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特許7516770繊維体堆積装置および繊維構造体製造装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】繊維体堆積装置および繊維構造体製造装置
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/736 20120101AFI20240709BHJP
   D04H 1/732 20120101ALI20240709BHJP
   D01G 23/08 20060101ALI20240709BHJP
   D01G 25/00 20060101ALI20240709BHJP
   B27N 3/04 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
D04H1/736
D04H1/732
D01G23/08 A
D01G23/08 Z
D01G25/00 A
D01G25/00 E
B27N3/04 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020020154
(22)【出願日】2020-02-07
(65)【公開番号】P2021123833
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 一真
(72)【発明者】
【氏名】五味 克仁
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-044277(JP,A)
【文献】特開2004-211276(JP,A)
【文献】中国実用新案第205965703(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0222585(US,A1)
【文献】特開2019-151427(JP,A)
【文献】特開2019-148026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/736
D04H 1/732
D01G 23/08
D01G 25/00
B27N 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を含む材料を放出する開口を有し、中心軸回りに回転するドラムと、
前記ドラム内に配置され、前記中心軸に沿った方向に延在し、前記ドラム内の前記材料を分散させる第1分散部材と、を備え、
前記第1分散部材は、前記中心軸に沿った方向の異なる位置に配置され、前記材料の分散能が大なる第1部分、および、前記材料の分散能が前記第1部分よりも小さい第2部分を有し、
前記第1部分および前記第2部分は、前記ドラムの前記開口が形成されている領域に対向するように配置されていることを特徴とする繊維体堆積装置。
【請求項2】
前記第1部分は、前記中心軸に沿った方向の中央部に位置し、
前記第2部分は、前記第1部分の両側に位置している請求項1に記載の繊維体堆積装置。
【請求項3】
前記第1部分および前記第2部分は、前記ドラムの内周面から離間して配置されている請求項1または2に記載の繊維体堆積装置。
【請求項4】
前記第1部分と前記ドラムの内周面との離間距離をD1とし、前記第2部分と前記ドラムの内周面との離間距離をD2としたとき、D1<D2を満足する請求項3に記載の繊維体堆積装置。
【請求項5】
前記第1分散部材は、前記ドラムとともに回転しない請求項1ないしのいずれか1項に記載の繊維体堆積装置。
【請求項6】
前記第1分散部材は、前記中心軸よりも鉛直下方側に偏在した位置に配置されている請求項1ないしのいずれか1項に記載の繊維体堆積装置。
【請求項7】
前記第1分散部材は、前記ドラム内の最も鉛直下方の部分よりも前記ドラムの回転方向の前方に設けられている請求項に記載の繊維体堆積装置。
【請求項8】
前記ドラム内で、かつ、前記中心軸よりも鉛直上方側に偏在した位置に配置され、前記ドラム内の前記材料を分散させる第2分散部材を備える請求項1ないしのいずれか1項に記載の繊維体堆積装置。
【請求項9】
前記ドラムは、前記中心軸に沿った方向の両側に、前記材料を導入する導入口を有する請求項1ないしのいずれか1項に記載の繊維体堆積装置。
【請求項10】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の繊維体堆積装置と、
前記繊維体堆積装置で形成された堆積物を成形する成形部と、を備えることを特徴とする繊維構造体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維体堆積装置および繊維構造体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、水を極力利用しない乾式によるシート製造装置が提案されている。このシート製造装置は、例えば、繊維体を放出して堆積させる堆積装置と、堆積装置によって形成された堆積物を加圧してシートに製造する方法が知られている。この堆積装置としては、例えば、特許文献1に示すような構成のものが挙げられる。
【0003】
特許文献1に記載されている堆積装置は、噴出穴を有し、回転するドラムと、ドラム内に繊維を供給する供給部と、を有する。ドラムが回転することにより、ドラム内の繊維が噴出穴から放出されて下方で堆積する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-292959公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の堆積装置では、ドラム内での繊維のほぐし、分散が不十分であり、ダマや塊が生じるおそれがある。この場合、各噴出穴から放出される繊維の量にむらが生じてしまう。その結果、所望の厚さ分布を有する堆積物を得るのが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の繊維体堆積装置は、繊維を含む材料を放出する開口を有し、中心軸回りに回転するドラムと、
前記ドラム内に配置され、前記中心軸に沿った方向に延在し、前記ドラム内の前記材料を分散させる第1分散部材と、を備え、
前記第1分散部材は、前記中心軸に沿った方向の異なる位置に配置され、前記材料の分散能が大なる第1部分、および、前記材料の分散能が前記第1部分よりも小さい第2部分を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の繊維構造体製造装置は、本発明の繊維体堆積装置と、
前記繊維体堆積装置で形成された堆積物を成形する成形部と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る繊維体堆積装置を備える繊維構造体製造装置を示す概略側面図である。
図2図2は、図1に示す繊維体堆積装置が備えるドラムの縦断面図である。
図3図3は、図2に示すドラムの斜視図である。
図4図4は、図2中A-A線断面図である。
図5図5は、図2中A-A線断面図であり、材料を分散させている状態を示す図である。
図6図6は、図2中A-A線断面図であり、材料を分散させている状態を示す図である。
図7図7は、図2に示す第1分散部材の平面図である。
図8図8は、図2に示す第1分散部材の平面図であり、材料を分散させている状態を示す図である。
図9図9は、図2に示す第1分散部材の平面図であり、材料を分散させている状態を示す図である。
図10図10は、メッシュベルト状に形成された堆積物の幅方向における厚さ分布を示す図である。
図11図11は、第2実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の平面図である。
図12図12は、第3実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の平面図である。
図13図13は、第4実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の平面図である。
図14図14は、第5実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の平面図である。
図15図15は、第6実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の平面図である。
図16図16は、第7実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の平面図である。
図17図17は、第8実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の平面図である。
図18図18は、第9実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の平面図である。
図19図19は、第10実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の平面図である。
図20図20は、第11実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の平面図である。
図21図21は、第12実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の平面図である。
図22図22は、図21に示す第1分散部材の側面図である。
図23図23は、第13実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の斜視図である。
図24図24は、第14実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の繊維体堆積装置および繊維構造体製造装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る繊維体堆積装置を備える繊維構造体製造装置を示す概略側面図である。図2は、図1に示す繊維体堆積装置が備えるドラムの縦断面図である。図3は、図2に示すドラムの斜視図である。図4は、図2中A-A線断面図である。図5は、図2中A-A線断面図であり、材料を分散させている状態を示す図である。図6は、図2中A-A線断面図であり、材料を分散させている状態を示す図である。図7は、図2に示す第1分散部材の平面図である。図8は、図2に示す第1分散部材の平面図であり、材料を分散させている状態を示す図である。図9は、図2に示す第1分散部材の平面図であり、材料を分散させている状態を示す図である。図10は、メッシュベルト状に形成された堆積物の幅方向における厚さ分布を示す図である。
【0011】
なお、以下では、説明の便宜上、図1図23に示すように、互いに直交する3軸をx軸、y軸およびz軸とする。また、x軸とy軸を含むxy平面が水平となっており、z軸が鉛直となっている。また、各軸の矢印が向いた方向を「+」、その反対方向を「-」と言う。また、図1図23の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言うことがある。
【0012】
図1に示す繊維構造体製造装置100は、原料M1を粗砕、解繊し、結合素材を混合して、繊維体堆積装置1によって堆積させ、この堆積物を成形部20によって成形することで成形体を得る装置である。
【0013】
また、繊維構造体製造装置100により製造される成形体は、例えば、再生紙のようなシート状をなしていてもよく、ブロック状をなしていてもよい。また、成形体の密度も特に限定されず、シートのような繊維の密度が比較的高い成形体であってもよく、スポンジ体のような繊維の密度が比較的低い成形体であってもよく、これらの特性が混在する成形体であってもよい。
【0014】
以下では、原料M1は、使用済みまたは不要となった古紙とし、製造される成形体は、再生紙であるシートSとして説明する。
【0015】
図1に示す繊維構造体製造装置100は、原料供給部11と、粗砕部12と、解繊部13と、選別部14と、第1ウェブ形成部15と、細分部16と、混合部17と、分散部18と、第2ウェブ形成部19と、成形部20と、切断部21と、ストック部22と、回収部27と、これらの作動を制御する制御部28と、を備えている。これらのうち、分散部18および第2ウェブ形成部19が繊維体堆積装置1を構成する。なお、分散部18よりも上流側、すなわち、原料供給部11~混合部17を繊維体堆積装置1の構成要素として捉えてもよい。
【0016】
また、繊維構造体製造装置100は、加湿部231と、加湿部232と、加湿部233と、加湿部234と、加湿部235と、加湿部236とを備えている。その他、繊維構造体製造装置100は、ブロアー261と、ブロアー262と、ブロアー263とを備えている。
【0017】
また、加湿部231~加湿部236およびブロアー261~ブロアー263は、制御部28と電気的に接続されており、制御部28によってその作動が制御される。すなわち、本実施形態では、1つの制御部28によって繊維構造体製造装置100の各部の作動が制御される構成である。ただし、これに限定されず、例えば、繊維体堆積装置1の各部の作動を制御する制御部と、繊維体堆積装置1以外の部位の作動を制御する制御部と、をそれぞれ有する構成であってもよい。
【0018】
また、繊維構造体製造装置100では、原料供給工程と、粗砕工程と、解繊工程と、選別工程と、第1ウェブ形成工程と、分断工程と、混合工程と、放出工程と、堆積工程と、シート形成工程と、切断工程とがこの順に実行される。
【0019】
以下、各部の構成について説明する。
原料供給部11は、粗砕部12に原料M1を供給する原料供給工程を行なう部分である。この原料M1としては、セルロース繊維を含む繊維含有物からなるシート状材料が挙げられる。セルロース繊維とは、化合物としてのセルロースを主成分とし繊維状をなすものであればよく、セルロースの他に、ヘミセルロース、リグニンを含むものであってもよい。また、原料M1は、織布、不織布等、形態は問わない。また、原料M1は、例えば、古紙を解繊して再生、製造されたリサイクルペーパーや、合成紙のユポ紙(登録商標)であってもよいし、リサイクルペーパーでなくてもよい。
【0020】
粗砕部12は、原料供給部11から供給された原料M1を大気中等の気中で粗砕する粗砕工程を行なう部分である。粗砕部12は、一対の粗砕刃121と、シュート122とを有している。
【0021】
一対の粗砕刃121は、互いに反対方向に回転することにより、これらの間で原料M1を粗砕して、すなわち、裁断して粗砕片M2にすることができる。粗砕片M2の形状や大きさは、解繊部13における解繊処理に適しているのが好ましく、例えば、1辺の長さが100mm以下の小片であるのが好ましく、10mm以上70mm以下の小片であるのがより好ましい。
【0022】
シュート122は、一対の粗砕刃121の下方に配置され、例えば漏斗状をなすものとなっている。これにより、シュート122は、粗砕刃121によって粗砕されて落下してきた粗砕片M2を受けることができる。
【0023】
また、シュート122の上方には、加湿部231が一対の粗砕刃121に隣り合って配置されている。加湿部231は、シュート122内の粗砕片M2を加湿するものである。この加湿部231は、水分を含むフィルターを有し、フィルターに空気を通過させることにより、湿度を高めた加湿空気を粗砕片M2に供給する気化式の加湿器で構成されている。加湿空気が粗砕片M2に供給されることにより、粗砕片M2が静電気によってシュート122等に付着するのを抑制することができる。
【0024】
シュート122は、管241を介して、解繊部13に接続されている。シュート122に集められた粗砕片M2は、管241を通過して、解繊部13に搬送される。
【0025】
解繊部13は、粗砕片M2を気中で、すなわち、乾式で解繊する解繊工程を行なう部分である。この解繊部13での解繊処理により、粗砕片M2から解繊物M3を生成することができる。ここで「解繊する」とは、複数の繊維が結着されてなる粗砕片M2を、繊維1本1本に解きほぐすことをいう。そして、この解きほぐされたものが解繊物M3となる。解繊物M3の形状は、線状や帯状である。また、解繊物M3同士は、絡み合って塊状となった状態、すなわち、いわゆる「ダマ」を形成している状態で存在してもよい。
【0026】
解繊部13は、例えば本実施形態では、高速回転する回転刃と、回転刃の外周に位置するライナーとを有するインペラーミルで構成されている。解繊部13に流入してきた粗砕片M2は、回転刃とライナーとの間に挟まれて解繊される。
【0027】
また、解繊部13は、回転刃の回転により、粗砕部12から選別部14に向かう空気の流れ、すなわち、気流を発生させることができる。これにより、粗砕片M2を管241から解繊部13に吸引することができる。また、解繊処理後、解繊物M3を、管242を介して選別部14に送り出すことができる。
【0028】
管242の途中には、ブロアー261が設置されている。ブロアー261は、選別部14に向かう気流を発生させる気流発生装置である。これにより、選別部14への解繊物M3の送り出しが促進される。
【0029】
選別部14は、解繊物M3を、繊維の長さの大小によって選別する選別工程を行なう部分である。選別部14では、解繊物M3は、第1選別物M4-1と、第1選別物M4-1よりも大きい第2選別物M4-2とに選別される。第1選別物M4-1は、その後のシートSの製造に適した大きさのものとなっている。その平均長さは、1μm以上30μm以下であるのが好ましい。一方、第2選別物M4-2は、例えば、解繊が不十分なものや、解繊された繊維同士が過剰に凝集したもの等が含まれる。
【0030】
選別部14は、ドラム部141と、ドラム部141を収納するハウジング142とを有する。
【0031】
ドラム部141は、円筒状をなす網体で構成され、その中心軸回りに回転する篩である。このドラム部141には、解繊物M3が流入してくる。そして、ドラム部141が回転することにより、網の目開きよりも小さい解繊物M3は、第1選別物M4-1として選別され、網の目開き以上の大きさの解繊物M3は、第2選別物M4-2として選別される。
【0032】
第1選別物M4-1は、ドラム部141から落下する。
一方、第2選別物M4-2は、ドラム部141に接続されている管243に送り出される。管243は、ドラム部141と反対側、すなわち、上流側が管241に接続されている。この管243を通過した第2選別物M4-2は、管241内で粗砕片M2と合流して、粗砕片M2とともに解繊部13に流入する。これにより、第2選別物M4-2は、解繊部13に戻されて、粗砕片M2とともに解繊処理される。
【0033】
また、ドラム部141から落下した第1選別物M4-1は、気中に分散しつつ落下して、ドラム部141の下方に位置する第1ウェブ形成部15に向かう。第1ウェブ形成部15は、第1選別物M4-1から第1ウェブM5を形成する第1ウェブ形成工程を行なう部分である。第1ウェブ形成部15は、メッシュベルト151と、3つの張架ローラー152と、吸引部153とを有している。
【0034】
メッシュベルト151は、無端ベルトであり、第1選別物M4-1が堆積する。このメッシュベルト151は、3つの張架ローラー152に掛け回されている。そして、張架ローラー152の回転駆動により、メッシュベルト151上の第1選別物M4-1は、下流側に搬送される。
【0035】
第1選別物M4-1は、メッシュベルト151の目開き以上の大きさとなっている。これにより、第1選別物M4-1は、メッシュベルト151の通過が規制され、よって、メッシュベルト151上に堆積することができる。また、第1選別物M4-1は、メッシュベルト151上に堆積しつつ、メッシュベルト151ごと下流側に搬送されるため、層状の第1ウェブM5として形成される。
【0036】
また、第1選別物M4-1には、例えば塵や埃等が混在しているおそれがある。塵や埃は、例えば、粗砕や解繊によって生じることがある。そして、このような塵や埃は、後述する回収部27に回収されることとなる。
【0037】
吸引部153は、メッシュベルト151の下方から空気を吸引するサクション機構である。これにより、メッシュベルト151を通過した塵や埃を空気ごと吸引することができる。
【0038】
また、吸引部153は、管244を介して、回収部27に接続されている。吸引部153で吸引された塵や埃は、回収部27に回収される。
【0039】
回収部27には、管245がさらに接続されている。また、管245の途中には、ブロアー262が設置されている。このブロアー262の作動により、吸引部153で吸引力を生じさせることができる。これにより、メッシュベルト151上における第1ウェブM5の形成が促進される。この第1ウェブM5は、塵や埃等が除去されたものとなる。また、塵や埃は、ブロアー262の作動により、管244を通過して、回収部27まで到達する。
【0040】
ハウジング142は、加湿部232と接続されている。加湿部232は、気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング142内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、第1選別物M4-1を加湿することができ、よって、第1選別物M4-1がハウジング142の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
【0041】
選別部14の下流側には、加湿部235が配置されている。加湿部235は、水を噴霧する超音波式加湿器で構成されている。これにより、第1ウェブM5に水分を供給することができ、よって、第1ウェブM5の水分量が調整される。この調整により、静電力による第1ウェブM5のメッシュベルト151への吸着を抑制することができる。これにより、第1ウェブM5は、メッシュベルト151が張架ローラー152で折り返される位置で、メッシュベルト151から容易に剥離される。
【0042】
加湿部235の下流側には、細分部16が配置されている。細分部16は、メッシュベルト151から剥離した第1ウェブM5を分断する分断工程を行なう部分である。細分部16は、回転可能に支持されたプロペラ161と、プロペラ161を収納するハウジング162とを有している。そして、回転するプロペラ161により、第1ウェブM5を分断することができる。分断された第1ウェブM5は、細分体M6となる。また、細分体M6は、ハウジング162内を下降する。
【0043】
ハウジング162は、加湿部233と接続されている。加湿部233は、気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング162内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、細分体M6がプロペラ161やハウジング162の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することができる。
【0044】
細分部16の下流側には、混合部17が配置されている。混合部17は、細分体M6と添加剤とを混合する混合工程を行なう部分である。この混合部17は、添加剤供給部171と、管172と、ブロアー173とを有している。
【0045】
管172は、細分部16のハウジング162と、分散部18のハウジング182とを接続しており、細分体M6と添加剤との混合物M7が通過する流路である。
【0046】
管172の途中には、添加剤供給部171が接続されている。添加剤供給部171は、添加剤が収容されたハウジング170と、ハウジング170内に設けられたスクリューフィーダー174とを有している。スクリューフィーダー174の回転により、ハウジング170内の添加剤がハウジング170から押し出されて管172内に供給される。管172内に供給された添加剤は、細分体M6と混合されて混合物M7となる。
【0047】
ここで、添加剤供給部171から供給される添加剤としては、例えば、繊維同士を結着させる結着材や、繊維を着色するための着色剤、繊維の凝集を抑制するための凝集抑制剤、繊維等を燃えにくくするための難燃剤、シートSの紙力を増強するための紙力増強剤、解繊物等が挙げられ、これらのうちの一種または複数種を組み合わせて用いることができる。以下では、一例として、添加剤が結着材としての樹脂P1である場合について説明する。添加剤が繊維同士を結着させる結着材を含むことにより、シートSの強度を高めることができる。
【0048】
樹脂P1は、粉体または粒子状のものを用いることができる。また、樹脂P1としては、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等を用いることができるが、熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、AS樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6-12、ナイロン6-66等のポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリエステルまたはこれを含むものを用いるのが好ましい。
【0049】
また、管172の途中には、添加剤供給部171よりも下流側にブロアー173が設置されている。ブロアー173が有する羽根等の回転部の作用により、細分体M6と樹脂P1との混合が促進される。また、ブロアー173は、分散部18に向かう気流を発生させることができる。この気流により、管172内で、細分体M6と樹脂P1とを撹拌することができる。これにより、混合物M7は、細分体M6と樹脂P1とが均一に分散した状態で、分散部18に搬送される。また、混合物M7中の細分体M6は、管172内を通過する過程でほぐされて、より細かい繊維状となる。
【0050】
なお、図2に示すように、管172は、ドラム181側の端部が2股に分岐しており、分岐した端部は、ドラム181の導入口180にそれぞれ接続されている。
【0051】
図1図4に示す分散部18は、混合物M7における、互いに絡み合った繊維同士をほぐして放出する放出工程を行なう部分である。分散部18は、解繊物である混合物M7を導入および放出するドラム181と、ドラム181を収納するハウジング182と、ドラム181を回転駆動する駆動源183と、を有する。
【0052】
ドラム181は、円筒状をなす網体で構成され、その中心軸O181回りに回転する篩である。このドラム181の両端面には、導入口180が形成されており、各導入口180には、分岐した管172の端部がそれぞれ接続されている。これにより、ドラム181内に導入口180を介して混合物M7が導入される。そして、ドラム181が回転することにより、混合物M7のうち、網の目開きよりも小さい繊維等が、ドラム181を通過することができる。その際、混合物M7がほぐされて放出される。すなわち、ドラム181の網の目が、繊維を含む材料を放出する開口として機能する。
【0053】
このように、ドラム181は、中心軸O181に沿った方向の両側に、材料である混合物M7を導入する導入口180を有する。このような構成であると、図8に示すように、中央部付近で気流がぶつかり、当該部分で混合物M7のダマ、塊が形成されやすい。よって、後述するように、第1部分31Aが第1分散部材31の中央部に位置する構成が有利となる。
【0054】
駆動源183は、図示はしないが、モーターと、減速機と、ベルトと、を有する。モーターは、モータードライバーを介して制御部28と電気的に接続されている。また、モーターから出力された回転力は、減速機によって減速される。ベルトは、例えば、無端ベルトで構成されており、減速機の出力軸およびドラムの外周に掛け回されている。これにより、減速機の出力軸の回転力がベルトを介してドラム181に伝達される。
【0055】
また、ハウジング182は、加湿部234と接続されている。加湿部234は、気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング182内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、ハウジング182内を加湿することができ、よって、混合物M7がハウジング182の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することができる。
【0056】
また、ドラム181で放出された混合物M7は、気中に分散しつつ落下して、ドラム181の下方に位置する第2ウェブ形成部19に向かう。第2ウェブ形成部19は、混合物M7を堆積させて堆積物である第2ウェブM8を形成する堆積工程を行なう部分である。第2ウェブ形成部19は、メッシュベルト191と、張架ローラー192と、吸引部193とを有している。
【0057】
メッシュベルト191は、メッシュ部材であり、図示の構成では、無端ベルトで構成される。また、メッシュベルト191には、分散部18が分散、放出した混合物M7が堆積する。このメッシュベルト191は、4つの張架ローラー192に掛け回されている。そして、張架ローラー192の回転駆動により、メッシュベルト191上の混合物M7は、下流側に搬送される。
【0058】
また、メッシュベルト191上のほとんどの混合物M7は、メッシュベルト191の目開き以上の大きさである。これにより、混合物M7は、メッシュベルト191を通過してしまうのが規制され、よって、メッシュベルト191上に堆積することができる。また、混合物M7は、メッシュベルト191上に堆積しつつ、メッシュベルト191ごと下流側に搬送されるため、層状の第2ウェブM8として形成される。
【0059】
吸引部193は、メッシュベルト191の下方から空気を吸引するサクション機構である。これにより、メッシュベルト191上に混合物M7を吸引することができ、よって、混合物M7のメッシュベルト191上への堆積が促進される。
【0060】
吸引部193には、管246が接続されている。また、この管246の途中には、ブロアー263が設置されている。このブロアー263の作動により、吸引部193で吸引力を生じさせることができる。
【0061】
分散部18の下流側には、加湿部236が配置されている。加湿部236は、加湿部235と同様の超音波式加湿器で構成されている。これにより、第2ウェブM8に水分を供給することができ、よって、第2ウェブM8の水分量が調整される。この調整により、静電力による第2ウェブM8のメッシュベルト191への吸着を抑制することができる。これにより、第2ウェブM8は、メッシュベルト191が張架ローラー192で折り返される位置で、メッシュベルト191から容易に剥離される。
【0062】
なお、加湿部231~加湿部236までに加えられる合計水分量は、例えば、加湿前の材料100質量部に対して0.5質量部以上20質量部以下であるのが好ましい。
【0063】
第2ウェブ形成部19の下流側には、成形部20が配置されている。成形部20は、第2ウェブM8からシートSを形成するシート形成工程を行なう部分である。この成形部20は、加圧部201と、加熱部202とを有している。
【0064】
加圧部201は、一対のカレンダーローラー203を有し、カレンダーローラー203の間で第2ウェブM8を加熱せずに加圧することができる。これにより、第2ウェブM8の密度が高められる。なお、加熱する場合の加熱の程度としては、例えば、樹脂P1を溶融させない程度であるのが好ましい。そして、この第2ウェブM8は、加熱部202に向けて搬送される。なお、一対のカレンダーローラー203のうちの一方は、図示しないモーターの作動により駆動する主動ローラーであり、他方は、従動ローラーである。
【0065】
加熱部202は、一対の加熱ローラー204を有し、加熱ローラー204の間で第2ウェブM8を加熱しつつ、加圧することができる。この加熱加圧により、第2ウェブM8内では、樹脂P1が溶融して、この溶融した樹脂P1を介して繊維同士が結着する。これにより、シートSが形成される。そして、このシートSは、切断部21に向けて搬送される。なお、一対の加熱ローラー204の一方は、図示しないモーターの作動により駆動する主動ローラーであり、他方は、従動ローラーである。
【0066】
成形部20の下流側には、切断部21が配置されている。切断部21は、シートSを切断する切断工程を行なう部分である。この切断部21は、第1カッター211と、第2カッター212とを有する。
【0067】
第1カッター211は、シートSの搬送方向と交差する方向、特に直交する方向にシートSを切断するものである。
【0068】
第2カッター212は、第1カッター211の下流側で、シートSの搬送方向に平行な方向にシートSを切断するものである。この切断は、シートSの両側端部、すなわち、+y軸方向および-y軸方向の端部の不要な部分を除去して、シートSの幅を整えるものであり、切断除去された部分は、いわゆる「みみ」と呼ばれる。
【0069】
このような第1カッター211と第2カッター212との切断により、所望の形状、大きさのシートSが得られる。そして、このシートSは、さらに下流側に搬送されて、ストック部22に蓄積される。
【0070】
なお、成形部20としては、上記のようにシートSに成形する構成に限定されず、例えば、ブロック状、球状等の成形体に成形する構成であってもよい。
【0071】
このような繊維構造体製造装置100が備える各部は、制御部28と電気的に接続されている。そして、これら各部の作動は、制御部28によって制御される。
【0072】
制御部28は、CPU(Central Processing Unit)281と、記憶部282とを有している。CPU281は、記憶部282に記憶された各種プログラムを実行することができ、例えば、各種の判断や各種の命令等を行なうことができる。
【0073】
記憶部282には、例えば、シートSを製造するプログラム等の各種プログラムや、各種検量線、テーブル等が記憶されている。
【0074】
また、この制御部28は、繊維構造体製造装置100に内蔵されていてもよいし、外部のコンピューター等の外部機器に設けられていてもよい。また、外部機器は、例えば、繊維構造体製造装置100とケーブル等を介して通信される場合、無線通信される場合、例えばインターネット等のようなネットワークを介して繊維構造体製造装置100と接続されている場合等がある。
【0075】
また、CPU281と、記憶部282とは、例えば、一体化されて、1つのユニットとして構成されていてもよいし、CPU281が繊維構造体製造装置100に内蔵され、記憶部282が外部のコンピューター等の外部機器に設けられていてもよいし、記憶部282が繊維構造体製造装置100に内蔵され、CPU281が外部のコンピューター等の外部機器に設けられていてもよい。
【0076】
さて、図2および図3に示すように、分散部18のドラム181内には、第1分散部材31と、第2分散部材32とが設けられている。第1分散部材31および第2分散部材32は、ドラム181内の混合物M7と衝突することにより、混合物M7を分散させる。ここで、第1分散部材31および第2分散部材32が行う混合物M7の分散とは、ドラム181内において、混合物M7をほぐしつつ攪拌し、特に、混合物M7に含まれるダマ、塊と接触してこれを砕き、細かくすることを言う。
【0077】
第1分散部材31は、ドラム181内で、かつ、中心軸O181よりも鉛直下方に偏在した位置に配置されている。なお、第1分散部材31の重心が中心軸O181よりも鉛直下方に位置していれば、第1分散部材31の一部が中心軸O181よりも鉛直上方に位置していたとしても、第1分散部材31が中心軸O181よりも鉛直下方に偏在した位置に配置されていることとする。
【0078】
このように、第1分散部材31は、中心軸O181よりも鉛直下方側に偏在した位置に配置されている。これにより、比較的、混合物M7が集まりやすく、しかも、ダマ、塊が生じやすいドラム181内の鉛直下方の位置において、混合物M7が第1分散部材31と衝突して、効率よく混合物M7を分散させることができる。よって、ドラム181からの混合物M7の均一な放出を促進することができる。
【0079】
また、第1分散部材31は、ドラム181の中心軸O181に沿って、すなわち、y軸方向に沿って延在する長尺状をなしている。これにより、第1分散部材31は、ドラム181の長手方向の広範囲に亘って、混合物M7の良好な分散を行うことができる。第1分散部材31は、互いに表裏関係にある一対の主面311を有する板状をなしている。
【0080】
また、図2に示すように、第1分散部材31は、両端部がハウジング182の側壁に固定、支持されている。このため、第1分散部材31は、ドラム181とともに回転しない。すなわち、ドラム181が回転しても第1分散部材31は、設置位置に留まったままである。これにより、ドラム181の回転に伴いドラム181内で移動する混合物M7を、第1分散部材31により確実に衝突させ、分散させることができる。すなわち、分散効率をより高めることができる。
【0081】
また、第1分散部材31は、板状をなしている。すなわち、第1分散部材31は、互いに表裏関係にある一対の主面311を有する板状をなしている。また、第1部分31Aおよび第2部分31Bは、ドラム181の内周面184から離間して配置されている。これにより、第1分散部材31とドラム181の内周面184との間に混合物M7を通過させることができる。その際、第1分散部材31の縁部に混合物M7が衝突するため、より効果的に混合物M7を分散させることができる。また、ドラム181の回転を円滑に行うことができる。
【0082】
また、図4に示すように、第1分散部材31は、その主面311がドラム181の内周面184の移動方向に対して傾斜して設けられている。すなわち、第1分散部材31は、板状をなし、主面311の法線312が、ドラム181の径方向に沿った直線185に対して傾斜する向きで設置されている。なお、法線312は、主面311の中心を通過する直線とし、直線185は、第1分散部材31の中心を通過する直線とする。これにより、混合物M7を主面311に衝突させやすくすることができる。よって、混合物M7のほぐし、特に、分散をより効率的に行うことができる。
【0083】
図4に示すように、法線312と直線185とのなす角度θ1は、3°以上60°以下であるのが好ましく、10°以上40°以下であるのがより好ましい。これにより、混合物M7を主面311に衝突させやすくすることができる。よって、混合物M7のほぐしをより効果的に行うことができる。
【0084】
また、第1分散部材31は、ドラム181内の最も鉛直下方の部分186よりもドラム181の回転方向の前方に設けられている。すなわち、図4に示すように、y軸方向から見てドラム181が時計回りに回転する場合、ドラムの中心軸O181に沿う方向から見て、ドラム181の中心軸O181よりも-x軸側で、かつ、-z軸側に位置している。これにより、混合物M7をほぐした状態で後述する第2分散部材32に向かって誘導することができる。また、y軸方向から見てドラム181が反時計回りに回転する場合、ドラムの中心軸O181に沿う方向から見て、ドラム181の中心軸O181よりも+x軸側で、かつ、-z軸側に位置していることが好ましい。
【0085】
このように、繊維体堆積装置1は、ドラム181内で、かつ、中心軸O181よりも鉛直下方に偏在した位置に配置され、ドラム181内の混合物M7を分散させる第1分散部材31を備える。具体的には、第1分散部材31のうち、ドラム181の内周面184との距離が最も近い部分が、ドラム181内の、中心軸O181よりも鉛直下方に偏在した位置に位置している。これにより、比較的、混合物M7が集まりやすく、しかも、ダマが生じやすいドラム181内の鉛直下方の位置において、混合物M7が第1分散部材31と衝突して混合物M7を攪拌、分散する。よって、ドラム181内の混合物M7にダマが生じるのを効果的に防止または抑制するとともに、ドラム181からの混合物M7の均一な放出を促進することができる。その結果、第2ウェブM8の厚さを可及的に均一にすることができ、第2ウェブM8の品質を高めることができる。
【0086】
次に、第2分散部材32について説明する。
図2図4に示すように、第2分散部材32は、ドラム181の中心軸O181よりも鉛直上方側に偏在した位置に配置されている。第2分散部材32は、ドラム181内の混合物M7と衝突することにより、混合物M7を分散させる機能を有するとともに、ドラム181内の混合物M7を鉛直下方に誘導し、混合物M7の放出を促進する機能を有する。
【0087】
また、図2および図3に示すように、第2分散部材32は、ドラム181の中心軸O181に沿って、すなわち、y軸方向に沿って延在する長尺状をなしている。第2分散部材32は、互いに表裏関係にある一対の主面321を有する板状をなしている。
【0088】
また、第2分散部材32は、両端部がハウジング182の側壁に固定、支持されている。このため、第2分散部材32は、ドラム181の回転とともに回転しない。すなわち、ドラム181が回転しても第2分散部材32は、設置位置に留まったままである。これにより、ドラム181の回転に伴いドラム181内で移動する混合物M7を、第2分散部材32により確実に衝突させることができる。よって、混合物M7のほぐしをより効果的に行うことができるとともに、混合物M7をドラム181内の鉛直下方側に誘導することができる。
【0089】
第2分散部材32は、ドラム181の中心軸O181に沿って延在する長尺状をなしている。これにより、第2分散部材32は、ドラム181の長手方向の広範囲に亘って、混合物M7の良好な分散、および、鉛直下方への誘導を行うことができる。
【0090】
また、第2分散部材32は、板状をなしている。すなわち、第2分散部材32は、互いに表裏関係にある一対の主面321を有する板状をなしている。また、第2分散部材32は、ドラム181の内周面184から離間して配置されている。これにより、第2分散部材32とドラム181の内周面184との間に混合物M7を通過させることができる。その際、第2分散部材32の縁部に混合物M7が衝突するため、より効果的に混合物M7を分散させることができる。その結果、混合物M7のほぐしをより効果的に行うことができる。
【0091】
図4に示すように、第2分散部材32とドラム181の内周面184との最短離間距離である離間距離D3は、特に限定されないが、例えば、15mm以上200mm以下であるのが好ましく、25mm以上120mm以下であるのがより好ましい。これにより、第2分散部材32が混合物M7をドラム181内の鉛直下方側に効果的に誘導することができる。
【0092】
また、第2分散部材32は、その主面321がドラム181の内周面184の移動方向に対して傾斜して設けられている。すなわち、第2分散部材32は、板状をなし、主面321の法線322が、ドラム181の径方向に沿った直線187に対して傾斜する向きで設置されている。なお、法線322は、主面321の中心を通過する直線とし、直線187は、第2分散部材32の中心を通過する直線とする。これにより、混合物M7を主面311に衝突させやすくすることができる。よって、混合物M7のほぐしをより効果的に行うことができるとともに、混合物M7をドラム181内の鉛直下方側に効果的に誘導することができる。
【0093】
法線322と直線187とのなす角度θ2は、前述した角度θ1よりも小さいのが好ましい。これにより、第2分散部材32の鉛直下方側の主面321が鉛直下方を向くこととなり、混合物M7をドラム181内の鉛直下方側にさらに効果的に誘導することができる。
【0094】
角度θ2は、2°以上、55°以下であるのが好ましく、5°以上35°以下であるのがより好ましい。これにより、混合物M7をドラム181内の鉛直下方側にさらに効果的に誘導することができる。
【0095】
このように、繊維体堆積装置1は、ドラム181内で、かつ、中心軸O181よりも鉛直上方側に偏在した位置に配置され、ドラム181内の材料である混合物M7を分散させる第2分散部材32を備える。これにより、第1分散部材31との相乗効果により、混合物M7をさらに効果的に分散させることができるとともに、ドラム181内の混合物M7を鉛直下方に誘導し、混合物M7の放出を促進することができる。
【0096】
具体的には、図5に示すように、混合物M7のダマが形成されたとしても、このダマは、一部が、第1分散部材31とドラム181の内周面184との間を通過して分散され、残部が第1分散部材31の主面311によって分散される。そして、これらは、図6に示すように、一部が、第2分散部材32とドラム181の内周面184との間を通過してさらに細かく分散され、残部が第2分散部材32の主面321によってさらに細かく分散される。そして、細かく分散された混合物M7は、ドラム181内を鉛直下方に誘導される。このように、ダマがほぐれた状態で混合物M7がドラム181内の鉛直下方に誘導されるため、より均一な放出を実現することができる。その結果、第2ウェブM8の幅方向での厚さ分布を所望、例えば、均一にすることができ、第2ウェブM8の品質を高めることができる。
【0097】
ここで、図7に示すように、第1分散部材31は、混合物M7の分散能が大なる第1部分31Aと、混合物M7の分散能が第1部分31Aよりも小さい第2部分31Bと、を有する。前述したように、第1分散部材31が行う混合物M7の分散とは、ドラム181内において、混合物M7、特に、第1分散部材31が混合物M7のダマ、塊と接触してほぐし、散らすことを言う。したがって、「分散能」とは、第1分散部材31が混合物M7を散らす能力のことを言う。分散能が大きい、その部分の周辺、特に、直下での混合物M7の存在比率が低く、分散能が小さいと、その部分の周辺、特に、直下での混合物M7の存在比率が高い。その結果、ドラム181のうち、分散能が「大」の部分の近傍の部位からの混合物M7の放出量は、ドラム181のうち、分散能が「小」の部分の近傍の部位からの混合物M7の放出量よりも少なくなる傾向を示す。
【0098】
第1分散部材31では、分散能が大なる第1部分31Aと、混合物M7の分散能が第1部分31Aよりも小さい第2部分31Bとが中心軸O181に沿った方向、すなわち、y軸方向の異なる位置に配置されている。本実施形態では、+y軸側から、第2部分31B、第1部分31Aおよび第2部分31Bの順で並んで配置されている。
【0099】
また、本実施形態では、第1部分31Aおよび第2部分31Bにおける第1分散部材31の幅、すなわち、ドラム181の内周面184との離間距離を異ならせることにより、分散能の差異を発現させている。具体的には、図7に示すように、第1部分31Aとドラム181の内周面184との離間距離をD1とし、第2部分31Bとドラム181の内周面184との離間距離をD2としたとき、D1<D2を満足する。特に、1.1・D1≦D2であるのが好ましく、1.3・D1≦D2≦5・D1であるのがより好ましい。このように、混合物M7が通過する部分の幅を異ならせることにより、第1部分31Aおよび第2部分31Bにおける分散能の差異をより顕著に発現させることができる。また、第1部分31Aおよび第2部分31Bにおける第1分散部材31の幅を異ならせるという簡単な構成により、分散能の差異を発現させることができる。
【0100】
D1およびD2の寸法は、特に限定されないが、例えば、ドラム181の内径が300mm~1000mmの場合、以下のような寸法が好ましい。
【0101】
D1は、5mm以上100mm以下であるのが好ましく、10mm以上50mm以下であるのがより好ましい。D2は、10mm以上150mm以下であるのが好ましく、20mm以上100mm以下であるのがより好ましい。D1およびD2をこのような数値範囲とすることにより、第1部分31Aと第2部分31Bとで分散能の差異をより確実に発現させつつ、第1部分31Aにおける分散能を十分に高めることができるとともに、第2部分31Bでの分散能も十分に高めることができる。
【0102】
また、図7に示すように、第1部分31Aの、第1分散部材31の長手方向、すなわち、y軸方向の長さL1は、第1分散部材31のy軸方向の長さLの10%以上90%以下であるのが好ましく、20%以上50%以下であるのがより好ましい。これにより、ドラム181内に導入される混合物M7の量によらず、第1部分31Aにて良好な分散を行うことができる。
【0103】
また、第1分散部材31の幅は、第1部分31Aにおいては、一定であり、第2部分31Bにおいても一定である。第1部分31Aにおける-z軸側の縁部は、y軸方向に沿った直線状をなしており、第2部分31Bにおける-z軸側の縁部も、y軸方向に沿った直線状をなしている。ただし、このような構成に限定されず、第1部分31Aにおける-z軸側の縁部は、y軸に対して傾斜していてもよく、湾曲した形状であってもよい。第2部分31Bにおける-z軸側の縁部も、y軸に対して傾斜していてもよく、湾曲した形状であってもよい。
【0104】
また、第1分散部材31では、+y軸側から、第2部分31B、第1部分31Aおよび第2部分31Bの順で並んで配置されている。すなわち、第1部分31Aは、中心軸O181に沿った方向の中央部に位置し、第2部分31Bは、第1部分31Aの両側に位置している。ここで、図2に示すように、ドラム181内には、y軸方向の両側に設けられた導入口180から混合物M7が気流に乗って導入されるため、図8に示すように、中央部付近で気流がぶつかり、当該部分に混合物M7が集まりやすく、しかも、混合物M7のダマ、塊が形成されやすい。仮に、第1分散部材31が省略されていたら、図10中破線で示すように、第2ウェブM8のy軸方向の中央部での厚さが厚くなる傾向を示す。このようなことを鑑みて、第1部分31Aは、中心軸O181に沿った方向の中央部に位置し、第2部分31Bは、第1部分31Aの両側に位置している構成とすることにより、中央部で形成された混合物M7のダマ、塊を集中的に分散し、図9に示すように、周囲に散らすことができる。よって、図10中実線で示すように、第2ウェブM8のy軸方向における厚さのムラを均すことができる。その結果、所望の厚さ分布を有する、特に、均一な厚さの第2ウェブM8を得ることができる。
【0105】
なお、本実施形態では、ドラム181の中央部に混合物M7が溜まりやすい構成であるため、このような構成としたが、その他の部位に溜まりやすい構成である場合、その傾向を把握し、その部分に第1部分31Aが対応するような形状の第1分散部材31を用意することにより、ドラム181の特性に応じて所望の厚さ分布を有する第2ウェブM8を得ることができる。
【0106】
また、例えば、ドラム181内で混合物M7がy軸方向に万遍なく存在する場合、第1部分31Aにて優先的にドラム181から混合物M7を放出することができる。その結果、第1分散部材31において第1部分31Aおよび第2部分31Bの形状、配置位置を適宜設定することにより、所望の厚さ分布を有する第2ウェブM8を得ることができる。すなわち、第1分散部材31は、第2ウェブM8の厚さ分布を調整する調整部材としても機能する。
【0107】
以上、説明したように、繊維体堆積装置1は、繊維を含む材料である混合物M7を放出する開口を有し、中心軸O181回りに回転するドラム181と、ドラム181内に配置され、中心軸O181に沿った方向に延在し、ドラム181内の混合物M7を分散させる第1分散部材31と、を備える。また、第1分散部材31は、中心軸O181に沿った方向の異なる位置に配置され、混合物M7の分散能が大なる第1部分31A、および、混合物M7の分散能が第1部分31Aよりも小さい第2部分31Bを有する。第1分散部材31を有することにより、第1分散部材31がドラム181内の混合物M7と衝突し、混合物M7を分散させることができる。よって、混合物M7がドラム181の開口から放出されるのを促進することができる。特に、第1分散部材31が第1部分31Aおよび第2部分31Bを有することにより、分散能が大なる第1部分31Aで分散された混合物M7を周囲、特に、第2部分31B側まで散らすことができる。このため、第1部分31Aおよび第2部分31Bの配置位置を適宜選択することにより、ドラム181の中心軸O181方向における混合物M7の放出量を調整することができる。その結果、第2ウェブM8の幅方向において、厚さ分布調整することができる。
【0108】
また、第1部分31Aおよび第2部分31Bは、別部材で構成され、互いに着脱可能に構成されていてもよい。この場合、第1部分31Aおよび第2部分31Bを所望の配置で組み立てることにより、第1分散部材31における第1部分31Aおよび第2部分31Bの位置を、ドラム181の特性に応じて適宜変更することができる。
【0109】
また、繊維構造体製造装置100は、上述した繊維体堆積装置1と、繊維体堆積装置1で形成された堆積物である混合物M7を成形する成形部20と、を備える。繊維体堆積装置1によって形成された所望の厚さ分布を有する第2ウェブM8を成形することにより、所望の強度分布を有する繊維構造体、すなわち、シートSを得ることができる。
【0110】
なお、上記では、第1分散部材31および第2分散部材32は、両端部がハウジング182の側壁に固定、支持されている構成について説明したが、本発明では、これに限定されず、一端部がハウジング182の側壁に固定、支持されている構成であってもよい。
【0111】
また、上記では、第1分散部材31および第2分散部材32は、板状をなしている構成について説明したが、本発明では、これに限定されず、棒状、櫛歯状等、いかなる形状であってもよい。
【0112】
<第2実施形態>
図11は、第2実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の平面図である。
【0113】
以下、この図を参照して本発明の繊維体堆積装置および繊維構造体製造装置の第2実施形態について説明するが、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0114】
図11に示すように、第1分散部材31は、2つの第1部分31Aと、第2部分31Bと、を有する。第1分散部材31では、+y軸側から第1部分31A、第2部分31Bおよび第1部分31Aの順で並んで配置されている。すなわち、中央部に第2部分31Bが位置しており、その両側に第1部分31Aが位置している。
【0115】
このような構成によれば、第1分散部材31の長手方向の両端部における分散能を大きくし、中央部での分散能を小さくすることができる。したがって、第1分散部材31の両端部にて分散された混合物M7が放射状に散って、中央部に集まる。その結果、図示はしないが、得られる第2ウェブM8は、幅方向、すなわち、y軸方向の中央部での厚さが厚くなる。
【0116】
このような本実施形態は、y軸方向の中央部での厚さが厚くなる第2ウェブM8を得たい場合に有利である。すなわち、得られるシートSのy軸方向の中央部での強度を高めたい場合に有利である。
【0117】
<第3実施形態>
図12は、第3実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の平面図である。
【0118】
以下、この図を参照して本発明の繊維体堆積装置および繊維構造体製造装置の第3実施形態について説明するが、前述した第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0119】
本実施形態では、第1分散部材31の第1部分31Aの-z軸側の端部は、y軸に対して傾斜した傾斜部311Aで構成されている。具体的には、各傾斜部311Aは、+z軸側に行くに従って、これらの離間距離が減少するように傾斜している。
【0120】
このような構成によれば、第2実施形態と同様の効果が得られるとともに、より多くの混合物M7を中央部に集めることができる。したがって、y軸方向の中央部での厚さがさらに厚くなる第2ウェブM8を得ることができるとともに、得られるシートSのy軸方向の中央部での強度をさらに高めることができる。
【0121】
<第4実施形態>
図13は、第4実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の平面図である。
【0122】
以下、この図を参照して本発明の繊維体堆積装置および繊維構造体製造装置の第4実施形態について説明するが、前述した第3実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0123】
図13に示すように、第1分散部材31の-z軸側の縁部は、+z軸側に向かって湾曲している。すなわち、各第1部分31Aの-z軸側の縁部と、第2部分31Bの-z軸側の縁部とは、連続した湾曲部312Aを構成する。さらに換言すれば、第1部分31Aおよび第2部分31Bの境界がなく、図示しないドラム181との離間距離が連続して変化している。
【0124】
このような本実施形態によれば、第3実施形態と同様の効果が得られる。さらに、y軸方向の厚さ分布がなだらかに変化する第2ウェブM8を得ることができるとともに、y軸方向の強度分布がなだらかに変化するシートSを得ることができる。
【0125】
<第5実施形態>
図14は、第5実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の平面図である。
【0126】
以下、この図を参照して本発明の繊維体堆積装置および繊維構造体製造装置の第5実施形態について説明するが、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0127】
図14に示すように、第1分散部材31の-z軸側の縁部は、y軸方向の中央を境にして互いに反対方向に傾斜する傾斜部313で構成される。各傾斜部313は、+z軸側に行くに従ってこれらの離間距離が増大するように傾斜している。
【0128】
このような本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。さらに、y軸方向の厚さ分布がなだらかに変化する第2ウェブM8を得ることができるとともに、y軸方向の強度分布がなだらかに変化するシートSを得ることができる。
【0129】
<第6実施形態>
図15は、第6実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の平面図である。
【0130】
以下、この図を参照して本発明の繊維体堆積装置および繊維構造体製造装置の第6実施形態について説明するが、前述した第5実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0131】
図15に示すように、第1分散部材31の-z軸側の縁部は、+z軸側に向かって湾曲している。すなわち、各第1部分31Aの-z軸側の縁部と、第2部分31Bの-z軸側の縁部とは、連続した湾曲部314を構成する。さらに換言すれば、第1部分31Aおよび第2部分31Bの境界がなく、図示しないドラム181の内周面184との離間距離が連続して変化している。
【0132】
このような本実施形態によれば、第5実施形態と同様の効果が得られる。さらに、y軸方向の厚さ分布がよりなだらかに変化する第2ウェブM8を得ることができるとともに、y軸方向の強度分布がよりなだらかに変化するシートSを得ることができる。
【0133】
<第7実施形態>
図16は、第7実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の平面図である。
【0134】
以下、この図を参照して本発明の繊維体堆積装置および繊維構造体製造装置の第7実施形態について説明するが、前述した各実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0135】
図16に示すように、第1分散部材31の-z軸側の縁部は、傾斜した傾斜部315で構成される。換言すれば、第1部分31Aおよび第2部分31Bの境界がなく、図示しないドラム181の内周面184との離間距離が連続して変化している。図示に構成では、+y軸側の部分でのドラム181の内周面184との離間距離は、-y軸側の部分でのドラム181の内周面184との離間距離よりも小さい。
【0136】
このような本実施形態によれば、第1分散部材31により分散された混合物M7は、全体として-y軸側、すなわち、第2部分31B側に集まりやすくなる。したがって、図示はしないが、第2ウェブM8のy軸方向の一方側の厚さを厚くし、他方側を薄くしたい場合に有利であり、シートSのy軸方向の一方側の強度を他方側よりも高めたい場合に有利である。
【0137】
<第8実施形態>
図17は、第8実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の平面図である。
【0138】
以下、この図を参照して本発明の繊維体堆積装置および繊維構造体製造装置の第8実施形態について説明するが、前述した各実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0139】
図17に示すように、第1分散部材31では、第1部分31A、第2部分31B、第1部分31A、第2部分31Bおよび第1部分31Aの順で+y軸側から並んで配置されている。すなわち、第1部分31Aおよび第2部分31Bは、複数ずつ、交互に並んで配置されている。これにより、混合物M7をy軸方向の全域にわたってムラなく分散させることができるとともに、図示はしないが、第2ウェブM8のy軸方向において、厚い部分と薄い部分とを交互に形成することができる。また、シートSのy軸方向において、強度が高い部分を複数形成することができる。
【0140】
また、第1分散部材31のy軸方向の両端部では、-z軸側の端部が、中央部の第1部分31Aまで傾斜した傾斜部316で構成される。各傾斜部316は、+z軸側に行くに従って、これらの離間距離が減少するように傾斜している。これにより、第1分散部材31のy軸方向の両端側の混合物M7を中央部の第1部分31A側に集めることができる。よって、上述したような特性を有するとともに、図示はしないが、第2ウェブM8の中央部での厚さをより厚くし、シートSの中央部の強度をより高めることができる。
【0141】
<第9実施形態>
図18は、第9実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の平面図である。
【0142】
以下、この図を参照して本発明の繊維体堆積装置および繊維構造体製造装置の第9実施形態について説明するが、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0143】
図18に示すように、第1分散部材31は、メッシュ状をなす板状体で構成される。また、第1分散部材31では、メッシュの網の目の部分が、混合物M7が通過する開口317である。また、第1分散部材31では、y軸方向の中央部におけるメッシュの粗さと、その両側の部分でのメッシュの粗さとが異なっている。図示の構成では、中央部のがメッシュが密であり、その両側の部分が疎である。そして、メッシュが密の中央部が第1部分31Aであり、その両側の部分が第2部分31Bである。
【0144】
換言すれば、第1分散部材31は、板状をなし、第1分散部材31の厚さ方向に貫通する貫通孔で構成される複数の開口317を有する。そして、第1部分31Aでの開口317の形成密度は、第2部分31Bの両側の部分での開口317の形成密度よりも小さい。このような第1分散部材31では、第1部分31Aにおいては、メッシュの開口を通過する混合物M7が比較的少なく、分散能が大きい。一方、第2部分31Bでは、メッシュの開口を通過する混合物M7が第1部分31Aよりも多いため、第1部分31Aよりも分散能が小さい。したがって、図18に示すように、第1部分31Aで分散された混合物M7は、両側、すなわち、第2部分31B側に向かって移動しやすくなる。したがって、第1実施形態と同様に、y軸方向の厚さ分布が均一な第2ウェブM8を形成する場合に有利である。特に、開口の形成密度によって、分散能の差異を発現させる構成であるため、図示しないドラム181の内周面184との離間距離が、第1部分31Aおよび第2部分31Bで同じにすることができる。よって、ドラム181内における設置位置の調整を簡単に行うことができる。
【0145】
<第10実施形態>
図19は、第10実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の平面図である。
【0146】
以下、この図を参照して本発明の繊維体堆積装置および繊維構造体製造装置の第10実施形態について説明するが、前述した第9実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0147】
図19に示すように、第1分散部材31は、貫通孔で形成された開口318を有する板状体で構成される。開口318は、平面視で円形をなしている。ただし、この構成に限定されず、開口318の形状は、楕円形、矩形等、いなかる形状であってもよい。また、開口318の形成密度は、中央部の第1部分31Aでは小さく、その両側の第2部分31Bでは、第1部分31Aよりも大きい。
【0148】
換言すれば、第1分散部材31は、板状をなし、第1分散部材31の厚さ方向に貫通する貫通孔で構成される複数の開口318を有する。そして、第1部分31Aでの開口318の形成密度は、第2部分31Bの両側の部分での開口318の形成密度よりも小さい。これにより、前記第9実施形態と同様の効果が得られる。さらに、本実施形態によれば、仮に板状部材がドラム181内に設置されていた場合、その板状部材に例えばパンチングを行うという簡単な方法により、第1分散部材31を得ることができる。
【0149】
<第11実施形態>
図20は、第11実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の平面図である。
【0150】
以下、この図を参照して本発明の繊維体堆積装置および繊維構造体製造装置の第11実施形態について説明するが、前述した第9実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0151】
図20に示すように、第1分散部材31は、-z軸側に櫛歯を有する板状体で構成される。第1分散部材31では、隣り合う歯の間が開口319である。また、歯の形成密度、すなわち、開口319の形成密度は、中央部の第1部分31Aでは小さく、その両側の第2部分31Bでは、第1部分31Aよりも大きい。
【0152】
換言すれば、第1分散部材31は、板状をなし、第1分散部材31の厚さ方向に貫通する貫通孔で構成される複数の開口319を有する。そして、第1部分31Aでの開口319の形成密度は、第2部分31Bの両側の部分での開口319の形成密度よりも小さい。これにより、前記第9実施形態と同様の効果が得られる。さらに、本実施形態によれば、仮に板状部材がドラム181内に設置されていた場合、その板状部材にz軸方向に延在する複数のスリットを形成するという簡単な方法により、第1分散部材31を得ることができる。
【0153】
<第12実施形態>
図21は、第12実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の平面図である。図22は、図21に示す第1分散部材の側面図である。
【0154】
以下、これらの図を参照して本発明の繊維体堆積装置および繊維構造体製造装置の第12実施形態について説明するが、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0155】
図21および図22に示すように、本実施形態では、第1分散部材31は、第1板状体31Cと、第2板状体31Dと、これらを連結する連結部31Eと、を有する。第2板状体31Dは、第1板状体31Cよりもy軸方向の長さおよびz軸方向の長さが短い。第2板状体31Dは、第1板状体31Cの+x軸側で、かつ、第1板状体31Cから離間して連結部31Eを介して第1板状体31Cに対して固定されている。また、連結部31Eは、第1板状体31Cの中央部に対応する位置に固定されている。
【0156】
このような本実施形態によれば、第1分散部材31の中央部においては、第2板状体31Dおよび第1板状体31Cの順で混合物M7と衝突し、分散させる。一方、第1分散部材31の中央部の両側の部分では、第1板状体31Cのみが混合物M7と衝突し、分散させる。したがって、衝突回数が多い分、第1分散部材31の中央部における分散能が、中央部の両側の部分よりも大きい。このため、第1分散部材31の中央部が第1部分31Aとして機能し、その両側の部分が第2部分31Bとして機能する。
【0157】
このような本実施形態によれば、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。さらに、本実施形態によれば、仮に板状部材がドラム181内に設置されていた場合、その板状部材の+y軸側に第2板状体31Dを後から設置するという簡単な方法により、第1分散部材31を得ることができる。
【0158】
<第13実施形態>
図23は、第13実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の斜視図である。
【0159】
以下、これらの図を参照して本発明の繊維体堆積装置および繊維構造体製造装置の第13実施形態について説明するが、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0160】
図23に示すように、第1分散部材31には、y軸方向の中央部に、互いに離間する一対の切れ込み31Fが形成されている。切れ込み31Fは、第1分散部材31の-z軸側の縁部から、第1分散部材31の幅方向、すなわち、z軸方向の途中まで形成されている。そして、これらの切れ込み31Fの間の部分が+z軸側に折り曲げられて折り曲げ部31Gが形成されている。
【0161】
このような本実施形態によれば、第1分散部材31の中央部においては、折り曲げ部31Gが先に図示しない混合物M7と衝突し、その後、第1分散部材31の折り曲げ部31G以外の部分が混合物M7と衝突する。したがって、先に衝突するため、折り曲げ部31Gでの分散能は、折り曲げ部31G以外の部分よりも分散能が大きい。このため、中央部の折り曲げ部31Gが第1部分31Aとして機能し、折り曲げ部31Gの両側の部分が第2部分31Bとして機能する。
【0162】
このような本実施形態によれば、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。さらに、本実施形態によれば、仮に板状部材がドラム181内に設置されていた場合、その板状部材の+y軸側の縁部に切れ込み31Fを形成し、折り曲げて折り曲げ部31Gを形成するという簡単な方法により、第1分散部材31を得ることができる。また、折り曲げ部31Gの折り曲げ角度を調整することにより、第1部分31Aでの分散能を簡単に調整することができる。
【0163】
<第14実施形態>
図24は、第14実施形態に係る繊維体堆積装置が備える第1分散部材の斜視図である。
【0164】
以下、これらの図を参照して本発明の繊維体堆積装置および繊維構造体製造装置の第14実施形態について説明するが、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0165】
図24に示すように、本実施形態では、第1分散部材31は、中央部が+x軸側に向かって突出するように折れ曲がった折り曲げ部31Hを有する折り曲げ部31Hの稜線は、z軸方向、すなわち、第1分散部材31の幅方向に延在している。このような本実施形態によれば、折り曲げ部31Hが先に混合物M7と接触し、その際、折り曲げ部31Hの頂部が混合物M7を効率よく分散させることができる。そして、混合物M7は、頂部を介して+y軸側および-y軸側の双方に分裂させることができる。
【0166】
このように、本実施形態では、折り曲げ部31Hが第1部分31Aであり、その両側の部分、すなわち、平板上の部分が第2部分31Bである。
【0167】
このような本実施形態によっても、前記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、仮に板状部材がドラム181内に設置されていた場合、その中央部を折り曲げるという簡単な方法により、中央部に第1部分31Aを有し、その両側に第2部分31Bを有する第1分散部材31を得ることができる。
【0168】
以上、本発明の繊維体堆積装置および繊維構造体製造装置を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、繊維体堆積装置および繊維構造体製造装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0169】
100…繊維構造体製造装置、1…繊維体堆積装置、11…原料供給部、12…粗砕部、13…解繊部、14…選別部、15…第1ウェブ形成部、16…細分部、17…混合部、18…分散部、19…第2ウェブ形成部、20…成形部、21…切断部、22…ストック部、27…回収部、28…制御部、31…第1分散部材、31A…第1部分、31B…第2部分、31C…第1板状体、31D…第2板状体、31E…連結部、31F…切れ込み、31G…折り曲げ部、31H…折り曲げ部、32…第2分散部材、121…粗砕刃、122…シュート、141…ドラム部、142…ハウジング、151…メッシュベルト、152…張架ローラー、153…吸引部、161…プロペラ、162…ハウジング、170…ハウジング、171…添加剤供給部、172…管、173…ブロアー、174…スクリューフィーダー、180…導入口、181…ドラム、182…ハウジング、183…駆動源、184…内周面、185…直線、186…部分、187…直線、191…メッシュベルト、192…張架ローラー、193…吸引部、201…加圧部、202…加熱部、203…カレンダーローラー、204…加熱ローラー、211…第1カッター、212…第2カッター、231…加湿部、232…加湿部、233…加湿部、234…加湿部、235…加湿部、236…加湿部、241…管、242…管、243…管、244…管、245…管、246…管、261…ブロアー、262…ブロアー、263…ブロアー、281…CPU、282…記憶部、311…主面、311A…傾斜部、312…法線、312A…湾曲部、313…傾斜部、314…湾曲部、316…傾斜部、317…開口、318…開口、319…開口、321…主面、322…法線、D1…離間距離、D2…離間距離、D3…離間距離、M1…原料、M2…粗砕片、M3…解繊物、M4-1…第1選別物、M4-2…第2選別物、M5…第1ウェブ、M6…細分体、M7…混合物、M8…第2ウェブ、O181…中心軸、S…シート、P1…樹脂、θ1…角度、θ2…角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
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