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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
H01L23/36 D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020040801
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021002644
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2019115560
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青池 将之
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-191655(JP,A)
【文献】特開2019-075536(JP,A)
【文献】特開2019-009409(JP,A)
【文献】特開2009-190918(JP,A)
【文献】特開2012-169586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に回路素子及び当該回路素子に接続される電極を有する基板と、
前記基板上に設けられ、前記回路素子又は前記電極に接続された外部接続用の導体突起部と、
を備え、
前記基板は、第1基材と、当該第1基材上に配置され、前記第1基材とは材料が異なる第2基材とを含み、
前記回路素子及び前記電極は前記第2基材に形成され、
前記第1基材と前記第2基材との間に、前記第1基材と前記第2基材とを接合する接合層を備え、
前記第1基材は前記第2基材に比べて熱伝導率が高く、
前記接合層は前記第2基材に比べて熱伝導率が高く、
前記接合層は前記第1基材に比較して電気抵抗率が高い絶縁体である、
半導体装置。
【請求項2】
表面に回路素子及び当該回路素子に接続される電極を有する基板と、
前記基板上に設けられ、前記回路素子又は前記電極に接続された外部接続用の導体突起部と、
を備え、
前記基板は、第1基材と、当該第1基材上に配置され、前記第1基材とは材料が異なる第2基材とを含み、
前記回路素子及び前記電極は前記第2基材に形成され、
前記第1基材と前記第2基材との間に、前記第1基材と前記第2基材とを接合する接合層を備え、
前記第1基材は前記第2基材に比べて熱伝導率が高く、
前記接合層は前記第2基材に比べて熱伝導率が高く、
前記接合層は、絶縁体層と金属層とを含む複合材料の層である、
半導体装置。
【請求項3】
前記第1基材は単体半導体の基材であり、
前記第2基材は化合物半導体の基材である、
請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2基材は前記第1基材より薄い、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記回路素子は動作時に発熱する発熱体であり、前記導体突起部は前記発熱体である前記回路素子の直近に設けられている、
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2基材は前記第1基材の外縁からはみ出さない、
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記接合層は、前記第1基材に比べて熱伝導率が高い、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1基材はSi基材であり、
前記絶縁体層はSi化合物の層である、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記絶縁体層の少なくとも一部は樹脂である
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1基材の、前記第2基材に重ならない位置の表面に第1基材側電極が形成され、
前記導体突起部は前記第1基材側電極に接続された、
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記導体突起部は、導体ピラー上にはんだ層が形成された導体ピラーである、
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項12】
表面に回路素子及び当該回路素子に接続される電極を有する基板と、当該基板上に設けられ、前記回路素子又は前記電極に接して電気的に接続された外部接続用の導体突起部と、を備え、前記基板は、第1基材と、当該第1基材上に配置された第2基材とを含み、前記回路素子及び前記電極が前記第2基材に形成された、半導体装置の製造方法であって、
表面に前記回路素子及び前記電極を有する半導体薄膜を、剥離層を介して化合物半導体基材に形成する工程と、
前記剥離層をエッチングにより除去して前記半導体薄膜を前記化合物半導体基材から剥離する工程と、
前記第2基材に比べて熱伝導率が高い前記第1基材を構成する単体半導体基材上の所定位置に、前記第2基材に比べて熱伝導率が高く、前記第1基材に比較して電気抵抗率が高い絶縁体である接合層を用いて、前記第2基材を構成する前記半導体薄膜を接合する工程と、
前記第2基材上に設けられ、前記回路素子又は前記電極に接続される外部接続用の導体突起部を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項13】
表面に回路素子及び当該回路素子に接続される電極を有する基板と、当該基板上に設けられ、前記回路素子又は前記電極に接して電気的に接続された外部接続用の導体突起部と、を備え、前記基板は、第1基材と、当該第1基材上に配置された第2基材とを含み、前記回路素子及び前記電極が前記第2基材に形成された、半導体装置の製造方法であって、
表面に前記回路素子及び前記電極を有する半導体薄膜を、剥離層を介して化合物半導体基材に形成する工程と、
前記剥離層をエッチングにより除去して前記半導体薄膜を前記化合物半導体基材から剥離する工程と、
前記第2基材に比べて熱伝導率が高い前記第1基材を構成する単体半導体基材上の所定位置に、前記第2基材に比べて熱伝導率が高く、絶縁体層と金属層とを含む複合材料の層である接合層を用いて、前記第2基材を構成する前記半導体薄膜を接合する工程と、
前記第2基材上に設けられ、前記回路素子又は前記電極に接続される外部接続用の導体突起部を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、高周波回路に用いられ、発熱部を有する半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バンプを介して半導体装置を実装基板に実装し、バンプを放熱経路として利用した半導体装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、化合物半導体基板に複数の単位トランジスタが並列接続されたヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)が構成された、化合物半導体装置が示されている。これら複数の単位トランジスタは化合物半導体基板に配列され、これら複数の単位トランジスタのエミッタにはバンプが電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-103540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
移動体通信や衛星通信等で用いられる高周波増幅回路が形成されたMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)では、近年のさらなる高速・高機能化に伴い、RFFE(RF Front-End)の損失の増加及びパワーアンプデバイスの自己発熱による特性限界が課題となっている。例えば、バイポーラトランジスタでは、そのコレクタ損失によって発熱し、バイポーラトランジスタ自体の昇温によって、ベース・エミッタ間電圧Vbeが低下し、そのことでコレクタ電流が増大し、Vbeがさらに低下する、という正帰還が掛かると熱暴走に至る。MMICの放熱性が高くないと、熱暴走しない範囲で使用可能な電力が制限されるので、結局、扱える電力とMMICのサイズとはトレードオフの関係にある。
【0006】
また、RFFEモジュールにおいては、GaAs基板を用いるパワーアンプやLiTaO3基板やLiNbO3基板を用いるSAWデバイスなど、基板材料の異なるデバイスを混載するため、さらなる高性能化・小型化・低コスト化と共に、異種デバイスの集積化が求められている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、高放熱性、高出力、高集積化に適した半導体装置、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一つの態様としての半導体装置は、表面に回路素子及び当該回路素子に接続される電極を有する基板と、前記基板上に設けられ、前記回路素子又は前記電極に接続された外部接続用の導体突起部と、を備え、前記基板は、第1基材と、当該第1基材上に配置され、前記第1基材とは材料が異なる第2基材とを含み、前記回路素子及び前記電極は前記第2基材に形成され、前記第1基材は前記第2基材に比べて熱伝導率が高い。
【0009】
本開示の一つの態様としての半導体装置の製造方法は、
表面に回路素子及び当該回路素子に接続される電極を有する基板と、当該基板上に設けられ、前記回路素子又は前記電極に接して電気的に接続された外部接続用の導体突起部と、を備え、前記基板は、第1基材と、当該第1基材上に配置された第2基材とを含み、前記回路素子及び前記電極が前記第2基材に形成された、半導体装置の製造方法であって、
表面に前記回路素子及び前記電極を有する半導体薄膜を、剥離層を介して化合物半導体基材に形成する工程と、
前記剥離層をエッチングにより除去して前記半導体薄膜を前記化合物半導体基材から剥離する工程と、
前記第1基材を構成する単体半導体基材上の所定位置に、前記第2基材を構成する前記半導体薄膜を接合する工程と、
前記第2基材上に設けられ、前記回路素子又は前記電極に接続される外部接続用の導体突起部を形成する工程と、
を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、放熱性が高く、そのことにより小型でありながら高出力の、又は高出力でありながら小サイズの半導体装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は第1の実施形態に係る半導体装置110の断面図である。
図2図2(A)、図2(B)は、実装基板に対する半導体装置110の実装構造を示す断面図である。
図3図3(A)は半導体装置110の放熱経路を示す断面図であり、図3(B)は比較例の半導体装置の放熱経路を示す断面図である。
図4図4は半導体装置110の製造方法について示す図である。
図5図5は、第1の実施形態の変形例としての半導体装置111の断面図である。
図6図6は第2の実施形態に係る半導体装置120の断面図である。
図7図7は、実装基板90に半導体装置120を実装した後の断面図である。
図8図8(A)、図8(B)は、第3の実施形態に係る半導体装置の断面図である。
図9図9は第3の実施形態の別の半導体装置の断面図である。
図10図10は第4の実施形態に係る半導体装置140の平面図である。
図11図11(A)は図10におけるA-A部分の断面図であり、図11(B)は図10におけるB-B部分の断面図である。
図12図12は第5の実施形態に係る半導体装置の製造方法についての各工程における斜視図である。
図13図13は、半導体薄膜片の転写後、第1基材10に対する処理によって形成される半導体装置の部分断面図である。
図14図14は、第6の実施形態に係る半導体装置160の断面図である。
図15図15(A)、図15(B)は、半導体装置160の実装構造を示す断面図である。
図16図16は、第7の実施形態に係る半導体装置170の断面図である。
図17図17は、比較例としての半導体装置が実装基板に実装された状態での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明又は理解の容易性を考慮して、実施形態を説明の便宜上、複数の実施形態に分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせは可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0013】
《第1の実施形態》
図1は第1の実施形態に係る半導体装置110の断面図である。この半導体装置110は、基板1と、この基板1上に設けられた第2基材側電極22に接して電気的に接続された導体ピラー23と、この導体ピラー23上に形成されたはんだ層24と、を備える。この導体ピラー23及びはんだ層24によって導体ピラーバンプPBが構成されている。
【0014】
基板1は、第1基材10と、この第1基材10上に配置された第2基材20とを含む。第2基材20には、複数の回路素子21及び当該複数の回路素子21に動作電圧を印加する又は動作電流を通電する電極が形成されている。第2基材20は、後に示すように別工程で形成され、上記回路素子は、そのエピタキシャル層上に形成されている。エピタキシャル層は例えば約3μmであり、上記電極(配線層)は約10μmである。図1において、回路素子21部に示す突起は回路素子に導通する電極である。
【0015】
また、本実施形態では、半導体装置110は、第1基材10の表面で、第2基材20と重ならない位置に第1基材側電極12が形成されている。そして、半導体装置110は、第1基材側電極12に接続された導体ピラー13と、この導体ピラー13上に形成されたはんだ層14と、を備える。この導体ピラー13及びはんだ層14によって導体ピラーバンプPBが構成されている。
【0016】
上記導体ピラーバンプPBは、本発明に係る外部接続用の「導体突起部」に相当する。
【0017】
この例では、第1基材10は、GaAs, AlAs, InAs, InP, GaP, InSb, GaN, InN, AlN, Si, Ge, SiC, Ga2O3, DLC(Diamond-Like Carbon), Graphite, Diamond, Glass, Sapphire, Al2O3 のいずれかを含む材料又はこれら材料のうち複数の材料からなる多元系混晶材料である。また、第2基材20は、GaAs, AlAs, InAs, InP, GaP, InSb, GaN, InN, AlN, SiGe, SiC, Ga2O3, GaBi のいずれかを含む材料又はこれら材料のうち複数の材料からなる多元系混晶材料である。ただし、第1基材10に選定する材料と第2基材20に選定する材料とは異なり、第1基材10と第2基材20との製造プロセスは異なる。基本的に、第2基材20は、例えば増幅率、遮断周波数等の所定の電気的特性が得られる材料とし、また、第1基材10は第2基材20に比べて熱伝導率が高い関係に選定する。これらのことは以降に示す別の実施形態においても同様である。
【0018】
本実施形態では、第1基材10はSi基材であり、第2基材20はGaAs基材である。Si基材の熱伝導率は156であり、GaAs基材の熱伝導率は46である。上記回路素子21は、例えば複数の単位トランジスタが並列接続されたヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)であり、第2基材20であるGaAs基材に対するプロセスによって形成されたものである。複数の単位トランジスタのエミッタに上記導体ピラーバンプPBが電気的に接続されている。複数の単位トランジスタは第1方向(図1における左右方向)に配列され、導体ピラーバンプPBは第1方向に延伸して配置されている。
【0019】
第2基材20は第1基材10に、接合層11を介して接合されている。接合層11は例えばAu膜である。
【0020】
上記導体ピラー13,23はCuめっき膜であり、はんだ層14,24はSnAg合金の膜である。
【0021】
図2(A)、図2(B)は、実装基板に対する上記半導体装置110の実装構造を示す断面図である。図2(A)は、実装基板90に対して半導体装置110を実装する前段階での断面図であり、図2(B)は、実装基板90に半導体装置110を実装した後の断面図である。
【0022】
実装基板90には実装基板側電極91,92が形成されている。半導体装置110は、そのはんだ層14,24を実装基板側電極91,92に位置合わせし、加熱加圧することによって、図2(B)に示すように、半導体装置110のはんだ層14,24が実装基板側電極91,92に接続される。
【0023】
ここで、比較例としての半導体装置の構造を示す。図17は、比較例としての半導体装置が実装基板に実装された状態での断面図である。この比較例の半導体装置は、GaAs基板30に回路素子が形成されている。GaAs基板30の表面には電極32,42が形成されていて、電極42上に導体ピラー43及びはんだ層44が形成されていて、電極32上に導体ピラー33及びはんだ層34が形成されている。そして、この半導体装置は、そのはんだ層34,44が実装基板側電極91,92にそれぞれ接続されている。
【0024】
なお、図1に表れているように、はんだ層24とはんだ層14との高さは第2基材20の厚み分だけ異なるが、この程度の高さの違いははんだ層14,24で吸収される。
【0025】
上記比較例の半導体装置と第1の実施形態に係る半導体装置110との放熱性について、図3(A)、図3(B)を参照して説明する。
【0026】
比較例としての半導体装置では、図3(B)に示すように、回路素子に生じる熱は、破線の矢印で示すように、電極42、導体ピラー43、はんだ層44を経由して、実装基板側電極92及び実装基板90に放熱(排熱)される。
【0027】
一方、本実施形態の半導体装置110では、図3(A)に示すように、破線の矢印で示すように、3つの熱伝導経路を経由して放熱される。第1の熱伝導経路は、回路素子が発生する熱を、第2基材側電極22、導体ピラー23、はんだ層24を経由して、実装基板側電極92及び実装基板90に放熱(排熱)する経路である。第2の熱伝導経路は、回路素子が発生する熱を、第1基材10に放熱(排熱)する経路である。第1基材10はSi基材であって、その熱伝導率は156[W/cm K]であり、GaAs基板30の熱伝導率は46[W/cm K]であり、第1基材10の熱伝導率は第2基材20の熱伝導率に比べて高い。したがって、第1基材10は高効率の熱放射体として作用する。第3の熱伝導経路は、回路素子に生じる熱を、第1基材10、第1基材側電極12、導体ピラー13、はんだ層14を経由して、実装基板側電極91及び実装基板90に放熱(排熱)する経路である。このように第1基材10は熱伝導経路として作用するので、導体ピラー13、はんだ層14、及び実装基板側電極91も熱伝導経路として作用する。
【0028】
このように構成された本実施形態の半導体装置110は次のような効果を奏する。
【0029】
まず、3つの放熱経路が形成されることで、高い放熱性が得られる。このことで、上記HBTの自己発熱により制限されるRF特性(出力電力Pout、電力付加効率PAE)が改善される。つまり、小型でありながら高出力の半導体装置が得られる。または高出力でありながら小サイズの半導体装置が得られる。
【0030】
また、第2基材が化合物半導体の基材であることにより、その電気絶縁性を高められ、高周波特性に優れた回路を設けることができる。
【0031】
また、第2基材20は第1基材10より薄いので、第1基材10による高い放熱効果が得られる。
【0032】
また、第2基材20に形成された回路素子21は動作時に発熱する発熱体であり、導体ピラーバンプPBは、発熱体としての回路素子21の直近に設けられているので、導体ピラーバンプにより、短い熱伝導経路が構成され、回路素子21が発生する熱は導体ピラーバンプPBを介して高効率で放熱される。
【0033】
また、第2基材20は第1基材10の外縁からはみ出さないので(第1基材10より小面積であるので)、第1基材10と第2基材20とを含む基板1全体の熱抵抗が低く、第1基材10からの高い放熱効果が得られる。
【0034】
また、第1基材10の、第2基材20に重ならない位置の表面に第1基材側電極12が形成され、導体ピラーバンプPBは第1基材側電極12に接続されているので、第1基材側電極12に接続された導体ピラーバンプPBからの放熱効果が得られる。また、この導体ピラーバンプPBを介して、実装先である回路基板への熱伝導効率が高まり、回路基板での放熱性も高まる。
【0035】
次に、半導体装置110の製造方法について例示する。図4は半導体装置110の製造方法について示す図である。図4中の(1)から(7)までの図は、半導体装置110の製造途中段階における断面図であり、(8)は、完成した半導体装置110の断面図である。実際の製造はウエハー単位で行われるが、図4では、単一の半導体装置について図示している。
【0036】
まず、図4中の(1)に示すように、Si基材からなる第1基材10の表面に、一般的な半導体プロセスを用いて、接合層11としてのAu膜を形成する。
【0037】
次に、(2)に示すように、接合層11上に第2基材20を接合する。第2基材20には別工程で既に回路素子及び電極が形成されている。
【0038】
次に、(3)に示すように、一般的な半導体プロセスによって、第2基材20上に第2基材側電極22を形成し、また、接合層11上に第1基材側電極12を形成する。
【0039】
次に、(4)に示すように、導体ピラー13及びはんだ層14(図1図2(A))を形成すべき領域に開口を持つレジスト膜85を形成する。レジスト膜85の開口内に電極12,22が露出している。
【0040】
その後、(5)(6)に示すように、レジスト膜85の開口内に露出している電極12,22の上に、めっき法により導体ピラー13,23及びはんだ層14,24を堆積させる。導体ピラー13,23はCuで形成され、その厚さは例えば40μmである。このようにして、CPB(Copper Pillar Bump)を形成する。はんだ層14,24はSnAg合金で形成され、その厚さは例えば30μmである。
【0041】
その後、(7)に示すように、レジスト膜85を除去し、最後に、リフロー処理を行って、はんだ層14,24を溶融させ、その後固化させることにより、(8)に示すように半導体装置110を得る。
【0042】
上記製造方法によれば、第2基材20は半導体薄膜であるので、低背で放熱性の高い(熱伝導率の高い)半導体装置が得られる。
【0043】
なお、図1から図4に示した例では、接合層11としてAu膜を形成したが、例えばPt膜、Pd膜等、他の金属膜を用いることもできる。この接合層11は第2基材20に比べて熱伝導率が高いことが好ましい。このことにより、第2基材20の熱が接合層11を介して第1基材10へ高効率で排熱される。例えば、第2基材20であるGaAs基材の熱伝導率は46[W/m K]であるのに対し、Au膜の熱伝導率は319[W/m K]、Pt膜の熱伝導率は70[W/m K]、Pd膜の熱伝導率は70[W/m K]、であり、いずれも第2基材20に比べて熱伝導率が高い。
【0044】
また、接合層11は第2基材20に比べて弾性率が低いことがより好ましい。第1基材10と第2基材20との線膨張係数には差があり、温度変化によって、線膨張係数の差による熱応力が生じる。しかし、接合層11が第2基材20に比べて弾性率が低いことにより、上記熱応力が低減される。このことにより、接合層11を介する、第1基材10と第2基材20との実質的な接合強度を確保できる。例えば、GaAs基材の弾性率は85.5[GPa]であるのに対し、Au膜の弾性率は78[GPa]、Al膜の弾性率は68.3[GPa]、In膜の弾性率は10.8[GPa]であり、いずれも第2基材20の弾性率より低い。
【0045】
接合層11が金属である場合、接合層11と第2基材20との間に、接合層11と第2基材20との合金化層が形成されることが好ましい。そのことにより、より高い密着性とより高い熱伝導作用が得られる。
【0046】
前記接合層11は、例えばポリイミド(PI)膜、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ベンゾシクロブテン(BCB)等の有機材料からなる誘電体であってもよい。この接合層11は第2基材20に比べて誘電率が低いことが好ましい。第2基材20に形成されている回路素子の高周波特性として、高周波信号の伝送損失特性があるが、接合層11の誘電率が第2基材20の誘電率より高いと、接合層11の近接によって、回路素子の高周波信号の伝送損失特性が低下する。接合層11の誘電率が第2基材20の誘電率より低ければ、この伝送損失特性の低下が回避される。例えば、第2基材20であるGaAs基材の比誘電率は12.9であるのに対し、ポリイミド(PI)の誘電率は3.3、ポリベンゾオキサゾール(PBO)の誘電率は2.9、ベンゾシクロブテン(BCB)の誘電率は2.7であり、いずれも第2基材20に比べて誘電率が低い。
【0047】
なお、接合層11は第2基材20に比べて誘電正接が小さいことが好ましい。接合層11の誘電正接が大きいと、接合層11による高周波損失が大きくなる。接合層11の誘電正接が第2基材20の誘電正接より小さければ、この高周波損失の増加が回避される。例えば、第2基材20であるGaAs基材の誘電正接は0.3であるのに対し、ポリイミド(PI)の誘電正接は0.0020、ポリベンゾオキサゾール(PBO)の誘電正接は0.0100、ベンゾシクロブテン(BCB)の誘電正接は0.0008であり、いずれも第2基材20に比べて誘電正接が小さい。
【0048】
また、接合層11が有機材料である場合も、接合層11は第2基材20に比べて弾性率が低いことがより好ましい。このことにより、接合層11を介する、第1基材10と第2基材20との実質的な接合強度を確保できる。例えば、GaAs基材の弾性率は85.5[GPa]であるのに対し、ポリイミド(PI)の弾性率は2.5、ポリベンゾオキサゾール(PBO)の弾性率は2.8、ベンゾシクロブテン(BCB)の弾性率は2.1であり、いずれも第2基材20に比べて弾性率が低い。
【0049】
さらには、前記接合層11は、AlN、SiC、ダイヤモンド等の絶縁体であってもよい。この接合層11は第1基材10に比べて電気抵抗率が高いことが好ましい。接合層11の電気抵抗率が第1基材10の電気抵抗率より高いと、接合層11及び第1基材10に流れる誘導電流や渦電流が抑制されるので、第2基材20に形成されている回路素子の良好な高周波特性が維持できる。
【0050】
また、接合層11が絶縁体である場合も、接合層11は第1基材10に比べて熱伝導率が高いことが好ましい。このことにより、第2基材20の熱が接合層11を介して第1基材10へ高効率で排熱される。例えば、第1基材10であるSi基材の熱伝導率は156[W/cm K]であるのに対し、AlN膜の熱伝導率は170[W/cm K]、SiC膜の熱伝導率は270[W/cm K]、ダイヤモンド膜の熱伝導率は2000[W/cm K]、であり、いずれも第1基材10に比べて熱伝導率が高い。
【0051】
次に、第1の実施形態の変形例について示す。図5はこの変形例としての半導体装置111の断面図である。この半導体装置111は、図1に示した接合層11を備えていない。第2基材20は第1基材10に対して直接的に接合している。この接合は、ファンデルワールス結合又は水素結合による。その他に、静電力、共有結合、共晶合金結合等によって接合してもよい。
【0052】
第1基材側電極12は第1基材10の上面に直接形成されていて、この第1基材側電極12の上に、導体ピラー13及びはんだ層14による導体ピラーバンプPBが形成されている。
【0053】
このように、第1基材10に第2基材20を、接合層を介さずに接合してもよい。
【0054】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、第1の実施形態とは導体突起部の構成が異なる半導体装置について示す。
【0055】
図6は第2の実施形態に係る半導体装置120の断面図である。図1に示した例とは異なり、第1基材側電極12と、この第1基材側電極12に接続された外部接続用の導体突起部(導体ピラー13及びはんだ層14)とを備えない。
【0056】
図7は、実装基板90に半導体装置120を実装した後の断面図である。実装基板90には、実装基板側電極92が形成されている。半導体装置120は、その導体ピラーバンプPBを実装基板側電極92に位置合わせし、加熱加圧することによって、はんだ層24が実装基板側電極92に接続される。
【0057】
このような構造であっても、図中の破線の矢印で示すように、発熱部から二方向へ放熱(排熱)される。
【0058】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、平坦化樹脂層を備える幾つかの半導体装置について例示する。
【0059】
図8(A)、図8(B)は、第3の実施形態に係る半導体装置130A,130Bの断面図である。これら半導体装置130A,130Bは、第1基材10と、この第1基材10上に配置された第2基材20とを備える。第2基材20は化合物半導体の半導体基材20Nとその表面に形成されたエピタキシャル層20Dとを備える。エピタキシャル層20Dには複数の回路素子21が形成されている。
【0060】
エピタキシャル層20Dの上面には、回路素子21に導通する第2基材側電極22が形成されている。第1基材10及び第2基材20の表面には平坦化樹脂層15が形成されている。第2基材側電極22の上部には、導体ピラー23及びはんだ層24による導体ピラーバンプPBが形成されている。
【0061】
図8(B)に示す例では、第1基材10の上面に接合層11が形成されていて、第2基材20は接合層11を介して第1基材10に接合されている。
【0062】
図9は第3の実施形態の別の半導体装置131の断面図である。この半導体装置131は、第1基材10と、この第1基材10上に配置された第2基材20とを備える。第2基材20には複数の回路素子が構成されている。第1基材10の上面には接合層11が形成されている。接合層11及び第2基材20の表面には平坦化樹脂層15が形成されている。第1基材側電極12の上部には、導体ピラー13及びはんだ層14による導体ピラーバンプPBが形成されている。
【0063】
上記平坦化樹脂は、例えばポリイミド(PI)膜、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ベンゾシクロブテン(BCB)等である。このように、第1基材10及び第2基材20の表面に平坦化樹脂層15を形成することにより、相対的に厚い導体ピラー23及びはんだ層24の形成が容易となる。また、第1基材10及び第2基材20の表面がリパッシベーションされる。
【0064】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、複数箇所に外部接続用の導体突起を備える一つの半導体装置の例について示す。
【0065】
図10は第4の実施形態に係る半導体装置140の平面図である。また、図11(A)は図10におけるA-A部分の断面図であり、図11(B)は図10におけるB-B部分の断面図である。
【0066】
本実施形態の半導体装置140は、複数の導体ピラー上にはんだ層14,24が形成されている。図10図11(A)に表れているように、半導体装置140の所定箇所に、それぞれ複数の単位トランジスタが、図10における左右方向に配列され、並列接続された、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)51A,51Bが形成されている。このHBT51A,51Bの上部に導体ピラー23及びはんだ層24による、導体ピラーバンプPBが形成されている。このHBT51A,51B、導体ピラー23及びはんだ層24の構成は第1の実施形態で示したとおりである。
【0067】
2つのHBT51A,51Bの両隣には、導体ピラー13及びはんだ層14による、導体ピラーバンプPBが形成されている。
【0068】
上記導体ピラーバンプPBは、図10に示すように、A-A断面以外にも形成されている。これら導体ピラーバンプPBは、上記HBT51A,51Bの近傍に配置されている。この構成により、HBT51A,51Bの発する熱が高効率で放熱される。
【0069】
半導体装置140には、上記HBT51A,51B以外にスパイラル状導体パターンによるインダクタ、誘電体層を挟んで対向する電極によるキャパシタ及び抵抗体膜のパターンによる抵抗素子等によってLCR回路が構成されている。
【0070】
図10及び図11(B)に示すように、第1基材10の表面に接合層11が形成されていて、この接合層11の表面の所定箇所に絶縁体層16が形成されている。この絶縁体層16の表面に、スパイラルインダクタ52が形成されている。このスパイラルインダクタ52の隣接位置に、導体ピラー13及びはんだ層14による導体ピラーバンプPBが形成されている。また、図10図11(B)に示す、半導体装置140の所定箇所には、MIMC(Metal-Insulator-Metal-Capacitor)53が形成されている。そして、このMIMC53の隣接位置に、導体ピラー13及びはんだ層14による導体ピラーバンプPBが形成されている。
【0071】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、第2基材の製造方法、及び第1基材に対する第2基材の接合方法について示す。
【0072】
図12は第5の実施形態に係る各工程における斜視図である。実際の製造はウエハー単位で行われるが、図12では、単一の半導体装置について図示している。
【0073】
図12中(1)に示すように、先ず、化合物半導体基材である母基板200に剥離層29を形成し、この剥離層29の上部に半導体薄膜をエピタキシャル成長法により形成し、この半導体薄膜に、複数の回路素子及び当該回路素子に接続される電極を形成する。この部分が後の第2基材20である。
【0074】
次に(2)に示すように、剥離層29だけを選択的にエッチングする処理を行うことで、第2基材20(半導体薄膜片)を母基板200から剥離する。
【0075】
(3)に示すように、別工程で、第1基材10に接合層11を形成し、(4)に示すように、第2基材20を接合層11表面に加圧・密着させることで、第1基材10に第2基材20を接合(ボンディング)する。つまり、半導体薄膜片を母基板200から第1基材10へ転写する。例えば、接合層11のAuが第2基材のGaAsに拡散して共晶化されることで接合される。
【0076】
上記第2基材20への回路素子及び電極の形成は、(1)に示す段階だけでなく、(4)に示すように、第2基材20を第1基材10へ接合した後に、第2基材20に対するプロセス(フォトリソグラフィ・エッチング工程)によって行ってもよい。
【0077】
上記半導体薄膜片の剥離及び転写の方法は、特許第5132725号に開示されている方法を適用できる。つまり、図12中(2)に示したように、第2基材20(半導体薄膜片)を母基板200から剥離する際、第2基材20が支持体で支持された状態で、母基板200から剥離する。また、図12中(3)に示すように、第1基材10へ第2基材20を接合する際、上記支持体で支持された状態で行う。図12中の(2)(3)では、第2基材20の明示の都合上、支持体の図示を省略している。
【0078】
図13は、上記半導体薄膜片の転写後、第1基材10に対する処理によって形成される半導体装置の部分断面図である。第2基材20は半導体基材20Nとその表面に形成された、バイポーラトランジスタである回路素子21とを備える。第2基材20の上部には第2基材側電極22が形成されている。この例では、第2基材側電極22はエミッタ配線である。第1基材の接合層11及び第2基材20の表面には平坦化樹脂層15が形成されている。
【0079】
上記エミッタ配線である第2基材側電極22には、導体ピラー23及びはんだ層24による導体ピラーバンプPBが形成されている。
【0080】
半導体基材20Nもエピタキシャル層20Dも厚さは数μmである。例えば、半導体基材20Nは1μm、エピタキシャル層20Dは3μmである。従来、化合物半導体素子にワイヤーボンディングする場合に、半導体基材20N及びエピタキシャル層20Dの総厚みとして75μm以上必要であるが、本実施形態では、第1基材10の上部に付加される第2基材20の厚みは僅か数μmであるので、全体的に非常に薄型(低背)の半導体装置が構成できる。
【0081】
《第6の実施形態》
第6の実施形態では、第1基材10と第2基材20とを接合する接合層の構造に特徴を有する半導体装置について示す。
【0082】
図14は第6の実施形態に係る半導体装置160の断面図である。この半導体装置160は、第1基材10と、この第1基材10上に配置された第2基材20とを備える。第2基材20は化合物半導体の半導体基材とその表面に形成されたエピタキシャル層とを備え、エピタキシャル層には複数の回路素子21が形成されている。この例では、第1基材10はSi基材であり、第2基材20はGaAs基材である。
【0083】
第1基材10と第2基材20との間には接合層19が設けられている。つまり、第1基材10と第2基材20とは接合層19を介して接合されている。接合層19の表面には第1基材側電極12が形成されている。第2基材20の表面には第2基材側電極22が形成されている。第1基材10及び第2基材20の表面には平坦化樹脂層15が形成されている。第1基材側電極12の上部には、導体ピラー13及びはんだ層14による導体ピラーバンプPBが形成されている。第2基材側電極22の上部には、導体ピラー23及びはんだ層24による導体ピラーバンプPBが形成されている。
【0084】
接合層19は絶縁体層17と金属層18とを含む複合材料の層である。絶縁体層17は例えばSiO膜、SiN膜等のSi化合物の層、またはポリイミド(PI)膜等の樹脂の層である。金属層18は例えばCu膜又はAl膜である。接合層19は3層構造である。この接合層19は、第1基材10の表面に、第1層としての絶縁体層17が形成され、この絶縁体層17の表面に第2層としての金属層18が形成され、この金属層18の表面に第3層としての絶縁体層17が形成されたものである。金属層18はパターン化されていて、第2基材20の近傍と、第1基材側電極12の近傍にそれぞれ金属層18のパターンが形成されている。
【0085】
このように、接合層19が絶縁体層17と金属層18とを含む複合材料の層であることにより、接合層19は、第1基材10と第2基材20との線膨張係数の違いに応じて生じる応力が緩和される。第1基材10、第2基材20及び接合層19の線膨張係数は次のとおりである。例えば、第1基材10であるSi基材の線膨張係数は2.60[ppm/℃]、第2基材20であるGaAs基材の線膨張係数は5.73[ppm/℃]であるのに対して、テトラエトキシシラン(TEOS)によるSiO膜の線膨張係数は0.57[ppm/℃]、SiN膜の線膨張係数は2.30[ppm/℃]であり、第1基材10、第2基材20に比べて線膨張係数が低い。また、金属層18としてのCu膜の線膨張係数は17.0[ppm/℃]であり、第1基材10、第2基材20に比べて線膨張係数が高い。したがって、接合層19の線膨張係数は第1基材10の線膨張係数と第2基材20の線膨張係数との中間的な値となって、第2基材20と第1基材10との界面での応力が緩和される。
【0086】
絶縁体層17がSiO膜、SiN膜等Si化合物の層であれば、第1基材10に対する絶縁体層17の形成が容易となり、かつ第1基材10と絶縁体層17との接合強度を高めることができる。
【0087】
絶縁体層17のうち、最上層のみ樹脂層であってもよい。このように、絶縁体層17の少なくとも一部が樹脂膜による層である場合は、上記線膨張係数の大小関係にかかわらず、絶縁体層17の柔軟性によって上記応力が吸収される。また、接合層19内における金属層18と絶縁体層17との間に生じる応力についても絶縁体層17で緩和することができる。
【0088】
なお、第2基材20はこの第2基材20に形成されている回路素子21の発熱・停止により膨張・収縮するが、この膨張・収縮は、回路素子21から離れた第1基材10の膨張・収縮に比べて激しい。この傾向は、第1基材10、第2基材20及び接合層19の線膨張係数が上記関係でなくても同じである。本実施形態によれば、接合層19が存在することにより、第2基材20と第1基材10との界面での応力が緩和される。
【0089】
図15(A)、図15(B)は、半導体装置160の実装構造を示す断面図である。図15(A)は、実装基板90に対して半導体装置160を実装する前段階での断面図であり、図15(B)は、実装基板90に半導体装置160を実装した後の断面図である。
【0090】
実装基板90には実装基板側電極91,92が形成されている。半導体装置160は、そのはんだ層14,24を実装基板側電極91,92に位置合わせし、加熱加圧することによって、図15(B)に示すように、半導体装置160のはんだ層14,24が実装基板側電極91,92に接続される。
【0091】
このように、第2基材側電極22に形成されている導体ピラーバンプPBは、第2基材20に形成されている回路素子21を実装基板の回路に接続する端子として作用する。また、この第2基材側電極22に形成されている導体ピラーバンプPBは、第2基材20に形成されている回路素子21が発する熱を実装基板へ放熱する放熱用のバンプとしても作用する。
【0092】
接合層19内の金属層18は接合層19の熱伝導性を高める。したがって、第2基材20に形成されている回路素子21が発する熱は接合層19を介して第1基材10へも放熱される。また、接合層19内の金属層18は接合層19の面方向(横方向)への熱伝導性を高めるので、回路素子21が発する熱は、第1基材側電極12の近傍の金属層18を経由し、第1基材側電極12に形成されている導体ピラーバンプPBを介して実装基板90へも放熱される。また、回路素子21が発する熱は、第1基材側電極12の近傍の金属層18を経由して第1基材10へも放熱される。
【0093】
なお、図14に示した断面では、金属層18は独立した存在であるが、第1基材側電極12に繋がっていてもよい。また、第1基材10に形成されている回路に接続されていてもよい。
【0094】
《第7の実施形態》
第7の実施形態では、第1基材10と第2基材20とを接合する接合層の構造に特徴を有する半導体装置について示す。
【0095】
図16は第7の実施形態に係る半導体装置170の断面図である。この半導体装置170は、第1基材10と、この第1基材10上に配置された第2基材20とを備える。第6の実施形態で図14に示した例とは接合層19の構成が異なる。その他の構成は第6の実施形態で示したとおりである。
【0096】
接合層19は絶縁体層17と金属層18とを含む複合材料の層である。絶縁体層17は例えばSiO膜、SiN膜等のSi化合物の層、またはポリイミド(PI)膜等の樹脂の層である。金属層18は例えばCu膜又はAl膜である。接合層19は5層構造である。図14に示した例と同様に、金属層18のパターンは、第2基材20の近傍と、第1基材側電極12の近傍にそれぞれ形成されている。
【0097】
接合層19は次の工程で形成される。
(1)第1基材10の表面に、第1層としての絶縁体層17を形成する。
(2)その絶縁体層17の表面に第2層としての金属層18Aを形成する。
(3)この金属層18の表面に第3層としての絶縁体層17を形成する。
(4)この絶縁体層17の所定位置(下層の金属層18Aの形成位置)に開口を形成する。
(5)絶縁体層17上に金属層18Cを形成するとともに、上記開口内に金属層18Bを形成する。
(6)最上層としての絶縁体層17を形成する。
【0098】
本実施形態によれば、金属層18が多層構造であるので、接合層19の厚みを厚くても、接合層19の熱抵抗を低く保てる。そのため、回路素子21の放熱性が高い。また、接合層19の熱容量が大きくなるので、回路素子21の急激な発熱があっても、その温度上昇抑制効果が高い。
【0099】
なお、第6の実施形態で述べたと同様に、金属層18は第1基材側電極12に繋がっていてもよい。また、金属層18は第1基材10に形成されている回路に接続されていてもよい。
【0100】
実施形態毎の構成及び作用効果については以上に示したとおりであるが、実施形態で開示した態様を列挙すると、次のとおりである。
【0101】
本開示の一つの態様としての半導体装置は、表面に回路素子21及び当該回路素子に接続される電極を有する基板1と、この基板1上に設けられ、電極又は回路素子21に接続された外部接続用の導体ピラーバンプPBと、を備え、基板1は、第1基材10と、この第1基材10上に配置され、第1基材10とは材料が異なる第2基材20とを含み、回路素子21及び電極は第2基材20に形成され、第1基材10は第2基材20に比べて熱伝導率が高い。
【0102】
上記構成により、導体ピラーバンプPB及び第1基材10を介して放熱される。つまり両面からの放熱経路が形成されることで、高い放熱性が得られる。また、熱伝導率の高低の制限を受けない第2基材20に形成された半導体領域に回路素子が設けられるので、第2基材20の物性を有効に利用した回路が構成され、かつ第1基材10による高い放熱性が維持される。
【0103】
本開示の一つの態様としての半導体装置は、第1基材10は単体半導体の基材であり、第2基材20は化合物半導体の基材である。このように、第1基材10が単体半導体の基材であることにより、第1基材10を介する放熱によって、全体的に高い放熱性が得られる。また、第2基材20が化合物半導体の基材であることにより、その電気絶縁性を高められ、高周波特性に優れた回路を設けることができる。
【0104】
本開示の一つの態様としての半導体装置は、第2基材20は第1基材10より薄い。このことにより、第1基材10による高い放熱効果が得られる。
【0105】
本開示の一つの態様としての半導体装置は、回路素子21は動作時に発熱する発熱体であり、導体ピラーバンプPBは、発熱体である回路素子21の直近に設けられている。この構成により、導体ピラーバンプPBによって短い熱伝導経路が構成され、回路素子21に生じる熱が導体ピラーバンプPBを介して効果的に放熱される。
【0106】
本開示の一つの態様としての半導体装置は、第2基材20は第1基材10の外縁からはみ出さない。この構成により、第1基材10と第2基材20とを含む基板の熱抵抗がより低くなり、第1基材10からの高い放熱効果が得られる。
【0107】
本開示の一つの態様としての半導体装置は、第1基材10と第2基材20との間に、第1基材10と第2基材20とを接合する接合層11を備え、この接合層11は第2基材20に比べて熱伝導率が高い金属である。この構成により、第2基材20から第1基材10への熱伝導性が確保され、第1基材10による放熱(排熱)性が維持される。また、第1基材10から接合層11を介する放熱性が確保される。つまり、第1基材10からの放熱性は接合層11で阻害されない。
【0108】
本開示の一つの態様としての半導体装置は、接合層11は金属であり、かつ第2基材20に比べて弾性率が低い。この構成により、第1基材10と第2基材20の線膨張係数の違いにより生じる熱応力が緩和される。
【0109】
本開示の一つの態様としての半導体装置は、接合層11が金属であり、接合層11と第1基材10との間に、この接合層11と第1基材10との合金化層が形成される。この構成により、第1基材10と第2基材20との高い密着性及び高い熱伝導性が得られる。
【0110】
本開示の一つの態様としての半導体装置は、第1基材10と第2基材20との間に接合層11を備え、この接合層11は第2基材20に比べて誘電率が低い誘電体である。この構成により、第1基材10による高周波損失が抑制され、高周波特性に優れた回路を設けることができる。
【0111】
本開示の一つの態様としての半導体装置は、接合層11が誘電体であり、かつ第2基材20に比べて弾性率が低い。この構成により、第1基材10と第2基材20の線膨張係数の違いにより生じる熱応力が緩和される。
【0112】
本開示の一つの態様としての半導体装置は、第1基材10と第2基材20との間に接合層11を備え、この接合層11は第1基材10に比較して電気抵抗率が高い絶縁体である。このことにより、第1基材10と第2基材20との間の電気絶縁性が高まり、第1基材10による高周波損失が抑制され、高周波特性に優れた回路を設けることができる。
【0113】
本開示の一つの態様としての半導体装置は、接合層11が第1基材10に比べて熱伝導率が高い。このことにより、接合層11と第1基材10とにより構成される部分の実効上の熱抵抗が低くなり、高い放熱性が得られる。
【0114】
本開示の一つの態様としての半導体装置は、第1基材10と第2基材20との間に接合層19を備え、この接合層19は、絶縁体層17と金属層18とを含む複合材料の層である。このことにより、第1基材10と第2基材20との線膨張係数の違いにより生じる、第1基材10と第2基材20との間の応力を緩和することができる。また、第2基材20に形成されている回路素子21の発熱・停止により、第2基材20の膨張・収縮が第1基材10に比べて激しいが、そのことによって生じる、第2基材20と第1基材10との界面での応力が緩和される。
【0115】
本開示の一つの態様としての半導体装置は、第1基材10がSi基材であり、接合層19内の絶縁体層17がSi化合物の層である。このことにより、第1基材10に対する絶縁体層17の形成が容易となり、かつ第1基材10と絶縁体層17との接合強度を高めることができる。
【0116】
本開示の一つの態様としての半導体装置は、絶縁体層17の少なくとも一部が樹脂である。このことにより、接合層19内における金属層18と絶縁体層17との間に生じる応力を絶縁体層17で緩和することができる。
【0117】
本開示の一つの態様としての半導体装置は、第1基材10の、第2基材20に重ならない位置の表面に第1基材側電極12が形成され、導体ピラーバンプPBは第1基材側電極12に接続される。この構成により、第1基材側電極12に接続された導体ピラーバンプPBからの放熱効果が得られる。また、この導体ピラーバンプPBを介して、実装先である回路基板への熱伝導効率が高まり、回路基板での放熱性も高まる。
【0118】
本開示の一つの態様としての半導体装置の製造方法は、表面に回路素子21及びこの回路素子21に接続される電極を有する基板1と、この基板1上に設けられ、電極又は回路素子21に接して電気的に接続された外部接続用の導体ピラーバンプPBと、を備え、基板1は、第1基材10と、この第1基材10上に配置された第2基材20とを含み、回路素子21及び電極が第2基材20に形成された、半導体装置の製造方法であって、表面に回路素子21及び電極を有する半導体薄膜を、剥離層29を介して化合物半導体の母基板200に形成する工程と、剥離層29をエッチングにより除去して半導体薄膜を化合物半導体基材の母基板200から剥離する工程と、第1基材10を構成する単体半導体基材である第1基材10上の所定位置に、第2基材20を構成する半導体薄膜を接合する工程と、第2基材20上に設けられ、電極又は回路素子21に接続される外部接続用の導体ピラーバンプPBを形成する工程と、を有する。
【0119】
上記製造方法によれば、小型でありながら高出力の、又は高出力でありながら小サイズの半導体装置が得られる。
【0120】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形及び変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0121】
PB…導体ピラーバンプ
1…基板
10…第1基材
11…接合層
12…第1基材側電極
15…平坦化樹脂層
16…絶縁体層
20…第2基材
20D…エピタキシャル層
20N…半導体基材
21…回路素子
22…第2基材側電極
13,23…導体ピラー
14,24…はんだ層
29…剥離層
30…GaAs基板
32,42…電極
33,43…導体ピラー
34,44…はんだ層
51A,51B…ヘテロ接合バイポーラトランジスタ
52…スパイラルインダクタ
53…MIMC
85…レジスト膜
90…実装基板
91,92…実装基板側電極
110,111,120,130A,130B,131,140,160,170…半導体装置
200…母基板
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