(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】固体高分子形燃料電池用触媒層、膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/86 20060101AFI20240709BHJP
H01M 4/92 20060101ALI20240709BHJP
H01M 4/96 20060101ALI20240709BHJP
H01M 8/1004 20160101ALI20240709BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20240709BHJP
【FI】
H01M4/86 M
H01M4/86 B
H01M4/92
H01M4/96 B
H01M4/96 M
H01M8/1004
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2020066735
(22)【出願日】2020-04-02
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】谷脇 和磨
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-083167(JP,A)
【文献】特開2008-077974(JP,A)
【文献】特開2005-190872(JP,A)
【文献】特開2005-294115(JP,A)
【文献】国際公開第2020/022191(WO,A1)
【文献】特開2007-200762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86
H01M 4/88
H01M 4/92
H01M 4/96
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒を担持した炭素粒子、高分子電解質、および炭素繊維を含む固体高分子形燃料電池用触媒層であって、
前記固体高分子形燃料電池用触媒層の断面をTEM-EDX分析した場合に、
広視野分析領域における白金(Pt)およびフッ素(F)の原子比率と比較して、前記炭素繊維の近傍の第一狭視野分析領域におけるPtおよびFの原子比率が低く、
前記広視野分析領域におけるPtおよびFの原子比率と比較して、前記炭素繊維から離れた第二狭視野分析領域におけるPtおよびFの原子比率が高
く、
前記炭素繊維は、フッ素化処理されていないこと
を特徴とする固体高分子形燃料電池用触媒層。
【請求項2】
前記固体高分子形燃料電池用触媒層のTEM-EDX分析において、
前記第一狭視野分析領域における白金(Pt)の原子比率が0.1at%以下であり、フッ素(F)の原子比率が0.05at%以下であること
を特徴とする請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用触媒層。
【請求項3】
前記固体高分子形燃料電池用触媒層のTEM-EDX分析において、
前記第一狭視野分析領域における白金(Pt)の原子比率及びフッ素(F)の原子比率が0at%であること
を特徴とする請求項2に記載の固体高分子形燃料電池用触媒層。
【請求項4】
前記第一狭視野分析領域における前記炭素繊維の占有率が80%以上であること
を特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の固体高分子形燃料電池用触媒層。
【請求項5】
前記高分子電解質を、前記触媒の重量を除いた前記炭素粒子の重量に対して、0.1倍以上3.0倍以下の範囲内の重量で含有すること
を特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の固体高分子形燃料電池用触媒層。
【請求項6】
前記炭素繊維が、カーボンファイバー、またはカーボンナノチューブであること
を特徴とする請求項1
から5のいずれか1項に記載の固体高分子形燃料電池用触媒層。
【請求項7】
高分子電解質膜と、
前記高分子電解質膜を挟む一対の触媒層と、
を備え、
前記一対の触媒層の少なくとも一方が、請求項1乃至
6の何れか1項に記載の固体高分子形燃料電池用触媒層であること
を特徴とする膜電極接合体。
【請求項8】
請求項
7に記載の膜電極接合体と、
前記膜電極接合体を挟む一対のセパレータと、を備えること
を特徴とする固体高分子形燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子形燃料電池用触媒層、膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題やエネルギー問題の有効な解決策として、燃料電池が注目を浴びている。燃料電池とは、水素などの燃料を酸素などの酸化剤を用いて酸化し、これに伴う化学エネルギーを電気エネルギーに変換する。
燃料電池は、電解質の種類によって、アルカリ形、リン酸形、高分子形、溶融炭酸塩形、固体酸化物形などに分類される。中でも高分子形燃料電池(PEFC)は、低温作動、高出力密度であり、小型化・軽量化が可能であることから、携帯用電源、家庭用電源、車載用動力源としての応用が期待されている。
【0003】
高分子形燃料電池(PEFC)は、電解質膜である高分子電解質膜を燃料極(アノード)と空気極(カソード)で挟んだ構造体(膜電極接合体)を持ち、燃料極側に水素を含む燃料ガスを供給し、空気極側に酸素を含む酸化剤ガスを供給することで、下記の電気化学反応により発電する。
【0004】
アノード:H2 → 2H++2e- ・・・(反応1)
カソード:1/2O2+2H++2e- → H2O・・・(反応2)
アノードおよびカソードは、それぞれ触媒層とガス拡散層の積層構造からなる。アノード側触媒層に供給された燃料ガスは、電極触媒によりプロトンと電子を生成する(反応1)。プロトンは、アノード側触媒層内の高分子電解質、高分子電解質膜を通り、カソードに移動する。電子は、外部回路を通り、カソードに移動する。カソード側触媒層では、プロトン、電子および外部から供給された酸化剤ガスが反応して水を生成する(反応2)。このように、高分子形燃料電池は電子が外部回路を通ることにより発電する。
【0005】
触媒層は一般的に、白金担持カーボンと高分子電解質とで形成される。白金担持カーボンは発電時における電子伝導に寄与し、高分子電解質はプロトン伝導に寄与する。これらの種類や含有量のバランスは、発電性能に大きく寄与する。
【0006】
一方で発電時においては、燃料電池への水素および酸素の拡散性や、発電時に生成した水分の排水性能も重要である。ガス拡散性および排水性の高い燃料電池は、高い発電性能を導出することができる。
【0007】
そこで、ガス拡散層への撥水性付与や空隙率の適正化により、ガス拡散性や排水性を向上させる手段がとられている。
【0008】
適正なガス拡散層を採用することにより、ガス拡散性や排水性の向上を図ることは可能だが、実際には膜電極接合体の触媒層におけるガス拡散性や排水性がより一層重要である。これは、前述の電気化学反応(反応1、反応2)は触媒層中で進行するため、触媒層中でのガス拡散性や排水性を向上させない限り、外側のガス拡散層を適正化しても、発電性能の向上には限界があるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2019-75277号公報
【文献】国際公開番号 WO2020/022191
【文献】特許第5994729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1では触媒層(アノード触媒層)中に繊維状カーボンを所定量配置することにより、液水の触媒層外への排出を促進し、それによって水電解反応で生成した酸素の滞留を抑制している。また、特許文献2では、触媒層(カソード触媒層)において粒子状伝導部材の質量に対して所定割合の質量でプロトン伝導性樹脂を添加することにより、ガスの拡散経路を確保している。また、特許文献3では、触媒層(カソードおよびアノード)において、適切なプロトン抵抗およびガス拡散抵抗となるように、湿度に応じて高分子電解質の厚さを制御している。しかし、これらの手法では、触媒層中のガス拡散性や排水性は向上するものの、触媒層中の原子比率までは考慮されていない。
【0011】
また、触媒層のガス拡散性や排水性を向上させる方法としては、触媒インクの分散工程において粒径を粗大化させ、触媒層中の空隙率を増加させる手段がある。しかし、粒径の粗大化に伴い粒子内部の触媒が反応に寄与しなくなり、結果的に発電性能が向上しないという問題点がある。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、排水性およびガス拡散性を向上し、且つ発電時における出力を向上させることが可能な、固体高分子形燃料電池用触媒層、膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る高分子形燃料電池用触媒層は、触媒を担持した炭素粒子、高分子電解質、および炭素繊維を含む固体高分子形燃料電池用触媒層であって、前記固体高分子形燃料電池用触媒層の断面をTEM-EDX分析した場合に、広視野分析領域における白金(Pt)およびフッ素(F)の原子比率と比較して、前記炭素繊維の近傍の第一狭視野分析領域におけるPtおよびFの原子比率が低く、前記広視野分析領域におけるPtおよびFの原子比率と比較して、前記炭素繊維から離れた第二狭視野分析領域におけるPtおよびFの原子比率が高く、前記炭素繊維は、フッ素化処理されていないことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様による膜電極接合体は、高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜を挟む一対の触媒層と、を備え、前記一対の触媒層の少なくとも一方が、前記固体高分子形燃料電池用電極触媒層であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一態様による固体高分子形燃料電池は、前記膜電極接合体と、前記膜電極接合体を挟む一対のセパレータと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、排水性およびガス拡散性を向上し、且つ発電時における出力を向上させることが可能な固体高分子形燃料電池用触媒層、膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る膜電極接合体の構成例を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る固体高分子形燃料電池用触媒層の構成例を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る固体高分子形燃料電池用触媒層において、TEM-EDX分析の対象となる分析領域を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る膜電極接合体を装着した固体高分子形燃料電池の単セルの構成例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、以下に記載する各実施の形態に限定されうるものではなく、当業者の知識に基づいて設計の変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれるものである。
【0019】
〔膜電極接合体〕
図1には、本実施形態に係る膜電極接合体11の断面図を示す。
図1に示すように、本発明の実施の形態(以下、本実施形態)に係る固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体11は、高分子電解質膜3と、高分子電解質膜3を挟む一対の触媒層とを備えている。具体的には、膜電極接合体11は、高分子電解質膜3と、高分子電解質膜3の一方の面に形成された空気極側電極触媒層1と、高分子電解質膜3の他方の面に形成された燃料極側電極触媒層2と、を備えた構造となっている。空気極側電極触媒層1、燃料極側電極触媒層2が、本実施形態による固体高分子形燃料電池用触媒層に該当する。空気極側電極触媒層1は、カソード触媒層とも称する。また、燃料極側電極触媒層2は、アノード触媒層とも称する。また、以下、空気極側電極触媒層1および燃料極側電極触媒層2を総称して、単に触媒層と称する場合がある。
【0020】
また、
図1に示すように、膜電極接合体11には、触媒層(空気極側電極触媒層1,燃料極側電極触媒層2)の周囲を囲むようにして、ガスケット4が配置されている。
本実施形態に係る膜電極接合体11は、高分子電解質膜3を挟む一対の触媒層のうち少なくとも一方が、本実施形態に係る固体高分子形燃料電池用触媒層のうちのいずれか(空気極側電極触媒層1および燃料極側電極触媒層2のうちいずれか一方)であればよい。
【0021】
図2には、本実施形態に係る固体高分子形燃料電池用触媒層(空気極側電極触媒層1,燃料極側電極触媒層2)を示す。
図2に示すように、本実施形態に係る固体高分子形燃料触媒層は、触媒粒子(触媒の一例)6を担持した炭素粒子5、高分子電解質7および炭素繊維8を含む形態を有している。炭素繊維を含むことにより、触媒層の強度を高めることができ、形成時にクラックが発生することを抑制できる。また、炭素繊維を含むことにより触媒層内の空孔を増加させることができ、排水性やガス拡散性の向上により高出力化が可能となる。
【0022】
図2に示す通り、炭素粒子5には触媒粒子6が担持されており、その周囲を高分子電解質7によって覆われている。
【0023】
本実施形態において炭素粒子5としては、微粒子状で導電性を有し、触媒粒子6に侵されないものであればどのようなものでも構わないが、例えばカーボンブラック、グラファイト、黒鉛、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、フラーレン等を用いることができる。炭素粒子5の粒径は、小さすぎると電子伝導パスが形成されにくくなり、また大きすぎると電極触媒層が厚くなって抵抗が増加することで、出力特性が低下することがある。このため、炭素粒子5の粒径は10nm以上1000nm以下の範囲内であることが好ましく、10nm以上100nm以下の範囲内であることが更に好ましい。
【0024】
本実施形態において触媒粒子6としては、白金やパラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウムの白金族元素の他、鉄、鉛、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウムなどの金属又はこれらの合金、または酸化物、複酸化物等が使用できる。なお、ここでいう複酸化物とは2種類の金属からなる酸化物のことをいう。これらの中でも、触媒粒子6として白金や白金合金を用いることが好ましい。また、これらの触媒粒子6の粒径は、大きすぎると触媒の活性が低下し、小さすぎると触媒の安定性が低下する。このため、触媒粒子6の粒径は、0.5nm以上20nm以下の範囲内であることが好ましく、1nm以上5nm以下の範囲内であることが更に好ましい。
【0025】
また、本実施形態において高分子電解質7としては、イオン伝導性を有するものであればよいが、触媒層と高分子電解質膜3との密着性を考慮すると、高分子電解質膜3と同質の材料(例えば、フッ素系高分子電解質、炭化水素系高分子電解質等)を選択することが好ましい。例えば、フッ素系樹脂としては、デュポン社製の「Nafion(登録商標)」等を用いることができる。また、炭化水素系樹脂としては、エンジニアリングプラスチック、又はその共重合体にスルホン酸基を導入したものなどが挙げられる。
【0026】
図2中における高分子電解質7は、発電時におけるプロトンの伝導を担い、触媒粒子6を担持した炭素粒子5を被覆している。高分子電解質7は、プロトン伝導の他に、排水性とガス拡散性とに影響する。
【0027】
本実施形態において炭素繊維8としては、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等が使用できるが、カーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブを用いることが好ましい。触媒層(空気極側電極触媒層1,燃料極側電極触媒層2)に炭素繊維8を含有することで、起電力を落とさずに排水性とガス拡散性を向上し、特に高電流側における出力を向上することができる。また、炭素繊維8は、繊維表面が疎水性を有していることが好ましい。
【0028】
また、本実施形態において触媒層には、炭素繊維8以外にも、プロトン伝導性を持つ高分子電解質繊維を使用しても構わない。触媒層に高分子電解質繊維を加えることによって、炭素繊維8と同様に、起電力を落とさずに排水性とガス拡散性を向上し、特に高電流側における出力を向上することができる。また、触媒層に炭素繊維8と高分子電解質繊維との両方を混入しても構わない。
【0029】
本実施形態において、炭素繊維8の繊維径は200nm以下であることが好ましい。これにより、触媒層の強度を高めることができ、形成時にクラックが生じることを抑制できる。また、高分子電解質繊維の繊維径も同様に、200nm以下であることが好ましい。
【0030】
また本実施形態において、炭素繊維8の繊維長が、1μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましい。上記範囲にすることにより、触媒層中の炭素繊維8の凝集を回避し、空孔を形成することができる。また、高分子電解質繊維も同様に、繊維長が、1μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましい。これにより、高分子電解質繊維の凝集を回避し、空孔を形成することができる。
【0031】
また、触媒層に高分子電解質繊維を加える場合は、触媒粒子6の重量を除いた炭素粒子5の重量に対して、0.1倍以上3.0倍以下の範囲内の重量で含有されていることが好ましい。高分子電解質繊維の重量を上述の範囲内にすることにより、発電時におけるプロトンの伝導を促し、出力を向上させることができる。
【0032】
本実施形態に係る高分子形燃料電池用触媒層(空気極側電極触媒層1,燃料極側電極触媒層2)は、上述のように、触媒粒子6を担持した炭素粒子5、高分子電解質7、および炭素繊維8で形成される。本実施形態による触媒層において、高分子電解質7の炭素繊維8に対する吸着状態が、発電時における出力向上に寄与している。詳しくは後述するが、本実施形態において触媒層は、炭素繊維8の近傍の高分子電解質7の原子比率を低くすることによって、高分子電解質7が発電に寄与する炭素粒子5に選択的に吸着し、発電時の出力を向上させることができる。
【0033】
図3は、TEM-EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)による原子比率の分析方法を示したものである。本実施形態においては、クライオCP装置により断面出しした膜電極接合体11について、TEM-EDXによって分析対象となる領域である分析エリアに関するマッピング分析を行い、触媒層(空気極側電極触媒層1,燃料極側電極触媒層2)の断面をTEM-EDX分析して、各元素の原子比率を測定する。具体的には、膜電極接合体11の断面において、高分子電解質膜3上に形成された触媒層に対してTEM-EDX分析を実施して、原子比率を測定する。
【0034】
本実施形態においてTEM-EDX分析には、JEOL(日本電子株式会社)製「エネルギー分散型X線分光分析装置(型番:Dual SDD)」を用いる。また、TEM-EDXによる主な分析条件としては、加速電圧を200kVとする。
【0035】
TEM-EDX分析においては、面積が40,000nm
2である広視野分析エリアと、面積が10,000nm
2である2種類の狭視野分析エリア(第一狭視野分析エリア、第二狭視野分析エリア)について、マッピング分析を行う。
図3には、これらの分析エリアの一例として、広視野分析エリア(広視野分析領域の一例)50a、第一狭視野分析エリア(第一狭視野分析領域の一例)50b、第二狭視野分析エリア(第二狭視野分析領域の一例)50cが図示されている。第一狭視野分析エリア50bは、炭素繊維8の近傍の狭視野分析エリアであって、炭素繊維8の占有率が80%以上の狭視野分析エリアである。また、第二狭視野分析エリア50cは、炭素繊維8から離れた狭視野分析エリアであって、炭素繊維8の占有率が20%以下の狭視野分析エリアである。
【0036】
本実施形態におけるTEM-EDXによるマッピング分析では、広視野分析エリア50aと、炭素繊維8の占有率が異なる2種類の狭視野分析エリア(第一狭視野分析エリア50b、第二狭視野分析エリア50c)のそれぞれについて、各元素(C、Pt、F)の原子比率を測定する。
【0037】
具体的には、触媒粒子6を担持した炭素粒子5、高分子電解質7、および炭素繊維8を含む、本実施形態に係る高分子形燃料電池用触媒層(空気極側電極触媒層1,燃料極側電極触媒層2)に関し、当該触媒層の断面をTEM-EDXにより炭素(C)、白金(Pt)、フッ素(F)の各元素の原子比率を分析する。さらに、広視野分析エリア50aにおける各元素の原子比率の測定結果(広視野分析結果)と、2種類の狭視野分析エリア(第一狭視野分析エリア50b、第二狭視野分析エリア50c)における各元素の原子比率の測定結果(狭視野分析結果)と、を比較する。その結果、広視野分析エリア50aにおける各元素の原子比率(ここでは、Pt、Fの原子比率)と比較して、炭素繊維8の近傍の第一狭視野分析エリア50bにおけるPt、Fの原子比率が低くなっている。また、広視野分析エリア50aにおける各元素の原子比率と比較して、炭素繊維8から離れた第二狭視野分析エリア50cにおけるPt、Fの原子比率が高くなっている。これにより、本実施形態に係る触媒層は、発電における出力が向上する。
【0038】
フッ素(F)の原子比率は、触媒層中の高分子電解質7に起因するピークであるため、炭素繊維8の占有率が20%以下と低くなっている第二狭視野分析エリア50cにおいてFの原子比率が高いことは、局所的な高分子電解質7の偏在と言える。また、炭素繊維8の近傍であって、炭素繊維8の占有率が80%以上と高くなっている第一狭視野分析エリア50bにおいてFの原子比率が低いことは、高分子電解質7の炭素繊維8に対する吸着が少ないことを意味する。
【0039】
燃料電池は、触媒の担持された導電材を高分子電解質が被覆することによって発電する。一方で、炭素繊維には触媒が担持されていないため、高分子電解質が被覆しても発電には寄与しない。つまり、本実施形態に係る触媒層を有する固体高分子形燃料電池は、高分子電解質7が触媒粒子6の担持された炭素粒子5に選択的に吸着することで、発電時における出力を向上させることができる。
【0040】
また、炭素繊維8は、触媒層において空孔の形成と電子伝導に寄与し、排水性とガス拡散性とを向上することが可能となる。本実施形態において、炭素繊維8近傍(第一狭視野分析エリア50b)での高分子電解質7の原子比率を選択的に低くすることにより、空孔が発生し易くなり、排水性およびガス拡散性を向上し、且つ発電時における出力を向上させることができる。なお、フッ素(F)だけでなく白金(Pt)の原子比率も炭素繊維8の近傍(第一狭視野分析エリア50b)において低くなるが、これはPtの担持された炭素粒子5と高分子電解質7が選択的に吸着して形成される吸着体が、高分子電解質7の性質により炭素繊維8へ吸着しにくいためである。例えば、高分子電解質7がスルホン酸基を持つ場合、表面が疎水性である炭素繊維8との親和性が低下して炭素繊維8へ吸着しづらくなるため、炭素繊維8の近傍の高分子電解質7の原子比率が低下する。
【0041】
このように、本実施形態に係る触媒層は、触媒粒子6を担持した炭素粒子5、高分子電解質7、および炭素繊維8を含む固体高分子形燃料電池用触媒層であって、当該固体高分子形燃料電池用触媒層の断面をTEM-EDX分析した場合に、広視野分析エリア50aにおける白金(Pt)およびフッ素(F)の原子比率と比較して、炭素繊維8近傍の第一狭視野分析エリア50bにおけるPtおよびFの原子比率が低く、広視野分析エリア50aにおけるPtおよびFの原子比率と比較して、炭素繊維8から離れた第二狭視野分析エリア50cにおけるPtおよびFの原子比率が高くなっている。これにより、本実施形態に係る固体高分子形燃料電池用電極触媒層は、排水性およびガス拡散性を向上し、且つ発電時における出力を向上させることが可能である。
【0042】
また、本実施形態に係る触媒層は、TEM-EDX分析において、第一狭視野分析エリア50bにおける白金(Pt)の原子比率が0.1at%以下であり、フッ素(F)の原子比率が0.05at%以下であるとよい。これにより、発電時における出力をより向上することができる。
【0043】
また、本実施形態に係る膜電極接合体11は、高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜を挟む一対の触媒層とを備え、前記一対の触媒層の少なくとも一方が、本実施形態に係る固体高分子形燃料電池用電極触媒層(空気極側電極触媒層1、燃料極側電極触媒層2)であればよい。これにより、膜電極接合体11は、排水性およびガス拡散性を向上し、且つ発電時における出力を向上させることが可能である。
【0044】
図4は、膜電極接合体11を装着した固体高分子形燃料電池10の構成例を示す分解斜視図である。ここで、
図4に示す固体高分子形燃料電池10は、単セル構造の燃料電池の例である。
図4に示すように、本実施形態に係る固体高分子形燃料電池10は、膜電極接合体11と、膜電極接合体11を挟む一対のセパレータ(空気極側セパレータ18C、および燃料極側セパレータ18A)と、を備える。具体的には、膜電極接合体11の空気極側電極触媒層1と対向して空気極側ガス拡散層17Cが配置され、燃料極側電極触媒層2と対向して燃料極側ガス拡散層17Aが配置されている。さらに、空気極側ガス拡散層17C及び燃料極側ガス拡散層17Aを、空気極側セパレータ18C及び燃料極側セパレータ18Aにより挟持することで、単セル構造の固体高分子形燃料電池10が構成される。一組(一対)のセパレータ(空気極側セパレータ18C、および燃料極側セパレータ18A)は、導電性であり、且つガス不透過性の材料で形成されている。また、空気極側セパレータ18Cは、空気極側ガス拡散層17Cに面して配置された反応ガス流通用の空気極側ガス流路19Cを有する。また、燃料極側セパレータ18Aは、燃料極側ガス拡散層17Aに面して配置された燃料極側ガス流路19Aを有する。
【0045】
なお、
図4に示す固体高分子形燃料電池10は、単セル構造の燃料電池の例であるが、燃料極側セパレータ18A又は空気極側セパレータ18Cを介して複数のセルを積層して構成される固体高分子形燃料電池であっても、本発明は適用することができる。
【0046】
この単セル構造の固体高分子形燃料電池10においては、空気極側セパレータ18Cの空気極側ガス流路19Cを通った空気や酸素などの酸化剤が、空気極側ガス拡散層17Cを介して膜電極接合体11に供給される。また、燃料極側セパレータ18Aの燃料極側ガス流路19Aを通った水素を含む燃料ガス又は有機物燃料が、燃料極側ガス拡散層17Aを介して膜電極接合体11に供給される。これにより、固体高分子形燃料電池10は、発電が可能に構成されている。
【0047】
本実施形態に係る固体高分子形燃料電池10は、空気極側電極触媒層1および燃料極側電極触媒層2のうち少なくともいずれか一方を含む膜電極接合体11と、膜電極接合体11を挟む一対のセパレータとを備えていればよい。これにより、本実施形態に係る固体高分子形燃料電池10は、排水性およびガス拡散性を向上し、且つ発電時における出力を向上させることができる。
【0048】
(触媒層の製造方法)
本実施形態に係る固体高分子形燃料電池用触媒層(空気極側電極触媒層1、燃料極側電極触媒層2)は、触媒層用スラリーを作製し、基材などに塗工・乾燥することで製造できる。
【0049】
触媒層用スラリーは、触媒粒子6を担持した炭素粒子5、高分子電解質7、および炭素繊維8で形成される。触媒層用スラリーにおける溶媒としては、特に限定しないが、高分子電解質7を分散又は溶解できるものが好ましい。一般的に用いられる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイゾブチルケトン、メチルアミルケトン、ペンタノン、へプタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトニルアセトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、メトキシトルエン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジエチルアミン、アニリンなどのアミン類、蟻酸プロピル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチルなどのエステル類、その他酢酸、プロピオン酸、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を用いてもよい。また、グリコール、グリコールエーテル系溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジアセトンアルコール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノールなどが挙げられる。
【0050】
触媒層用スラリーの塗工方法としては、ドクターブレード法、ダイコーティング法、ディッピング法、スクリーン印刷法、ラミネータロールコーティング法、スプレー法などが挙げられるが、特に限定しない。
【0051】
触媒層用スラリーの乾燥方法としては、温風乾燥、IR乾燥などが挙げられる。乾燥温度は、40℃以上200℃以下の範囲内であればよく、好ましくは40℃以上120℃以下の範囲内である。乾燥時間は、0.5分以上1時間以下の範囲内であればよく、好ましくは1分以上30分以下の範囲内である。
【0052】
(膜電極接合体の製造方法)
膜電極接合体11の製造方法としては、転写基材又はガス拡散層に空気極側電極触媒層1、燃料極側電極触媒層2を形成した後、高分子電解質膜に熱圧着で空気極側電極触媒層1、燃料極側電極触媒層2を形成する方法や、高分子電解質膜3に直接、空気極側電極触媒層1、燃料極側電極触媒層2を形成する方法が挙げられる。なお、熱圧着法は、加圧時に空孔容積が低減し、排水性の低下につながることがある。このため、本実施形態に係る空気極側電極触媒層1、燃料極側電極触媒層2の形成には、高分子電解質膜3に直接、空気極側電極触媒層1、燃料極側電極触媒層2を形成する方法が好ましい。
【実施例1】
【0053】
次に、本発明に基づく実施例について説明する。
[実施例1]
白金担持カーボン(TEC10E50E、田中貴金属社製)20gを容器にとり、表面が疎水性の炭素繊維(繊維径約150nm、繊維長約10μm)10g、および水を加えて混合後、1-プロパノール、電解質(Nafion(登録商標)分散液、和光純薬工業)を加えて撹拌して、カソード触媒層用スラリー及びアノード触媒層用スラリーを得た。
得られたカソード触媒層用スラリー及びアノード触媒層用スラリーを、それぞれ高分子電解質膜(デュポン社製、Nafion212)の一方の表面、他方の面にダイコーティング法で塗工し、80℃の炉内で乾燥することで、固体高分子形燃料電池用触媒層(空気極側電極触媒層1、燃料極側電極触媒層2)を得た。
【0054】
[実施例2]
実施例1の触媒用スラリー(カソード触媒層用スラリー及びアノード触媒層用スラリー)に対して、固形分濃度を1.2倍、水比率を1.1倍とした以外は、実施例1と同様の手順で固体高分子形燃料電池用触媒層を得た。
[比較例1]
触媒層用スラリーの作製の際に、表面が親水性の炭素繊維8を使用した以外は、実施例1と同様の手順で固体高分子形燃料電池用触媒層を得た。
【0055】
[原子比率の測定]
実施例1、2及び比較例1における高分子電解質膜3上に形成された固体高分子形燃料電池用触媒層の断面に対して、広視野分析エリア50a、および第一狭視野分析エリア50b、第二狭視野分析エリア50cのTEM-EDX分析を実施した。TEM-EDX分析を実施して、原子比率を測定した。TEM-EDX分析には、JEOL(日本電子株式会社)製「エネルギー分散型X線分光分析装置(型番:Dual SDD)」を用いた。また、分析条件としては、加速電圧を200kVとした。
【0056】
[発電特性の評価]
実施例1、2及び比較例1の固体高分子形燃料電池用触媒層(空気極側電極触媒層1、燃料極側電極触媒層2)の外側にガス拡散層(SIGRACET(登録商標) 35BC、SGL社製)を配置して、市販のJARI標準セルを用いて発電特性の評価を行った。セル温度は、80℃として、燃料極側電極触媒層2(アノード触媒層)に水素(100%RH)を供給し、空気極側電極触媒層1(カソード触媒層)に空気(100%RH)を供給して評価を行った。
【0057】
表1は、実施例1、2及び比較例1の固体高分子形燃料電池用触媒層における原子比率の測定結果を示すものである。
【表1】
【0058】
表1に示す通り、実施例1、および実施例2の触媒層においては、広視野分析エリアにおける各元素の原子比率の測定結果(広視野分析結果)と比較して、炭素繊維8近傍の第一狭視野分析エリア50bにおける白金(Pt)、フッ素(F)の原子比率が低いという結果が得られた。また、実施例1、および実施例2の触媒層においては、広視野分析結果と比較して、炭素繊維8から離れた第二狭視野分析エリア50cにおけるPt、Fの原子比率が高いという結果が得られた。
【0059】
実施例1、2において炭素繊維8の近傍の第一狭視野分析エリア50bにおけるフッ素(F)の原子比率が低く、炭素繊維8から離れた第二狭視野分析エリア50cにおけるFの原子比率が高いことは、炭素繊維8に対する高分子電解質7の吸着が少ないことを意味する。つまり、実施例1、2においては、局所的な高分子電解質7の偏在が生じていると言える。また、実施例1、2においては、白金(Pt)の原子比率も、炭素繊維8近傍の第一狭視野分析エリア50bにおいて低くなっている。これは、Ptの担持された炭素粒子5と高分子電解質7が選択的に吸着しつつ、当該吸着による吸着体は、高分子電解質7の性質により表面が疎水性の炭素繊維8へ吸着しにくいためである。
【0060】
一方で、比較例1においては、炭素繊維8近傍の第一狭視野分析エリア50bにおける白金(Pt)、フッ素(F)の原子比率、および炭素繊維8から離れた第二狭視野分析エリア50cにおけるPt、Fの原子比率は、広視野分析結果におけるPt、Fの原子比率とほぼ同一となる結果が得られた。これは、高分子電解質7が炭素粒子5、炭素繊維8のそれぞれに均等に吸着していることを意味する。
【0061】
表2は、実施例1,2、および比較例1の発電評価における最大出力密度を示したものである。
【表2】
【0062】
表2に示すように、比較例1の最大出力密度と比較して、実施例1および2の最大出力密度が高いことが確認された。つまり、実施例1,2は、触媒粒子6の担持された炭素粒子5に、高分子電解質7が選択的に吸着することで、発電時における出力が向上することが確認された。一方で、比較例1においては、親水性の炭素繊維8を使用したことにより、炭素繊維8に対する高分子電解質7の吸着が多くなり、結果として触媒粒子6の担持された炭素粒子5への高分子電解質7の吸着が少なくなった。したがって、発電おける出力が低下した。
また実施例1、2の触媒層においては、炭素繊維8近傍での高分子電解質7の原子比率を選択的に低くすることにより、空孔が発生し易くなって触媒層中の空隙率が増加し、排水性およびガス拡散性が向上した。
一方、比較例1の触媒層においては、炭素繊維8に対する高分子電解質7の吸着が多くなっていることにより、実施例1、2の触媒層に比べて空孔が発生しづらく、触媒層中の空隙率が増加せずに排水性およびガス拡散性の向上が見られなかった。
【0063】
このように、表1及び表2に示す評価結果から、実施例1および2の固体高分子形燃料電池用触媒層は、排水性およびガス拡散性が向上され、且つ発電時における出力を向上させることが可能であることが確認された。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によれば、触媒を担持した炭素粒子、高分子電解質、および炭素繊維を含む高分子形燃料電池用触媒層において、触媒層の断面をTEM-EDXによりC、Pt、Fの各原子比率を分析した結果、広視野分析結果と比較して、炭素繊維近傍の狭視野におけるPt、Fの原子比率が低く、炭素繊維から離れた狭視野におけるPt、Fの原子比率が高いことを特徴とする。これにより、排水性およびガス拡散性が向上し、且つ発電における出力が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、燃料電池の発電時における出力向上に顕著な効果を奏するものであるため、産業上の利用価値が高い。例えば、固体高分子形燃料電池への適用に極めて好適である。
【符号の説明】
【0066】
1 空気極側電極触媒層
2 燃料極側電極触媒層
3 高分子電解質膜
4 ガスケット
5 炭素粒子
6 触媒粒子
7 高分子電解質
8 炭素繊維
10 固体高分子形燃料電池
11 膜電極接合体
17A 燃料極側ガス拡散層
17C 空気極側ガス拡散層
18A 燃料極側セパレータ
18C 空気極側セパレータ
19A 燃料極側ガス流路
19C 空気極側ガス流路
50a 広視野分析エリア
50b 第一狭視野分析エリア
50c 第二狭視野分析エリア