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特許7516778ポリウレタン樹脂水性分散体を含む接着剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂水性分散体を含む接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/06 20060101AFI20240709BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20240709BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20240709BHJP
   C08G 18/80 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C09J175/06
C09J175/04
C08G18/44
C08G18/80 077
C08G18/80 070
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020033079
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021134310
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】戒田 裕行
(72)【発明者】
【氏名】山田 健史
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/081696(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/033939(WO,A1)
【文献】特開平06-065348(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065890(WO,A1)
【文献】特開平01-036671(JP,A)
【文献】特開2019-166803(JP,A)
【文献】特開2017-066358(JP,A)
【文献】特開平08-225780(JP,A)
【文献】特開2016-221955(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03088179(EP,A1)
【文献】特開2008-156573(JP,A)
【文献】特開2020-007400(JP,A)
【文献】国際公開第2021/039832(WO,A1)
【文献】特開2016-121337(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0347978(US,A1)
【文献】特開2010-229267(JP,A)
【文献】特開2019-131689(JP,A)
【文献】特開平10-120757(JP,A)
【文献】国際公開第2011/102442(WO,A1)
【文献】特開2018-070878(JP,A)
【文献】特表2021-500489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 175/06
C09J 175/04
C08G 18/44
C08G 18/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルポリオール(Aa)由来の構成単位を有するポリウレタン樹脂(A)及びポリカーボネートポリオール(Ba)由来の構成単位を有するポリウレタン樹脂(B)を含有するポリウレタン樹脂水性分散体を含む接着剤組成物であって、
前記ポリウレタン樹脂(B)が、さらにイソシアネート化合物(Bb)由来の構成単位を有し、一部のイソシアネート化合物(Bb)由来の構成単位のイソシアナト基にブロック化剤(Bg)が付加したブロックイソシアネート構造を有する接着剤組成物。
【請求項2】
ブロックイソシアネート構造が、メチルエチルケトオキシムがイソシアネート化合物(Bb)由来の構成単位におけるイソシアナト基に付加した構造及びジメチルピラゾールがイソシアネート化合物(Bb)由来の構成単位におけるイソシアナト基に付加した構造からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
ポリウレタン樹脂(A)とポリウレタン樹脂(B)の割合が(A)/(B)=95/5~15/85(固形分質量比)である、請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
ポリウレタン樹脂(A)が、少なくともポリエステルポリオール(Aa)及びイソシアネート化合物(Ab)由来の構成単位を有し、
ポリウレタン樹脂(B)が、少なくともポリカーボネートポリオール(Ba)、イソシアネート化合物(Bb)、酸性基含有ポリオール(Bc)、中和剤(Bd)及び鎖延長剤(Be)由来の構成単位並びにブロックイソシアネート構造を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
イソシアネート化合物(Ab)が脂肪族イソシアネート化合物及び/又は脂環式イソシアネート化合物である、請求項4に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
イソシアネート化合物(Bb)が脂環式イソシアネート化合物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
ポリエステルポリオール(Aa)が脂肪族ポリカルボン酸及び脂肪族ポリオール由来の構成単位を含むポリエステルポリオールである、請求項1~6のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
ポリカーボネートポリオール(Ba)が脂肪族ポリオール由来の構成単位を含むポリカーボネートポリオールである、請求項1~7のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
ポリウレタン樹脂(B)におけるブロックイソシアネート構造の含有割合が、固形分基準かつイソシアナト基換算で5.0質量%以下である請求項1~8のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
ポリエステルポリオール(Aa)由来の構成単位を有するポリウレタン樹脂(A)を含む接着剤用の添加剤であるポリウレタン樹脂(B)であって、
前記ポリウレタン樹脂(B)は、ポリカーボネートポリオール(Ba)及びイソシアネート化合物(Bb)由来の構成単位由来の構成単位を有し、一部のイソシアネート化合物(Bb)由来の構成単位のイソシアナト基にブロック化剤(Bg)が付加したブロックイソシアネート構造を有するポリウレタン樹脂(B)。
【請求項11】
プラスチック、皮革、ゴム、発泡体繊維製品、金属及び無機酸化物材料からなる群から選択される被着体の接着に用いられる請求項1~9のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂水性分散体を含む接着剤組成物に関し、より詳細には、2種以上のポリウレタン樹脂を含む接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂接着剤は、幅広い範囲の被着物質に対し優れた接着性を持つため広く利用されている。従来は溶剤系ポリウレタンが使用されてきたが、環境保全、安全性、省資源等の観点から、近年ではポリウレタン樹脂水性分散体が注目されている。例えば、特許文献1では、ポリウレタン樹脂水性分散体にカルボジイミド系架橋剤を添加することで優れた接着強度を付与する手法が開示されている。
【0003】
ポリウレタン樹脂水性分散体の中でも特に、ポリオール成分としてポリエステルポリオールを使用したポリエステルポリウレタン樹脂水性分散体は、極性基であるエステル基を有することで、各種被着物質への密着性に優れるため広く用いられる(例えば特許文献2~4)。
【0004】
一方、ポリオール成分としてポリカーボネートポリオールを使用したポリカーボネートポリウレタン樹脂水性分散体は、耐久性及び耐候性に優れており、コーティング等の用途に広く用いられる(例えば特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2019/181476号公報
【文献】特開平8-225780号公報
【文献】特開2005-89511号公報
【文献】特開2009-91478号公報
【文献】特開2016-121337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリエステルポリウレタン樹脂水性分散体を接着剤用途に使用した場合には、耐湿熱性が低いため、加水分解による接着強度の低下が起き、長期間安定な接着性能を得ることが困難といった問題が発生する。
【0007】
一方、ポリカーボネートポリウレタン樹脂水性分散体は接着性に劣るため、長期間安定な接着性能を有する接着剤への適用は知られていない。
【0008】
そこで、本発明の課題は、耐湿熱性に優れることにより、長期間安定な接着性能を有するポリウレタン樹脂水性分散体を含む接着剤剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、加水分解による接着強度の低下が起き、長期間安定な接着性能を得ることが困難という問題を克服すべく種々の検討を行った結果、ポリエステルポリオールを構成単位に有するポリウレタン樹脂(A)及びポリカーボネートポリオールを構成単位に有するポリウレタン樹脂(B)を含有するポリウレタン樹脂水性分散体を含む接着剤組成物が良好な耐湿熱性を有することで、長期間安定な接着性能を示すとの知見を得て、本発明に至った。
【0010】
本発明は、例えば以下のとおりである。
[1]ポリエステルポリオール(Aa)由来の構成単位を有するポリウレタン樹脂(A)及びポリカーボネートポリオール(Ba)由来の構成単位を有するポリウレタン樹脂(B)を含有するポリウレタン樹脂水性分散体を含む接着剤組成物であって、
前記ポリウレタン樹脂(B)が、さらにイソシアネート化合物(Bb)由来の構成単位を有し、ブロックイソシアネート構造を有する接着剤組成物。
[2]ブロックイソシアネート構造が、メチルエチルケトオキシムがイソシアネート化合物(Bb)由来の構成単位におけるイソシアナト基に付加した構造及びジメチルピラゾールがイソシアネート化合物(Bb)由来の構成単位におけるイソシアナト基に付加した構造からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]の接着剤組成物。
[3]ポリウレタン樹脂(A)とポリウレタン樹脂(B)の割合が(A)/(B)=95/5~15/85(固形分質量比)である、[1]又は[2]の接着剤組成物。
[4]ポリウレタン樹脂(A)が、少なくともポリエステルポリオール(Aa)及びイソシアネート化合物(Ab)由来の構成単位を有し、
ポリウレタン樹脂(B)が、少なくともポリカーボネートポリオール(Ba)、イソシアネート化合物(Bb)、酸性基含有ポリオール(Bc)、中和剤(Bd)及び鎖延長剤(Be)由来の構成単位並びにブロックイソシアネート構造を有する、[1]~[3]のいずれかの接着剤組成物。
[5]イソシアネート化合物(Ab)が脂肪族イソシアネート化合物及び/又は脂環式イソシアネート化合物である、[4]の接着剤組成物。
[6]イソシアネート化合物(Bb)が脂環式イソシアネート化合物である、[1]~[5]のいずれかの接着剤組成物。
[7]ポリエステルポリオール(Aa)が脂肪族ポリカルボン酸及び脂肪族ポリオール由来の構成単位を含むポリエステルポリオールである、[1]~[6]のいずれかの接着剤組成物。
[8]ポリカーボネートポリオール(Ba)が脂肪族ポリオール由来の構成単位を含むポリカーボネートポリオールである、[1]~[7]のいずれかの接着剤組成物。
[9]ポリウレタン樹脂(B)におけるブロックイソシアネート構造の含有割合が、固形分基準かつイソシアナト基換算で5.0質量%以下である[1]~[8]のいずれかの接着剤組成物。
[10]ポリエステルポリオール(Aa)由来の構成単位を有するポリウレタン樹脂(A)を含む接着剤用の添加剤であるポリウレタン樹脂(B)であって、
前記ポリウレタン樹脂(B)は、ポリカーボネートポリオール(Ba)及びイソシアネート化合物(Bb)由来の構成単位由来の構成単位を有し、ブロックイソシアネート構造を有するポリウレタン樹脂(B)。
[11]プラスチック、皮革、ゴム、発泡体繊維製品、金属及び無機酸化物材料からなる群から選択される被着体の接着に用いられる[1]~[9]のいずれかの接着剤組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐湿熱性に優れることにより、長期間安定な接着性能を有する接着剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の接着剤組成物は、ポリエステルポリオール(Aa)由来の構成単位を有するポリウレタン樹脂(A)及びポリカーボネートポリオール(Ba)由来の構成単位を有するポリウレタン樹脂(B)を含有するポリウレタン樹脂水性分散体を含む接着剤組成物であって、前記ポリウレタン樹脂(B)が、さらにイソシアネート化合物(Bb)由来の構成単位を有し、ブロックイソシアネート構造を有する。
【0013】
<ポリカーボネートポリオールを構成単位に有するポリウレタン樹脂(B)>
本発明で使用するポリカーボネートポリオール由来構成単位を有するポリウレタン樹脂(B)(以下、「ポリウレタン樹脂(B)」、「(B)」又は「ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂」ということもある。)は、ポリカーボネートポリオール(Ba)及びイソシアネート化合物(Bb)を由来とする構成単位並びにブロックイソシアネート構造を有し、好ましくは、さらに酸性基含有ポリオール(Bc)、中和剤(Bd)及び鎖延長剤(Be)のそれぞれを由来とする構成単位を有するポリウレタン樹脂であって、公知のものを使用することができ、その製造方法も限定されない。
上記ポリウレタン樹脂(B)は,上記以外に、(Ba)及び(Bc)以外のその他のポリオール(Bh)由来の構成単位を有していてもよい。
【0014】
ポリカーボネートポリオールを構成単位に有するポリウレタン樹脂(B)は、該ポリウレタン樹脂に含まれるポリオールを由来とする全構成単位の中で、ポリカーボネートポリオール(Ba)を由来とする構成単位を60質量%以上、好ましくは80質量%以上含む。
【0015】
(ポリカーボネートポリオール(Ba))
ポリウレタン樹脂(B)は、ポリカーボネートポリオール(Ba)由来の構成単位を有する。
ポリカーボネートポリオール(Ba)は、1種以上のポリオール成分と、炭酸エステルやホスゲンとを反応させることにより得られる。安全性や試薬の取扱等の観点から製造が容易であること末端塩素化物の副生成がない点から、1種以上のポリオールモノマーと、炭酸エステルとを反応させて得られるポリカーボネートポリオールが好ましい。
【0016】
ポリカーボネートポリオール(Ba)のポリオール成分としては、公知のものを使用することができる。例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等の直鎖状脂肪族ジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の分岐鎖状脂肪族ジオールといった脂肪族ポリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上の多価アルコール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,4-シクロヘプタンジオール、2,5‐ビス(ヒドロキシメチル)-1,4-ジオキサン、2,7-ノルボルナンジオール、テトラヒドロフランジメタノール、1,4‐ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン等の主鎖に脂環式構造を有するジオール;1,4-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、1,2-ベンゼンジメタノール、4,4’-ナフタレンジメタノール、3,4’-ナフタレンジメタノール等の芳香族ジオール;6-ヒドロキシカプロン酸とヘキサンジオールとのポリエステルポリオール等のヒドロキシカルボン酸とジオールとのポリエステルポリオール;アジピン酸とヘキサンジオールとのポリエステルポリオール等のジカルボン酸とジオールとのポリエステルポリオール;ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールやポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールが挙げられ、脂肪族ポリオールまたは脂環式ポリオールが好ましく、脂肪族ポリオールがより好ましく、直鎖状脂肪族ジオールがさらに好ましく、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールがさらに好ましい。
また、ポリカーボネートポリオール(Ba)のポリオール成分としては、ノニオン性基を有するポリオールも挙げられる。ノニオン性基を有するポリオールにおけるノニオン性基としては、後述のものが挙げられる。ノニオン性基は、ポリオールの側鎖にあることが好ましい。
【0017】
ポリカーボネートポリオール(Ba)のポリオール成分は、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0018】
炭酸エステルとしては、特に制限されないが、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の脂肪族炭酸エステル;ジフェニルカーボネート等の芳香族炭酸エステル;エチレンカーボネート等の環状炭酸エステル等が挙げられる。その他に、ポリカーボネートポリオールを生成することができるホスゲン等も使用できる。中でも、ポリカーボネートポリオール(Ba)の製造のしやすさから、脂肪族炭酸エステルが好ましく、ジメチルカーボネートが特に好ましい。
【0019】
ポリカーボネートポリオール(Ba)は、その分子中に、ポリカーボネートポリオールの特性を損なわない範囲で、1分子中の平均のカーボネート結合の数と同じ又はそれ以下の数のエーテル結合やエステル結合を含有していてもよい。
【0020】
ポリカーボネートポリオール(Ba)は、数平均分子量(Mn)が400~5,000であることが好ましい。Mnが400以上であると、ソフトセグメントとしての性能が良好で、塗膜を形成した場合に割れが発生し難い。Mnが5,000以下であると、ポリカーボネートポリオール(Ba)とイソシアネート化合物(Bb)との反応性が低下することなく、ウレタンプレポリマーの製造工程に時間がかかったり、反応が充分に進行しなかったりするという問題や、ポリカーボネートポリオールの粘度が高くなり、取り扱いが困難になるという問題が生じない。ポリカーボネートポリオール(Ba)のより好ましいMnは、500~3,500であり、特に好ましくは600~2,500である。なお、本発明において、Mnは、水酸基価及びH-NMR若しくはアルカリ加水分解後のガスクロマトグラフィーによる組成物の定量値から算出した値である。
【0021】
ポリカーボネートポリオール(Ba)の水酸基価は接着性の観点から、10~800mgKOH/gであることが好ましい。
【0022】
ポリオール成分及び炭酸エステルからポリカーボネートポリオール(Ba)を製造する方法としては、例えば、反応器中に炭酸エステルと、この炭酸エステルのモル数に対して過剰のモル数のポリオールとを加え、温度160~200℃、圧力50mmHg程度で5~6時間反応させた後、更に数mmHg以下の圧力において200~220℃で数時間反応させる方法が挙げられる。上記反応においては副生するアルコールを系外に抜き出しながら反応させることが好ましい。その際、炭酸エステルが副生するアルコールと共沸することにより系外へ抜け出る場合には、過剰量の炭酸エステルを加えてもよい。また、上記反応において、チタニウムテトラブトキシド等の触媒を使用してもよい。
【0023】
(イソシアネート化合物(Bb))
ポリウレタン樹脂(B)は、イソシアネート化合物(Bb)由来の構成単位を有する。
イソシアネート化合物(Bb)としては、公知のものを使用することができる。例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4’’-トリフェニルメタントリイソシアネート、m-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、p-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート等の芳香族イソシアネート化合物;エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエート等の脂肪族イソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-ジクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート、2,6-ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式イソシアネート化合物が挙げられる。イソシアネート化合物(Bb)は、その構造の一部又は全部がイソシアヌレート化、カルボジイミド化、又はビウレット化など誘導化されていても良い。
イソシアネート化合物(Bb)は、ノニオン性基を有するイソシアネート化合物も挙げられる。ノニオン性基を有するイソシアネート化合物におけるノニオン性基としては、後述のものが挙げられる。ノニオン性基は、イソシアネート化合物の側鎖にあることが好ましい。
【0024】
上記のイソシアネート化合物(Bb)の中でも、反応性の制御等の観点から、芳香族イソシアネート化合物、脂環式イソシアネート化合物が好ましく、脂環式イソシアネート化合物がより好ましく、初期接着の観点から、イソホロンジイソシアネート(IPDI)がさらに好ましく、耐水性の観点から、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)がさらに好ましい。また、前記芳香族イソシアネート化合物としては、反応性の制御等の観点から4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が好ましい。
【0025】
イソシアネート化合物(Bb)は、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0026】
イソシアネート化合物(Bb)の使用量は、イソシアネート化合物(Bb)のイソシアネート基と全ポリオール(ポリカーボネートポリオール(Ba)と、酸性基含有ポリオール(Bc)と、後述するその他のポリオール(Bh)との合計)の水酸基との比(イソシアネート基/水酸基(モル比))が、0.5~3.0であることが好ましく、1.2~2.0であることが特に好ましい。
【0027】
(酸性基含有ポリオール(Bc))
ポリウレタン樹脂(B)は、水への分散性を向上させるために酸性基含有ポリオール(Bc)由来の構成単位を有することが好ましい。酸性基含有ポリオール(Bc)とは、一分子中に2個以上の水酸基と、1個以上の酸性基を含有するものである。酸性基含有ポリオール(Bc)は、一種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0028】
酸性基含有ポリオール(Bc)としては、公知のものを使用することができる。例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸等のジメチロールアルカン酸;N,N-ビスヒドロキシエチルグリシン、N,N-ビスヒドロキシエチルアラニン、3,4-ジヒドロキシブタンスルホン酸、3,6-ジヒドロキシ-2-トルエンスルホン酸等が挙げられる。中でも入手の容易さの観点から、2個のメチロール基を含む炭素数4~12のジメチルロールアルカン酸が好ましく、ジメチロールアルカン酸の中でも、2,2-ジメチロールプロピオン酸がより好ましい。
【0029】
ポリウレタン樹脂(B)おいて、ポリカーボネートポリオール(Ba)と、酸性基含有ポリオール(Bc)と、後述するその他のポリオール(Bh)との合計の水酸基当量数は、50~4000であることが好ましい。水酸基当量数がこの範囲であれば、得られたポリウレタン樹脂を含むポリウレタン樹脂水性分散体の製造が容易である。得られるポリウレタン樹脂水性分散体の貯蔵安定性の観点から、水酸基当量数は、好ましくは100~3500、より好ましくは120~3000、特に好ましくは130~2500である。
【0030】
水酸基当量数は、以下の式(1)及び(2)で算出することができる。
各ポリオール成分の水酸基当量数=各ポリオール成分の分子量/各ポリオール成分の水酸基の数・・・(1)
ポリオール成分の合計の水酸基当量数=M/ポリオール成分の合計モル数・・・(2)
式(2)において、Mは、[〔ポリカーボネートポリオール成分の水酸基当量数×ポリカーボネートポリオール成分のモル数〕+〔酸性基含有ポリオールの水酸基当量数×酸性基含有ポリオールのモル数〕+〔その他のポリオールの水酸基当量数×その他のポリオールのモル数〕]を示す。
【0031】
(中和剤(Bd))
ポリウレタン樹脂(B)は、上記酸性基を中和させるために中和剤(Bd)由来の構成単位を有することが好ましい。中和剤(Bd)は、一種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0032】
中和剤(Bd)としては、公知のものを使用することができる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の不揮発性塩基;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン化合物;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン等の二級アミン化合物;エチレンジアミン、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン等の一級アミン化合物;アンモニア等を用いることができる。
【0033】
上記中和剤(Bd)としては、接着剤組成物中の水系媒体を乾燥する際の温度(通常は50~180℃)で揮発してポリウレタン皮膜から消失し、より一層優れた接着強度が得られる点から、その沸点が200℃以下であることが好ましく、-50~180℃の範囲であることがより好ましい。
【0034】
上記中和剤(Bd)を用いる場合の使用量としては、上記ポリウレタン樹脂(B)に含まれる上記酸性基のモル数に対して0.8~1.2倍の範囲であることが好ましい。
【0035】
(鎖延長剤(Be))
ポリウレタン樹脂(B)は、分子量を増加させるために鎖延長剤(Be)由来の構成単位を有することが好ましい。鎖延長剤(Be)は、ポリウレタンプレポリマーのイソシアナト基と反応性を有する。鎖延長剤(Be)は、一種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0036】
鎖延長剤(Be)としては、公知のものを使用することができる。例えば、エチレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,4-ヘキサメチレンジアミン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、キシリレンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物;水等が挙げられ、アミン化合物が好ましい。
【0037】
上記鎖延長剤(Be)のうち、数平均分子量(Mn)が300以下のポリアミンが好ましい。Mnが300以下であることは、ポリウレタン樹脂の凝集力を高くするために必要であり、1分子内の官能基数が2以上のポリアミンを使用することはポリウレタン樹脂のMnを高くし、耐久性を向上させるために必要である。
【0038】
上記鎖延長剤(Be)の添加量は、得られるウレタンポリマー中の鎖延長起点となるイソシアナト基の当量以下であることが好ましい。イソシアナト基の当量を超えて鎖延長剤(Be)を添加した場合には、鎖延長されたウレタンポリマーの分子量が低下して凝集力が低下する。
【0039】
(ブロックイソシアネート構造)
ポリウレタン樹脂(B)はブロックイソシアネート構造を有する。
ブロックイソシアネート構造とは、イソシアナト基にブロック化剤(Bg)を付加した構造をいう。ポリウレタン樹脂(B)におけるブロックイソシアネート構造は、一部のイソシアネート化合物(Bb)由来の構成単位のイソシアナト基にブロック化剤(Bg)が付加したものであり、通常は、ポリウレタン樹脂(B)の末端に存在する。
ブロック化剤(Bg)としては、フェノール、クレゾール等のフェノール系、メタノール、エタノール等の脂肪族アルコール系;マロン酸ジメチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系;ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン系;アセトアニリド、酢酸アミド等の酸アミド系;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム等のラクタム系;コハク酸イミド、マレイン酸イミド等の酸イミド系;アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム等のオキシム系;ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミン、ジメチルピラゾール等のアミン系等のブロック化剤が挙げられる。ブロック化剤(Bg)は、一種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
なお、「ブロック化剤」とは、イソシアナト基と反応してイソシアナト基を別の基に変換可能な化合物であって、熱処理により別の基からイソシアナト基に可逆的に変換可能な化合物を意味する。熱処理温度としては、特に制限されないが、80~180℃が好ましい。
【0040】
これらのブロック化剤(Bg)の中でも、接着剤組成物の接着力の観点から、メチルエチルケトオキシム、ジメチルピラゾールが好ましく、ジメチルピラゾールがより好ましい。
【0041】
ブロックイソシアネート構造を有することにより、ポリウレタンの分子量が低下し、モビリティが向上する。これによって、高い接着力を発現し、且つ加水分解による接着強度の低下を抑制することができる。
【0042】
上記ポリウレタン樹脂(B)におけるブロックイソシアネート構造の含有割合は、耐湿熱性の観点から固形分基準かつイソシアナト基換算で5.0質量%以下、好ましくは0.2~3.0質量%、より好ましくは0.5~2.0質量%である。ここで、ブロックイソシアネート構造の含有割合とは、ポリウレタン樹脂(B)の固形分中におけるブロックイソシアネート構造の含有割合をイソシアナト基(-NCO)の含有割合として算出したものを意味する。ポリウレタン樹脂(B)中のブロックイソシアネート構造の含有割合は、ポリウレタン樹脂(B)を調製する際の各成分の仕込み量から算出することができる。
【0043】
(その他のポリオール(Bh))
ポリウレタン樹脂(B)は上記ポリカーボネートポリオール(Ba)及び酸性基含有ポリオール(Bc)以外のその他のポリオール(Bh)由来の構成単位を有していてもよい。
その他のポリオール(Bh)としては、公知のものを使用することができる。例えば、後述するポリエステルポリオール(Aa)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシド、エチレンオキシドとブチレンオキシドとのランダム共重合体やブロック共重合体等のポリエーテルポリオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール等の短鎖脂肪族ジオール;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、ハイドロキノン、ビスヒドロキシエトキシベンゼンおよびそれらのアルキレンオキシド付加体等のジオール等が挙げられる。
その他のポリオール(Bh)としては、ノニオン性基を有するポリオールも挙げられる。
ノニオン性基を有するポリオールにおけるノニオン性基としては、後述のものが挙げられる。ノニオン性基は、ポリオールの側鎖にあることが好ましい。
【0044】
ノニオン性基を有するポリオールは、ポリアルキレンオキシド鎖(ポリオキシアルキレン鎖ともいい、例えば、ポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖、ポリブチレンオキシド鎖、並びに、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及びポリブチレンオキシドからなる群から選択される2種以上の共重合体の鎖)の片末端に水酸基を2個有する基を有するポリオールが好ましく、トリメチロールプロパンの1つの水酸基がメトキシ(ポリ)エチレンオキシ基又はエトキシ(ポリ)エチレンオキシ基に置き換わったポリオールであることがより好ましく、下記式(1a)で示される構造を有するポリオールであることが特に好ましい。ノニオン性基を有するポリオールの市販品としては、Ymer N120(パーストープ製)、Tegomer D-3403(エヴォニック製)等が挙げられる。
【0045】
【化1】

(式(1a)中、n2は、19から21までの数字を示す。)
ポリオール(Bh)は、一種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0046】
(ノニオン性基)
上記ポリウレタン樹脂(B)は耐湿熱性向上の観点から、ノニオン性基を有することが好ましい。
ノニオン性基は、水に対して親和性がある基ならば特に限定されない。例えば、ポリオキシアルキレン基等のエーテル型、アルキルグリコシド等の多価アルコールエーテル型、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のエステル型、しょ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の多価アルコールエステル型、脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。それらの中でも、エーテル型の一例であるポリオキシアルキレン基が好ましい。
ポリオキシアルキレン基における、アルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の炭素原子数2~6のアルキレン基であることが好ましい。ポリオキシアルキレン基におけるオキシアルキレン基の数は、1以上であり、10~30が好ましい。
ポリオキシアルキレン基としては、ポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレン構造とポリプロピレン構造を有するポリオキシレン基、ポリオキシエチレン構造とポリテトラメチレン構造を有するポリオキシレン基が挙げられ、中でもポリオキシエチレン基が好ましい。
ノニオン性基は1種単独であっても、2種以上であってもよい。
【0047】
ノニオン性基は、イソシアネート化合物(Bb)の全部又は一部が有していてもよく、また、ポリカーボネートポリオール(Ba)のみが有していてもよく、さらには、イソシアネート化合物(Bb)およびポリカーボネートポリオール(Ba)の両方が有していてもよく、その他のポリオール(Bh)が有していてもよい。ノニオン性基は、少なくともその他のポリオール(Bh)が有していることが好ましい。例えば、ノニオン性基をその他のポリオール(Bh)が有している場合、ノニオン性基を有するその他のポリオール(Bh)とポリカーボネートポリオール(Ba)を混合し、さらにイソシアネート化合物(Bb)等と反応させることにより、ポリウレタン樹脂(B)にノニオン性基を導入することができる。
【0048】
ポリウレタン樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)は、組成物の接着力の観点から、5,000~2,000,000であることが好ましく、10,000~100,000であることがより好ましい。この範囲とすることで、組成物がより優れた接着力を示す。
【0049】
水性分散体中におけるポリウレタン樹脂(B)の割合は、5~60質量%、好ましくは20~50質量%である。
【0050】
<ポリエステルポリオールを構成単位に有するポリウレタン樹脂(A)>
本発明で使用するポリエステルポリオールを構成単位に有するポリウレタン樹脂(A)(以下、「ポリウレタン樹脂(A)」、「(A)」又は「ポリエステル系ポリウレタン樹脂」ということもある。)は、ポリエステルポリオール(Aa)由来の構成単位を有し、好ましくは、さらに、イソシアネート化合物(Ab)由来の構成単位を有するポリウレタン樹脂であって、公知のものを使用することができ、その製造方法も限定されない。
【0051】
上記ポリウレタン樹脂(A)は酸性基含有ポリオール(Ac)、中和剤(Ad)、鎖延長剤(Ae)、並びに(Aa)及び(Ac)以外のその他のポリオール(Af)由来の構成単位を有していてもよい。
【0052】
ポリエステルポリオールを構成単位に有するポリウレタン樹脂(A)は、該ポリウレタン樹脂に含まれるポリオールを由来とする全構成単位の中で、ポリエステルポリオール(Aa)を由来とする構成単位を60質量%以上、好ましくは80質量%以上含む。
【0053】
(ポリエステルポリオール(Aa))
ポリウレタン樹脂(A)は、ポリエステルポリオール(Aa)由来の構成単位を有する。
ポリエステルポリオール(Aa)としては、公知のものを使用することができる。ポリエステルポリオール(Aa)は、1種以上のポリカルボン酸成分と、1種以上のポリオール成分とを反応させることにより得られる。
ポリエステルポリオール(Aa)のポリカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5-ナフタル酸、2,6-ナフタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,2’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’- ジフェニルエーテルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族ジカルボン酸又は芳香族トリカルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸又は脂肪族トリカルボン酸などが挙げられ、好ましくは、脂肪族ポリカルボンであり、より好ましくは、脂肪族ジカルボン酸であり、さらに好ましくは、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸である。
ポリエステルポリオール(Aa)のポリカルボン酸成分は、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0054】
ポリエステルポリオール(Aa)のポリオール成分としては、公知のものを使用することができる。例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等の直鎖状脂肪族ジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の分岐鎖状脂肪族ジオールといった脂肪族ポリオール;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上の多価アルコール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,4-シクロヘプタンジオール、2,5‐ビス(ヒドロキシメチル)-1,4-ジオキサン、2,7-ノルボルナンジオール、テトラヒドロフランジメタノール、1,4‐ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン等の主鎖に脂環式構造を有するジオール;1,4-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、1,2-ベンゼンジメタノール、4,4’-ナフタレンジメタノール、3,4’-ナフタレンジメタノール等の芳香族ジオール;ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールやポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールが挙げられ、好ましくは脂肪族ポリオール、ポリエーテルポリオールであり、より好ましくは、脂肪族ポリオールであり、さらに好ましくは、直鎖状脂肪族ジオールであり、さらにより好ましくは、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールであり、特に好ましくは1,4-ブタンジオールである。
【0055】
ポリエステルポリオール(Aa)のポリオール成分は、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0056】
ポリエステルポリオール(Aa)は、その分子中に、ポリエステルポリオールの特性を損なわない範囲で、1分子中の平均のエステル結合の数未満の数のエーテル結合やカーボネート結合を含有していてもよい。
【0057】
ポリエステルポリオール(Aa)は、数平均分子量(Mn)が5,000~200,000であることが好ましい。
【0058】
ポリエステルポリオール(Aa)の水酸基価は接着性の観点から、10~800mgKOH/gであることが好ましい。
【0059】
ポリエステルポリオール(Aa)は前記ポリカルボン酸成分及びポリオール成分を反応させることによって得られる。ポリエステルポリオール(Aa)の製造方法としては、公知の方法を採用できる。例えば、上記のポリカルボン酸成分及びポリオール成分を150~250℃でエステル化反応させた後、減圧しながら230~300℃で重縮合する方法が挙げられる。
ポリエステルポリオール(Aa)として、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリブチレンイソフタレート、ポリヘキサメチレンイソフタレートが好ましい。
このポリエステルポリオール(Aa)由来の構成単位を含むポリウレタン樹脂(A)を、ポリカーボネートポリオールを構成単位に有するポリウレタン樹脂(B)と共に使用することで、本発明の課題解決に好適な接着剤組成物を得ることができる。また、工業的に好適な接着剤組成物を得ることができる。
【0060】
(イソシアネート化合物(Ab))
ポリウレタン樹脂(A)は、イソシアネート化合物(Ab)由来の構成単位を有することが好ましい。
イソシアネート化合物(Ab)としては、公知のものを使用することができる。例えば、イソシアネート化合物(Bb)の例として前述したものが挙げられる。ポリイソシアネート(Ab)は、その構造の一部又は全部がイソシアヌレート化、カルボジイミド化、又はビウレット化など誘導化されていても良い。
【0061】
これらのイソシアネート化合物(Ab)のうちでも、とりわけ機械強度等の観点からは、芳香族ジイソシアネート化合物の使用が好ましく、又はとりわけ耐久性の観点から、脂肪族及び/又は脂環式イソシアネート化合物の使用がより好ましく、具体的にはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及び、イソホロンジイソシアネート(IPDI)がさらに好ましい。
【0062】
イソシアネート化合物(Ab)は、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0063】
イソシアネート化合物(Ab)の使用量は、イソシアネート化合物(Ab)のイソシアネート基とポリオール(ポリエステルポリオール(Aa)と、酸性基含有ポリオール化合物(Ac)と、後述するその他のポリオール(Ah)との合計)の水酸基との比(イソシアネート基/水酸基(モル比))が、0.3~5.0であることが好ましく、0.5~3.0であることが特に好ましい。
【0064】
(酸性基含有ポリオール(Ac))
ポリウレタン樹脂(A)は、水への分散性を向上させるために酸性基含有ポリオール(Ac)由来の構成単位を有してもよい。酸性基含有ポリオール(Ac)とは、一分子中に2個以上の水酸基と、1個以上の酸性基を含有するものである。酸性基含有ポリオール(Ac)は、一種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0065】
酸性基含有ポリオール(Ac)としては、公知のものを使用することができる。例えば、酸性基含有ポリオール(Bc)として前述したものが挙げられる。中でも入手の容易さの観点から、2個のメチロール基を含む炭素数4~12のジメチルロールアルカン酸が好ましく、ジメチロールアルカン酸の中でも、2,2-ジメチロールプロピオン酸がより好ましい。
【0066】
ウレタン樹脂(A)おいて、ポリエステルポリオール(Aa)のポリオール成分と、酸性基含有ポリオール(Ac)と、後述するその他のポリオール(Ah)との合計の水酸基当量数は、100~3000であることが好ましい。水酸基当量数がこの範囲であれば、得られたポリウレタン樹脂を含むポリウレタン樹脂水性分散体の製造が容易である。得られるポリウレタン樹脂水性分散体の貯蔵安定性の観点から、水酸基当量数は、好ましくは150~2000、より好ましくは200~1000、特に好ましくは300~800である。
【0067】
水酸基当量数は、前述の方法で計算することができる。
【0068】
(中和剤(Ad))
ポリウレタン樹脂(A)は、上記酸性基を中和させるために中和剤(Ad)由来の構成単位を有してもよい。中和剤(Ad)は、一種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0069】
中和剤(Ad)としては、公知のものを使用することができる。例えば、中和剤(Bd)の例として前述したものを用いることができるが、特に、三級アミン化合物が好ましい。
【0070】
(鎖延長剤(Ae))
ポリウレタン樹脂(A)は、分子量を増加させるために鎖延長剤(Ae)を由来の構成単位を有してもよい。鎖延長剤(Ae)は、ポリウレタンプレポリマーのイソシアナト基と反応性を有する。鎖延長剤(Ae)は、一種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0071】
鎖延長剤(Ae)としては、公知のものを使用することができる。例えば、鎖延長剤(Be)の例として前述したものが挙げられ、ポリアミンが好ましい。
【0072】
上記鎖延長剤(Ae)のうち、数平均分子量(Mn)が300以下のポリアミンが好ましい。Mnが300以下であることは、ポリウレタン樹脂の凝集力を高くするために必要であり、1分子内の官能基数が2以上のポリアミンを使用することはポリウレタン樹脂のMnを高くし、耐久性を向上させるために必要である。
【0073】
(その他のポリオール(Af))
ポリウレタン樹脂(A)は上記ポリエステルポリオール(Aa)及び酸性基含有ポリオール(Ac)以外のその他のポリオール(Af)由来の構成単位を有していてもよい。
その他のポリオール(Af)としては、公知のものを使用することができる。例えば、上記ポリカーボネートポリオール(Ba)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシド、エチレンオキシドとブチレンオキシドとのランダム共重合体やブロック共重合体等のポリエーテルポリオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル1,3-プロパンジオール等の短鎖脂肪族ジオール;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、ハイドロキノン、ビスヒドロキシエトキシベンゼンおよびそれらのアルキレンオキシド付加体等のジオール等が挙げられる。ポリオール(Af)は、一種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0074】
ポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、接着性の観点から、2,000~500,000であることが好ましく、4,000~350,000であることがより好ましい。Mwが2,000未満であると接着剤としての凝集力を発現し難い場合がある。一方、Mwが500,000を超えると溶解性が低下し、加工性が低下する場合がある。
【0075】
水性分散体中におけるポリウレタン樹脂(A)の割合は、5~60質量%、好ましくは20~50質量%である。
【0076】
<ポリウレタン樹脂水性分散体>
ポリウレタン樹脂水性分散体は、ポリウレタン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(B)及び水系媒体を含み、ポリウレタン樹脂(A)及びポリウレタン樹脂(B)が水系媒体中に分散している。
水系媒体としては、例えば、上水、イオン交換水、蒸留水、超純水などの水や、水と親水性有機溶媒との混合媒体などが挙げられる。
親水性有機溶媒としては、例えば、アセトン、エチルメチルケトンなどのケトン類;N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドンなどのピロリドン類;ジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルコール類;KJケミカル社製「KJCMPA(R)-100」に代表されるβ-アルコキシプロピオンアミドなどのアミド類;2-(ジメチルアミノ)-2-メチル-1-プロパノール(DMAP)などの水酸基含有三級アミンが挙げられる。
水系媒体中の親水性有機溶媒の量は、0~20質量%であることが好ましい。
ポリウレタン樹脂水性分散体のpHは、5.0~9.0が好ましい。
【0077】
ポリウレタン樹脂水性分散体は、通常、ポリウレタン樹脂(A)を含むポリウレタン樹脂(A)水性分散体と、ポリウレタン樹脂(B)を含むポリウレタン樹脂(B)水性分散体とを混合して得られる。ポリウレタン樹脂(A)水性分散体、ポリウレタン樹脂(B)水性分散体それぞれの製造方法は、以下の通りである。
【0078】
(ポリウレタン樹脂水性分散体の製造方法)
国際公開第2016/039396号公報、国際公開第2015/194672号公報等に記載の公知の方法により、ポリウレタン樹脂水性分散体を製造することができる。例えば、以下のような製造方法が挙げられる。
第1の製造方法は、原料を全て混合し、反応させて、水系媒体中に分散させることにより水性ポリウレタン樹脂分散体を得る方法である。
第2の製造方法は、全ポリオール成分とポリイソシアネート化合物とを反応させて、プレポリマーを製造し、前記プレポリマーの酸性基を中和した後、水系媒体中に分散させ、鎖延長剤を反応させることにより水性ポリウレタン樹脂分散体を得る方法である。
水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法としては、分子量の制御が行いやすいため、上記の第2の製造方法が好ましい。
【0079】
また、ブロックイソシアネート構造は例えば、以下のような製造方法により導入することができる。
第1の製造方法は、ウレタン化触媒存在下又は非存在下で、ブロック化剤(Bg)以外の原料を全て混合し、反応させて、ウレタン化反応を行い、最後にブロック化触媒存在下又は非存在下でブロック化剤(Bg)を反応させてブロック化反応を行い、末端イソシアナト基の少なくとも一部がブロック化されたポリウレタンプレポリマーを合成する方法である。
第2の製造方法は、ブロック化触媒存在下又は非存在下で、イソシアネート化合物(Bb)と、ブロック化剤(Bg)とを反応させてブロック化反応を行い、イソシアナト基の一部をブロック化したポリイソシアネート化合物を合成し、ウレタン化触媒存在下又は非存在下で、得られたブロック化したポリイソシアネート化合物と、(Bb)及び(Bg)以外の原料とを反応させてウレタン化反応を行って、ポリウレタンプレポリマーを合成する方法である。
これらの製造方法における水性分散体の製造方法は、上述の通りである。
【0080】
<接着剤組成物の製造>
化学便覧応用化学編第7版によると、接着とは、接着剤を媒介として、物理的または化学的な力またはその両者によって2つの面が結合した状態と定義される。
したがって、接着剤とは、2つの面を結合させるための媒体である。また、接着剤として機能有する組成物を接着剤組成物という。
本発明の接着剤組成物は、前記ポリウレタン樹脂(A)及び前記ポリウレタン樹脂(B)を含むポリウレタン樹脂水性分散体を必須成分として含有するが、必要に応じてその他の樹脂及び/又はその他の添加剤を含有してもよい。
【0081】
前記その他の樹脂としては、エマルジョンの状態のアクリル樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ナイロン樹脂が挙げられる。
【0082】
前記その他の添加剤としては、例えば、硬化剤、架橋剤、表面調整剤、乳化剤、増粘剤、ウレタン化触媒、充填剤、発泡剤、顔料、染料、撥油剤、中空発泡体、難燃剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0083】
表面調整剤としては、一般に高分子量化に伴う粘性の変化、表面張力の変化、泡の発生に起因して生じる塗膜の欠陥を解消し得る性能を有する、表面調整剤、レベリング剤、濡れ剤、消泡剤等と称されるものであれば、特に制限なく使用することができ、例えば、アクリル系、ビニル系、シリコーン系、フッ素系、セルロース系、天然ワックス系、水溶性有機溶媒等の各種表面調整剤、レベリング剤、濡れ剤、消泡剤等の他、界面活性剤も好ましく挙げられ、中でも濡れ剤が好ましい。
【0084】
本発明の接着剤組成物の製造方法は、特に制限されないが、公知の製造方法を用いることができる。例えば、前記ポリウレタン樹脂(A)と前記ポリウレタン樹脂(B)を含むポリウレタン樹脂水性分散体、及び上述した各種添加剤を攪拌混合することにより製造される。
【0085】
本発明の接着剤組成物において、前記ポリウレタン樹脂(A)と前記ポリウレタン樹脂(B)との混合割合は、接着力及び耐湿熱性の観点から、(A)/(B)=95/5~15/85(固形分質量比)が好ましく、93/7~40/60がより好ましく、90/10~60/40が更に好ましい。
【0086】
<接着剤組成物の物性>
本発明の接着剤組成物の実施例記載の方法で測定した接着の強さは1N/cm~30N/cmが好ましく、3N/cm~25N/cmがより好ましく、6N/cm~25N/cmがさらに好ましい。
本発明の接着剤組成物の実施例記載の方法で測定した粘度は、20~1500mPa・s(20℃)あることが好ましく、30~1000mPa・s(20℃)であることがさらに好ましい。
【0087】
<接着剤組成物の用途>
本発明の接着剤組成物は、接着強度、低温での加工条件( 乾燥温度) 、幅広い基材への接着性、耐熱性に優れ、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリウレタン、TPU(熱可塑性ポリウレタン)、ポリ塩化ビニル( P V C )、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等のプラスチック;皮革;ゴム;発泡体繊維製品;アルミニウム、ステンレス、銅、亜鉛鋼板等の金属;セラミック、ガラス等の無機酸化物材料等の被接着体の接着に広範囲に用いられ有用であり、好ましくはプラスチック、皮革、ゴム、発泡体繊維製品、金属及び無機酸化物材料からなる群から選択される被着体の接着に用いられることが好ましい。
【0088】
<ポリカーボネートポリオールを構成単位に有するポリウレタン樹脂の用途>
ポリカーボネートポリオール(Ba)及びイソシアネート化合物(Bb)由来の構成単位を有し、ブロックイソシアネート構造を有するポリウレタン樹脂(B)は、前述の通り、ポリエステルポリオール(Aa)由来の構成単位を有するポリウレタン樹脂(A)を含む接着剤用の添加剤として使用することができる。
【実施例
【0089】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0090】
[接着剤組成物の製造]
ポリエステルポリオール由来の構成単位を有するポリウレタン樹脂水性分散体(W1)
以下のポリエステル系ポリウレタン樹脂水性分散体を用いた。
カルボン酸としてアジピン酸、ジオールとして1,4-ブタンジオール、イソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート(IPDI)およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を有する。固形分は51質量%、粘度は800mPa・s(20℃)、pHは7.5、数平均分子量は30,000、重量平均分子量は210,000、分散された樹脂の粒子径は0.083μmである。
【0091】
[合成例1]
ポリカーボネートポリオール由来の構成単位を有するポリウレタン樹脂水性分散体(U3)
ETERNACOLL(登録商標) UH200(宇部興産製;数平均分子量2,000;水酸基価57mgKOH/g;1,6-ヘキサンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、42.4g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(2.79g)と、水素添加MDI(16.52g)と、3,5-ジメチルピラゾール(0.92g)を、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(20.57g)中、ジブチル錫ジラウリレート(0.05g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で3時間加熱した。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン(2.1g)を添加・混合し、この混合物のうち、79.1gを抜き出し、強撹拌のもと水(114.8g)の中に加えた。ついで、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(5.20g)を加えて、ポリカーボネートポリオール由来の構成単位を有するポリウレタン樹脂水性分散体U3を得た。ブロックイソシアネート構造の含有割合は、固形分基準かつイソシアナト基換算で0.62質量%であった。
【0092】
[合成例2]
ポリカーボネートポリオール由来の構成単位を有するポリウレタン樹脂水性分散体(U5)
ETERNACOLL UM90(1/3)(宇部興産製;数平均分子量916;水酸基価123mgKOH/g;ポリオール成分が1,4-シクロヘキサンジメタノール:1,6-ヘキサンジオール=1:3のモル比のポリオール混合物と炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、150g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(22.0g)と、水素添加MDI(145g)とを、ジプロピレングリコールジメチル(135g)中、ジブチルスズジラウリレート(0.3g)存在下、窒素雰囲気下で、80-90℃で、6時間加熱した。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン(14.9g)を添加・混合した。反応混合物の中から436gを抜き出して、強攪拌下のもと水(690g)の中に加えた。ついで、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(62.6g)を加えて、ポリカーボネートポリオール由来の構成単位を有するポリウレタン樹脂水性分散体U5を得た。
【0093】
[実施例1]
ポリエステルポリオール由来の構成単位を有するポリウレタン樹脂水性分散体W1及びポリカーボネートポリオール由来の構成単位を有するポリウレタン樹脂水性分散体U3の混合物(W1/U3=85/15(水性分散体の質量比))100質量部に、表面調整剤(BYK-Chemie製;BYK―345)を0.6質量部配合し、接着剤組成物を製造した。
【0094】
[比較例1]
100質量部のポリエステルポリオール由来の構成単位を有するポリウレタン樹脂水性分散体W1に、表面調整剤(BYK-Chemie製;BYK―345)を0.6質量部配合し、接着剤組成物を製造した。
【0095】
[比較例2]
100質量部のポリカーボネートポリオール由来の構成単位を有するポリウレタン樹脂水性分散体U3に、表面調整剤(BYK-Chemie製;BYK―345)を0.6質量部配合し、接着剤組成物を製造した。
【0096】
[比較例3]
ポリカーボネートポリオール由来の構成単位を有するポリウレタン樹脂水性分散体U3の代わりにポリカーボネートポリオール由来の構成単位を有するポリウレタン樹脂水性分散体U5を用いた以外、実施例1と同様にして接着剤組成物を製造した。
【0097】
[試験片の製造方法]
幅2.5cm×長さ10cmに形成した2枚の基材上に、上記接着剤組成物を、幅2.5cm×長さ7.5cmの面積且つ固形分量が5mg/cmとなるよう、プラスチック製のへらにて塗布し、90℃にて15分間乾燥させた。接着剤組成物の乾燥後に得られた、ポリエステルポリオール由来の構成単位を有するポリウレタン樹脂固形物及びポリカーボネートポリオール由来の構成単位を有するポリウレタン樹脂固形物の質量割合を表1に示す。
乾燥させた接着基材の接着面同士を接当させ、プレス機にて2MPaで10秒間圧着させた後、90℃にて15分間エージングを行った。貼り合わせた2枚の基材は同種のものを用いた。
試験片の基材としては、以下の基材を用いた。表1中の略称は以下の通りである。
基材1:日本マタイ株式会社製 ポリウレタン系熱可塑性エラストマーフィルム
ESMER 2mm厚
基材2:日本テストパネル株式会社製 熱可塑性ポリウレタン TPU標準試験板 (2mm厚)
【0098】
[接着強さの評価]
接着強さは、上記試験片のT型剥離試験を引張試験機(INSTRON製5982型試験機)にて行うことで評価した。試験条件は23℃で引張速度5cm/分とした。
表1においては、試験片作成直後に、試験片にさらなる処理をすることなく測定した接着強さを「浸漬前の接着強さ」とした。また、試験片作成後、試験片に下記熱水浸漬処理をしてから測定した接着強さを「浸漬後の接着強さ」とした。
熱水浸漬後の接着強さを比較することにより、接着剤の耐湿熱性を評価した。
表1に、熱水浸漬前後それぞれの接着強さを示す。
合わせて評価後の基材の状態も観察した。全ての実施例及び比較例において、評価後の基材の状態は、界面剥離であった。
なお、界面剥離とは、接着性の不足により接着界面から剥離した状態である。
【0099】
(熱水浸漬処理)
試験片を110ccスクリュー管瓶に入れ、試験片全体が浸かるまで純水を加えた後、90℃の乾燥機で16時間加熱した。加熱終了後、試験片を取り出し、温度25度、湿度35%で6時間乾燥させた。
一般的に、耐湿熱性の評価は、試験片を60~90℃、湿度85~95%の条件で処理するが、評価に長時間(200~2000時間)を要する。本熱水浸漬処理の評価方法では短時間で評価を終えることができる。また、90℃、湿度95%における200時間の耐湿熱性の評価と、90℃、16時間の耐熱水性の評価とで評価結果に相違はない。したがって、本熱水浸漬処理の評価によって、接着剤組成物の長期間における耐湿熱性を評価することができる。
【0100】
【表1】
【0101】
表1の結果から、実施例1においては、熱水浸漬前において十分な接着力を有する。熱水浸漬後であっても7N/cm以上の強度を有することから、耐湿熱性の優れた接着剤組成物であることがわかる。 比較例1から、接着剤組成物がポリカーボネートポリオール由来の構成単位を有するポリウレタン樹脂を含まないと、浸漬後における接着力が低く、耐湿熱性の劣る接着剤組成物であることがわかる。
比較例2から、接着剤組成物がポリエステルポリオール由来の構成単位を有するポリウレタン樹脂を含まないと、熱水浸漬前でも接着強度が十分でないことがわかる。
【0102】
更に実施例1と比較例3とを比較すると、ポリウレタン樹脂(B)がブロックイソシアネート構造を有することで、熱水浸漬後の接着強さがより高く維持されており、実施例1は耐湿熱性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体は、耐湿熱性に優れるため、接着剤の原料として広く利用できる。