(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】放射線撮影システム、放射線撮影制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/50 20240101AFI20240709BHJP
A61B 6/00 20240101ALI20240709BHJP
【FI】
A61B6/50 517
A61B6/00 550Z
(21)【出願番号】P 2020104929
(22)【出願日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船木 友希
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 篤史
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-097429(JP,A)
【文献】特開2017-176399(JP,A)
【文献】特開2008-200360(JP,A)
【文献】特開2012-143497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を発生させる放射線源と、
受けた放射線に応じた放射線画像を生成する画像生成手段と、
前記放射線源と前記画像生成手段との間に、前記放射線の照射軸方向に並ぶように設けられた複数の格子と、を備え、
タルボ干渉計又はタルボ・ロー干渉計の原理により前記格子上に形成されたモアレ縞の放射線画像であるモアレ縞画像を生成する放射線撮影システムであって、
被写体が存在しない状態で生成されたモアレ縞画像である被写体なし画像を、前記格子の変形に関連する状況に応じて取得する取得手段と、
前記被写体が介在する状態で生成されたモアレ縞画像である被写体あり画像を、前記被写体なし画像を用いて補正する補正手段と、
複数の前記格子のうちの少なくともいずれかの前記格子の位置を検知する位置センサーと、を備え、
前記取得手段は、
前記被写体あり画像を前記画像生成手段に生成させる前に、前記被写体なし画像を前記画像生成手段に生成させ、
前記被写体なし画像の生成後の前記状況に応じて、前記被写体なし画像を前記画像生成手段に再生成させるようになっており、
前記補正手段は、前記被写体なし画像が再生成された場合、再生成された前記被写体なし画像を用いて前記被写体あり画像を補正し、
前記取得手段は、前記位置センサーが検知した位置の所定位置からのずれが所定以上となった場合、前記被写体なし画像を前記画像生成手段に再生成させる、放射線撮影システム。
【請求項2】
前記画像生成手段が前記被写体なし画像を生成した後に、前記画像生成手段が生成した前記被写体あり画像の枚数を計数する計数手段を備え、
前記取得手段は、前記計数手段が計数した枚数が所定以上となった場合に、前記被写体なし画像を前記画像生成手段に再生成させる、請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項3】
前記画像生成手段が前記被写体なし画像を生成してからの経過時間を計時する計時手段を備え、
前記取得手段は、前記計時手段が計時した経過時間が所定以上となった場合に、前記被写体なし画像を前記画像生成手段に再生成させる、請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項4】
当該放射線撮影システムの温度又は当該放射線撮影システムの設置空間の温度を測定する温度センサーを備え、
前記取得手段は、前記温度センサーが測定した温度が所定以上となった場合に、前記被写体なし画像を前記画像生成手段に再生成させる、請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項5】
放射線を発生させる放射線源と、
受けた放射線に応じた放射線画像を生成する画像生成手段と、
前記放射線源と前記画像生成手段との間に、前記放射線の照射軸方向に並ぶように設けられた複数の格子と、を備え、
タルボ干渉計又はタルボ・ロー干渉計の原理により前記格子上に形成されたモアレ縞の放射線画像であるモアレ縞画像を生成する放射線撮影システムであって、
被写体が存在しない状態で生成されたモアレ縞画像である被写体なし画像を、前記格子の変形に関連する状況に応じて取得する取得手段と、
前記被写体が介在する状態で生成されたモアレ縞画像である被写体あり画像を、前記被写体なし画像を用いて補正する補正手段と、
複数の前記格子のうちの少なくともいずれかの前記格子の位置を検知する位置センサーと、を備え、
前記取得手段は、
予め生成させておいた複数の前記被写体なし画像のうち、前記位置センサーが検知した位置の所定位置からのずれの大きさに応じた前記被写体なし画像を選択し、
前記補正手段は、前記取得手段が選択した前記被写体なし画像を用いて前記被写体あり画像を補正する放射線撮影システム。
【請求項6】
前記画像生成手段が生成した前記被写体あり画像の枚数を計数する計数手段を備え、
前記取得手段は、複数の前記被写体なし画像のうち前記計数手段が計数した枚数に応じた前記被写体なし画像を選択する、請求項5に記載の放射線撮影システム。
【請求項7】
前記画像生成手段が前記被写体なし画像を生成してからの経過時間を計時する計時手段を備え、
前記取得手段は、複数の前記被写体なし画像のうち前記計時手段が計時した経過時間に応じた前記被写体なし画像を選択する、請求項5に記載の放射線撮影システム。
【請求項8】
当該放射線撮影システムの温度又は当該放射線撮影システムの設置空間の温度を測定する温度センサーを備え、
前記取得手段は、複数の前記被写体なし画像のうち前記温度センサーが測定した温度に応じた前記被写体なし画像を選択する、請求項5に記載の放射線撮影システム。
【請求項9】
放射線を発生させる放射線源と、受けた放射線に応じた放射線画像を生成する画像生成手段と、前記放射線源と前記画像生成手段との間に、前記放射線の照射軸方向に並ぶように設けられた複数の格子と、複数の前記格子のうちの少なくともいずれかの前記格子の位置を検知する位置センサーと、を備え、タルボ干渉計又はタルボ・ロー干渉計の原理により前記格子上に形成されたモアレ縞の放射線画像であるモアレ縞画像を生成する放射線撮影装置を制御する撮影制御装置であって、
被写体が存在しない状態で生成されたモアレ縞画像である被写体なし画像を、前記格子の変形に関連する状況に応じて取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記被写体なし画像を用いて、前記被写体が介在する状態で生成されたモアレ縞画像である被写体あり画像を補正する補正手段へ出力する出力手段と、を備え、
前記取得手段は、
前記被写体あり画像を前記画像生成手段に生成させる前に、前記被写体なし画像を前記画像生成手段に生成させ、
前記被写体なし画像の生成後の前記状況に応じて、前記被写体なし画像を前記画像生成手段に再生成させるようになっており、
前記補正手段は、前記被写体なし画像が再生成された場合、再生成された前記被写体なし画像を用いて前記被写体あり画像を補正し、
前記取得手段は、前記位置センサーが検知した位置の所定位置からのずれが所定以上となった場合、前記被写体なし画像を前記画像生成手段に再生成させる、撮影制御装置。
【請求項10】
放射線を発生させる放射線源と、受けた放射線に応じた放射線画像を生成する画像生成手段と、前記放射線源と前記画像生成手段との間に、前記放射線の照射軸方向に並ぶように設けられた複数の格子と、複数の前記格子のうちの少なくともいずれかの前記格子の位置を検知する位置センサーと、を備え、タルボ干渉計又はタルボ・ロー干渉計の原理により前記格子上に形成されたモアレ縞の放射線画像であるモアレ縞画像を生成する放射線撮影装置を制御する撮影制御装置であって、
被写体が存在しない状態で生成されたモアレ縞画像である被写体なし画像を、前記格子の変形に関連する状況に応じて取得する取得手段と、
前記被写体なし画像
を、前記被写体が介在する状態で生成されたモアレ縞画像である被写体あり画像を補正する補正手段へ出力する出力手段と、
を備え、
前記取得手段は、
予め生成させておいた複数の前記被写体なし画像のうち、前記位置センサーが検知した位置の所定位置からのずれの大きさに応じた前記被写体なし画像を選択
し、
前記出力手段は、
前記取得手段が選択した前記被写体なし画像を、前記補正手段へ出力する、撮影制御装置。
【請求項11】
放射線を発生させる放射線源と、受けた放射線に応じた放射線画像を生成する画像生成手段と、前記放射線源と前記画像生成手段との間に、前記放射線の照射軸方向に並ぶように設けられた複数の格子と、複数の前記格子のうちの少なくともいずれかの前記格子の位置を検知する位置センサーと、を備え、タルボ干渉計又はタルボ・ロー干渉計の原理により前記格子上に形成されたモアレ縞の放射線画像であるモアレ縞画像を生成する放射線撮影装置を制御する撮影制御装置の制御部に、
被写体が存在しない状態で生成されたモアレ縞画像である被写体なし画像を、前記格子の変形に関連する状況に応じて取得する取得処理と、
前記取得処理において取得した前記被写体なし画像を、前記被写体が介在する状態で生成されたモアレ縞画像である被写体あり画像を、前記被写体なし画像を用いて補正する補正手段へ出力する出力処理と、を実行させ、
前記取得処理は、
前記制御部に、前記被写体あり画像を前記画像生成手段に生成させる前に、前記被写体なし画像を前記画像生成手段に生成させ、
前記被写体なし画像の生成後の前記状況に応じて、前記被写体なし画像を前記画像生成手段に再生成させるようになっており、
前記制御部に、前記位置センサーが検知した位置の所定位置からのずれが所定以上となった場合、前記被写体なし画像を前記画像生成手段に再生成させる、プログラム。
【請求項12】
放射線を発生させる放射線源と、受けた放射線に応じた放射線画像を生成する画像生成手段と、前記放射線源と前記画像生成手段との間に、前記放射線の照射軸方向に並ぶように設けられた複数の格子と、複数の前記格子のうちの少なくともいずれかの前記格子の位置を検知する位置センサーと、を備え、タルボ干渉計又はタルボ・ロー干渉計の原理により前記格子上に形成されたモアレ縞の放射線画像であるモアレ縞画像を生成する放射線撮影装置を制御する撮影制御装置の制御部に、
被写体が存在しない状態で生成されたモアレ縞画像である被写体なし画像を、前記格子の変形に関連する状況に応じて取得する取得処理と、
前
記被写体なし画像を、前記被写体が介在する状態で生成されたモアレ縞画像である被写体あり画像を補正する補正手段へ出力する出力処理と、を実行させ、
前記取得処理は、
前記制御部に、予め生成させておいた複数の前記被写体なし画像のうち、前記位置センサーが検知した位置の所定位置からのずれに応じた前記被写体なし画像を選択させ
、
前記出力処理は、
前記制御部に、前記取得処理により選択された前記被写体なし画像を、前記補正手段へ出力させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影システム、放射線撮影制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線を発生させる放射線源と、受けた放射線に応じた放射線画像を生成する画像生成手段と、放射線源と画像生成手段との間に、放射線の照射軸方向に並ぶように設けられた複数の格子と、を備え、タルボ干渉計又はタルボ・ロー干渉計の原理により格子上に形成されたモアレ縞の放射線画像であるモアレ縞画像を生成する放射線撮影システムにおいて、従来、格子の位置ずれに起因する生成画像(例えば、吸収画像、微分位相画像、小角散乱画像等)の画質の低下を防ぐための各種技術が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、X線放出装置からX線検出装置へX線を放出する手順と、対象物の存在しない状態で複数の校正用の投影を実行する手順と、対象物が配置された状態で複数の測定用の投影を実行する手順と、測定用の投影を校正用の投影に記録することによって、校正用の投影を測定用の投影の各々に関連づける手順と、を有する方法において、校正用の投影と測定用の投影の間に、位相シフト回折格子、位相解析回折格子、X線放出装置に配置されたアクチュエーターを変位させる方法について記載されている。
また、特許文献2には、第2の格子を相対移動させることにより縞画像に強度変調を与える手段と、放射線画像検出器と、取得した複数の画像データに基づいて位相微分像を生成する手段と、被検体を配置しない状態でのプレ撮影時に第1の位相微分像を複数生成させる手段と、複数の第1の位相微分像から、被検体を配置した状態での本撮影時に得られる第2の位相微分像とモアレ縞の位置が最も近いものを選択する手段と、選択された第1の位相微分像を、第2の位相微分像から減算して補正済位相微分像を生成する手段と、を備える放射線撮影システムについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2013-513418号公報
【文献】特開2012-040237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2に記載されたような従来の技術によって生成された各種生成画像には、除去しきれないノイズが依然として存在していた。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、タルボ干渉計又はタルボ・ロー干渉計の原理に基づいて生成される画像の画質を、従来よりも向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る放射線撮影システムは、
放射線を発生させる放射線源と、
受けた放射線に応じた放射線画像を生成する画像生成手段と、
前記放射線源と前記画像生成手段との間に、前記放射線の照射軸方向に並ぶように設けられた複数の格子と、を備え、
タルボ干渉計又はタルボ・ロー干渉計の原理により前記格子上に形成されたモアレ縞の放射線画像であるモアレ縞画像を生成する放射線撮影システムであって、
被写体が存在しない状態で生成されたモアレ縞画像である被写体なし画像を、前記格子の変形に関連する状況に応じて取得する取得手段と、
前記被写体が介在する状態で生成されたモアレ縞画像である被写体あり画像を、前記被写体なし画像を用いて補正する補正手段と、
複数の前記格子のうちの少なくともいずれかの前記格子の位置を検知する位置センサーと、を備え、
前記取得手段は、
前記被写体あり画像を前記画像生成手段に生成させる前に、前記被写体なし画像を前記画像生成手段に生成させ、
前記被写体なし画像の生成後の前記状況に応じて、前記被写体なし画像を前記画像生成手段に再生成させるようになっており、
前記補正手段は、前記被写体なし画像が再生成された場合、再生成された前記被写体なし画像を用いて前記被写体あり画像を補正し、
前記取得手段は、前記位置センサーが検知した位置の所定位置からのずれが所定以上となった場合、前記被写体なし画像を前記画像生成手段に再生成させる。
【0008】
また、本発明に係る撮影制御装置は、
放射線を発生させる放射線源と、受けた放射線に応じた放射線画像を生成する画像生成手段と、前記放射線源と前記画像生成手段との間に、前記放射線の照射軸方向に並ぶように設けられた複数の格子と、複数の前記格子のうちの少なくともいずれかの前記格子の位置を検知する位置センサーと、を備え、タルボ干渉計又はタルボ・ロー干渉計の原理により前記格子上に形成されたモアレ縞の放射線画像であるモアレ縞画像を生成する放射線撮影装置を制御する撮影制御装置であって、
被写体が存在しない状態で生成されたモアレ縞画像である被写体なし画像を、前記格子の変形に関連する状況に応じて取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記被写体なし画像を用いて、前記被写体が介在する状態で生成されたモアレ縞画像である被写体あり画像を補正する補正手段へ出力する出力手段と、を備え、
前記取得手段は、
前記被写体あり画像を前記画像生成手段に生成させる前に、前記被写体なし画像を前記画像生成手段に生成させ、
前記被写体なし画像の生成後の前記状況に応じて、前記被写体なし画像を前記画像生成手段に再生成させるようになっており、
前記補正手段は、前記被写体なし画像が再生成された場合、再生成された前記被写体なし画像を用いて前記被写体あり画像を補正し、
前記取得手段は、前記位置センサーが検知した位置の所定位置からのずれが所定以上となった場合、前記被写体なし画像を前記画像生成手段に再生成させる。
【0009】
また、本発明に係るプログラムは、
放射線を発生させる放射線源と、受けた放射線に応じた放射線画像を生成する画像生成手段と、前記放射線源と前記画像生成手段との間に、前記放射線の照射軸方向に並ぶように設けられた複数の格子と、複数の前記格子のうちの少なくともいずれかの前記格子の位置を検知する位置センサーと、を備え、タルボ干渉計又はタルボ・ロー干渉計の原理により前記格子上に形成されたモアレ縞の放射線画像であるモアレ縞画像を生成する放射線撮影装置を制御する撮影制御装置の制御部に、
被写体が存在しない状態で生成されたモアレ縞画像である被写体なし画像を、前記格子の変形に関連する状況に応じて取得する取得処理と、
前記取得処理において取得した前記被写体なし画像を、前記被写体が介在する状態で生成されたモアレ縞画像である被写体あり画像を、前記被写体なし画像を用いて補正する補正手段へ出力する出力処理と、を実行させ、
前記取得処理は、
前記制御部に、前記被写体あり画像を前記画像生成手段に生成させる前に、前記被写体なし画像を前記画像生成手段に生成させ、
前記被写体なし画像の生成後の前記状況に応じて、前記被写体なし画像を前記画像生成手段に再生成させるようになっており、
前記制御部に、前記位置センサーが検知した位置の所定位置からのずれが所定以上となった場合、前記被写体なし画像を前記画像生成手段に再生成させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、タルボ干渉計又はタルボ・ロー干渉計の原理に基づいて生成される画像の画質を、従来よりも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る放射線撮影システムの一例を示す側面図である。
【
図2】
図1の放射線撮影システムが備える格子の平面図である。
【
図3】
図1の放射線撮影システムを用いた放射線撮影の様子を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る放射線撮影システムの他の例を示す側面図である。
【
図5】
図1~3の放射線撮影システムが備える撮影制御装置を表すブロック図である。
【
図6】
図5の撮影制御装置が実行する撮影制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図1,4の放射線撮影システムが備える画像処理装置を表すブロック図である。
【
図8】第一実施形態に係る画像処理装置が実行する撮影後処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】第二実施形態に係る画像処理装置が実行する撮影制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】第二実施形態の変形例に係る画像処理装置が実行する撮影制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】第二実施形態の変形例に係る画像処理装置が実行する撮影制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施形態や図面に記載されたものに限定されるものではない。
【0013】
本発明の発明者は、鋭意研究の結果、格子の変位以外に、温度変化による格子の変形、及び格子の変形に起因する他の格子との相対位置の変化も画質低下の一因になっていることを突き止めた。
本発明は、生成される放射線画像から、格子の温度変化による変形の影響を省くものである。
【0014】
<1.第一実施形態>
まず、本発明の第一実施形態について、
図1~8を参照しながら説明する。
【0015】
〔1-1.放射線撮影システム〕
初めに、本実施形態に係る放射線撮影システムの概略構成について説明する。
図1は放射線撮影システムの一例を示す側面図、
図2は放射線撮影システムが備える格子の平面図、
図3は放射線撮影システムを用いた放射線撮影の様子を示す斜視図、
図4は放射線撮影システムの他の例を示す側面図である。
なお、
図1,4における括弧書きの符号は、後述する第二実施形態のものである。
【0016】
本実施形態に係る放射線撮影システムには、
図1,4に示すような二種類の構成例がある。
【0017】
(1-1-1.構成例1)
構成例1に係る放射線撮影システム(以下、システム100)は、
図1に示すように、放射線撮影装置1と、撮影制御装置2と、画像処理装置3と、を備えている。
各装置1~3は、例えば通信ネットワーク(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等)を介して互いに通信可能となっている。
【0018】
なお、システム100は、図示しない病院情報システム(Hospital Information System:HIS)や、放射線科情報システム(Radiology Information System:RIS)、画像保存通信システム(Picture Archiving and Communication System:PACS)等と通信することが可能となっていてもよい。
【0019】
構成例1に係る放射線撮影装置1は、放射線発生装置11と、放射線検出器12と、第一格子13(位相格子)と、第二格子14(吸収格子)と、を備えている。
また、本実施形態に係る放射線撮影装置1は、位置センサー15と、アクチュエーター16と、被写体台17と、を更に備えている。
そして、放射線撮影装置1は、タルボ干渉計の原理により、格子上に形成されたモアレ縞の放射線画像であるモアレ縞画像を生成するようになっている。
【0020】
放射線発生装置11は、ジェネレーターと、照射指示スイッチと、放射線源11aと、を備えている。
【0021】
ジェネレーターは、照射指示スイッチが操作されたことに基づいて、予め設定された撮影条件(例えば撮影部位、撮影方向、体格等の被写体Sに関する条件や、管電圧や管電流、照射時間、電流時間積(mAs値)等の放射線Rの照射に関する条件)に応じた電圧を放射線源11a(管球)へ印加するようになっている。
放射線源11aは、ジェネレーターから電圧が印加されると、印加された電圧に応じた線量の放射線R(例えばX線等)を発生させるようになっている。
本実施形態に係る放射線源11aは、ある高さから鉛直下方(
図1におけるZ方向)に向かった放射線を照射するようになっている。
なお、放射線源11aは、水平方向(
図1におけるY方向)へ放射線Rを照射するようになっていてもよい。
【0022】
第一格子13及び第二格子14は、放射線発生装置11の放射線源11aと放射線検出器12との間に、放射線Rの照射軸方向に並ぶように設けられている。
【0023】
第一格子13は、湾曲形状、又は平板状をなしている。
また、第一格子13は、放射線Rを受ける面が、第二格子14よりも放射線源11a側において、到達する放射線の照射方向と直交する方向に広がる曲面又は平面をなすように配置されている。
第一格子13における放射線Rを受ける面には、
図2に示すように、直線状のスリット13aが複数形成されている。
各スリット13aは、所定のピッチP1で、互いに平行に延びるように並んでいる。
【0024】
第二格子14は、第一格子と同様に、湾曲形状、又は平板状をなしている。
また、第二格子14は、
図1に示したように、放射線Rを受ける面が、第一格子13よりも放射線検出器12側において、到達する放射線の照射方向と直交する方向に広がる曲面又は平面をなすように配置されている。
第二格子14における放射線Rを受ける面には、
図2に示したように、直線状のスリット14aが複数形成されている。
各スリット14aは、第一格子13のスリット13aのピッチP1とは異なる所定のピッチP2で、互いに平行にかつ第一格子のスリット13aと同じ方向へ延びるように並んでいる。
【0025】
位置センサー15は、第一格子13及び第二格子14のうちの少なくともいずれかの格子の位置(座標)を検知するようになっている。
なお、位置センサー15は、複数の格子13,14のうちの少なくともいずれかの格子13,14に生じた振動(速度、加速度)を検知する振動センサーであってもよい。
【0026】
アクチュエーター16は、位置センサー15が位置を検知する格子13,14の位置を調整可能となっている。
本実施形態に係るアクチュエーター16は、格子13,14を、スリット13a,14aの並び方向(放射線Rの照射方向及び各スリット13a,14aの延長方向と直交する方向、
図2におけるX方向)へ移動させることが可能となっている。
【0027】
被写体台17は、第一格子13の上方に配置されている。
そして、被写体台17は、被写体Sを支持することが可能となっている。
【0028】
放射線検出器12は、図示を省略するが、波長変換部や、光電変換部、走査回路、読み出し回路、制御部、通信部等を備えている。
波長変換部は、放射線Rを、可視光に変換するようになっている。
光電変換部は、波長変換部が発した可視光を受けることで線量に応じた電荷を発生させる半導体素子、電荷の蓄積・放出を行うスイッチ素子を備えた画素が二次元状(マトリクス状)に配列された撮像面を有する。
走査回路は、各スイッチ素子のオン/オフを切り替えるようになっている。
読み出し回路は、各画素から放出された電荷の量を信号値として読み出すようになっている。
制御部は、読み出し回路が読み出した複数の信号値から放射線画像を生成するようになっている。
通信部は、生成した放射線画像のデータや各種信号等を他の装置(撮影制御装置2、画像処理装置3等)へ送信したり、他の装置から各種情報や各種信号を受信したりするようになっている。
【0029】
そして、放射線検出器12は、放射線発生装置11の放射線源11aから放射線Rが照射されるタイミングと同期して、電荷の蓄積・放出、信号値の読出しを行うことにより、照射された放射線Rの線量に応じた放射線画像を生成するようになっている。
すなわち、放射線検出器12は、画像生成手段をなす。
【0030】
なお、放射線検出器12が備える波長変換部121は、細長く形成されたシンチレーター素材と、細長く形成された非シンチレーター素材(例えば、PET(polyethylene terephthalate)等)と、が交互に並ぶように設けられたもの(いわゆるスリットシンチ)となっていてもよい。
このように構成された波長変換部は、第二格子14に相当する機能も併せ持つことになる。このため、放射線検出器12がこの波長変換部を備えている場合、第二格子14は不要となる。
【0031】
撮影制御装置2は、放射線撮影装置1各部の状態を監視したり、各部の動作を制御したりするものである。
撮影制御装置2は、PC又は専用の装置で構成されていてもよいし、放射線撮影装置1と一体になっていてもよい。
この撮影制御装置2の詳細については後述する。
【0032】
画像処理装置3は、放射線撮影装置1が生成したモアレ縞画像を画像処理して、吸収画像、微分位相画像、小角散乱画像等を生成するものである。
画像処理装置3は、PC又は専用の装置で構成されていてもよいし、放射線撮影装置1、撮影制御装置2、又はこれらが一体になったものと一体になっていてもよい。
この画像処理装置3の詳細についても後述する。
【0033】
上記のように構成されたシステム100は、ユーザーにより図示しない照射指示スイッチが操作されると、
図3に示すように、放射線発生装置11の放射線源11aが放射線Rを第一格子13へ向けて照射する。
照射された放射線Rは第一格子13を透過し、第二格子14上にモアレ縞を形成する。
放射線検出器12は、モアレ縞の放射線画像であるモアレ縞画像I
Mを生成し、生成したモアレ縞画像I
Mを画像処理装置3へ送信する。
画像処理装置3は、受信したモアレ縞画像を画像処理して、各種画像を生成する。
【0034】
(1-1-2.構成例2)
構成例2に係る放射線撮影システム(以下、システム100A)は、
図4に示すように、上記構成例1に係るシステム100と同様の撮影制御装置2及び画像処理装置3の他、放射線撮影装置1Aを備える。
【0035】
構成例2に係る放射線撮影装置1Aは、タルボ・ロー干渉計の原理により格子上に形成されたモアレ縞の放射線画像であるモアレ縞画像を生成するようになっている。
この放射線撮影装置1Aは、上記構成例1に係るシステム100と同様の放射線発生装置11、放射線検出器12、第一格子13、第二格子14、位置センサー15及びアクチュエーター16、被写体台17の他、第三格子18(線源格子)を備えている。
【0036】
第三格子18は、湾曲形状、又は板状をなしている。
また、第三格子18は、放射線Rを受ける面が、第一格子13よりも放射線源11a側において、到達する放射線の照射方向と直交する方向に広がる曲面又は平面をなすように配置されている。
第三格子18における放射線Rを受ける面には、
図2に示したように、直線状のスリット18aが複数形成されている。
各スリット18aは、第一,第二格子13,14のスリット13a,14aのピッチP1,P2とは異なる所定のピッチP3で、互いに平行にかつ第一格子のスリット13aと同じ方向へ延びるように並んでいる。
【0037】
上記のように構成されたシステム100Aは、ユーザーにより図示しない照射指示スイッチが操作されると、放射線発生装置11の放射線源11aが放射線Rを第三格子18へ向けて照射する。
照射された放射線Rは第三格子18によって多光源化され、更に第一格子13を透過し、第二格子14上にモアレ縞を形成する。
放射線検出器12は、モアレ縞画像を生成し、生成したモアレ縞画像を画像処理装置3へ送信する。
画像処理装置3は、受信したモアレ縞画像を画像処理して、各種画像を生成する。
【0038】
〔1-2.撮影制御装置〕
次に、上記システム100,100Aが備える撮影制御装置2の詳細について説明する。
図5は撮影制御装置2を表すブロック図、
図6は撮影制御装置2が実行する撮影制御処理の流れを示すフローチャートである。
なお、
図5における括弧書きの符号は、後述する第二実施形態のものである。
【0039】
(1-2-1.撮影制御装置の構成)
撮影制御装置2は、
図5に示すように、制御部21と、通信部22と、記憶部23と、を備えている。
各部21~23は、バス等で電気的に接続されている。
【0040】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等により構成されている。
そして、制御部21のCPUは、記憶部23に記憶されている各種プログラムを読出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行し、撮影制御装置2各部の動作を集中制御するようになっている。
【0041】
通信部22は、通信モジュール等で構成されている。
そして、通信部22は、通信ネットワークを介して接続された他の装置(例えば、放射線撮影装置1、画像処理装置3等)との間で各種信号や各種データを送受信するようになっている。
【0042】
記憶部23は、不揮発性の半動態メモリーやハードディスク等により構成されている。
また、記憶部23は、制御部21が実行する各種プログラム(後述する撮影制御処理を含む)やプログラムの実行に必要なパラメーター等を記憶している。
なお、記憶部23は、放射線画像を記憶することが可能となっていてもよい。
【0043】
(1-2-2.撮影制御装置の動作)
このように構成された撮影制御装置2の制御部21は、所定条件が成立したことを契機として、例えば
図6に示すような撮影制御処理を実行するようになっている。
【0044】
この撮影制御処理において、制御部21は、まず、第一取得処理を実行する(ステップA1)。
この第一取得処理において、制御部21は、被写体なし画像を取得する。
被写体なし画像は、被写体が写っていないモアレ縞画像である。
本実施形態に係る制御部21は、後述する被写体あり画像を放射線検出器12に生成させる前に、被写体なし画像を、放射線撮影装置1の放射線検出器12に生成させる。
【0045】
吸収画像等の各種画像を得る方法には、縞走査法と、フーリエ変換法と、がある。
縞走査法の場合、この第一取得処理において、制御部21は、いずれかの格子13,14を、スリット13a,14aが並ぶ方向に、スリット13a,14aのピッチPの1/M(Mは正の整数、吸収画像を得る場合はM>2、微分位相画像及び小角散乱画像を得る場合はM>3)だけ変位させる処理(ステップA11)と、放射線撮影装置1に放射線撮影を行わせる処理(ステップA12)と、を交互にM回ずつ繰り返す。
【0046】
フーリエ変換法の場合、この第一取得処理において、制御部21は、格子を変位させる処理(ステップA11)を実行せずに放射線撮影を行わせる処理(ステップA12)を1回だけ行う。
なお、被写体なし画像は、撮影制御処理の実行前に放射線検出器12に予め生成させておいてもよい。その場合、撮影制御処理において、この第一取得処理は不要となる。
【0047】
被写体なし画像を取得した後、制御部21は、第二取得処理を実行する(ステップA2)。
この第二取得処理において、制御部21は、少なくとも一枚の被写体あり画像を、放射線撮影装置1の放射線検出器12に生成させる。
【0048】
被写体あり画像の生成方法は、被写体の有無を除き、被写体なし画像の生成方法と同様である。
すなわち、縞走査法の場合、制御部21は、いずれかの格子13,14を変位させる処理(ステップA21)と、放射線撮影装置1に放射線撮影を行わせる処理(ステップA22)と、を交互にM回ずつ繰り返す。
そして、フーリエ変換法の場合、制御部21は、格子を変位させる処理(ステップA21)を実行せずに放射線撮影を行わせる処理(ステップA22)を1回だけ行う。
【0049】
必要枚数の被写体あり画像を取得した後、制御部21は、検知処理を実行する(ステップA3)。
この検知処理において、制御部21は、格子13,14の変形に関連する状況を検知する。
格子13,14の変形に関連する状況には、撮影枚数、経過時間、温度等が含まれる。
撮影枚数は、放射線検出器12が被写体なし画像を生成した後に、放射線検出器12が生成した被写体あり画像の枚数である。
経過時間は、放射線検出器12が被写体なし画像を生成してからの経過時間である。
温度は、温度センサーが測定した、放射線撮影システムの温度又は当該放射線撮影システムの設置空間の温度である。
撮影枚数を計数する場合、制御部21は計数手段をなす。また、経過時間を計時する場合、制御部21は計時手段をなす。
【0050】
格子13,14の変形に関連する状況を検知した後、制御部21は、判断処理を実行する(ステップA4)。
本実施形態に係る判断処理において、制御部21は、格子13,14の変形に関連する状況が、被写体なし画像を再生成させる必要のある状況であるか否かを判断する。
【0051】
例えば、格子13,14の変形に関連する状況として撮影枚数を計数する場合、制御部21は、計数した枚数が所定以上となったか否かを判断する。
また、格子13,14の変形に関連する状況として経過時間を計時する場合、制御部21は、計時した経過時間が所定以上となったか否かを判断する。
また、格子13,14の変形に関連する状況として温度を測定する場合、制御部21は、温度センサーが測定した温度が所定以上となったか否かを判断する。
【0052】
この判断処理において、格子13,14の変形に関連する状況が、被写体なし画像を再生成させる必要のある状況であると判断した場合(ステップA4:Yes)、制御部21は、第三取得処理を実行する(ステップA5)。
この第三取得処理において、制御部21は、被写体なし画像を放射線検出器12に再生成させる。
すなわち、この判断処理において、制御部21は、被写体なし画像の生成後の格子13,14の変形に関連する状況に応じて、被写体なし画像を放射線検出器12に再生成させる。
一方、判断処理において、格子13,14の変形に関連する状況が、被写体なし画像を再生成させる必要のある状況ではないと判断した場合(ステップA4:No)、制御部21は、出力処理(ステップA6)へスキップする。
【0053】
なお、本実施形態に係る第三取得処理において、制御部21は、上記の場合の他、位置センサーが検知した位置の所定値からのずれが所定以上となった場合にも、被写体なし画像を放射線検出器12に再生成させるようになっていてもよい。
制御部21は、以上説明してきた第一~第三取得処理を実行することにより取得手段をなす。
【0054】
放射線検出器12に被写体あり画像を生成させた後、又は被写体なし画像を再生成させた後、制御部21は、出力処理を実行する(ステップA6)。
この出力処理において、制御部21は、被写体なし画像を再生成していない場合は、第一取得処理において取得した被写体なし画像を画像処理装置3へ出力し、被写体なし画像を再生成した場合は、第三取得処理において取得した被写体なし画像を画像処理装置3へ出力する。
【0055】
なお、各種画像がN枚必要である場合には、上記第二取得処理(ステップA2)~出力処理(ステップA6)をN回繰り返し実行する。
【0056】
〔1-3.画像処理装置〕
次に、上記システム100,100Aが備える画像処理装置3の詳細について説明する。
図7は画像処理装置3を表すブロック図、
図8は画像処理装置3が実行する撮影後処理の流れを示すフローチャートである。
【0057】
(1-3-1.画像処理装置の構成)
画像処理装置3は、
図7に示すように、制御部31と、通信部32と、記憶部33と、を備えている。
また、本実施形態に係る画像処理装置3は、表示部34と、操作部35と、を更に備えている。
各部31~35は、バス等で電気的に接続されている。
【0058】
制御部31及び通信部32は、上記撮影制御装置2の制御部21及び通信部22と同様に構成されている。
【0059】
記憶部33は、不揮発性の半動態メモリーやハードディスク等により構成されている。
また、記憶部33は、制御部31が実行する各種プログラム(後述する撮影後処理を含む)やプログラムの実行に必要なパラメーター等を記憶している。
なお、記憶部33は、放射線画像を記憶することが可能となっている。
【0060】
表示部34は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等の画像を表示するモニターで構成されている。
そして、表示部34は、制御部31から入力される制御信号に基づいて、各種画像等を表示するようになっている。
【0061】
本実施形態に係る操作部35は、カーソルキーや、数字入力キー、各種機能キー等を備えたキーボードや、マウス等のポインティングデバイス、表示部34の表面に積層されるタッチパネル等によって構成されている。
そして、操作部35は、ユーザーによってなされた操作に応じた制御信号を制御部31へ出力するようになっている。
【0062】
(1-3-2.画像処理装置の動作)
このように構成された画像処理装置3の制御部31は、例えば
図8に示すような撮影後処理を実行するようになっている。
この撮影後処理において、制御部31は、まず、補正処理を実行する(ステップB1)。
この補正処理において、制御部31は、被写体が写ったモアレ縞画像である被写体あり画像を、被写体なし画像を用いて補正する。
【0063】
被写体なし画像を用いた被写体あり画像の補正方法は、生成しようとする画像によって異なる。
例えば、吸収画像を生成する場合には、被写体あり画像の各画素の信号値を、被写体なし画像の各画素の信号値で割り、その値の対数を取り、その対数に-1を乗じることで補正する。
また、微分位相画像を生成する場合には、被写体あり画像の各画素の信号値から、被写体なし画像の各画素の信号値を差し引くことで補正する。
また、小核散乱画像を生成する場合には、被写体あり画像のビジビリティ(Visibility)を被写体なし画像のビジビリティで割り、その値の対数を取り、その対数に-1を乗じることで補正する。
なお、この補正処理において、制御部31は、被写体なし画像が再生成された場合、再生成された被写体なし画像を用いて被写体あり画像を補正する。
制御部31は、以上説明してきた画像補正を行うことにより補正手段をなす。
【0064】
被写体あり画像を補正した後、制御部31は、再構成処理を実行する(ステップB2)。
この再構成処理において、制御部31は、補正された被写体あり画像に基づいて、通常の放射線画像(吸収画像)、微分位相画像及び小核散乱画像のうちの少なくともいずれかの画像を生成する。
微分位相画像は、モアレ縞画像の位相情報を画像化したものである。
小核散乱画像は、モアレ縞画像のVisibility(自己像の鮮明度)を画像化したものである。
【0065】
上述したように、画像を得る方法には、縞走査法と、フーリエ変換法と、がある。
縞走査法の場合、この画像化処理において、制御部31は、複数の被写体あり画像を再構成することにより各種画像を生成する。
一方、フーリエ変換法の場合、この画像化処理において、制御部31は、被写体あり画像の各信号値をフーリエ変換することにより、モアレ縞の信号成分とその他の情報とに周波数を分ける。その後、制御部31は、モアレ縞の信号成分のみを逆フーリエ変換することにより各種画像を生成する。
【0066】
〔1-4.効果〕
以上説明してきた本実施形態に係るシステム100,100Aは、撮影制御装置2が、被写体あり画像を放射線検出器12に生成させる前に、被写体なし画像を放射線検出器12に生成させ、被写体なし画像の生成後の格子13,14の変形に関連する状況に応じて、被写体なし画像を放射線検出器12に再生成させるようになっており、画像処理装置3が、被写体なし画像が再生成された場合、再生成された被写体なし画像を用いて被写体あり画像を補正する。
このため、システム100,100Aによれば、タルボ干渉計又はタルボ・ロー干渉計の原理に基づいて生成される画像の画質を、従来よりも向上させることができる。
【0067】
<2.第二実施形態>
次に、本発明の第二施形態について、
図1~5,9~11を参照しながら説明する。
なお、ここでは、上記第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0068】
〔2-1.放射線撮影システム〕
また、本実施形態に係る放射線撮影システムにも、
図1,4に示したように、上記第一実施形態に係るシステム100,100Aと同様の二種類の構成例がある。
【0069】
システム100B,100Cは、上記第一実施形態に係るシステム100,100Aと同様の放射線撮影装置1、画像処理装置3の他に、撮影制御装置2Aを備えている。
【0070】
〔2-2.撮影制御装置〕
次に、上記システム100B,100Cが備える撮影制御装置2Aの、上記第一実施懈怠に係る撮影制御装置2との差異について説明する。
図9~11は撮影制御装置2Aが実行する撮影制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0071】
(2-2-1.撮影制御装置の構成)
撮影制御装置2Aは、
図5に示したように、上記第一実施形態に係る撮影制御装置2と同様の制御部21、通信部22の他、記憶部23Aを備えている。
【0072】
記憶部23Aは、不揮発性の半動態メモリーやハードディスク等により構成されている。
また、記憶部23Aは、制御部21が実行する各種プログラム(後述する撮影制御処理を含む)やプログラムの実行に必要なパラメーター等を記憶している。
【0073】
また、記憶部23Aは、後述する撮影制御処理で用いる複数の被写体なし画像を記憶している。
この複数の被写体なし画像は、後述する撮影制御処理を実行する前(被写体あり画像を放射線検出器12に生成させる前)に、格子13,14の変形に関連する状況を変化させながら放射線撮影装置1の放射線検出器12に繰り返し生成させたものである。
なお、複数の被写体なし画像は、後述する撮影制御処理の中で放射線検出器12に生成させるようになっていてもよい。
【0074】
(2-2-2.撮影制御装置の動作)
このように構成された撮影制御装置2Aの制御部21は、所定条件が成立したことを契機として、例えば
図9に示すような撮影制御処理を実行するようになっている。
【0075】
この撮影制御処理において、制御部21は、まず、上記第一実施形態と同様の第二取得処理及び検出処理を実行する(ステップA2,A3)。
【0076】
格子13,14の変形に関連する状況を検知した後、制御部21は、第三取得処理を実行する(ステップA5A)。
この第三取得処理において、制御部21は、記憶部23Aに記憶された(予め生成させておいた)複数の被写体なし画像のうち、被写体なし画像の生成後の格子13,14の変形に関連する状況に応じた被写体なし画像を選択する。
【0077】
例えば、格子13,14の変形に関連する状況として撮影枚数を計数する場合、制御部21は、複数の被写体なし画像のうち計数手段が計数した枚数に応じた被写体なし画像を選択する。
また、格子13,14の変形に関連する状況として経過時間を計時する場合、制御部21は、複数の被写体なし画像のうち計時手段が計時した経過時間に応じた被写体なし画像を選択する。
また、格子13,14の変形に関連する状況として温度を測定する場合、制御部21は、複数の被写体なし画像のうち温度センサーが測定した温度に応じた被写体なし画像を選択する。
【0078】
なお、被写体なし画像の選択は、変形に関連する状況の程度と複数の被写体なし画像とを関連付けるテーブル等を参照して行うようになっていてもよいし、変形に関連する状況の程度を入力、使用した被写体なし画像を出力として機械学習させた学習済モデルを用いて行うようになっていてもよい。
また、変形に関連する状況とともに複数の被写体なし画像をユーザーに提示し、ユーザーによってなされた操作に応じて選択するようになっていてもよい。
【0079】
また、本実施形態に係る第三取得処理において、制御部21は、上記の場合の他、位置センサーが検知した位置の所定位置からのずれの大きさも加味して被写体なし画像を選択するようになっていてもよい。
制御部21は、以上説明してきた第一~第三取得処理を実行することにより取得手段をなす。
【0080】
被写体なし画像を選択した後、制御部21は、出力処理を実行する(ステップA6A)。
この出力処理において、制御部21は、第三取得処理において選択した被写体なし画像を画像処理装置3へ出力する。
【0081】
なお、本実施形態に係る撮影制御処理において、制御部21は、例えば
図10に示すような第二取得処理(ステップA2A)を実行するようになっていてもよい。
この第二取得処理において、制御部21は、ステップA21の処理を実行する前(被写体あり画像を放射線検出器12に生成させる前)に、算出処理(ステップA23)と、調整処理(ステップA24)と、を実行する。
算出処理において、制御部21は、位置センサー15が検知した格子13,14の位置に基づいて、格子13,14の所定位置からのずれを算出する。
また、調整処理において、制御部21は、格子13,14の位置が所定位置になるようアクチュエーター16に格子13,14の位置を調整させてから、第二取得処理へ進む。
【0082】
また、本実施形態に係る撮影制御処理において、制御部21は、例えば
図11に示すような第二取得処理(ステップA2B)を実行するようになっていてもよい。
この第二取得処理において、制御部21は、放射線検出器12が被写体あり画像を生成している間、格子13,14の位置が所定位置からずれていないかどうかを監視し、ずれたことを位置センサー15が検知した場合(ステップA25:Yes)に、報知処理(ステップA7)を実行する。
この場合、報知処理において、制御部21は、格子13,14の位置が所定位置からずれた旨をモニターに表示させたりスピーカーに出力させたりすることによりユーザーに報知する。
制御部21及びモニター等は、こうした報知を行うことにより報知手段をなす。
【0083】
〔2-3.効果〕
以上説明してきた本実施形態に係るシステム100B,100Cは、撮影制御装置2Aが、被写体あり画像を放射線検出器12に生成させる前に、複数の被写体なし画像を放射線検出器12に繰り返し生成させ、複数の被写体なし画像のうち、被写体なし画像の生成後の格子13,14の変形に関連する状況に応じた被写体なし画像を選択し、画像処理装置3Aが、撮影制御装置2Aが選択した被写体なし画像を用いて被写体あり画像を補正する。
このため、システム100B,100Cによれば、上記第一実施形態に係るシステム100,100Aと同様に、タルボ干渉計又はタルボ・ロー干渉計の原理に基づいて生成される画像の画質を、従来よりも向上させることができる。
【0084】
<3.その他>
なお、本発明は上記の実施形態等に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0085】
例えば、上記実施形態に係るシステム100,100A~100Cは、放射線の照射制御を行うジェネレーターと撮影制御装置2とをそれぞれ備えるものとなっていたが、これらは一体になっていてもよい。
また、上記実施形態に係るシステム100,100A~100Cは、画像処理装置3,3Aにおいて被写体あり画像の信号値から被写体なし画像の信号値を差し引く補正を行うようになっていたが、この補正は放射線撮影装置1(放射線検出器12)において行うようになっていてもよい。
【0086】
また、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【符号の説明】
【0087】
100 放射線撮影システム
1 放射線撮影装置
11 放射線発生装置
11a 放射線源
12 放射線検出器(画像生成手段)
13 第一格子
13a スリット
14 第二格子
14a スリット
15 位置センサー
16 アクチュエーター
17 被写体台
2 撮影制御装置
21 制御部(取得手段、計数手段、計時手段)
22 通信部
23 記憶部
3 画像処理装置
31 制御部(補正手段)
32 通信部
33 記憶部
34 表示部
35 操作部
100A 放射線撮影システム
1A 放射線撮影装置
18 第三格子
100B,100C 放射線撮影システム
2A 撮影制御装置
23A 記憶部
N 通信ネットワーク
R 放射線
S 被写体