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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】無線機及び無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/40 20180101AFI20240709BHJP
   H04W 72/0453 20230101ALI20240709BHJP
   H04W 28/14 20090101ALI20240709BHJP
   H04W 88/02 20090101ALI20240709BHJP
   H04W 4/06 20090101ALI20240709BHJP
   H04B 1/50 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H04W76/40
H04W72/0453
H04W28/14
H04W88/02 120
H04W4/06 130
H04B1/50
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020089491
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021184552
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】小川 潤
(72)【発明者】
【氏名】成井 勝
【審査官】永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-139790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B1/50
7/24-7/26
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信周波数と受信周波数とが異なるフルデュープレックス通信において所定長のフレーム単位で音声データの通信を行う無線機であって、
自無線機が受信した音声データを記憶する記憶部と、
自無線機のマイクが収音する音声の無音を前記フレーム毎のタイミングで検知する無音検知部と、
自無線機のマイクが収音した音声に基づく第1の音声データを送信する第1モードと、前記記憶した音声データを第2の音声データとして送信する第2モードとを切り替える送信制御部と、を備え、
前記送信制御部が前記第2モードとして送信する前記第2の音声データは、前記無音検知部にて無音を検知したフレームで記憶された音声データから順に送信される、もしくは前記無音検知部にて無音を検知したフレームから所定数前のフレームで記憶された音声データから順に送信される、
ことを特徴とする無線機。
【請求項2】
送信周波数と受信周波数とが異なるフルデュープレックス通信において所定長のフレーム単位で音声データの通信を行う第1及び第2の無線機を備えた無線通信システムであって、
前記第1の無線機は、
前記第1の無線機が前記第2の無線機から受信した音声データを記憶し、
前記第1の無線機のマイクが収音する音声の無音を前記フレーム毎のタイミングで検知し、
前記第1の無線機のマイクが収音した音声に基づく第1の音声データを前記第2の無線機に送信する第1モードと、前記記憶した音声データを第2の音声データとして前記第2の無線機に送信する第2モードとを切り替え、
無音を検知したフレームで記憶された音声データから順に前記第2の音声データとして送信する、もしくは無音を検知したフレームから所定数前のフレームで記憶された音声データから順に前記第2の音声データとして送信する、
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
前記第1の無線機は、
前記第1の音声データであるか前記第2の音声データであるかを示すフラグを付加した送信データを生成し、
前記第2の無線機は、
受信した受信データが前記第2の音声データの場合、音声出力を抑制する、
ことを特徴とする請求項に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記第1の無線機が前記第2の無線機に送信した前記第1の音声データ及び前記第2の音声データを傍受する第3の無線機、
をさらに備えたことを特徴とする請求項又はのいずれかに記載の無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線機及び無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムにおいて受信した音声データを転送する技術が提案されている。特許文献1には、アナログ無線機において複数の音声信号を加算して送信することが記載されている。また、特許文献2には、半二重通信を行う業務用無線システムと、全二重通信を行う移動通信システムとを接続する転送装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6181892号公報
【文献】特許第6183265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、デジタル無線機で全二重通信を行う場合、第三者が、当該通信における会話を聴取することは困難であるという問題があった。すなわち、第1の無線機と第2の無線機とが全二重通信を行う場合、第3の無線機を使用する通話者と関係がある第三者は、第1の無線機を使用するユーザの発話と、第2の無線機を使用するユーザの発話との両方を聴取することは困難であった。全二重通信において他の無線機から受信した音声を、通話者と関係がある第三者に聴取させることが可能な無線機及び無線通信システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、送信周波数と受信周波数とが異なるフルデュープレックス通信において所定長のフレーム単位で音声データの通信を行う無線機であって、自無線機が受信した音声データを記憶する記憶部と、自無線機のマイクが収音する音声の無音を前記フレーム毎のタイミングで検知する無音検知部と、自無線機のマイクが収音した音声に基づく第1の音声データを送信する第1モードと、前記記憶した音声データを第2の音声データとして送信する第2モードとを切り替える送信制御部と、を備え、前記送信制御部が前記第2のモードとして送信する前記第2の音声データは、前記無音検知部にて無音を検知したフレームで記憶された音声データから順に送信される、もしくは前記無音検知部にて無音を検知したフレームから所定数前のフレームで記憶された音声データから順に送信される、ことを特徴とする無線機を提供する。
【0006】
本発明は、送信周波数と受信周波数とが異なるフルデュープレックス通信において所定長のフレーム単位で音声データの通信を行う第1及び第2の無線機を備えた無線通信システムであって、前記第1の無線機は、前記第1の無線機が前記第2の無線機から受信した音声データを記憶し、前記第1の無線機のマイクが収音する音声の無音を前記フレーム毎のタイミングで検知し、前記第1の無線機のマイクが収音した音声に基づく第1の音声データを前記第2の無線機に送信する第1モードと、前記記憶した音声データを第2の音声データとして前記第2の無線機に送信する第2モードとを切り替え、無音を検知したフレームで記憶された音声データから順に前記第2の音声データとして送信する、もしくは無音を検知したフレームから所定数前のフレームで記憶された音声データから順に前記第2の音声データとして送信する、ことを特徴とする無線通信システムを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、全二重通信において他の無線機から受信した音声を、通話者と関係がある第三者に聴取させることが可能な無線機及び無線通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】関連する無線通信システムの構成を示す構成図である。
図2】実施の形態1に係る無線機の動作の概要を示す概略図である。
図3】実施の形態1に係る無線通信システムの構成を示す構成図である。
図4】実施の形態1に係る無線機1Aの構成を示す構成図である。
図5】実施の形態1に係る無線機1Bの構成を示す構成図である。
図6】実施の形態1に係る無線通信システムの動作例を示す概略図である。
図7】実施の形態1に係る無線通信システムの動作例を示す概略図である。
図8】実施の形態1に係る無線通信システムの動作例を示す概略図である。
図9】実施の形態1に係る無線通信システムの動作例を示す概略図である。
図10】実施の形態1に係る無線通信システムの動作例を示す概略図である。
図11】実施の形態2に係る無線機1Aの構成を示す構成図である。
図12】実施の形態2に係る無線機の動作を示すフローチャートである。
図13】実施の形態2に係る無線機の動作を示すフローチャートである。
図14】実施の形態2に係る無線機の動作を示すフローチャートである。
図15】実施の形態2に係る無線通信システムの動作例を示す概略図である。
図16】実施の形態2に係る無線通信システムの動作例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
まず、図1を用いて、関連する無線通信システムの問題点について説明する。図1は、関連する無線通信システム200の概要を示している。無線通信システム200は、無線機2A、2B、2C及び2Dを備える。無線機2A、2B、2C及び2Dは、デジタル無線機であり、送信周波数と受信周波数とが異なるフルデュープレックス方式で音声データの通信を行う。なお、フルデュープレックス方式は、全二重方式ともいう。
【0010】
無線通信システム200において、無線機2AのユーザUAは、送信周波数F1で問いかけを行う。問い合わせの内容は、例えば、「この件についてわかる人はいますか?」等である。無線機2B、2C及び2Dのユーザは、ユーザUAの当該音声を聴取する。
【0011】
ここで、無線機2BのユーザUBが、周波数f1で無線機2Aに対して応答したものとする。周波数f1は、無線機2Aが送信する周波数F1とは異なる周波数である。応答内容は、例えば、「この件についてわかります。」等である。無線機2Bがデュプレックスで応答すると、無線機2Aと無線機2Bとの間にフルデュープレックス通信が確立する。無線機2C及び2DのユーザUC及びUDは、無線機2Aと無線機2Bとの間の通信を周波数F1で傍受する。つまりユーザUC及びUDは、問いかけを行ったユーザUAと応答したユーザUBとの通信に対しては第三者となる。このような場合、無線機2Aを起動者端末とも呼び、無線機2Bを応答者端末とも呼ぶ。無線機2C及び2Dを、傍受者端末とも呼ぶ。
【0012】
ここで、無線機2C及び2Dのユーザは、周波数F1で傍受を行っているため、応答者であるユーザUBの音声を聴取することができない。したがって、ユーザUAがユーザUBの応答内容を報知しない場合、ユーザUC及びUDは、情報の一部を聞き漏らすおそれがあった。
【0013】
そこで、発明者は、起動者端末が、ユーザUAの音声AとユーザUBの音声Bとを送信する方法について検討した。ここで、音声A及び音声Bは、ボコーダによりエンコードされたデジタル音声データであり、特に業務無線用途で用いられるボコーダの音声圧縮方法では音声Aと音声Bとを混合することはできない。図2を用いて、発明者が検討した方法の概要について説明する。起動者端末は、音声Aが途切れたときに、周波数f1で受信した音声Bを周波数F1で送信するものとする。このような場合、起動者端末は、音声Aをデコードし、無音となるタイミングを検知する。デコードした音声は、例えば、PCM(Pulse Code Modulation)のデータである。
【0014】
起動者端末は、デコードする前の音声Aと、受信した音声Bとをバッファに格納する。そして、起動者端末は、音声Aが無音となるタイミングから、音声Bの送信を開始する。結果として、起動者端末は、図2に示す送信音声を送信する。起動者端末は、音声Aの送信を優先し、音声Aが途切れたときに音声Bの送信を開始することとなる。なお、バッファに音声Aと音声Bとを格納しているのは、音声の頭切れを防ぐためである。
【0015】
次に、図3を用いて実施の形態1に係る無線通信システム100の構成例について説明する。システム構成は、図1と同様である。無線通信システム100は、複数の無線機1(1A~1D)を備える。無線機1Aは、上述した起動者端末であり、周波数F1で音声を無線機1Bに送信し、周波数f1で音声を無線機1Bから受信する。無線機1Bは、上述した応答者端末であり、周波数F1で音声Aを無線機1Aから受信し、周波数f1で音声Bを無線機1Aに送信する。無線機1C及び1Dは、上述した傍受者端末であり、周波数F1で音声A及び音声Bを無線機1Aから受信する。なお、図3では、傍受者端末の数を2台としているが、傍受者端末は、1台であってもよく、3台以上であってもよい。
【0016】
音声Aは第1の音声データとも呼び、音声Bは第2の音声データとも呼ぶ。また、無線機1A、1B、1C及び1Dは、フレーム単位で音声データの通信を行う。フレームとは、通信フォーマットにより定められた所定時間長の通信フレーム(送信フレーム、受信フレーム)である。本発明では、通信フレームに音声データを乗せた状態を音声フレームと呼ぶこととする。音声Aの音声フレームをフレームAと呼び、音声Bの音声フレームをフレームBと呼ぶ。
【0017】
図4は、無線機1Aの構成を示す構成図である。無線機1Aは、制御部10、記憶部11、送信変調部12、受信復調部13、分波器14、アンテナ15、マイク16、スピーカ17、音声制御部18及びボコーダ19を備える。
【0018】
制御部10は、無線機1Aの送受信を制御する。制御部10は、音声制御部18が出力した音声フレームを、送信変調部12に出力する。送信変調部12により変調された無線信号は、分波器14を介してアンテナ15から送信される。また、制御部10は、アンテナ15で受信された無線信号を受信復調部13で復調し、フレームBをボコーダ19に出力する。
【0019】
ボコーダ19は、マイク16で収音した音声Aをエンコードし、所定長の音声フレームを生成する。また、ボコーダ19は、受信復調部13が復調したフレームBをデコードし、スピーカ17に出力する。
【0020】
音声制御部18は、フレームA又はフレームBを、送信フレームとして制御部10に出力する。音声制御部18は、音声検出部181、記憶処理部182、送信制御部183及び生成部184を備える。音声検出部181は、無音検知部とも呼ぶ。音声検出部181は、ボコーダ19がエンコードしたフレームAをデコードし、音声Aの無音を検知する。また、音声検出部181は、受信復調部13が復調したフレームBをデコードし、音声Bの無音を検知する。音声検出部181は、無音の検知結果を送信制御部183に出力する。記憶処理部182は、受信復調部13が復調したフレームBを、記憶部11に記憶させる。記憶部11は、記憶媒体である。
【0021】
送信制御部183は、無線機1Aの第1モードと第2モードとの切り替えを制御する。第1モードは音声Aを送信するモードであり、第2モードは音声Bを送信するモードである。送信制御部183は、音声検出部181の無音の検知結果に応じて第1モードと第2モードとの切り替えを行う。例えば、送信制御部183は、音声Aの無音を検知した場合に第1モードから第2モードに切り替えてもよい。また、送信制御部183は、音声Aの無音を検知し、かつ音声Bが無音でない場合に、第1モードから第2モードに切り替えてもよい。ここで、送信制御部183は、無音を検知したフレームで記憶された音声データから送信を行ってもよく、無音を検知したフレームから所定数前のフレームで記憶された音声データから送信を行ってもよい。
【0022】
半二重通信と、フルデュープレックス通信との違いは、送受信を切り替えず相互に通信できることである。しかし、無線機1AのユーザUA、及び無線機1BのユーザUBが、常に発話を行うという状況は想定しづらい。ユーザUA及びUBがコミュニケーションを行うには、一方が発話し、他方が聴取することが考えられる。発話の切り替えのタイミングとしては、以下のケース1~3が想定される。ケース1.一方の発話の終了前に、他方が発話を開始する(オーバーラップあり)。ケース2.ある瞬間を境にして、一方の発話から他方の発話に切り替わる(オーバラップゼロ)。ケース3.一方の発話が終了し、他方の発話までの時間がある(両者の無音期間が存在する)。
【0023】
ここで、ケース2は、極めて稀であり、ケース1またはケース3に該当する場合がほとんどであると考えられる。したがって、ケース1の場合に、可能な限り頭切れしないように音声Bを送信することが重要である。ユーザUBが発話を行った場合、ユーザUAは、ユーザUBの発話を認識して発話を終了するため、無線機1Aは、無音フレームを検知することとなる。したがって、無音の検出を、モードを切り替えるためのトリガーとして使用することは適切であると考えられる。
【0024】
図4に戻って、生成部184は、フレームAであるかフレームBであるかを識別するためのフラグを付加した送信フレームを生成する。無線機1Bにおいて音声Bを音声出力した場合、ハウリングが発生するおそれがある。また、ハウリングが発生しない場合であっても、ユーザUBは、音声Bが出力されることにより会話がしづらくなるおそれがある。フラグを付加したフレームを送信することにより、無線機1Bは、受信したフレームBの音声出力を抑制することが可能となる。生成部184は、例えば、フレームAにフラグAを付加し、フレームBにフラグBを付与する。
【0025】
図5は、無線機1Bの構成を示す構成図である。無線機1Bの音声制御部18は、出力制御部185を備える。出力制御部185は、受信復調部13で復調したフレームに対して付与されたフラグを判定する。そして、出力制御部185は、判定結果に応じて、フレームBの音声出力を抑制する。例えば、出力制御部185は、フレームBを受信した場合にスピーカ17をミュートに設定し、フレームAを受信した場合にスピーカ17をアンミュートに設定してもよい。無線機1C及び1Dは、無線機1Bと同様の構成であってもよく、出力制御部185を備えなくてもよい。
【0026】
次に、図6図10を用いて、実施の形態1にかかる無線通信システム100の動作例について説明する。図6図10は、無線機1A、1B、1C及び1Dにおける送信フレーム及び受信フレームを例示する概略図である。T1~T10は、無線機1A及び1Bがフレーム単位で通信を行う際のタイムスロットを表す。つまり、各タイムスロットは、1フレーム分の時間長に対応する。
【0027】
まず、図6について説明する。図6は、無線機1Aによる音声Aの送信と、無線機1Bによる音声Bの送信とが重ならないケースである。無線機1Aは、T1及びT2でフレームA1及びA2を送信し、T3~T5で無音フレームを送信する。無線機1Aは、例えば、無音フレームを送信し、かつフレームB1を受信したT4で、第2モードに移行してもよい。
【0028】
無線機1Aは、T4以降に無線機1BからフレームBを受信し、記憶部11に記憶する。例えば、無線機1Aは、T4で受信したB1を、T5で記憶部11に記憶している。そして、無線機1Aは、記憶したフレームBを送信する。例えば、無線機1Aは、T5で記憶したフレームB1を、T6で送信している。無線機1Aが送信するフレームBは、受信したフレームBに対して、記憶処理及び送信処理により2フレーム分遅延することとなる。なお、無線機1Aは、記憶処理及び送信処理を1フレーム分のタイムスロットで実行してもよい。
【0029】
このような場合、無線機1C及び1Dは、フレームA1~A2、及びフレームB1~B5の両方を受信することができる。ここで、無線機1Bは、フレームB1~B5の音声出力を抑制する。括弧記号は、音声出力を抑制することを表している。
【0030】
次に、図7について説明する。図7は、無線機1Aによる音声Aの送信、及び無線機1Bによる音声Bの送信のオーバーラップがゼロとなるケースである。なお、このようなケースは、極めて稀と考えられる。無線機1Aは、T1及びT2でフレームA1及びA2を送信する。そして、無線機1Aは、T3で無音フレームを送信するとともに、フレームB1を受信する。例えば、無線機1Aは、T3で無音フレームを検知し、フレームBを送信する第2モードに移行してもよい。
【0031】
図6と同様、記憶処理、及び送信処理により2フレーム分遅延するため、無線機1Aは、T3で受信したB1を、T5で送信する。このような場合も、無線機1C及び1Dは、フレームA1~A2、及びフレームB1~B5の両方を受信することができる。また、無線機1Bは、フレームB1~B5の音声出力を抑制する。
【0032】
次に、図8及び図9を用いて、無線機1Aによる音声Aの送信、及び無線機1Bによる音声Bの送信にオーバーラップがあるケースについて説明する。図8のT2において、無線機1AはフレームA2を送信し、無線機1BはフレームB1を送信する。つまり、図8のケースでは、1フレーム分のオーバーラップが存在する。図9のT2~T5において、無線機1AはフレームA2~A5を送信し、無線機1BはフレームB1~B4を送信する。したがって、図9のケースでは、4フレーム分のオーバーラップが存在する。
【0033】
図8の場合、無線機1Aは、T3で無音フレームを検出し、第2モードに移行する。図6及び図7と同様に、記憶処理、及び送信処理により2フレーム分遅延するため、無線機1Aは、T2で受信したB1を、T4で送信する。このとき、無線機1Aは、無音フレームで記憶された音声B1から送信を行っていることになる。このような場合も、無線機1C及び1Dは、フレームA1~A2、及びフレームB1~B5の両方を受信することができる。また、無線機1Bは、フレームB1~B5の音声出力を抑制する。
【0034】
図9の場合、無線機1Aは、T6で無音フレームを検知し、第2モードに移行する。したがって、無線機1Aは、T7から記憶部11が記憶するフレームBを送信することとなる。
【0035】
図9では、無線機1Aは、無音フレームを検知したT6で記憶されたフレームB4から2フレーム分前のフレームB2から送信を開始している。このように、無線機1Aは、無音フレームから所定数前のフレームで記憶された音声Bから、送信を行ってもよい。所定数は、例えば、記憶部11の記憶容量、許容できる遅延等に基づいて定められてもよい。このような場合、無線機1C及び1Dは、フレームB1を受信することはできないが、フレームA1~A2、及びフレームB2~B5を受信することができる。
【0036】
なお、無線機1Aは、音声Aの送信を優先する割り込み機能を備えてもよい。割り込み機能とは、第2モードにおいて音声Aの有音を検知したとき、音声Aを送信する機能である。図10は、無線機1Aが割り込み機能を備える場合の動作の概要を示す概略図である。
【0037】
無線機1Aは、T1~T3において、フレームB1~B3を送信する。つまり、無線機1Aは、T1~T3において第2モードで動作している。そして、無線機1Aは、T4~T6で音声Aを検知し、割り込み機能によりフレームA1~A3を送信する。割り込み機能による割り込みはT6で終了し、無線機1Aは、T7以降は記憶したフレームBを送信する。
【0038】
以下、本実施の形態の効果について説明する。関連する無線通信システムによると、第三者は、フルデュープレックス通信における応答者の応答音声を聴取することができないという問題があった。しかし、音声Aと音声Bとを重畳させるために、無線機またはレピータでエンコード及びデコードを行うと音声データが劣化するという問題がある。また、受信端末で2種以上の音声をデコードするのは難しく、デコードしたとしても音声として再生することができない場合があった。
【0039】
実施の形態1に係る無線機は、起動者の第1の音声データと、応答者の第2の音声データとを送信することができる。したがって、実施の形態1によると、第三者は、応答者の音声を聴取することができる。また、実施の形態1にかかる無線機は、応答者の第2の音声データを識別するためのフラグを、音声フレームに付与する。したがって、応答者端末は、第2の音声データの出力を抑制し、聞きづらさやハウリングの発生を抑えることができる。さらに、実施の形態1にかかる無線機は、無音の検知結果に応じて、第1の音声データと第2の音声データとの送信を切り替えるため、送話のタイミングを自然に切り替えることができる。
【0040】
(実施の形態2)
実施の形態1にかかる無線機は、無音の検知結果に応じて第1モードと第2モードとの切り替えを行った。実施の形態2にかかる無線機は、第1モードにおいて第2の音声データを録音する時間を測定するタイマを備えており、タイマの測定結果に応じて第1モードと第2モードとの切り替えを行う。
【0041】
実施の形態2にかかる無線通信システム100の構成は、図3と同様であるため説明を省略する。図11は、実施の形態2にかかる無線機1Aの構成を示す構成図である。以下、実施形態1と異なる点を中心に説明する。
【0042】
音声制御部18は、タイマ管理部186を備える。タイマ管理部186は、第1モードにおいてフレームBを記憶部11に録音する時間を測定し、タイマの設定時間を超えているか否かを判定する。録音時間がタイマの設定時間を超えた場合、タイマ管理部186は、スピーカ17を用いてアラーム音声を鳴動させる。録音時間がタイマの設定時間を超えた場合、タイマ管理部186は、その旨を送信制御部183に通知する。
【0043】
記憶処理部182は、実施の形態1と同様に、受信復調部13が復調したフレームBを、記憶部11に記憶させる。ここで、記憶処理部182が、第1モードにおいて音声Bを記憶することを録音と呼ぶ。つまり、録音とは、通話において音声Aと音声Bとが重なる場合に、音声Bを記憶することである。
【0044】
送信制御部183は、タイマ管理部186からの通知に応じて第1モードと第2モードとの切り替えを行う。また、送信制御部183は、タイマ管理部186からの通知、及び、音声検出部181の無音の検知結果の両方に基づきモードの切り替えを行ってもよい。
【0045】
なお、タイマ管理部186は、タイマの設定時間を0msに設定してもよい。このような場合、送信制御部183は、音声Bを受信した場合に第2モードに移行し、フレームBの送信を開始する。つまり、音声Aの送信は中断され、音声Bが送信されることとなる。
【0046】
なお、実施の形態2にかかる無線機1Bの構成は、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。実施の形態2にかかる無線機1C及び1Dの構成も、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0047】
次に、図12及び図13を用いて、無線機1Aの動作について説明する。なお、図13に示す「1」及び「2」は、図12に示す「1」及び「2」にそれぞれ対応する。図12において、無線機1Aと無線機1Bとの間でフルデュープレックス通信が確立しているものとする(ステップS101)。
【0048】
フルデュープレックス通信が確立すると、無線機1Aは、音声Aの送信を開始する(ステップS102)。ここで、無線機1Aは、音声A又は無音のフレームを送信する際、フラグAを付加してもよい。次に、無線機1Aは、受信したフレームBに基づき音声Bの検出の有無を判定し(ステップS103)、音声Bを検出しなかった場合(ステップS103のNo)は、ステップS103の判定処理に戻る。
【0049】
音声Bを検出した場合(ステップS103のYes)、無線機1Aは、音声Aの検出の有無を判定する(ステップS104)。音声Aを検出しなかった場合(ステップS104のNo)、無線機1Aは、音声Bの送信を開始し(ステップS105)、図13の「1」から始まる処理に移行する。つまり、音声Bを検出し、かつ音声Aを検出しない場合、無線機1Aは、第1モードから第2モードに移行し、音声Bの送信を開始する。ここで、無線機1Aは、フラグBを付加したフレームを送信してもよい。
【0050】
音声Aを検出した場合(ステップS104のYes)、無線機1Aは、タイマを起動し(ステップS106)、音声Bの録音を開始する(ステップS107)。ステップS106におけるタイマの設定時間は、0msであってもよい。次に、無線機1Aは、録音時間がタイマの設定時間を超えているか否かを判定する(ステップS108)。タイマが満了している場合(ステップS108のYes)、無線機1Aは、スピーカ17を用いて受話音声にアラームを鳴動させ(ステップS109)、録音された音声Bの送信を開始する(ステップS111)。つまり、タイマが満了している場合、無線機1Aは、第1モードから第2モードに移行し、音声Bの送信を開始する。
【0051】
タイマが満了していない場合(ステップS108のNo)、無線機1Aは、音声Aの検出の有無を判定する(ステップS110)。音声Aを検出した場合(ステップS110のYes)、無線機1Aは、ステップS108の判定処理に戻る。音声Aを検出しない場合(ステップS110のNo)、無線機1Aは、録音された音声Bの送信を開始する(ステップS111)。つまり、タイマが満了していない場合であっても、音声Aを検出しない場合には、無線機1Aは、第1モードから第2モードに移行し、音声Bの送信を開始することとなる。
【0052】
次に、図13について説明する。図12のステップS105又はステップS111で音声Bの送信を開始した後、無線機1Aは、音声Aの検出の有無を判定する(ステップS201)。無線機1Aは、音声Aを検出した場合(ステップS201のYes)、スピーカ17を用いてアラーム音声を鳴動させる(ステップS202)。無線機1Aは、ステップS201で音声Aを検出しない場合(ステップS201のNo)、又はステップS202でアラーム音声を鳴動させた後、音声Bの検出の有無を判定する(ステップS203)。
【0053】
無線機1Aは、音声Bを検出した場合(ステップS203のYes)、ステップS201の判定処理に戻る。音声Bを検出しない場合(ステップS203のNo)、無線機1Aは、図12の「2」に移行し音声Aの送信を開始する。つまり、無線機1Aは、音声Bを検出しない場合、第2モードから第1モードに移行し、音声Aの送信を開始する。また、ステップS201で、音声Aを検出した場合(ステップS201のYes)、図12の「2」に移行するといった、音声Aを優先とした処理であってもよい。
【0054】
次に、図14を用いて、無線機1Bの動作例について説明する。なお、無線機1Bの動作は、実施の形態1と同様である。まず、無線機1A及び無線機1Bとの間でフルデュープレックス通信が確立しているものとする(ステップS301)。無線機1Bは、受信したフレームに付与されたフラグに基づき、受信フレームがフレームAであるかフレームBであるかを判定する(ステップS302)。フレームAの場合(ステップS302のYes)、無線機1Bは、スピーカをアンミュートに設定する(ステップS303)。フレームBの場合(ステップS302のNo)、無線機1Bは、スピーカ17をミュートに設定する(ステップS304)。
【0055】
次に、図15及び図16を用いて、実施形態2にかかる無線通信システムの動作について説明する。タイマの設定値は、4フレーム分の時間であるものとする。図15のT3で、無線機1Aは、フレームA3を送信し、フレームB1を受信する。このような場合、無線機1Aは、タイマをセットし、音声Bの録音を開始する。ここで、タイマカウントは、1となる。T4において、無線機1Aは、フレームB2を受信するため、タイマカウントを2に変更する。T5において、無線機1Aは、無音フレームを検知し、タイマカウント3でタイマを停止する。無線機1Aは、T6から録音したフレームBを送信することとなる。
【0056】
図16のT3において、無線機1Aは、フレームA3を送信し、フレームB1を受信する。したがって、無線機1Aは、図15と同様に、タイマをセットし、音声Bの録音を開始する。T4~T6において、無線機1Aは、フレームB2~B4を受信する。したがって、T4からT6でタイマカウントは増加し、T6でタイマが満了することとなる。したがって、無線機1Aは、T7から記憶した音声Bを送信することとなる。このような場合、第三者は、無線機1C及び1Dを用いて、最初のフレームであるB1から音声Bを聴取することができる。
【0057】
実施の形態2にかかる無線機は、音声Bの録音時間に基づき、音声Aの送信と音声Bの送信とを切り替える。タイマを適切に設定することにより、実施の形態2にかかる無線機1Aは、音声AとBがオーバーラップした場合でも、音声Bを頭切れせずに送信することができる。
【符号の説明】
【0058】
1、1A~1D 無線機
10 制御部
11 記憶部
12 送信変調部
13 受信復調部
14 分波器
15 アンテナ
16 マイク
17 スピーカ
18 音声制御部
19 ボコーダ
181 音声検出部
182 記憶処理部
183 送信制御部
184 生成部
185 出力制御部
186 タイマ管理部
図1
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