(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】計器箱
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20240709BHJP
G01D 11/24 20060101ALI20240709BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20240709BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H05K9/00 U
G01D11/24 B
B60K35/23
H05K9/00 H
H05K7/20 F
(21)【出願番号】P 2020107413
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石橋 亮一
【審査官】石坂 博明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/051925(WO,A1)
【文献】特開2018-133531(JP,A)
【文献】特開2020-055413(JP,A)
【文献】特開2018-174289(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0126887(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
G01D 11/24
B60K 35/23
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路素子を有する回路基板と、
前記集積回路素子の天面に貼付された熱伝導部材と、
前記熱伝導部材と接し前記回路基板を覆うシールドケースと、を備えた計器箱であって、
前記集積回路素子は、その一辺に設けられたクロック信号ピンと、前記一辺に隣接する他の一辺に設けられたデータ
バス信号ピンとを備え、
前記熱伝導部材は前記集積回路素子の前記一辺及び前記他の一辺から所定距離離間させて前記天面に貼付されており、
前記一辺から前記熱伝導部材までの距離を第1の距離とし、前記他の一辺から前記熱伝導部材までの距離を第2の距離としたとき、前記第1の距離は
8mmであり、前記第2の距離
は4mmである、計器箱。
【請求項2】
前記回路基板は揮発性メモリを有し、
前記クロック信号ピン及び前記データバス信号ピンの各々は前記集積回路素子と前記揮発性メモリとが通信する配線に接続されるピンである、請求項
1に記載の計器箱。
【請求項3】
前記揮発性メモリはDDR(Double Data Rate)でデータを転送する、請求項
2に記載の計器箱。
【請求項4】
前記シールドケースは、前記熱伝導部材の貼付箇所を示す目印部を有する、請求項1-
3の何れか1項に記載の計器箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放熱器を兼ねるシールドケースを備えた計器箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の計器箱として特許文献1に開示されたものがある。この計器箱は、放熱性と磁気シールド性を有するケースに回路基板を収容している。
【0003】
また、放熱性と磁気シールド性を有するケースが特許文献2に開示されている。このケースは、回路基板に設けられた制御集積回路をケースに接触させることにより放熱性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-96799号公報
【文献】特開平7-79082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の発明者は、特許文献1に特許文献2の構造を適用することで、回路基板に設けられたマイクロコントローラなどの制御集積回路が発する熱がケースに伝達しやすくなることから、放熱性が高まると考えた。しかしながら、本開示の発明者は、前述した特許文献1に特許文献2の構造を採用すると、ケースがアンテナとなって、外来ノイズがケースを介して制御集積回路に伝わりやすくなることも認識した。
【0006】
本開示は、放熱器を兼ねるシールドケースを備えた計器箱において、耐ノイズ性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの側面では、本開示の計器箱は、
集積回路素子を有する回路基板と、
前記集積回路素子の天面に貼付された熱伝導部材と、
前記熱伝導部材と接し前記回路基板を覆うシールドケースと、を備えた計器箱であって、
前記集積回路素子は、その一辺に設けられたクロック信号ピンと、前記一辺に隣接する他の一辺に設けられたデータバス信号ピンとを備え、
前記熱伝導部材は前記集積回路素子の前記一辺及び前記他の一辺から所定距離離間させて前記天面に貼付されており、
前記一辺から前記熱伝導部材までの距離を第1の距離とし、前記他の一辺から前記熱伝導部材までの距離を第2の距離としたとき、前記第1の距離は8mmであり、前記第2の距離は4mmである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、放熱器を兼ねるシールドケースを備えた計器箱において、耐ノイズ性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示のヘッドアップディスプレイの外観を示す斜視図。
【
図2】上ケースを外した状態のヘッドアップディスプレイを上方から見た平面図。
【
図3】ヘッドアップディスプレイを下方から見た平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の計器箱の一実施形態であるヘッドアップディスプレイ1を添付図面に基づいて説明する。以下の説明において、「前(前面)」、「後(背面)」、「上」、「下」、「右」、及び「左」は、
図1から
図5における定義の「Fr.」、「Re.」、「To.」、「Bo.」、「R」、及び「L」に対応する。
【0011】
ヘッドアップディスプレイ1は、自動車等の車両に搭載される。ヘッドアップディスプレイ1は、表示器2と、平面鏡3と、凹面鏡4と、ケース5と、回路基板6、から主に構成される。
【0012】
ヘッドアップディスプレイ1は、表示器2が出力した表示光Lを、リレー光学系を構成する平面鏡3及び凹面鏡4で反射し、車両のウインドシールドに照射する。車両の搭乗者(主に運転者)は、車両のウインドシールドに反射した表示光Lの虚像を車両前方の実風景に重ねて視認することができる。
【0013】
表示器2は、例えば液晶表示器である。表示器2は、バックライトユニットと、液晶表示パネルを有する。バックライトユニットは、光源基板、レンズ、光源基板を放熱するヒートシンク等を備える。表示器2は、液晶表示パネルの背面をバックライトユニットによって照らすことで液晶表示パネルが表示した画像を表す表示光Lを出射する。液晶表示パネルが表示する画像は、例えば、車両の走行速度情報や車両警告情報、経路案内情報などの車両情報を数字や図表によって表したものである。なお、表示器2は、画像表示器であればよく、例えば、有機EL表示器、あるいはスクリーンに投影するプロジェクタなどであってもよい。
【0014】
平面鏡3は、表示器2から出力された表示光Lを凹面鏡4に向けて反射する反射鏡である。
【0015】
凹面鏡4は、平面鏡3が反射した表示光Lをウインドシールドに向けて反射する凹面鏡である。
【0016】
ケース5は、表示器2と、平面鏡3と、凹面鏡4と、回路基板6を収容する計器箱である。ケース5は、上ケース51と、下ケース52と、透光性カバー53と、シールドケース54から主に構成される。
【0017】
ケース5は、上ケース51と下ケース52を組み合わせることで第1収容部52aを形成する。第1収容部52aには、表示器2と、平面鏡3と、凹面鏡4が収容される。また、この第1収容部52aは、表示光Lの光路となる。
【0018】
ケース5は、下ケース52の裏面52bとシールドケース54を組み合わせることで第2収容部52cを形成する。第2収容部52cには、回路基板6が収容される。
【0019】
上ケース51は、表示光Lを第1収容部52aからケース5の外部に出射するための出射口となる開口部511が形成された樹脂製のケースである。
【0020】
下ケース52は、金属製のケースである。下ケース52の第1収容部52a側には、表示器2と、平面鏡3と、凹面鏡4をそれぞれが載置され、ねじ等で固定されている。また、下ケース52の第2収容部52c側には、回路基板6が載置され、ねじ等で固定されている。
【0021】
透光性カバー53は、アクリル樹脂やポリカーボネートなどの透光性樹脂を薄さ約0.5mmのフィルム状にしたものである。透光性カバー53は、開口部511を覆うように上ケース51に接着固定される。
【0022】
シールドケース54は、金属製のケースである。シールドケース54は、下ケース52に載置された回路基板6を覆うことで磁気シールドとしての機能を持つ。
【0023】
回路基板6は、表示器2に画像を表示させる制御回路基板である。回路基板6のシールドケース54に対向する面には、集積回路素子61と、揮発性メモリ62が設けられている。
【0024】
集積回路素子61は、例えば、表面実装型のグラフィックコントローラである。集積回路素子61は、クロック信号ピン(第1ピン)P1、アドレス・コマンド信号ピン(第2ピン)P2、データバス信号ピン(第3ピン)P3を有し、これら第1ピンP1~第3ピンP3が揮発性メモリ62と通信可能に配線されている。
【0025】
揮発性メモリ62は、例えば、DDR(Double Data Rate)方式でデータを転送するDDRSDRAMである。揮発性メモリ62は、集積回路素子61が演算したデータを一時的に格納するワークメモリである。この揮発性メモリ62には、例えば、車両情報を数字や図表によって表した画像データなどが一時的に格納される。なお、揮発性メモリ62は、DDR1、DDR2、DDR3などの様々なDDR方式でデータを記憶する揮発性メモリを用いてもよい。
【0026】
集積回路素子61の天面(シールドケース54と対向する面)と、シールドケース54との間には、熱伝導部材63が貼付されている。熱伝導部材63は、例えば、シリコーン製の熱伝導シートである。この熱伝導部材63は、下ケース52の裏面52bとシールドケース54を組み合わせることで第2収容部52cを形成する際に、集積回路素子61の天面とシールドケース54に接触して、集積回路素子61の熱をシールドケース54に伝わりやすくなり、放熱性を高める。熱伝導部材63は、シリコーン系の熱伝導シートに限らず、非シリコーン系の熱伝導シートであってもよい。
【0027】
ここで、集積回路素子61の天面の全領域に熱伝導部材63が貼付される構成とした場合、シールドケース54を介して外来ノイズが熱伝導部材63に伝達し、さらに集積回路素子61が揮発性メモリ62と通信するための第1ピンP1~第3ピンP3を通る信号に悪影響を及ぼす可能性があることを、出願人は認識した。特に、揮発性メモリ62がDDR(Double Data Rate)方式でデータを転送するDDRSDRAMのような6GB/秒を超える高速通信の場合においては、通信エラーを生じさせる虞があることを、出願人は認識した。さらに、揮発性メモリ62に、車両情報を数字や図表によって表した画像データなどが一時的に格納される場合においては、通信エラーによって車両情報が誤って画像表示器2に表示される虞があり、このような通信エラーを抑制することが重要であることを、出願人は認識した。
【0028】
上述した課題を解決するため、第1ピンP1~第3ピンP3から第1の距離W1、第2の距離W2離間させた集積回路素子61の天面の領域のみに熱伝導部材63を貼付するように構成した。これにより、放熱性を維持しつつ耐ノイズ性が向上することができる。
【0029】
具体的には、第1ピンP1~第3ピンP3がある辺から少なくとも4mm以上、好ましくは8mm離間した位置に熱伝導部材63を貼付することで放熱性を維持しつつ耐ノイズ性が向上することができる。言い換えれば、第1ピンP1~第3ピンP3がある辺から少なくとも4mm以内(好ましくは8mm以内)の天面領域には熱伝導部材63を貼付しない。本開示例では、第1ピンP1及び第2ピンP2がある辺から8mm(第1の距離W1)離間し、且つ、第3ピンP3がある辺から4mm(第2の距離W2)離間し、且つ、第1ピンP1~第3ピンP3がない辺から1mm以内となる領域に熱伝導部材63を貼付している。
【0030】
また、熱伝導部材63は、少なくとも集積回路素子61の天面の面積の25%以上の範囲に貼付されることが好ましい。集積回路素子61の天面の面積の25%以上の範囲において熱伝導部材63と集積回路素子61が接触していれば、集積回路素子61が発した熱が熱伝導部材63を介してシールドケース54に十分伝わり放熱性は十分に担保される。
【0031】
以上のように構成することで、シールドケース54を介して外来ノイズが熱伝導部材63に伝達し、さらに集積回路素子61が揮発性メモリ62と通信するための第1ピンP1~第3ピンP3を通る信号に悪影響を及ぼすことがない。
【0032】
なお、熱伝導部材63を適切な位置に貼付するにあたって、シールドケース54の集積回路素子61と対向する面にケガキ線などの目印部を形成することが好ましい。目印部はシールドケース54でなく集積回路素子61の天面に形成してもよい。また、目印部は、ケガキ線に限らず、印刷などによって領域を色分けするものであってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 ヘッドアップディスプレイ
2 表示器
3 平面鏡
4 凹面鏡
5 ケース(計器箱)
51 上ケース
511 開口部
52 下ケース
52a 第1収容部
52b 裏面
52c 第2収容部
53 透光性カバー
54 シールドケース
6 回路基板
61 集積回路素子
62 揮発性メモリ
63 熱伝導部材
P1 第1ピン
P2 第2ピン
P3 第3ピン
W1 第1の距離(所定距離)
W2 第2の距離(所定距離)