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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】積層体、包装袋及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240709BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240709BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240709BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B32B27/00 C
B32B27/40
B65D65/40 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020014380
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021120204
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】山田 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】上田 祐司
(72)【発明者】
【氏名】安海 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】石坂 公一
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-055162(JP,A)
【文献】特開2001-301833(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189092(WO,A1)
【文献】特開2008-155549(JP,A)
【文献】特開2018-008453(JP,A)
【文献】国際公開第2016/135213(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂として第一のポリエチレンのみを含み、融点Tmを有する第一の層と、
樹脂として第二のポリエチレンのみを含み、融点Tmを有する第二の層と、
前記第一の層と前記第二の層とを接着する、接着剤を含む接着層と、
からなる積層体であって、
前記第一の層及び前記第二の層は前記積層体の最表面にそれぞれ配置されており、
Tm-Tm≧24.0℃であり、
前記接着剤が、ウレタン系、酸変性ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、及びポリアミド系からなる群から選択される少なくとも一種であり、
前記第一の層と前記第二の層の合計の厚み100%に対する、前記第二の層の厚みの割合が50~90%であり、
前記第一のポリエチレンが高密度ポリエチレン(HDPE)であり、前記第二のポリエチレンが直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)であり、
前記積層体に含まれる全ての樹脂100質量%に対する、前記積層体に含まれるポリエチレンの質量の割合が90質量%以上である、積層体。
【請求項2】
前記第一の層が、前記第一のポリエチレンの延伸フィルムである請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記第二の層が、前記第二のポリエチレンの無延伸フィルムである請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記積層体がナイロンを含まない請求項1からのいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載の積層体を含む包装袋。
【請求項6】
液体収容用である請求項に記載の包装袋。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一項に記載の積層体をヒートシールする工程を含む、包装袋の製造方法。
【請求項8】
前記ヒートシールの温度が130℃以上である請求項に記載の包装袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、包装袋及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本においてPETボトルとプラスチック製容器包装は、環境保全の観点からリサイクルの対象となっている。PETボトルは通常樹脂としてPET(ポリエチレンテレフタレート)のみを含むため、リサイクルが容易であり、水平リサイクルが確立されている。一方、プラスチック製容器包装は通常複数種の樹脂を含むため、その分離が困難であり、得られる再生品の価値が低い。
【0003】
プラスチック製容器包装の再生品の価値を向上させる方法の一つとして、プラスチック製容器包装を構成する樹脂として単一の樹脂のみを用いる方法(モノマテリアル化)が挙げられる。該方法では、プラスチック製容器包装が樹脂として単一の樹脂のみを含むため、樹脂毎の分離が不要であり、容易にリサイクルを行うことができる。また、得られる再生品は純度が高いため、高い価値を有する再生品を提供することができる。
【0004】
一方、液体用詰替パウチ等の包装袋は、通常ヒートシールにおける接着層であるポリエチレン層と、耐熱性および耐ピンホール性を有するナイロン層と、必要に応じて香気バリア性を有するPET層とが積層された積層体で形成される。該積層体は、具体的にはポリエチレン層/ナイロン層、ポリエチレン層/PET層/ナイロン層等の層構成を有する。包装袋は、例えば該積層体のナイロン層側からシールバーをあて、シールバーの温度を上昇させて該ポリエチレン層を溶融させ、該積層体同士を接着させることで製造することができる。該包装袋はプラスチック製容器包装に該当するためリサイクルが行われるが、前述した再生品の価値向上の観点からモノマテリアル化が望まれる。
【0005】
例えば特許文献1から10には、樹脂としてポリエチレンを含む積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭64-51940号公報
【文献】特公平6-77135号公報
【文献】特開昭60-134852号公報
【文献】特開2018-8456号公報
【文献】特開2018-62072号公報
【文献】特開2018-62073号公報
【文献】特開2019-171860号公報
【文献】特開2019-171861号公報
【文献】特開2019-189333号公報
【文献】特開2019-189334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、モノマテリアル化の観点から、ポリエチレン層にナイロン層やPET層が積層された積層体を用いる代わりに、ポリエチレン層のみからなるフィルムを用いて包装袋を作製した。しかし、ヒートシールする際にシールバーの温度を上昇させると、シールバーがポリエチレン層の表面に融着したため、十分高い温度でヒートシールを行うことができず、シール部において十分なシール強度が得られなかった。また、シールバーがポリエチレン層の表面に融着したため、包装袋の外観不良が生じた。
【0008】
本発明は、ヒートシール性に優れ、かつ再利用に適した積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る積層体は、
樹脂として第一のポリエチレンのみを含み、融点Tm1を有する第一の層と、
樹脂として第二のポリエチレンのみを含み、融点Tmを有する第二の層と、
を含む積層体であって、
前記第一の層及び前記第二の層は前記積層体の最表面にそれぞれ配置されており、
Tm-Tm≧24.0℃である。
【0010】
本発明に係る包装袋は、本発明に係る積層体を含む。
【0011】
本発明に係る包装袋の製造方法は、本発明に係る積層体をヒートシールする工程を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ヒートシール性に優れ、かつ再利用に適した積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る積層体の一例を示す断面図である。
図2】本発明に係る積層体の他の一例を示す断面図である。
図3】本発明に係る包装袋の一例である液体用詰替パウチの例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[積層体]
本発明に係る積層体は、樹脂として第一のポリエチレンのみを含み、融点Tm1を有する第一の層と、樹脂として第二のポリエチレンのみを含み、融点Tmを有する第二の層と、を含む。前記第一の層及び前記第二の層は、前記積層体の最表面にそれぞれ配置されている。すなわち、前記第一の層は前記積層体の一方の最表面層であり、前記第二の層は前記積層体の他方の最表面層である。ここで、融点Tm1と融点Tmは、Tm-Tm≧24.0℃の関係を有する。
【0015】
本発明に係る積層体では、融点差が24.0℃以上である2つの層がそれぞれ最表面層として積層されている。高融点層である第一の層は高い耐熱性を有するため、第一の層に対してシールバーをあててヒートシールすることにより、シールバーの温度を上昇させてもシールバーとの融着を抑制することができ、高い温度でヒートシールを行うことができる。また、低融点層である第二の層は低い温度で溶融するため、第一の層から伝達される熱により容易に溶融し、十分なシール強度で接着を行うことができる。したがって、本発明に係る積層体はヒートシール性に優れる。また、第一の層および第二の層は樹脂としてポリエチレンのみを含むため、再利用に適しており、純度の高い高価値を有する再生品を提供することができる。
【0016】
本発明に係る積層体は、最表面層である第一の層及び第二の層を少なくとも含み、中間層として他の層を含んでもよい。他の層としては、積層体のリサイクル層、接着層、易接着層、印刷層、バリア層、易開封性付与層等の機能性層が挙げられる。また、機能性層は一層が複数の機能を有することができる。積層体は、これらの層を一種含んでもよく、二種以上含んでもよい。
【0017】
積層体を再利用する際に再生品の純度を向上させる観点から、積層体に含まれる全ての樹脂100質量%に対する、積層体に含まれるポリエチレンの質量の割合は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%である、すなわち積層体が樹脂としてポリエチレンのみを含むことが特に好ましい。なお、積層体はナイロンを含まないことができる。ナイロンとしては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12等が挙げられる。
【0018】
積層体は、樹脂以外に熱硬化性樹脂、金属、金属酸化物等の他の成分を含むことができる。しかしながら、積層体を再利用する際に再生品の純度を向上させる観点から、積層体100質量%に対する前記他の成分の含有量は5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0019】
積層体全体の厚みは、10~500μmであることが好ましく、50~200μmであることがより好ましい。積層体全体の厚み100%に対する、第一の層の厚みと第二の層の厚みの合計の割合は、1~100%であることが好ましく、5~100%であることがより好ましい。
【0020】
本発明に係る積層体の一例を図1に示す。図1に示される積層体は、第一のポリエチレンの延伸フィルムである第一の層1と、第二のポリエチレンの無延伸フィルムである第二の層2と、第一の層1と第二の層2とを接着する接着層3と、を有する。第一の層1の融点Tmは、第二の層2の融点Tmよりも24.0℃以上高い。なお、積層体を再利用する際に再生品の純度を向上させる観点から、接着層3の厚みは薄い方が好ましく、第一の層1と第二の層2とを直接接着できる場合には、接着層3は省略することが好ましい。
【0021】
本発明に係る積層体の他の一例を図2に示す。図2に示される積層体は、第一のポリエチレンの延伸フィルムである第一の層1と、第二のポリエチレンの無延伸フィルムである第二の層2と、積層体のリサイクル層4と、を有する。また、該積層体は、第一の層1とリサイクル層4、第二の層2とリサイクル層4の間に、それぞれ接着層3を有する。第一の層1の融点Tmは、第二の層2の融点Tmよりも24.0℃以上高い。図1に示される積層体と同様に、接着層3の厚みは薄い方が好ましく、第一の層1とリサイクル層4、第二の層2とリサイクル層4を直接接着できる場合には、接着層3は省略することが好ましい。なお、積層体は複数のリサイクル層4を有していてもよく、他の層をさらに有していてもよい。
【0022】
(第一の層)
本発明に係る第一の層は、樹脂として第一のポリエチレンのみを含む。すなわち、第一の層に含まれる樹脂は全て第一のポリエチレンであり、第一の層は第一のポリエチレン以外の他の樹脂を含まない。なお、第一のポリエチレンは複数種のポリエチレンを含んでもよい。また、本発明において「樹脂」とは、溶融押出成形加工が可能な熱可塑性樹脂をさす。
【0023】
第一のポリエチレンとしては、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン・α-オレフィン共重合体等が挙げられる。第一のポリエチレンは、これらのポリエチレンを一種含んでもよく、二種以上含んでもよい。これらの中でも第一のポリエチレンとしては、高い融点を有する観点から高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましい。第一のポリエチレンがHDPEを含む場合、第一のポリエチレン100質量%に対するHDPEの質量の割合は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。また、第一のポリエチレンはHDPEからなってもよく、HDPEとLLDPEからなってもよい。また、第一のポリエチレンは石油原料由来、植物原料由来、これらの混合物であってもよい。また、リサイクル材を含んでいてもよい。
【0024】
第一の層は、第一のポリエチレンの延伸フィルムであることが好ましい。第一のポリエチレンを延伸することで、第一の層の融点を上昇させることができる。また、延伸により耐ピンホール性(突刺強度)が向上するため、特に積層体を液体収容用の包装袋に使用する場合に好適である。延伸倍率としては、1.2~10倍が好ましく、2~6倍がより好ましい、また、延伸は一軸延伸であってもよく、二軸延伸であってもよい。
【0025】
第一の層の融点Tmは、第二の層の融点Tmよりも24.0℃以上高く、27.0℃以上高いことが好ましく、30.0℃以上高いことがより好ましい。融点差(Tm-Tm)が24.0℃以上であることにより、第一の層の耐熱性を向上させつつ、第二の層を低温で溶融させることができるため、ヒートシール性を向上させることができる。前記融点差の範囲の上限は特に限定されないが、例えば50.0℃以下であることができる。なお、本発明において層の融点は、JISK7121-1987に準拠し、DSC法にて昇温速度10℃/分の条件にて測定される値である。
【0026】
第一の層の融点Tmは、第二の層の融点Tmよりも24.0℃以上高ければ特に限定されないが、より高温でヒートシールを行うことができる観点から、Tmは130.0℃以上であることが好ましく、132.0℃以上であることがより好ましく、135.0℃以上であることがさらに好ましい。
【0027】
第一の層の厚みは、ヒートシール時における第二の層への熱伝導性向上の観点から、40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。第一の層の厚みの範囲の下限は特に限定されないが、例えば1μm以上であることができる。また、積層体全体の厚み100%に対する第一の層の厚みの割合は、ヒートシール時における第二の層への熱伝導性向上及び接着性向上の観点から、10~50%であることが好ましく、15~45%であることがより好ましい。20~40%であることがさらに好ましい。
【0028】
第一の層は、第一のポリエチレン以外にも、例えば滑剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤等の通常ポリエチレン系フィルムに使用される添加剤を、樹脂以外の他の成分として含むことができる。しかし、第一の層100質量%に対する第一のポリエチレンの質量の割合は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%、すなわち第一の層が第一のポリエチレンからなることが特に好ましい。
【0029】
第一の層の表面には、リサイクル工程において除去可能なインキにより印刷が施されていてもよい。
【0030】
(第二の層)
本発明に係る第二の層は、樹脂として第二のポリエチレンのみを含む。すなわち、第二の層に含まれる樹脂は全て第二のポリエチレンであり、第二の層は第二のポリエチレン以外の他の樹脂を含まない。なお、第二のポリエチレンは複数種のポリエチレンを含んでもよい。また、第二のポリエチレンは、第一のポリエチレンと異なる種類のポリエチレンであってもよく、同じ種類のポリエチレンであってもよい。
【0031】
第二のポリエチレンとしては、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン・α-オレフィン共重合体等が挙げられる。第二のポリエチレンは、これらのポリエチレンを一種含んでもよく、二種以上含んでもよい。これらの中でも第二のポリエチレンとしては、低い融点を有する観点から直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。第二のポリエチレンがLLDPEを含む場合、第二のポリエチレン100質量%に対するLLDPEの質量の割合は、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。また、第二のポリエチレンはLLDPEからなってもよく、LLDPEとLDPEからなってもよい。第二のポリエチレンがLLDPEとLDPEからなる場合、LLDPEとLDPEとの質量比率は、LLDPE/LDPE=50~90/50~10であることが好ましい。第二のポリエチレンがLLDPEに加えてLDPEを含むことにより、溶融張力が上がるため成形加工性が向上する。また、第二のポリエチレンは石油原料由来、植物原料由来、これらの混合物であってもよい。また、リサイクル材を含んでいてもよい。
【0032】
第二の層は、第二のポリエチレンの無延伸フィルムであることが好ましい。第二のポリエチレンが延伸されていないことで、第二の層の融点を低下させることができる。
【0033】
第二の層の融点Tmは、第一の層の融点Tmよりも24.0℃以上低ければ特に限定されないが、より低温で十分に溶融し、高いシール強度が得られる観点から、Tmは115.0℃以下であることが好ましく、110.0℃以下であることがより好ましく、107.0℃以下であることがさらに好ましい
【0034】
第二の層の厚みは、ヒートシール時に十分な接着を行うことができる観点から、50μm以上であることが好ましく、60μm以上であることがより好ましい。第二の層の厚みの範囲の上限は特に限定されないが、例えば400μm以下であることができる。積層体全体の厚み100%に対する第二の層の厚みの割合は、ヒートシール時における第二の層への熱伝導性向上及び接着性向上の観点から、50~90%であることが好ましく、55~85%であることがより好ましく、60~80%であることがさらに好ましい。
【0035】
第一の層と第二の層の合計の厚み100%に対する、第二の層の厚みの割合は、ヒートシール時における第二の層への熱伝導性向上及び接着性向上の観点から、50~90%であることが好ましく、55~85%であることがより好ましく、60~80%であることがさらに好ましい。
【0036】
第二の層は、第二のポリエチレン以外にも、例えば滑剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤等の通常ポリエチレン系フィルムに使用される添加剤を、樹脂以外の他の成分として含むことができる。しかし、第二の層100質量%に対する第二のポリエチレンの質量の割合は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%、すなわち第二の層が第二のポリエチレンからなることが特に好ましい。
【0037】
(リサイクル層)
本発明に係る積層体は、前記第一の層及び前記第二の層に加えて、本発明に係る積層体のリサイクル層をさらに含むことが環境保全の観点から好ましい。該リサイクル層は、例えば本発明に係る積層体及び該積層体を用いて製造される包装袋の製造時に発生する端材や規格外品、市場流通後の使用済みの積層体や包装袋を粉砕、洗浄、再溶融押出し、フィルム状に成形することで製造することができる。
【0038】
積層体を再利用する際に再生品の純度を向上させる観点から、リサイクル層に含まれる全ての樹脂100質量%に対する、リサイクル層に含まれるポリエチレンの質量の割合は、90質量%以上であることが好ましく、99質量%以上であることがより好ましい。
【0039】
リサイクル層の厚みは特に限定されないが、2~400μmであることが好ましく、10~200μmであることがより好ましい。積層体全体の厚み100%に対するリサイクル層の厚みの割合は、1~99%であることが好ましく、10~90%であることがより好ましい。
【0040】
なお、積層体に含まれる層がリサイクル層であることは、例えば2以上のガラス転移温度や融点を有することや、接着剤を含むこと等により判断することができる。ガラス転移温度、融点は、DSC(Differential Scanning Calorimetry)法により確認することができる。接着剤の有無は、IR(Infrared spectroscopy)等の化学分析により確認することができる。
【0041】
(接着層)
本発明に係る積層体は、積層体を構成する各層を接着するために接着層を任意で含んでもよい。例えば第一の層が延伸フィルムである場合、フィルム状の第一の層と他の層とを接着層を介して互いに接着することができる。接着層に含まれる接着剤としては、例えばウレタン系、酸変性ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアミド系の接着剤等が挙げられる。接着層は、これらの接着剤を一種含んでもよく、二種以上含んでもよい。
【0042】
接着層の厚みは特に限定されないが、例えば0.1~10μmであることができる。また、積層体全体の厚み100%に対する接着層の厚みの割合は、例えば0.01~10%であることができる。なお、積層体が接着層を複数有する場合には、前記割合は積層体全体の厚み100%に対する全ての接着層の厚みの合計の割合を示す。また、積層体を再利用する際に再生品の純度を向上させる観点から、接着層の厚みは薄い方が好ましく、接着層を設けないことがより好ましい。
【0043】
(積層体の物性)
本発明に係る積層体は、突刺強度が5N以上であることが好ましく、6N以上であることがより好ましく、6.5N以上であることがさらに好ましい。突刺強度が前記範囲内であることにより、特に該積層体を用いて液体収容用の包装袋を製造した場合、耐ピンホール性が高く液漏れを十分に抑制することができる。該突刺強度の範囲の上限は特に限定されない。突刺強度はJIS Z1707(1997)に準拠して測定し、測定数n=3として平均値を測定値とする。
【0044】
(積層体の製造方法)
本発明に係る積層体の製造方法は特に限定されないが、例えば第一の層を構成する材料と、第二の層を構成する材料と、必要に応じてリサイクル層等の他の層の材料とを共押出することで製造することができる。また、第一の層が延伸フィルムである場合には、例えば第一の層のフィルムと、第二の層のフィルムと、必要に応じてリサイクル層等の他の層とを、前記接着層を介して接着することで製造することができる。
【0045】
[包装袋]
本発明に係る包装袋は、本発明に係る積層体を含む。本発明に係る包装袋は、本発明に係る積層体からなってもよい。本発明に係る包装袋は、本発明に係る積層体の第二の層を接着面としてヒートシールすることで形成することができ、高温でヒートシールできるため高いシール強度を有する。そのため、例えば包装袋の内部に液体を充填した場合にも、液体の漏れを抑制することができる。また、シールバーを積層体の第一の層の表面に接触させて高温でヒートシールしても、その表面の溶融が抑制されるため、包装袋の外観は良好である。また、該包装袋は本発明に係る積層体からなるため、再利用に適する。特に、第一の層が延伸フィルムである場合高い耐ピンホール性を有するため、液体収容用の包装袋として好適である。
【0046】
本発明に係る液体収容用の包装袋の一例として、図3に液体用詰替パウチの例を示す。図3に示される液体用詰替パウチは、胴部5と底部6とを有する。胴部5は2枚の本発明に係る積層体によって構成され、底部6は1枚の本発明に係る積層体によって構成される。胴部5を構成する2枚の積層体をヒートシールすることにより、サイドシール7及びトップシール9が形成されている。また、胴部5を構成する2枚の積層体と、底部6を構成する1枚の積層体とをヒートシールすることにより、ボトムシール8が形成されている。胴部5上部の一方の隅には、上方に突出するノズル部10が設けられている。ノズル部10には切取り線11が設けられており、切取り線11でノズル部10の先端部分12を切り取って開封することで、内容物を取り出す注出口が形成される。該注出口をプラスチックボトルやガラス瓶等の他の容器の注入口に挿入し、詰替パウチを傾けることで、内容物を他の容器内に注ぎ込むことができる。液体用詰替パウチの内容物としては、例えば洗剤、漂白剤、柔軟剤、洗濯糊、シャンプー、リンス、化粧品、消臭剤等が挙げられる。
【0047】
[包装袋の製造方法]
本発明に係る包装袋の製造方法は、本発明に係る積層体をヒートシールする工程を含む。該方法では本発明に係る積層体を用いて包装袋を製造するため、ヒートシール性に優れ、シール部において高いシール強度を有する包装袋が得られる。また、ヒートシール時に表面の溶融を抑制できるため、外観の良好な包装袋が得られる。
【0048】
本発明に係る包装袋の製造方法の一例を以下に示す。まず、本発明に係る積層体を二枚用意し、第二の層が互いに対向するように重ねる。次に、シール部に対応する第一の層の表面に所定の温度に設定されたシールバーをあてる。積層体をヒートシールする際の温度は第一の層の融点Tmにもよるが、第二の層を十分に溶融させ、高いシール強度を得る観点から、130℃以上であることが好ましく、145℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることがさらに好ましい。シール部は、内容物を充填するための一辺を残して形成することができる。これにより、包装袋が得られる。その後、開口した残りの一辺から内容物を充填し、該一辺をヒートシールすることで、内容物が充填された包装袋が得られる。
【実施例
【0049】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。層の融点、シール上限温度、シール強度、及び突刺強度は、以下の方法により測定した。
【0050】
[層の融点]
各層の融点は、JISK7121-1987に準拠し、DSC(PerkinElmer社製)にて昇温速度10℃/分の条件にて測定した。複数ピークが観測される際には、最も吸熱量の大きいメインピークを融点とした。
【0051】
[シール上限温度]
第二の層が互いに対向するように二枚の積層体を重ね、第一の層に所定の温度に設定されたシールバーをあてることでヒートシールを行った。この際に、第一の層の表面が溶融せずにシールできる限界の温度をシール上限温度とした。第一の層の表面の溶融の有無は目視により確認した。
【0052】
[シール強度]
シール強度は、JIS Z 0238(1998)に準拠し、オートグラフ(島津製作所製)にて引張り速度300mm/min、試験片幅15mmにて測定した。
【0053】
[突刺強度]
積層体の突刺強度は、JIS Z1707(1997)に準拠して測定した。測定数n=3として平均値を測定値とした。
【0054】
[実施例1]
図1に示される、第一の層1と第二の層2とが接着層3により接着された積層体を作製した。具体的には、第一の層として一軸延伸HDPEフィルム(融点:139.0℃、厚み:25μm)、第二の層として無延伸LLDPEフィルム(融点:107.0℃、厚み:60μm)をそれぞれ準備した。該第一の層と該第二の層とをウレタン系接着剤(塗布量3.5g/m)を使用してドライラミネートすることで、積層体を得た。第一の層及び第二の層の融点、シール上限温度、シール強度、及び突刺強度を前記方法により測定した。結果を表1に示す。
【0055】
[実施例2]
第一の層として、一軸延伸HDPEフィルム(融点:132.2℃、厚み:25μm)を用いた。それ以外は実施例1と同様に積層体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0056】
[実施例3]
第一の層として、一軸延伸HDPEフィルム(融点:132.2℃、厚み:30μm)を用いた。それ以外は実施例1と同様に積層体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0057】
[実施例4]
図2に示される、第一の層1とリサイクル層4、第二の層2とリサイクル層4とが、それぞれ接着層3により接着された積層体を作製した。後述する実施例6で作製した包装袋をプラスチッククラッシャーにて粉砕した。この粉砕物を造粒設備が付帯した二軸押出機(バレル設定温度:240℃)に供給し、再ペレット化を行った。さらにこの再ペレットを300mm幅Tダイ及びフィルム引取設備を付帯した単軸押出機(Tダイ及びバレル設定温度:255℃)に供給し、厚み30μmのリサイクルフィルムを作製した。
【0058】
続いて、LLDPE樹脂(MFR:0.8g/min)とLDPE樹脂(MFR:2.0g/min)をLLDPE/LDPE=7/3の質量比で混合したブレンドペレットを300mm幅Tダイ及びフィルム引取設備を付帯した単軸押出機(Tダイ及びバレル設定温度:200℃)に供給し、厚み30μmの第二の層となるフィルムを作製した。このフィルムの融点は107.0℃であった。
【0059】
さらに、実施例2で使用した第一の層と、前記第二の層となるフィルムとの間に、前記リサイクルフィルムをリサイクル層として挟む構成となるように、ウレタン系接着剤(塗布量3.5g/m)を使用してこれらのフィルムをドライラミネートすることで、積層体を得た。
【0060】
[比較例1]
第一の層として、無延伸HDPEフィルム(融点:130.6℃、厚み:30μm)を用いた。それ以外は実施例1と同様に積層体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0061】
[比較例2]
第一の層として、無延伸HDPEフィルム(融点:128.9℃、厚み:40μm)を用いた。それ以外は実施例1と同様に積層体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示されるように、第一の層の融点Tmと第二の層の融点Tmとの差(Tm-Tm)が24.0℃以上である実施例1~4では、シール上限温度が高く、ヒートシール時に十分に第二の層が溶融したため、シール強度が高かった。また、第一の層に延伸フィルムを用いているため、突刺強度が高かった。一方、融点差(Tm-Tm)が24.0℃未満である比較例1、2では、実施例1~4と比較してシール上限温度が低く、シール強度が低かった。また、第一の層に無延伸フィルムを用いているため、実施例1~4と比較して突刺強度が低かった。なお、第一の層と第二の層の種別の欄における樹脂種は、主成分として含まれる樹脂種を示す。
【0064】
[実施例5]
実施例1で作製した積層体を用い、一辺が開口した包装袋(130mm×213mm)を作製した。具体的には、実施例1で作製した積層体を二枚用意し、第二の層が互いに対向するように重ねた。次に、シール部に対応する第一の層の表面に180℃に設定されたシールバーをあてた。シール部は、内容物を充填するための一辺を残して形成した。これにより包装袋を得た。その後、開口した残りの一辺から内容物として水300gを充填し、該一辺を同様に180℃でヒートシールすることで、内容物が充填された包装袋を作製した。該内容品が充填された包装袋を床面と水平となる姿勢で高さ100cmから5回落下させても、破袋の発生はなかった。
【0065】
[実施例6]
積層体として実施例2で作製した積層体を用い、シールバーの設定温度を155℃に変更した以外は、実施例5と同様に内容物が充填された包装袋を作製した。該内容品が充填された包装袋を床面と水平となる姿勢で高さ100cmから5回落下させても、破袋の発生はなかった。
【0066】
[実施例7]
積層体として実施例3で作製した積層体を用い、シールバーの設定温度を155℃に変更した以外は、実施例5と同様に内容物が充填された包装袋を作製した。該内容品が充填された包装袋を床面と水平となる姿勢で高さ100cmから5回落下させても、破袋の発生はなかった。
【0067】
[実施例8]
積層体として実施例4で作製した積層体を用い、シールバーの設定温度を155℃に変更した以外は、実施例5と同様に内容物が充填された包装袋を作製した。該内容品が充填された包装袋を床面と水平となる姿勢で高さ100cmから5回落下させても、破袋の発生はなかった。
【0068】
[比較例3]
積層体として比較例1で作製した積層体を用い、シールバーの設定温度を135℃に変更した以外は、実施例5と同様に内容物が充填された包装袋を作製した。該内容品が充填された包装袋を床面と水平となる姿勢で高さ100cmから落下させたところ、破袋が発生した。
【0069】
[比較例4]
積層体として比較例2で作製した積層体を用い、シールバーの設定温度を135℃に変更した以外は、実施例5と同様に内容物が充填された包装袋を作製した。該内容品が充填された包装袋を床面と水平となる姿勢で高さ100cmから落下させたところ、破袋が発生した。
本発明は以下の実施態様を含む。
[1]樹脂として第一のポリエチレンのみを含み、融点Tm を有する第一の層と、
樹脂として第二のポリエチレンのみを含み、融点Tm を有する第二の層と、
を含む積層体であって、
前記第一の層及び前記第二の層は前記積層体の最表面にそれぞれ配置されており、
Tm -Tm ≧24.0℃である積層体。
[2]前記第一の層が、前記第一のポリエチレンの延伸フィルムである[1]に記載の積層体。
[3]前記第二の層が、前記第二のポリエチレンの無延伸フィルムである[1]又は[2]に記載の積層体。
[4]前記第一のポリエチレンが高密度ポリエチレン(HDPE)を含む[1]から[3]のいずれかに記載の積層体。
[5]前記第二のポリエチレンが直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む[1]から[4]のいずれかに記載の積層体。
[6]前記積層体のリサイクル層をさらに含む[1]から[5]のいずれかに記載の積層体。
[7]前記第一の層と前記第二の層の合計の厚み100%に対する、前記第二の層の厚みの割合が50~90%である[1]から[6]のいずれかに記載の積層体。
[8]前記積層体に含まれる全ての樹脂100質量%に対する、前記積層体に含まれるポリエチレンの質量の割合が90質量%以上である[1]から[7]のいずれかに記載の積層体。
[9]前記積層体がナイロンを含まない[1]から[8]のいずれかに記載の積層体。
[10][1]から[9]のいずれかに記載の積層体を含む包装袋。
[11]液体収容用である[10]に記載の包装袋。
[12][1]から[9]のいずれかに記載の積層体をヒートシールする工程を含む、包装袋の製造方法。
[13]前記ヒートシールの温度が130℃以上である[12]に記載の包装袋の製造方法。
【符号の説明】
【0070】
1 第一の層
2 第二の層
3 接着層
4 リサイクル層
5 胴部
6 底部
7 サイドシール
8 ボトムシール
9 トップシール
10 ノズル部
11 切取り線
12 先端部分
図1
図2
図3