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特許7516750液体吸収性シート、液体吸収体、液体回収容器及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】液体吸収性シート、液体吸収体、液体回収容器及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/10 20060101AFI20240709BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20240709BHJP
   B65D 81/22 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B32B27/10
B41J2/17 201
B65D81/22
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019219404
(22)【出願日】2019-12-04
(65)【公開番号】P2021088105
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】樋口 尚孝
(72)【発明者】
【氏名】仲田 翔吾
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-171832(JP,A)
【文献】特開2019-171351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B41J 2/17
D04H 1/00-18/04
B65D 81/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル粉体結合素材によって繊維同士を結着させてなり、密度が、0.05g/cm3以上0.5g/cm3以下の紙シートに、高分子吸収体を担持させた液体吸収性シート。
【請求項2】
請求項1において、
前記紙シートの厚さは、0.13mm以上5.0mm以下である、液体吸収性シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記紙シートを構成する前記繊維の平均繊維長は、0.1mm以上7mm以下であり、前記繊維の平均太さは、0.5μm以上200.0μm以下である、液体吸収性シート。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記液体吸収性シートは、厚さ方向で前記高分子吸収体の含有量が異なる、液体吸収性シート。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
前記紙シートの厚さに対する前記高分子吸収体含有層の厚さの比が、0.01以上3.0未満である、液体吸収性シート。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
前記高分子吸収体は、前記液体吸収性シートに対して1.0質量%以上64.0質量%以下含有された、液体吸収性シート。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項において、
前記ポリエステル粉体結合素材は、熱可塑性樹脂であって、前記紙シートに対して5.0質量%以上30.0質量%以下含有された、液体吸収性シート。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項において、
前記液体吸収性シートは、前記紙シートと折り曲げられた当該紙シートとの間、又は、前記紙シートと、前記ポリエステル粉体結合素材によって繊維同士を結着させた他の紙シートと、の間、に前記高分子吸収体が配置された構造を有する、液体吸収性シート。
【請求項9】
請求項8において、
前記高分子吸収体が前記液体吸収性シートの端面に露出している、液体吸収性シート。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の液体吸収性シートを分断した小片の集合体で構成された、液体吸収体。
【請求項11】
請求項10において、
前記小片の長手方向の全長をL1[mm]、当該小片の一端と他端とを結ぶ端点間距離をL2[mm]としたとき、L2/L1の平均値が0.0よりも大きく0.95以下である、液体吸収体。
【請求項12】
請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の液体吸収性シート、及び、請求項10又は請求項11に記載の液体吸収体の一方又は両方と、
前記液体吸収性シート及び前記液体吸収体の一方又は両方を収容する容器と、
を含む、液体回収容器。
【請求項13】
液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドから吐出された液体を吸収する、請求項12に記載の液体回収容器と、を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吸収性シート、液体吸収体、液体回収容器及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターでは、通常、インクの目詰まりによる印刷品質の低下を防止するために実施されるヘッドクリーニング動作や、インクカートリッジ交換後のインク充填動作の際に、廃インクが発生する。このような廃インクを吸収するために、液体吸収体を収容した液体回収容器が用いられている。
【0003】
例えば特許文献1には、天然セルロース繊維及び/又は合成繊維と、熱融着性物質と、増粘性物質とを有し、マット化して加熱加圧によって形成された液体吸収体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平09-158024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された液体吸収体では、多孔質である吸収体の外形形状を、搭載する機種ごとにそれぞれ異なる容器形状に対応させて、形状加工する必要があり、さらに容器への充填作業が必要でプロセス加工のコストが大きかった。また、多孔質の吸収体を用いているため、上部から液体が導入された場合に吸収体の上層で液体が吸収停留されてしまい、後続する液体が下層へ浸透しにくくなることがあった(ブロッキング現象ということがある。)。さらに、液体の保水(吸収)量を増加させることを意図して、高分子吸収体を多孔質の吸収体に混合した場合においても、同様にブロッキングが発生し、吸い上げ性、浸透性、拡散性が損なわれ、吸収体の全体に液体が行き渡りにくく、吸収体の吸収能力を必ずしも十分に引き出しているとはいえなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液体吸収性シートの一態様は、
結合素材によって繊維同士を結着させてなり、密度が、0.05g/cm以上0.5g/cm以下の紙シートに、高分子吸収体を担持させたものである。
【0007】
上記液体吸収性シートの態様において、
前記紙シートの厚さは、0.13mm以上5.0mm以下であってもよい。
【0008】
上記液体吸収性シートのいずれかの態様において、
前記紙シートを構成する前記繊維の平均繊維長は、0.1mm以上7mm以下であり、前記繊維の平均太さは、0.5μm以上200.0μm以下であってもよい。
【0009】
上記液体吸収性シートのいずれかの態様において、
前記液体吸収性シートは、厚さ方向で前記高分子吸収体の含有量が異なってもよい。
【0010】
上記液体吸収性シートのいずれかの態様において、
前記紙シートの厚さに対する前記高分子吸収体含有層の厚さの比が、0.01以上3.0未満であってもよい。
【0011】
上記液体吸収性シートのいずれかの態様において、
前記高分子吸収体は、前記液体吸収性シートに対して1.0質量%以上64.0質量%以下含有されてもよい。
【0012】
上記液体吸収性シートのいずれかの態様において、
前記結合素材は、熱可塑性樹脂であって、前記紙シートに対して5.0質量%以上30.0質量%以下含有されてもよい。
【0013】
上記液体吸収性シートのいずれかの態様において、
前記液体吸収性シートは、前記紙シートと折り曲げられた当該紙シートとの間、又は、前記紙シートと、結合素材によって繊維同士を結着させた他の紙シートと、の間、に前記高分子吸収体が配置された構造を有してもよい。
【0014】
上記液体吸収性シートの態様において、
前記高分子吸収体が前記液体吸収性シートの端面に露出していてもよい。
【0015】
本発明に係る液体吸収体の一態様は、
上記いずれかの態様の液体吸収性シートを分断した小片の集合体で構成される。
【0016】
上記液体吸収体の態様において、
前記小片の長手方向の全長をL1[mm]、当該小片の一端と他端とを結ぶ端点間距離をL2[mm]としたとき、L2/L1の平均値が0.0よりも大きく0.95以下であってもよい。
【0017】
本発明に係る液体回収容器の一態様は、
上記いずれかの態様の液体吸収性シート、及び、上記いずれかの態様の液体吸収体の一方又は両方と、
前記液体吸収性シート及び前記液体吸収体の一方又は両方を収容する容器と、
を含む。
【0018】
本発明に係る画像形成装置の一態様は、
液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドから吐出された液体を吸収する、上記態様の液体回収容器と、を備えたものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る液体吸収性シートの断面の模式図。
図2】実施形態に係る液体吸収性シートの断面の模式図。
図3】実施形態に係る小片を模式的に示す斜視図。
図4】実施形態に係る液体吸収体を模式的に示す図。
図5】実施形態に係る液体回収容器を模式的に示す断面図。
図6】実施形態に係る液体回収容器を模式的に示す平面図。
図7】実施形態に係る画像形成装置を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0021】
1.液体吸収性シート
本実施形態の液体吸収性シートは、結合素材によって繊維同士を結着させてなり、密度が、0.05g/cm以上0.5g/cm以下の紙シートに、高分子吸収体を担持させたものである。
【0022】
1.1.紙シート
紙シートは、結合素材によって繊維同士を結着させてなる。以下結合素材及び繊維について述べる。
【0023】
1.1.1.結合素材
紙シートにおいて繊維を結着させる結合素材は、樹脂を含む。結合素材の成分である樹脂の種類としては、天然樹脂、合成樹脂のいずれでもよく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよい。また、水溶性樹脂のように水分を取り込むことでタック性を示す樹脂でもよい。結合素材の樹脂は、常温で固体である方が好ましく、熱によって繊維を結着することに鑑みれば熱可塑性樹脂がより好ましい。
【0024】
天然樹脂としては、ロジン、ダンマル、マスチック、コーパル、琥珀、シェラック、麒麟血、サンダラック、コロホニウム、でんぷんなどが挙げられ、これらを単独又は適宜混合したものが挙げられ、また、これらは適宜変性されていてもよい。
【0025】
また、合成樹脂のうち熱可塑性樹脂としては、AS樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、などが挙げられる。これらの樹脂は、単独又は適宜混合して用いてもよい。また、共重合体化や変性を行ってもよく、このような樹脂の系統としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン-アクリル系共重合樹脂、オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N-ビニル系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂等が挙げられる。
【0026】
紙シートにおける結合素材の外形形状は、特に限定されず、球状、円盤状、不定形等の形状であってもよい。紙シートを加圧、加熱して製造した場合には、つぶれた形状となっていてもよい。
【0027】
紙シートにおける結合素材を球と仮定した場合の好適な体積平均粒子径は、例えば、0.1μm以上1000.0μm以下が好ましく、より好ましくは1.0μm以上100.0μm以下である。
【0028】
結合素材は、色材、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム等を含有してもよい。また、結合素材は、その他の成分として、例えば、有機溶剤、界面活性剤、防黴剤・防腐剤、酸化防止剤・紫外線吸収剤、酸素吸収剤等を含有してもよい。
【0029】
結合素材は、紙シートに対して5.0質量%以上30.0質量%以下含有されることが好ましく、より好ましくは7.0質量%以上25.0質量%以下、さらに好ましくは9.0質量%以上20.0質量%以下である。
【0030】
紙シートにおける結合素材の含有量が、5質量%未満では繊維を結着させる力が不足する場合があり、また30質量%を超えると、結合素材の樹脂が繊維間に含侵することにより繊維間の空隙が少なくなって、液体の吸い上げ性が低下する場合がある。
【0031】
さらに、結合素材が疎水性の熱可塑性樹脂である場合には、高分子吸収体を担持たせるために紙シート上に塗布する水が吸収されにくくなり、紙シートの表面に保持されやすくなるので、高分子吸収体が散布されたときに、高分子吸収体が吸水してゲル化しやすくなり、紙シートへの高分子吸収体の担持性が向上することがある。
【0032】
1.1.2.繊維
紙シートは繊維を含み、繊維同士が上述の結合素材により結着されている。紙シートにおいて、結合素材により、1本の繊維内で結着されてもよいし、2本以上の繊維間が結着されてもよい。
【0033】
繊維としては、特に限定されず、広範な繊維材料を用いることができる。繊維としては、天然繊維(動物繊維、植物繊維)、化学繊維(有機繊維、無機繊維、有機無機複合繊維)などが挙げられ、更に詳しくは、セルロース、絹、羊毛、綿、大麻、ケナフ、亜麻、ラミー、黄麻、マニラ麻、サイザル麻、針葉樹、広葉樹等からなる繊維や、レーヨン、リヨセル、キュプラ、ビニロン、アクリル、ナイロン、アラミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリイミド、炭素、ガラス、金属からなる繊維が挙げられ、これらを単独で用いてもよいし、複数であってもよい。また、湿式離解、乾式解繊、精製などを行った再生繊維であってもよい。
【0034】
紙シートに含まれる繊維は、セルロース繊維であることが好ましい。セルロース繊維は、親水性を有する材料であるため、液体吸収性シート100に液体が付与された場合に、当該液体と親和して、液体を保持したり、高分子吸収体21に液体を接触させたりすることがより容易である。
【0035】
また、セルロース繊維は、高分子吸収体21との親和性が高いため、繊維の表面に高分子吸収体21を担持させやすい。さらに、セルロース繊維は、再生可能な天然素材で、各種繊維の中でも、安価で入手が容易であるため、生産コストの低減、安定的な生産、環境負荷の低減等の観点からも有利である。なお、セルロース繊維とは、化合物としてのセルロースを主成分とし繊維状をなすものであればよく、セルロースの他に、ヘミセルロース、リグニンを含むものであってもよい。
【0036】
繊維の平均長さは、好ましくは0.1mm以上7.0mm以下であり、より好ましくは0.1mm以上5.0mm以下であり、さらにより好ましくは0.1mm以上3.0mm以下である。繊維の平均幅は、好ましくは0.5μm以上200.0μm以下であり、より好ましくは1.0μm以上100.0μm以下である。繊維の平均アスペクト比、すなわち平均幅に対する平均長さの比率は、好ましくは10以上1000以下であり、より好ましくは15以上500以下である。このような範囲であれば、高分子吸収体21の担持や、繊維による液体の保持、液体の高分子吸収体への接触をより好適に行うことができ、液体吸収性シート100の液体の吸収特性を向上できる。
【0037】
繊維は、独立した1本の繊維としたときに、その平均的な直径(断面が円でない場合には長手方向に垂直な方向の長さのうち、最大のもの、又は、断面の面積と等しい面積を有する円を仮定したときの当該円の直径(円相当径))が、平均で、1μm以上1000μm以下、好ましくは、2μm以上500μm以下、より好ましくは3μm以上200μm以下である。また、繊維の平均太さは、0.5μm以上200.0μm以下であることがより好ましい。
【0038】
繊維の太さ、長さは、例えばファイバーテスター(Lorentzen & Wettre社製)により測定することができる。
【0039】
紙シートは、結合素材及び繊維以外の物質を含んでもよい。そのような物質としては、例えば、色材、凝集抑制剤、難燃剤、等が挙げられる。凝集抑制剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム等からなる平均粒径が0.001μm~1.0μm程度の、いわゆるナノパーティクルを例示できる。
【0040】
また、難燃剤としては、例えば、水平燃焼試験 (IEC60695-11-10 A法、ASTM D635)による規格UL94 HB相当を満足するために、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、ホウ素系難燃剤、シリコン系難燃剤、窒素含有化合物、水酸化アルミニウム等の水和金属系化合物を用いることができる。また、不燃性の無機物である炭酸カルシウム等、公知の物質も用いることができる。難燃剤を含む場合は、紙シートに対して5.0質量%以上30.0質量%以下が良好であり、より好ましくは7.0質量%以上25.0質量%以下、さらに好ましくは9.0質量%以上20.0質量%以下である。
【0041】
1.1.3.紙シートの密度
本実施形態の液体吸収性シートに用いられる紙シートは、密度が、0.05g/cm以上0.5g/cm以下である。紙シートの密度は、0.1g/cm以上0.45g/cm以下であることがより好ましく、0.15g/cm以上0.4g/cm以下であることがさらに好ましい。
【0042】
紙シートの密度が0.05g/cm未満であると、紙としての強度が不足する場合がある。また、紙シートの密度が0.5g/cmを超えると、繊維間や結合素材間の離間距離が小さくなるので、紙シート中の液体の移動が阻害されやすくなり、紙シート中を液体が拡散する速度が小さくなる。また、紙シートの密度が0.5g/cmを超えると、液体中に顔料や樹脂粒子などの固体が含まれている場合などに、隙間により形成される毛細管のような構造が閉塞して、いわゆるブロッキングを生じやすくなる。なお、本明細書では、紙シート中を液体が拡散する性質を「導液性」ということがある。
【0043】
1.1.4.紙シートの厚さ
紙シートの厚さは、特に限定されないが、0.13mm以上5.0mm以下であることが好ましい。紙シートの厚さは、0.2mm以上3.0mm以下であることがより好ましく、0.3mm以上2.0mm以下であることがさらに好ましい。紙シートの厚さが、上記範囲にあることで、一層優れた導液性を得ることができる。
【0044】
1.2.高分子吸収体
本実施形態の液体吸収性シートは、上記の紙シートに高分子吸収体が担持されている。高分子吸収体は、吸液性を有するSAP(Super Absorbent Polymer)である。吸液とは、周囲の水分子等の液体を取り込んで保持する機能をいう。高分子吸収体は、吸液することによってゲル化してもよい。具体的には、高分子吸収体は、液体中の水や親水性のある有機溶剤等を吸収する。
【0045】
高分子吸収体としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、澱粉-アクリル酸グラフト共重合体、澱粉-アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体、イソブチレンとマレイン酸との共重合体等、アクリロニトリル共重合体やアクリルアミド共重合体の加水分解物、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリスルホン酸系化合物、ポリグルタミン酸や、これらの塩、変性体、架橋体などが挙げられる。
【0046】
高分子吸収体としては、酸基を有する樹脂が好ましい。酸基としては、カルボキシル基、スルフォン酸基、リン酸基等が挙げられる。これらの酸基の中でも、カルボキシル基を有するものが製造、入手が容易な点でより好ましい。
【0047】
カルボキシル基を有する樹脂としては、側鎖にカルボキシル基を有する重合体が挙げられ、かかる重合体を得るためのモノマー単位としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、フマル酸、ソルビン酸、ケイ皮酸やこれらの無水物、塩等の単量体から誘導されるものなどが挙げられる。本実施形態の高分子吸収体は、これらのモノマー単位を含む重合体からなることが好ましい。
【0048】
高分子吸収体に酸基が含まれる場合、中和の塩の種類は、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニア等の含窒素塩基性物の塩などが挙げられるが、中でもナトリウム塩が好ましい。
【0049】
高分子吸収体は、ポリ(メタ)アクリル酸塩共重合体又はポリ(メタ)アクリル酸重合架橋体を含有することが好ましい。ポリ(メタ)アクリル酸塩共重合体及びポリ(メタ)アクリル酸重合架橋体において、分子鎖を構成する全構成単位に占めるカルボキシル基を有するモノマー単位の割合は、好ましくは50mol%以上であり、より好ましくは80mol%以上であり、さらにより好ましくは90mol%以上である。
【0050】
高分子吸収体の市販品としては、株式会社日本触媒製の商品名「アクアリックCA」、「アクアリックCS」及びそのシリーズ、三洋化成工業株式会社製の商品名「サンウェット」、「サンフレッシュ ST-500MPSA」及びそのシリーズ、BASFジャパン株式会社製の商品名「Hysorb」シリーズ、エボニックジャパン株式会社製の商品名「FAVOR」シリーズ、株式会社エス・エヌ・エフ製の「AQUASORB」シリーズ等が挙げられる。
【0051】
高分子吸収体の外形形状は、例えば、球状、鱗片状、針状、繊維状、粒子状等、いかなる形状をなしていてもよいが、その大半が粒子状をなしていることが好ましい。高分子吸収体が粒子状をなしている場合には、液体の浸透性を容易に確保することができる。また、粒子状であれば紙シートに対して水を付与した後に降りかける等により。繊維に高分子吸収体をより担持させ易くなる。
【0052】
高分子吸収体の粒子の平均粒子径は、好ましくは15.0μm以上800.0μm以下であり、より好ましくは15.0μm以上400.0μm以下であり、さらにより好ましくは15.0μm以上50.0μm以下である。高分子吸収体の平均粒子径やその分布は、必要に応じて定法による粉砕、分級によって調節してもよい。
【0053】
なお、粒子の体積平均粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定できる。かかる装置によれば体積平均の粒度MVD(Mean Volume Diameter)の値を得ることができる。
【0054】
高分子吸収体は、液体吸収性シートに対して1.0質量%以上64.0質量%以下含有(担持)されることが好ましい。また、高分子吸収体の含有量は、液体吸収性シートに対して2.5質量%以上40.0質量%以下がより好ましく、5.0質量%以上30.0質量%以下がさらに好ましい。高分子吸収体の担持量は、液体吸収性シートの構造によらず上記範囲であることが好ましい。
【0055】
1.3.液体吸収性シートの構造
図1は、実施形態に係る液体吸収性シート100の断面を示す模式図である。液体吸収性シート100は、繊維11同士が結合素材12により結着されて構成された紙シート10と、高分子吸収体21とを含む。
【0056】
液体吸収性シート100では、一対の紙シート10の間に、複数の高分子吸収体21が配置されている。複数の高分子吸収体21は、集合となって高分子吸収体含有層20を形成している。換言すると、液体吸収性シート100は、2枚の紙シート10の間に高分子吸収体含有層20が形成されている。このように液体吸収性シート100では、2枚の紙シート10の間に高分子吸収体21が担持されている。
【0057】
上述したように、紙シート10の密度は比較的小さい。そのため、高分子吸収体21は、紙シート10内に一部入り込んだ状態で配置されてもよい。高分子吸収体21がこのような配置をとる場合には、紙シート10と高分子吸収体含有層20との間の境界が不明確となることがある。しかし、その場合であっても、液体吸収性シート100は、厚さ方向で高分子吸収体21の含有量が異なっていると言える。換言すると、液体吸収性シート100を平面に展開した場合に、液体吸収性シート100の高さ方向において、高分子吸収体21の存在量が変化している。
【0058】
液体吸収性シート100では、高分子吸収体21の含有量は、厚さ方向の中央付近で最大となり、液体吸収性シート100の表面近傍及び他方の表面近傍で小さくなっている。
【0059】
また、本明細書では、液体吸収性シート100を平面に展開した場合に、平行な仮想平面で液体吸収性シート100の厚さ方向を切った場合に、高分子吸収体21が当該平面に接触する範囲(厚さ方向の領域)を高分子吸収体含有層20と定義する。したがってこの場合、高分子吸収体含有層20と、紙シート10との境界面は、高分子吸収体21が紙シート10に入り込んだ場合の、最も深くまで入り込んだ先端を通る平面である。
【0060】
液体吸収性シート100においては、紙シート10の厚さに対する高分子吸収体含有層20の厚さの比は、0.01以上3.0未満であることが好ましい。また、かかる比は、0.05以上2.5未満であることがより好ましく、0.1以上2.0未満であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、導液性及び吸液量を一層良好にできる。
【0061】
液体吸収性シート100のようなサンドイッチ構造は、2枚の紙シート10で高分子吸収体含有層20を挟んで形成してもよいし、1枚の紙シート10を折って高分子吸収体含有層20を挟んで形成してもよい。換言すると、液体吸収性シート100は、紙シート10と折り曲げられた当該紙シート10との間、又は、紙シート10と、結合素材によって繊維同士を結着させた他の紙シート10と、の間、に高分子吸収体21が配置された構造を有してもよい。
【0062】
液体吸収性シート100において、高分子吸収体21は、液体吸収性シート100の端面に露出することがより好ましい。すなわち液体吸収性シート100の端部は、2枚の紙シート10が密着することによって閉じられておらず、2枚の紙シート10の間に間隙を有する。そして、かかる間隙を液体吸収性シート100に平行な方向から見た場合に、高分子吸収体21を視認することができるように形成することがより好ましい。本明細書では、液体吸収性シート100の端面を見た場合に高分子吸収体21を視認できるような状態を、「高分子吸収体が液体吸収性シートの端面に露出している」と表現する。
【0063】
高分子吸収体21が露出する液体吸収性シート100の端面は、液体吸収性シート100を平面的に見た場合の周縁の少なくとも一部であればよく、周縁全部の端面であってもよいし、周縁の一部の端面であってもよい。
【0064】
高分子吸収体21が液体吸収性シート100の端面に露出していることにより、液体吸収性シート100に、吸収の対象とする液体が付与された場合に、高分子吸収体21に対して直接、当該液体を接触させることができる。これにより、液体吸収性シート100による液体の吸収性をさらに高めることができる。
【0065】
液体吸収性シート100の厚さは、好ましくは0.3mm以上12.0mm以下であり、より好ましくは1.0mm以上10mm以下である。
【0066】
図2は、実施形態に係る液体吸収性シート110の断面を示す模式図である。液体吸収性シート110においても、液体吸収性シート100と同様に、繊維11同士が結合素材12により結着されて構成された紙シート10と、高分子吸収体21とを含む。
【0067】
液体吸収性シート110では、1枚の紙シート10に、複数の高分子吸収体21が担持されている。複数の高分子吸収体21は、集合となって高分子吸収体含有層20を形成している。換言すると、液体吸収性シート110は、1枚の紙シート10の片側に高分子吸収体含有層20が積層されている。
【0068】
液体吸収性シート110においても、紙シート10の密度は比較的小さいため、高分子吸収体21は、紙シート10内に一部入り込んだ状態で配置されてもよい。液体吸収性シート110においても、厚さ方向で高分子吸収体21の含有量が異なっている。換言すると、液体吸収性シート110を平面に展開して配置した場合に、液体吸収性シート110の高さ方向において、高分子吸収体21の存在量が変化している。
【0069】
液体吸収性シート110では、高分子吸収体21の含有量は、厚さ方向の一方の表面近傍で最大となり、液体吸収性シート110の他方の表面近傍で最小となっている。
【0070】
液体吸収性シート110のように、片側面に高分子吸収体含有層20を有する態様では、紙シート10の厚さに対する高分子吸収体含有層20の厚さの比は、0.01以上2.0未満であることが好ましい。また、かかる比は、0.03以上2.0未満であることがより好ましく、0.05以上1.5未満であることがさらに好ましい。このようにすれば、高分子吸収体21をより安定して担持することができる。
【0071】
液体吸収性シート110の厚さは、好ましくは0.15mm以上6.0mm以下であり、より好ましくは0.5mm以上5.0mm以下である。
【0072】
1.4.小片
液体吸収性シート100の平面的な大きさは特に限定されない。液体吸収性シート100の平面的な大きさは、例えば、A4サイズであってもよい。液体吸収性シート100の平面的な大きさは、液体吸収性シート100を、はさみ、シュレッダー等により、細かく裁断・粗砕・粉砕したり、手で細かく千切ったりした後のサイズであってもよい。本明細書では、液体吸収性シート100を切る、千切るなどして、小さく分断された液体吸収性シート100を、「小片」と称することがある。小片は、液体吸収性シート100の一態様である。
【0073】
図3は、液体吸収性シートの一態様である小片130を模式的に示す斜視図である。図3において、小片130の紙シート10は、図が煩雑となることを避けるために一部の側面を除き、繊維11、結合素材12の図示を省略し、巨視的な輪郭だけが描かれている。
【0074】
小片は、液体吸収性シート100を、はさみ、カッター、ミル、シュレッダー等により、細かく裁断・粗砕・粉砕したり、手で細かく千切ったりして形成できる。小片の紙シート10、高分子吸収体含有層20(高分子吸収体21)の配置や構造は、液体吸収性シート100と同様である。
【0075】
小片130においても、高分子吸収体21が液体吸収性シート100の端面に露出していることにより、小片130に、吸収の対象とする液体が付与された場合に、高分子吸収体21に対して直接、当該液体を接触させることができる。これにより、小片130による液体の吸収性をさらに高めることができる。
【0076】
小片130の長手方向の全長をL1[mm]、当該小片130の一端と他端とを結ぶ端点間距離をL2[mm]としたとき、L2/L1の平均値が0.0よりも大きく0.95以下であることが好ましい。また、L2/L1の平均値は、0.01以上0.90以下がより好ましく、0.05以上0.85以下がさらに好ましい。
【0077】
また、小片130は、可撓性を有する帯状であることが好ましい。これにより、小片130が変形し易く、容器に収容する場合などにおいて、取り扱いが容易となる。
【0078】
小片130の全長、すなわち長辺方向の長さは、好ましくは0.5mm以上200.0mm以下であり、より好ましくは1.0mm以上100.0mm以下であり、さらにより好ましくは2.0mm以上30.0mm以下である。
【0079】
小片130の幅、すなわち短辺方向の長さは、好ましくは0.1mm以上100.0mm以下であり、より好ましくは0.3mm以上50.0mm以下であり、さらにより好ましくは1.0mm以上10.0mm以下である。
【0080】
小片130の全長と幅とのアスペクト比は、好ましくは1以上200以下であり、より好ましくは1以上30以下である。小片130の厚さは、液体吸収性シート100と同様に、好ましくは0.3mm以上12.0mm以下であり、より好ましくは1.0mm以上10mm以下である。
【0081】
以上のような範囲であれば、高分子吸収体21の担持や、繊維11による液体の保持、液体の高分子吸収体21への送り込みを好適に行うことができ、液体に対して優れた吸収特性を示すことができる。
【0082】
1.5.液体吸収性シートの製造
上述のように、液体吸収性シートは、紙シートに対して高分子吸収体を担持させて製造される。製造方法の一例として、紙シートに水を付与し、当該水に濡れた紙シートに高分子吸収体を降りかけて乾燥するだけで製造することができる。これは、高分子吸収体に紙シートに付与した水が接触することで、高分子吸収体の少なくともが膨潤し、粘着性を発現することによる。かかる粘着性により高分子吸収体と繊維とが粘着し、あるいは、高分子吸収体同士が粘着される。その後、水分を乾燥等により除去することにより、形成された粘着構造が維持されて残るので、紙シートに高分子吸収体を担持することができる。なお、紙シートへの高分子吸収体の担持は、水溶性樹脂等の接着性を有する物質を用いて行われてもよい。小片を形成する場合には、液体吸収性シートを、はさみ、カッター、ミル、シュレッダー等により、細かく裁断・粗砕・粉砕したり、手で細かく千切ったりして形成できる。
【0083】
2.液体吸収体
図4は、本実施形態の液体吸収体200を模式的に示す図である。液体吸収体200は、図4に示すように、複数の上述した小片130を有している。すなわち液体吸収体200は、小片130の集合体である。液体吸収体200に含まれる小片130の個数は複数であれば特に限定されないが、例えば、100以上、好ましくは200以上、より好ましくは500以上である。
【0084】
液体吸収体200には、全長、幅、アスペクト比、及び厚さのうちの少なくとも1つが同じ小片130が含まれていてもよいし、これらが全て互いに異なる小片130が含まれていてもよい。
【0085】
液体吸収体200を構成する複数の小片130は、規則的な形状をなしていることが好ましい。これにより、液体吸収体200のかさ密度にムラが生じ難くなり、液体の吸収特性にムラが生じることを抑制することができる。液体吸収体200において、規則的な形状をなす小片130の含有量は、液体吸収体200全体のうちの30質量%以上であり、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。
【0086】
液体吸収体200を構成する複数の小片130は、例えば、長手方向が互い揃わずに交差するよう、規則性を持たずに、空間的にランダムに配置されることが好ましい。このようにすれば、小片130同士の間に間隙が形成され易い。これにより、液体が、小片130間の間隙を通過したり、また、間隙が微小の場合、毛細管現象で濡れ広がったりすることができ、液体の通液性を確保することができる。例えば、液体吸収体200が容器に収容された場合に、容器内で下方に向かって流れる液体が途中で堰き止められることを抑制することができ、液体は、容器の底に向かって円滑に浸透することができる。
【0087】
また、容器に複数の小片130が空間的にランダムに収容されることにより、液体吸収体200全体として、液体と接触する機会が増えるため、液体吸収体200は、液体に対して優れた吸収特性を有することができる。また、液体吸収体200を容器に収容する際、小片130を無作為に容器に投入することができるため、当該作業を容易かつ迅速に行なうことができる。また、小片130は、変形し易いので、容器に複数の小片130からなる液体吸収体200を収容した際、液体吸収体200は、容器の形状に関わらず変形して無理なく収容され、容器への形状追従性が良好である。
【0088】
液体吸収体200のかさ密度は、好ましくは0.01g/cm以上0.5g/cm以下であり、より好ましくは0.03g/cm以上0.3g/cm以下であり、さらにより好ましくは0.05g/cm以上0.2g/cm以下である。これにより、液体の保持性及び浸透性を両立することができる。
【0089】
なお、液体吸収体200は、上記以外の材料を含んでいてもよい。このような材料としては、例えば、界面活性剤、潤滑剤、消泡剤、フィラー、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料等の着色剤、活性炭、難燃剤、流動性向上剤などが挙げられる。
【0090】
3.液体回収容器
実施形態に係る液体回収容器について、図面を参照しながら説明する。図5は、本実施形態に係る液体回収容器300を模式的に示す断面図である。図6は、実施形態に係る液体回収容器300を模式的に示す平面図である。なお、図5は、図6のI-I線断面図である。
【0091】
液体回収容器300は、図5及び図6に示すように、液体吸収体200と、容器としてのケース40と、蓋体30と、を備える。なお、便宜上、図5及び図6では、液体吸収体200を簡略化して図示している。また、図6では、チューブ506の図示を省略している。以下、各構成について説明する。
【0092】
3.1.ケース
ケース40は、上述した液体吸収体200を収容する容器である。ケース40には、図5に示すように、液体吸収体200が収容されている。ケース40は、例えば、四角形の平面形状を有する底部42と、底部42の各辺に沿って設けられた4つの側壁部44と、を有している。ケース40は、上部が開口された形状を有している。なお、底部42の平面形状は、四角形に限定されず、例えば、円であってもよい。
【0093】
ケース40の容積をV1とし、インクを吸収する前の液体吸収体200の総体積をV2としたとき、V1とV2との比V2/V1は、例えば、0.1以上0.7以下であり、好ましくは0.2以上0.7以下である。
【0094】
ケース40は、ケース40に内圧又は外力が作用した場合に、容積V1が10%以上変化しない程度の形状保持性を有するものであることが好ましい。これにより、ケース40は、液体吸収体200がインク等の液体を吸収して膨張することにより、液体吸収体200から力を受けても、ケース40の形状を維持することができる。そのため、ケース40の設置状態が安定し、液体吸収体200は、インク等の液体を安定して吸収することができる。
【0095】
ケース40の材質は、例えば、環状ポリオレフィンやポリカーボネート等の樹脂材料、アルミニウムやステンレス鋼等の金属材料である。
【0096】
3.2.蓋体
蓋体30は、ケース40の開口26を塞いでいる。蓋体30は、液体吸収体200を覆っている。液体吸収体200は、蓋体30とケース40の底部42に挟まれている。蓋体30の厚さは、好ましくは50μm以上5mm以下であり、より好ましくは100μm以上3mm以下である。図6に示す例では、蓋体30の平面形状は、長方形であるが、特に限定されない。
【0097】
蓋体30は、液体吸収体200側に凹んだ凹部32と、平面視において凹部32の周辺に設けられた周辺部34と、を有している。凹部32は、インクが排出される位置に設けられている。凹部32は、平面視において、例えば、蓋体30の中心を含む位置に設けられている。
【0098】
凹部32は、底部32a及び側壁部32bを有している。図示の例では、底部32aは、四角形の平面形状を有している。側壁部32bは、底部32aの各辺に沿って設けられている。蓋体30のインクが排出される位置には、該位置の少なくとも一部を囲むように側壁部32bが設けられている。側壁部32bは、底部32aに接続されている。チューブ506からインク等の液体を排出する際には、図5に示すように、チューブ506を、凹部32によって規定される空間に挿入して排出する。凹部32によって、液体が排出される際に泡が発生して外にこぼれることを抑制できる。凹部32は、界面活性剤の含有量が多く、泡が発生し易い液体に対して特に有効な形状となっている。
【0099】
周辺部34は、蓋体30の凹部32を除いた部分である。図6に示す例では、周辺部34は、平面視において、凹部32を囲んで設けられている。周辺部34と底部42との間に位置する液体吸収体200の厚さは、凹部32と底部42との間に位置する液体吸収体200の厚さよりも大きい。
【0100】
蓋体30には、液体が通過する貫通孔36が設けられている。貫通孔36は、蓋体30を厚さ方向に貫通している。蓋体30は、液体吸収体200と接している面30aと、面30aとは反対側の面30bと、を有している。貫通孔36は、面30aに設けられた開口36aから、面30bに設けられた開口36bまで貫通している。図5に示す例では、開口36a,36bは、形状及び大きさが互いに同じである。貫通孔36は、蓋体30の液体が排出される位置に設けられている。
【0101】
貫通孔36は、凹部32に設けられている。図示の例では、貫通孔36は、底部32a、側壁部32b、及び周辺部34に設けられている。貫通孔36の形状は、例えば、四角形であり、図示の例では、正方形である。なお、貫通孔36は、正方形に限定されず、長方形、三角形、五角形、六角形などの多角形や、円形、楕円形、六芒星等の星形などであってもよい。
【0102】
貫通孔36は、複数設けられている。貫通孔36の数は、特に限定されない。図6に示す例では、貫通孔36は、第1方向と、第1方向と直交する第2方向と、にマトリックス状に配列されている。
【0103】
蓋体30の材質は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロ二トリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリロ二トリル・スチレン(AS)、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSU)、ポリアセタール(POM)、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの樹脂材料である。
【0104】
なお、蓋体30は、ステンレス鋼線、鉄線、銅線などで構成された金属からなるメッシュ部材やパンチング部材であってもよい。また、蓋体30の面30a,30b及び貫通孔36の内面は、疎水処理がされていてもよい。これにより、蓋体30にインクが堆積することを防止することができる。
【0105】
上述した液体回収容器300は、上述の液体吸収体200がケース40(容器)に収容されているので、液体に対しても優れた吸収性能を有している。
【0106】
4.画像形成装置
次に、本実施形態に係る画像形成装置について、図面を参照しながら説明する。図7は、本実施形態に係る画像形成装置500を模式的に示す図である。
【0107】
画像形成装置500は、図7に示すように、例えば、液体としてのインクQを吐出する液体吐出ヘッド502と、液体吐出ヘッド502のノズル502aの目詰まりを防止するキャッピングユニット504と、キャッピングユニット504と液体回収容器300とを接続するチューブ506と、インクQをキャッピングユニット504から送液するローラーポンプ508と、インクQの廃液を回収する液体回収容器300と、を含む。
【0108】
液体吐出ヘッド502は、下方に向かってインクQを吐出するノズル502aを複数有している。液体吐出ヘッド502は、PPC(Plain Paper Copier)シート等のような図示しない記録媒体に対して移動しつつ、インクQを吐出して、印刷を施すことができる。
【0109】
キャッピングユニット504は、液体吐出ヘッド502が待機位置にあるときに、ローラーポンプ508の作動により、複数のノズル502aを一括して吸引して、ノズル502aの目詰まりを防止するものである。
【0110】
チューブ506は、キャッピングユニット504を介して吸引されたインクQを液体回収容器300に向かって通過させるものである。チューブ506は、例えば、可撓性を有している。
【0111】
ローラーポンプ508は、チューブ506の途中に配置されている。ローラーポンプ508は、ローラー部508aと、ローラー部508aとの間でチューブ506の途中を挟持する挟持部508bと、を有している。ローラー部508aが回転することにより、チューブ506を介して、キャッピングユニット504に吸引力が生じる。そして、ローラー部508aが回転し続けることにより、ノズル502aに付着したインクQを液体回収容器300まで送り込むことができる。インクQは、液体回収容器300に送り込まれ、廃液として吸収される。
【0112】
液体回収容器300は、画像形成装置500に対し着脱可能に装着されている。液体回収容器300は、画像形成装置500に装着された状態で、液体吐出ヘッド502から吐出されたインクQを吸収する。液体回収容器300は、いわゆる廃液タンクである。液体回収容器300のインクQの吸収量が限界に達したら、この液体回収容器300を、新たな未使用の液体回収容器300に交換することができる。
【0113】
なお、液体回収容器300のインクQの吸収量が限界に達したか否かについては、画像形成装置500の図示しない検出部によって検出されてもよい。また、液体回収容器300のインクQの吸収量が限界に達した場合には、その旨が、画像形成装置500に内蔵されたモニター等の報知部により報知されてもよい。
【0114】
上述した画像形成装置500は、液体回収容器300を含むので、液体の吸収性能が高く、液体に対しても優れた吸収性能を有している。
【0115】
5.実施例及び比較例
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下、「部」「%」は、特に記載のない限り、質量基準である。
【0116】
5.1.基材及び液体吸収性シート(実施例1~15、比較例1~3)
PPC用紙G80(トッパンフォームズ製)をターボミルT-250(フロイント・ターボ社製)で乾式解繊したのち、ポリエステル粉体結合素材(平均粒径10μm)が10重量%、リン・窒素化合物からなる粉体難燃剤(丸菱油化工業株式会社製 ノンネンR197-4)が20重量%となるような比率で気中混合し、メッシュベルト越しに吸引しながら目開き2mmの篩で篩って堆積させ、ウェブを作製した。このウェブを加熱プレスにて所定の密度になるように調整し、100℃60sで加熱して粉体結着樹脂を軟化させて繊維同士を固定した基材シート(紙シート)を作成した。
【0117】
A4サイズの基材シートに水2gを塗布し、高分子吸収体(SAP)(三洋化成ST-500MPSA)を目開き0.1mmの篩で均一に散布した。その後、SAP塗布面が内側になるように折り曲げ、基材作成時と同様のプレスによってSAPを担持させた液体吸収性シートを得た。各実施例および比較例の基材およびSAP層の構成は表1の通りである。
【0118】
5.2.吸い上げ高さの評価
吸上げ高さ評価として各試験片幅25mm×長さ100mmを鉛直に固定し、セイコーエプソン製顔料インク(セイコーエプソン社製のBK(ICXBK10)とC(ICXC10)とM(ICXM10)とY(ICXY10)とを3:1:1:1の質量比で混合した混合インク)に先端を浸したときの30分後の吸上げ高さを示す。吸い上げ高さは、主に液体吸収性シートの導液性の指標と考えられる。
【0119】
比較例1、2、3は基材シートの密度の範囲を確認する比較例である。比較例1は密度0.03と小さいため、繊維同士の結着が弱く、吸上げ評価において破断して形状を保持できなかった。比較例2はPPC用紙G80そのものであり、密度が0.7と高いため、吸上げ高さが3mmと非常に小さかった。また、比較例3のようにSAP層厚さが厚く、基材シートの厚さが薄い場合(基材とSAP層の厚み比3より大きい場合)には、基材に含浸したSAPがインクの浸透を阻害するために吸上げ高さが非常に小さくなった。
【0120】
また、比率0.01より小さくなる場合には、容器内での液体吸収量を確保するためのSAP量が不足する為、吸収体として不十分であった。
【0121】
したがってPPC用紙よりも吸上げ高さが大きく、かつ繊維間の結着により形状を保持できる密度0.05~0.5g/cm程度が良好であることが分かった。また、このときの基材の厚さは0.13mm~5mmであった。さらに、SAPの含有比率は液体吸収性シートの重量に対して5~64重量%であった。
【0122】
各実施例において基材シートのSAPを担持した面と反対側の面にはSAPは露出していない(図3等参照)SAPが基材シートに含侵し、反対面まで露出すると、基材シートを構成する繊維間の空隙がSAPで閉塞し、吸い上げ性が低下してしまう。したがって図1図3のようにSAPは基材シートの片側面表面のみに担持され、反対面までは露出しないのが良好である。
【0123】
【表1】
【0124】
5.3.評価方法及び評価基準
(容器内インク保持性評価方法及び判定基準)
(1)プリンター廃液吸収容器(以下、容器)を準備する。
(2)容器内容積をAmLとしたとき、
小片化した吸収体をBmm分(以下の式分)容器に投入して全体の重さ(M)を測定する。
B={(A×0.8)/100}×(180×180)
※180mm×180mm分の吸収体の必要枚数を計算
(3)容器内容積の80体積%分のインクを素早く投入して、インク投入後の重さ(T)を測定する。
(4)30分間放置する
(5)容器の開口部から未吸収のインクが漏れるように、容器を逆さにして吊り下げ、
1時間放置する。
(6)インクを保持した状態での容器の重さ(H)を測定する。
(7)上記の数値を用いて下記の値を算出する。
投入したインク量:T-B
保持したインク量:H-B
漏れたインク量:(T-B)-(H-B)
【0125】
判定基準は以下の通りである。評価結果を表1に記載した。
A:漏れたインクなし
B:漏れたインク量が投入したインク量の0~15wt%
C:漏れたインク量が投入したインク量の15~30wt%
D:漏れたインク量が投入したインク量の30wt%以上
【0126】
5.4.その他の評価
基材シートにおける結合素材の割合は5%未満では繊維の結着力が不足し、また30%より多いと樹脂の含侵により繊維間の空隙がなくなって吸い上げ性が低下するため、5%~30%が良好であり、より好ましくは7~25%、さらに好ましくは9~20%であった。
【0127】
また表1の各例ではPPC用紙であるG80を原料として解繊して用いたため、G80に填料として含まれる炭酸カルシウムが難燃性の向上に寄与していると考えられる。したがって、炭酸カルシウムを含まないバージンパルプを用いるよりもPPC用紙の古紙を原料とした方が添加する難燃剤を減らすことができると考えられる。
【0128】
また表1の各例の原料のPPC用紙であるG80を純水で離解した繊維と、基材シートを作製したのち、基材シートを純水で離解した繊維それぞれを繊維長分布測定器ファイバーテスター(L&W社製)にて平均繊維長を測定した。基材シートを作製した後の平均繊維長はG80の繊維の平均繊維長の94%の平均繊維長に低下していた。基材シートの繊維長の低下が大きいと、毛細管による吸上げ力が低下するため、基材の繊維長は解繊する前の紙の平均繊維長に対して50%~99%が良好であり、より好ましくは65~99%、さらに好ましくは75~99%である。
【0129】
5.5.実施例16
基材シートを作製する原料古紙として、セイコーエプソン製染料インクHSM-BKで印字duty5%のJIS X 6931のモノクロパターンを印字してある古紙を用いた基材シートを作製し、SAPを挟持した液体吸収性シートを作製したところ、吸上げ高さが5%向上した。これにより印字されたインクの浸透剤成分(グリコール類)によりインクが浸透しやすくできることが分かった。
【0130】
5.6.実施例17
シート状の液体吸収性シートとしての性能評価を行った。実施例16で作成した液体吸収性シートを長方形形状に切断し、水平の底面を有するパッド上に設置した。液体吸収性シートの一方の短辺付近に液体センサーを配置した。プリンター内でインク漏れが生じたことを想定して、液体吸収性シートの他方の端部付近に水系インクを滴下した。インクが滴下されると、基材シートを浸透して液体センサーの位置まで拡散(導液)し、インクの到達を検出できた。またSAP層が余分なインクを吸収したため、液体吸収性シートからインクがパッドに漏れることはなかった。
【0131】
基材シートに対するSAP層の厚さの比が0.01~3の液体吸収性シートで同様の結果が得られた。比較例として、厚さの比が0.02より小さい場合には、基材シートの厚みが厚くなったので、液体吸収性シートの厚さを薄くするために基材シートを押しつぶして試験した結果、基材シートの密度が0.5g/mを超えてしまい導液性が不十分であった。
【0132】
5.7.実施例18
実施例17と同様にして、シート状の液体吸収性シートとしての性能評価を行った。用いた液体吸収性シートは、SAPが基材シートの片面に担持されたものである。液体吸収性シートを長方形形状に切断し、水平の底面を有するパッド上に、基材シート側が上面(インク滴下面)、SAP面が下面になるように設置した。このとき、SAP面に水を塗布してゲル化させることでSAPによってパッドの底面に接着させることができた。そして液体吸収性シートの一方の短辺付近に液体センサーを配置して、実施例17と同様にして導液性を調べた。
【0133】
その結果、実施例17と同様の導液性が確認され、液体吸収性シートからインクがパッドに漏れることもなかった。
【0134】
5.8.実施例19
実施例15の吸収体シートを市販のシュレッダーで小片化し、小片の集合体を液体吸収体としてプリンターの廃液ボックスに充填した。このとき、各小片の切断面はSAPが露出しており、SAPを挟持している2枚の基材シート同士は直接接着されていなかった。上部から顔料インク廃液を滴下したところインクが断面からSAPに接液し、インク吸収性が良好であった。また基材の厚み方向および基材の平面方向にもインクが浸透することでインク吸収性が良好であった。
【0135】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成、を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0136】
10…紙シート、11…繊維、12…結合素材、20…高分子吸収体含有層、21…高分子吸収体、30…蓋体、30a,30b…面、32…凹部、32a…底部、32b…側壁部、34…周辺部、36…貫通孔、36a,36b…開口、40…ケース、42…底部、44…側壁部、46…開口、100,110…液体吸収性シート、130…小片、200…液体吸収体、300…液体回収容器、500…画像形成装置、502…液体吐出ヘッド、502a…ノズル、504…キャッピングユニット、506…チューブ、508…ローラーポンプ、508a…ローラー部、508b…挟持部
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図7