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特許7516746楽音情報出力装置、楽音発生装置、楽音情報生成方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】楽音情報出力装置、楽音発生装置、楽音情報生成方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/053 20060101AFI20240709BHJP
   G10H 1/34 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G10H1/053 D
G10H1/34
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019209372
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2021081601
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【弁理士】
【氏名又は名称】大林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100128598
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 聖一
(74)【代理人】
【識別番号】100121108
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 太朗
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真一
(72)【発明者】
【氏名】西田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】柿下 正尋
(72)【発明者】
【氏名】大田 慎一
【審査官】山下 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-225958(JP,A)
【文献】特開平2-230193(JP,A)
【文献】特開平7-295563(JP,A)
【文献】特開2008-216871(JP,A)
【文献】特開昭60-98491(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0083281(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鍵と
前記複数の鍵のうち、いずれかの鍵における第1地点での第1の鍵操作に基づいた楽音を発生させるための発音情報を、生成する発音情報生成部と、
前記第1の鍵操作に基づいて発生する楽音の態様を、前記第1地点とは異なる第2地点を始点として移動を伴う第2の鍵操作に基づいて制御する制御情報を生成する制御情報生成部と、
を含み
前記鍵は、操作者からみて手前の第1領域と、前記第1領域を除く第2領域とを含み、
前記第1地点は、前記第1領域に含まれ、
前記第1の鍵操作は、前記鍵の前記第1領域への押鍵操作であり、
前記第2地点は、前記第2領域に含まれ、
前記第2の鍵操作は、前記鍵の前記第2領域への操作である
楽音情報出力装置。
【請求項2】
前記第2の鍵操作は、前記第1の鍵操作の後のスライド操作であり、
前記制御情報生成部は、前記スライド操作の方向および位置に応じて制御情報を生成する
請求項1に記載の楽音情報出力装置。
【請求項3】
前記第2の鍵操作は、前記第2領域におけるスライド操作であり、
前記制御情報生成部は、
前記第1の鍵操作に基づいた楽音の態様を、前記第2領域における前記スライド操作の方向および位置に応じて制御情報を生成する
請求項に記載の楽音情報出力装置。
【請求項4】
前記第2の鍵操作がなされる鍵は、前記第1の鍵操作がなされた鍵とは異なり、
前記制御情報生成部は、
当該第2の鍵操作に応じて制御情報を生成する
請求項1に記載の楽音情報出力装置。
【請求項5】
複数の鍵のうち、いずれかの鍵への第1の鍵操作に基づいた楽音を発生させるための発音情報を、生成する発音情報生成部と、
前記第1の鍵操作に基づいて発生する楽音の態様を、前記第1の鍵操作とは異なる第2の鍵操作に基づいて制御する制御情報を生成する制御情報生成部と、
前記発音情報と前記制御情報とに基づいて楽音信号を生成する楽音信号生成部と、
を含み、
前記楽音信号生成部は、
前記第2の鍵操作がなされた後に、前記第1の鍵操作がなされた場合、当該第1の鍵操作に基づいた楽音信号を第1の波形データに基づき生成し、
前記第2の鍵操作がなされることなく、前記第1の鍵操作がなされた場合、当該第1の鍵操作に基づいた楽音信号を前記第1の波形データとは異なる第2の波形データに基づき生成する
楽音発生装置。
【請求項6】
複数の鍵のうち、いずれかの鍵における第1地点での第1の鍵操作に基づいた楽音の発音情報を生成し、
前記第1の鍵操作に基づいて発生する楽音の態様を、前記第1地点とは異なる第2地点を始点として移動を伴う第2の鍵操作に基づいて制御する制御情報を生成し、
前記鍵は、操作者からみて手前の第1領域と、前記第1領域を除く第2領域とを含み、
前記第1地点は、前記第1領域に含まれ、
前記第1の鍵操作は、前記鍵の前記第1領域への押鍵操作であり、
前記第2地点は、前記第2領域に含まれ、
前記第2の鍵操作は、前記鍵の前記第2領域への操作である
楽音情報生成方法。
【請求項7】
コンピューターを、
複数の鍵のうち、いずれかの鍵における第1地点での第1の鍵操作に基づいた楽音を発生させるための発音情報を、生成する発音情報生成部、および、
前記第1の鍵操作に基づいて発生する楽音の態様を、前記第1地点とは異なる第2地点を始点として移動を伴う第2の鍵操作に基づいて制御する制御情報を生成する制御情報生成部
として機能させ、
前記鍵は、操作者からみて手前の第1領域と、前記第1領域を除く第2領域とを含み、
前記第1地点は、前記第1領域に含まれ、
前記第1の鍵操作は、前記鍵の前記第1領域への押鍵操作であり、
前記第2地点は、前記第2領域に含まれ、
前記第2の鍵操作は、前記鍵の前記第2領域への操作である
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば楽音情報出力装置、楽音発生装置、楽音情報生成方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鍵盤によって楽音を発生させるとともに、当該楽音に付与する効果(エフェクト)を制御する装置としては、次のような装置が提案されている。例えば、鍵盤における利用者(演奏者)の指の位置を検出し、検出した位置および動きに基づいて、楽音を制御する技術が提案されている(特許文献1参照)。また、鍵盤とは別に設けられたホィールなどの操作子を操作することによって、楽音のピッチを上下に変動させる技術も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-256413号公報
【文献】特開平05-94182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、利用者の指の位置等を検出するためにカメラを設けて画像処理する必要があり、装置全体でみて大がかりな構成となる。また、特許文献2に記載の技術では、楽音を発生させるための鍵操作の位置と、効果を制御するために操作子を操作する位置とが離れるので、利用者からすれば、発音のための操作と、効果を制御するための操作とが困難になる場合がある。
以上の事情を考慮して本開示は、簡易な構成によって発音と効果の制御とが容易とさせる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本開示の一態様に係る楽音情報出力装置は、複数の鍵と、前記複数の鍵のうち、いずれかの鍵への第1の鍵操作に基づいた楽音を発生させるための発音情報を、生成する発音情報生成部と、前記第1の鍵操作に基づいて発生する楽音の態様を、前記第1の鍵操作とは異なる第2の鍵操作に基づいて制御する制御情報を生成する制御情報生成部と、を含む。
【0006】
本開示の一態様に係る楽音発生装置は、複数の鍵と、前記複数の鍵のうち、いずれか鍵のうち、いずれかの鍵への第1の鍵操作に基づいた楽音を発生させるための発音情報を、生成する発音情報生成部と、前記第1の鍵操作に基づいて発生する楽音の態様を、前記第1の鍵操作とは異なる第2の鍵操作に基づいて制御する制御情報を生成する制御情報生成部と、前記発音情報と前記制御情報とに基づいて楽音を生成する楽音生成部とを含む。
【0007】
本開示の一態様に係る楽音情報生成方法は、複数の鍵のうち、いずれかの鍵への第1の鍵操作に基づいた楽音の発音情報を生成し、前記第1の鍵操作に基づいて発生する楽音の態様を、前記第1の鍵操作とは異なる第2の鍵操作に基づいて制御する制御情報を生成する。
【0008】
本開示の一態様に係るプログラムは、コンピューターを、複数の鍵のうち、いずれかの鍵への第1の鍵操作に基づいた楽音の発音情報を生成する発音情報生成部、および、前記第1の鍵操作に基づいて発生する楽音の態様を、前記第1の鍵操作とは異なる第2の鍵操作に基づいて制御する制御情報を生成する制御情報生成部として機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る楽音発生装置の構成を示す図である。
図2】楽音発生装置における制御装置で構築される機能ブロック図である。
図3】楽音発生装置で表示される鍵盤の例を示す図である。
図4】楽音発生装置における鍵操作の一例を示す図である。
図5】楽音発生装置における鍵操作の一例を示す図である。
図6】楽音発生装置における鍵操作の一例を示す図である。
図7】楽音発生装置の動作を示すフローチャートである。
図8】楽音発生装置の動作を示すフローチャートである。
図9】第2実施形態に係る楽音発生装置における楽音信号生成部を示す図である。
図10】楽音発生装置の動作を示すフローチャートである。
図11】楽音発生装置における鍵操作の一例を示す図である。
図12】楽音発生装置における鍵操作の一例を示す図である。
図13】楽音発生装置における鍵操作の一例を示す図である。
図14】鍵における検出領域の区分の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る楽音発生装置1の一例を示す図である。楽音発生装置1は、利用者Uによる鍵操作に応じて楽音を発生させ、当該楽音に付与する効果を、上記鍵操作とは異なる鍵操作に応じて制御する。
楽音発生装置1は、制御装置102と記憶装置104と鍵盤装置110とインターフェイス(IF)120と放音装置150とを具備するコンピューターシステムによって実現される。楽音発生装置1は、例えばスマートフォンやタブレット型のパーソナルコンピューター等の情報端末である。楽音発生装置1の各要素は、単体または複数のバスで相互に接続される。
【0011】
制御装置10は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の単数または複数の処理回路で構成され、楽音発生装置1における各要素を制御する。
記憶装置104は、例えば磁気記録媒体または半導体記録媒体等の公知の記録媒体で構成された単数または複数のメモリである。記憶装置104は、制御装置10が実行するプログラムと制御装置10が使用する各種のデータとを記憶する。なお、記憶装置104は、複数種の記録媒体の組み合わせにより構成されてもよい。また、記憶装置104は、楽音発生装置1に対して着脱可能な可搬型の記録媒体、または、図示省略した通信網を介して楽音発生装置1と通信可能な外部記録媒体(例えばオンラインストレージ)であってもよい。
【0012】
鍵盤装置110は、表示装置112と検出装置114とを組み合わせたタッチスクリーンである。具体的には、表示装置112は液晶表示パネルなどであり、検出装置114は表示装置112の画面表面に設けられて、利用者Uによる2点以上の操作の位置を検出して、操作された位置の位置情報D1を出力する。すなわち、楽音発生装置1では、表示装置112に表示された鍵盤装置の鍵を利用者Uが操作することで、当該鍵の操作に応じた楽音が発生する。
なお、楽音発生装置1で発生させる楽音は、ピアノやオルガンなどの鍵盤楽器に限られず、ギター、トランペットなどの様々な楽器の音色を発生させることが可能であり、さらに後述するように様々な効果を付与することが可能である。このため、演奏時に鍵盤装置110が表示される表示装置112では、演奏前の設定モードにおいて各種のスイッチ等が表示されて、楽音の音色や、付与する効果の種類などが利用者Uによって設定される。
【0013】
インターフェイス(I/F)120は、外部機器と通信するために用いられる。なお、外部機器とは、MIDI機器や、上記通信網を介したオンラインストレージ、サーバーなどである。
放音装置150は、制御装置10が生成する楽音信号A2を、音響に変換するスピーカーまたはヘッドホンである。実際には、楽音信号A2が、図示省略されたD/A変換器によるアナログ変換および増幅器による増幅を経て、放音装置150によって音響に変換される。なお、放音装置150は、楽音発生装置1とは別の装置として設けてもよい。
【0014】
図2は、制御装置10が記憶装置104に記憶されたプログラムを実行することにより実現される機能構成を示す図である。制御装置10では、表示制御部11、判定部12、発音情報生成部13、制御情報生成部14および楽音信号生成部15が構築される。
【0015】
表示制御部11は、表示装置112の表示内容を制御する。
具体的には、表示制御部11は、演奏時では表示装置112に、鍵盤を表示させるとともに、鍵盤の鍵が操作された場合には、例えば該操作に応じて鍵が押下されたかのように表示させる。また、表示制御部11は、演奏前では表示装置112に、各種の設定のためのスイッチ等を表示させる。
【0016】
判定部12は、演奏時であれば、位置情報D1で示される操作の位置と、表示制御部11によって表示装置112に表示させた鍵盤とを比較して、表示された鍵盤のうち、どの部分が操作されたのかを判定して、当該判定結果に応じて発音情報生成部13および制御情報生成部14を制御する。
便宜的に、表示装置112において表示される鍵盤について説明する。
【0017】
図3は、表示装置112に表示された鍵盤装置110の一部を示す図である。鍵盤装置110は、複数の鍵を有する。鍵盤装置110における各鍵への操作を検出するにあたって、検出領域が次のように2つに区分される。詳細には、白鍵の検出領域については、鍵の先端側(利用者Uの側、図において下側)における第1領域Waと鍵の根元側(図において上側)における第2領域Wbとに区分される。同様に、黒鍵の検出領域は、鍵の手前側における第1領域Baと鍵の根元側における第2領域Bbとに区分される。
【0018】
第1領域Waへの鍵操作としてのタッチは、当該タッチされた白鍵についての発音を指定する。当該白鍵における第2領域Wbへのタッチは、当該発音への効果付与を指定し、第2領域Wbにおけるスライドは、当該効果の制御を指定する。なお、スライドとは、タッチを継続した状態で当該タッチ位置を移動させることをいう。このため、スライドは、効果の内容を規定する効果パラメータの値を、タッチ位置に応じて増減させる操作となる。
黒鍵についても同様であり、第1領域Baへのタッチは、当該タッチされた黒鍵についての発音を指定し、第2領域Bbへのタッチは、当該発音への効果付与を指定し、第2領域Bbへのスライドは、当該効果の制御を指定する。
なお、ある鍵について第1領域WaまたはBaへのタッチを解除する鍵操作としてのリリースは、当該鍵における消音を指定し、ある鍵について第2領域WbまたはBbからのリリースは、当該鍵においてなされた発音への効果付与の停止を指定する。
【0019】
鍵操作による発音と効果付与とについて、具体的に説明すると、楽音発生装置1において、例えば図4に示されるように、鍵盤装置110のうち、鍵Eの第1領域Waへのタッチは、鍵Eに対応した発音を指定する。
図5に示されるように、鍵Eの第1領域Waがタッチされた状態で当該鍵Eの第2領域Wbへのタッチは、設定モードで設定された効果を、当該鍵Eの発音に対して付与することを指定する。なお、図の例では、鍵Eに対する第1領域Waへのタッチは左手の指によってなされ、第2領域Wbへのタッチは右手の指によってなされているが、左右いずれかの手の異なる指で同時にタッチしてもよい。
図6に示されるように、当該鍵Eの第2領域Wbにおけるスライドは、当該スライドの変化方向およびタッチ位置に応じてパラメータの増減を指定する。
【0020】
なお、図4乃至図6については白鍵への鍵操作で説明したが、黒鍵への鍵操作についても同様である。
また、表示装置112に表示された鍵は物理的に押下することができないので、ここでいう鍵操作のうち、発音を指定する操作については鍵へのタッチとしている。ただし、楽音発生装置1に適用される鍵盤装置110は、後述するように表示装置112による表示に限られない。
【0021】
説明を再び図2に戻すと、判定部12は、位置情報D1で示される操作の位置が第1領域WaまたはBaで発生したと判定すれば、発音情報生成部13を制御する。一方、判定部12は、位置情報D1で示される操作の位置が第2領域WbまたはBbで発生したと判定すれば、制御情報生成部14を制御する。
【0022】
発音情報生成部13は、当該操作された鍵に対応して発音または消音させるために必要な発音情報E2を出力する。なお、消音については、発音の一態様であるので、発音に含まれる。
発音情報E2には、発音の指定であれば、鍵がタッチされて発音の指定を示すノートオン情報と、当該鍵の音高を示すノート番号情報と、音の大きさを示すベロシティ情報とが含まれる。また、発音情報E2には、消音の指定であれば、ノートオフ情報とノート番号情報とが含まれる。
【0023】
鍵が物理的に揺動する一般的な鍵盤装置では、押鍵速度を反映させてベロシティ情報を出力することができるが、表示装置112に表示された鍵は物理的に押下できないので、ベロシティ情報としては、設定モードで設定された値を出力する。なお、押鍵速度を検出することができる鍵盤装置であれば、検出した押鍵速度を反映してベロシティ情報を出力してもよい。
【0024】
制御情報生成部14は、タッチまたはタッチの継続であるスライドに応じた効果を付与するための制御情報E3を出力する。
例えば、効果が発音後の音高(ピッチ)を変化させるピッチベンドであれば、制御情報E3は、音高の変化量を指定する値となる。効果が発音後の音量を小さくさせるミュートであれば、制御情報E3は、消音方向への変化(傾き)を指定する値となる。また、効果が発音後の音を歪ませるディストーションであれば、制御情報E3は、歪み量を指定する値となる。このように制御情報E3は、効果の種類に応じた値となる。
また、制御情報E3は、スライドに応じて時間的に変化する。
【0025】
楽音信号生成部15は、発音情報E2に基づいて楽音を発生等させるとともに、当該楽音に発音情報E2に基づいた効果を付与した楽音信号A2を生成する。なお、楽音信号A2は、楽音の波形を時系列で指定するデジタルデータである。
【0026】
なお、発音情報E2および制御情報E3については、インターフェイス120を介して外部機器に供給して、当該外部機器にて楽音を発生させるようにしてもよい。外部機器にて楽音を発生させる場合、楽音信号生成部15および放音装置150を楽音発生装置1に設けなくもよい。この場合、楽音発生装置1は、発音情報E2と制御情報E3とを出力する楽音情報出力装置として機能する。
【0027】
次に、楽音発生装置1の動作について説明する。
図7は、楽音発生装置1における押鍵等イベントの処理を示すフローチャートである。押鍵等イベントとは、鍵盤装置110における複数の鍵のいずれかを利用者Uがタッチしたことをいう。
押鍵等イベントが発生すると、判定部12は、当該イベントに係るタッチが第1領域WaまたはBaで発生したか否かを判定する(ステップSa11)。
当該タッチが第1領域WaまたはBaで発生すれば(ステップSa11の判定結果が「Yes」であれば)、当該タッチは発音の指定である。このため、判定部12は、発音情報生成部13を制御し、当該制御にしたがって発音情報生成部13は、タッチされた鍵に対応した発音のために必要な発音情報E2を出力する(ステップSa12)。これにより、楽音信号生成部15が発音情報E2に基づいて楽音信号A2を生成するので、当該楽音信号A2に基づいた発音が放音装置150(または外部機器)によってなされる。
【0028】
ステップSa12の後、または、当該タッチが第1領域Wa、Baで発生していないと判定されれば(ステップSa11の判定結果が「No」であれば)、判定部12は、当該タッチが第2領域WbまたはBbで発生または係属しているか否かを判定する(ステップSa13)。なお、スライドは、タッチが時間的に連続した状態であるので、ここでは、タッチに含まれる。
【0029】
第2領域WbまたはBbでタッチが発生すれば、または、タッチが係属していれば(ステップSa13の判定結果が「Yes」であれば)、当該タッチは、効果付与の指定または効果パラメータの変更の指定である。このため、判定部12は、制御情報生成部14を制御し、当該制御にしたがって制御情報生成部14は、効果を付与するための制御情報E3を出力する(ステップSa14)。詳細には、制御情報生成部14は、制御情報E3として、当該タッチがファーストタッチであれば、効果パラメータの初期値を出力し、当該タッチがスライドであれば、当該タッチ位置に応じて効果パラメータの値を出力する。なお、ここでいうファーストタッチとは、スライドであるか否かにかかわらず、時間的に最初のタッチをいう。また、当該タッチ位置が前回にステップSa14を実行したときの位置と変化していなければ、効果パラメータの値は変更されない。
これにより、楽音信号生成部15は、制御情報E3に基づいた効果を楽音信号A2に付与する。したがって、放音装置150(または外部機器)によって発生する楽音には、第2領域WbまたはBbでのタッチに応じた効果が付与される。
【0030】
ステップSa14の後、処理手順は、ステップSa13に戻る。したがって、第2領域WbまたはBbでタッチが係属し、かつ、当該タッチの位置が移動していれば、移動後のタッチ位置に応じて効果パラメータの値が変更される。
なお、第2領域WbまたはBbでのタッチが終了すれば(ステップSa13の判定結果が「No」であれば)、押鍵等イベントの処理が終了する。
【0031】
この押鍵等イベントにおいて、タッチが第1領域Wa、Baで発生すれば、当該タッチされた鍵に対応する楽音が生成され、タッチが第2領域Wb、Bbで発生すれば、当該タッチされた鍵に対応する楽音に、予め設定された効果が付与され、第2領域Wb、Bbのタッチ位置が移動すれば(スライドすれば)、ステップSa13およびSa14の循環によってスライドに応じて効果パラメータが増減する。
【0032】
図8は、楽音発生装置1において離鍵等イベントの処理を示すフローチャートである。離鍵等イベントとは、鍵盤装置110においてタッチされた鍵のいずれかを利用者Uがリリースしたことをいう。
離鍵等イベントが発生すると、判定部12は、当該イベントに係るリリースが第2領域WbまたはBbで発生したか否かを判定する(ステップSa31)。当該リリースが第2領域WbまたはBbで発生すれば(ステップSa31の判定結果が「Yes」であれば)、当該リリースは効果付与の終了の指定である。このため、判定部12は、制御情報生成部14に対して制御情報E3の出力を停止させる(ステップSa32)。これにより、楽音信号生成部15において制御情報E3に基づいた効果の付与が停止する。
【0033】
ステップSa32の後、または、当該リリースが第2領域WbまたはBbで発生していないと判定されれば(ステップSa31の判定結果が「No」であれば)、判定部12は、当該リリースが第1領域WaまたはBaで発生したかた否かを判定する(ステップSa33)。
【0034】
当該リリースが第1領域WaまたはBaで発生すれば(ステップSa33の判定結果が「Yes」であれば)、当該リリースは消音の指定である。このため、判定部12は、発音情報生成部13を制御し、当該制御にしたがって発音情報生成部13は、リリースされた鍵に対応した消音のために必要な発音情報E2を出力する(ステップSa34)。これにより、楽音信号生成部15が発音情報E2に基づいた消音を実行するので、それまでタッチされていた鍵の楽音が消音されることになる。
【0035】
ステップSa34の後、または、当該リリースが第1領域Wa、Baで発生していないと判定されれば(ステップSa33の判定結果が「No」であれば)、離鍵等イベントの処理が終了する。
【0036】
この離鍵等イベントによって、リリースが第2領域Wb、Bbで発生すれば、効果の付与が停止した状態で楽音の生成が継続し、リリースが第1領域Wa、Baで発生すれば、効果の付与にかかわらず、それまでタッチされていた鍵に対応する楽音の生成が停止する。
【0037】
第1実施形態に係る楽音発生装置1によれば、鍵盤装置110に対する発音のために操作する位置と、当該発音に付与する効果を制御するための位置とが、鍵盤装置とは別の操作子を設ける構成と比較して接近している。このため、利用者からすれば、発音と効果の制御とが容易となる。
また、第1実施形態に係る楽音発生装置1では、鍵盤装置110とは別に、利用者Uの指の位置を検出するための要素が不要であるので、装置全体が複雑化することもない。
【0038】
<第2実施形態>
第1実施形態に係る楽音発生装置1は、第1領域Wa、Baへのタッチによって発生させた楽音に、第2領域Wb、Bbへのタッチ等によって効果を付与して当該楽音に変化を与える。端的にいえば、第1実施形態に係る楽音発生装置1では、第1領域Wa、Baへのタッチが時間的に先であり、第2領域Wb、Bbへのタッチ等が時間的に後である。
第2実施形態に係る楽音発生装置1では、第2領域Wb、Bbへのタッチが時間的に先であり、第1領域Wa、Baへのタッチが時間的に後となっている。
【0039】
第2実施形態に係る楽音発生装置1では、制御装置10において構築される楽音信号生成部15が、第1実施形態と異なっている。このため、第2実施形態では、楽音信号生成部15を中心に説明する。
【0040】
なお、第2実施形態では、発生する楽音の音色としてギターが選択されたものとして説明する。また、第2実施形態では、ある鍵の第2領域Wb、Bbがタッチされた後に、当該鍵の第1領域Wa、Baがタッチされたとき、ハンマリング奏法の楽音を当該鍵の音高で発生させる一方、ある鍵の第2領域Wb、Bbがタッチされることなく、当該鍵の第1領域Wa、Baがタッチされたとき、ピッキング奏法の楽音を当該鍵の音高で発生させる。
ここで、ハンマリング奏法とは、ピックを使用しないで指の力のみで弦を叩いて楽音を発生させる奏法であり、ピッキング奏法(ピック奏法)とは、弦をピックで弾いて楽音を発生させる奏法である。ハンマリング奏法によって発生する楽音と、ピッキング奏法によって発生する楽音とは明確に差がある。第2実施形態では、同じ音色のギター音でありながら、鍵への操作の仕方によって両者奏法のいずれかの楽音を発生させる。
【0041】
図9は、第2実施形態に係る楽音信号生成部15の機能ブロックを示す図である。
制御装置10が記憶装置104に記憶されたプログラムを実行することによって、楽音信号生成部15では、波形記憶部M1、読出部M2およびピッチ変換部M3が構築される。
【0042】
波形記憶部M1は、ハンマリング奏法による波形データHmwと、ピッキング奏法による波形データPcwとを記憶する。波形データHmwは、例えば、ハンマリング奏法によるギター音を1周期分以上サンプリングしたデータであり、波形データPcwは、ピッキング奏法によるギター音を1周期分以上サンプリングしたデータである。波形データHmw、Pcwは、音色としてギターが選択されたときに、例えば記憶装置104からロードしたものが用いられる。
【0043】
読出部M2は、波形データHmwまたはPcwのいずれかを、発音情報E2および制御情報E3に基づいて選択して、選択した波形データを繰り返し読み出す。
ピッチ変換部M3は、読み出された波形データHmwまたはPcwのいずれかのピッチを、発音情報E2に含まれるノート番号情報に応じて変換して、楽音信号A2として出力する。
【0044】
図10は、第2実施形態に係る楽音発生装置1における押鍵等イベントの処理を示すフローチャートである。
押鍵等イベントが発生すると、判定部12(図2参照)は、当該イベントに係るタッチが第2領域WbまたはBbでタッチが継続していない状態で、第1領域WaまたはBaで発生したか否かを判定する(ステップSb11)。
この判定結果が「Yes」であれば、当該タッチは、ピッキング奏法による発音の指定である。このため、判定部12は、制御情報生成部14を制御し、当該制御にしたがって制御情報生成部14は、当該ピッキング奏法の予告を制御情報E3として出力する(ステップSb12)。これにより、楽音信号生成部15において、読出部M2は、波形記憶部M1から波形データPcwの読み出しを決定する。なお、実際に楽音信号A2を出力する処理は、後述するステップSb13で実行される。
【0045】
一方、ステップSb11の判定結果が「No」であれば、当該タッチは、第2領域WbまたはBbのみのタッチであるか、もしくは、第2領域WbまたはBbでタッチが継続した状態で第1領域WaまたはBaへのタッチであるか、のいずれかである。
このため、判定部12は、まず、当該イベントに係るタッチが第2領域WbまたはBbのみのタッチであるか否かを判定する(ステップSb14)。
【0046】
ステップSb14の判定結果が「Yes」であれば、当該タッチは、ハンマリング奏法による発音の予告ある。このため、判定部12は、制御情報生成部14を制御し、当該制御にしたがって制御情報生成部14は、当該ハンマリング奏法の予告を制御情報E3として出力する(ステップSb15)。これにより、楽音信号生成部15において、読出部M2は、波形記憶部M1から波形データPcwの読み出しを決定する。
【0047】
ステップSb14の判定結果が「No」であれば、当該タッチは、第2領域WbまたはBbでタッチが継続した状態で第1領域WaまたはBaへのタッチである、すなわち、ハンマリング奏法による発音の指定である。このため、処理手順は、発音処理であるステップSb13にスキップする。なお、ステップSb14の判定結果が「No」となる場合、前回の押鍵等イベントの処理のステップSb15において、読出部M2によって、波形データPcwを読み出すことがすでに決定されている。
【0048】
ステップSb12の後、または、ステップSb14の判定結果が「No」であれば、判定部12は、発音情報生成部13を制御し、当該制御にしたがって発音情報生成部13は、第1領域Wa、Baがタッチされた鍵に対応した発音のために必要な発音情報をE2として出力する(ステップSb13)。これにより、楽音信号生成部15では、読出部M2が決定済の波形データを読み出し、ピッチ変換部M3が読み出された波形データを発音情報E2に含まれるノート番号情報に対応するピッチに変換して、楽音信号A2として出力する。この楽音信号A2に基づいた発音が放音装置150(または外部機器)によってなされる。
【0049】
なお、ステップSb13またはSb15の後、押鍵等イベントの処理が終了する。
【0050】
第2実施形態では、ある鍵へのタッチが第2領域WbまたはBbのみで発生すれば、ハンマリング奏法の予告とみなし、波形データHmwの読み出しが決定され、一旦、押鍵等イベントの処理が終了する。
【0051】
一方、ある鍵へのタッチが第1領域WaまたはBaで発生したときに、第2領域WbまたはBbへのタッチがなければ、ピッキング奏法による発音がなされる(ステップSb12、Sb13)。
また、ある鍵へのタッチが第1領域WaまたはBaで発生したときに、すでに第2領域WbまたはBbへのタッチが継続していれば、前回の実行時に決定されたハンマリング奏法による発音がなされる。すなわち、1回目の押鍵等イベントにおいてステップSb14、Sb15の処理がなされ、2回目の押鍵等イベントにおいて、ステップSb14、Sb14の処理がなされる。
【0052】
なお、第2実施形態では特に離鍵等イベントについての詳細な説明は省略するが、第1領域WaまたはBaからのリリースであれば、発音の終了を指定する操作であるから、判定部12は、発音情報生成部13にノートオフ情報を出力させる。これにより、ステップSb15での発音が終了する。また、第1領域WaまたはBaへのタッチがなされることなく、第2領域WbまたはBbからのリリースについては、ハンマリング奏法の予告解除として、ピッキング奏法に切り替えてもよいし、解除することなく、ハンマリング奏法の予告継続としてもよい。
【0053】
第2実施形態によれば、鍵盤装置110への鍵操作によってピッキング奏法による楽音の発生とハンマリング奏法による楽音の発生とを切り替えることができる。
第2実施形態に係る楽音発生装置1においても、鍵盤装置110に対する発音のために鍵を操作する位置と、当該奏法による楽音の切り替えを指定するために鍵を操作する位置とが、別の操作子を設ける構成と比較して接近しているので、利用者からすれば、発音と、奏法による楽音の切り替えとが容易となる。
【0054】
なお、第2実施形態では、2つの奏法による楽音を切り替えて発生させたが、後述するように第2領域を2つ以上に区分することで、3つ以上の楽音を切り替えて発生させてもよい。例えば、第2領域の操作数が「1」であれば第1の波形データを用い、操作数が「2」であれば第2の波形データを用い、第3領域の操作数が「3」であれば第3の波形データを用いてもよい。
【0055】
また、奏法の切り替えは、第2領域にタッチしているか否かで判定したが、他の手法で切り替えてもよい。例えば、ある音高から別の音高に切り替える際に、ある音高の鍵の先端側の操作で発音させるとともに、その発音中に目標音高の鍵を操作することで音高が変化しつつ発音させるようにしてもよい。その際、目標音高の鍵の根元側をタッチしつつ、先端側を操作すると、音高が段階的に変化し、最初の発音の鍵の根元側と目標音高の鍵の根元側とを同時にタッチして、先端側を操作すると音高が無段階で連続的に変化するようにしてもよい。
【0056】
<変形例>
音色や効果については、実施形態で説明したものに限られない。管楽器や弦楽器など楽器の種類毎に、あるいは、グループ毎に、効果制御を選定してもよいし、選択可能な全音色に共通に効果制御を選定してもよい。すなわち、音色と効果制御との関係については任意である。
【0057】
検出装置114がタッチ位置に加えて、例えばタッチ位置における押圧力も検出することができれば、第2領域Wb、Bbでのタッチ位置のスライドに代えて、または、スライドとともに、押圧力に応じて効果パラメータの値を増減させてもよい。例えば図11に示されるように鍵Eにおける第2領域Wbの押圧力が小さい場合には、効果パラメータを小さくし、例えば図12に示されるように鍵Eにおける第2領域Wbの押圧力が大きい場合には、効果パラメータを大きくしてもよい。また、スライドと押圧量とを重み付けして効果パラメータの値を増減させてもよいし、スライドと押圧量とに別々の効果パラメータを割り当てて増減させてもよい。
なお、図11および図12では押圧力の大きさを、黒丸の大きさで示している。
【0058】
また、検出装置114がタッチ位置に加えて押圧力も検出するのであれば、第1領域Wa、Baへの操作についても、例えば、押圧力がしきい値以上となったときに押鍵タイミングとして検出してもよいし、押圧力のしきい値を、ファーストタッチから押鍵タイミングに至るまでの時間で除した値を押鍵速度として、ベロシティ情報に反映させてもよい。
【0059】
タッチ位置に加えて押圧力も検出するためには、例えば、タッチスクリーンの検出装置114を静電方式とする、あるいは、実際に押鍵が可能な鍵盤装置の第2領域Wb、Bbに、それぞれ1以上の感圧スイッチを配設する、第2領域Wb、Bbを検出範囲とする静電センサー、押圧センサーを設ける、など種々の方式が採用され得る。
【0060】
鍵の先端だけでなく、根元も押下する、いわゆるパンタグラフ式の昇降構造を有する鍵盤を用いて、鍵の先端側の押下を発音に用い、根元側の押下を効果等の制御に用いてもよい。
このように鍵の先端側の操作と根元側の操作とを区別できれば、鍵盤装置として種々の方式を用いることができる。
【0061】
また、発音を指定する鍵と、効果の指定制御する鍵とを別々の領域とに分けても良い。例えば図13に示されるように、低域側の鍵領域を発音用に割り当て、高域側の鍵領域を効果制御に割り当ててもよい。高域側において効果制御に割り当てられた複数の鍵には、別々の効果の指定を割り当ててもよいし、同じ効果について程度の大小を割り当ててもよい。
なお、図の場合、低域側の鍵Eが操作されれば、当該鍵Eに対応した発音がなされる一方で、高域側の鍵Dが操作されれば、当該鍵Dに割り当てられた効果が付与される。
また、発音を指定する鍵と、効果の指定制御する鍵とを別々の領域とに分ける場合、発生する楽音の楽器で発音帯域以外の鍵領域を、効果の指定制御に割り当ててもよい。
【0062】
第2領域については、さらに2以上に区分してもよい。例えば図14に示されるように、白鍵の第2領域を、先端側のWbおよび根元側のWcで2つに区分してもよいし、黒鍵の第2領域を、先端側のBbおよび根元側のBcで2つに区分してもよい。
2つに区分する場合、異なる効果を割り当ててもよい。例えば、先端側の第2領域Wb、Bbにピッチベンドに割り当て、根元側の第2領域Wc、Bcにミュートに割り当ててもよい。
【0063】
上述した実施形態では、単音発音の態様を制御する例を示したが、複数発音を可能としてもよい。具体的には押鍵等のタッチがある毎に、順次発音チャネルを割り当て、楽音を発生させ、離鍵等のリリースがある毎に、割り当てた発音チャネルを開放する構成としてもよい。
【0064】
また、自動伴奏の発音態様の制御に用いてもよい。例えばシングルフィンガーで和音を指定する際に、鍵の根元側をタッチすることで、特殊奏法による伴奏音を発音するように奏法を切り替えたり、伴奏発音中に鍵の根元をタッチすることでミュートの効果を付与したり、してもよい。
【0065】
上述した実施形態では、発音情報生成部と制御情報生成部とを分けて動作するものとしたが、操作する領域に応じて、態様の異なる楽音を発生する(音を重ねる)ようにしてもよい。例えば、ギターの音色であれば、第1領域への操作に応じてフレッドノイズを生成し、第2領域への操作に応じて本体のギター音を生成するようにしてもよい。また、フルートの音色であれば、第1領域への操作に応じてジェットノイズを生成し、第2領域への操作に応じて本体のフルート音を生成するようにしてもよい。
【0066】
<付記>
上述した実施形態等から、例えば以下のような態様が把握される。
【0067】
本開示の態様(第1態様)に係る楽音情報出力装置は、複数の鍵と、前記複数の鍵のうち、いずれかの鍵への第1の鍵操作に基づいた楽音を発生させるための発音情報を、生成する発音情報生成部と、前記第1の鍵操作に基づいて発生する楽音の態様を、前記第1の鍵操作とは異なる第2の鍵操作に基づいて制御する制御情報を生成する制御情報生成部と、を含む。
態様1によれば、楽音を発生させるための第1の鍵操作の位置と、発生する楽音の態様を制御するための第2の鍵操作の位置とは、複数の鍵の範囲内であり、楽音の態様を制御するために別の操作子を設ける構成と比較して接近している。したがって、利用者からすれば、発音のための操作と楽音の態様を制御するための操作とが容易となる。
なお、楽音の態様の制御については、典型的には、楽音に効果を付与することであるが、楽音の種類、例えば楽音の発生に必要なデータの切り替えも含まれる。また、発生する楽音の態様の制御については、実際に発生させた楽音を事後的に変化させる場合と、これから発生させる楽音の態様を、第2の鍵操作に応じて変化させる場合との2通りがある。
また、第1の鍵操作とは異なる第2の鍵操作には、第1の鍵操作と同じ鍵への操作であって操作位置が異なる場合と、第1の鍵操作と異なる鍵への操作の場合との2通りがある。第1の鍵操作と第2の鍵操作との時間的な先後は問われない。
上述の発音情報生成部と制御情報生成部の動作順序は問われない。
【0068】
第1態様の例(第2態様)において、前記第2の鍵操作は、前記第1の鍵操作の後に、前記鍵への操作量が時間的に変化する操作であり、前記制御情報生成部は、前記操作量の変化に応じて制御情報を生成する。この態様によれば、楽音の態様は、操作量が時間的に変化する操作に応じて制御されるので、利用者からすれば、楽音の態様の制御が容易となる。
なお、鍵への操作量とは、鍵に対する、相対的または絶対的な操作位置、押鍵のストローク量、押圧力などである。
【0069】
第1態様の例(第3態様)において、前記鍵は、操作者からみて手前の第1領域と、前記第1領域を除く第2領域とを含み、前記第1の鍵操作は、前記鍵の前記第1領域への押鍵操作であり、前記第2の鍵操作は、前記鍵の前記第2領域への操作である。この態様によれば、第2の鍵操作は、第1の鍵操作と同じ鍵への操作であるので、発音のための操作と楽音の態様を制御するための操作とが第1態様と比較してより容易となる場合がある。なお、押鍵操作には、利用者が鍵を実際に押下する操作のみならず、画面に表示された鍵をあたかも押下するかのような操作も含まれる。
【0070】
第1態様の例(第4態様)において、前記第2の鍵操作は、前記第2領域における操作量が時間的に変化する操作であり、前記制御情報生成部は、前記第1の鍵操作に基づいた楽音の態様を、前記第2領域における前記変化に応じて制御情報を生成する。
この態様によれば、第2の鍵操作は、第1の鍵操作と同じ鍵への操作であって、
当該鍵における第2領域におけるので、発音のための操作と楽音の態様を制御するための操作とが第1態様と比較してより容易となる場合がある。
【0071】
第1態様の例(第5態様)において、前記第2の鍵操作がなされる鍵は、前記第1の鍵操作がなされた鍵とは異なり、前記制御情報生成部は、当該第2の鍵操作に応じて制御情報を生成する。この態様によれば、第1の鍵操作がなされる鍵と、第2の鍵操作がなされる鍵とが異なる。このため、利用者からすれば、楽音を発生させるための鍵と、楽音の態様を制御するための鍵とを区別して操作することができる。
【0072】
本開示の態様(第6態様)に係る楽音発生装置は、複数の鍵のうち、いずれかの鍵への第1の鍵操作に基づいた楽音を発生させるための発音情報を、生成する発音情報生成部と、前記第1の鍵操作に基づいて発生する楽音の態様を、前記第1の鍵操作とは異なる第2の鍵操作に基づいて制御する制御情報を生成する制御情報生成部と、前記発音情報と前記制御情報とに基づいて楽音信号を生成する楽音信号生成部と、を含む。態様6によれば、態様1と同様に、利用者からすれば、発音のための操作と楽音の態様を制御するための操作とが容易となる。
【0073】
第6態様の例(第7態様)において、前記楽音信号生成部は、前記第2の鍵操作がなされた後に、前記第1の鍵操作がなされた場合、当該第1の鍵操作に基づいた楽音信号を第1の波形データに基づき生成し、前記第2の鍵操作がなされることなく、前記第1の鍵操作がなされた場合、当該第1の鍵操作に基づいた楽音信号を前記第1の波形データとは異なる第2の波形データに基づき生成する。
この態様によれば、第1の鍵操作および第2の鍵操作に基づいた楽音信号を、第1の鍵操作のみに基づいた楽音信号と異ならせることが可能となる。
【0074】
以上に例示した各態様の楽音情報出力装置は、楽音情報出力方法としても、また、当該楽音情報出力装置をコンピューターに実行させるプログラムとしても実現され得る。同様に、楽音発生装置は、楽音発生方法としても、また、当該楽音発生装置をコンピューターに実行させるプログラムとしても実現され得る。
なお、方法において、発音情報の生成と制御情報の生成とにおける時間的な先行は問われない、また、プログラムにおいて、発音情報生成部と制御情報生成部が機能する順序は問われない。
【符号の説明】
【0075】
1…楽音発生装置、10…制御装置、13…発音情報生成部、14…制御情報生成部、15…楽音信号生成部、104…記憶装置、110…鍵盤装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14