形成された挿通孔320と同じ位置に、車幅方向に貫通する挿通孔310が形成されている。そして、不図示の締結ネジが、車内側から、ドアDのドアパネルDPに設けられた不図示の挿通孔、及び取付ブラケット70の固定部71に形成された挿通孔710を挿通し、本体ユニット30のカバープレート32に形成された挿通孔320、又は本体ユニット30のベースプレート31に形成された挿通孔310に螺合することによって、ドアクローザ装置1がドアDのドアパネルDPに固定される。したがって、取付ブラケット70は、ドアDのドアパネルDPと、本体ユニット30のカバープレート32及びベースプレート31とによって挟持されて固定される(図2参照)。これにより、取付ブラケット70をより強固に固定できる。
【0079】
クローザアクチュエータDCからドアクローザ装置1の本体ユニット30までのケーブルユニット60の経路が湾曲している場合、アウタケーシング62を挿通するインナケーブル61がクローザアクチュエータDCにより牽引されると、インナケーブル61は最短経路をとろうとするためにたるみがなくなり、インナケーブル61の経路が通常時よりも短くなる。そして、インナケーブル61の経路が、アウタケーシング62の長さよりも短くなろうとする場合、アウタケーシング62は、両端部において、インナケーブル61の先端側に向かう押し出し方向の荷重を作用させることとなる。
【0080】
本実施形態では、ケーブルユニット60は、ケーシングキャップ63の被係止部634で、本体ユニット30のカバープレート32及びベースプレート31とは別体の取付ブラケット70に係止され、取付ブラケット70が、本体ユニット30のカバープレート32及びベースプレート31に固定されることによって、ケーブルユニット60が本体ユニット30に固定されるので、インナケーブル61が牽引されることによってアウタケーシング62の一端部から受けるインナケーブル61の先端側に向かう押し出し方向の荷重を、取付ブラケット70で受けることができる。これにより、本体ユニット30のベースプレート31やカバープレート32が破損することを防止することができる。
【0081】
本体ユニット30のカバープレート32には、車内側から見て、ケーブルユニット60が本体ユニット30に固定された状態において、ケーブルユニット60のケーシングキャップ63と後方で対向する位置に、上下方向に延びる当接部322が形成されている。本実施形態では、当接部322は、カバープレート32の下端部32uの前端から上方に延びている。
【0082】
当接部322は、アウタケーシング62の一端部におけるインナケーブル61の牽引方向から見て、アウタケーシング62を取り囲むように車内側に凸に湾曲した形状を有する。
【0083】
ケーブルユニット60が本体ユニット30に固定された状態において、ケーシングキャップ63に設けられた突出部632のフランジ部635及び突起部636は、アウタケーシング62の一端部におけるインナケーブル61の牽引方向で、本体ユニット30の外側前方から、カバープレート32の当接部322に当接する。
【0084】
これにより、インナケーブル61が牽引されることによってアウタケーシング62から受けるインナケーブル61の先端側に向かう押し出し方向の荷重に起因して、取付ブラケット70がインナケーブル61の先端側に位置ずれすることをより確実に防止できる。また、インナケーブル61が牽引されることによってアウタケーシング62から受けるインナケーブル61の先端側に向かう押し出し方向の荷重を、取付ブラケット70に加えて、本体ユニット30のカバープレート32の当接部322でも受けることができる。これにより、インナケーブル61が牽引されることによってアウタケーシング62から受けるインナケーブル61の先端側に向かう押し出し方向の荷重を、取付ブラケット70とカバープレート32の当接部322とで分散して受けることができるので、アウタケーシング62から受けるインナケーブル61から受ける押し出し方向の荷重によって、本体ユニット30のベースプレート31やカバープレート32が破損することを防止しつつ、アウタケーシング62から受ける押し出し方向の荷重によって、取付ブラケット70が変形や破損することを抑制できる。
【0085】
さらに、カバープレート32の当接部322が、アウタケーシング62の一端部におけるインナケーブル61の牽引方向から見て、アウタケーシング62を取り囲むように湾曲した形状を有しているので、カバープレート32の当接部322において、ケーシングキャップ63に設けられた突出部632のフランジ部635及び突起部636が当接する接触面積を大きくすることができる。これにより、カバープレート32の当接部322において、アウタケーシング62から受ける押し出し方向の荷重をより分散して受けることができる。
【0086】
また、本体ユニット30のカバープレート32の当接部322と当接するフランジ部635及び突起部636を含む突出部632と、取付ブラケット70の係止部72に係止される被係止部634とは、アウタケーシング62よりも剛性が高いケーシングキャップ63に設けられているので、ケーブルユニット60を、より強固に本体ユニット30に固定できる。
【0087】
カバープレート32には、当接部322の上方で当接部322より前方に突出した突出部323が形成されている。ケーブルユニット60及び取付ブラケット70が本体ユニット30に固定された状態において、突出部323の下端部323uには、取付ブラケット70の接続部73が下方から当接又は近接する。
【0088】
カバープレート32には、突出部323の下端部323uの前端から下方に突出した位置規制部324が形成されている。ケーブルユニット60及び取付ブラケット70が本体ユニット30に固定された状態において、位置規制部324の後端部は、取付ブラケット70の接続部73の前端部と、前方で対向する。
【0089】
ケーブルユニット60のケーシングキャップ63に設けられた被係止部634が取付ブラケット70の係止部72に係止されている状態であって、取付ブラケット70が締結ネジ36によって本体ユニット30のカバープレート32及びベースプレート31に固定される前の状態のとき、位置規制部324は、アウタケーシング62の一端部におけるインナケーブル61の牽引方向において、ケーブルユニット60のフランジ部635及び突起部636がカバープレート32の当接部322から離れる方向に、取付ブラケット70がカバープレート32に対して相対移動することを規制する。すなわち、本実施形態では、ケーブルユニット60のケーシングキャップ63に設けられた被係止部634が取付ブラケット70の係止部72に係止されている状態であって、取付ブラケット70が締結ネジ36によって本体ユニット30のカバープレート32及びベースプレート31に固定される前の状態のとき、位置規制部324は、取付ブラケット70がカバープレート32に対して前方に相対移動することを規制する。
【0090】
したがって、ケーブルユニット60のケーシングキャップ63に設けられた被係止部634が取付ブラケット70の係止部72に係止されている状態であって、取付ブラケット70が締結ネジ36によって本体ユニット30のカバープレート32及びベースプレート31に固定される前の状態のとき、取付ブラケット70は、カバープレート32の当接部322によって、カバープレート32に対して後方に相対移動することが規制され、カバープレート32の位置規制部324によって、カバープレート32に対して前方に相対移動することが規制される。換言すると、ケーブルユニット60のケーシングキャップ63に設けられた被係止部634が取付ブラケット70の係止部72に係止されている状態であって、取付ブラケット70が締結ネジ36によって本体ユニット30のカバープレート32及びベースプレート31に固定される前の状態のとき、取付ブラケット70は、アウタケーシング62の一端部におけるインナケーブル61の牽引方向において、カバープレート32の当接部322によって、ケーブルユニット60のケーシングキャップ63に設けられたフランジ部635及び突起部636がカバープレート32の当接部322により近づく方向に、カバープレート32に対して相対移動することが規制され、カバープレート32の位置規制部324によって、ケーブルユニット60のケーシングキャップ63に設けられたフランジ部635及び突起部636がカバープレート32の当接部322から離れる方向に、カバープレート32に対して相対移動することが規制される。
【0091】
このように、カバープレート32が当接部322と位置規制部324とを有することによって、ケーブルユニット60のケーシングキャップ63に設けられた被係止部634が取付ブラケット70の係止部72に係止されている状態であって、取付ブラケット70が締結ネジ36によって本体ユニット30のカバープレート32及びベースプレート31に固定される前の状態のとき、取付ブラケット70は、カバープレート32に対し、ケーブルユニット60のケーシングキャップ63に設けられたフランジ部635及び突起部636がカバープレート32の当接部322に対して近づく方向及び離れる方向のいずれの方向にも相対移動することが規制される。したがって、ケーブルユニット60のケーシングキャップ63に設けられた被係止部634が取付ブラケット70の係止部72に係止された状態で、取付ブラケット70を締結ネジ36によって本体ユニット30のカバープレート32及びベースプレート31に固定する際、取付ブラケット70が、カバープレート32に対して、ケーブルユニット60のケーシングキャップ63に設けられたフランジ部635及び突起部636がカバープレート32の当接部322に近づく方向及び離れる方向のいずれの方向にも相対移動することが規制された状態で、締結ネジ36によって本体ユニット30のカバープレート32及びベースプレート31に取付ブラケット70を固定することができる。これにより、締結ネジ36によって本体ユニット30のカバープレート32及びベースプレート31に取付ブラケット70を固定する際に、取付ブラケット70をカバープレート32に対して位置合わせすることが容易となる。
【0092】
本体ユニット30の収容部33は、本体ユニット30の外部に向かって下方に開口する開口部331を備える。開口部331は、ベースプレート31の下端部31uとカバープレート32の下端部32uとが離間して形成されている。開口部331は、ベースプレート31の前端部31fr及びカバープレート32の前端部32frから前方に開口しており、ベースプレート31の前端部31fr及びカバープレート32の前端部32frから後方に向かって延びている。したがって、本体ユニット30は、アウタケーシング62から露出したインナケーブル61の一端部61aを、開口部331から収容部33に挿入して、第1クローザレバー51の連結部513に連結可能となっている。
【0093】
したがって、ドアクローザ装置1は、本体ユニット30を製造した後、アウタケーシング62から露出したインナケーブル61の一端部61aを、開口部331から収容部33に挿入して、第1クローザレバー51の連結部513に連結してから、取付ブラケット70をカバープレート32及びベースプレート31に締結ネジ36で固定することによって、ケーブルユニット60を本体ユニット30に固定することができる。これにより、本体ユニット30とケーブルユニット60とを別個に搬送可能となる。本体ユニット30とケーブルユニット60とを別個に搬送することによって、ドアクローザ装置1を搬送する際の荷姿を小さくすることができ、搬送コストを低減できる。
【0094】
さらに、本体ユニット30の収容部33が、本体ユニット30の外部に向かって開口する開口部331を備え、アウタケーシング62から露出したインナケーブル61の一端部61aを、開口部331から収容部33に挿入可能であることによって、本体ユニット30を製造した後、アウタケーシング62から露出したインナケーブル61の一端部61aを、開口部331から収容部33に挿入して、クローズ機構部50の第1クローザレバー51の連結部513に連結することが容易となる。
【0095】
カバープレート32には、車内側から見て、クローズ機構部50の第1クローザレバー51の一部と重なる位置に、車幅方向に貫通する貫通孔325が形成されている。そして、ドアクローザ装置1は、車内側から見て、カバープレート32の貫通孔325から第1クローザレバー51の少なくとも一部が視認可能となっている。
【0096】
これにより、アウタケーシング62から露出したインナケーブル61の一端部61aを、開口部331から収容部33に挿入して、クローズ機構部50の第1クローザレバー51の連結部513に連結した後、アウタケーシング62から露出したインナケーブル61の一端部61aが第1クローザレバー51の連結部513に正しく連結され、第1クローザレバー51が正しく動作しているかどうかを、カバープレート32の貫通孔325から目視により容易に確認できる。
【0097】
ベースプレート31には、車内側から見て、ベースプレート31の下端部31uと、クローズ機構部50の第1クローザレバー51との間に、車内側に突出したガイド突壁312が形成されている。ガイド突壁312の車内側への突出高さは、ベースプレート31から第1クローザレバー51までの車内側方向の距離よりも低くなっている。本実施形態では、ガイド突壁312は、車内側から見て、第1クローザレバー51の下側部512の下端部の回動軌跡よりも下方で、当該回動軌跡に沿って、後方に向かって上方に湾曲するように形成されている。
【0098】
ガイド突壁312から第1クローザレバー51までの車内側方向の距離は、ベースプレート31から第1クローザレバー51までの車内側方向の距離よりも短くなるので、アウタケーシング62から露出したインナケーブル61の一端部61aを、開口部331から収容部33に挿入して、クローズ機構部50の第1クローザレバー51の連結部513に連結する際、インナケーブル61の一端部61aを、ガイド突壁312に沿って滑らせながら収容部33に挿入することによって、インナケーブル61の一端部61aと、第1クローザレバー51の連結部513との車幅方向の距離が短い状態を維持して、インナケーブル61の一端部61aを収容部33に挿入できるので、インナケーブル61の一端部61aを、第1クローザレバー51の連結部513に連結する作業が容易となる。
【0099】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【0100】
例えば、本実施形態では、ドアDは、前後方向にスライドして開閉可能に支持されたスライドドアであるものとしたが、車体Bとヒンジで固定され、ヒンジ軸を中心に回動可能なヒンジドアであってもよい。
【0101】
また、例えば、本実施形態では、取付ブラケット70は、締結ネジ36によって、本体ユニット30のカバープレート32と共締めされて本体ユニット30のベースプレート31に締結され、本体ユニット30のカバープレート32及びベースプレート31に固定されるものとしたが、取付ブラケット70は、締結ネジ36によって、本体ユニット30のカバープレート32及びベースプレート31のいずれか一方に固定されるものとしてもよい。
【0102】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0103】
(1) 被係合部(全閉ストライカS)と係合することによりドア(ドアD)を全閉位置に保持可能な全閉ラッチ(全閉ラッチ11)と、
前記ドアが前記全閉位置となる方向に前記全閉ラッチを動作させるクローズ機構部(クローズ機構部50)、前記クローズ機構部の一方側を覆うベースプレート(ベースプレート31)、及び、前記ベースプレートに対向して前記クローズ機構部の他方側の少なくとも一部を覆うカバープレート(カバープレート32)、を有する本体ユニット(本体ユニット30)と、
前記クローズ機構部に連結するインナケーブル(インナケーブル61)、及び、前記インナケーブルが挿通する中空のアウタケーシング(アウタケーシング62)、を有し、前記クローズ機構部を動作させるケーブルユニット(ケーブルユニット60)と、を備えるドアクローザ装置(ドアクローザ装置1)であって、
前記ケーブルユニットは、前記カバープレート及び前記ベースプレートとは別体の取付ブラケット(取付ブラケット70)に係止され、
前記取付ブラケットは、前記カバープレート及び前記ベースプレートの少なくとも一方に固定される、ドアクローザ装置。
【0104】
(1)によれば、ケーブルユニットは、カバープレート及びベースプレートとは別体の取付ブラケットに係止され、取付ブラケットが、カバープレート及びベースプレートの少なくとも一方に固定されることによって、ケーブルユニットが本体ユニットに固定されるので、インナケーブルが牽引されることによってアウタケーシングから受けるインナケーブルの先端側に向かう押し出し方向の荷重を、取付ブラケットで受けることができる。これにより、本体ユニットのベースプレートやカバープレートが破損することを防止できる。さらに、本体ユニットを製造した後に、取付ブラケットをカバープレート及びベースプレートの少なくとも一方に固定することによって、ケーブルユニットを本体ユニットに固定することができるので、本体ユニットとケーブルユニットとを別個に搬送可能となる。
【0105】
(2) (1)に記載のドアクローザ装置であって、
前記本体ユニットには、前記ベースプレートと前記カバープレートとによって囲まれ、前記クローズ機構部の少なくとも一部が収容される収容部(収容部33)が形成されており、
前記収容部は、前記本体ユニットの外部に向かって開口する開口部(開口部331)を備え、
前記開口部は、前記ベースプレートと前記カバープレートとが離間して形成され、
前記アウタケーシングから露出した前記インナケーブルの一端部(一端部61a)を、前記開口部から前記収容部に挿入可能である、ドアクローザ装置。
【0106】
(2)によれば、本体ユニットの収容部が、本体ユニットの外部に向かって開口する開口部を備え、アウタケーシングから露出したインナケーブルの一端部を、開口部から収容部に挿入可能であるので、本体ユニットを製造した後、アウタケーシングから露出したインナケーブルの一端部を、開口部から収容部に挿入して、クローズ機構部に連結することが容易となる。
【0107】
(3) (1)又は(2)に記載のドアクローザ装置であって、
前記アウタケーシングの一端部には、該一端部における前記インナケーブルの牽引方向から見て、前記アウタケーシングの外周面から外側に突出した突出部(突出部632)が設けられており、
前記突出部は、前記牽引方向で、前記本体ユニットの外側から、前記カバープレート及び前記ベースプレートの少なくとも一方に当接する、ドアクローザ装置。
【0108】
(3)によれば、突出部は、牽引方向で、本体ユニットの外側から、カバープレート及びベースプレートの少なくとも一方に当接するので、インナケーブルが牽引されることによってアウタケーシングから受けるインナケーブルの先端側に向かう押し出し方向の荷重に起因して、取付ブラケットがインナケーブルの先端側に位置ずれすることをより確実に防止できる。また、インナケーブルが牽引されることによってアウタケーシングから受けるインナケーブルの先端側に向かう押し出し方向の荷重を、取付ブラケットに加えて、アウタケーシングの突出部が当接するカバープレート及びベースプレートの少なくとも一方でも受けることができる。これにより、インナケーブルが牽引されることによってアウタケーシングから受けるインナケーブルの先端側に向かう押し出し方向の荷重を、取付ブラケットと、アウタケーシングの突出部が当接するカバープレート及びベースプレートの少なくとも一方と、で分散して受けることができるので、アウタケーシングから受けるインナケーブルから受ける押し出し方向の荷重によって、本体ユニットのベースプレートやカバープレートが破損することを防止しつつ、アウタケーシングから受ける押し出し方向の荷重によって、取付ブラケットが変形や破損することを抑制できる。
【0109】
(4) (3)に記載のドアクローザ装置であって、
前記突出部は、前記牽引方向から見て、前記アウタケーシングの全周に亘って前記アウタケーシングの外側に突出したフランジ部(フランジ部635)と、前記フランジ部からさらに外側に突出した突起部(突起部636)と、を有し、
前記フランジ部及び前記突起部は、前記牽引方向で、前記本体ユニットの外側から、前記カバープレートに当接し、
前記フランジ部及び前記突起部と当接する前記カバープレートの当接部(当接部322)は、前記牽引方向から見て、前記アウタケーシングを取り囲むように湾曲した形状を有する、ドアクローザ装置。
【0110】
(4)によれば、カバープレートの当接部が、牽引方向から見て、アウタケーシングを取り囲むように湾曲した形状を有しているので、カバープレートの当接部において、突出部のフランジ部及び突起部が当接する接触面積を大きくすることができる。これにより、カバープレートの当接部において、アウタケーシングから受ける押し出し方向の荷重をより分散して受けることができる。
【0111】
(5) (3)又は(4)に記載のドアクローザ装置であって、
前記アウタケーシングの一端部には、前記アウタケーシングよりも剛性が高いケーシングキャップ(ケーシングキャップ63)が設けられており、
前記突出部と、前記取付ブラケットの係止部(係止部72)に係止される被係止部(被係止部634)とは、前記ケーシングキャップに設けられている、ドアクローザ装置。
【0112】
(5)によれば、本体ユニットのカバープレートの当接部と当接する突出部と、取付ブラケットの係止部に係止される被係止部とは、アウタケーシングよりも剛性が高いケーシングキャップに設けられているので、ケーブルユニットを、より強固に本体ユニットに固定できる。
【0113】
(6) (3)~(5)のいずれかに記載のドアクローザ装置であって、
前記取付ブラケットは、前記カバープレートに固定され、
前記カバープレートには、前記牽引方向において、前記突出部が当接する前記カバープレート及び前記ベースプレートの少なくとも一方から前記突出部が離れる方向に、前記取付ブラケットが前記カバープレートに対して相対移動することを規制する位置規制部(位置規制部324)が形成されている、ドアクローザ装置。
【0114】
(6)によれば、カバープレートには、牽引方向において、突出部が当接するカバープレート及びベースプレートの少なくとも一方から突出部が離れる方向に、取付ブラケットがカバープレートに対して相対移動することを規制する位置規制部が形成されているので、ケーブルユニットが取付ブラケットに係止されている状態であって、取付ブラケットが本体ユニットに固定される前の状態のとき、取付ブラケットは、本体ユニットに対して近づく方向及び離れる方向のいずれの方向にも相対移動することが規制される。したがって、ケーブルユニットが取付ブラケットに係止されている状態であって、取付ブラケットが本体ユニットに固定する際、取付ブラケット及びケーブルユニットが、本体ユニットに対して近づく方向及び離れる方向のいずれの方向にも相対移動することが規制された状態で、本体ユニットに取付ブラケットを固定することができる。これにより、本体ユニットに取付ブラケットを固定する際に、取付ブラケットをカバープレートに対して位置合わせすることが容易となる。
【0115】
(7) (1)~(6)のいずれかに記載のドアクローザ装置であって、
前記取付ブラケットは、前記ドアのドアパネル(ドアパネルDP)と、前記カバープレート及び前記ベースプレートの少なくとも一方と、によって挟持されて固定される、ドアクローザ装置。
【0116】
(7)によれば、取付ブラケットは、ドアのドアパネルと、カバープレート及びベースプレートの少なくとも一方と、によって挟持されて固定されるので、取付ブラケットをより強固に固定できる。
【符号の説明】
【0117】
1 ドアクローザ装置
11 全閉ラッチ
30 本体ユニット
31 ベースプレート
32 カバープレート
322 当接部
324 位置規制部
33 収容部
331 開口部
50 クローズ機構部
60 ケーブルユニット
61 インナケーブル
61a 一端部
62 アウタケーシング
63 ケーシングキャップ
632 突出部
634 被係止部
635 フランジ部
636 突起部
70 取付ブラケット
72 係止部
D ドア
DP ドアパネル
S 全閉ストライカ(被係合部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10