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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/262 20210101AFI20240709BHJP
   H01G 11/10 20130101ALI20240709BHJP
   H01G 11/82 20130101ALI20240709BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20240709BHJP
   H01M 50/264 20210101ALI20240709BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20240709BHJP
   H01M 50/35 20210101ALI20240709BHJP
【FI】
H01M50/262 S
H01G11/10
H01G11/82
H01M50/209
H01M50/264
H01M50/342 101
H01M50/35 101
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020060849
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021163528
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】寺原 綾一
(72)【発明者】
【氏名】胸永 訓良
(72)【発明者】
【氏名】石田 義貴
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】牛嶌 修
【審査官】山下 裕久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-059501(JP,A)
【文献】国際公開第2016/135785(WO,A1)
【文献】特開2019-197622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-298
H01M 50/30-392
H01G 11/10
H01G 11/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に並んで配置された複数の蓄電素子からなる蓄電素子列と、
前記第一方向において前記蓄電素子列を挟む一対のエンドプレートと、
前記蓄電素子列及び前記一対のエンドプレートを収容する本体部を有する外装体と、を備え、
前記本体部は、前記第一方向と交差する第二方向の側に開口部を有する箱状に形成されており、
前記一対のエンドプレートは、前記蓄電素子列の、前記第二方向の側に配置された連結部材で連結され、かつ、他の方向の側では連結されておらず
前記連結部材は、前記一対のエンドプレートのうちの前記第一方向の一方側の前記エンドプレートよりも、前記第一方向の一方側に突出する部分を有しない、
蓄電装置。
【請求項2】
前記複数の蓄電素子のそれぞれは、ガス排出弁を有し、かつ、前記第二方向に前記ガス排出弁を向けた姿勢で配置されており、
前記連結部材は、前記複数の蓄電素子の前記ガス排出弁に対向する位置に配置されており、かつ、前記第二方向に貫通する貫通孔を有する、
請求項1記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記複数の蓄電素子のそれぞれは、ガス排出弁を有し、かつ、前記第二方向に前記ガス排出弁を向けた姿勢で配置されており、
前記連結部材は、前記複数の蓄電素子の前記ガス排出弁に対向する位置に配置されており、かつ、前記第一方向に延在するガスの流路を形成する流路形成部を有する、
請求項1記載の蓄電装置。
【請求項4】
第一方向に並んで配置された複数の蓄電素子からなる蓄電素子列と、
前記第一方向において前記蓄電素子列を挟む一対のエンドプレートと、
前記蓄電素子列及び前記一対のエンドプレートを収容する本体部を有する外装体と、を備え、
前記本体部は、前記第一方向と交差する第二方向の側に開口部を有する箱状に形成されており、
前記一対のエンドプレートは、前記蓄電素子列の、前記第二方向の側に配置された連結部材で連結され、かつ、他の方向の側では連結されておらず
前記一対のエンドプレートは、前記第二方向とは反対側の端部が、前記第一方向で前記本体部と当接している、
蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子及び蓄電素子を収容する外装体を備える蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の角型電池セルが積層された積層体と、積層体の積層方向における積層体の両側に配置された一対のエンドプレートとを備える電池モジュールが開示されている。この電池モジュールでは、最も端の角型電池セルとエンドプレートとの間に、角型電池セルとエンドプレートとの一方から他方に向かって突出する突出部が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-160693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の電池モジュール(蓄電装置)では、積層体(蓄電素子列)の最も端部の角型電池セル(蓄電素子)とエンドプレートとの間の突出部によって、蓄電素子とエンドプレートとの間に蓄電素子の変位のための隙間を確保している。これにより、蓄電素子列の端部の蓄電素子の変形の抑制を図っている。しかしながら、このような、蓄電素子の変位を許容する構成は、例えば、蓄電素子が変位することにより、蓄電素子列を収容する外装体を内側から押圧し、このことは、外装体の変形または損傷という安全上の問題を生じさせる。
【0005】
本発明は、本願発明者が上記課題に新たに着目することによってなされたものであり、簡易な構成で安全性が向上された蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る蓄電装置は、第一方向に並んで配置された複数の蓄電素子からなる蓄電素子列と、前記第一方向において前記蓄電素子列を挟む一対のエンドプレートと、前記蓄電素子列及び前記一対のエンドプレートを収容する本体部を有する外装体と、を備え、前記本体部は、前記第一方向と交差する第二方向の側に開口部を有する箱状に形成されており、前記一対のエンドプレートは、前記蓄電素子列の、前記第二方向の側に配置された連結部材で連結され、かつ、他の方向の側では連結されていない。
【0007】
この構成によれば、一対のエンドプレートを連結する連結部材が、外装体の開口部の側に配置されているため、1以上の蓄電素子が膨れた場合に、箱状の本体部の開口部側が広がるように変形する可能性が低減される。つまり、本体部における変形し易い部分には一対のエンドプレートを連結する連結部材があり、かつ、蓄電素子列の連結部材がない側には、箱状の本体部が存在する。これにより、蓄電素子列の膨らみが一対のエンドプレート及び本体部によって効率よく抑制される。また、連結部材は、外装体の内部に1つのみ備えられればよいため、蓄電素子列の拘束のための構成の簡易化及び蓄電装置の小型化等が図られる。このように、本実施の形態に係る蓄電装置は、簡易な構成で安全性が向上された蓄電装置である。
【0008】
前記複数の蓄電素子のそれぞれは、ガス排出弁を有し、かつ、前記第二方向の側に前記ガス排出弁を向けた姿勢で配置されており、前記連結部材は、前記複数の蓄電素子の前記ガス排出弁に対向する位置に配置されており、かつ、前記第二方向に貫通する貫通孔を有する、としてもよい。
【0009】
この構成によれば、連結部材は、一対のエンドプレートに第一方向の拘束力を与え、かつ、いずれかの蓄電素子が開弁した場合に、ガス排出弁から排出されるガスを第二方向に送り出すことができる。そのため、ガスを効率よく外部に放出することが可能となる。これにより、例えば、外装体の内圧の上昇が抑制され、その結果、内圧の上昇に起因する外装体の変形または損傷の可能性が低減される。
【0010】
前記複数の蓄電素子のそれぞれは、ガス排出弁を有し、かつ、前記第二方向の側に前記ガス排出弁を向けた姿勢で配置されており、前記連結部材は、前記複数の蓄電素子の前記ガス排出弁に対向する位置に配置されており、かつ、前記第一方向に延在するガスの流路を形成する流路形成部を有する、としてもよい。
【0011】
この構成によれば、連結部材は、一対のエンドプレートに第一方向の拘束力を与え、かつ、いずれかの蓄電素子が開弁した場合に、ガス排出弁から排出されるガスを蓄電素子の並び方向に送り出すことができる。そのため、ガスを効率よく外部に放出することが可能となる。これにより、例えば、外装体の内圧の上昇が抑制され、その結果、内圧の上昇に起因する外装体の変形または損傷の可能性が低減される。また、ガスの流路を形成する部材を別途用いる必要がないため、このことは、蓄電装置の構成の簡易化または小型化等に寄与する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な構成で安全性が向上された蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態に係る蓄電装置の外観を示す斜視図である。
図2】実施の形態に係る蓄電装置の分解斜視図である。
図3】実施の形態に係る拘束部材及び蓄電素子列の外観を示す第1の斜視図である。
図4】実施の形態に係る拘束部材及び蓄電素子列の外観を示す第2の斜視図である。
図5】実施の形態に係る蓄電素子列、拘束部材、及び本体部の構造上の関係を示す断面図である。
図6】実施の形態の変形例に係る実施の形態に係る拘束部材及び蓄電素子列の外観を示す斜視図である。
図7】実施の形態に係る連結部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(その変形例を含む)に係る蓄電装置について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。
【0015】
また、以下の説明及び図面中において、複数の蓄電素子の並び方向、蓄電素子の容器の長側面の対向方向、または、当該容器の厚さ方向をX軸方向と定義する。また、1つの蓄電素子における電極端子の並び方向、または、蓄電素子の容器の短側面の対向方向をY軸方向と定義する。また、蓄電装置の外装体における本体部と蓋体との並び方向、蓄電素子とバスバーとの並び方向、または、上下方向をZ軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(以下実施の形態及びその変形例では、直交)する方向である。なお、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。
【0016】
また、以下の実施の形態において、平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が平行である、とは、当該2つの方向が完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行であること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。また、以下の説明において、例えば、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。さらに、単に、X軸方向という場合は、X軸に平行な双方向またはいずれか一方の方向を意味する。Y軸及びZ軸に関する用語についても同様である。
【0017】
(実施の形態)
[1.蓄電装置の全般的な説明]
まず、図1及び図2を用いて、実施の形態に係る蓄電装置1の全般的な説明を行う。図1は、実施の形態に係る蓄電装置1の外観を示す斜視図である。図2は、実施の形態に係る蓄電装置1の分解斜視図である。
【0018】
蓄電装置1は、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電することができる装置であり、本実施の形態では、略直方体形状を有している。例えば、蓄電装置1は、電力貯蔵用途または電源用途等に使用される電池モジュール(組電池)である。具体的には、蓄電装置1は、例えば、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)及びガソリン自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール及びリニアモーターカーが例示される。また、蓄電装置1は、家庭用または発電機用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。
【0019】
図1及び図2に示すように、蓄電装置1は、複数の蓄電素子20と、複数の蓄電素子20を収容する外装体10と、拘束部材50とを備える。本実施の形態では、外装体10には8個の蓄電素子20が収容されている。なお、蓄電装置1が備える蓄電素子20の数は8には限定されない。蓄電装置1は、1以上の蓄電素子20を備えればよい。本実施の形態では、X軸方向に並べられた複数の蓄電素子20により1つの蓄電素子列24が形成されており、蓄電素子列24は、拘束部材50によってX軸方向の拘束力を受けている。X軸方向は第一方向の一例である。なお、蓄電素子列24は、図示しないスペーサ及び絶縁フィルム等を有してもよい。
【0020】
外装体10は、蓄電素子列24を収容する本体部12と蓋体11とを有し、本体部12に収容された蓄電素子列24と蓋体11との間にはバスバープレート17が配置されている。バスバープレート17には複数のバスバー33が保持されている。バスバープレート17と蓋体11との間には、例えば、電線等の導電部材及び制御回路等の電気機器が配置されるがこれらの図示及び説明は省略する。
【0021】
外装体10は、蓄電装置1の外殻を構成する矩形状(箱状)の容器(モジュールケース)である。つまり、外装体10は、蓄電素子列24及びバスバープレート17等を所定の位置に固定し、これらを衝撃などから保護する部材である。外装体10は、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE(変性PPEを含む))、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ABS樹脂、もしくは、それらの複合材料等の絶縁部材、または、絶縁塗装をした金属等により形成されている。
【0022】
外装体10が有する蓋体11は、本体部12の開口部15を閉塞する矩形状の部材であり、正極側の外部端子91及び負極側の外部端子92を有している。外部端子91及び92は、複数の蓄電素子20と電気的に接続されており、蓄電装置1は、この外部端子91及び92を介して、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電する。外部端子91及び92は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属製の導電部材で形成されている。
【0023】
蓋体11には、外装体10の内部及び外部の一方から他方に移動する気体が通過する通気室(図示せず)と、通気室の内部と外装体10の外部とを連通する排気管90とが設けられている。例えば外装体10の内部のガスは、通気室及び排気管90を介して、外装体10の外部に放出される。より詳細には、通気室には、外装体10の内部の圧力(内圧)が所定の値まで上昇した場合に開放される弁部材が配置されている。従って、通常時において、水または塵芥などの異物が排気管90を介して通気室に流入した場合であっても、弁部材により、異物の外装体10の内部への流入は実質的に防止される。また、例えば蓄電素子20からガスが排出されることで外装体10の内圧が所定の値以上になった場合、弁部材が開放状態となり、外装体10の内部のガスは、通気室を介して排気管90から外装体10の外部に放出される。
【0024】
外装体10が有する本体部12は、Z軸プラス方向の側に、蓄電素子列24を収容するための開口部15が形成された有底矩形筒状のハウジング(筐体)である。開口部15が蓋体11に塞がれた状態で、開口部15の周縁と蓋体11とが、例えば熱溶着によって接合される。これにより、開口部15における気密性が確保される。なお、Z軸プラス方向は第二方向の一例である。
【0025】
蓄電素子20は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池(単電池)であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。蓄電素子20は、扁平な直方体形状(角形)を有しており、本実施の形態では、上述のように、8個の蓄電素子20がX軸方向に配列されている。
【0026】
本実施の形態では、蓄電素子20は、金属製の容器21を備える。容器21は、互いに対向する一対の長側面21aと、互いに対向する一対の短側面21bとを有する角形のケースである。容器21の内部には、電極体、集電体、及び電解液等が収容されている。本実施の形態では、複数の蓄電素子20のそれぞれは長側面21aがX軸方向に向く姿勢(短側面21bがX軸方向に平行な姿勢)で、X軸方向に一列に並べられている。
【0027】
容器21の蓋板21cには、容器21の内部の電極体と電気的に接続された金属製の電極端子22(正極端子及び負極端子)が設けられている。容器21の蓋板21cにはさらに、容器21の内部のガスを外部に排出するためのガス排出弁23が設けられている。ガス排出弁23は、例えば容器21の内部の電解液が気化することで容器21の内圧が上昇した場合に、開放すること(開弁すること)で、容器21の内部のガスを容器21の外部に排出する機能を有する。このような機能を有するガス排出弁23は、複数の蓄電素子20のそれぞれに設けられている。本実施の形態では、図2に示すように、複数の蓄電素子20のそれぞれは、ガス排出弁23がZ軸プラス方向に向く姿勢で配置されている。
【0028】
なお、蓄電素子20は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。また、蓄電素子20は、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。また、本実施の形態では、直方体形状(角形)の蓄電素子20を図示しているが、蓄電素子20の形状は、直方体形状には限定されず、直方体形状以外の多角柱形状、円柱形状、長円柱形状等であってもよい。さらに、ラミネート型の蓄電素子が、蓄電素子20として蓄電装置1に備えられてもよい。
【0029】
バスバー33は、バスバープレート17に保持された状態で、少なくとも2つの蓄電素子20上に配置され、当該少なくとも2つの蓄電素子20の電極端子22同士を電気的に接続する矩形状の板状部材である。バスバー33の材質は特に限定されず、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ステンレス鋼等の金属若しくはそれらの組み合わせ、または、金属以外の導電性の部材で形成されていてもよい。本実施の形態では、5つのバスバー33を用いて、蓄電素子20を2個ずつ並列に接続して4セットの蓄電素子群を構成し、かつ、当該4セットの蓄電素子群を直列に接続している。また、8個の蓄電素子20の電気的な接続の態様に特に限定はなく、例えば、8個の蓄電素子20の全てが、7個のバスバーによって直列に接続されてもよい。
【0030】
バスバープレート17は、バスバー33を保持する樹脂製の部材である。バスバープレート17は、複数のバスバー33の他、図示しない制御回路及び電線等を保持し、これら部材の位置規制等を行う部材である。バスバープレート17には、複数のバスバー33のそれぞれを保持し、かつ、複数のバスバー33それぞれの一部を複数の蓄電素子20の側に露出させるバスバー用開口部17aが複数設けられている。
【0031】
バスバープレート17のY軸方向の中央には、複数の蓄電素子20のガス排出弁23の配列に沿って、X軸方向に延びるとともにZ軸プラス方向に突出する流路形成部19が設けられている。流路形成部19は全てのガス排出弁23をZ軸プラス方向から覆っている。流路形成部19の長手方向の端部には、図2に示すようにX軸プラス方向側及びX軸マイナス方向側の両方にそれぞれ流路出口18が設けられている。そのため、蓄電素子20から排出されたガスは、主として流路出口18を通過して、上述の通気室及び排気管90を介して外装体10の外部に放出される。このように構成されたバスバープレート17は、外装体10の本体部12に、例えば接着または熱溶着等の所定の手法により固定されている。
【0032】
拘束部材50は、蓄電素子列24に、蓄電素子20の並び方向(配列方向)の拘束力を与える部材である。拘束部材50は、一対のエンドプレート51と連結部材52とを有している。本実施の形態では、一対のエンドプレート51のそれぞれは、本体部12のX軸方向で対向する壁部13a(図2参照)と、蓄電素子列24との間に配置されている。以下、拘束部材50及びその周辺の構成について、図3図5を参照しながら説明する。
【0033】
[2.拘束部材及びその周辺の構成]
図3は、実施の形態に係る拘束部材50及び蓄電素子列24の外観を示す第1の斜視図である。図4は、実施の形態に係る拘束部材50及び蓄電素子列24の外観を示す第2の斜視図である。図3では、蓄電素子列24に拘束部材50が取り付けられた状態が図示されており、図4では、拘束部材50を蓄電素子列24から外した状態が図示されている。図5は、実施の形態に係る蓄電素子列24、拘束部材50、及び本体部12の構造上の関係を示す断面図である。図5では、本体部12のY軸方向の中央部を通過するXZ平面における本体部12及び拘束部材50の断面が模式的に図示されており、各蓄電素子20は、断面ではなく側面が模式的に図示されている。
【0034】
本実施の形態に係る拘束部材50は、図3図5に示すように、X軸方向において蓄電素子列24を挟む一対のエンドプレート51と、一対のエンドプレート51を連結する連結部材52とを有する。本実施の形態では、拘束部材50は、例えば、鉄またはアルミニウム合金等の金属で形成された部材である。例えば、一対のエンドプレート51のそれぞれ及び連結部材52は、互いに別体の部品として作製され、その後に、溶接、締結またはかしめ等の手法で接合されている。なお、例えば、積層造形もしくは鋳造等による一体成型、または、1枚の金属板に折り曲げ加工等を施すことで、一対のエンドプレート51と連結部材52とを一体に備える拘束部材50が作製されてもよい。
【0035】
一対のエンドプレート51のそれぞれは、蓄電素子列24の端の蓄電素子20の長側面21aに対向して配置されている。具体的には、例えば図示しない樹脂製のエンドスペーサが、エンドプレート51と蓄電素子20との間に挟まれた状態で、エンドプレート51が配置される。これにより、エンドプレート51と蓄電素子20との間の電気的な絶縁性が確保される。また、蓄電素子20の容器21がエンドスペーサに保護されることで、比較的に剛性の高いエンドプレート51と蓄電素子20の容器21との干渉による容器21の損傷が抑制される。なお、拘束部材50は、例えば、表面に樹脂材料がコーティングされていることで、蓄電素子20等との間で、電気的な絶縁性を有してもよい。また、複数の蓄電素子20のそれぞれ、または、蓄電素子列24の全体の、エンドプレート51または連結部材52に近い範囲において、樹脂フィルム等の絶縁部材が配置されていてもよい。
【0036】
また、本実施の形態では、図2図4に示すように、一対のエンドプレート51は、蓄電素子列24の、Z軸プラス方向の側に配置された連結部材52のみで連結されており、他の方向の側では連結されていない。つまり、X軸方向から見た場合に、矩形状のエンドプレート51の4辺のうちの1辺のみが、他方のエンドプレート51と連結されている。これにより、例えば、蓄電素子列24の側方側(Y軸プラス方向の側及び、Y軸マイナス方向の側)または底面側(Z軸マイナス方向の側)に、連結部材52を配置するスペースは不要である。従って、蓄電素子列24及び拘束部材50からなる構造体が、全体としてコンパクトにまとめられる。
【0037】
なお、蓄電素子列24において少なくとも1つの蓄電素子20が膨張しようとした場合、一対のエンドプレート51は、Z軸プラス方向の側の連結部材52のみで連結されているため、他の方向の側では、開くように変形し易いとも言える。しかしながら、本実施の形態では、図5に示すように、連結部材52の配置位置は、外装体10の本体部12の開口部15の側であり、本体部12が、連結部材52で連結されていない部分における一対のエンドプレート51の変位を抑制することができる。
【0038】
このように、本実施の形態に係る蓄電装置1は、第一方向(X軸方向)に並んで配置された複数の蓄電素子20からなる蓄電素子列24と、X軸方向において蓄電素子列24を挟む一対のエンドプレート51と、外装体10とを備える。外装体10は、蓄電素子列24及び一対のエンドプレート51を収容する本体部12を有する。本体部12は、X軸方向と交差する第二方向(Z軸プラス方向)の側に、開口部15を有する箱状に形成されている。一対のエンドプレート51は、蓄電素子列24のZ軸プラス方向の側に配置された連結部材52で連結され、かつ、他の方向の側では連結されていない。
【0039】
この構成によれば、一対のエンドプレート51を連結する連結部材52が、外装体10の開口部15の側に配置されているため、1以上の蓄電素子20が膨れた場合に、箱状の本体部12の開口部15側が広がるように変形する可能性が低減される。つまり、本体部12における変形し易い部分には一対のエンドプレート51を連結する連結部材52があり、かつ、蓄電素子列24の連結部材52がない側には、箱状の本体部12が存在する。これにより、蓄電素子列24の膨らみが一対のエンドプレート51及び本体部12によって効率よく抑制される。
【0040】
より具体的には、例えば、蓄電素子20の容器21の内部で電解液が急激に気化し、これにより、蓄電素子20の長側面21aが膨張した場合を想定する。この場合、拘束部材50がなければ、蓄電素子列24はX軸方向に膨張し、その結果、本体部12の壁部13aに、蓄電素子列24からの押圧力が与えられる。これにより、開口部15が開くように(壁部13aが外側に倒れるように)変形する。その結果、開口部15と蓋体11(図2参照)との接合部に割れ等の損傷が生じる可能性がある。接合部に損傷が生じた場合、接合部における気密性が失われ、その後に蓄電素子20のガス排出弁23からガスが排出された場合、その損傷部分から外装体10の内部のガスが漏れ出すことになる。つまり、外装体10の予期せぬ箇所からガスが漏れ出す、という不安全事象が発生する。この点に関し、本実施の形態に係る蓄電装置1では、蓄電素子列24を拘束部材50で拘束しており、本体部12における最も変形し易い部分である開口部15の側は、連結部材52による拘束力が効果的に作用する。これにより、開口部15の側の、蓄電素子列24のX軸方向における膨張が抑制され、その結果、開口部15と蓋体11との接合部が損傷する可能性が低減される。また、一対のエンドプレート51において、連結されていないことで最も開きやすいと考えられる下端部(Z軸マイナス方向の側の端部)には、箱状の本体部12の下端部(特に底壁部13b(図5参照))の拘束力が効果的に作用する。つまり、本体部12においてX軸方向の拘束力が最も高い部分が、一対のエンドプレート51の下端部の開き(外側への変位)を抑制することができる。従って、蓄電素子列24の全体に対して、一対のエンドプレート51、連結部材52、及び本体部12による拘束力が効果的に作用し、その結果、蓄電素子列24の膨張が抑制される。また、連結部材52は、外装体10の内部に1つのみ備えられればよいため、蓄電素子列24の拘束のための構成の簡易化及び蓄電装置1の小型化等が図られる。このように、本実施の形態に係る蓄電装置1によれば、簡易な構成で安全性を向上させることができる。
【0041】
また、本実施の形態において、複数の蓄電素子20のそれぞれは、ガス排出弁23を有し、かつ、Z軸プラス方向にガス排出弁23を向けた姿勢で配置されている。連結部材52は、複数の蓄電素子20のガス排出弁23に対向する位置に配置されており、かつ、Z軸プラス方向に貫通する貫通孔52aを有している。
【0042】
本実施の形態では、図2図4に示すように、複数のガス排出弁23は、蓄電素子列24において、配列方向(X軸方向)に並んでおり、かつ、幅方向(Y軸方向)の中央部に位置している。連結部材52は、これらガス排出弁23に対向する位置に配置されている。すなわち、一対のエンドプレート51は、互いの幅方向の中央部分が連結部材52で連結されており、これにより、一対のエンドプレート51は、蓄電素子列24に対するX軸方向の拘束力を、幅方向においてバランスよく与えることができる。また、連結部材52には、図3及び図4に示すように、平面視(Z軸プラス方向の側から見た場合)において、複数のガス排出弁23それぞれの少なくとも一部に対向する範囲に貫通孔52aが形成されている。従って、連結部材52は、一対のエンドプレート51にX軸方向の拘束力を与え、かつ、いずれかの蓄電素子20が開弁した場合に、ガス排出弁23から排出されるガスをZ軸プラス方向に送り出すことができる。そのため、ガス排出弁23から排出されたガスを、排気管90を介して効率よく外装体10の外部に放出することが可能となる。これにより、例えば、外装体10の内圧の上昇が抑制され、その結果、内圧の上昇に起因する外装体10の変形または損傷の可能性が低減される。なお、複数のガス排出弁23に対応して連結部材52に形成される貫通孔52aの数は1には限定されない。例えば、ガス排出弁23と貫通孔52aとが1対1の関係となるように、複数の貫通孔52aが、連結部材52に形成されていてもよい。
【0043】
以上、実施の形態に係る蓄電装置1について説明したが、蓄電装置1は、図2図5に示す構成とは異なる構成の拘束部材を備えてもよい。そこで、以下に、蓄電装置1が備える拘束部材についての変形例を、上記実施の形態との差分を中心に説明する。
【0044】
(変形例)
図6は、実施の形態の変形例に係る実施の形態に係る拘束部材50a及び蓄電素子列24の外観を示す斜視図である。図7は、実施の形態に係る連結部材53の断面図である。図7では、図6のVII-VII線を通るYZ平面における連結部材53の断面が模式的に図示されており、蓄電素子20のガス排出弁23は、ドットを付した領域によっておおよその配置範囲が表されている。
【0045】
図6に示すように、本変形例に係る拘束部材50aは、X軸方向において蓄電素子列24を挟む一対のエンドプレート51を有している。一対のエンドプレート51は、蓄電素子列24の、Z軸プラス方向の側である開口部15(図2参照)の側に配置された連結部材53で連結され、かつ、他の方向の側では連結されていない。これらの構成は、実施の形態に係る拘束部材50と共通している。しかし、本変形例に係る拘束部材50では、連結部材53が、蓄電素子20のガス排出弁23から排出されたガスの流路55を形成する流路形成部53aを有している点で、実施の形態に係る拘束部材50とは異なる。
【0046】
すなわち、本変形例において、複数の蓄電素子20のそれぞれは、ガス排出弁23を有し、かつ、第二方向(Z軸プラス方向)にガス排出弁23を向けた姿勢で配置されている。連結部材53は、複数の蓄電素子20のガス排出弁23に対向する位置に配置されており、かつ、第一方向(X軸方向)に延在するガスの流路55を形成する流路形成部53aを有する。本変形例では、図6及び図7に示すように、連結部材53は、X軸方向に長尺で、かつ、ガス排出弁23の側が開口した箱形状であり、その内面が流路形成部53aとして機能する。これにより、流路形成部53aの内側に、X軸方向(図7における紙面に直交する方向)に延在する流路55が形成される。また、連結部材53の長手方向(X軸方向)の両端には排気口53bが設けられており、ガス排出弁23から排出されたガスは、流路形成部53a及び排気口53bを通過し、さらに、排気管90(図1参照)を介して外装体10の外部に放出される。
【0047】
この構成によれば、連結部材53は、一対のエンドプレート51にX軸方向の拘束力を与え、かつ、いずれかの蓄電素子20が開弁した場合に、ガス排出弁23から排出されるガスを蓄電素子20の配列方向(X軸方向)に送り出すことができる。そのため、ガスを効率よく外部に放出することが可能となる。これにより、例えば、外装体10の内圧の上昇が抑制され、その結果、内圧の上昇に起因する外装体10の変形または損傷の可能性が低減される。また、ガスの流路を形成する部材を別途用いる必要がないため、このことは、蓄電装置1の構成の簡易化または小型化等に寄与する。
【0048】
なお、本変形例の連結部材53を採用する場合、バスバープレート17の流路形成部19は、連結部材53を収容する(上から覆う)部分として用いられてもよい。この場合であっても、連結部材53の排気口53bに対向する位置にバスバープレート17の流路出口18を位置させることで、バスバープレート17を、排気口53bから排出されたガスの流れを阻害しないように配置することができる。
【0049】
(他の変形例)
以上、本発明に係る蓄電装置について、実施の形態及びその変形例に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記実施の形態及び変形例に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態または変形例に施したものも、本発明の範囲内に含まれる。
【0050】
例えば、一対のエンドプレート51は、外装体10の本体部12における開口部15の側に配置された、2以上の連結部材で連結されていてもよい。例えば、平面視において、蓄電素子20のガス排出弁23のY軸方向の両側のそれぞれに、連結部材を配置してもよい。これにより、一対のエンドプレート51は、蓄電素子列24に対するX軸方向の拘束力を、幅方向においてバランスよく与えることができ、かつ、ガス排出弁に対向する位置に連結部材を配置しないことができる。この場合、連結部材の構造に依存せずに、ガスの流路を規制することができる。
【0051】
また、蓄電素子列24及び拘束部材50を収容する外装体は、気密性が確保されていなくてもよい。例えば、軽量化、簡素化、または蓄電素子列24の冷却等のために、壁部に1以上の貫通孔(開口部)が設けられた外装体であってもよい。この場合であってもその外装体が、蓄電素子列24及び拘束部材50を収容する本体部と、本体部の開口部を塞ぐ蓋体とで構成される場合、本体部の開口部の側に連結部材52を配置することで、外装体の変形または損傷等が抑制される。
【0052】
また、拘束部材50は、金属で形成されている必要はない。拘束部材50は、例えば、繊維強化プラスチック等の剛性の高い非金属材料で形成されていてもよい。
【0053】
また、上記説明された複数の構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子を備えた蓄電装置に適用できる。
【符号の説明】
【0055】
1 蓄電装置
10 外装体
11 蓋体
12 本体部
15 開口部
19、53a 流路形成部
20 蓄電素子
21 容器
21a 長側面
21c 蓋板
22 電極端子
23 ガス排出弁
24 蓄電素子列
50、50a 拘束部材
51 エンドプレート
52、53 連結部材
52a 貫通孔
53b 排気口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7