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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240709BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/18
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020111208
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022010561
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 啓太
(72)【発明者】
【氏名】水野 泰介
(72)【発明者】
【氏名】神▲崎▼ 章太郎
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-237323(JP,A)
【文献】特開2010-076372(JP,A)
【文献】特開2008-036988(JP,A)
【文献】特開2011-079251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/14
B41J 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の個別流路を介して複数のノズルから吐出される液体が供給され、互いに並設された複数の供給マニホールドと、
前記複数の供給マニホールドの長手方向の一端側に配置された供給統合流路と、
一の前記供給マニホールドと前記供給統合流路とを連結する第1接続流路と、
前記一の供給マニホールドの短手方向に隣り合う他の前記供給マニホールドと前記供給統合流路とを連結する第2接続流路と、を備え、
前記第1接続流路の出口は、前記複数の個別流路の群から前記供給マニホールドの長手方向の一端側に離れて配置され、
前記第2接続流路の出口は、前記複数の個別流路の群から前記供給マニホールドの長手方向の他端側に離れて配置された、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記ノズルから吐出されなかった液体が帰還する複数の帰還マニホールドと、前記複数の供給マニホールドと前記複数の帰還マニホールドとを直接繋げるバイパス流路と、をさらに備え
各前記個別流路の一端は前記供給マニホールドに接続され、前記各個別流路の他端は前記帰還マニホールドに接続され、各前記ノズルは前記各個別流路の途中に位置する、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記バイパス流路は、前記複数の供給マニホールドの上流端と前記複数の帰還マニホールドの上流端とを連通する上流側バイパス流路、および前記複数の供給マニホールドの下流端と前記複数の帰還マニホールドの下流端とを連通する下流側バイパス流路を含む、請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記一の供給マニホールドにおける液体の通流方向と前記他の供給マニホールドにおける液体の通流方向とは互いに逆方向である、請求項1乃至3の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記第1接続流路および前記第2接続流路の各々は、対応する前記供給マニホールドの端部に接続されている、請求項1乃至4の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第1接続流路の流路抵抗と前記第2接続流路の流路抵抗とは同じである、請求項1乃至5の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記第1接続流路の流路断面積と前記第2接続流路の流路断面積とは異なっている、請求項6に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記第1接続流路は、湾曲又は屈曲した部分を含む、請求項1乃至7の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記複数のノズルは前記供給マニホールドの長手方向に並列されている、請求項1乃至8の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1には、第1統合流路、供給マニホールド(同文献では第1共通流路と記載)、個別流路、帰還マニホールド(同文献では第2共通流路と記載)および第2統合流路を備える液体吐出ヘッドが開示されている。第1統合流路は供給マニホールドの長手方向の一端側に配置され、第2統合流路は供給マニホールドの長手方向の他端側に配置されている。このような構成において、所定温度に温められたインク等の液体は、第1統合流路、供給マニホールド、個別流路、帰還マニホールドおよび第2統合流路の順に流れるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-202549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の液体吐出ヘッドにおいては、液体は下流側に流れるにつれて放熱されて冷やされてしまう。そのため、供給マニホールドの長手方向の一端側における液体の温度は高く、当該供給マニホールドの長手方向の他端側における液体の温度は上記一端側における液体の温度よりも低くなってしまう。その結果、供給マニホールドの長手方向の一端側に配置されたノズルの吐出性と当該供給マニホールドの長手方向の他端側に配置されたノズルの吐出性とにばらつきが生じてしまうという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、供給マニホールドの長手方向の一端側に配置されたノズルの吐出性と当該供給マニホールドの長手方向の他端側に配置されたノズルの吐出性とのばらつきを抑制することが可能な液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出ヘッドは、複数のノズルから吐出される液体が供給され、互いに並設された複数の供給マニホールドと、前記複数の供給マニホールドの長手方向の一端側に配置された供給統合流路と、一の前記供給マニホールドと前記供給統合流路とを連結する第1接続流路と、前記一の供給マニホールドの短手方向に隣り合う他の前記供給マニホールドと前記供給統合流路とを連結する第2接続流路と、を備え、前記第1接続流路の出口は、前記供給マニホールドの長手方向の一端側に配置され、前記第2接続流路の出口は、前記供給マニホールドの長手方向の他端側に配置されたものである。
【0007】
本発明に従えば、第1接続流路の出口は供給マニホールドの長手方向の一端側に配置され、第2接続流路の出口は上記長手方向の他端側に配置されることで、第1接続流路に接続された供給マニホールド内の液体の温度勾配と、第2接続流路に接続された供給マニホールド内の液体の温度勾配とが対称的になる。そのため、短手方向に隣り合う2つの供給マニホールド間での熱の授受により各液体間の温度差が相殺されるため、当該隣り合う2つの供給マニホールドにおける液体熱の偏りが抑制される。このような構成によって、供給マニホールドの長手方向の一端側に配置されたノズルの吐出性と当該供給マニホールドの長手方向の他端側に配置されたノズルの吐出性とのばらつきを抑制することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、供給マニホールドの長手方向の一端側に配置されたノズルの吐出性と当該供給マニホールドの長手方向の他端側に配置されたノズルの吐出性とのばらつきを抑制することが可能な液体吐出ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置の外観を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る液体吐出ヘッドを示す平面図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4図2のIV-IV線断面図である。
図5図2のV-V線断面図である。
図6図2のVI-VI線断面図である。
図7】第2実施形態に係る液体吐出ヘッドを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図面を参照して説明する。以下に説明する液体吐出ヘッドは本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0011】
<第1実施形態>
本実施形態に係る液体吐出ヘッド100を備える液体吐出装置200は、例えばインク等の液体を吐出するものである。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の液体吐出装置200は、ヘッド装着部201と、ヘッド装着部201上に設けられたハウジング202とを備えている。ヘッド装着部201には、後述する液体吐出ヘッド100が装着される。
【0013】
ハウジング202はサブハウジング203,204を有している。サブハウジング203とサブハウジング204とは、これらのサブハウジング203,204の上部が支持構造体205に接続されていることで互いに向かい合って固定されている。サブハウジング203,204は例えば厚みが薄く箱状に形成されている。
【0014】
サブハウジング204は、その上部に液体入口207を有し、その下部に液体出口208を有している。液体入口207から流入された液体は、サブハウジング204で濾過された後、液体出口208からヘッド装着部201内の流路(液体吐出ヘッド100に繋がる流路)に送出される。
【0015】
一方、サブハウジング203は、その上部に液体出口206を有し、その下部に液体入口209を有している。ヘッド装着部201内の流路から送出される液体は液体入口209からサブハウジング203内に入る。そして、液体はサブハウジング203で濾過された後、液体出口206と液体入口207との間に設けられた図略のポンプの圧力によって液体出口206から液体入口207に戻ることで循環されるようになっている。
【0016】
以下、本実施形態の液体吐出ヘッド100について詳しく説明する。図2は液体吐出ヘッド100を示す平面図である。なお、図2は液体の流路のみを示し、当該流路を形成する部位の図示は省略されている。
【0017】
図2に示すように、本実施形態の液体吐出ヘッド100は、供給統合流路10と、帰還統合流路11と、複数の供給マニホールド12と、複数の帰還マニホールド13と、複数の第1インターポーザ流路14(第1接続流路に相当する。)と、複数の帰還用短尺インターポーザ流路15と、複数の第2インターポーザ流路16(第2接続流路に相当する。)と、複数の帰還用長尺インターポーザ流路17とを備えている。
【0018】
供給統合流路10と帰還統合流路11とは、幅方向(供給マニホールド12の長手方向。本明細書においてこの幅方向を左右方向とも言う。この場合、供給統合流路10の側を左側とし、帰還統合流路11の側を右側とする。)において互いに離間した状態で、それぞれ幅方向に直交する方向である配列方向(本明細書においてこの配列方向を前後方向とも言う。)に延在している。供給統合流路10は幅方向の左端側(一端側に相当。以下同じ)に配置されている。帰還統合流路11は幅方向の右端側(他端側に相当。以下同じ)に配置されている。供給統合流路10および帰還統合流路11は例えばインク等の液体を通流させる。
【0019】
各供給マニホールド12および各帰還マニホールド13は、配列方向において交互に設けられている。図2の例では、上から一の供給マニホールド12、一の帰還マニホールド13、他の供給マニホールド12、および他の帰還マニホールド13の順で配置されている。以下、説明の便宜上、一の供給マニホールド12および一の帰還マニホールド13の組み合わせを供給帰還組み合わせK1とし、他の供給マニホールド12および他の帰還マニホールド13の組み合わせを供給帰還組み合わせK2とする。このような供給帰還組み合わせK1および供給帰還組み合わせK2は、配列方向において交互に設けられている。供給帰還組み合わせK1と供給帰還組み合わせK2との間隔は例えば一定であり、また、供給帰還組み合わせK1,K2における供給マニホールド12と帰還マニホールド13との間隔は例えば一定である。
【0020】
各供給マニホールド12および各帰還マニホールド13はそれぞれ幅方向に延在している。供給帰還組み合わせK1において、供給マニホールド12の上流端(左端)は幅方向において供給統合流路10の外側に配置され、その下流端(右端)は幅方向において帰還統合流路11の外側に配置されている。同じ様に、帰還マニホールド13の上流端(左端)は幅方向において供給統合流路10の外側に配置され、その下流端(右端)は幅方向において帰還統合流路11の外側に配置されている。一方、供給帰還組み合わせK2においては、供給マニホールド12の上流端(右端)は幅方向において帰還統合流路11の外側に配置され、その下流端(左端)は幅方向において供給統合流路10の外側に配置されている。同じ様に、帰還マニホールド13の上流端(右端)は幅方向において帰還統合流路11の外側に配置され、その下流端(左端)は幅方向において供給統合流路10の外側に配置されている。
【0021】
第1インターポーザ流路14は、供給帰還組み合わせK1のための一構成要素である。第1インターポーザ流路14は、供給帰還組み合わせK1における供給マニホールド12と供給統合流路10とを連結する。第1インターポーザ流路14の出口14aは、供給マニホールド12の長手方向中央より左端側に配置されており、図2では供給マニホールド12の左端に接続されている。第1インターポーザ流路14の長さ(幅方向における長さ)は、後述するように第2インターポーザ流路16の長さよりも短くなっている。このような構成において、供給統合流路10からの液体は第1インターポーザ流路14を介して供給マニホールド12に流入するようになっている。
【0022】
帰還用短尺インターポーザ流路15は、供給帰還組み合わせK1のための一構成要素である。帰還用短尺インターポーザ流路15は、一の帰還マニホールド13と帰還統合流路11とを連結する。帰還用短尺インターポーザ流路15の入口15aは帰還マニホールド13の右端側に配置されている。帰還マニホールド13からの液体は帰還用短尺インターポーザ流路15を介して帰還統合流路11に流入するようになっている。
【0023】
供給帰還組み合わせK1において、供給マニホールド12と帰還マニホールド13とを連結する複数の個別流路Rが設けられている。複数の個別流路Rの各々は、供給マニホールド12と帰還マニホールド13との間において配列方向に延在している。複数の個別流路Rの各々は幅方向にほぼ等間隔で並設されている。このような個別流路Rの途中部分には、圧力室Pおよび平面視で例えば円形状のノズルNが接続されている。複数のノズルNは幅方向に並列されている。各ノズルNは液体を吐出する。
【0024】
一方、第2インターポーザ流路16は、供給帰還組み合わせK2のための一構成要素である。第2インターポーザ流路16は、供給帰還組み合わせK2における供給マニホールド12と供給統合流路10とを連結する。第2インターポーザ流路16の出口16aは供給マニホールド12の右端側に配置されており、図2では供給マニホールド12の右端に接続されている。すなわち、上述した通り第1インターポーザ流路14の出口14aが供給帰還組み合わせK1の供給マニホールド12の左端側に配置されているのとは逆に、第2インターポーザ流路16の出口16aは供給帰還組み合わせK2の供給マニホールド12の右端側に配置されている。これにより、第2インターポーザ流路16は幅方向において長尺状に形成されている。したがって、第2インターポーザ流路16の長さ(幅方向における長さ)は、第1インターポーザ流路14の長さよりも長くなっている。このような構成において、供給統合流路10からの液体は第2インターポーザ流路16を介して供給マニホールド12に流入するようになっている。
【0025】
第2インターポーザ流路16の流路抵抗は第1インターポーザ流路14の流路抵抗と略同じとなっている。流路抵抗とは、流路における液体の流れ易さを示すものであり、その流路の抵抗値、換言すれば、流路の単位長さ当たりの抵抗値をその流路長に亘って積分したものである。本実施形態では、上述した通り、第2インターポーザ流路16の長さは第1インターポーザ流路14の長さよりも長い。そのため、第1インターポーザ流路15の流路断面積と第2インターポーザ流路16の流路断面積とを異ならせることで各流路抵抗を同じにすることができる。具体的には、長さが比較的短い第1インターポーザ流路14の流路断面積は、長さが比較的長い比較的第2インターポーザ流路16の流路断面積よりも小さくなっている。
【0026】
帰還用長尺インターポーザ流路17は、供給帰還組み合わせK2のための一構成要素である。帰還用長尺インターポーザ流路17は、帰還マニホールド13と帰還統合流路11とを連結する。帰還用長尺インターポーザ流路17の入口17aは帰還マニホールド13の左端側に配置されている。帰還マニホールド13からの液体は帰還用長尺インターポーザ流路17を介して帰還統合流路11に流入するようになっている。
【0027】
供給帰還組み合わせK2においても、供給帰還組み合わせK1と同様に、供給マニホールド12と帰還マニホールド13とを連結する複数の個別流路Rが設けられている。個別流路Rの途中部分には、液体を吐出するノズルNが接続されている。
【0028】
ここで、本実施形態の液体吐出ヘッド100には、配列方向に延在するバイパス流路20が設けられている。バイパス流路20は、配列方向に隣り合う供給マニホールド12と帰還マニホールド13とを連通する。このバイパス流路20は、上流側バイパス流路21および下流側バイパス流路22を含む。上流側バイパス流路21は、供給帰還組み合わせK1における各供給マニホールド12の上流端と各帰還マニホールド13の上流端とを連通すると共に供給帰還組み合わせK2における各供給マニホールド12の下流端と各帰還マニホールド13の下流端とを連通する。また、下流側バイパス流路22は、供給帰還組み合わせK1における各供給マニホールド12の下流端と各帰還マニホールド13の下流端とを連通すると共に供給帰還組み合わせK2における各供給マニホールド12の上流端と各帰還マニホールド13の上流端とを連通する。このような構成により、供給マニホールド12からこれに隣り合う帰還マニホールド13へは、複数の個別流路Rを通じて液体が流れるだけでなく、上流側バイパス流路21および下流側バイパス流路22も通じて液体が流れるようになっている。したがって、供給マニホールド12を流れる液体の流量を増大させることができる。これにより、液体の均熱効果をより高めることが可能となる。
【0029】
以上説明した供給帰還組み合わせK1においては、供給統合流路10を通流する液体は第1インターポーザ流路14を介して供給マニホールド12の左端に流入する。その後、供給マニホールド12内の液体は、右方に向かって流れると共に、複数の個別流路Rに流入し、複数のノズルNから吐出される。なお、ノズルNから吐出されなかった液体は、帰還マニホールド13および帰還用短尺インターポーザ流路15を介して帰還統合流路11に流入するようになっている。
【0030】
これに対して、供給帰還組み合わせK2においては、供給統合流路10を通流する液体は第2インターポーザ流路16を介して供給マニホールド12の右端に流入する。その後、供給マニホールド12内の液体は、左方に向かって流れると共に、複数の個別流路Rに流入し、複数のノズルNから吐出される。すなわち、供給帰還組み合わせK1の供給マニホールド12における液体の通流方向(左方→右方)と、供給帰還組み合わせK2の供給マニホールド12における液体の通流方向(右方→左方)とは互いに逆方向となっている。なお、ノズルNから吐出されなかった液体は、帰還マニホールド13および帰還用長尺インターポーザ流路17を介して帰還統合流路11に流入するようになっている。
【0031】
続いて、本実施形態の液体吐出ヘッド100の断面構成について、図面を参照しながら説明する。
【0032】
図3図2のIII-III線断面図である。図3に示すように、液体吐出ヘッド100は複数のプレートの積層体を含む。具体的には、液体吐出ヘッド100は、リザーバプレート30、インターポーザプレート31、マニホールドプレート32、およびノズルプレート33を含んでいる。なお、ノズルプレート33、マニホールドプレート32、インターポーザプレート31、およびリザーバプレート30の順で積層されている。
【0033】
ノズルNはノズルプレート33を積層方向(本明細書においてこの積層方向を上下方向とも言う。)に貫通し形成されている。なお、ノズルNは1枚のノズルプレート33で形成されているが、2枚以上のプレートで形成してもよい。
【0034】
マニホールドプレート32は、第1流路プレート32aおよび第2流路プレート32bを含む。この第2流路プレート32bが積層方向に貫通されることで供給マニホールド12が形成されている。供給マニホールド12は、第2流路プレート32bの幅方向の中心と当該供給マニホールド12の幅方向の中心とが略一致するように配置されている。供給マニホールド12は、上述した通り幅方向に延在しており、各個別流路Rを介して各ノズルNに連通している。なお、供給マニホールド12は1枚の第2流路プレート32bで形成されているが、2枚以上のプレートで形成してもよい。
【0035】
また、第1流路プレート32aが積層方向に貫通されることで連結流路40が形成されている。この連結流路40は、供給マニホールド12の上流端と第1インターポーザ流路14の下流端とを連結する。連結流路40は、供給マニホールド12の幅方向の左方側に配置されている。
【0036】
インターポーザプレート31は、各々貫通孔が形成された、第3流路プレート31a、第4流路プレート31b、および第5流路プレート31cを含む。第1インターポーザ流路14は、第3流路プレート31a、第4流路プレート31b、および第5流路プレート31cに設けられた各貫通孔が組み合わさることで構成されている。詳細には、第3流路プレート31aにおける貫通孔は供給統合流路10の幅よりも小さく、供給統合流路10の下方に形成されている。また、第4流路プレート31bにおける貫通孔は第3流路プレート31aの上記貫通孔の下方に形成された第1部分と当該第1部分の左方に形成された第2部分とで構成される。さらに、第5流路プレート31cにおける貫通孔は上記第2部分の幅と等しく、当該第2部分と上述の連結流路40との間に配置されている。このような貫通孔が組み合わされて第1インターポーザ流路14が形成されている。
【0037】
リザーバプレート30には、互いに離間した第1リザーバ部分30aと第2リザーバ部分30bとが形成される。第1リザーバ部分30aにおいて積層方向下半分の所定領域に供給統合流路10が形成され、第2リザーバ部分30bにおいて積層方向下半分の所定領域に帰還統合流路11が形成されている。
【0038】
次いで、図4図2のIV-IV線断面図である。図4の断面図は、上述の図3の断面図に対して左右対称となっている。以下、図3で説明した内容と重複する部分についての説明は省略することとし、図3と異なる内容のみ説明を行う。後記の図5および図6も同様とする。
【0039】
図4に示すように、第1流路プレート32aが積層方向に貫通されることで連結流路41が形成されている。この連結流路41は、帰還マニホールド13の下流端と帰還用短尺インターポーザ流路15の上流端とを連結する。連結流路41は、帰還マニホールド13の幅方向の右方側に配置されている。
【0040】
帰還用短尺インターポーザ流路15は、第3流路プレート31a、第4流路プレート31b、および第5流路プレート31cにおける上述の各貫通孔とは別の各貫通孔が組み合わさることで構成されている。詳細には、第3流路プレート31aにおける貫通孔は帰還統合流路11の幅よりも小さく、帰還統合流路11の下方に形成されている。また、第4流路プレート31bにおける貫通孔は第3流路プレート31aの上記貫通孔の下方に形成された第1部分と当該第1部分の右方に形成された第2部分とで構成される。さらに、第5流路プレート31cにおける貫通孔は上記第2部分の幅と等しく、当該第2部分と上述の連結流路41との間に配置されている。このような貫通孔が組み合わされて帰還用短尺インターポーザ流路15が形成されている。
【0041】
本実施形態において、帰還マニホールド13の断面積は供給マニホールド12の断面積と略等しい。例えば、供給マニホールド12および帰還マニホールド13は、互いに等しいサイズおよび形状を有してもよい。この場合、供給マニホールド12および帰還マニホールド13は、配列方向、幅方向および積層方向における各寸法が互いに等しくてもよい。
【0042】
続いて、図5図2のV-V線断面図である。図5に示すように、第1流路プレート32aが積層方向に貫通されることで連結流路42が形成されている。この連結流路42は、供給マニホールド12の上流端と第2インターポーザ流路16の下流端とを連結する。連結流路42は、供給マニホールド12の幅方向の右方側に配置されている。
【0043】
第2インターポーザ流路16は、第3流路プレート31a、第4流路プレート31b、および第5流路プレート31cにおける各貫通孔が組み合わさることで構成されている。詳細には、第3流路プレート31aにおける貫通孔は供給統合流路10の幅よりも小さく、供給統合流路10の下方に形成されている。また、第4流路プレート31bにおける貫通孔は、第3流路プレート31aの上記貫通孔の下方に形成された第1部分と当該第1部分の右方に形成され且つ連結流路42の上方の位置まで延びた第2部分とで構成される。さらに、第5流路プレート31cにおける貫通孔は連結流路42の幅と等しく、積層方向において上記第2部分と上記連結流路41との間に配置されている。このような貫通孔が組み合わされて第2インターポーザ流路16が形成されている。
【0044】
次いで、図6図2のVI-VI線断面図である。図6の断面図は、上述の図5の断面図に対して左右対称となっている。
【0045】
図6に示すように、第1流路プレート32aが積層方向に貫通されることで連結流路43が形成されている。この連結流路43は、帰還マニホールド13の下流端と帰還用長尺インターポーザ流路17の上流端とを連結する。連結流路43は、帰還マニホールド13の幅方向の左方側に配置されている。
【0046】
帰還用長尺インターポーザ流路17は、第3流路プレート31a、第4流路プレート31b、および第5流路プレート31cにおける各貫通孔が組み合わさることで構成されている。詳細には、第3流路プレート31aにおける貫通孔は帰還統合流路11の幅よりも小さく、帰還統合流路11の下方に形成されている。また、第4流路プレート31bにおける貫通孔は第3流路プレート31aの上記貫通孔の下方に形成された第1部分と当該第1部分の右方に形成され且つ連結流路43の上方の位置まで延びた第2部分とで構成される。さらに、第5流路プレート31cにおける貫通孔は連結流路43の幅と等しく、積層方向において上記第2部分と上記連結流路43との間に配置されている。このような貫通孔が組み合わされて帰還用長尺インターポーザ流路17が形成されている。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の液体吐出ヘッド100においては、第1インターポーザ流路14の出口14aが供給マニホールド12の幅方向の一端側に配置され、第2インターポーザ流路16の出口16aが上記幅方向の他端側に配置されることで、第1インターポーザ流路14に接続された供給マニホールド12(供給帰還組み合わせK1における供給マニホールド12)内の液体の温度勾配と、第2インターポーザ流路16に接続された供給マニホールド12(供給帰還組み合わせK2における供給マニホールド12)内の液体の温度勾配とが対称的になる。詳細には、供給帰還組み合わせK1における第1インターポーザ流路14の出口14aを介して供給マニホールド12に供給された液体の温度は、当該供給マニホールド12の左端で高く、その右端に向かうにつれて低くなる。つまり、液体の温度勾配は、供給帰還組み合わせK1における供給マニホールド12の左端から右端にかけて低下する。これに対して、供給帰還組み合わせK2における第2インターポーザ流路16の出口16aを介して供給マニホールド12に供給された液体の温度は、当該供給マニホールド12の右端で高く、その左端に向かうにつれて低くなる。つまり、液体の温度勾配は、供給帰還組み合わせK2における供給マニホールド12の右端から左端にかけて低下する。よって、供給帰還組み合わせK1における供給マニホールド12の温度勾配と供給帰還組み合わせK2における供給マニホールド12の温度勾配とが幅方向の同位置において対称的となる。そのため、このように配列方向に隣り合う2つの供給マニホールド12間での熱の授受により各液体間の温度差が相殺されるため、当該隣り合う2つの供給マニホールドにおける液体熱の偏りが抑制される。このような構成によって、各供給マニホールド12の幅方向の一端側に配置されたノズルNの吐出性と各供給マニホールド12の幅方向の他端側に配置されたノズルNの吐出性とのばらつきを抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態では、複数の供給マニホールド12と複数の帰還マニホールド13とが、個別流路Rを通らないバイパス流路20により直接繋がっている。これにより、供給マニホールド12および帰還マニホールド13における液体の流量を増大させることができる。このように液体の流量が増大することで、当該液体の温度の上昇および低下が抑制される。そのため、液体の高温度と低温度との差を小さくすることができる。それ故、液体全体の温度の平均化が促進される。これによって、液体の均熱効果をより高めることができる。
【0049】
また、本実施形態では、バイパス流路20を上流側バイパス流路21および下流側バイパス流路22により構成したので、各個別流路Rにおける液体の流量の差が少なくなり、飛翔曲がりが生じた場合においても全てのノズルNにおいて曲がりの向きと量が同程度になり、着弾精度に対する影響を最小化することができる。
【0050】
また、本実施形態では、供給帰還組み合わせK1の供給マニホールド12における液体の通流方向と、供給帰還組み合わせK2の供給マニホールド12における液体の通流方向とが互いに逆方向となっている。これにより、各供給マニホールド12,12と各インターポーザ流路14,16とが上下方向に重なるように配置される。そのため、液体吐出ヘッド100の小型化を実現することができる。
【0051】
また、本実施形態では、第1インターポーザ流路14は供給帰還組み合わせK1における供給マニホールド12の端部に接続され、第2インターポーザ流路16は供給帰還組み合わせK2における供給マニホールド12の端部に接続されている。これにより、各供給マニホールド12における液体の熱が当該供給マニホールド12の長さ方向に亘って分散されるため、液体の均熱効果を最大化することができる。
【0052】
また、本実施形態では、第1インターポーザ流路14の流路抵抗と第2インターポーザ流路16の流路抵抗とがほぼ同じであることによって、供給帰還組み合わせK1の供給マニホールド12における液体の流量と供給帰還組み合わせK2の供給マニホールド12における液体の流量とを同程度に揃えることができる。
【0053】
また、本実施形態では、第1インターポーザ流路14の流路断面積と第2インターポーザ流路16の流路断面積とが異なる。このように、第1インターポーザ流路14の流路抵抗と第2インターポーザ流路16の流路抵抗とを同じにするために各流路断面積を異ならせるだけで済む。それにより、各流路抵抗を同じにする際に加工が非常に行い易くなる。
【0054】
さらに、本実施形態では、複数のノズルNが供給マニホールド12の長手方向に並列されているため、液体吐出ヘッド100の小型化に寄与する。
【0055】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る液体吐出ヘッド100Aについて説明する。なお、第2実施形態において第1実施形態と同じ構成要素には同一符号を付与し、特記する場合を除いてその説明を省略する。
【0056】
第2実施形態の液体吐出ヘッド100Aの構成が上述した第1実施形態の液体吐出ヘッド100の構成と異なる点は、第1インターポーザ流路および帰還用短尺インターポーザ流路の形状である。
【0057】
図7に示すように、第1インターポーザ流路60は、供給帰還組み合わせK1のための一構成要素である。第1インターポーザ流路60は、供給帰還組み合わせK1における供給マニホールド12と供給統合流路10とを連結する。第1インターポーザ流路60の出口60aは供給マニホールド12の左端側に配置されている。第1インターポーザ流路60の出口60aは供給マニホールド12の左端に接続されている。第1インターポーザ流路60の長さ(幅方向における長さ)は、第2インターポーザ流路16の長さよりも短くなっている。このような構成において、供給統合流路10からの液体は第1インターポーザ流路60を介して供給マニホールド12に流入する。
【0058】
本実施形態において、第1インターポーザ流路60は1又は複数の屈曲した部分60bを含む。詳しくは、幅方向においてストレート状に形成された第1実施形態の第1インターポーザ流路14とは異なり、第2実施形態の第1インターポーザ流路60は、供給帰還組み合わせK1において配列方向の帰還マニホールド13側に屈曲した部分60bを含んでいる。これにより、第1インターポーザ流路60の流路長を第1インターポーザ流路14の流路長よりも長くすることができる。なお、第1インターポーザ流路60において、上記屈曲した部分60bの代わりに湾曲した部分を設けてもよいし、或いは屈曲した部分60bおよび湾曲した部分を組み合わせて設けてもよい。
【0059】
一方、帰還用短尺インターポーザ流路61は、供給帰還組み合わせK1のための一構成要素である。帰還用短尺インターポーザ流路61は、一の帰還マニホールド13と帰還統合流路11とを連結する。帰還用短尺インターポーザ流路61の入口61aは帰還マニホールド13の右端側に配置されている。帰還マニホールド13からの液体は帰還用短尺インターポーザ流路61を介して帰還統合流路11に流入する。
【0060】
本実施形態において、帰還用短尺インターポーザ流路61は1又は複数の屈曲した部分61bを含む。詳しくは、幅方向においてストレート状に形成された第1実施形態の帰還用短尺インターポーザ流路15とは異なり、第2実施形態の帰還用短尺インターポーザ流路61は、供給帰還組み合わせK1において配列方向の供給マニホールド12側に屈曲した部分61bを含んでいる。これにより、帰還用短尺インターポーザ流路61の流路長を帰還用短尺インターポーザ流路15の流路長よりも長くすることができる。なお、帰還用短尺インターポーザ流路61において、上記屈曲した部分61bの代わりに湾曲した部分を設けてもよいし、或いは屈曲した部分61bおよび湾曲した部分を組み合わせて設けてもよい。
【0061】
第2実施形態の液体吐出ヘッド100Aにおいても、第1実施形態の液体吐出ヘッド100と同じように、各供給マニホールド12の幅方向の一端側に配置されたノズルNの吐出性と各供給マニホールド12の幅方向の他端側に配置されたノズルNの吐出性とのばらつきを抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態では、第1インターポーザ流路60の流路長を第1実施形態の第1インターポーザ流路14の流路長よりも長くすることができ、帰還用短尺インターポーザ流路61の流路長を第1実施形態の帰還用短尺インターポーザ流路15の流路長よりも長くすることができる。そのため、両流路の流路抵抗を確保することができる。
【0063】
<他の実施形態>
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば以下の通りである。
【0064】
上記実施形態では、図2に示したように第1インターポーザ流路14の流路幅を供給マニホールド12の流路幅よりも大きくし、第1インターポーザ流路16の流路幅を供給マニホールド12の流路幅よりも大きくしたが、これに限定されるものではなく、第1インターポーザ流路14の流路幅を供給マニホールド12の流路幅よりも小さくし或いは同等とし、第1インターポーザ流路16の流路幅を供給マニホールド12の流路幅よりも小さくし或いは同等としてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、第1インターポーザ流路14の出口14aを供給マニホールド12の長手方向の一端側に配置し、第2インターポーザ流路16の出口16aを供給マニホールド12の長手方向の他端側に配置することとした。これに関して、第1インターポーザ流路14の出口14aを少なくとも供給マニホールド12の長手方向の中心よりも一端側に配置し、第2インターポーザ流路16の出口16aを少なくとも供給マニホールド12の長手方向の中心よりも他端側に配置してもよい。
【0066】
さらに、上記実施形態では、各供給帰還組み合わせK1,K2において帰還マニホールド13を設けることとしたが、当該帰還マニホールド13については必須な構成要素ではない。
【符号の説明】
【0067】
10 供給統合流路
11 帰還統合流路
12 供給マニホールド
13 帰還マニホールド
14 第1インターポーザ流路(第1接続流路)
14a 第1インターポーザ流路の出口
15 帰還用短尺インターポーザ流路
16 第2インターポーザ流路(第2接続流路)
16a 第2インターポーザ流路の出口
17 帰還用長尺インターポーザ流路
20 バイパス流路
21 上流側バイパス流路
22 下流側バイパス流路
60 第1インターポーザ流路
60a 第1インターポーザ流路の出口
60b 屈曲した部分
100,100A 液体吐出ヘッド
200 液体吐出装置
N ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7