IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

特許7516882画像形成方法、画像形成プログラム、および画像形成装置
<>
  • 特許-画像形成方法、画像形成プログラム、および画像形成装置 図1
  • 特許-画像形成方法、画像形成プログラム、および画像形成装置 図2
  • 特許-画像形成方法、画像形成プログラム、および画像形成装置 図3
  • 特許-画像形成方法、画像形成プログラム、および画像形成装置 図4
  • 特許-画像形成方法、画像形成プログラム、および画像形成装置 図5
  • 特許-画像形成方法、画像形成プログラム、および画像形成装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】画像形成方法、画像形成プログラム、および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20240709BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20240709BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240709BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/20 555
G03G21/00 386
G03G15/01 K
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020097572
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021189392
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中島 一比古
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-026018(JP,A)
【文献】特開2008-046355(JP,A)
【文献】特開2016-066066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/00
G03G 13/01
G03G 13/20
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/01
G03G 15/20
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1トナーと第2トナーとを用いて画像形成媒体に画像を形成し、定着させる画像形成方法において、
あらかじめ設定された前記第1トナーの適正な定着温度範囲内の定着温度で、前記第2トナーにより形成した画像を前記画像形成媒体に定着させる段階(a)と、
前記段階(a)により定着させた画像の光沢が、所定の光沢度の範囲内であるかを判定する段階(b)と、
前記段階(b)の判定結果が、前記所定の光沢度の範囲内である場合に、前記段階(a)で使用した前記定着温度を、前記第1トナーおよび前記第2トナーによって画像を形成して前記画像形成媒体に定着させる際の前記定着温度として設定する段階(c)と、
を有し、
前記第1トナーは、イエロー、マゼンタ、シアン、および黒色のうち少なくとも1色のトナーであり、
前記第2トナーは、特色トナーである、画像形成方法。
【請求項2】
前記特色トナーは、白色トナーである、請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記段階(b)の判定結果が、前記所定の光沢度の下限未満の場合に、段階(a)の前記定着温度から、あらかじめ設定した温度分上昇させた前記定着温度によって、新たに前記第2トナーにより形成した画像を前記画像形成媒体に定着させる段階(a1)と、
前記段階(a1)の後、前記段階(b)により判定を行って、判定結果が前記所定の光沢度の範囲内となれば、前記段階(a1)で使用した前記定着温度を、前記第1トナーおよび前記第2トナーによって画像を形成して前記画像形成媒体に定着させる際の前記定着温度として設定する段階(c1)と、
前記段階(b)の判定結果が、前記所定の光沢度の範囲内でなければ、前記所定の光沢度の範囲内となるまで、前記段階(a1)および前記段階(b)を繰り返す、請求項1、または請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記定着温度が所定の上限温度となるまで前記段階(a1)および前記段階(b)を繰り返した結果、前記段階(b)の判定結果が前記所定の光沢度の下限未満の場合は、警告を出力する段階(d1)を有する、請求項3に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記段階(b)の判定結果が、前記所定の光沢度の上限を超えた場合に、段階(a)での前記定着温度から、あらかじめ設定した温度分下降させた前記定着温度によって、新たに前記第2トナーにより形成した画像を前記画像形成媒体に定着させる段階(a2)を有し、
前記段階(a2)の後、前記段階(b)により判定を行って、判定結果が前記所定の光沢度の範囲内となれば、前記段階(a1)で使用した前記定着温度を、前記第1トナーおよび前記第2トナーによって画像を形成して前記画像形成媒体に定着させる際の前記定着温度として設定する段階(c2)と、
前記段階(b)の判定結果が、前記所定の光沢度の範囲内でなければ、前記所定の光沢度の範囲内となるまで、前記段階(a2)および前記段階(b)を繰り返す、請求項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記定着温度が所定の下限温度となるまで前記段階(a2)および前記段階(b)を繰り返した結果、前記段階(b)の判定結果が前記所定の光沢度の上限を超えた場合に警告を出力する段階(d2)を有する、請求項5に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記所定の光沢度の範囲は、光沢度計により計測される所定の光沢値の範囲として規定されており、
前記段階(b)は、前記画像形成媒体に定着された画像を前記光沢度計で計測し、前記光沢値の範囲と比較して判定する、請求項1~6のいずれか一つに記載の画像形成方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一つに記載の画像形成方法をコンピューターに実行させるための画像形成プログラム。
【請求項9】
第1トナーおよび第2トナーによる画像を画像形成媒体に形成するトナー画像形成部と、
トナーによって形成された画像を前記画像形成媒体に定着させる定着部と、
前記定着部の定着温度を記憶する記憶部と、
前記第1トナーの適正な定着温度範囲内の前記定着温度を前記定着部に設定して、前記第2トナーにより形成した画像を前記画像形成媒体に定着させ、定着させた画像の光沢が所定の光沢度の範囲内であるか否かを判定し、判定結果が前記所定の光沢度の範囲内である場合に、前記定着部に設定されている前記定着温度を、前記第1トナーおよび前記第2トナーによって画像を形成して前記画像形成媒体に定着させる際の前記定着温度として前記記憶部に記憶させる制御部と、
を有し、
前記第1トナーは、イエロー、マゼンタ、シアン、および黒色のうち少なくとも1色のトナーであり、
前記第2トナーは、特色トナーである、画像形成装置。
【請求項10】
前記特色トナーは、白色トナーである、請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記判定結果が、前記所定の光沢度の下限未満の場合に、前記定着部に設定されている前記定着温度から、あらかじめ設定した温度分上昇させた前記定着温度を前記定着部に再設定して、新たに前記第2トナーにより形成した画像を前記画像形成媒体に定着させ、
再設定された前記定着温度により定着された画像の光沢が前記所定の光沢度の範囲内か否かを判定して、判定の結果が前記所定の光沢度の範囲内であれば、再設定した前記定着温度を、前記第1トナーおよび前記第2トナーによって画像を形成して前記画像形成媒体に定着させる際の前記定着温度として記憶部に記憶させる、請求項9または請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記定着温度が所定の上限温度となるまで、前記定着温度の再設定および第2トナーによる画像の定着動作を繰り返させ、判定結果が前記所定の光沢度の下限未満の場合に警告を出力する、請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記判定結果が、前記所定の光沢度の上限を超えた場合に、前記定着部に設定されている前記定着温度から、あらかじめ設定した温度分下降させた前記定着温度を前記定着部に再設定して、新たに前記第2トナーにより形成した画像を前記画像形成媒体に定着させ、
再設定された前記定着温度により定着された画像の光沢が前記所定の光沢度の範囲内か否かを判定して、判定の結果が前記所定の光沢度の範囲内であれば、再設定した前記定着温度を、前記第1トナーおよび前記第2トナーによって画像を形成して前記画像形成媒体に定着させる際の前記定着温度として前記記憶部に記憶させる、請求項9または請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記定着温度が所定の下限温度となるまで、前記定着温度の再設定および第2トナーによる画像の定着動作を繰り返させ、再設定後の判定の結果が前記所定の光沢度の上限を超えた場合に警告を出力する、請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記画像形成媒体の搬送方向における前記定着部の下流側に位置し、前記画像形成媒体の光沢を計測する光沢度計を有し、
前記記憶部に記憶された前記所定の光沢度の範囲は、前記光沢度計により計測される所定の光沢値の範囲として規定されており、
前記制御部は、前記画像形成媒体を前記光沢度計による計測によって得られた前記第2トナーにより形成された画像の前記光沢値と、前記所定の光沢値の範囲とを比較して、前記第2トナーにより形成された画像の前記光沢値が、前記所定の光沢値の範囲内か否かを判定する、請求項9~14のいずれか一つに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法、画像形成プログラム、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、通常、4個の感光体ドラムユニットを有する。このような画像形成装置は、4胴機と称される。4胴機は、通常、イエロー(Y(Yellow))、マゼンタ(M(Magenta))、シアン(C(Cyan))、および黒色(K(Key plate))の4色のトナーを使用する。本明細書では、これらのトナーを区別しない場合、YMCKトナーと称する。
【0003】
近年、電子写真方式の画像形成装置においては、YMCKトナー以外の色トナーが使用される場合がある。本明細書では、YMCKトナー以外の色トナーを、特色トナーと称する。
【0004】
特色トナーを使用する場合は、4胴に1胴を足して5胴機としたり、2胴を足して6胴機としたりして、追加の感光体ドラムユニットによりトナー画像を形成する。
【0005】
5胴機または6胴機の画像形成装置では、特色トナーを使用する場合、2次転写時に、YMCKトナーとともに特色トナーも画像形成媒体に転写させ、かつ、同時に定着させるものがある。
【0006】
ところで、プリントショップや印刷所においては、ユーザーの要望に応えて様々な特色トナーを使用できることが好ましい。しかし、多種多様な特色トナーの帯電特性および熱物性は、YMCKトナーと異なる。
【0007】
YMCKトナーそれぞれの帯電特性および熱物性は、近似しているため、一つの画像形成条件で画像形成し、定着させることができる。
【0008】
しかしながら、特色トナーの画像形成条件は、YMCKトナーと異なる場合がある。このため、多種多様な特色トナーを用いるためには、それらに特色トナーに適した画像形成条件を設定する必要がある。しかも、YMCKトナーと特色トナーとを同時に使用して良好な画像を形成できる画像形成条件は、それらトナーの帯電特性および熱物性などの事前情報から決定するのは難しい。
【0009】
従来、使用するトナーに適した画像形成条件を決定するための方法としては、たとえば、潜像担持体(感光体ドラム)の表面へ移動させたトナー潜像を現像するための現像バイアスを最適化する技術がある(特許文献1)。また、従来の技術には、現像バイアスとともに、潜像担持体へ潜像を形成するための光ビームのエネルギー密度を最適化する技術がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2003-295531号公報
【文献】特開2007-140545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の技術はいずれも、潜像担持体上での露光や現像に関する条件の最適化であり、定着条件については考慮されていない。
【0012】
一方、YMCKトナーと特色トナーを同時に使用するためには、定着条件の最適化も必要となる。特に、近年、YMCKトナーの低温定着化とともに、種々の特色トナーを使いたいという市場ニーズが相まって、最適な定着条件により、YMCKトナーと特色トナーを同時に使用できる技術が求められている。
【0013】
そこで、本発明の目的は、2種以上のトナーに適した画像形成条件を割り出して設定できる画像形成方法、画像形成プログラム、および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0015】
(1)第1トナーと第2トナーとを用いて画像形成媒体に画像を形成し、定着させる画像形成方法において、
あらかじめ設定された前記第1トナーの適正な定着温度範囲内の定着温度で、前記第2トナーにより形成した画像を前記画像形成媒体に定着させる段階(a)と、
前記段階(a)により定着させた画像の光沢が、所定の光沢度の範囲内であるかを判定する段階(b)と、
前記段階(b)の判定結果が、前記所定の光沢度の範囲内である場合に、前記段階(a)で使用した前記定着温度を、前記第1トナーおよび前記第2トナーによって画像を形成して前記画像形成媒体に定着させる際の前記定着温度として設定する段階(c)と、
を有する画像形成方法。
【0016】
(2)前記段階(b)の判定結果が、前記所定の光沢度の下限未満の場合に、段階(a)の前記定着温度から、あらかじめ設定した温度分上昇させた前記定着温度によって、新たに前記第2トナーにより形成した画像を前記画像形成媒体に定着させる段階(a1)と、
前記段階(a1)の後、前記段階(b)により判定を行って、判定結果が前記所定の光沢度の範囲内となれば、前記段階(a1)で使用した前記定着温度を、前記第1トナーおよび前記第2トナーによって画像を形成して前記画像形成媒体に定着させる際の前記定着温度として設定する段階(c1)と、
前記段階(b)の判定結果が、前記所定の光沢度の範囲内でなければ、前記所定の光沢度の範囲内となるまで、前記段階(a1)および前記段階(b)を繰り返す、上記(1)に記載の画像形成方法。
【0017】
(3)前記定着温度が所定の上限温度となるまで前記段階(a1)および前記段階(b)を繰り返した結果、前記段階(b)の判定結果が前記所定の光沢度の下限未満の場合は、警告を出力する段階(d1)を有する、上記(2)に記載の画像形成方法。
【0018】
(4)前記段階(b)の判定結果が、前記所定の光沢度の上限を超えた場合に、段階(a)での前記定着温度から、あらかじめ設定した温度分下降させた前記定着温度によって、新たに前記第2トナーにより形成した画像を前記画像形成媒体に定着させる段階(a2)を有し、
前記段階(a2)の後、前記段階(b)により判定を行って、判定結果が前記所定の光沢度の範囲内となれば、前記段階(a1)で使用した前記定着温度を、前記第1トナーおよび前記第2トナーによって画像を形成して前記画像形成媒体に定着させる際の前記定着温度として設定する段階(c2)と、
前記段階(b)の判定結果が、前記所定の光沢度の範囲内でなければ、前記所定の光沢度の範囲内となるまで、前記段階(a2)および前記段階(b)を繰り返す、上記(1)に記載の画像形成方法。
【0019】
(5)前記定着温度が所定の下限温度となるまで前記段階(a2)および前記段階(b)を繰り返した結果、前記段階(b)の判定結果が前記所定の光沢度の上限を超えた場合に警告を出力する段階(d2)を有する、上記(4)に記載の画像形成方法。
【0020】
(6)前記所定の光沢度の範囲は、光沢度計により計測される所定の光沢値の範囲として規定されており、
前記段階(b)は、前記画像形成媒体に定着された画像を前記光沢度計で計測し、前記光沢値の範囲と比較して判定する、上記(1)~(5)のいずれか一つに記載の画像形成方法。
【0021】
(7)前記第1トナーは、イエロー、マゼンタ、シアン、および黒色のうち少なくも1色のトナーであり、
前記第2トナーは、特色トナーである、上記(1)~(6)のいずれか一つに記載の画像形成方法。
【0022】
(8)前記特色トナーは、白色トナーである、上記(7)に記載の画像形成方法。
【0023】
(9)上記(1)~(8)のいずれか一つに記載の画像形成方法をコンピューターに実行させるための画像形成プログラム。
【0024】
(10)第1トナーおよび第2トナーによる画像を画像形成媒体に形成するトナー画像形成部と、
トナーによって形成された画像を前記画像形成媒体に定着させる定着部と、
前記定着部の定着温度を記憶する記憶部と、
前記第1トナーの適正な定着温度範囲内の前記定着温度を前記定着部に設定して、前記第2トナーにより形成した画像を前記画像形成媒体に定着させ、定着させた画像の光沢が所定の光沢度の範囲内であるか否かを判定し、判定結果が前記所定の光沢度の範囲内である場合に、前記定着部に設定されている前記定着温度を、前記第1トナーおよび前記第2トナーによって画像を形成して前記画像形成媒体に定着させる際の前記定着温度として前記記憶部に記憶させる制御部と、
を有する、画像形成装置。
【0025】
(11)前記制御部は、前記判定結果が、前記所定の光沢度の下限未満の場合に、前記定着部に設定されている前記定着温度から、あらかじめ設定した温度分上昇させた前記定着温度を前記定着部に再設定して、新たに前記第2トナーにより形成した画像を前記画像形成媒体に定着させ、
再設定された前記定着温度により定着された画像の光沢が前記所定の光沢度の範囲内か否かを判定して、判定の結果が前記所定の光沢度の範囲内であれば、再設定した前記定着温度を、前記第1トナーおよび前記第2トナーによって画像を形成して前記画像形成媒体に定着させる際の前記定着温度として記憶部に記憶させる、上記(10)に記載の画像形成装置。
【0026】
(12)前記制御部は、前記定着温度が所定の上限温度となるまで、前記定着温度の再設定および第2トナーによる画像の定着動作を繰り返させ、判定結果が前記所定の光沢度の下限未満の場合に警告を出力する、上記(11)に記載の画像形成装置。
【0027】
(13)前記制御部は、前記判定結果が、前記所定の光沢度の上限を超えた場合に、前記定着部に設定されている前記定着温度から、あらかじめ設定した温度分下降させた前記定着温度を前記定着部に再設定して、新たに前記第2トナーにより形成した画像を前記画像形成媒体に定着させ、
再設定された前記定着温度により定着された画像の光沢が前記所定の光沢度の範囲内か否かを判定して、判定の結果が前記所定の光沢度の範囲内であれば、再設定した前記定着温度を、前記第1トナーおよび前記第2トナーによって画像を形成して前記画像形成媒体に定着させる際の前記定着温度として前記記憶部に記憶させる、上記(10)に記載の画像形成装置。
【0028】
(14)前記制御部は、前記定着温度が所定の下限温度となるまで、前記定着温度の再設定および第2トナーによる画像の定着動作を繰り返させ、再設定後の判定の結果が前記所定の光沢度の上限を超えた場合に警告を出力する、上記(13)に記載の画像形成装置。
【0029】
(15)前記画像形成媒体の搬送方向における前記定着部の下流側に位置し、前記画像形成媒体の光沢を計測する光沢度計を有し、
前記記憶部に記憶された前記所定の光沢度の範囲は、前記光沢度計により計測される所定の光沢値の範囲として規定されており、
前記制御部は、前記画像形成媒体を前記光沢度計による計測によって得られた前記第2トナーにより形成された画像の前記光沢値と、前記所定の光沢値の範囲とを比較して、前記第2トナーにより形成された画像の前記光沢値が、前記所定の光沢値の範囲内か否かを判定する、上記(11)~(14)のいずれか一つに記載の画像形成装置。
【0030】
(16)前記第1トナーは、イエロー、マゼンタ、シアン、および黒色のうち少なくも1色のトナーであり、
前記第2トナーは、特色トナーである、上記(11)~(15)のいずれか一つに記載の画像形成装置。
【0031】
(17)前記特色トナーは、白色トナーである、上記(16)に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0032】
本発明では、第1トナーの適正な定着温度範囲で、第2トナーで形成された画像を定着させ、第2トナーの光沢が良好であった場合に、その時の定着温度を第1トナーと第2トナーを同時使用可能な定着温度として設定する。これにより、本発明では、2種以上のトナーに適した画像形成条件を割り出して設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】一実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。
図2】一実施形態に係る画像形成装置の制御系を示すブロック図である。
図3】YMCKトナーと特色トナーとを同時使用するために、定着条件を最適化するための処理手順を示すフローチャートである。
図4図3に続く、処理手順を示すフローチャートである。
図5図3に続く、処理手順を示すフローチャートである。
図6図3に続く、処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0035】
図1は、一実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。
【0036】
画像形成装置1は、給紙部100、画像形成部120、および読取部140を有する。
【0037】
給紙部100は、画像形成媒体である用紙を収納する。給紙部100は、画像形成装置1内で用紙を搬送する搬送経路101へ、用紙を供給する。搬送経路101は、複数のローラーを有し、給紙部100から、画像形成部120、読取部140を経て排紙トレイ150まで続いている。画像形成部120は、両面印刷のために、用紙の表裏を反転させる用紙反転経路102を有する。給紙部100による用紙の給紙タイミングおよび用紙の搬送速度は、制御部110によって制御される。
【0038】
画像形成部120は、周知の電子写真方式により用紙に画像を形成(印刷)する。画像形成部120は、トナー画像を用紙に転写する画像形成エンジン121と、トナー画像を用紙に定着させる定着部122を有する。画像形成部120は、制御部110によって、用紙の搬送タイミング、搬送速度に同期させて印刷するように制御される。
【0039】
画像形成エンジン121は、周知のタンデム型の画像形成エンジンである。画像形成エンジン121は、複数の感光体ドラム124およびトナーユニット125を色ごとに有する。したがって、画像形成エンジン121は、トナー画像形成部である。
【0040】
なお、複数の感光体ドラム124およびトナーユニット125に対する符号の一部は省略した。
【0041】
複数の感光体ドラム124には、各々、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、および黒色(K)の各色のトナー画像(潜像)が形成される。トナー画像は、順次重ね合わせて中間転写ベルト123に1次転写される。中間転写ベルト123に1次転写されたトナー画像は、用紙へ2次転写される。YMCKトナーのいずれか一つまたは全部は、第1トナーである。
【0042】
画像形成エンジン121は、さらに特色トナー画像を形成するための感光体ドラム124およびトナーユニット125を有する。特色トナーは、第2トナーである。特色は、たとえば白色(W(White))である。
【0043】
画像形成エンジン121は、特色トナーによる画像を形成する際、YMCKトナーと同様に、感光体ドラムに特色トナー画像を形成し、中間転写ベルト123にYMCKトナーとともに重ねて1次転写する。中間転写ベルト123に1次転写されたYMCKトナーおよび特色トナーの画像は、用紙に2次転写される。
【0044】
定着部122は、用紙に転写されたYMCKトナーおよび特色トナーによるトナー画像を所定の定着温度により同時に定着させる。定着温度は、制御部110によって制御される。
【0045】
読取部140は、用紙の搬送方向の画像形成部120より下流側に位置する。読取部140は、印刷後の用紙の画像を読み取る。また、読取部140には、光沢度計141が設けられる。
【0046】
読取部140は、搬送経路101において、用紙の上面を読み取る第1インラインセンサー401、用紙の下面を読み取る第2インラインセンサー402を有する。
【0047】
光沢度計141は、用紙の上面の光沢値を計測する位置に設けられる。画像が印刷された用紙が光沢度計141によって計測されることで、画像の光沢値が得られる。しかし、光沢度計141は、インラインセンサー同様に用紙の両面の光沢を計測できるように設けられてもよい。
【0048】
読取部140および光沢度計141は、制御部110により制御される。読取部140により読み取られた画像データ、および光沢度計141により計測された光沢値は、制御部110に送られて、記憶部20に記憶される。
【0049】
読取部140の下流には、排紙トレイ150が取り付けられる。
【0050】
図2は、一実施形態に係る画像形成装置1の制御系を示すブロック図である。画像形成装置1は、画像形成部120内に制御部110を有する。制御部110は、画像形成装置1の各部を制御する。制御部110と、画像形成装置1の各部とは、図2に示すように、信号線60により接続される。
【0051】
制御部110は、コンピューターであり、CPU10、記憶部20、通信インターフェース(I/F)30などを備える。また、制御部110には、操作表示部40が接続される。
【0052】
CPU10は、各種プログラムや各種データに基づいて、各部の制御や各種の演算処理を実行する。
【0053】
記憶部20は、あらかじめ各種プログラムや各種データを格納しておくROM、CPU10の作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶するRAM、および各種プログラムや各種データを格納するハードディスクなどから構成される。また、記憶部20は、画像形成に使用される画像データが記憶される。画像形成に使用される画像データは、外部機器から受信したジョブデータ、および所定のテスト画像のデータなどである。さらに、記憶部20は、後述するように、定着部122に設定される定着温度が記憶される。
【0054】
通信インターフェース30は、画像形成装置1と外部機器とをデータ通信により接続する。外部機器は、たとえば、コンピューターであり、ジョブデータを画像形成装置1に送信する。通信インターフェース30は、たとえば、SATA、PCI Express、USB、イーサネット(登録商標)、IEEE1394などの規格によるネットワークインターフェース、Bluetooth(登録商標)、IEEE802.11などの無線通信インターフェース、などが用いられる。
【0055】
操作表示部40は、タッチパネル付きディスプレイ、テンキー、スタートボタン、ストップボタン等を備える。操作表示部40は、各部の状態、画像データなどが表示される。また、操作表示部40は、画像形成に関する各種設定など、ユーザーからの指示の入力に使用される。
【0056】
なお、本実施形態では、画像形成部120内の制御部110が、画像形成装置1の各部を制御する。しかし、実施形態としては、これに限定されず、画像形成部120以外に設けた制御用のコンピューターにより画像形成装置1の各部を制御させてもよい。
【0057】
次に、YMCKトナーと特色トナーを同時使用するために、定着条件を最適化するための処理について説明する。
【0058】
図3~6は、YMCKトナーと特色トナーとを同時使用するために、定着条件を最適化するための処理手順を示すフローチャートである。
【0059】
まず、制御部110は、記憶部20から、使用予定である特色トナーの定着条件の情報があるか否か判断する(S101)。使用予定である特色トナーは、たとえば、画像形成装置1内にセットされている特色トナーである。
【0060】
特色トナーの定着条件の情報は、良好な画像を形成するための画像形成条件の一つであり、本実施形態では、特色トナーで形成された画像の光沢が良好なものとなる定着温度範囲である。
【0061】
特色トナーの定着条件の情報は、たとえば、ライブラリーなどとして、記憶部20に記憶される。
【0062】
ライブラリーは、以前にこの処理手順が実行された特色トナーについて、その特色トナーのID(Identification)などとともに、処理の結果である定着温度が記録される。また、ライブラリーは、後述する実施例のように、特色トナーに対して良好な光沢が得られる定着温度範囲を記録したものであってもよい。
【0063】
ライブラリーは、画像形成装置1内の記憶部20以外の記憶媒体や情報処理装置などに記憶させておいて、そこから記憶部20に読み込んだものであってもよい。記憶媒体は、たとえば、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの可搬式の記憶媒体である。情報処理装置は、たとえば、ネットワークで接続されたPC(Personal Computer)、サーバーなどであり、また、携帯情報端末(スマートフォン、タブレットなど)などであってもよい。
【0064】
ライブラリーは、特色トナーのIDとともに、使用する用紙ごとに、良好な光沢度が得られる定着温度範囲が記録される。たとえば、特色トナーのIDは、特色トナーを識別できるものであればよく、たとえば、メーカー名、製品名、製品番号などが使用される。用紙は、たとえば、用紙のメーカー名、製品名、製品番号、および用紙の仕様などによって識別される。
【0065】
また、ライブラリーには、特色トナーだけでなく、一般的なYMCKトナーについても、使用に適した定着条件が記録されることが好ましい。ライブラリーに、YMCKトナーの定着条件も記録されることで、上記使用可能窓の設定に、同じライブラリーから読み出して使用できる。
【0066】
ライブラリーは、たとえば、下記表1のようにトナー種類およびIDごとに、複数の用紙と、用紙ごとに良好な光沢が得られる定着温度範囲が記録される。
【0067】
【表1】
【0068】
S101のステップにおいて、特色トナーの定着条件の情報が記憶部20にある場合(S102:YES)、制御部110は、特色トナーの定着温度が使用可能窓の範囲内か否か判断する(S110)。使用可能窓とは、YMCKトナーと同時に定着させることができる定着温度範囲を示している。
【0069】
表1に示した例では、KM社Jペーパー(コニカミノルタ株式会社製「コニカミノルタJペーパー」)を使用する場合、YMCKトナーの適正な定着温度範囲が170~190℃である。したがって、使用可能窓は、170~190℃の範囲となる。
【0070】
特色トナーである白色トナーにおいては、KM社W1の白色トナーの適正な定着温度範囲が170~190℃である。したがって、KM社W1の白色トナーの定着温度は、使用可能窓内にある。
【0071】
また、A社W001の白色トナーの適正な定着温度範囲は190~200℃である。したがって、A社W001の白色トナーの定着温度は使用可能窓内にある。
【0072】
一方、B社W123の白色トナーの適正な定着温度範囲は195~200℃である。したがって、B社W123の白色トナーの定着温度は使用可能窓内にない。
【0073】
S110のステップにおいて、使用可能窓の範囲内であると判断された場合(S110:YES)、制御部110は、使用予定の特色トナーとYMCKトナーとが設定変更しなくても、同時使用であることを操作表示部40へ出力する(S111)。操作表示部40では、たとえば「特色トナーおよびYMCKトナーの同時使用可能」などと表示される。S111のステップにおける出力は、外部の情報処理装置などへ出力されてもよい。
【0074】
一方、S110のステップにおいて、使用可能窓の範囲ではない判断された場合(S110:NO)、制御部110は、使用予定の特色トナーとYMCKトナーとの同時使用不可であることを示す警告を操作表示部40へ出力する(S112)。操作表示部40では、たとえば「特色トナーおよびYMCKトナーの同時使用不可」などと表示される。S112のステップにおける出力は、外部の情報処理装置などへ出力されてもよい。
【0075】
S101のステップにおいて、使用予定である特色トナーの定着条件の情報が記憶部20にない場合(S101:NO)、制御部110は、以下のステップにより、使用予定の特色トナーをテストする。
【0076】
まず、制御部110は、YMCKトナーの適正な定着温度範囲から定着温度を設定する(S102)。制御部110は、記憶部20に記憶されているYMCKトナーの適正な定着温度範囲の中から、たとえば、中央値を選択して設定する。YMCKトナーの適正な定着温度範囲は、たとえば、上述した表1に示されたようなライブラリーに登録された適正な定着温度範囲を使用する。なお、定着温度は、YMCKトナーの適正な定着温度範囲から、ユーザーによって任意に設定されてもよい。
【0077】
続いて、制御部110は、用紙の搬送を開始させ、画像形成エンジン121に特色トナーによるトナー画像を形成させ、定着部122により、用紙に画像を定着させる(S103)。この段階での定着温度は、S102のステップを経てS103のステップに入った場合、S102で設定された定着温度であり、後述するS120または130のステップを経てS103のステップに入った場合、S120または130で設定された定着温度である。
【0078】
続いて、制御部110は、光沢度計141により、画像形成後の用紙の光沢を計測する(S104)。光沢度計141により光沢値を計測する位置は、用紙全面でもよいし、特色トナーにより画像を形成した位置だけでもよい。たとえば、特色トナーによるテスト画像は、あらかじめ用紙のどの位置に形成するか決めておいて、光沢度計141により、その位置を計測させる。逆に、画像形成装置内における光沢度計141の設置位置に合わせて、テスト画像が形成されるようにしてもよい。
【0079】
続いて、画像の光沢度が、所定の光沢度の範囲内か否かが判定される。このために、制御部110は、S104のステップで取得された光沢値と所定の光沢値の範囲とを比較して、取得された光沢値が所定の光沢値の範囲内か否かを判断する(S105)。
【0080】
所定の光沢値の範囲は、たとえば、目視評価によりあらかじめ規定される。目視評価は、たとえば、まず、ユーザー(画像形成装置1の操作者だけでなく、印刷所のクライアントなども含む)によって光沢度の異なる画像見本の中から光沢度が評価される。目視評価によって、許容される光沢度の上限および下限が決められる。そして、目視評価によって得られた光沢度の上限と下限の画像が光沢度計141により計測される。光沢度計141による計測で得られた光沢値が、所定の光沢値の上限および下限とされる。得られた光沢値の範囲は、記憶部20に記憶させておき、このステップまたはこの処理手順の開始時などに読み出して使用される。なお、上記目視評価に使用される光沢度計は、画像形成装置1に内蔵された光沢度計141に限定されない。ただし、画像形成装置1に内蔵された光沢度計以外の光沢時計を使用する場合は、画像形成装置1に内蔵された光沢度計141と計測値の整合を取る必要がある。
【0081】
S105のステップにおいて、S104のステップで取得された光沢値が所定の光沢値の範囲内である場合(S105:YES)、制御部110は、現在設定されている定着温度を、特色トナーとYMCKトナーの同時使用可能な定着温度として記憶部20に記憶する(S106)。現在設定されている定着温度とは、S103のステップにおいて定着動作が行われた定着温度である(以下同様)。記憶させる定着温度は、すでに説明したように、たとえば、ライブラリーに、特色トナーのIDなどとともに定着条件として記録される。
【0082】
続いて、制御部110は、テストした特色トナーがYMCKトナーと同時使用可能であることを操作表示部40へ出力する(S107)。操作表示部40では、たとえば「特色トナーおよびYMCKトナーの同時使用可能」などと表示される。S107のステップは、テストした特色トナーがYMCKトナーと同時使用可能であるか否かの判定結果の出力である。S107のステップにおける出力は、外部の情報処理装置などへ出力されてもよい。
【0083】
その後、制御部110は、処理を終了する。
【0084】
S105のステップにおいて、S104のステップで取得された取得した光沢値が所定の範囲未満の場合(S105:LOW)、制御部110は、現在設定されている定着温度に所定の温度を加算して定着温度を再設定する(S120)。所定の温度は、ユーザーによって任意に設定される(以下同様)。所定の温度は、たとえば5℃である(以下同様)。
【0085】
続いて、制御部110は、再設定後の定着温度が、YMCKトナーの適正な定着温度範囲の上限温度(所定の上限温度)を超えたか否かを判断する(S121)。再設定後の定着温度が、YMCKトナーの適正な定着温度範囲の上限温度を超えた場合(S121:YES)、制御部110は、テストした特色トナーがYMCKトナーと同時使用不可であることを示す警告を操作表示部40へ出力する(S122)。操作表示部40では、たとえば「特色トナーおよびYMCKトナーの同時使用不可」などと表示される。S122のステップは、テストした特色トナーがYMCKトナーと同時使用可能であるか否かの判定結果の出力である。S122のステップにおける出力は、外部の情報処理装置などへ出力されてもよい。その後、制御部110は、処理を終了する。
【0086】
S121のステップにおいて、再設定後の定着温度が、YMCKトナーの適正な定着温度範囲の上限温度を超えていない場合(S121:NO)、制御部110は、S103のステップへ戻り、以降の処理を継続する。
【0087】
S105のステップにおいて、S104のステップで取得した光沢値が所定の光沢値の範囲を超える場合(S105:HI)、制御部110は、現在設定されている定着温度から所定の温度を減算して定着温度を再設定する(S130)。
【0088】
続いて、制御部110は、再設定後の定着温度が、YMCKトナーの適正な定着温度範囲の下限温度(所定の下限温度)未満か否かを判断する(S131)。再設定後の定着温度が、YMCKトナーの適正な定着温度範囲の下限温度未満の場合(S131:YES)、制御部110は、テストした特色トナーがYMCKトナーと同時使用不可であることを示す警告を操作表示部40へ出力する(S132)。操作表示部40では、たとえば「特色トナーおよびYMCKトナーの同時使用不可」などと表示される。S132のステップは、テストした特色トナーがYMCKトナーと同時使用可能であるか否かの判定結果の出力である。S132のステップにおける出力は、外部の情報処理装置などへ出力されてもよい。その後、制御部110は、処理を終了する。
【0089】
S131のステップにおいて、再設定後の定着温度が、YMCKトナーの適正な定着温度範囲の下限温度未満でない場合(S131:NO)、制御部110は、S103のステップへ戻り、以降の処理を継続する。
【0090】
以上の処理により、本実施形態は、特色トナーがYMCKトナーと同時に使用可能な定着条件を割り出して記憶し、定着温度を適切な温度に設定できる。
【0091】
また、本実施形態では、定着温度を所定の上限温度を超えるまで段階的に上昇させ、その間に計測された光沢値が、良好な光沢値の範囲になれば、その時の定着温度を記憶させ、良好な光沢値の範囲にならなければ使用不可とする。
【0092】
また、本実施形態では、定着温度を所定の下限温度未満となるまで段階的に下降させ、その間に計測された光沢値が、適正な光沢値の範囲になれば、その時の定着温度を記憶させ、適正な光沢値の範囲にならなければ使用不可とする。
【実施例
【0093】
実施例として、YMCKトナーおよび特色トナーを使用し、定着温度を変えて画像形成を行い、光沢値および目視による光沢を評価した。
【0094】
YMCKトナーおよび特色トナーは、特開2003-5424号公報に記載されたトナーの製法に従って製造した。具体的な製造方法は下記のとおりである。
【0095】
(マゼンタ(M)トナー)
n-ドデシル硫酸ナトリウム0.90kgと純水10.0Lを入れ撹拌溶解した。この溶液に、リーガル330R(キャボット株式会社製カーボンブラック)1.20kgを徐々に加え、1時間よく撹拌した後に、サンドグラインダー(媒体型分散機)を用いて、20時間連続分散した。これを「着色剤分散液1」とした。また、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.055kgとイオン交換水4.0Lからなる溶液を「アニオン界面活性剤溶液A」とした。
【0096】
ノニルフェノールポリエチレンオキサイド10モル付加物0.014kgとイオン交換水4.0Lからなる溶液を「ノニオン界面活性剤溶液B」とした。
【0097】
過硫酸カリウム223.8gをイオン交換水12.0Lに溶解した溶液を「開始剤溶液C」とした。
【0098】
温度センサー、冷却管、窒素導入装置を付けた100Lのグラスライニング(GL)反応釜に、WAXエマルジョン(数平均分子量3000のポリプロピレンエマルジョン:数平均1次粒子径=120nm/固形分濃度=29.9%)3.41kg、「アニオン界面活性剤溶液A」全量および「ノニオン界面活性剤溶液B」全量を入れ、撹拌を開始した。次いで、イオン交換水44.0Lを加えた。
【0099】
次いで、加熱を開始し、液温度が75℃になったところで、「開始剤溶液C」全量を滴下した。その後、液温度を75±1℃に制御しながら、スチレン12.1kg、アクリル酸n-ブチル2.88kg、メタクリル酸1.04kgおよびt-ドデシルメルカプタン548gのあらかじめ混合した溶液を滴下した。滴下終了後、液温度を80±1℃に上げて、6時間加熱撹拌して重合を完了した。次いで、液温度を40℃以下に冷却し撹拌を停止し、ポールフィルターで濾過し、これを「ラテックス1-A」とした。
【0100】
なお、「ラテックス1-A」中の樹脂粒子のガラス転移点は57℃、軟化点は121℃、重量平均分子量は1.27万、重量平均粒径は120nmであった。
【0101】
また、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.055kgをイオン交換純水4.0Lに溶解した溶液を「アニオン界面活性剤溶液D」とした。また、ノニルフェノールポリエチレンオキサイド10モル付加物0.014kgをイオン交換水4.0Lに溶解した溶液を「ノニオン界面活性剤溶液E」とした。
【0102】
過硫酸カリウム(関東化学社製)200.7gをイオン交換水12.0Lに溶解した溶液を「開始剤溶液F」とした。
【0103】
温度センサー、冷却管、窒素導入装置、櫛形バッフルを付けた100LのGL反応釜に、WAXエマルジョン(数平均分子量3000のポリプロピレンエマルジョン:数平均1次粒子径=120nm、固形分濃度=29.9%)3.41kg、「アニオン界面活性剤溶液D」全量および「ノニオン界面活性剤溶液E」全量を入れ、撹拌を開始した。
【0104】
次いで、イオン交換水44.0Lを投入した。加熱を開始し、液温度が70℃になったところで、「開始剤溶液F」を添加した。
【0105】
次いで、スチレン11.0kg、アクリル酸n-ブチル4.00kg、メタクリル酸1.04kgおよびt-ドデシルメルカプタン9.02gのあらかじめ混合した溶液を滴下した。滴下終了後、液温度を72℃±2℃に制御して6時間加熱撹拌を行った後、液温度を80℃±2℃に上げて12時間加熱撹拌し、重合を完了した。
【0106】
次いで、液温度を40℃以下に冷却し撹拌を停止し、ポールフィルターで濾過し、これを「ラテックス1-B」とした。
【0107】
なお、「ラテックス1-B」中の樹脂粒子のガラス転移点は58℃、軟化点は132℃、重量平均分子量は24.5万、重量平均粒径は110nmであった。
【0108】
塩析剤として塩化ナトリウム5.36kgをイオン交換水20.0Lに溶解した溶液を「塩化ナトリウム溶液G」とした。
【0109】
温度センサー、冷却管、窒素導入装置、粒径および形状のモニタリング装置を付けた100LのSUS反応釜に、上記で作製した「ラテックス1-A」を20.0kgと「ラテックス1-B」を5.2kgと「着色剤分散液1」を0.4kgとイオン交換水20.0kgとを入れ撹拌した。
【0110】
10分間放置した後に昇温を開始し、液温度85℃まで60分で昇温し、85±2℃にて加熱撹拌して塩析/融着させながら粒径成長させ、融着粒子の平均粒径が3μmになった段階で「塩化ナトリウム溶液G」を添加して粒径成長を停止した。この液を「融着粒子分散液1」とした。
【0111】
また、同様にして融着粒子の平均粒径が4μm、6μmになるまで粒径成長させた液を作製し、これらを「融着粒子分散液2」および「融着粒子分散液3」とした。
【0112】
次いで、温度センサー、冷却管を付けた5Lの反応容器に、上記の「融着粒子分散液1」~「融着粒子分散液3」5.0kgを入れ、液温度92±2℃にて、融着粒子の形状変化を観察しながら、形状係数の平均値が0.98以上になるまで加熱撹拌を行い、融着粒子の球形化処理を行った。これらを「球形粒子分散液1」(平均粒径3μm)、「球形粒子分散液2」(平均粒径4μm)および「球形粒子分散液3」(平均粒径6μm)とした。
【0113】
次いで、「球形粒子分散液1」~「球形粒子分散液3」を1kgと平均粒径0.6mmのガラスビーズ1kgとをそれぞれサンドグラインダー(媒体型分散機;内径200mm、撹拌ディスク径180mm)に入れて、85±2℃、500rpmにて0.5~8時間連続撹拌し、扁平化処理を行った。所定時間の処理を行った後、40℃以下に冷却し、撹拌停止後、目開き200メッシュの篩を通してガラスビーズを取り除いた後、ヌッチェを用いてウェットケーキ状の扁平黒粒子を濾取した。イオン交換水による洗浄と濾過を3回行った後、ウェットケーキ状の扁平黒粒子をフラッシュジェットドライヤーを用いて吸気温度50℃にて予備乾燥し、さらに流動層乾燥機を用いて55℃の温度で乾燥して「扁平マゼンタ粒子」を製造した。
【0114】
得られた各「扁平マゼンタ粒子」に、疎水性シリカ微粒子R805を所定量ヘンシェルミキサーにて外添混合して「マゼンタトナー(Mトナー)」を製造した。
【0115】
(イエロー(Y)トナー)
マゼンタトナー製造において、着色剤をC.I.ピグメントレッド122の代わりにC.I.ピグメントイエロー17を1.05kg使用した他は同様にして「イエロートナー(Yトナー)」を製造した。
【0116】
(シアン(C)トナー)
マゼンタトナー製造において、着色剤をC.I.ピグメントレッド122の代わりにC.I.ピグメントブルー15:3を0.6kg使用した他は同様にして「シアントナー(Cトナー)」を製造した。
【0117】
(黒色(K)トナー)
マゼンタトナー製造において、着色剤をC.I.ピグメントレッド122の代わりにリーガル330R(キャボット株式会社製カーボンブラック)を1.2kg使用した他は同様にして「黒色トナー(Kトナー)」を製造した。
【0118】
(白色(W)トナー)
マゼンタトナー製造において、着色剤をC.I.ピグメントレッド122の代わりに酸化チタンを1.6kg使用した。また、上記ラテックス1-Bのスチレンおよびアクリル酸n-ブチルの使用量を下記表2のとおり変更し、W-1からW-5の5種類の「白色トナー(Wトナー)」を製造した。その他の構成は、マゼンタトナー製造と同様にした。
【0119】
【表2】
【0120】
出来上がった各トナーの物性は、下記表3のとおりであった。YMCKトナーは、それぞれ1種類使用した。特色トナーは、W-1からW-5までの5種類の白色トナーを使用した。W-1からW-5のトナーの物性は、顔料の違いなどから、YMCKトナーと原材料の使用量が同じであっても、わずかに異なる。
【0121】
【表3】
【0122】
(現像剤の調製)
上記のようにして得られたトナーの各々と、スチレン-アクリル樹脂で被覆した45μm径のフェライトキャリアとを混合して、イエロー、マゼンタ、シアン、黒色、および白色の各トナーを調製した。得られた現像剤のトナー帯電量はいずれも-20~-25μC/gの範囲内であった。
【0123】
(画像形成)
画像形成は、実施形態同様のカラー画像形成装置を用い、定着温度を変えて行った。使用いたトナーは、上述のとおり、現像剤を混合して使用した。
【0124】
定着温度以外の画像形成条件は下記のとおりである。
【0125】
プロセススビード:220mm/sec(A4横送りで40枚/分)、
帯電電位(未露光部電位):-750V、
最大露光部電位:-30V以下(0~-30Vの間)、
現像:DC+AC印加の2成分非接触現像。DCバイアスは-650V固定、AC周波数は8kHz固定し、ACバイアスの振幅と現像ローラーの回転数を変化させて最適条件に設定、
転写:転写バイアスを変化させて最適条件に設定。
【0126】
用紙は、コニカミノルタ株式会社製(KM社)、「コニカミノルタJペーパー」坪量64g/mを使用した。
【0127】
(光沢値計測)
用紙の画像形成された部分を光沢度計により計測し、画像の光沢値を得た。光沢度計は、コニカミノルタ株式会社製、GM-268A(測定角度60°)を使用した。
【0128】
表4には、各トナーについて、定着温度ごとの光沢値を示している。
【0129】
【表4】
【0130】
(目視評価方法)
さらに、被験者3名に、形成された画像の光沢について評価してもらった。評価の基準は、「高級レストランのメニューとして最適な光沢はどれか」というものを〇(好ましい)、×(好ましくない)で答えてもらった。〇を1点、×を0点として、2点以上を取れた光沢値を適正光沢とした。
【0131】
表4中、目視評価によって良好な光沢となった光沢値には、数値の前に「*」を付した。
【0132】
(評価結果)
上記光沢値と目視評価の結果、YMCKトナーの良好な光沢値の範囲は、40~65であることがわかる。そして、この光沢値の範囲が得られる定着温度範囲は、170~190℃であることがわかる。この定着温度がYMCKトナーの良好な画像を得るための適正な定着温度範囲となる。
【0133】
一方、白色トナーの好ましい光沢値の範囲は、W-1からW-5で異なっている。W-1では30~45、W-2では30~37.5、W-3では30~33.75、W-4では33.75~45、W-5では33.75~45である。
【0134】
したがって、YMCKトナーの適正な定着温度範囲内で、良好な光沢値が得られている白色トナーは、W-1では170~190℃であることがわかる。また、W-2では、190℃のみ使用可能であることがわかる。また、W-4では、170℃のみ使用可能であることがわかる。一方、W-3およびW-5はYMCKトナーとは同時使用できないことがわかる。
【0135】
以上説明した実施形態および実施例によれば以下の効果を奏する。
【0136】
上述した一実施形態では、まず、第1トナーであるYMCKトナーの適正な定着温度範囲で、第2トナーである特色トナーによって形成された画像を定着させる。そして、実施形態では、第2トナーにより形成された画像の光沢が良好であった場合に、その時の定着温度をYMCKトナーと特色トナーの同時使用が可能な定着温度に設定される。このため、実施形態では、YMCKトナーと特色トナーの同時使用が可能な画像形成条件によって画像を形成できるようになるので、YMCKトナーと特色トナーを同時使用して良好な画像が得られる。これにより、一実施形態では、YMCKトナーと特色トナーの同時使用できるため、生産性が向上する。
【0137】
また、一実施形態では、YMCKトナーの適正な定着温度範囲では、特色トナーによって形成された画像の光沢が良好な状態とならない場合、その特色トナーとYMCKトナーとの同時使用は不可であることを示す警告を出力することとした。このため、一実施形態では、画像形成条件が合わない2種以上のトナーを同時使用してしまって、光沢不良が発生することを防止することができる。
【0138】
以上、実施形態および実施例を説明したが、本発明は、実施形態および実施例に限定されず、様々な組み合わせが可能である。
【0139】
上述した実施形態および実施例では、普通紙を用いて、YMCYトナーと白色トナーの同時使用できる定着温度を割り出すテストを行った。このようなテストは、用紙が変わるごとに行うことが好ましい。これは、用紙の坪量が変わると熱の伝達特性も変わるため、同じ定着温度でも光沢が変わるためである。また、用紙の表面荒さが変わった場合も、光沢が変化するためである。
【0140】
たとえば、用紙に、A社のプライク(Plastic-Likeな用紙)を用いた場合に、YMCKトナーによる画像の良好な光沢値は、48~78である。一方、目視評価の結果、白色トナーによる画像の良好な光沢であると判断される光沢値が36~54であったとする。
【0141】
同様に、B社のプライクを用いた場合に、YMCKトナーによる画像の良好な光沢値は、48~78である。一方、目視評価の結果、白色トナーによる画像の良好な光沢であると判断される光沢値が36~54であったとする。
【0142】
本実施形態では、これらプライクの場合も、上述したテストを行うことで、YMCKトナーによる良好な光沢値が得られる適正な定着温度範囲に、白色トナーによる画像の良好な光沢値が得られる定着温度があれば、その定着温度が同時使用可能な定着温度として設定される。
【0143】
また、本実施形態では、プライクの場合も同様に、YMCKトナーによる良好な光沢値が得られる適正な定着温度範囲に、白色トナーによる画像の良好な光沢値が得られる定着温度がなければ、同時使用不可であることが出力される。
【0144】
また、上述した実施形態および実施例では、第2トナーである特色トナーとして白色トナーを例に説明した。しかし、本発明の第2トナーは、白色以外の特色トナーであっても良い。第2トナーとしては、たとえば、金色や銀色などの金属色のトナー、また、透明トナーなどであってもよい。
【0145】
また、上述した実施形態および実施例では、第1トナーとしてYMCKトナーを例に説明した。しかし、本発明の第1トナーとしては、YMCKトナー以外のトナーであっても良い。
【0146】
また、上述した実施形態および実施例では、第1トナーとしてYMCK4色のトナーを同時使用する例を説明した。しかし、第1トナーとしては、YMCKトナーのうち、少なくともいずれか1色のトナーであってもよい。
【0147】
また、上述した実施例では、YMCKトナーおよび白色トナーを扁平化処理することで、扁平粒子のトナーを製造した。しかし、第1トナーおよび第2トナーの粒子形状は特に限定されない。
【0148】
また、実施形態の説明の中で使用した条件や数値などはあくまでも説明のためのものであり、本発明がこれら条件や数値に限定されるものではない。本発明は特許請求の範囲に記載された構成に基づき様々な改変が可能であり、それらについても本発明の範疇である。
【符号の説明】
【0149】
1…画像形成装置、
10…CPU、
20…記憶部、
40…操作表示部、
100…給紙部、
101…搬送経路、
110…制御部、
120…画像形成部、
121…画像形成エンジン、
123…中間転写ベルト、
140…読取部、
150…排紙トレイ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6