(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】液体吐出装置、その制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240709BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240709BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B41J2/165 207
B41J2/01 451
B41J2/17 207
B41J2/165 101
(21)【出願番号】P 2020080201
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒金 覚
(72)【発明者】
【氏名】飯田 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 真
(72)【発明者】
【氏名】中野 靖大
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-183740(JP,A)
【文献】特開2009-154297(JP,A)
【文献】特開2004-160803(JP,A)
【文献】特開2003-080702(JP,A)
【文献】特開2004-262010(JP,A)
【文献】特開2008-068596(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0274659(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルが開口する吐出面を有するヘッドと、
前記吐出面を覆うキャップと、
前記ヘッドから吐出された液体を受ける受け部と、
前記キャップが前記吐出面を覆うキャッピング位置と、前記キャップが前記吐出面から離間しているアンキャッピング位置との間で前記キャップを移動する移動装置と、
制御装置と、
前記吐出面に対向する位置に記録媒体を搬送する搬送装置と、
前記記録媒体を検出する記録媒体センサと、を備え、
前記制御装置は、
印刷データに基づいて前記ノズルから前記液体を吐出させる記録処理、前記印刷データに基づいて第1モード及び前記第1モードよりも処理速度が速い第2モードのうちいずれのモードにより前記記録処理を実行するかを判定する第1判定処理、前記キャップのアンキャッピング後で前記記録処理前に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる記録前フラッシング処理、前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる第1記録中フラッシング処理、及び、前記第1記録中フラッシング処理の後に実行され且つ前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる第2記録中フラッシング処理を実行し、
前記記録媒体センサの検出結果に基づいて前記記録媒体のジャムの発生及び解消を判定する第4判定処理を実行し、
前記第1判定処理により前記第2モードにて前記記録処理を実行すると判定した場合、前記記録前フラッシング処理と前記第1記録中フラッシング処理との間の第1フラッシング間隔を、前記第1記録中フラッシング処理と前記第2記録中フラッシング処理との間の第2フラッシング間隔よりも長くし、
前記記録処理の間、前記第1フラッシング間隔を、前記第4判定処理により前記ジャムが発生したと判定した場合、前記ジャムの解消後、前記ジャムの発生前よりも短くする、液体吐出装置。
【請求項2】
ノズルが開口する吐出面を有するヘッドと、
前記吐出面を覆うキャップと、
前記ヘッドから吐出された液体を受ける受け部と、
前記キャップが前記吐出面を覆うキャッピング位置と、前記キャップが前記吐出面から離間しているアンキャッピング位置との間で前記キャップを移動する移動装置と、
制御装置と、
前記液体の種類を検知する液体センサと、を備え、
前記制御装置は、
印刷データに基づいて前記ノズルから前記液体を吐出させる記録処理、前記印刷データに基づいて第1モード及び前記第1モードよりも処理速度が速い第2モードのうちいずれのモードにより前記記録処理を実行するかを判定する第1判定処理、前記キャップのアンキャッピング後で前記記録処理前に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる記録前フラッシング処理、前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる第1記録中フラッシング処理、及び、前記第1記録中フラッシング処理の後に実行され且つ前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる第2記録中フラッシング処理を実行し、
前記第1判定処理により前記第2モードにて前記記録処理を実行すると判定した場合、前記種類が所定種類であるかを判定する第2判定処理を実行し、
前記記録前フラッシング処理と前記第1記録中フラッシング処理との間の第1フラッシング間隔を、前記第2判定処理により前記種類が前記所定種類でないと判定した場合、前記第2判定処理により前記種類が前記所定種類であると判定した場合よりも短くする、液体吐出装置。
【請求項3】
ノズルが開口する吐出面を有するヘッドと、
前記吐出面を覆うキャップと、
前記ヘッドから吐出された液体を受ける受け部と、
前記キャップが前記吐出面を覆うキャッピング位置と、前記キャップが前記吐出面から離間しているアンキャッピング位置との間で前記キャップを移動する移動装置と、
制御装置と、
前記ヘッドの使用期間を計時するタイマと、を備え、
前記制御装置は、
印刷データに基づいて前記ノズルから前記液体を吐出させる記録処理、前記印刷データに基づいて第1モード及び前記第1モードよりも処理速度が速い第2モードのうちいずれのモードにより前記記録処理を実行するかを判定する第1判定処理、前記キャップのアンキャッピング後で前記記録処理前に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる記録前フラッシング処理、前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる第1記録中フラッシング処理、及び、前記第1記録中フラッシング処理の後に実行され且つ前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる第2記録中フラッシング処理を実行し、
前記第1判定処理により前記第2モードにて前記記録処理を実行すると判定した場合、前記使用期間が所定期間以上であるかを判定する第3判定処理を実行し、
前記記録前フラッシング処理と前記第1記録中フラッシング処理との間の第1フラッシング間隔を、前記第3判定処理により前記使用期間が前記所定期間以上であると判定した場合、前記第3判定処理により前記使用期間が前記所定期間未満であると判定した場合よりも短くする、液体吐出装置。
【請求項4】
前記液体の温度を検知する温度センサを備え、
前記制御装置は、
前記温度が所定温度以上であるかを判定する第5判定処理を実行し、
前記第1フラッシング間隔を、前記第5判定処理により前記温度が前記所定温度未満であると判定した場合、前記第5判定処理により前記温度が前記所定温度以上であると判定した場合よりも短くする、請求項1~3のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記液体吐出装置内の湿度を検知する湿度センサを備え、
前記制御装置は、
前記湿度が所定湿度以上であるかを判定する第6判定処理を実行し、
前記第1フラッシング間隔を、前記第6判定処理により前記湿度が前記所定湿度未満であると判定した場合、前記第6判定処理により前記湿度が前記所定湿度以上であると判定した場合よりも短くする、請求項1~4のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させ且つ前記第2記録中フラッシング処理の後に実行される第3記録中フラッシング処理を実行し、
前記第1判定処理により前記第2モードにて前記記録処理を実行すると判定した場合、前記第2記録中フラッシング処理と前記第3記録中フラッシング処理との間の第3フラッシング間隔を、前記第1記録中フラッシング処理と前記第2記録中フラッシング処理との間の第2フラッシング間隔よりも短くする、請求項1~5のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記液体の温度を検知する温度センサを備え、
前記制御装置は、
前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させ且つ前記第2記録中フラッシング処理の後に実行される第3記録中フラッシング処理を実行し、
前記温度が所定温度以上であるかを判定する第7判定処理を実行し、
前記第7判定処理により前記温度が前記所定温度未満であると判定した場合、前記第2記録中フラッシング処理と前記第3記録中フラッシング処理との間の第3フラッシング間隔を、前記第1記録中フラッシング処理と前記第2記録中フラッシング処理との間の第2フラッシング間隔よりも短くする、請求項1~4のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
ノズルが開口する吐出面を有するヘッドと、
前記吐出面を覆うキャップと、
前記ヘッドから吐出された液体を受ける受け部と、
前記キャップが前記吐出面を覆うキャッピング位置と、前記キャップが前記吐出面から離間しているアンキャッピング位置との間で前記キャップを移動する移動装置と、
制御装置と、
液体吐出装置内の湿度を検知する湿度センサと、を備え、
前記制御装置は、
印刷データに基づいて前記ノズルから前記液体を吐出させる記録処理、前記印刷データに基づいて第1モード及び前記第1モードよりも処理速度が速い第2モードのうちいずれのモードにより前記記録処理を実行するかを判定する第1判定処理、前記キャップのアンキャッピング後で前記記録処理前に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる記録前フラッシング処理、前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる第1記録中フラッシング処理、及び、前記第1記録中フラッシング処理の後に実行され且つ前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる第2記録中フラッシング処理を実行し、
前記第1判定処理により前記第2モードにて前記記録処理を実行すると判定した場合、前記記録前フラッシング処理と前記第1記録中フラッシング処理との間の第1フラッシング間隔を、前記第1記録中フラッシング処理と前記第2記録中フラッシング処理との間の第2フラッシング間隔よりも長くし、
前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させ且つ前記第2記録中フラッシング処理の後に実行される第3記録中フラッシング処理を実行し、
前記湿度が所定湿度以上であるかを判定する第8判定処理を実行し、
前記第8判定処理により前記湿度が前記所定湿度未満であると判定した場合、前記第2記録中フラッシング処理と前記第3記録中フラッシング処理との間の第3フラッシング間隔を、前記第2フラッシング間隔よりも短くする、液体吐出装置。
【請求項9】
ノズルが開口する吐出面を有するヘッドと、
前記吐出面を覆うキャップと、
前記ヘッドから吐出された液体を受ける受け部と、
前記キャップが前記吐出面を覆うキャッピング位置と、前記キャップが前記吐出面から離間しているアンキャッピング位置との間で前記キャップを移動する移動装置と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
印刷データに基づいて前記ノズルから前記液体を吐出させる記録処理、前記印刷データに基づいて第1モード及び前記第1モードよりも処理速度が速い第2モードのうちいずれのモードにより前記記録処理を実行するかを判定する第1判定処理、前記キャップのアンキャッピング後で前記記録処理前に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる記録前フラッシング処理、前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる第1記録中フラッシング処理、及び、前記第1記録中フラッシング処理の後に実行され且つ前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる第2記録中フラッシング処理を実行し、
前記第1判定処理により前記第2モードにて前記記録処理を実行すると判定した場合、前記記録前フラッシング処理と前記第1記録中フラッシング処理との間の第1フラッシング間隔を、前記第1記録中フラッシング処理と前記第2記録中フラッシング処理との間の第2フラッシング間隔よりも長くし、
前記記録処理をパス毎に実行し、
前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる複数の記録中フラッシング処理を実行し、
前記記録処理において前回の前記パスまでに前記ノズルから吐出された前記液体の吐出量が所定液量以上であるかを判定する第9判定処理を実行し、
前記第1判定処理により前記第2モードにて前記記録処理を実行すると判定し、且つ、前記第9判定処理により前記吐出量が前記所定液量以上であると判定した場合、前回記録中フラッシング処理と当該記録中フラッシング処理との間の前回フラッシング間隔を、前記当該記録中フラッシング処理と次回記録中フラッシング処理との間の次回フラッシング間隔よりも長くする、液体吐出装置。
【請求項10】
ノズルが開口する吐出面を有するヘッドと、
前記吐出面を覆うキャップと、
前記ヘッドから吐出された液体を受ける受け部と、
前記キャップが前記吐出面を覆うキャッピング位置と、前記キャップが前記吐出面から離間しているアンキャッピング位置との間で前記キャップを移動する移動装置と、
制御装置と、
前記ヘッドを走査方向に移動する走査装置と、を備え、
前記制御装置は、
印刷データに基づいて前記ノズルから前記液体を吐出させる記録処理、前記印刷データに基づいて第1モード及び前記第1モードよりも処理速度が速い第2モードのうちいずれのモードにより前記記録処理を実行するかを判定する第1判定処理、前記キャップのアンキャッピング後で前記記録処理前に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる記録前フラッシング処理、前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる第1記録中フラッシング処理、及び、前記第1記録中フラッシング処理の後に実行され且つ前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる第2記録中フラッシング処理を実行し、
前記第1判定処理により前記第2モードにて前記記録処理を実行すると判定した場合、前記記録前フラッシング処理と前記第1記録中フラッシング処理との間の第1フラッシング間隔を、前記第1記録中フラッシング処理と前記第2記録中フラッシング処理との間の第2フラッシング間隔よりも長くし、
前記第1記録中フラッシング処理及び前記第2記録中フラッシング処理において前記ノズルから前記液体を吐出させる吐出回数及び前記液体の吐出量を、前記ヘッドを移動しながら前記ノズルから吐出した前記液体が前記受け部にて受け止められる範囲内とする、液体吐出装置。
【請求項11】
ノズルが開口する吐出面を有するヘッドと、
前記吐出面を覆うキャップと、
前記ヘッドから吐出された液体を受ける受け部と、
前記キャップが前記吐出面を覆うキャッピング位置と、前記キャップが前記吐出面から離間しているアンキャッピング位置との間で前記キャップを移動する移動装置と、
制御装置と、
前記吐出面に対向する位置に記録媒体を搬送する搬送装置と、
前記記録媒体を検出する記録媒体センサと、
を備えた液体吐出装置の制御方法であって、
前記制御装置は、
印刷データに基づいて前記ノズルから前記液体を吐出させる記録処理、前記印刷データに基づいて第1モード及び前記第1モードよりも処理速度が速い第2モードのうちいずれのモードにより前記記録処理を実行するかを判定する第1判定処理、前記キャップのアンキャッピング後で前記記録処理前に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる記録前フラッシング処理、前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる第1記録中フラッシング処理、及び、前記第1記録中フラッシング処理の後に実行され且つ前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる第2記録中フラッシング処理を実行し、
前記記録媒体センサの検出結果に基づいて前記記録媒体のジャムの発生及び解消を判定する第4判定処理を実行し、
前記第1判定処理により前記第2モードにて前記記録処理を実行すると判定した場合、前記記録前フラッシング処理と前記第1記録中フラッシング処理との間の第1フラッシング間隔を、前記第1記録中フラッシング処理と前記第2記録中フラッシング処理との間の第2フラッシング間隔よりも長くし、
前記記録処理の間、前記第1フラッシング間隔を、前記第4判定処理により前記ジャムが発生したと判定した場合、前記ジャムの解消後、前記ジャムの発生前よりも短くする、液体吐出装置の制御方法。
【請求項12】
ノズルが開口する吐出面を有するヘッドと、
前記吐出面を覆うキャップと、
前記ヘッドから吐出された液体を受ける受け部と、
前記キャップが前記吐出面を覆うキャッピング位置と、前記キャップが前記吐出面から離間しているアンキャッピング位置との間で前記キャップを移動する移動装置と、
制御装置と、
前記吐出面に対向する位置に記録媒体を搬送する搬送装置と、
前記記録媒体を検出する記録媒体センサと、
を備えた液体吐出装置に、
印刷データに基づいて前記ノズルから前記液体を吐出させる記録処理、前記印刷データに基づいて第1モード及び前記第1モードよりも処理速度が速い第2モードのうちいずれのモードにより前記記録処理を実行するかを判定する第1判定処理、前記キャップのアンキャッピング後で前記記録処理前に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる記録前フラッシング処理、前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる第1記録中フラッシング処理、及び、前記第1記録中フラッシング処理の後に実行され且つ前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる第2記録中フラッシング処理を実行させ、
前記記録媒体センサの検出結果に基づいて前記記録媒体のジャムの発生及び解消を判定する第4判定処理を実行し、
前記第1判定処理により前記第2モードにて前記記録処理を実行すると判定した場合、前記記録前フラッシング処理と前記第1記録中フラッシング処理との間の第1フラッシング間隔を、前記第1記録中フラッシング処理と前記第2記録中フラッシング処理との間の第2フラッシング間隔よりも長くし、
前記記録処理の間、前記第1フラッシング間隔を、前記第4判定処理により前記ジャムが発生したと判定した場合、前記ジャムの解消後、前記ジャムの発生前よりも短くする、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、その制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液体吐出装置として、特許文献1のインクジェット式印刷装置が知られている。このインクジェット式印刷装置では、予備吐出工程を所定間隔で複数回実行する際に、予備吐出工程の間隔が段階的に短くなるように実行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記インクジェット式印刷装置のように、予備吐出工程の間隔を一律に短くすると、予備吐出工程の実施回数が増え、印刷時間が長くなってしまう。一方、予備吐出工程の間隔を長くすると、ノズル内の液体が乾燥し、印刷画質が低下してしまう。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、印刷画質と印刷時間とのバランスを取ることができる液体吐出装置、その制御方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る液体吐出装置は、ノズルが開口する吐出面を有するヘッドと、前記吐出面を覆うキャップと、前記ヘッドから吐出された液体を受ける受け部と、前記キャップが前記吐出面を覆うキャッピング位置と、前記キャップが前記吐出面から離間しているアンキャッピング位置との間で前記キャップを移動する移動装置と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、印刷データに基づいて前記ノズルから前記液体を吐出させる記録処理、前記印刷データに基づいて第1モード及び前記第1モードよりも処理速度が速い第2モードのうちいずれのモードにより前記記録処理を実行するかを判定する第1判定処理、前記キャップのアンキャッピング後で前記記録処理前に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる記録前フラッシング処理、前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる第1記録中フラッシング処理、及び、前記第1記録中フラッシング処理の後に実行され且つ前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる第2記録中フラッシング処理を実行し、前記第1判定処理により前記第2モードにて前記記録処理を実行すると判定した場合、前記記録前フラッシング処理と前記第1記録中フラッシング処理との間の第1フラッシング間隔を、前記第1記録中フラッシング処理と前記第2記録中フラッシング処理との間の第2フラッシング間隔よりも長くする。
【0007】
本発明のある態様に係る液体吐出装置の制御方法は、ノズルが開口する吐出面を有するヘッドと、前記吐出面を覆うキャップと、前記ヘッドから吐出された液体を受ける受け部と、前記キャップが前記吐出面を覆うキャッピング位置と、前記キャップが前記吐出面から離間しているアンキャッピング位置との間で前記キャップを移動する移動装置と、制御装置と、を備えた液体吐出装置の制御方法であって、前記制御装置は、印刷データに基づいて前記ノズルから前記液体を吐出させる記録処理、前記印刷データに基づいて第1モード及び前記第1モードよりも処理速度が速い第2モードのうちいずれのモードにより前記記録処理を実行するかを判定する第1判定処理、前記キャップのアンキャッピング後で前記記録処理前に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる記録前フラッシング処理、前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる第1記録中フラッシング処理、及び、前記第1記録中フラッシング処理の後に実行され且つ前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる第2記録中フラッシング処理を実行し、前記第1判定処理により前記第2モードにて前記記録処理を実行すると判定した場合、前記記録前フラッシング処理と前記第1記録中フラッシング処理との間の第1フラッシング間隔を、前記第1記録中フラッシング処理と前記第2記録中フラッシング処理との間の第2フラッシング間隔よりも長くする。
【0008】
本発明のある態様に係るプログラムは、ノズルが開口する吐出面を有するヘッドと、前記吐出面を覆うキャップと、前記ヘッドから吐出された液体を受ける受け部と、前記キャップが前記吐出面を覆うキャッピング位置と、前記キャップが前記吐出面から離間しているアンキャッピング位置との間で前記キャップを移動する移動装置と、制御装置と、を備えた液体吐出装置に、印刷データに基づいて前記ノズルから前記液体を吐出させる記録処理、前記印刷データに基づいて第1モード及び前記第1モードよりも処理速度が速い第2モードのうちいずれのモードにより前記記録処理を実行するかを判定する第1判定処理、前記キャップのアンキャッピング後で前記記録処理前に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる記録前フラッシング処理、前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる第1記録中フラッシング処理、及び、前記第1記録中フラッシング処理の後に実行され且つ前記記録処理中に前記ノズルから前記液体を前記受け部に吐出させる第2記録中フラッシング処理を実行させ、前記第1判定処理により前記第2モードにて前記記録処理を実行すると判定した場合、前記記録前フラッシング処理と前記第1記録中フラッシング処理との間の第1フラッシング間隔を、前記第1記録中フラッシング処理と前記第2記録中フラッシング処理との間の第2フラッシング間隔よりも長くする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上に説明した構成を有し、液体の増粘による吐出不良を抑制しつつ、印刷の高速化を実現することができる液体吐出装置、その制御方法及びプログラムを提供することができるという効果を奏する。
【0010】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る液体吐出装置を上方から視た概略図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1のヘッドを概略的に示す断面図である。
図2(b)は、
図1の受け部を前方から視た概略図である。
【
図3】
図1の液体吐出装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】
図4(a)は、印刷処理を示す図である。
図4(b)は、第1パターンのフラッシング間隔を示す図である。
図4(c)は、第2パターンのフラッシング間隔を示す図である。
【
図5】
図1の液体吐出装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施の形態2に係る液体吐出装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の実施の形態3に係る液体吐出装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施の形態4に係る液体吐出装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の実施の形態5に係る液体吐出装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の実施の形態6に係る液体吐出装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の実施の形態7に係る液体吐出装置における第3パターンのフラッシング間隔を示す図である。
【
図12】本発明の実施の形態8に係る液体吐出装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の実施の形態9に係る液体吐出装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0013】
[実施の形態1]
<液体吐出装置の構成>
本発明の実施の形態1に係る液体吐出装置10は、
図1に示すように、インク等の液体を記録媒体Mに吐出する装置であって、例えば、インクジェットプリンタである。液体吐出装置10は、シリアルヘッド方式が採用され、筐体11、ヘッドユニット12、プラテン13、搬送装置14、走査装置15、貯留タンク16、受け部17、メンテナンスユニット18及び制御装置20を備えている。
【0014】
なお、プラテン13よりもヘッドユニット12側を上と称し、その反対側を下と称する。また、搬送装置14により記録媒体Mを搬送する方向(搬送方向)を後と称し、その反対側を前と称する。走査装置15によりヘッドユニット12を移動する方向(走査方向)を左右方向と称する。この走査方向は、搬送方向に交差(例えば、直交)する。但し、液体吐出装置10の配置方向はこれに限定されない。また、制御装置20の詳細については後述する。
【0015】
筐体11は、液体吐出装置10の各部を収容している。筐体11内において、左右方向にフラッシング領域A、記録領域B及びメンテナンス領域Cが設けられている。フラッシング領域Aは記録領域Bに対して左右方向の一方側(左側)に配置され、メンテナンス領域Cは記録領域Bに対して左右方向の他方側(右側)に配置されている。記録領域Bは、左右方向においてフラッシング領域Aとメンテナンス領域Cとの間に配置され、フラッシング領域A及びメンテナンス領域Cのそれぞれの領域に隣接している。
【0016】
ヘッドユニット12は、キャリッジ12a及びヘッド30を有している。ヘッド30は、キャリッジ12aに搭載されており、キャリッジ12aと共に左右方向において往復移動する。
【0017】
ヘッド30は、ノズル31、駆動素子32(
図2(a))及び流路形成体33(
図2(a))を有している。流路形成体33は、液体流路が内部に形成され、流路形成体33の下面(吐出面33a)に液体流路のノズル31が開口している。複数のノズル31は、前後方向に並んで、複数(例えば、4列)のノズル列を構成している。駆動素子32が駆動されて、液体流路の容積を変更することにより、ノズル31の開口のメニスカスが振動し、液体の粒(液滴)が吐出される。これにより、記録媒体Mに画像が記録される。つまり、ヘッド30は、液体を吐出するためのノズル31を有している。ヘッド30の詳細については後述する。
【0018】
プラテン13は、記録領域Bに配置され、平板部材であり、その上面に記録媒体Mが配置される。プラテン13は、記録媒体Mと、これに対向して設けられるヘッド30の吐出面33aとの間の距離を決める。
【0019】
搬送装置14は、例えば、2本の搬送ローラ14a、及び、搬送モータ14b(
図3)を有する。2本の搬送ローラ14aは、前後方向においてプラテン13を挟み、回転軸が左右方向に延びるように互いに平行に配置されている。搬送ローラ14aは、搬送モータ14bに連結されており、搬送モータ14bの駆動によって回転し、記録媒体Mをプラテン13上において後方に搬送する。
【0020】
走査装置15は、例えば、2本のガイドレール15a、走査モータ15b(
図3)、無端ベルト等を有している。ガイドレール15aは、フラッシング領域Aとメンテナンス領域Cとの間に亘って左右方向に延びている。ヘッドユニット12のキャリッジ12aは、2本のガイドレール15aに支持され、無端ベルトに固定されている。無端ベルトは、走査モータ15bにプーリを介して連結されており、走査モータ15bの駆動に応じて走行する。これにより、キャリッジ12aはガイドレール15aに沿って左右方向に往復移動し、ヘッド30は記録領域Bを介してフラッシング領域Aとメンテナンス領域Cとの間を移動する。
【0021】
貯留タンク16は、例えば、筐体11に脱着可能なカートリッジであり、液体の種類ごとに設けられている。例えば、4つの貯留タンク16があり、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの液体をそれぞれ貯留している。各貯留タンク16は、ヘッド30の液体流路にチューブ16aによって接続され、対応するノズル列のノズル31に液体を供給する。
【0022】
受け部17は、フラッシング領域Aに配置されており、フラッシング処理によってヘッド30から吐出された液体を受ける。受け部17の詳細については後述する。
【0023】
メンテナンスユニット18は、メンテナンス領域Cに配置されており、キャップ18a及び移動装置18b(
図3)を有している。キャップ18aは、例えば、凹部を有し上側に開口した直方体形状である。移動装置18bは、キャップ18aが吐出面33aを覆うキャッピング位置と、キャップ18aが吐出面33aから離間しているアンキャッピング位置との間でキャップ18aを移動する。移動装置18bは、例えば、モータ等を含み、キャップ18aをキャッピング位置とアンキャッピング位置との間で上下動させる。
【0024】
アンキャッピング位置は、例えば、キャッピングよりも下方に位置し、キャップ18aが吐出面33aから離れて吐出面33aを露出し、キャップ18aの開口がメンテナンス領域Cに配置されたヘッド30の吐出面33aと対向する。そして、キャッピング位置にて、キャップ18aが吐出面33aに接近して吐出面33aを覆い、吐出面33aにおけるノズル31の開口から液体が乾燥することを防止することができる。
【0025】
<ヘッドの構成>
ヘッド30は、
図2に示すように、駆動素子32、流路形成体33及び振動板34を有している。流路形成体33は複数のプレートの積層体であり、各プレートには大小様々な孔及び溝が形成されている。各プレートが積層された積層体において、孔及び溝が組み合わされて、複数の液体流路が形成される。この液体流路は、複数のノズル31、及び、ノズル31に液体を供給する供給路を有している。この供給路は、複数の個別流路35及びマニホールド36を含んでいる。
【0026】
ノズル31は、流路形成体33の吐出面33aに開口している。マニホールド36は、前後方向に延びて、その端に供給口を有している。供給口がチューブ16a(
図1)等により貯留タンク16(
図1)に接続されている。個別流路35は、マニホールド36からノズル31に至り、この間に絞り流路35a、圧力室35b及び連通路35cを有し、これらはこの順に接続されている。つまり、圧力室35bは、ノズル31に連通している。
【0027】
このような構成において、液体は貯留タンク16からチューブ16a等を通り、供給口を介してマニホールド36に流入する。液体がマニホールド36を流れている間に、複数の個別流路35のそれぞれに流入する。個別流路35において、液体は絞り流路35a、圧力室35b及び連通路35cをこの順で流れ、ノズル31に供給される。
【0028】
振動板34は、流路形成体33上に配置され、圧力室35bの上側開口を覆っている。駆動素子32は、例えば、圧電素子であって、圧力室35b上の振動板34に配置され、制御装置20(
図1)に接続されている。駆動素子32は、制御装置20からの駆動信号が印加されると伸縮する。これに応じて、振動板34は変形して圧力室35bの容積を変更する。これにより、圧力室35bの液体に圧力が付与され、ノズル31から液体が吐出される。
【0029】
<受け部の構成>
受け部17は、
図2(b)に示すように、例えば、吸収体17a及びガイド17bを有している。吸収体17a及びガイド17bは左右方向に並べられ、ガイド17bが吸収体17aよりも記録領域Bの近く(右側)に配置されている。左右方向において、吸収体17a及びガイド17bの寸法は、複数のノズル31の形成範囲の長さと同じ又はそれよりも長い。吸収体17aは、例えば、液体を吸収する多孔質体で形成されており、上方が開口する容器に収容されていてもよい。なお、受け部17は吸収体17a及びガイド17bのいずれか一方であってもよい。また、吸収体17aに代えて、受け部17は、上方が開口した容器を有していてもよい。
【0030】
ガイド17bは、例えば、平板を曲げた形状を有しており、前後方向に延び、下端から途中までの下部が鉛直方向に延在して、途中から上端までの上部が上に向かって記録領域B側(右側)に傾斜している。このため、ガイド17bの上部のうち、吸収体17a側(左側)の傾斜面は、上に向かって吸収体17aとの間隔が広がるように、ヘッド30の吐出面33aに対して傾斜している。この傾斜面は、一定の角度で傾斜する平坦面であってもよいし、湾曲する曲面であってもよい。また、傾斜面は、フッ素コーティング等がコーティングされており、撥水性を有している。
【0031】
ガイド17bの下方には廃棄タンク19が配置されている。ガイド17bの下部は、廃棄タンク19内に延びている。フラッシング処理により吐出面33aのノズル31から吐出された液体は、吸収体17aに着弾して吸収されたり、ガイド17bの傾斜面に着弾して、傾斜面を滑落し廃液タンクに収容されたりする。
【0032】
<制御装置の構成>
制御装置20は、
図3に示すように、演算処理部21、記憶部22及び波形生成部23を有している。制御装置20は、コンピュータ及びネットワーク等の外部装置Eに接続され、外部装置Eから印刷データ等の各種データを受信する。印刷データは、記録媒体Mに画像を印刷するためのデータを含んでいる。
【0033】
記憶部22は、演算処理部21にアクセス可能であって、RAM及びROM等により構成されている。RAMは、各種データを一時的に記憶する。この各種データとしては、印刷データ、及び、演算処理部21により変換されたデータが例示される。ROMは、各種データ処理を行うためのプログラムを記憶している。なお、プログラムは、外部装置Eから取得されたものであってもよく、また、他の記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0034】
演算処理部21は、CPU等のプロセッサ、及び、ASIC等の集積回路等により構成されている。演算処理部21は、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより、駆動素子32、走査モータ15b、搬送モータ14b及び移動装置18bを制御して、各種処理を行う。例えば、制御装置20は、印刷処理、記録処理、第1判定処理及びフラッシング処理(記録前フラッシング処理、第1記録中フラッシング処理、第2記録中フラッシング処理)を実行する。これらの処理については後述する。
【0035】
波形生成部23は、駆動素子32に出力される駆動信号の波形を規定する波形信号を生成する。波形生成部23は、専用の回路であってもよく、演算処理部21及び記憶部22により構成されていてもよい。波形信号は、例えば、パルス信号であって、ノズル31から吐出される液滴の量が異なる複数種類の波形信号を含んでいる。複数種類の波形信号は、ノズル31から液体を吐出する吐出波形信号、及び、液滴を吐出しないようにノズル31の開口のメニスカスを振動させる非吐出波形信号を有している。この吐出波形信号は、例えば、所定量(中玉)の液滴を吐出させる中玉波形信号、所定量よりも少ない量(小玉)の液滴を吐出させる小玉波形信号、及び、所定量よりも多い量(大玉)の液滴を吐出させる大玉波形信号を含んでいる。
【0036】
演算処理部21は、印刷データに基づいて、複数種類の波形信号から1種類の波形信号を、ノズル31毎及び駆動周期毎に選択し、波形選択データを生成する。この際、演算処理部21は、印刷データに基づいた1滴ごとの液滴量に応じて、印字用波形選択データを生成する。
【0037】
また、演算処理部21は、フラッシング処理のためにフラッシング用波形選択データを生成する。このフラッシング用波形選択データにより、所定の吐出波形信号、例えば、液滴の吐出量が最も多い大玉波形信号が選択される。なお、吐出波形信号に、印字用波形信号よりも吐出量が多いフラッシング用波形信号がさらに含まれており、フラッシング用波形選択データによってこのフラッシング用波形信号が選択されてもよい。
【0038】
制御装置20はヘッド駆動回路37に接続され、ヘッド駆動回路37は駆動素子32に接続されている。このため、制御装置20は波形信号及び波形選択データをヘッド駆動回路37に出力する。ヘッド駆動回路37は、波形信号及び選択データから駆動素子32の駆動信号に変換し、駆動信号を駆動素子32に出力する。
【0039】
これにより、駆動素子32が駆動信号に応じて駆動して、液体流路の圧力室35bの容積が変更し、圧力室35bの液体に圧力が付与される。これにより、非吐出駆動信号によって、圧力室35bに連通するノズル31から液体が吐出しないようにノズル31の開口におけるメニスカスが振動する。また、フラッシング用波形選択データに基づいた駆動信号によって、最大量の液滴がノズル31から吐出される。さらに、印字用波形選択データに基づいた駆動信号によって、印刷データに応じた量の液滴がノズル31から吐出される。
【0040】
また、制御装置20は、走査駆動回路15cを介して走査モータ15bに接続され、搬送駆動回路14cを介して搬送モータ14bに接続されている。制御装置20は、印刷データに基づいて走査駆動回路15cによって走査モータ15bの駆動を制御する。制御装置20は、印刷データに基づいて搬送駆動回路14cによって搬送モータ14bの駆動を制御する。これにより、走査モータ15b及び搬送モータ14bの駆動タイミング、回転速度、回転量等が制御される。
【0041】
さらに、制御装置20はメンテナンス駆動回路18cを介して移動装置18bに接続されている。制御装置20が、印刷データの取得による印刷指令に応じてメンテナンス駆動回路18cによって移動装置18bの駆動を制御する。これにより、印刷処理が開始すると、移動装置18bはキャップ18aをキャッピング位置からアンキャッピング位置に移動させる。また、印刷処理が終了すると、移動装置18bはキャップ18aをアンキャッピング位置からキャッピング位置に移動させる。
【0042】
<印刷処理>
制御装置20は印刷データを取得すると、印刷処理が開始する。印刷処理では、印刷データに基づいて、ヘッド30を左右方向に移動する走査動作、ノズル31から液体を吐出する吐出動作、記録媒体Mを後方に所定距離毎に搬送する搬送動作、第1判定処理、及び、フラッシング処理が行われる。さらに、印刷処理では、走査動作と共に吐出動作を行う記録処理が行われる。この記録処理と搬送処理とが交互に繰り返されて、記録媒体Mに画像が記録され、印刷処理が進んでいく。
【0043】
例えば、
図4(a)に示すように、メンテナンス領域Cにてヘッド30のアンキャッピングUが行われると、ヘッド30はメンテナンス領域Cからフラッシング領域Aに向かって記録領域Bを左側へ移動する、復路移動が行われる。続いて、ヘッド30がフラッシング領域Aにおいて左側へ移動しながら減速し、フラッシング領域Aの左端にて折り返し、ヘッド30がフラッシング領域Aを右側に移動しながら加速する。この減速及び加速の走査動作中に、搬送動作が行われる。
【0044】
加速中には、ヘッド30が受け部17上を移動し、この間に記録前フラッシング処理が実行される。ここで、制御装置20はクロック信号等に基づいて記録前フラッシング処理からの経過時間を計測する。また、印刷処理が開始してから記録処理が開始するまでの間に、印刷データに基づいて第1判定処理が実行され、この判定結果に応じてフラッシング間隔が設定される。
【0045】
この記録前フラッシング処理に続いて、ヘッド30がフラッシング領域Aからメンテナンス領域Cに向かって記録領域Bを右側へ移動しながら、印刷データに基づいて吐出動作を行う、記録処理(往路記録処理)が行われる。そして、ヘッド30がメンテナンス領域Cにおいて右側へ移動しながら減速し、メンテナンス領域Cの右端にて折り返し、ヘッド30がメンテナンス領域Cを左側に移動しながら加速する。この減速及び加速の走査動作中に、搬送動作が行われる。
【0046】
さらに、ヘッド30がメンテナンス領域Cからフラッシング領域Aに向かって記録領域Bを左側へ移動しながら、印刷データに基づいて吐出動作を行う、記録処理(復路記録処理)が行われる。そして、ヘッド30がフラッシング領域Aに達すると、フラッシング処理が可能であるため、記録前フラッシング処理からの経過時間がフラッシング間隔に到達しているか否かを判定する。そして、経過時間がフラッシング間隔に到達していれば、ヘッド30がフラッシング領域Aを右側に移動しながら加速する間に、記録中フラッシング処理を実行する。そして、制御装置20は記録中フラッシング処理からの経過時間を計測する。
【0047】
このような実行したフラッシング処理からの経過時間の計測、及び、経過時間がフラッシング間隔に達したか否かの判定は、ヘッド30がフラッシング領域Aに達する毎に判定される。なお、往復記録処理及び復路記録処理を1パスとするため、パス毎に経過時間の計測及び判定が行われる。また、フラッシング処理は、メンテナンス領域Cにおいてヘッド30が減速している間に実行されてもよい。
【0048】
<記録処理、第1判定処理>
制御装置20は、印刷データに基づいてノズル31から液体を吐出させる記録処理を実行する。また、制御装置20は、印刷データに基づいて第1モード及び第1モードよりも処理速度が速い第2モードのうちいずれのモードにより記録処理を実行するかを判定する第1判定処理を実行する。
【0049】
例えば、第1モードは、第2モードよりも画質を優先する高画質印刷モードであり、第2モードよりも印刷速度が遅い。第2モードは、第1モードよりも印刷速度を優先する高速印刷モードであり、第1モードよりも印刷速度が速い。このため、制御装置20は、ヘッド30の移動速度が第1モードの記録処理よりも第2モードの記録処理で速くなるように、走査駆動回路15cによりヘッド30の移動速度を制御する。
【0050】
また、印刷データは印刷条件を含んでおり、制御装置20はこの印刷条件に基づいて第1判定処理を実行する。例えば、印刷条件は、ユーザが入力装置を用いて制御装置20に入力した印刷モードであってもよい。この場合、制御装置20は、印刷条件が高画質印刷モードであれば、記録処理のモードを第1モードと判定する。また、制御装置20は、印刷条件が高速印刷モードであれば、記録処理のモードを第2モードと判定する。
【0051】
また、印刷条件は、記録媒体Mの種類であってもよい。この種類としては、例えば、PPC用紙等の標準紙、並びに、印刷された画像の再現性が標準紙よりも良い上質紙及び光沢紙などの高画質紙がある。この種類は、ユーザが入力装置を用いて制御装置20に入力した情報であってもよいし、液体吐出装置10に備えられたセンサにより検知されて制御装置20に入力された情報であってもよい。制御装置20は、種類が高画質紙であれば、記録処理のモードを第1モードと判定する。制御装置20は、種類が標準紙であれば、記録処理のモードを第2モードと判定する。
【0052】
<フラッシング処理>
制御装置20は、キャップ18aのアンキャッピング後で記録処理前にノズル31から液体を受け部17に吐出させる記録前フラッシング処理を実行する。制御装置20は、記録処理中にノズル31から液体を受け部17に吐出させる第1記録中フラッシング処理を実行する。制御装置20は、第1記録中フラッシング処理の後に実行され且つ記録処理中にノズル31から液体を受け部17に吐出させる第2記録中フラッシング処理を実行する。制御装置20は、第1判定処理により第2モードにて記録処理を実行すると判定した場合、記録前フラッシング処理と第1記録中フラッシング処理との間の第1フラッシング間隔を、第1記録中フラッシング処理と第2記録中フラッシング処理との間の第2フラッシング間隔よりも長くする。
【0053】
具体的には、フラッシング処理では、制御装置20はヘッド30をフラッシング領域Aにおいて移動している間に、ノズル31から吐出された液体が受け部17に入るように駆動素子32を駆動する。この駆動素子32の駆動によって、ノズル31の液体に圧力が付与されて、液体がノズル31から吐出され受け部17に入る。この1回のフラッシング処理にて、液体の吐出動作が所定回数(例えば、50回)、行われる。このように、フラッシング処理によってノズル31から液体が吐出されるため、増粘液体による吐出不良を低減することができる。
【0054】
フラッシング処理は、印刷処理中に行われ、記録前フラッシング処理及び記録中フラッシング処理を有している。
図4(a)~
図4(c)に示すように、印刷処理は、その開始から終了までの間に、複数の記録処理を有している。記録前フラッシング処理F0は、キャップ18aのアンキャッピングU後であって、複数の記録処理のうち最初の記録処理の開始S前に行われる。記録中フラッシング処理は、複数の記録処理のうちの連続する2つの記録処理の間(記録中)に行われ、第1記録中フラッシング処理F1及び第2記録中フラッシング処理F2を含んでいる。第1記録中フラッシング処理F1は記録前フラッシング処理F0に続いて行われ、第2記録中フラッシング処理F2は第1記録中フラッシング処理F1に続いて行われる。
【0055】
このため、記録前フラッシング処理F0、第1記録中フラッシング処理F1及び第2記録中フラッシング処理F2はこの順で連続的に行われる。記録前フラッシング処理F0と第1記録中フラッシング処理F1との間の第1フラッシング間隔I1、及び、第1記録中フラッシング処理F1と第2記録中フラッシング処理F2との間の第2フラッシング間隔I2には、記録処理が行われる。
【0056】
図4(b)に示すように、第1モードの記録処理には第1パターンのフラッシング間隔が用いられる。第1パターンのフラッシング間隔では、第1フラッシング間隔I1と、第2フラッシング間隔I2とは、互いに等しい。例えば、第n-1記録中フラッシング処理Fn-1と第n記録中フラッシング処理Fnとの間の第nフラッシング間隔Inは、第1フラッシング間隔I1に等しい。このnは2以上の整数である。
図4(b)の例では、1ページ目から3ページ目までの全ての印刷処理において、記録中フラッシング処理が等間隔(例えば、10秒)で行われる。
【0057】
図4(c)に示すように、第2モードの記録処理には第2パターンのフラッシング間隔が用いられる。第2パターンのフラッシング間隔では、第1フラッシング間隔I1は第2フラッシング間隔I2よりも長い。例えば、第2フラッシング間隔I2以降の第nフラッシング間隔Inは、互いに等しいが、第1フラッシング間隔I1よりも短い。また、第2パターンの第1フラッシング間隔I1は、第1パターンの第1フラッシング間隔I1よりも長い。例えば、第1フラッシング間隔I1は60秒であって、第nフラッシング間隔Inは10秒である。
図4(c)の例では、記録前フラッシング処理F0から60秒の間に、印刷中フラッシング処理を実行せずに、1ページ目から3ページ目まで記録処理にて画像を記録し、3ページ目の記録処理中に第1記録中フラッシング処理F1が実行され、それから10毎に第n記録中フラッシング処理が実行される。
【0058】
<液体吐出装置の制御方法>
図5に示す制御装置20が印刷データを取得する前には、ヘッド30はメンテナンス領域Cに配置されており、キャップ18aはキャッピング位置に配置されている。このため、吐出面33aがキャップ18aにより覆われ、吐出面33aに開口するノズル31内の液体の乾燥が防止されている。
【0059】
制御装置20は、印刷データを取得すると(ステップS1)、印刷処理を開始する。このため、制御装置20は、移動装置18bによってキャップ18aをキャッピング位置からアンキャッピング位置に下降させる。これにより、キャップ18aのアンキャッピングが行われ(ステップS2)、吐出面33aが露出する。
【0060】
そして、制御装置20は、復路移動によりヘッド30をフラッシング領域Aに移動させる。このフラッシング領域Aにて、制御装置20は、駆動素子32により記録前フラッシング処理F0を実行する(ステップS3)。これにより、ノズル31から液体が吐出されて、増粘液体による吐出不良を低減することができる。また、制御装置20は、記録前フラッシング処理F0からの経過時間を計時する。
【0061】
続いて、制御装置20は、第1判定処理を実行する(ステップS4)。この第1判定処理の結果、記録処理のモードが第1モードであれば(ステップS5:YES)、制御装置20は、第1パターンのフラッシング間隔を選択する(ステップS6)。そして、制御装置20は、記録処理及び搬送処理を実行する(ステップS7)。
【0062】
制御装置20は、これらの処理を実行している間に、ヘッド30が記録領域Bからメンテナンス領域Cに至る際に、記録前フラッシング処理F0からの経過時間が、第1パターンの第1フラッシング間隔I1以上であるか否かを判定する(ステップS8)。ここで、制御装置20は、経過時間が第1フラッシング間隔I1未満であれば(ステップS8:NO)、記録処理及び搬送処理の実行を継続する(ステップS7)。一方、制御装置20は、経過時間が第1フラッシング間隔I1以上であれば(ステップS8:YES)、第1記録中フラッシング処理を実行する(ステップS9)。
【0063】
これにより、記録処理及び搬送処理中にノズル31内の液体が乾燥しても、第1記録中フラッシング処理により液体をノズル31から吐出するため、増粘液体による吐出不良を低減することができる。また、第1パターンの第1フラッシング間隔I1は第2パターンよりも短いため、第1モードの印刷処理時間は第2モードよりも長くなる。しかしながら、第1モードの記録中フラッシング処理の回数は第2モードよりも多くなり、印刷中フラッシング処理によって増粘液体による吐出不良を低減することができるため、高画質を重視する第1モードの趣旨に沿った印刷が可能になる。
【0064】
また、制御装置20は、第1記録中フラッシング処理F1からの経過時間を計時する。そして、制御装置20は、全パスについて記録処理が実行されていなければ、ステップS7の処理に戻り、残りのパスについてステップS7からステップS10の処理を繰り返す。
【0065】
ここで、制御装置20は、記録中フラッシング処理を実行すると、この記録中フラッシング処理からの経過時間を計測する。制御装置20は、ヘッド30がメンテナンス領域Cに達する度に、前回の記録中フラッシング処理からの経過時間が、第1パターンの第nフラッシング間隔In以上であるか否かを判定する(ステップS8)。制御装置20は、経過時間が第nフラッシング間隔In以上であれば(ステップS8:YES)、第n+1記録中フラッシング処理を実行する(ステップS9)。そして、制御装置20は、全パスについて記録処理が実行されていれば(ステップS10:YES)、印刷処理を終了する。
【0066】
一方、ステップS4の第1判定処理の結果、記録処理のモードが第2モードであれば(ステップS5:NO)、制御装置20は、第2パターンの第1フラッシング間隔I1を選択する(ステップS11)。この第2パターンの第1フラッシング間隔I1は、第1パターンの第1フラッシング間隔I1及び第2パターンの第2フラッシング間隔I2よりも長い。そして、ステップS7以降の処理を実行する。このように、第2パターンでは第1フラッシング間隔I1を第2フラッシング間隔I2よりも長くすることにより、印刷中フラッシング処理の回数及び時間を減らせるため、印刷速度が速い第2モードの趣旨に沿って高速印刷が可能になる。また、印刷中フラッシング処理によって増粘液体による吐出不良を低減することができる。
【0067】
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2に係る液体吐出装置10は、実施の形態1において、
図3に示すように、液体の種類を検知する液体センサ40を備えている。制御装置20は、種類が所定種類であるかを判定する第2判定処理を実行する。制御装置20は、第1フラッシング間隔を、第2判定処理により種類が所定種類でないと判定した場合、第2判定処理により種類が所定種類であると判定した場合よりも短くする。
【0068】
具体的には、液体センサ40は、液体の種類を直接的又は間接的に検出するセンサであって、制御装置20に接続されており、検出情報を制御装置20に出力する。以下では、液体の種類を間接的に検出する液体センサ40について説明するが、液体の種類を直接的に検出する液体センサ40を第2判定処理に用いてもよい。
【0069】
液体センサ40には、例えば、貯留タンク16の種類を識別する識別センサが用いられる。この場合、貯留タンク16にはIDタグが取り付けられている。IDタグは、RFIDタグ等のパッシブ型ICタグであって、貯留タンク16の識別情報が予め記録されている。液体センサ40は、RFIDリーダ等のIDリーダであって、IDタグから読み取った貯留タンク16の識別情報を制御装置20に出力する。
【0070】
第2判定処理において、制御装置20は、液体センサ40から出力された情報が、記憶部22に予め記憶されている所定の識別情報である場合、その貯留タンク16に貯留されている液体は所定種類の液体であると判定する。一方、制御装置20は、液体センサ40から出力された情報が所定の識別情報でない場合、その貯留タンク16に貯留されている液体は所定種類の液体でないと判定する。
【0071】
また、液体センサ40に、貯留タンク16の液量を検出する液量センサが用いられてもよい。液量センサは、貯留タンク16内の液量を検出し、検出液量を制御装置20に出力する。第2判定処理において、制御装置20は、検出液量に基づいて、貯留タンク16の交換がなく、貯留タンク16の液量が増えている場合、貯留タンク16に液体が追加されたとして、貯留タンク16に貯留されている液体は所定種類の液体でないと判定する。一方、制御装置20は、検出液量に基づいて、貯留タンク16の交換がなく、貯留タンク16の液量が増えていない場合、貯留タンク16に貯留されている液体は所定種類の液体であると判定する。
【0072】
図6に示す液体吐出装置10の制御方法のフローチャートでは、制御装置20は、
図5に示すフローチャートにおけるステップS5とステップS11との間に、ステップS12及びS13の処理を実行する。ステップS12では、制御装置20は、第1判定処理により第2モードにて記録処理を実行すると判定した場合(ステップS5:NO)、液体の第2判定処理を実行する。
【0073】
ステップS13では、制御装置20は、第2判定処理により液体の種類が所定種類であると判定されると(ステップS13:YES)、第2パターンのフラッシング間隔を選択する(ステップS11)。一方、制御装置20は、第2判定処理により液体の種類が所定種類でないと判定されると(ステップS13:NO)、第1パターンのフラッシング間隔を選択する(ステップS6)。この第2パターンの第1フラッシング間隔I1は、第1パターンの第1フラッシング間隔I1及び第2パターンの第2フラッシング間隔I2よりも長い。
【0074】
このように、所定種類の液体では、液体の蒸発率等がわかっている。このため、第1フラッシング間隔が長い第2パターンを選択しても、液体が想定以上に乾燥して吐出不良になる事態を回避することができる。これに対し、所定種類の液体でない場合には、液体が想定以上に乾燥して吐出不良になる可能性があるため、第1フラッシング間隔が第2パターンよりも短い第1パターンを選択する。これにより、増粘液体による吐出不良を低減することができる。
【0075】
[実施の形態3]
本発明の実施の形態3に係る液体吐出装置10は、実施の形態1又は2において、
図3に示すように、ヘッド30の使用期間を計時するタイマ41を備えている。制御装置20は、使用期間が所定期間以上であるかを判定する第3判定処理を実行する。制御装置20は、第1フラッシング間隔を、第3判定処理により使用期間が所定期間以上であると判定した場合、第3判定処理により使用期間が所定期間未満であると判定した場合よりも短くする。
【0076】
具体的には、タイマ41は、制御装置20により構成されていてもよいし、制御装置20とは異なる機器であってもよい。タイマ41は、液体吐出装置10又はヘッド30の使用開始、及び、ヘッド30の交換等をヘッド30の使用開始タイミングとして検出し、この使用開始タイミングからの経過時間をヘッド30の使用期間としてクロック信号等に基づいて計測する。例えば、タイマ41が制御装置20により構成される場合、制御装置20は、クロック信号に基づき記憶部22の所定の領域に定期的に数値を加算する。この場合、記憶部22に記憶された数値を、ヘッド30の使用期間とすることができる。
【0077】
図7に示す液体吐出装置10の制御方法のフローチャートでは、制御装置20は、
図5に示すフローチャートにおけるステップS5とステップS11との間に、ステップS14及びS15の処理を実行する。ステップS14では、制御装置20は、第1判定処理により第2モードにて記録処理を実行すると判定した場合(ステップS5:NO)、液体の第3判定処理を実行する。第3判定処理では、制御装置20はタイマ41により計測されたヘッド30の使用期間が所定期間以上であるか否かを判定する。
【0078】
ステップS15では、制御装置20は、第3判定処理により使用期間が所定期間未満であると判定されると(ステップS15:YES)、第2パターンのフラッシング間隔を選択する(ステップS11)。一方、制御装置20は、第3判定処理により使用期間が所定期間以上であると判定されると(ステップS15:NO)、第1パターンのフラッシング間隔を選択する(ステップS6)。
【0079】
このように、ヘッド30の使用期間が長くなるほど、液体の吐出不良が生じ易くなる。このため、使用期間が所定期間以上と長い場合には、第1パターンを選択することにより、第1フラッシング間隔を第2パターンよりも短くし、増粘液体による吐出不良を低減することができる。一方、ヘッド30の使用期間が所定期間未満と短い場合には、第2パターンを選択することにより高速印刷が可能になる。
【0080】
[実施の形態4]
本発明の実施の形態4に係る液体吐出装置10は、実施の形態1~3のいずれかにおいて、
図3に示すように、吐出面33aに対向する位置に記録媒体Mを搬送する搬送装置14と、記録媒体Mを検出する記録媒体センサ42を備えている。制御装置20は、記録媒体センサ42の検出結果に基づいて記録媒体Mのジャム(紙詰まり)の発生及び解消を判定する第4判定処理を実行する。制御装置20は、第1フラッシング間隔を、第4判定処理によりジャムが発生したと判定した場合、ジャムの解消後、ジャムの発生前よりも短くする。
【0081】
具体的には、記録媒体センサ42は、例えば、発光部及び受光部を有し、記録媒体Mが搬送装置14により搬送される搬送経路において設けられている。発光部及び受光部は、搬送装置14により搬送されている記録媒体Mを互いの間に挟むように配置されている。発光部からの光が記録媒体Mにより遮られ、受光部が発光部の光を受光しないと、記録媒体センサ42は搬送経路の記録媒体Mを検知して、検知信号を制御装置20に出力する。一方、受光部が発光部からの光を受光すると、搬送経路に記録媒体Mがないとして、記録媒体センサ42は検知信号を制御装置20に出力しない。なお、受光部が発光部からの光を受光する場合、記録媒体センサ42は、記録媒体Mが搬送経路にないとの信号を制御装置20に出力してもよい。
【0082】
図8に示す液体吐出装置10の制御方法のフローチャートでは、制御装置20は、
図5に示すフローチャートにおけるステップS5とステップS11との間に、ステップS16及びS17の処理を実行する。ステップS16では、制御装置20は、第1判定処理により第2モードにて記録処理を実行すると判定した場合(ステップS5:NO)、第4判定処理を実行する。
【0083】
この第4判定処理では、制御装置20は、記録媒体センサ42により記録媒体Mが検出されていない状態から検出された状態に変化すると、記録媒体Mの前端が記録媒体センサ42に到達したと判定する。また、制御装置20は、記録媒体センサ42により記録媒体Mが検出されている状態から検出されない状態に変化すると、記録媒体Mの後端が記録媒体センサ42を通過したと判定する。制御装置20は、記録媒体Mの前端到達タイミングと後端通過のタイミングとの間の搬送時間を計時する。制御装置20は、搬送時間が所定時間未満であれば、記録媒体Mは搬送経路を円滑に搬送されており、ジャムは発生していないと判定する。一方、制御装置20は、搬送時間が所定時間に達すると、記録媒体Mが搬送されておらず、ジャムが発生したと判定する。また、記録媒体Mは、ジャムの発生を判定した後、記録媒体センサ42が記録媒体Mを検出しなくなったら、記録媒体Mが搬送経路から除去され、ジャムが解消したと判定する。
【0084】
ステップS17では、制御装置20は、第4判定処理によりジャムが発生していないと判定されると(ステップS16:NO)、第2パターンのフラッシング間隔を選択する(ステップS11)。一方、制御装置20は、第4判定処理によりジャムが発生したと判定されると(ステップS16:YES)、発生したジャムの解消後について第1パターンのフラッシング間隔を選択する(ステップS6)。
【0085】
このように、ジャムが発生すると、吐出面33aが露出された状態が続くため、ノズル31の液体が乾燥している可能性がある。このため、ジャムが発生して解消した後は、第1パターンを選択することにより、第1フラッシング間隔を第2パターンよりも短くし、増粘液体による吐出不良を低減することができる。一方、ジャムが発生していない状態では、第2パターンを選択することにより高速印刷が可能になる。
【0086】
[実施の形態5]
本発明の実施の形態5に係る液体吐出装置10は、実施の形態1~4のいずれかにおいて、
図3に示すように、液体の温度を検知する温度センサ43を備えている。制御装置20は、液体の温度が所定温度以上であるかを判定する第5判定処理を実行する。制御装置20は、第1フラッシング間隔を、第5判定処理により液体の温度が所定温度未満であると判定した場合、第5判定処理により液体の温度が所定温度以上であると判定した場合よりも短くする。
【0087】
具体的には、温度センサ43は、ヘッド30内の液体の温度を間接的に又は直接的に検知するよう、液体吐出装置10内又はヘッド30に配置されている。例えば、温度センサ43は、キャリッジ12aに搭載されており、キャリッジ12aと共に左右方向において往復移動する。温度センサ43が液体の温度を間接的に検出する場合には、制御装置20は、温度センサ43による検知温度と液体の温度との対応関係を表す所定の情報に基づいて、温度センサ43による検知温度からヘッド30内の液体の温度を取得する。
【0088】
図9に示す液体吐出装置10の制御方法のフローチャートでは、制御装置20は、
図5に示すフローチャートにおけるステップS5とステップS11との間に、ステップS18及びS19の処理を実行する。ステップS18では、制御装置20は、第1判定処理により第2モードにて記録処理を実行すると判定した場合(ステップS5:NO)、第5判定処理を実行し、温度センサ43による検知温度に基づいたヘッド30内の液体の温度が所定温度以上か否かを判定する。
【0089】
ステップS19では、制御装置20は、第5判定処理により液体の温度が所定温度以上であると判定されると(ステップS19:YES)、第2パターンのフラッシング間隔を選択する(ステップS11)。一方、制御装置20は、第5判定処理により液体の温度が所定温度未満であると判定されると(ステップS19:NO)、第1パターンのフラッシング間隔を選択する(ステップS6)。
【0090】
このように、液体の温度が低いほど、液体の粘度が高くなり、吐出不良が生じ易い。このため、液体の温度が所定温度未満の場合には、第1パターンを選択することにより、第1フラッシング間隔を第2パターンよりも短くし、増粘液体による吐出不良を低減することができる。一方、液体の温度が所定温度以上の場合には、第2パターンを選択することにより高速印刷が可能になる。
【0091】
[実施の形態6]
本発明の実施の形態6に係る液体吐出装置10は、実施の形態1~5のいずれかにおいて、
図3に示すように、液体吐出装置10内の湿度を検知する湿度センサ44を備えている。制御装置20は、液体吐出装置10内の湿度が所定湿度以上であるかを判定する第6判定処理を実行する。制御装置20は、第1フラッシング間隔を、第6判定処理により液体吐出装置10内の湿度が所定湿度未満であると判定した場合、第6判定処理により液体吐出装置10内の湿度が所定湿度以上であると判定した場合よりも短くする。
【0092】
湿度センサ44は、液体吐出装置10内の湿度を間接的に又は直接的に検知するよう、液体吐出装置10内に配置されている。例えば、湿度センサ44は、キャリッジ12aに搭載されており、キャリッジ12aと共に左右方向において往復移動する。湿度センサ44が液体吐出装置10内の湿度を間接的に検出する場合には、制御装置20は、湿度センサ44による検知湿度と液体吐出装置10内の湿度との対応関係を表す所定の情報に基づいて、湿度センサ44による検知湿度から液体吐出装置10内の湿度を取得する。
【0093】
図10に示す液体吐出装置10の制御方法のフローチャートでは、制御装置20は、
図5に示すフローチャートにおけるステップS5とステップS11との間に、ステップS20及びS21の処理を実行する。ステップS20では、制御装置20は、第1判定処理により第2モードにて記録処理を実行すると判定した場合(ステップS5:NO)、第6判定処理を実行し、湿度センサ44による検知湿度に基づく液体吐出装置10内の湿度が所定湿度以上か否かを判定する。
【0094】
ステップS21では、制御装置20は、第6判定処理により液体吐出装置10内の湿度が所定湿度以上であると判定されると(ステップS21:YES)、第2パターンのフラッシング間隔を選択する(ステップS11)。一方、制御装置20は、第6判定処理により液体吐出装置10内の湿度が所定湿度未満であると判定されると(ステップS21:NO)、第1パターンのフラッシング間隔を選択する(ステップS6)。
【0095】
このように、液体吐出装置10内の湿度が低いほど、液体の粘度が高くなり、吐出不良が生じ易い。このため、液体吐出装置10内の湿度が所定湿度未満の場合には、第1パターンを選択することにより、第1フラッシング間隔を第2パターンよりも短くし、増粘液体による吐出不良を低減することができる。一方、液体吐出装置10内の湿度が所定湿度以上の場合には、第2パターンを選択することにより高速印刷が可能になる。
【0096】
[実施の形態7]
本発明の実施の形態7に係る液体吐出装置10では、実施の形態1~6のいずれかにおいて、制御装置20は、印刷処理中にノズル31から液体を受け部17に吐出させ且つ第2記録中フラッシング処理の後に実行される第3記録中フラッシング処理を実行する。制御装置20は、第1判定処理により第2モードにて記録処理を実行すると判定した場合、第2記録中フラッシング処理と第3記録中フラッシング処理との間の第3フラッシング間隔を、第2フラッシング間隔よりも短くする。
【0097】
すなわち、
図5~
図10に示すフローチャートにおいて、制御装置20は、ステップS11の第2パターンのフラッシング間隔に代えて、例えば、第3パターンのフラッシング間隔を選択する。例えば、
図11に示す第3パターンのフラッシング間隔では、第2フラッシング間隔I2が第1フラッシング間隔I1よりも短く、第3フラッシング間隔I3が第2フラッシング間隔I2よりも短い。第3パターンの第1フラッシング間隔I1は、第1パターンの第1フラッシング間隔I1よりも長い。
【0098】
例えば、第1フラッシング間隔I1は60秒であって、第2フラッシング間隔I2は50秒であって、第3フラッシング間隔I3は40秒である。このように、フラッシング間隔を印刷処理が進むに伴い短くしていくことにより、高速印刷を維持しつつ、時間の経過と共に進行していくノズル31内の液体の乾燥に対して印刷中フラッシング処理が実行され、増粘液体による吐出不良を低減することができる。
【0099】
なお、
図11に示すように、第2モードの記録処理では、フラッシング間隔が印刷処理の進行に伴い段階的に短くなってもよい。この場合、フラッシング間隔が所定間隔(例えば、10秒)に達すると、制御装置20は、それ以降のフラッシング間隔を所定間隔よりも短くせずに、所定間隔の等間隔とする。これにより、フラッシング間隔が短くなり過ぎて、印刷処理時間が長くなり過ぎることを抑制することができる。
【0100】
[実施の形態8]
本発明の実施の形態8に係る液体吐出装置10は、実施の形態1~4のいずれかにおいて、
図3に示すように、液体の温度を検知する温度センサ43を備えている。制御装置20は、記録処理中にノズル31から液体を受け部17に吐出させ且つ第2記録中フラッシング処理の後に実行される第3記録中フラッシング処理を実行する。制御装置20は、液体の温度が所定温度以上であるかを判定する第7判定処理を実行する。制御装置20は、第7判定処理により液体の温度が所定温度未満であると判定した場合、第2記録中フラッシング処理と第3記録中フラッシング処理との間の第3フラッシング間隔を、第2フラッシング間隔よりも短くする。
【0101】
図12に示す液体吐出装置10の制御方法のフローチャートでは、制御装置20は、
図5に示すフローチャートにおけるステップS5とステップS11との間に、ステップS22~S24の処理を実行する。ステップS22では、制御装置20は、第1判定処理により第2モードにて記録処理を実行すると判定した場合(ステップS5:NO)、第7判定処理を実行し、温度センサ43による検知温度に基づいたヘッド30内の液体の温度が所定温度以上か否かを判定する。
【0102】
ステップS23では、制御装置20は、第7判定処理により液体の温度が所定温度以上であると判定されると(ステップS23:YES)、第2パターンのフラッシング間隔を選択する(ステップS11)。一方、制御装置20は、第7判定処理により液体の温度が所定温度未満であると判定されると(ステップS23:NO)、第3パターンのフラッシング間隔を選択する(ステップS24)。
【0103】
このように、液体の温度が所定温度未満の場合には、液体の粘度が高くなり、吐出不良が生じ易い。この場合、第3パターンを選択することにより、第3フラッシング間隔が第2フラッシング間隔よりも短く、フラッシング間隔が印刷処理の進行に伴い短くなるため、増粘液体による吐出不良を低減することができる。一方、液体の温度が所定温度以上の場合には、第2パターンを選択することにより高速印刷が可能になる。
【0104】
[実施の形態9]
本発明の実施の形態9に係る液体吐出装置10は、実施の形態1~5のいずれかにおいて、
図3に示すように、液体吐出装置10内の湿度を検知する湿度センサ44を備えている。制御装置20は、記録処理中にノズル31から液体を受け部17に吐出させ且つ第2記録中フラッシング処理の後に実行される第3記録中フラッシング処理を実行する。制御装置20は、液体吐出装置10内の湿度が所定湿度以上であるかを判定する第8判定処理を実行する。制御装置20は、第8判定処理により液体吐出装置10内の湿度が所定湿度未満であると判定した場合、第2記録中フラッシング処理と第3記録中フラッシング処理との間の第3フラッシング間隔を、第2フラッシング間隔よりも短くする。
【0105】
図13に示す液体吐出装置10の制御方法のフローチャートでは、制御装置20は、
図5に示すフローチャートにおけるステップS5とステップS11との間に、ステップS25~S27の処理を実行する。ステップS25では、制御装置20は、第1判定処理により第2モードにて記録処理を実行すると判定した場合(ステップS5:NO)、第8判定処理を実行し、湿度センサ44による検知湿度に基づく液体吐出装置10内の湿度が所定湿度以上か否かを判定する。
【0106】
ステップS23では、制御装置20は、第8判定処理により液体吐出装置10内の湿度が所定湿度以上であると判定されると(ステップS26:YES)、第2パターンのフラッシング間隔を選択する(ステップS11)。一方、制御装置20は、第8判定処理により液体吐出装置10内の湿度が所定湿度未満であると判定されると(ステップS26:NO)、第3パターンのフラッシング間隔を選択する(ステップS27)。
【0107】
このように、液体吐出装置10内の湿度が所定湿度未満の場合には、液体の粘度が高くなり、吐出不良が生じ易い。この場合、第3パターンを選択することにより、第3フラッシング間隔が第2フラッシング間隔よりも短く、フラッシング間隔が印刷処理の進行に伴い短くなるため、増粘液体による吐出不良を低減することができる。一方、液体吐出装置10内の湿度が所定湿度以上の場合には、第2パターンを選択することにより、高速印刷が可能になる。
【0108】
[実施の形態10]
本発明の実施の形態10に係る液体吐出装置10では、実施の形態1~9のいずれかにおいて、制御装置20は、記録処理をパス毎に実行する。制御装置20は、記録処理中にノズル31から液体を受け部17に吐出させる複数の記録中フラッシング処理を実行する。制御装置20は、記録処理において前回のパスまでにノズル31から吐出された液体の吐出量(累積吐出量)が所定液量以上であるかを判定する第9判定処理を実行する。制御装置20は、第9判定処理により累積吐出量が所定液量以上であると判定した場合、記録中フラッシング処理と当該記録中フラッシング処理との間の前回フラッシング間隔を、当該記録中フラッシング処理と次回記録中フラッシング処理との間の次回フラッシング間隔よりも長くする。
【0109】
具体的には、制御装置20は、第1判定処理により第2モードにて記録処理を実行すると判定すると、第2パターンのフラッシング間隔を選択する。そして、制御装置20は、第2パターンのフラッシング間隔にて記録中フラッシング処理を実行していく。制御装置20は、記録中フラッシング処理を実行すると、第9判定処理を実行する。
【0110】
第9判定処理では、制御装置20は、例えば、前回のパスまでの吐出デューティを液体の累積吐出量として算出する。吐出デューティは、前回パスまでに吐出面33aに開口する複数のノズル31の吐出可能最大合計量に対する吐出量である。吐出可能最大合計量は、各ノズル31から1回の駆動に吐出できる液体の最大量を、パスにおける全てのノズル31及び全ての駆動周期に対して合計した量であって、予め記憶部22に記憶されている。液体の吐出量は、印刷データに基づいて画像の濃度から、各ノズル31及び各駆動周期に吐出される液滴量が求められ、これをパスにおける全てのノズル31及び全ての駆動周期に対して合計した量である。
【0111】
例えば、大玉が、1つのノズル31から1回の駆動に吐出される液体の最大量である場合、この大玉の液滴が複数のノズル31から当該パスの全駆動で吐出されると、この液体の吐出量が吐出可能最大合計量に相当するため、吐出デューティは100%になる。一方、液滴が複数のノズル31から当該パスの全駆動で吐出されないと、この液体の吐出量が0であるため、吐出デューティは0%になる。制御装置20は、パス毎に吐出デューティを印刷データに基づいて算出する。そして、制御装置20は、算出した吐出デューティと、既に記憶されている吐出デューティとの平均値を、記憶部22の所定の領域に記憶する。また、制御装置20は、この平均値を液体の累積吐出量として用いる。
【0112】
第9判定処理により累積吐出量が所定液量未満であると判定すると、制御装置20は第2パターンのフラッシング間隔に基づいて記録中フラッシングを実行する。
【0113】
一方、制御装置20は、第9判定処理により累積吐出量が所定液量以上であると判定すると、当該記録中フラッシング処理と、当該フラッシング処理の直前に実行した前回記録中フラッシング処理との間の前回フラッシング間隔を取得する。そして、制御装置20は、当該記録中フラッシング処理と、当該記録中フラッシング処理の直後に実行する次回記録中フラッシング処理との間の次回フラッシング間隔を、前回フラッシング間隔よりも長くなるように、フラッシング間隔を変更する。例えば、前回フラッシング間隔が10秒である場合、次回フラッシング間隔を20秒に長くする。
【0114】
この記録処理における印刷情報に基づいた吐出動作では液体がノズル31から吐出されるため、この吐出動作をフラッシング処理の一種とみなすことができる。よって、前回パスまでの吐出デューティが多いほど、液体の吐出不良が生じ難くなる。このため、累積吐出量が所定液量以上と多い場合には、次回フラッシング間隔を前回フラッシング間隔よりも長くする。これにより、増粘液体による吐出不良を低減しながら、高速印刷が可能になる。
【0115】
なお、上記第9判定処理では、吐出デューティが液体の累積吐出量として用いられたが、累積吐出量はこれに限定されない。例えば、液体の積算量及び印字率を用いてもよい。液体の積算量は、前回のパスまでに複数のノズル31から吐出された液体の量を、積算した量である。この場合、制御装置20は、印刷データに基づいて画像の濃度から各ノズル31から各駆動周期に吐出される液滴量を求め、この液滴量をパスにおける全てのノズル31及び全ての駆動周期に対して合計した量を算出する。そして、制御装置20は、算出した合計量を、既に記憶されている合計量に足して、この和を記憶部22に記憶する。また、制御装置20は、この記憶した合計量を、液体の累積吐出量として用いる。
【0116】
また、印字率は、吐出された液体により形成された画像の濃度及び面積を、記録媒体Mにおける印刷範囲の面積で割った値である。例えば、印刷範囲の50%の面積における画像の濃度が50%であって、残りの50%の印刷範囲における画像の濃度が0%である場合、印字率は25%である。
【0117】
制御装置20は、記録媒体Mを印刷する度に、印刷データに基づいて画像の濃度及び面積、並びに印刷範囲の面積から印字率を算出する。そして、制御装置20は、算出した印字率と、既に記憶されている印字率との平均値を、記憶部22の所定の領域に記憶する。また、制御装置20は、この平均値を液体の累積吐出量として用いる。
【0118】
[実施の形態11]
本発明の実施の形態11に係る液体吐出装置10は、実施の形態1~10のいずれかにおいて、
図3に示すように、ヘッド30を走査方向に移動する走査装置15を備えている。制御装置20は、第1記録中フラッシング処理及び第2記録中フラッシング処理においてノズル31から液体を吐出させる吐出回数及び液体の吐出量を、ヘッド30を移動しながらノズル31から吐出した液体が受け部17にて受け止められる範囲内とする。
【0119】
フラッシング処理では、ヘッド30がフラッシング領域Aを加速して移動している間に、ヘッド30のノズル31から液体が吐出される。この際、吐出された液体が受け部17に入るように、制御装置20は駆動素子32を駆動させる。つまり、制御装置20は、移動速度、吐出面33aと受け部17との間隔、駆動信号に対応する液体の飛翔速度等から液体の着弾位置を演算し、左右方向において着弾位置が受け部17の範囲内になるように、駆動素子32の駆動タイミング等を制御する。
【0120】
なお、ヘッド30が右側に移動しながら、ヘッド30から液体を吐出する。このため、吐出された液体は、左右方向において、吐出位置よりも着弾位置は右側に位置する。よって、ヘッド30は、その移動方向において受け部17の左端よりも上流(左側)において液体の吐出を開始し、受け部17の右端よりも上流(左側)において液体の吐出を終了する。これにより、吐出した液体は受け部17に受け止められる。
【0121】
このように、フラッシング処理によってノズル31から吐出された液体は、受け部17の吸収体17a及びガイド17bに着弾する。このため、液体が受け部17以外の部品等に着弾して堆積し、この堆積物によってヘッド30の移動が妨げられる等の事態を防止することができる。
【0122】
また、フラッシング処理では、ヘッド30の走査動作及び吐出動作が並行して実行される。このフラッシング処理中に移動するヘッド30の速度は、フラッシング処理をせずにフラッシング領域Aを移動するヘッド30の速度に等しい。このため、フラッシング処理による印刷処理の速度低下を抑制することができる。
【0123】
<その他の変形例>
上記全ての実施の形態では、メンテナンス領域C及びフラッシング領域Aは、記録領域Bを挟んで互いに反対側に配置されていたが、記録領域Bに対して同じ側に配置されていてもよい。また、受け部17はキャップ18aとは別に設けられていたが、受け部17にキャップ18aを用いてもよい。この場合、メンテナンス領域Cとフラッシング領域Aとは互いに同じ領域になる。
【0124】
上記全ての実施の形態では、各判定処理の判定結果に応じて第1パターン又は第2パターンのフラッシング間隔を選択した。但し、第1パターンのフラッシング間隔を基本パターンとして設定されており、各判定処理の判定結果に応じて第1パターンから第2パターンにフラッシング間隔を変更してもよい。この場合、全パスの記録処理が終了してから、制御装置20はフラッシング間隔を第1パターンに戻す。
【0125】
上記全ての実施の形態では、記録処理の後であってフラッシング処理を実行する直前に、駆動素子32を非吐出駆動を実行してもよい。この駆動素子32によって、圧力室35bに連通するノズル31から液体が吐出しないようにノズル31の開口におけるメニスカスが振動する。よって、この直後のフラッシング処理においてノズル31から液体を吐出し易くなる。
【0126】
なお、上記全実施の形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。また、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の液体吐出装置、その制御方法及びプログラムは、印刷画質と印刷時間とのバランスを取ることができる液体吐出装置、その制御方法及びプログラム等として有用である。
【符号の説明】
【0128】
10 :液体吐出装置
14 :搬送装置
15 :走査装置
17 :受け部
18a :キャップ
18b :移動装置
20 :制御装置
30 :ヘッド
31 :ノズル
33a :吐出面
41 :タイマ
43 :温度センサ
44 :湿度センサ