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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】携帯型心電装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/332 20210101AFI20240709BHJP
   A61B 5/26 20210101ALI20240709BHJP
【FI】
A61B5/332
A61B5/26
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020048994
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021145917
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小高 心哉
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-082364(JP,A)
【文献】国際公開第2014/041679(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/091379(WO,A1)
【文献】特開2005-185756(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105011927(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/332
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装された回路基板と、
前記回路基板と電池を収容する筐体と、
前記筐体の長手方向に沿って対向する一対の面にそれぞれ設けられ、前記回路基板に電気的に接続された、心電信号を検出するための第1電極及び第2電極とを備えた携帯型心電装置であって、
前記電池は長手方向が前記筐体の長手方向に沿うように前記筐体に収容され、
前記第1電極及び前記第2電極が、円筒形の前記電池をその長手方向の両端から挟むように、前記筐体に配置され、
前記筐体の長手方向の長さは、前記電池の長さの1.4倍であり、
前記第1電極及び前記第2電極は、被検者が前記第1電極に右手人差し指を接触させた状態で前記第2電極を胸部に接触させた場合に右手の手根部が胸部に接触可能となる距離に設けられたことを特徴とする携帯型心電装置。
【請求項2】
前記筐体は、前記電池を、該筐体に収容し又は該筐体から取り出すための電池用開口部と、該電池用開口部を開閉する開閉部材とを有することを特徴とする請求項1に記載の携帯型心電装置。
【請求項3】
前記筐体に内蔵され、前記電池を収容する電池収容部を備え、
前記電池収容部において、前記電池の正極端子の突出部が形成されている正極側端面に、該電池の長手方向の外方から指又は爪を引っ掛けるために、前記電池用開口部の前記正極端子側の内縁と該正極側端面との間に、前記指又は爪を挿入可能な間隙が設けられるように前記電池収容部は前記筐体に配置されることを特徴とする請求項2に記載の携帯型心電装置。
【請求項4】
前記電池収容部は、前記正極端子が前記筐体の長手方向に対して互いに逆向きとなるように収容される前記電池に対応して、前記間隙が前記筐体の長手方向に対して両側に設けられるように前記筐体に配置されることを特徴とする請求項3に記載の携帯型心電装置。
【請求項5】
前記正極端子が前記筐体の長手方向に対して互いに逆向きとなるよう収容される前記電池は、それぞれの負極側にずらして前記電池収容部に収容されることを特徴とする請求項4に記載の携帯型心電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日常生活等における心電波形測定が可能な携帯型の心電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、日常生活における胸部の痛みや動悸などの異常発生時に、すぐに心電波形を測定可能な携帯型の心電測定装置(以下、「携帯型心電装置」ともいう)が提案されている。医師等においては、家庭や外出先等で動悸等の症状が起きた際に当該心電装置によって測定された心電波形のデータ等に基づいて、心疾患の早期発見や適切な治療行為を施すことが可能になる。
【0003】
このような携帯型心電装置として、特許文献1に開示されているように、扁平かつ細長な略直方体形状の外形を有する装置が知られている。この心電装置では、装置本体の長手方向の一方の端面に正電極が配置され、他方の端面に負電極と接地電極が配置されている。また、携帯型心電装置の電源となる電池は装置本体の短手方向に沿うように収容される。測定時には、心電装置の一方の端面寄りを右手で把持して負電極と接地電極に右手の指を接触させつつ、他方の端面を胸部の所定箇所に押し当てて正電極を当該箇所の皮膚に接触させる。装置本体の長手方向の寸法が、装置本体を把持する手の幅よりも相当に長い形状であれば、胸部に押し当てる力が、他方の端面に沿った軸を中心として装置本体を回転させる方向に作用するため、電極の接触状態が不安定になりやすい。また、装置本体の寸法が大きくなると携帯性も悪くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-166961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来の技術に鑑み、本発明は、電極の接触状態の安定性及び携帯性が高い携帯型心電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係る携帯型心電装置は、
電子部品が実装された回路基板と、
前記回路基板と電池を収容する筐体と、
前記筐体の長手方向に沿って対向する一対の面にそれぞれ設けられ、前記回路基板に電気的に接続された、心電信号を検出するための第1電極及び第2電極とを備えた携帯型心電装置であって、
前記電池は長手方向が前記筐体の長手方向に沿うように前記筐体に収容され、
前記第1電極及び前記第2電極は、被検者が前記第1電極に右手人差し指を接触させた状態で前記第2電極を胸部に接触させた場合に右手の手根部が胸部に接触可能となる距離に設けられたことを特徴とする。
【0007】
このように、被検者が、第1電極を右手人差し指を接触させた状態で第2電極を胸部に接触させて心電信号を検出する場合に、筐体の長手方向に沿って対向する一対の面の一方に設けられた第1電極に人差し指を接触させている右手の手根部が胸部に接触させることができる距離に第1電極と第2電極を設けている。このため、第1電極と第2電極との距離を短くして、携帯型心電装置1の長手方向に小型化することができるので、携帯性が向
上する。また、右手人差し指を第1電極に接触させ、胸部に第2電極を接触させて心電信号を検出する場合に、胸部に接触させた第2電極を支点として、比較的運動の自由度の高い右手の人差し指から第1電極に作用する力の回転モーメントを小さくすることができるので、携帯型心電装置の姿勢を安定させ、電極の接触状態を安定化させることができる。
【0008】
また、本発明において、
前記第1電極及び前記第2電極が、円筒形の前記電池をその長手方向の両端から挟むように、前記筐体に配置されるようにしてもよい。
【0009】
このようにすれば、円筒形の電池の長手方向の両端から挟むように、第1電極及び第2電極を筐体に配置しているので、筐体の長手方向に直交する方向にもコンパクトに携帯型心電装置を構成することができるので、携帯性を高めることができる。
【0010】
また、本発明において、
前記筐体は、前記電池を、該筐体に収容し又は該筐体から取り出すための電池用開口部と、該電池用開口部を開閉する開閉部材とを有するようにしてもよい。
【0011】
このようにすれば、開閉部材によって電池用開口部を開くことによって、電池を筐体に収容し又は筐体から取り出すことができるので、携帯型心電装置を小型化しても利便性が損なわれることがない。
【0012】
また、本発明において、
前記筐体に内蔵され、前記電池を収容する電池収容部を備え、
前記電池収容部において、前記電池の正極端子の突出部が形成されている正極側端面に、該電池の長手方向の外方から指又は爪を引っ掛けるために、前記電池用開口部の前記正極端子側の内縁と該正極側端面との間に、前記指又は爪を挿入可能な間隙が設けられるように前記電池収容部は前記筐体に配置されるようにしてもよい。
【0013】
このようにすれば、電池用開口部に対して、電池正極側端面に、該電池の長手方向の外方から指又は爪を引っ掛けるために、電池用開口部の正極端子側の内縁と該正極側端面との間に、指又は爪を挿入可能な間隙が設けられるように電池収容部を筐体に配置している。このため、電池の取り出しやすさを損なうことなく、第1電極と第2電極との間の距離を短くして、携帯型心電装置の携帯性を高めることができる。
【0014】
また、本発明において、
前記電池収容部は、前記正極端子が前記筐体の長手方向に対して互いに逆向きとなるように収容される前記電池に対応して、前記間隙が前記筐体の長手方向に対して両側に設けられるように前記筐体に配置されるようにしてもよい。
【0015】
このようにすれば、複数の電池を電源とする場合にも、電池の取り出しやすさを損なうことなく、携帯型心電装置の第1電極と第2電極との間の距離を短くすることができる。
【0016】
また、本発明において、
前記正極端子が前記筐体の長手方向に対して互いに逆向きとなるよう収容される前記電池は、それぞれの負極側にずらして前記電池収容部に収容されるようにしてもよい。
【0017】
このようにすれば、電池の取り出しやすさを損なうことなく、携帯型心電装置の第1電極と第2電極との間の距離を短くして、携帯型心電装置の携帯性を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電極の接触状態の安定性及び携帯性が高い携帯型心電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施形態に係る携帯型心電装置の外観を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る携帯型心電装置の使用態様を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る携帯型心電装置のシステム構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、比較例に係る携帯型心電装置の電池の収納構造を示す外観図である。
図5図5は、比較例に係る携帯型心電装置のA-A断面図である。
図6図6は、実施形態に係る携帯型心電装置の電池の収納構造を示す外観図である。
図7図7は、実施形態に係る携帯型心電装置のB-B断面図である。
図8図8(A)は、実施形態に係る携帯型心電装置のC-C断面図であり、図8(B)は、実施形態に係る携帯型心電装置のD-D断面図である。
図9図9は、実施形態に係る携帯型心電装置におけるメインハウジングへの電池カバーの組み付けを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。
【0021】
<実施形態1>
以下に、本発明の実施形態の一例について説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0022】
(携帯型心電装置の構成)
図1(A)~(C)は本実施形態に係る携帯型心電装置1の構成の一例を示す図である。図1(A)は、携帯型心電装置1を前面の左上方から見た斜視図である。図1(B)は、携帯型心電装置1を裏面の左上方から見た斜視図である。図1(C)は、携帯型心電装置1を前面の左下方から見た斜視図である。以下に述べる、上下方向は、図1(A)~(C)に示す姿勢の携帯型心電装置1に対して、紙面上での上下方向を意味する。
【0023】
図1(A)~(C)に示すように、携帯型心電装置1の本体は、角を丸めた略四角柱形状であって前面及び背面間が扁平に形成されている。携帯型心電装置1の上部には、前面から見て右側に指電極4、左側にグランド電極(以下「GND電極」という。)3が設けられている。そして、携帯型心電装置1の底部には、胸電極2が設けられている。携帯型心電装置1の上部は、被検者の右手人差し指が当接しやすいように滑らかに湾曲する形状となっている。具体的には、本体の上部は、その長手方向である、前面から見て左右方向には、指電極4とGND電極3とに挟まれた中央部が高くなる、上方に凸な形状である。また、本体の上部は、その短手方向である、前面から見て前後方向には、中央部が低くなる、上方に凹な形状である。携帯型心電装置1の本体の前面には、測定通知LED12と異常波検出LED13が上下に並んで配置されている。測定通知LED12は、心電波形(心電信号)の計測時に点灯あるいは明滅する発光素子である。異常波形検出LED13は、計測された心電波形に関し、異常波形が検出された際に点灯する発光素子である。異常波形検出LED13の点灯を通じて、心電波形の測定データから検出された異常波形の有無が被験者に通知される。携帯型心電装置1の本体の、前面から見て左側面には、電源LED6、電源スイッチ7、通信LED8、通信スイッチ9、メモリ残表示LED10、電池交換LED11が上下に並んで配置されている。電源スイッチ7は、携帯型心電装置
1の電源を投入するための押下スイッチであり、電源LED6は電源投入時に点灯する発光素子である。通信スイッチ9は、所定の通信方式に準拠した機器との通信を機能させるための操作部品であり、通信LED8は、通信時に点灯する発光素子である。なお、携帯型心電装置1の備える通信機能は、BLE、赤外線通信、超音波による情報伝送などの無線通信方法、ケーブル又はコネクタ等を介して接続される有線通信方式であってもよく、限定されない。メモリ残表示LED10は、後述するメモリ部の空き容量の状態を示す発光素子である。電池交換LED11は、携帯型心電装置1の備える電源(バッテリ)の電力が所定値を下回ったときに点灯し、電池交換を促す発光素子である。携帯型心電装置1の本体の底部には、胸電極2が設けられている。また、携帯型心電装置1の本体の背面には、裏面の大部分を占める、角が丸められた長方形の着脱可能な電池カバー5が設けられている。指電極4及びGND電極3が本発明の第1電極に対応する。また、胸電極2が本発明の第2電極に対応する。電池カバー5が、本発明の開閉部材に対応する。
【0024】
ここで、心電測定においてI誘導測定が行われる場合には、携帯型心電装置1を右手で把持しつつ、本体の底部に設けられた胸電極2を左手掌に接触させる。携帯型心電装置1を把持する右手の人差し指は、本体の上部側に施された凹状の加工に沿って、先端側をGND電極3に、基端側を指電極4に密着させる。この状態で、胸電極2を本体の上部側から左手掌方向に押し当てる方向に押圧させる。まここで、GND電極3に密着する「先端側」には、右手人差し指の末節に相当する部位が含まれる。また、指電極4に密着する「基端側」には、例えば、右手人差し指の中節部に相当する部位が含まれる。
【0025】
また、心電測定において胸部誘導測定が行われる場合では、図2に示すように、被験者は、携帯型心電装置1を右手16で把持しつつ、胸電極2を、例えば、胸部17に接触させる。I誘導測定の場合と同様に、携帯型心電装置1を把持する右手の人差し指161は、本体の上部側に施された凹状の加工に沿って、先端側をGND電極3に、基端側を指電極4に密着させ、胸電極2を、本体の上部側から胸部17方向に押し当てる方向に押圧させる。
【0026】
また、上述のように、人差し指161を本体の上部の指電極4及びGND電極3に密着させつつ、胸電極2を胸部17に押し当てるとき、図2に示すように、携帯型心電装置1を把持する右手16の親指162が前面に添えられ、中指、薬指及び小指が背面に添えられる。このとき、右手16の手根部163を胸部17に接触させることができる。すなわち、携帯型心電装置1の長手方向に沿って対向する上面及び下面に、それぞれ配置された指電極4及びGND電極3と、胸電極2との距離は、右手の人差し指を指電極4及びGND電極3に接触させ、胸電極2を胸部17に接触させた場合に、右手16の手根部163を胸部17に接触可能となる距離に設定されている。このようにすれば、指電極4及びGND電極3と、胸電極2との間の長さを短くして、携帯型心電装置1を小型化することができるので、携帯性が向上する。また、携帯型心電装置1によって胸部誘導測定を行う場合に、携帯型心電装置1を把持する右手16の手根部163を胸部17に接触させることにより、胸部17に接触させた胸電極2を支点として、比較的運動の自由度の高い右手の人差し指から指電極4及びGND電極4に作用する力の回転モーメントを小さくすることができるので、胸部17に対する携帯型心電装置1の姿勢を安定させ、正確な測定を行うことができる。
【0027】
(携帯型心電装置のシステム構成)
次に、携帯型心電装置のシステム構成を説明する。図2は、本実施形態に係る携帯型心電装置1のシステム構成の一例を示す図である。図2に示すように、携帯型心電装置1は、電極部101と、アンプ部102と、AD(Analog to Digital)変換部103と、制
御部104と、タイマ部105を含んで構成される。また、携帯型心電装置1の構成には、メモリ部106と、表示部107と、報知部108と、操作部109と、電源部110
と、通信部111が含まれる。制御部104と、タイマ部105と、メモリ部106と、表示部107と、報知部108と、操作部109と、電源部110と、通信部111とは相互に接続されている。
【0028】
電極部101は、一対の測定電極として機能する胸電極2及び指電極4と、GND電極3を備える。被験者の皮膚に接触された電極部101を通じて、所定期間内における心電波形が検出される。電極部101の各電極で検出された心電波形は、それぞれ、当該電極部に接続されるアンプ部102に入力される。アンプ部102では、電極部101で検出された信号が増幅されてAD変換部103に出力される。AD変換部103では、アンプ部102を通じて増幅された心電波形の検出信号がデジタル変換されて制御部104に出力される。
【0029】
制御部104は、携帯型心電装置1の制御を司る手段であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)などを含んで構成される。制御部104は、操作部109を介して
被験者からの心電波形の計測開始の指示を受け付けると、電極部101が検出した所定期間内の心電波形に関する測定データをメモリ部106に記録する。そして、制御部104は、所定期間内で検出された心電波形を解析し、解析結果をメモリ部106に保存する。制御部104は、心電波形の解析の結果、異常波形が検出されたときには異常波形検出LED13を点灯させる。その他、操作部109を通じて被験者の操作に応じた処理を実行するように携帯型心電装置1の各構成要素を制御する。
【0030】
なお、メモリ部106に記録された所定期間内で計測された心電波形に関するデータ、当該心電波形の解析結果は、BLE通信等を通じて、連携するスマートフォンやPC等の情報処理装置に提供される。医療機関等においては、携帯型心電装置1から提供された心電波形の測定データ、解析結果等に基づいて、心疾患の早期発見や適切な治療行為を施すことが可能になる。
【0031】
タイマ部105は、制御部104からの指示を受け付け、心電波形の計測に係る各種期間をカウントする手段である。メモリ部106は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などの主記憶装置の他、例えばフラッシュメモリなどの長期記憶媒体を含んで構成される。メモリ部106には、心電波形の測定や解析に係る各種プログラム、異常波形等を検出するための各種の情報が記憶される。表示部107は、心電波形の計測に係る各種の情報を表示する手段である。表示部107には、電源LED6、通信LED9、メモリ残表示LED10、電池交換LED11、測定通知LED12、異常波形検出LED13が含まれる。表示部107は、液晶ディスプレイ等の画像・映像により各種の情報を表示する手段を含んでもよい。報知部108は、被検者に対して、携帯型心電装置1を振動させることによって、測定終了等の各種の情報を報知する手段である。報知部108は、被験者に対して音声によるメッセージを報知するためのスピーカ等を含んでもよい。
【0032】
操作部109は、被験者からの操作入力を受け付ける手段である。操作部109には、電源スイッチ7、通信スイッチ9が含まれる。電源部110は、携帯型心電装置1を機能させるための電力を供給する手段であり、バッテリや2次電池等が含まれる。通信部111は、スマートフォンといった機器との間で信号の送受信を司る通信インターフェィスである。通信部111の提供する通信機能としてBLE通信が例示できるが、他の公知の無線通信方式、有線通信方式が採用できる。
【0033】
(心電波形測定処理の概略)
以下に、携帯型心電装置1を用いた心電波形の測定処理の概略について説明する。ここでは、携帯型心電装置1が単体で心電波形を測定する場合を例として説明する。以下に説
明する心電波形の測定処理は、携帯型心電装置1の制御部104がメモリ部106に記憶されたプログラムを実行することで実現される。
【0034】
まず、被検者が携帯型心電装置1の電源スイッチ7を押下すると、電源LED6が点灯する。胸電極2、指電極4、GND電極3に対する被検者の接触状態を検出し、電極接触状態が良好であると判断されると、心電波形の測定が開始される。心電波形の測定が開始されると、測定通知LED12が点灯又は明滅する。心電波形の測定が開始されると、心電波形データは、時刻情報とともにメモリ部106に記録される。所定時間継続して測定が行われると、測定された心電波形データに基づいて被検者の心電波形についての解析が行われる。このとき、メモリ部106に記録された時系列上のデータに基づいて心電波形の解析が行われる。解析結果はメモリ部106に保存される。心電波形の解析の結果、異常波形が検出された場合には、異常波形検出LED13が点灯又は明滅する。その後、被検者が電源スイッチ7を再び押下すると、電源部110から供給されている電力が切断され、電源LED6が消灯する。
なお、携帯型心電装置1をスマートフォン等と連携して使用する場合には、通信部11を介して、スマートフォン等と通信を行い、その際、通信LED9の点灯又は明滅により通信状態に関する情報を表示する。
【0035】
(電池の収納構造)
次に、携帯型心電装置1における電池の収容構造について説明する。図4及び図5は、本発明の比較例としてなる携帯型心電装置1000を示す図である。携帯型心電装置1000は、電池の収容に関連する構成を除き、全体的な構成は携帯型心電装置1と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する。図4は、電池カバーを取り外した携帯型心電装置1000を背面から見た図である。図5は、図4に示すA-A断面における携帯型心電装置1000における内部構造を示す図である。
図4に示すように、携帯型心電装置1000では、2本の単4形乾電池14及び15を、電極の向きが上下方向に交互になるように収容している。すなわち、電池14は、正極14aが上方、負極側端面14bが下方を向き、電池15は、負極15bが上方、正極112aが下方を向くように収容されている。A-A断面は、図4に示すように、略円柱形状の電池14の中心軸を通る断面である。
【0036】
電池14及び15は、携帯型心電装置1000の筐体を構成するメインハウジング1001の内部に格納された電池ホルダ1002に収容されている。電池ホルダ1002は、電池14及び15の外形に倣う部分円筒面が並列された形状の側壁10021と、側壁10021の長手方向の両端部に接続し、収容される電池14及び15の長手方向の両端面に対向する端壁10022及び10023とを含む。端壁10022の内面10022aには、正極側接点10024が設けられている。また、端壁10023の内面10023aには、電池14の負極端子が形成されている負極側端面14bとの間に介在し、電池14を端壁10022側に押圧するとともに負極側の接点を兼ねるスパイラルスプリング10025が設けられている。また、電池ホルダの端壁10023は、胸電極2を支持する胸電極支持部1023bと一体に形成されている。
【0037】
また、端壁10022の内面10022aには、電池15の負極端子が形成される負極側端面15bとの間に介在し、電池15を端壁10023側に押圧するとともに負極側の接点を兼ねるスパイラルスプリング10026が設けられている。端壁10023の内面10023aには、正極側の接点が設けられている。端壁10023の内面10023aに設けられたスパイラルスプリング10025からは、基板1003上の電源部110に接続されるリード線10025aが引き出され、電池15の正極端子の突出部15aに対向する接点からも同様にリード線が引き出される。また、端壁10022の内面10022aに設けられた正極側の接点10024とスパイラルスプリング10026とは電気的
に接続される。このようして、電池14の正極端子の突出部14aが電池15の負極側端面15bに接続され、電池14及び電池15は直列に接続される。
【0038】
携帯型心電装置1000では、電池14の正極端子の突出部14aが形成されている正極側端面14cと、対向する電池ホルダ1002の端壁10022の内面10022a及びメインハウジング1001の開口部10011の端縁10011aとの間には空間Sp10が設けられている。この空間Sp10は、被検者が電池14を電池ホルダ1002から取り外す際に、電池14の正極側端面14cに指又は爪を引っ掛けるために挿入するためのものである。ここでは、メインハウジング1001の開口部10011の端縁10011aと、電池ホルダ1002の端壁10022の内面10022aとは、略同一面上に位置しているので、これらと電池14の正極側端面14cとの間隔C10が空間Sp10の大きさを規定するが、略同一面上にない場合には、電池14の長手方向に見て、電池14の正極側端面14cにいずれか近い方との間隔をC10とし、この間隔C10が空間Sp10の大きさを規定する。電池14の負極側端面14b側にはスパイラルスプリング10025が設けられており、このスパイラルスプリング10025による付勢力により、電池14の正極端子の突出部14aを接点10024に押圧している。このため、電池14の負極側端面14b側では、メインハウジング1001の開口部10011の端縁10011b及び電池ホルダ1002の端壁10023の内面10023aとの間隔は比較的大きい。電池15についても、同様である。
【0039】
上述のような構成の携帯型心電装置1000では、電池14及び15の長手方向の携帯型心電装置1000全体の高さを抑えるために、電池14及び15以外の部品をより高密度に集積して配置しようとすると、電池14及び15と、メインハウジング1001の開口部10011の端縁10011a等との間の空間Sp10が狭くなり、電池14及び15を取り出しにくくなる。
【0040】
本実施形態に係る携帯型心電装置1の電池の収容構造を、図6及び図7を参照して説明する。図6は電池カバー5を取り外して開口部202が開放された携帯型心電装置1を背面から見た図である。図7は、B-B断面における携帯型心電装置1の内部構造を示す図である。ここでは、開口部202が、本発明における電池用開口部に対応する。
携帯型心電装置1では、2本の単4形乾電池14及び15を、電極の向きが上下方向に交互になるように収容している。すなわち、電池14は、正極端子の突出部14aが上方、負極端子が形成されている負極側端面14bが下方を向き、電池15は、負極側端面15bが上方、正極端子の突出部15aが下方を向き、メインハウジング201の長手方向に対して逆向きとなるように収容されている。B-B断面は、図6に示すように、略円柱形状の電池14の中心軸を通る断面である。ここでは、単3形乾電池14及び15が、本発明における円筒形の電池に相当する。
【0041】
電池14及び15は、携帯型心電装置1の筐体を構成し、外部に露出するメインハウジング201の内部に格納(内蔵)された電池ホルダ500に収容されている。電池ホルダ500は、電池14及び15の外形に倣う部分円筒面が並列された形状の側壁501と、側壁501の長手方向の両端部に接続し、収容される電池14及び15の長手方向の両端面に対向する端壁502及び503とを含む。端壁502の内側面502aには、電池14を端壁503側に押圧するとともに正極側の接点を兼ねるスパイラルスプリング505が設けられている。また、端壁503の内側面503aには、電池14の負極側端面14b側の端面との間に介在し、電池14を端壁502側に押圧するとともに負極側の接点を兼ねるスパイラルスプリング506が設けられている。また、電池ホルダの端壁503は、胸電極2を支持する胸電極ホルダ504と一体に形成されている。図7に示すように、電池ホルダ500とメインハウジング201との間には、制御部104、電源部110等の電子部品が実装された回路基板60が収容されている。この回路基板60に電気的に接
続された胸電極2と、指電極4及びGND電極3が、メインハウジング201の長手方向(携帯型心電装置1の上下方向)に沿って対向する一対の面にそれぞれ設けられている。電池14及び15は、メインハウジング201の長手方向に沿うように、電池ホルダ500を介してメインハウジング201に収容されている。ここでは、電池ホルダ500が、本発明の電池収容部に対応する。
【0042】
また、端壁502の内側面502aには、電池15の負極側端面15bとの間に介在し、電池15を端壁503側に押圧するとともに負極側の接点を兼ねるスパイラルスプリング507が設けられている。端壁503の内側面503aには、電池15を端壁502側に押圧するとも正極側の接点を兼ねるスパイラルスプリング508が設けられている。端壁503の内側面503aに設けられたスパイラルスプリング506とスパイラルスプリング508からは、回路基板60上の電源部110に接続されるリード線506a、508aがそれぞれ引き出される。また、端壁502の内側面502aに設けられたスパイラルスプリング505とスパイラルスプリング507とは電気的に接続された一体の部材で形成される。このようして、電池14の正極端子の突出部14aが電池15の負極側端面15bに接続され、電池14及び電池15は直列に接続される。
【0043】
携帯型心電装置1のメインハウジング201の裏面には、電池カバー5が取り外されることによって内部と連通する開口部202が開設されている。開口部202は、電池14及び15の長手方向に長い略長方形であり、四隅が丸められている。開口部202は、メインハウジング201の表面から内側に屈曲する枠部2021と、枠部2021の内側端部から、開口部202の中央部に向けて屈曲する延出部2022と、延出部2022の、開口部202の中央部側の端部から外側に屈曲するフランジ部2023を有する。電池カバー5は、略板状の表面51の周囲に、表面51に対して直交するフランジ部52を有する。開口部の枠部2021は、開口部202に電池カバー5が取り付けられたときに、電池カバー5の端面52に対向する。電池カバー5が取り外された状態では、フランジ部2023が、開口部202の中央部側に位置することになる。このため、フランジ部2023と電池14及び15との位置関係が、電池14、15の取り出しやすさに影響を与える。
【0044】
携帯型心電装置1では、電池ホルダ500の端壁503の内側面503aを、開口部202のフランジ部2023の内側面2023bに対して、電池14の長手方向に、胸電極2側に退いた位置に設けている。一方で、電池ホルダ500の端壁502側では、内側面502aを、開口部202のフランジ部2023の内側面2023aに対して、電池14の長手方向に、GND電極3及び指電極4側に退いた位置に設け、スパイラルスプリング505が配置される内側面502aを、開口部202のフランジ部2023の内側面2023aに対して、電池14の長手方向に、胸電極2側に突出する位置に設けている。すなわち、開口部202に対して、電池14は、相対的に、長手方向の負極側端面14b側(携帯型心電装置1の全体で見れば下方である胸電極2側)に寄った位置に配置される。これによって、開口部202のフランジ部2023の内側面2023aと、電池14の正極端子の突出部14aが形成されている正極側端面14cとの間隔C1を大きく設定することでき、開口部202のフランジ部2023の内側面2023aと、電池14の正極側端面14cとの間に形成される、指又は爪を挿入可能な間隙、すなわち電池14の長手方向の外方から指又は爪を正極側端面14cに引っ掛けて電池14を取り出すためのスペースSp1を広く設定することができる。一方で、開口部202のフランジ部2023の内側面2023bと、電池14の負極側端面14bとの間に形成されるスペースSp2は狭くなる。ここでは、開口部202のフランジ部2023の内側面2023aが、本発明における電池用開口部の正極端子側の内縁に対応する。
【0045】
電池15は、開口部202に対して、相対的に、長手方向の負極側端面15b側(携帯
型心電装置1の全体で見れば上方であるGND電極3及び指電極4側)に寄った位置に配置される。これによって、開口部202のフランジ部2023の内側面2023bと、電池15の正極端子の突出部15a側の端面15cとの間に形成される、指又は爪を挿入可能な間隙、すなわち電池15の長手方向の外方から指又は爪を正極側端面14cに引っ掛けて電池15を取り出すためのスペースSp3を広く設定することができる。一方で、開口部202のフランジ部2023の内側面2023aと、電池15の負極15bとの間に形成されるスペースSp4は狭くなる。電池14及び電池15は、長手方向に対して、正負が逆の配置となるので、携帯型心電装置1の全体に対して、電池14及び電池15がそれぞれ寄る方向は逆となる。また、指又は爪を挿入可能な間隙であるスペースSp1及びSp3は、メインハウジング201の長手方向の両側に設けられることとなる。
【0046】
図8(A)は、携帯型心電装置1の図8(B)に示すC-C断面における断面図である。図8(B)は携帯型心電装置1の図8(A)に示すD-D断面における断面図である。
上述のように、電池14及び15を脱着するための開口部202に対して、電池14及び15をそれぞれ負極側端面14b及び15b側にずらすことにより、被検者が指又は爪を挿入して正極側端面14c側の及び15cに引っ掛けるためのスペースSp1及びSp3を広くとっている。このように、開口部202に対して、電池14及び15を配置するように、携帯型心電装置1を構成することにより、電池の長手方向の高さに対する、装置全体の高さの比を小さくすることができる。具体的には、電池14の高さ(正電極端子の突出部14aの長手方向先端から負極側端面14bまでの距離)H1に対する、携帯型心電装置1の全体の高さ(前面から見たときに上に凸に形成されているメインハウジング201のうち最も上方に位置する頂部201pから、胸電極2までの距離)H2の比を1:1.41(71%)とすることができる。このように、電池14及び15の取り外し易さを損なうことなく、携帯型心電装置1全体の高さを小さくすることができた。
【0047】
図9は、メインハウジング201に開口部202を開閉する電池カバー5を組み付ける手順を示す図である。
電池カバー5は、メインハウジング201とともに携帯型心電装置1の外装を構成する表面51と、表面51の端部から屈曲されたフランジ部52とを含む。電池カバー5の解除可能な係合部を、メインハウジング201の対応する係合部に係合させることにより、開口部202を電池カバー5によって閉じる。このとき、電池カバー5のフランジ部52は、メインハウジング201の開口部202のフランジ部2023の外周に嵌合する。
【0048】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
【符号の説明】
【0049】
1・・・携帯型心電装置
2・・・胸電極
3・・・GND電極
4・・・指電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9