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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】pn接合ダイオード
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/861 20060101AFI20240709BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20240709BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20240709BHJP
   H01L 29/24 20060101ALI20240709BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20240709BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H01L29/91 F
H01L29/91 H
H01L29/91 A
H01L29/91 C
H01L29/24
H01L21/28 301B
H01L29/44 S
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020069289
(22)【出願日】2020-04-07
(65)【公開番号】P2021166256
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(72)【発明者】
【氏名】加渡 幹尚
【審査官】戸川 匠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/155768(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/150451(WO,A1)
【文献】特開2019-036593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/861
H01L 29/868
H01L 21/329
H01L 29/24
H01L 21/28
H01L 29/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
p型NiO半導体とn型Ga半導体とが直接に接合されているpn接合ダイオードであって、
前記p型NiO半導体と前記n型Ga半導体との接合面の周縁部が、大気遮断部材によって被覆されており、
前記大気遮断部材は、p型半導体層側電極であり、
前記大気遮断部材は、前記p型NiO半導体層の面及び側面から前記n型Ga 半導体層との前記接合面の前記周縁部にわたって延在し、それによって前記周縁部全体を直接被覆している、
pn接合ダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、pn接合ダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1が開示するように、p型NiO半導体とn型Ga半導体とが直接に接合されているpn接合ダイオードが知られている。
【0003】
ここで、p型NiO半導体とは、酸化ニッケル単結晶単体であるp型半導体又は酸化ニッケル単結晶にドーパントをドープさせたp型半導体である。また、n型Ga半導体とは、酸化ガリウム単結晶単体であるn型半導体又は酸化ガリウム単結晶にドーパントをドープさせたn型半導体である。
【0004】
なお、ドーパントに関して、非特許文献1では、アクセプタとしてLiを、ドナーとしてSi及びSnを、それぞれ挙げている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Kokubun et al., “All-oxide p-n heterojunction diodes comprising p-type NiO and n-type β-Ga2O3”, Applied Physics Express, The Japan Society of Applied Physics, 2016, 9 09 1101
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
p型NiO半導体とn型Ga半導体直接とが直接に接合されているpn接合ダイオードは、約200℃の高温にさらされると、熱履歴によってダイオードの特性が変化して、抵抗率が低下するとの知見を、本発明者は得た。
【0007】
本開示は、抵抗率の低下が抑制された、p型NiO半導体とn型Ga半導体とが直接に接合されているpn接合ダイオードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、以下の手段により上記課題を達成することができることを見出した:
p型NiO半導体とn型Ga半導体とが直接に接合されているpn接合ダイオードであって、
前記p型NiO半導体と前記n型Ga半導体との接合面の周縁部が、大気遮断部材によって被覆されている、
pn接合ダイオード。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、抵抗率の低下が抑制された、p型NiO半導体とn型Ga半導体とが直接に接合されているpn接合ダイオードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の実施形態に従うpn接合ダイオード1の積層方向の断面図である。
図2図2は、本開示の実施形態とは異なるpn接合ダイオード1’の積層方向の断面図である。
図3図3は、実施例1のpn接合ダイオードの、熱処理なし、200℃処理後、及び400℃処理後における電圧(V)と電流密度(A/cm)との関係を示すグラフである。
図4図4は、比較例1のpn接合ダイオードの、熱処理なし、200℃処理後、及び400℃処理後における電圧(V)と電流密度(A/cm)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について詳述する。なお、本開示は、以下の実施の形態に限定されるのではなく、開示の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0012】
本開示のpn接合ダイオードは、p型NiO半導体とn型Ga半導体とが直接に接合されているpn接合ダイオードであって、上記p型NiO半導体と上記n型Ga半導体との接合面の周縁部が、大気遮断部材によって被覆されている、pn接合ダイオードである。
【0013】
本開示のpn接合ダイオードは、p型NiO半導体側にp型半導体側電極を、n型Ga半導体側にn型半導体側電極を更に有していることができる。
【0014】
本開示のpn接合ダイオードは、例えばp型半導体層側電極層、p型NiO半導体層、n型Ga半導体層、及びn型半導体層側電極層がこの順に積層された構成を有していることができる。この場合において、n型Ga半導体層は、p型NiO半導体層側から順に、n型Ga半導体エピタキシャル層及びn型Ga半導体基板層であってよい。なお、n型Ga半導体エピタキシャル層は、n型Ga半導体基板層上にGaをエピタキシャル成長させることによって形成された層である。
【0015】
図1は、本開示の実施形態に従うpn接合ダイオード1の積層方向の断面図である。
【0016】
図1に示すように、本開示の実施形態に従うpn接合ダイオード1は、p型半導体層側電極層10、p型NiO半導体層20、n型Ga半導体エピタキシャル層30、n型Ga半導体基板層40、及びn型半導体層側電極層50がこの順に積層された構造を有している。ここで、本開示の実施形態に従うpn接合ダイオード1では、p型半導体層側電極層10がp型NiO半導体層20の面からその側面を通ってn型Ga半導体エピタキシャル層30との接合部の周縁部60まで覆っている。すなわち、本開示の実施形態に従うpn接合ダイオード1では、p型半導体層側電極層10が大気遮断部材の役割を兼ねている。
【0017】
なお、図1は、本開示のpn接合ダイオードを限定する趣旨ではない。
【0018】
原理によって限定されるものではないが、本開示のpn接合ダイオードの抵抗率の低下が抑制される原理は、以下のとおりである。
【0019】
上記のとおり、p型NiO半導体とn型Ga半導体とが直接に接合されているpn接合ダイオードは、約200℃の高温にさらされると、熱履歴によってダイオードの特性が変化して、抵抗率が低下する。この理由は、高温条件においてp型NiO半導体とn型Ga半導体との接合面の周縁部分、すなわち大気に露出している部分が大気中の酸素と反応して欠陥が解消されることによると考えられる。
【0020】
より具体的には、図2に示すように、本開示の実施形態とは異なるpn接合ダイオード1’では、p型NiO半導体層20とn型Ga半導体エピタキシャル層30との接合面の周縁部60は露出しており、大気に曝されている。本開示の実施形態とは異なるpn接合ダイオード1’が約200℃の高温に曝されると、p型NiO半導体層20とn型Ga半導体エピタキシャル層30との接合面の周縁部60が大気中の酸素と反応して欠陥が解消される。これにより、pn接合ダイオード1’の特性が変化して、抵抗率が低下する。
【0021】
これに対して、本開示では、p型NiO半導体とn型Ga半導体との接合面の周縁部分を、酸素の透過率が低い大気遮断部材で被覆して、接合面の周縁部分の大気中の酸素への接触を抑制し、それによって接合面の周縁部分と大気中の酸素との反応を抑制している。これにより、本開示のpn接合ダイオードの抵抗率の低下が抑制される。
【0022】
より具体的には、例えば、図1に示すように、本開示の実施形態に従うpn接合ダイオード1では、p型NiO半導体層とn型Ga半導体層との接合面の周縁部60が、p型半導体層側電極層10によって被覆されており、p型NiO半導体層とn型Ga半導体層との接合面の周縁部60の大気中の酸素との接触が抑制されている。これにより、本開示の実施形態に従うpn接合ダイオード1の抵抗率の低下が抑制される。
【0023】
《p型NiO半導体》
p型NiO半導体は、酸化ニッケル単結晶単体であるp型半導体又は酸化ニッケル単結晶にドーパントをドープさせたp型半導体である。
【0024】
酸化ニッケル単結晶にドープされるドーパントとしては、公知のものを用いることができるが、例えばLiであってよい。
【0025】
p型NiO半導体は、例えばn型Ga半導体上に結晶成長させることで形成することができる。結晶成長は、例えばゾルーゲルスピンコーティング法や高周波スパッタリング等によって行うことができる。
【0026】
《n型Ga半導体》
n型Ga半導体は、酸化ガリウム単結晶単体であるn型半導体又は酸化ガリウム単結晶にドーパントをドープさせたn型半導体である。
【0027】
酸化ガリウム単結晶にドープされるドーパントとしては、半導体の製造に使用される公知のものを用いることができるが、例えばSi、Sn、Al、Be、Mg、及びFeからなる群より選択される少なくとも一つであってよい。
【0028】
n型Ga半導体は、任意の手法で作製した酸化ガリウム単結晶にドーパントをドープしたものを用いることができる。酸化ガリウム単結晶は、α-Ga単結晶、β-Ga単結晶、または他の結晶構造を有するGa単結晶であることができ、好ましくはβ-Ga単結晶である。
【0029】
酸化ガリウム単結晶へのドーパントのドープは、公知の方法、例えばイオン注入法によって行ってよい。
【0030】
また、n型Ga半導体は、n型Ga半導体基材上にn型Ga半導体エピタキシャル層が形成されたものであってよい。
【0031】
《大気遮断部材》
大気遮断部材は、p型NiO半導体とn型Ga半導体との接合面の周縁部を被覆することによって、当該周縁部を大気中の酸素から遮断するための部材である。
【0032】
大気遮断部材は、p型NiO半導体とn型Ga半導体との接合面の周縁部を被覆することができ、かつ約200℃の高温条件において安定な任意の材料であってよい。
【0033】
大気遮断部材の材料としては、例えば金属材料又はシリコン材料等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0034】
大気遮断部材は、例えばp型半導体層側電極を兼ねていてよく、この場合、p型NiO半導体上に配置されているp型半導体層側電極がp型NiO半導体の表面からp型NiO半導体とn型Ga半導体との接合部の周縁部にわたって延在している構成を挙げることができる。
【実施例
【0035】
《実施例1及び比較例1》
〈実施例1〉
以下のようにして、実施例1のpn接合ダイオードを作製した。
【0036】
n型Ga半導体層として、市販のβ-Ga単結晶基板を用意した。このβ-Ga単結晶基板は、主面が(001)面であり、主面上にGa単結晶のエピタキシャル層が形成されていた。なお、エピタキシャル層の厚さは9.6μmであり、エピタキシャル層におけるキャリアの密度は2.1×1016cm-3であった。また、基板の厚さは650μmであり、基板におけるキャリアの密度は5.0×1018cm-3であった。
【0037】
n型Ga半導体層のエピタキシャル層側に、高周波スパッタリングによってp型NiO半導体層を形成して、pn接合ダイオードを形成した。なお、高周波スパッタリングの条件は、出力が200W、成膜温度が室温、雰囲気が酸素、気圧が0.2Paであった。
【0038】
その後、n型Ga半導体層側に、n型半導体側電極層としてのTi/Al合金層を成膜し、成膜後に450℃でアニール処理を行った。
【0039】
また、形成したpn接合ダイオードのp型NiO半導体層側に、p型NiO半導体層の面及び側面からn型Ga半導体層のエピタキシャル層との接合面の周縁部全体を被覆するようにして、p型半導体側電極層としてのPt層を成膜した。
【0040】
〈比較例1〉
p型NiO半導体層の面のみを覆うようにしてPt層を製膜したことを除いて、実施例1と同様にして比較例1のpn接合ダイオードを作製した。
【0041】
〈熱耐久試験〉
実施例1及び比較例1のpn接合ダイオードについて、それぞれ熱処理なし、窒素雰囲気で200℃、5分間の熱処理を行った後、及び窒素雰囲気で400℃、5分間の熱処理を行った後における、順方向特性を比較した。
【0042】
なお、実施例1及び比較例1のpn接合ダイオードの順方向特性は、各例のpn接合ダイオードそれぞれについて、順方向バイアスをかけたときの電圧と電流密度との関係を測定することによって評価した。
【0043】
〈結果〉
実施例1及び比較例1のpn接合ダイオードの、熱処理なし、窒素雰囲気で200℃、5分間の熱処理を行った後、及び窒素雰囲気で400℃、5分間の熱処理を行った後における、順方向特性の評価結果を、図3及び4のグラフに示した。
【0044】
図3に示すように、実施例1のpn接合ダイオードでは、熱処理なしと熱処理後との間において順方向特性の変化はほとんど見られなかった。
【0045】
これに対して、図4に示すように、比較例1のpn接合ダイオードでは、熱処理なしの場合と比較して、熱処理後の場合では電圧(V)に対する電流密度(A/cm)が高くなっており、抵抗率が低下したことを示している。
【符号の説明】
【0046】
1及び1’ pn接合ダイオード
10 p型半導体層側電極層
20 p型NiO半導体層
30 n型Ga半導体エピタキシャル層
40 n型Ga半導体基板層
50 n型半導体層側電極層
60 p型NiO半導体層とn型Ga半導体層との接合面の周縁部
図1
図2
図3
図4