(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】バッテリー温度調節装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6568 20140101AFI20240709BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240709BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240709BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240709BHJP
H01M 10/617 20140101ALI20240709BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20240709BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20240709BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20240709BHJP
B60L 50/64 20190101ALN20240709BHJP
B60L 58/33 20190101ALN20240709BHJP
B60L 58/34 20190101ALN20240709BHJP
【FI】
H01M10/6568
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6556
H01M10/617
H01M10/615
H01M10/633
B60H1/22 671
B60L50/64
B60L58/33
B60L58/34
(21)【出願番号】P 2020028009
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】橋本 篤徳
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-346922(JP,A)
【文献】特開2016-45981(JP,A)
【文献】特開2019-55649(JP,A)
【文献】特開2015-123922(JP,A)
【文献】特開2019-43178(JP,A)
【文献】特開2003-287328(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0247713(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0097288(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0151302(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6568
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/6556
H01M 10/617
H01M 10/615
H01M 10/633
B60H 1/22
B60L 50/64
B60L 58/33
B60L 58/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーに熱交換液を噴射する複数の噴射部と、
複数の前記噴射部から前記バッテリーに噴射された熱交換液を回収する集液部と、前記集液部で回収した熱交換液を貯留する貯留部と、
前記貯留部に貯留された熱交換液を複数の前記噴射部に供給するポンプと、
前記貯留部から前記ポンプに熱交換液を供給する供給流路に熱交換液の温度を外気温より低減できるチラー部と、を備え
、
前記バッテリーは複数のセルを備え、両端近くの前記セルに噴射する熱交換液の単位時間あたりの噴射量と比較して中央に位置する前記セルへの熱交換液の単位時間あたりの噴射量が多くなるように噴射部が構成されているバッテリー温度調節装置。
【請求項2】
前記貯留部に、冷熱を蓄える蓄冷デバイスが配置されている請求項1に記載のバッテリー温度調節装置。
【請求項3】
前記供給流路は、熱交換液の供給先を前記噴射部と、前記蓄冷デバイスとに切換可能な三方弁を備えている請求項2に記載のバッテリー温度調節装置。
【請求項4】
前記供給流路に、熱交換液の温度上昇を図るヒータ部を備えている請求項1~3の何れか一項に記載のバッテリー温度調節装置。
【請求項5】
前記集液部の底面は、回収した熱交換液を流下させる傾斜姿勢を有しており、
前記集液部は、回収した熱交換液の液面より高い位置に前記バッテリーを支持する支持構造を有している請求項1~4の何れか一項に記載のバッテリー温度調節装置。
【請求項6】
前記供給流路において、前記貯留部に貯留された熱交換液を吸引する位置にストレーナを備えている請求項1~5の何れか一項に記載のバッテリー温度調節装置。
【請求項7】
前記貯留部より下側に配置した制御ケースに、前記ポンプと、前記チラー部とを収容しており、前記チラー部は、前記制御ケースの外部に配置されたコンプレッサで圧縮され、コンデンサで液化された冷媒が供給される請求項1~6の何れか一項に記載のバッテリー温度調節装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリー温度調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバッテリー温度調節装置として、特許文献1には、冷却油が貯留される電池トレイにバッテリーを備え、温度センサで検知されるバッテリーの温度が上昇した場合に、冷却油をスプレーノズルからバッテリーに噴射してバッテリーの冷却を可能にする構成が記載されている。
【0003】
この特許文献1に記載されたバッテリー温度調節装置は、電気自動車に備えられるバッテリーを均一に冷却することを課題にするものであり、バッテリーは電池トレイの冷却油に対して一部が浸漬する状態で備えられている。また、特許文献1には、スプレーノズルによって冷却油を噴射する場合に、冷却油の噴射方向を横方向と上下方向に往復作動させる制御形態や、電池トレイの冷却油をラジエータで冷却するように冷却ファンを作動させる制御形態が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハイブリッド型車両を例に挙げると、走行用の電動モータに電流を供給するバッテリーは、温度により性能が変化するものであり、例えば、車体が高温の環境下に長時間駐車された状況にある場合には、バッテリーの温度上昇により性能が低下し必要とする電流が得られないこともあった。
【0006】
このようなバッテリーの温度による性能低下は、バッテリーの低温化によっても現れるものであった。
【0007】
これに対し、特許文献1に記載される構成では、冷却油をスプレーノズルからバッテリーに噴射することによりバッテリーの温度低下を図るものであるが、冷却油の温度低下を図るために、冷却油をラジエータに供給するものであった。この構成では、冷却油の温度を外気温より低い温度まで低下させることが不可能であり改善の余地があった。
【0008】
このような理由から、高温の環境下でもバッテリーの温度を適正に維持できる温度調節装置が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るバッテリー温度調節装置の特徴構成は、バッテリーに熱交換液を噴射する複数の噴射部と、複数の前記噴射部から前記バッテリーに噴射された熱交換液を回収する集液部と、前記集液部で回収した熱交換液を貯留する貯留部と、前記貯留部に貯留された熱交換液を複数の前記噴射部に供給するポンプと、前記貯留部から前記ポンプに熱交換液を供給する供給流路に熱交換液の温度を外気温より低減できるチラー部と、を備え、前記バッテリーは複数のセルを備え、両端近くの前記セルに噴射する熱交換液の単位時間あたりの噴射量と比較して中央に位置する前記セルへの熱交換液の単位時間あたりの噴射量が多くなるように噴射部が構成されている点にある。
【0010】
この特徴構成によると、熱交換液の温度をチラー部において外気温より低下させることが可能となるため、例えば、バッテリーを備えた車両を夏期のような高温の環境に長時間駐車した場合のように、バッテリーが温度上昇に伴い性能が低下しても、ポンプを駆動し、チラー部を作動させることにより、チラー部で低温化した熱交換液を複数の噴射部からバッテリーに噴射してバッテリーの冷却(放熱)を容易に行える。また、この構成では、バッテリーに噴射された熱交換液を集液部で回収し貯留部で貯留し、このように貯留部に貯留された熱交換液をポンプによって噴射部に供給するため、熱交換液を循環させることになり装置全体の小型化も可能となる。
従って、高温の環境下でもバッテリーの温度を適正に維持し、バッテリーを良好な性能で使用できる温度調節装置が構成された。
また、この特徴構成によると、複数のセルのうち、両端近くのセルに噴射する熱交換液の単位時間あたりの噴射量と比較して、複数のセルの中央の位置のものに噴射する熱交換液Lの単位時間あたりの噴射量を多く設定することにより、中央位置のセルを積極的に冷却し良好な温度管理を実現する。
【0011】
上記構成に加えた構成として、前記貯留部に、冷熱を蓄える蓄冷デバイスが配置されても良い。
【0012】
これによると、例えば、冷熱を蓄えた蓄冷デバイスに熱交換液を接触させて熱交換液の温度低下を図っておき、温度が低下した熱交換液を噴射部からバッテリーに供給することで、チラー部の熱交換液の性能(例えば、熱量/h)を超えてバッテリーの放熱を行うことも可能となる。また、この構成では、例えば、バッテリーの温度を僅かに低下させる場合にはチラー部を作動させることなく、ポンプを作動させ熱交換液を噴射部から噴射するだけでバッテリーの放熱を行える。
【0013】
上記構成に加えた構成として、前記供給流路は、熱交換液の供給先を前記噴射部と、前記蓄冷デバイスとに切換可能な三方弁を備えても良い。
【0014】
これによると、三方弁によって熱交換液の供給先を噴射部に設定した場合にはポンプで供給される熱交換液を噴射部からバッテリーに噴射してバッテリーの温度調節を可能にする。また、三方弁によって熱交換液の供給先を蓄冷デバイスに設定した場合には、ポンプで供給される熱交換液を蓄冷デバイスに送り、熱交換液の冷熱を蓄冷デバイスに蓄えることも可能となる。尚、このように蓄冷デバイスに冷熱を蓄える場合には、チラー部によって熱交換液を低温化することにより冷熱を蓄えられる。
【0015】
上記構成に加えた構成として、前記供給流路に、熱交換液の温度上昇を図るヒータ部を備えても良い。
【0016】
これによると、例えば、車両を冬期のように低温の環境に長時間駐車した場合のように、バッテリーの温度が低下した状況にあっても、ヒータ部を駆動し、ポンプを駆動することにより、高温化した熱交換液を複数の噴射部から噴射してバッテリーの温度上昇を容易に行える。
【0017】
上記構成に加えた構成として、前記集液部の底面は、回収した熱交換液を流下させる傾斜姿勢を有しており、前記集液部は、回収した熱交換液の液面より高い位置に前記バッテリーを支持する支持構造を有しても良い。
【0018】
これによると、バッテリーに噴射された熱交換液を、集液部の傾斜姿勢の底面を流下させ、貯留部に貯留することが可能となる。また、貯留部に貯留された熱交換液がバッテリーに接触しないため、貯留部に貯留された熱交換液の温度がバッテリーの性能を低下させる温度であっても、熱交換液を噴射部からバッテリーに噴射するだけでバッテリーの温度を短時間のうちに適温に移行できる。
【0019】
上記構成に加えた構成として、前記供給流路において、前記貯留部に貯留された熱交換液を吸引する位置にストレーナを備えても良い。
【0020】
これによると、熱交換液に微粒子等が混入した場合には、ストレーナで除去することが可能となり、噴射部での噴射性能を低下させることもない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図7】別実施形態(a)のチラー部の構成の概要を示す図である。
【
図8】別実施形態(a)のチラー部の断面を示す図である。
【
図9】別実施形態(b)の噴射部の配置を示す平面図である。
【
図10】別実施形態(b)の噴射部の配置を示す平面図である。
【
図11】別実施形態(c)の温度調節装置の構成の概要を示す図である。
【
図12】別実施形態(d)の温度調節装置の構成の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1に示すように、左右一対の前車輪1と左右一対の後車輪2とを備えた車体3の前部にエンジン4と、電動型の走行モータ5とを備え、車体3のキャビンのフロアーの下側にリチウムイオン二次電池で構成されるバッテリーBを備えることでハイブリッド型の車両が構成されている。
【0023】
このハイブリッド型の車両は、エンジン4と走行モータ5との少なくとも一方の駆動力で走行可能に構成され、走行モータ5の駆動力を得る場合には、バッテリーBの直流電流をインバータ(図示せず)により交流電流に変換して走行モータ5に供給する。
【0024】
ハイブリッド型の車両は、走行モータ5が発電機としても機能し、例えば、車両の走行速度を減ずる場合や、車両が坂道を下る場合には回生制動により走行モータ5で発電した電流がバッテリーBに充電される。
【0025】
バッテリーBは、温度により放電性能と充電性能とが変化する。このような理由から、この車両は、バッテリーBが放電する際の発熱や、充電する際の発熱に伴うバッテリーBの性能の低下、あるいは、外気温の影響によるバッテリーBの性能低下を抑制することでバッテリーBを良好な性能に維持するバッテリー温度調節装置C(以下、温度調節装置Cと略称する)を備えている。
【0026】
〔温度調節装置〕
図2に示すように、バッテリーBは、複数のセル7を密着状態で積層することで1つのブロックとして構成され、密封構造のバッテリーケースAに収容されている。
図2に示すように温度調節装置Cは、バッテリーケースAの内部でバッテリーBに対し、
図4に示す複数の噴射部22から熱交換液Lを噴射することにより温度調節を実現する。
【0027】
温度調節装置Cは、
図2、
図3に示すように複数の噴射部22に熱交換液Lを供給する電動型の供給ポンプ19と、電動型の三方弁としての切換弁20と、吐出流路21とを含む構成を備えると共に、供給流路16に送られる熱交換液Lの温度を調節するチラー部17とヒータ部18と蓄冷デバイス24とを備え、バッテリーケースAと、
図5に示すように制御ユニット36を含む制御構成を備えている。これらの構成と作動形態とは後述する。
【0028】
熱交換液Lは、熱輸送効率が高く、電気絶縁性が高いフロリナート(スリーエム社の商標名)等のフッ素系不活性液体が用いられる。尚、熱交換液Lは、フロリナート(商標名)に限るものでなく、効率的な温度管理を実現するために粘性や電気絶縁性等を考慮して任意の液体の利用が可能である。
【0029】
図2、
図3に示すように、バッテリーケースAは、上部ケース10と下部ケース11とを有しており、下部ケース11は熱交換液Lを貯留する貯留空間として機能する。この下部ケース11は、バッテリーBに噴射された熱交換液Lを流下させる傾斜姿勢の底壁を有する集液部11aと、集液部11aの底壁に沿って流下する熱交換液Lを貯留する貯留部11bとを備えている。
図2に示すバッテリーケースAは、同図の左右方向が車体3の前後方向に対応しており、貯留部11bは車体3の前側あるいは後側に配置される。尚、
図2に示すバッテリーケースAは、同図の左右方向を車体3の左右方向に対応して配置することも可能であり、貯留部11bは車体3の任意の位置に配置することも可能である。
【0030】
温度管理装置Cは、
図3に示すように、下部ケース11の下側に制御ケース12を配置しており、この制御ケース12に対して熱交換液Lの温度を制御するためのチラー部17とヒータ部18と供給ポンプ19等が収容されている。尚、制御ケース12は、必ずしも下部ケース11の下側に配置する必要はなく、任意の位置に配置することが可能である。
【0031】
下部ケース11は、熱交換液Lを貯留部11bだけに貯留するものではなく、
図2に示すように集液部11aから貯留部11bに亘る領域に熱交換液Lを貯留する。これにより、下部ケース11に貯留される熱交換液Lの液面Lsは、集液部11aを構成する下部ケース11の底面より高い位置に維持される。
【0032】
下部ケース11の内部のうち集液部11aの上側に支持枠13を備え、この支持枠13の上部に対し、液面Lsより上方に突出する複数の支持体14(支持構造の一例)を備え、複数の支持体14でバッテリーBを支持している。
図2、
図3に示すように複数の支持体14にバッテリーBを載置することにより熱交換液Lの液面Lsより高い位置にバッテリーBが支持される。
【0033】
図2に示すように、支持枠13は、バッテリーBを熱交換液Lの流通を許すようにバッフルプレート、パンチングメタル、あるいは、開口を有する板材等が用いられている。また、同図に示すように、集液部11aと貯留部11bとの境界位置に対し、支持枠13と同じ材料で縦壁状の仕切壁部13aを配置している。この仕切壁部13aを備えることにより、車体3の姿勢が急激に変動した場合でも貯留部11bの熱交換液Lの集液部11aへの流出を抑制し、貯留部11bの熱交換液Lの温度変化を抑制している。
【0034】
〔温度調節装置の具体的構成〕
図2、
図3に示すように、切換弁20は、吐出流路21に熱交換液Lを送り出す温調側ポート20aと、蓄冷流路23に熱交換液Lを送り出す蓄冷側ポート20bとを備えている。ストレーナ15は、熱交換液Lに含まれる塵埃等を取り除く機能だけでなく、下部ケース11の貯留部11bから熱交換液Lを吸引する。
【0035】
吐出流路21に複数の噴射部22が接続している。複数の噴射部22は、吐出流路21から送られる熱交換液LをバッテリーBに噴射するノズルとして機能するものである。
図4に示すように、供給ポンプ19から熱交換液Lが直接供給される中央の吐出流路21が、バッテリーBの幅方向の中央(
図4で左右方向の中央)において、複数のセル7が積層する方向に延びるように配置され、更に、中央の吐出流路21が枝状に分岐する吐出流路21の延出端に噴射部22が配置されている。
【0036】
特に、バッテリーBを構成する複数のセル7のうち両端近くのセル7に噴射する熱交換液Lの単位時間あたりの噴射量と比較して、複数のセル7の中央の位置のものに噴射する熱交換液Lの単位時間あたりの噴射量が多くなるように噴射部22が構成されている。
【0037】
つまり、
図2、
図4に示すように、複数のセル7が密着状態で配置されているため、放熱時や充電時において複数のセル7の積層方向で中央位置のセル7が放熱し難く、この中央位置のセル7を積極的に冷却するために複数の噴射部22の熱交換液Lの単位時間あたりの噴射量に差が設定されている。
【0038】
また、
図2、
図3に示すように、蓄冷流路23から熱交換液Lが供給される蓄冷デバイス24を備えている。蓄冷デバイス24は、融解温度を20℃に設定した潜熱蓄熱材(例えば、PCM:Phase Change Material )を樹脂容器等に封入したものであり、貯留部11bの熱交換液Lの液面Lsより下側に浸漬して配置されている。更に、蓄冷流路23から供給される熱交換液Lが蓄冷デバイス24の外面に接触して流れるように、これらの位置関係が設定されている。尚、蓄冷デバイス24は、例えば、固体の状態、あるいは、液体の状態を維持したまま(相変化を行うことなく)蓄熱を行うものであっても良い。
【0039】
尚、蓄冷デバイス24のPCMを用いた潜熱蓄熱材の融解温度は、20℃に限るものではなく、これより低い値であっても、高い値であっても良い。また、蓄冷デバイス24は、ブロック状のものに限らす、塊状のものを複数用いても良い。また、蓄冷デバイス24は、表面に多数の凹凸やフィンを形成したものでも良い。
【0040】
これにより、切換弁20で熱交換液Lを流すポートとして蓄冷側ポート20bを設定し、チラー部17を作動させ、供給ポンプ19を駆動することにより、下部ケース11の貯留部11bに貯留された熱交換液Lをストレーナ15で吸引し、供給流路16のチラー部17で低温化して蓄冷流路23から蓄冷デバイス24に供給することになり、蓄冷デバイス24に冷熱を蓄えることが可能となる。
【0041】
〔温度調節装置:チラー部〕
チラー部17は、供給流路16に送られる熱交換液Lの温度を外気温より低減する機能を有するものであり、キャビンの冷房を実現するために車体3に備えた空調システムに用いられる冷媒が供給されることにより熱交換液Lの低温化を実現する。
【0042】
つまり、
図3に示すように、車体3には空調システムとして、冷媒を圧縮する電動型のコンプレッサ26と、圧縮された冷媒が送られる冷媒流路27と、圧縮された冷媒を放熱することで液化するコンデンサ28とを備え、冷媒流路27から冷媒が供給される第1膨張弁30およびエバポレータとして機能する熱交換器31を備えている。
【0043】
更に、空調システムは、冷媒流路27に第2膨張弁32を備えており、この第2膨張弁32の下流側にチラー部17を配置している。チラー部17は、第2膨張弁32で膨張した冷媒が供給されることで熱交換器31と同様に低温化し、供給流路16に送られる熱交換液Lの温度低下を実現する。
【0044】
車両には、空調を制御するためマイクロプロセッサ等を有した空調制御部(図示せず)を備えており、キャビン内の冷却を行う際には空調制御部が、コンプレッサ26を駆動して冷媒を供給することにより熱交換器31でキャビン内の温度低下が行われる。
【0045】
これに対し、温度調節装置Cは、チラー部17で熱交換液Lの低温化を図る場合に、例えば、空調によりキャビン内の温度が目標温度まで低下し熱交換器31に対する冷媒の供給を停止したタイミングでチラー部17に冷媒を送り出す制御も可能である。
【0046】
この制御では、温度調節装置Cの熱交換液Lの温度低下を図る温度制御が、空調システムによるキャビン内の温度制御に優先して実行される。尚、キャビン内の温度が目標温度に達していない場合には、チラー部17に冷媒を供給して熱交換液Lの温度低下を図る制御を行い、この制御と並行して、例えば、予め設定されたインターバルで、設定された短い時間だけ空調システムに冷媒を供給してキャビン内の温度制御を行うように制御形態を設定することも考えられる。
【0047】
特に、チラー部17を、ペルチェ素子を用いて構成することも考えられる。このようにペルチェ素子を用いるものでは、素子に供給する電流の制御により、任意のタイミングで温度を管理することが可能となり、構造も単純化できる。
【0048】
〔温度調節装置:ヒータ部〕
ヒータ部18は、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータが用いられている。このようにPTCヒータを用いることにより、ヒータ部18に電流を供給して発熱させ、このヒータ部18に接触することにより熱交換液Lの温度上昇を図るように構成されている。
【0049】
尚、ヒータ部18は、通電によりジュール熱を発生させる発熱体の使用が可能である。また、バッテリーBの直流電流を交流電流に変換するインバータの熱を利用するように構成することも可能である。
【0050】
〔制御構成:制御形態〕
図5に示すように温度調節装置C(バッテリー温度調節装置)は、マイクロプロセッサあるいはDSP(digital signal processor)で成る制御ユニット36を備えている。
【0051】
複数のセル7の夫々に温度センサ37を備えており、この制御ユニット36は、複数の温度センサ37の温度情報である検知情報を取得すると共に、バッテリーBの充放電情報を取得する。制御ユニット36は、ヒータ部18と、供給ポンプ19と、切換弁20と、コンプレッサ26とに制御信号を出力する。
【0052】
この制御ユニット36は、メモリに記憶されたソフトウエアが
図6に示すフローチャートに基づき
図2、
図3に示すハードウエアを制御することでバッテリーBの温度調節を実現する。
【0053】
つまり、取得された充放電情報に基づいてバッテリーBが充電も放電も行われていないことを判定した場合には、供給ポンプ19を停止し(既に停止している場合には、停止状態を維持する:#101のNo、#102ステップ)、本制御をリターンする。つまり、#101ステップは、充電時と放電時とにバッテリーBが発熱するため、発熱する際に制御を実行するための判断である。
【0054】
これに対し、バッテリーBが充電または放電する状況にあることを判定した場合には(#101ステップのYes)、複数のセル7の温度センサ37の検知情報を取得し、セル温度TCを設定する(#103ステップ)。
【0055】
複数のセル7は積層する構造であるため温度差を生じやすく、#103ステップでは複数の温度センサ37の検知情報を平均した値をセル温度TCに設定している。
【0056】
特に、後述する#105ステップは、全てのセル7の温度を例えば10℃より高い温度に上昇させる処理であるため、複数の温度センサ37で取得する検知情報のうち最も低い値をセル温度TCに設定することが考えられる。また、後述する#112ステップは、全てのセル7の温度を例えば35℃以下の温度に低下させる処理であるため、複数の温度センサ37で取得する検知情報のうち最も高い値をセル温度TCに設定することが考えられる。
【0057】
このように、温度調節装置CでバッテリーBの温度を管理する場合には、複数の温度センサ37の検知情報に基づき、所定の演算によって求めた複数のセル温度TCを記憶しておき、記憶した複数のセル温度TCのうち制御に適したセル温度TCを用いるように制御形態を設定しても良い。
【0058】
次に、制御ユニット36は、セル温度TCが10℃以下であることを判定した場合には(#104ステップのYes)、供給ポンプ19を駆動し(ポンプ:ON)、ヒータ部18で加熱を行い(ヒータ:ON)、切換弁20で熱交換液Lを送り出すポートとして温調側ポート20aを選択し(切換弁:温調)、チラー部17での冷却を停止する(チラー:OFF)(#105ステップ)。
【0059】
この#105ステップを、バッテリーBの温度の上昇を図る暖機処理と称している。この暖機処理では、切換弁20の温調側ポート20aを選択し、ヒータ部18に電流を供給する。これにより、ヒータ部18で温度を上昇させた熱交換液Lを複数の噴射部22から噴射してバッテリーBに温度上昇を実現している。尚、ヒータ部18で熱交換液Lの温度上昇を図る制御は、この#105ステップだけ行われる。
【0060】
次に、#104ステップでセル温度TCが10℃を超える値であるが(#104ステップのNo)、セル温度TCが例えば20℃以下であることを判定した場合には(#106ステップのYes)、供給ポンプ19を停止し(ポンプ:OFF)、ヒータ部18の加熱を停止し(ヒータ:OFF)、切換弁20において熱交換液Lを送り出すポートとして温調側ポート20aを選択し(切換弁:温調)、チラー部17の冷却を停止する(チラー:OFF)(#107ステップ)。
【0061】
この#107ステップを、既に適正な温度にあるバッテリーBの温度を維持する無温調処理と称している。この無温調処理では、供給ポンプ19を停止することで複数の噴射部22での熱交換液Lの噴射を停止し、ヒータ部18での熱交換液Lの加熱を停止することでバッテリーBに温度の維持を実現している。
【0062】
次に、#106ステップでセル温度TCが20℃を超える値であるが(#106ステップのNo)、セル温度TCが例えば30℃以下であることを判定した場合には(#108ステップのYes)、供給ポンプ19を駆動し(ポンプ:ON)、ヒータ部18の加熱を停止し(ヒータ:OFF)、切換弁20において熱交換液Lを送り出すポートとして温調側ポート20aを選択し(切換弁:温調)、チラー部17での冷却を停止する(チラー:OFF)(#109ステップ)。
【0063】
この#109ステップを、バッテリーBの温度が適正な領域より少し高い領域にある状況に対応してバッテリーBの温度を維持する循環処理と称している。この循環処理では、切換弁20の温調側ポート20aを選択し、チラー部17での低温化と、ヒータ部18で加熱との何れも行わない状態で、供給ポンプ19を駆動することで複数の噴射部22から熱交換液Lを噴射し、バッテリーBに温度の維持を実現している。
【0064】
特に、このように冷却も加熱も行われない熱交換液LをバッテリーBに噴射することにより、バッテリーBの複数のセル7の一部の温度が上昇しても、熱交換液Lが噴射されることによりバッテリーBの全体の温度の均一化を可能にする。
【0065】
次に、#108ステップでセル温度TCが30℃を超える値であるが(#108ステップNo)、セル温度TCが35℃以下であることを判定した場合には(#110ステップのYes)、供給ポンプ19を駆動し(ポンプ:ON)、ヒータ部18の加熱の停止し(ヒータ:OFF)、切換弁20において熱交換液Lを送り出すポートとして蓄冷側ポート20bを選択し(切換弁:蓄冷)、チラー部17で冷却を行う(チラー:ON)(#111ステップ)。
【0066】
この#111ステップを、バッテリーBの温度が適正な値より上昇する傾向にあり、温度が更に上昇した際の冷却の準備のため蓄冷デバイス24に冷熱を蓄える蓄冷処理と称している。この蓄冷処理では、コンプレッサ26を駆動し、供給ポンプ19を駆動することで、第2膨張弁32で膨張した冷媒をチラー部17に供給している。
【0067】
これにより、チラー部17で冷却された熱交換液Lが貯留部11bに供給され、この貯留部11bにおいて蓄冷デバイス24に接触することで、蓄冷デバイス24の潜熱蓄熱材を凝固(相変化)させる蓄冷を可能にしている。また、この蓄冷処理では、熱交換液Lが貯留部11bとチラー部17との間を循環する。
【0068】
次に、#110ステップでセル温度TCが35℃を超える値であることを判定した場合には(#110ステップのNo)、供給ポンプ19を駆動し(ポンプ:ON)、ヒータ部18の加熱を停止し(ヒータ:OFF)、切換弁20において熱交換液Lを送り出すポートとして温調側ポート20aを選択し(切換弁:温調)、チラー部17で冷却を行う(チラー:ON)(#112ステップ)。
【0069】
この#112ステップを、温度が大きく上昇したバッテリーBの温度低下を図る冷却処理と称している。この冷却処理では、#111ステップの処理と同様にコンプレッサ26を駆動している。また、この冷却処理では、切換弁20の温調側ポート20aを選択し、供給ポンプ19を駆動することで、第2膨張弁32で膨張した冷媒をチラー部17に供給することによりチラー部17で熱交換液Lの温度を低下させている。これにより、温度が低下した熱交換液Lを噴射部22からバッテリーBに噴射しバッテリーBの放熱を実現している。
【0070】
また、#112ステップの処理では、前述した#111ステップの蓄冷処理によって蓄冷デバイス24に既に冷熱が蓄えられている場合には、バッテリーBに噴射された熱交換液Lが、バッテリーBの外面に接触して温度が上昇しても、この熱交換液Lは、下部ケース11の貯留部11bで蓄冷デバイス24の外面に接触することで潜熱蓄熱材の融解潜熱により低温化が図られる。これにより、ストレーナ15を介して供給流路16に供給される熱交換液Lの温度上昇が抑制され、チラー部17の性能(例えば、熱量/h)が小さくとも、噴射部22から噴射される熱交換液Lの温度を充分に低下させ効率的なバッテリーBの冷却を可能にする。
【0071】
〔実施形態の作用効果〕
例えば、クーリングプレートや、伝熱シートを用いてバッテリーBの温度管理を行うものでは、バッテリーBの外面に対して接触する領域を介して熱伝導が行われるため、熱伝導の効率が低く、バッテリーBの温度調整を行う場合にも熱伝導に偏りを招きやすいものであった。
【0072】
このような従来構成と比較すると、実施形態に記載した温度調節装置C(バッテリー温度調節装置)では、バッテリーBの外面の広い領域に熱交換液Lを噴射できるため、バッテリーBの外面の広い領域での熱交換を可能にして、効率的で短時間のうちにバッテリーBを適正な温度に移行させることが可能となる。また、この温度調節装置Cでは、熱交換液Lを循環させる形態で用いるので装置全体の小型化も可能となる。
【0073】
この温度調節装置Cは、支持体14によってバッテリーBの底部を、下部ケース11に貯留される熱交換液Lの液面Lsより高い位置に保持しているので、例えば、下部ケース11(貯留空間)に貯留された熱交換液LにバッテリーBの一部が接触する構成と比較すると、貯留されている熱交換液Lの影響を排除することが可能であり、噴射部22から適切な温度の熱交換液Lを噴射するだけで短時間のうちにバッテリーBの温度を目標とする温度に移行させ、バッテリーBの性能を高く維持することが可能となる。
【0074】
また、バッテリーBのうち、セル7の積層方向での中央に配置されたセル7に対して噴射部22から噴射される熱交換液Lの量を、積層方向での端部に配置されたセル7より多く設定しているため、バッテリーBの中央部分だけ適正な温度から外れバッテリーBの性能が低下する不都合を抑制する。
【0075】
下部ケース11の貯留部11bの熱交換液Lの液面Lsより下側に蓄冷デバイス24を配置し、
図6のフローチャートの#111ステップに示すようにバッテリーBの温度が上昇する以前に、予め冷熱を蓄える蓄冷処置を行うことで、バッテリーBの放熱を必要とする場合には、熱交換液Lの温度上昇を抑制しつつ、バッテリーBを短時間で適正な温度に移行させることが可能となる。
【0076】
つまり、バッテリーBの温度上昇が予想される状況では、切換弁20(三方弁の一例)で熱交換液Lを流すポートとして蓄冷側ポート20bを選択し、チラー部17を作動させることで低温化した熱交換液Lを貯留部11bの蓄冷デバイス24に接触させ、この熱交換液Lの冷熱を蓄えることが可能となる。このように蓄冷デバイス24で冷熱を蓄えることにより、チラー部17の性能(例えば、熱量/h)を超えた熱量(冷熱)をバッテリーBに作用させて迅速な放熱を可能にする。
【0077】
更に、蓄冷デバイス24を備えているため、例えば、バッテリーBの温度を僅かに低下させる場合には、#109ステップのように、チラー部17を作動させることなく、供給ポンプ19を駆動させ、熱交換液Lを噴射部22から噴射するだけの制御を選択することでバッテリーBの放熱を行うことも可能となる。
【0078】
この温度調節装置Cでは、バッテリーBの放熱と、温度上昇とを行えるため、車両を低温から高温に亘る環境で使用する場合でも、バッテリーBの性能を高く維持して良好な状態に維持することが可能となる。また、熱交換液Lに微粒子等が混入していてもストレーナ15が、微粒子等を除去するため噴射部22の噴射性能を低下させることがない。
【0079】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0080】
(a)
図7、
図8に示すように、チラー部17と、蓄冷デバイス24とを一体化した構成を用いる。この別実施形態(a)では、空調システムに用いられる冷媒をチラー部17に供給する構成は実施形態と共通するものであるが、潜熱蓄熱材を封入した複数の蓄冷デバイス24に対し、供給流路16に連通する複数の熱交換管路16aを一体形成し、冷媒流路27に連通する複数の冷媒管路27aを、複数の蓄冷デバイス24に挟み込まれる位置(最も外側の冷媒管路27aは蓄冷デバイス24の外面に接触する位置)に配置した点において実施形態と異なっている。
【0081】
蓄冷デバイス24を構成するケースは、全体的に所定の厚みを有する板状であり、夫々のケースに対し
図7において左右方向に貫通する姿勢で複数の熱交換管路16aが一体的に形成されている。また、金属製のパイプ材で成る複数の冷媒管路27aを
図7において縦向き姿勢で配置しており、蓄冷デバイス24のケースと、複数の冷媒流路27とを
図8に示すように交互に配置することで良好な熱交換を実現している。このように構成することにより、冷媒管路27aに流れる冷媒の冷熱を、蓄冷デバイス24の潜熱蓄熱材に蓄え、蓄えた冷熱を、熱交換管路16aに流れる熱交換液Lに伝えることができる。
【0082】
尚、この別実施形態(a)の蓄冷デバイス24は、熱交換管路16aに代えて貯留部11bからの熱交換液Lを、潜熱蓄熱材を封入したケースの外面に接触する状態で流す構成を用いても良い。この別実施形態(a)では、実施形態に示した切換弁20と、蓄冷流路23とを必要としない。
【0083】
この別実施形態(a)の構成では、供給ポンプ19が停止する状況において、低温化した冷媒を冷媒管路27aに供給することにより蓄冷デバイス24の潜熱蓄熱材に冷熱を蓄えることが可能である。
【0084】
また、チラー部17に冷熱を蓄えた状態では、供給ポンプ19を駆動することにより、複数の熱交換管路16aに熱交換液Lが流れる際に、この熱交換液Lが蓄冷デバイス24で冷却されるため、低温化した熱交換液Lを複数の噴射部22に供給し、バッテリーBを効率的に冷却できる。特に、この構成では、冷媒が供給されない状況でも、熱交換液Lの温度低下を図り、バッテリーBの冷却を可能にする。
【0085】
(b)
図9に示すように、バッテリーBの幅方向の中央(
図9で左右方向の中央)の近傍において複数のセル7が積層する方向に吐出流路21を配置し、この吐出流路21に対して複数の噴射部22を備える。これと類似する構成として、
図10に示すように、供給ポンプ19から熱交換液Lが直接供給される主の吐出流路21の端部から横方向に延びる吐出流路21を、バッテリーBの幅方向の中央に配置し、この吐出流路21に対して複数のセル7を備えるように構成する。
【0086】
尚、この別実施形態(b)の構成であっても、複数のセル7のうち、両端近くのセル7に噴射する熱交換液Lの単位時間あたりの噴射量と比較して、複数のセル7の中央の位置のものに噴射する熱交換液Lの単位時間あたりの噴射量を多く設定することにより、中央位置のセル7を積極的に冷却し良好な温度管理を実現する。
【0087】
(c)
図11に示すように、バッテリーケースAを上部ケース10と下部ケース11とで構成し、下部ケースの貯留部11bに貯留される熱交換液Lの量を、実施形態で説明したの貯留部11bに貯留される熱交換液Lの量より増大し、貯留部11bに貯留される熱交換液Lの液面Lsの位置を、下部ケース11の集液部11aより低い位置に設定する。尚、
図11に示す複数の支持体14は、下部ケース11の集液部11aの上面と、バッテリーBの底面との間に隙間を作るように機能する。
【0088】
この別実施形態(c)では、集液部11aは噴射部22からバッテリーBに噴射された熱交換液Lを回収して貯留部11bに流下させる機能だけを備えることになり、結果として、熱交換液Lの液面Lsと、バッテリーBとの上下方向での距離の拡大を実現している。そのため、車体が傾斜しても、熱交換液LがバッテリーBに接触する現象を抑制し、バッテリーBに熱交換液Lが接触することによる温度変化を招くことなくバッテリーBの適正な温度調節を実現する。
【0089】
(d)
図12に示すように、バッテリーケースAを上部ケース10と下部ケース11とで構成し、このバッテリーケースAから分離する位置に貯留部としてのタンク42を備え、バッテリーケースAの集液部11aで回収した熱交換液Lをタンク42に供給する集液路40と、この集液路40に熱交換液Lを送る集液ポンプ41とを備える。尚、
図11に示す複数の支持体14は、下部ケース11の集液部11aの上面と、バッテリーBの底面との間に隙間を作るように機能する。
【0090】
この別実施形態(d)では、タンク42(貯留部)に貯留された熱交換液Lと、バッテリーBとを完全に分離するため、車体が大きく傾斜しても、熱交換液LがバッテリーBに接触する現象を阻止し、バッテリーBに熱交換液Lが接触することによる温度変化を招くことなくバッテリーBの適正な温度調節を実現する。特に、この構成では、集液部11aで回収した熱交換液Lを集液ポンプ41でタンク42に送るため、タンク42を任意の位置に配置できるものであり、車体のスペースを有効に利用することも可能となる。
【0091】
(e)熱交換液Lの温度を検知する液温センサを備え、この液温センサの検出結果を温度調節装置Cの制御に反映させるように制御形態を設定する。制御形態の一例として、例えば、実施形態の
図6の#112ステップのように、熱交換液Lの噴射によりバッテリーBの放熱を図る制御において、液温センサで取得される熱交換液Lの温度が充分に低温化されていないと判断できる場合には、コンプレッサ26の駆動速度を高めてチラー部17での熱交換液Lの低温化を促進させることが考えられる。
【0092】
(f)チラー部17に冷媒を供給するための専用の冷却回路を備える。実施形態では、車体3のキャビンの空調に用いる冷媒をチラー部17に供給する構成であったが、専用の冷却回路を備えることによりバッテリーBの温度を短時間で適切な温度まで低下させることが可能となる。尚、実施形態で説明したようにチラー部17にペルチェ素子を用いることも考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、バッテリー温度調節装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0094】
11 下部ケース
11a 集液部
11b 貯留部
14 支持体(支持構造)
15 ストレーナ
16 供給流路
17 チラー部
18 ヒータ部
19 供給ポンプ(ポンプ)
20 切換弁(三方弁)
22 噴射部
24 蓄冷デバイス
40 タンク(貯留部)
B バッテリー
L 熱交換液