(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240709BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/18
(21)【出願番号】P 2020111487
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】神▲崎▼ 章太郎
(72)【発明者】
【氏名】水野 泰介
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 啓太
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-049868(JP,A)
【文献】特開2020-078891(JP,A)
【文献】国際公開第2018/101290(WO,A1)
【文献】特開2015-044346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを含む複数の個別流路が第1方向に配列されることによってそれぞれ形成され、前記第1方向と交差する第2方向に配列された複数の個別流路列と、前記複数の個別流路列の各々に対して設けられ、前記第1方向に延び、前記第2方向に並んだ、対応する前記個別流路列を構成する前記複数の個別流路と連通する複数の第1共通流路と、を有する第1流路部材と、
前記第1流路部材の、前記第1方向及び前記第2方向のいずれとも直交する第3方向における一方側に配置された部材であって、前記複数の第1共通流路に共通の第2共通流路、を有する第2流路部材と、
前記第3方向における前記第1流路部材と前記第2流路部材との間に配置された部材であって、前記複数の第1共通流路の各々に対して設けられ、対応する前記第1共通流路と前記第2共通流路とを接続する複数の流路を含む、前記第2共通流路と接続された複数の接続流路の少なくとも一部分、を有する第3流路部材と、を備え
、
前記第2共通流路の
長さ方向の一端部以外の部分に、前記第2共通流路を外部と連通させる連通口が設けられ
、
前記第1流路部材が、前記複数の第1共通流路として、対応する前記個別流路に液体を供給する複数の第1供給流路、を有し、
前記第2流路部材が、前記第2共通流路として、前記複数の第1供給流路に共通の第2供給流路、を有し、
前記第3流路部材が、前記複数の接続流路として、対応する前記第1供給流路と前記第2供給流路とを接続する複数の第3供給流路、を有し、
前記第3方向が、上側を前記一方側とする鉛直方向であり、
前記複数の第3供給流路のうち1つの第3供給流路が、前記第2流路部材まで延びて、前記第2供給流路の前記一端部の天井面又は側壁面に接続されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
ノズルを含む複数の個別流路が第1方向に配列されることによってそれぞれ形成され、前記第1方向と交差する第2方向に配列された複数の個別流路列と、前記複数の個別流路列の各々に対して設けられ、前記第1方向に延び、前記第2方向に並んだ、対応する前記個別流路列を構成する前記複数の個別流路と連通する複数の第1共通流路と、を有する第1流路部材と、
前記第1流路部材の、前記第1方向及び前記第2方向のいずれとも直交する第3方向における一方側に配置された部材であって、前記複数の第1共通流路に共通の第2共通流路、を有する第2流路部材と、
前記第3方向における前記第1流路部材と前記第2流路部材との間に配置された部材であって、前記複数の第1共通流路の各々に対して設けられ、対応する前記第1共通流路と前記第2共通流路とを接続する複数の流路を含む、前記第2共通流路と接続された複数の接続流路の少なくとも一部分、を有する第3流路部材と、を備え、
前記複数の接続流路のうち1つの接続流路が、前記第2共通流路の長さ方向の一端部に接続され、
前記第2共通流路の前記一端部以外の部分に、前記第2共通流路を外部と連通させる連通口が設けられ
、
前記第1流路部材が、前記複数の第1共通流路として、
対応する前記個別流路に液体を供給する複数の第1供給流路と、
対応する前記個別流路から液体が流出する複数の第1帰還流路と、を有し、
前記第2流路部材が、前記第2共通流路として、
前記複数の第1供給流路に共通の第2供給流路と、
前記複数の第1帰還流路に共通の第2帰還流路と、を有し、
前記第3流路部材が、前記複数の接続流路として、
対応する前記第1供給流路と前記第2供給流路とを接続する複数の第3供給流路と、
対応する前記第1帰還流路と前記第2帰還流路とを接続する複数の第3帰還流路と、を有し、
前記1つの接続流路が、前記第2帰還流路の前記一端部に接続され、
前記第3流路部材が、前記接続流路として、前記第2供給流路と前記第2帰還流路とを接続するバイパス流路、をさらに有し、
前記バイパス流路は、
前記第2供給流路及び前記第2帰還流路のうち少なくとも片方の流路の前記一端部に接続されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第3方向は、前記一方側を上側とする鉛直方向であり、
前記バイパス流路は、
前記第2流路部材まで延びて、前記第2供給流路の前記一端部の天井面又は側壁面に接続されていることを特徴とする請求項
2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第3方向は、前記一方側を上側とする鉛直方向であり、
前記バイパス流路は、
前記第2帰還流路の前記一端部の底面に接続されていることを特徴とする請求項
2又は3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
ノズルを含む複数の個別流路が第1方向に配列されることによってそれぞれ形成され、前記第1方向と交差する第2方向に配列された複数の個別流路列と、前記複数の個別流路列の各々に対して設けられ、前記第1方向に延び、前記第2方向に並んだ、対応する前記個別流路列を構成する前記複数の個別流路と連通する複数の第1共通流路と、を有する第1流路部材と、
前記第1流路部材の、前記第1方向及び前記第2方向のいずれとも直交する第3方向における一方側に配置された部材であって、前記複数の第1共通流路に共通の第2共通流路、を有する第2流路部材と、
前記第3方向における前記第1流路部材と前記第2流路部材との間に配置された部材であって、前記複数の第1共通流路の各々に対して設けられ、対応する前記第1共通流路と前記第2共通流路とを接続する複数の流路を含む、前記第2共通流路と接続された複数の接続流路の少なくとも一部分、を有する第3流路部材と、を備え、
前記複数の接続流路のうち1つの接続流路が、前記第2共通流路の長さ方向の一端部に接続され、
前記第2共通流路の前記一端部以外の部分に、前記第2共通流路を外部と連通させる連通口が設けられ
、
前記1つの接続流路は、前記第2共通流路との接続口において、前記接続口以外の部分よりも、液体の流れる方向と直交する断面の断面積が小さいことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第2共通流路の長さ方向における一端面と、前記1つの接続流路の前記第2共通流路との接続口との距離が、前記第2共通流路の長さ方向における前記接続口の長さよりも短いことを特徴とする請求項
1~3のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記第2共通流路は、前記一端部において、前記一端部以外の部分よりも、長さ方向と直交する断面の断面積が小さいことを特徴とする請求項
1~6のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記第3方向が、上側を前記一方側とする鉛直方向であり、
前記第2供給流路の前記一端部の底面が、前記第2供給流路の長さ方向において先端に近づくほど上側に向かうように水平面に対して傾斜していることを特徴とする請求項
1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記第3方向が、上側を前記一方側とする鉛直方向であり、
前記第2供給流路の底面は、前記一端部において、前記一端部以外の部分よりも上方に位置するような段差を有していることを特徴とする請求項
1に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドの一例として、特許文献1には、ノズルから流体を吐出する流体吐出装置が記載されている。特許文献1に記載の流体吐出装置では、流体吐出モジュールの上面に、インターポーザアセンブリが配置され、さらにその上方に、ハウジングが配置されている。そして、ハウジングに形成された入口室及び出口室が、インターポーザアセンブリに形成された複数の流路を介して、流体吐出モジュールに形成された、ノズルを含む複数の流路と接続されている。そして、特許文献1に記載の流体吐出装置では、入口室に設けられた開口から入口室に流入した流体が、入口室からインターポーザに形成された複数の流路を経て、流体吐出モジュールの複数の流路に流れる。また、流体は、流体吐出モジュールの複数の流路から、インターポーザに形成された複数の流路を経て出口室に流れ、出口室に設けられた開口から流出する。これにより、流体吐出装置において流体を循環させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1では、入口室及び出口室においては、上記開口から離れた端部に気泡が溜まりやすい。そのため、インターポーザアセンブリの複数の流路の入口室及び出口室との接続口の位置によっては、上述したようにして循環する流体の流れによって、入口室及び出口室に溜まった気泡を排出することができない虞がある。
【0005】
本発明の目的は、気泡を確実に排出させることが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出ヘッドは、ノズルを含む複数の個別流路が第1方向に配列されることによってそれぞれ形成され、前記第1方向と交差する第2方向に配列された複数の個別流路列と、前記複数の個別流路列の各々に対して設けられ、前記第1方向に延び、前記第2方向に並んだ、対応する前記個別流路列を構成する前記複数の個別流路と連通する複数の第1共通流路と、を有する第1流路部材と、前記第1流路部材の、前記第1方向及び前記第2方向のいずれとも直交する第3方向における一方側に配置された部材であって、前記複数の第1共通流路に共通の第2共通流路、を有する第2流路部材と、前記第3方向における前記第1流路部材と前記第2流路部材との間に配置された部材であって、前記複数の第1共通流路の各々に対して設けられ、対応する前記第1共通流路と前記第2共通流路とを接続する複数の流路を含む、前記第2共通流路と接続された複数の接続流路の少なくとも一部分、を有する第3流路部材と、を備え、前記第2共通流路の長さ方向の一端部以外の部分に、前記第2共通流路を外部と連通させる連通口が設けられ、前記第1流路部材が、前記複数の第1共通流路として、対応する前記個別流路に液体を供給する複数の第1供給流路、を有し、前記第2流路部材が、前記第2共通流路として、前記複数の第1供給流路に共通の第2供給流路、を有し、前記第3流路部材が、前記複数の接続流路として、対応する前記第1供給流路と前記第2供給流路とを接続する複数の第3供給流路、を有し、前記第3方向が、上側を前記一方側とする鉛直方向であり、前記複数の第3供給流路のうち1つの第3供給流路が、前記第2流路部材まで延びて、前記第2供給流路の前記一端部の天井面又は側壁面に接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】インクジェットヘッド11を備えたプリンタ1の概略構成図である。
【
図2】インクジェットヘッド11の概略構成を示す分解斜視図である。
【
図8】インクジェットヘッド11の
図3~
図7におけるVIII-VIII線断面図である。
【
図9】インクジェットヘッド11の
図3~
図7におけるIX-IX線断面図である。
【
図10】インクジェットヘッド11の
図3~
図7におけるX-X線断面図である。
【
図11】インクジェットヘッド11の
図3~
図7におけるXI-XI線断面図である。
【
図12】インクジェットヘッド11の
図3~
図7におけるXII-XII線断面図である。
【
図13】(a)はインクジェットヘッド11の
図3~
図7におけるXIIIA-XIIIA線断面図であり、(b)はインクジェットヘッド11の
図3~
図7におけるXIIIB-XIIIB線断面図である。
【
図16】(a)は第2実施形態に係るインクジェットヘッドの
図14、
図15におけるXVIA-XVIA線断面図であり、(b)は第2実施形態に係るインクジェットヘッドの
図14、
図15におけるXVIB-XVIB線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
以下、本発明の好適な第1実施形態について説明する。
【0009】
<プリンタ1の全体構成>
図1に示すように、第1実施形態に係るプリンタ1は、4つのヘッドユニット2と、プラテン3と、搬送ローラ4,5とを備えている。
【0010】
各ヘッドユニット2は、8つのインクジェットヘッド11と、ヘッド保持部材12とを有する。インクジェットヘッド11は、その下面に形成された複数のノズル10からインクを吐出する。また、8つのインクジェットヘッド11は、水平な紙幅方向(本発明の「第2方向」)に並んでいる。
【0011】
これにより、8つのインクジェットヘッド11の複数のノズル10が、紙幅方向に記録用紙Pの全長にわたって配置されている。すなわち、ヘッドユニット2は、いわゆるラインヘッドである。なお、以下では、紙幅方向について、
図1に示すように右側及び左側を定義して説明を行う。
【0012】
ヘッド保持部材12は、紙幅方向、及び、水平で且つ紙幅方向と直交する搬送方向に延びた長方形の板状の部材であり、8つのインクジェットヘッド11を保持している。なお、以下では、搬送方向について、
図1に示すように前側及び後側を定義して説明を行う。
【0013】
また、4つのヘッドユニット2は、搬送方向に並んでいる。4つのヘッドユニット2を構成する複数のノズル10からは、後側に配置されたヘッドユニット2を構成するものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
【0014】
プラテン3は、ヘッドユニット2の下方に配置されており、紙幅方向に記録用紙Pの全長にわたって延びているとともに、搬送方向に4つのヘッドユニット2にわたって延びている。プラテン3は、4つのヘッドユニット2の複数のノズル10と対向しており、記録用紙Pを下方から支持する。
【0015】
搬送ローラ4は、4つのヘッドユニット2及びプラテン3の後側に配置されている。搬送ローラ5は、4つのヘッドユニット2及びプラテン3の前側に配置されている。搬送ローラ4,5は、記録用紙Pを搬送方向に搬送する。
【0016】
そして、プリンタ1では、搬送ローラ4,5により記録用紙Pを搬送方向に搬送させながら、各ヘッドユニット2において8つのインクジェットヘッド11の複数のノズル10からインクを吐出させることによって、記録用紙Pに記録を行うことができる。
【0017】
<インクジェットヘッド11>
次に、インクジェットヘッド11の構造について説明する。
図2に示すように、インクジェットヘッド11は、ノズル部材21と、第1共通流路部材22と、アクチュエータ部材23と、第3共通流路部材24(本発明の「第3流路部材」)と、第2共通流路部材25(本発明の「第2流路部材」)とが、下方からこの順に鉛直方向(本発明の「第3方向」)に積層されることによって形成されている。なお、ノズル部材21と第1共通流路部材22とアクチュエータ部材23とを合わせたものが、本発明の「第1流路部材」に相当する。また、第1実施形態では、鉛直方向について、上側が本発明の「第3方向における一方側」に相当し、下側が本発明の「第3方向における他方側」に相当する。
【0018】
ノズル部材21は、合成樹脂材料等からなる。
図2、
図3、
図8に示すように、ノズル部材21には、複数のノズル10が形成されている。複数のノズル10は、水平で且つ搬送方向に対して傾いた配列方向(本発明の「第1方向」)に配列されることによってノズル列9を形成している。また、ノズル部材21には、紙幅方向に並んだ7列のノズル列9が形成されている。また、各ノズル列9において、前側の半分を構成する複数のノズル10のうち最も後側のノズル10と、後側の半分を構成する複数ノズル10のうち最も前側のノズル10との間隔が、ノズル列9におけるそれ以外のノズル10同士の間隔よりも大きくなっている。また、ノズル部材21に形成された複数のノズル10は、上述したように配置されていることにより、搬送方向に投影したときに、紙幅方向に等間隔に並んでいる。
【0019】
第1共通流路部材22は、金属材料などからなり、ノズル部材21の上面に配置されている。
図2、
図4、
図8~
図10に示すように、第1共通流路部材22は、複数のディセンダ31と、4つの第1供給流路32と、4つの第1帰還流路33と、2つのバイパス流路34と、複数の個別帰還流路35とを有する。
【0020】
複数のディセンダ31は、複数のノズル10に対して個別のものであり、対応するノズル10と鉛直方向に重なっており、第1共通流路部材22を鉛直方向に貫通している。
【0021】
第1供給流路32、第1帰還流路33及びバイパス流路34は、第1共通流路部材22の下面に開口した凹部によって形成されている。なお、第1実施形態では、第1供給流路32及び第1帰還流路33が、本発明の「第1共通流路」に相当する。
【0022】
4つの第1供給流路32は、それぞれが配列方向に延び、紙幅方向に間隔を空けて並んでいる。各第1供給流路32の配列方向の中央部には、第1共通流路部材22の上面に開口した接続口32aが設けられている。
【0023】
また、最も左側の第1供給流路32は、最も左側のノズル列9に対応している。また、左側から2,3,4番目の第1供給流路32は、それぞれ、左側から2,3番目、4,5番目、及び、6,7番目のノズル列9に対応している。そして、各第1供給流路32は、対応するノズル列9を構成する複数のノズル10と配列方向の位置が同じ部分が、水平で且つ配列方向と直交する方向に突出した突出部32bとなっている。突出部32bには、第1共通流路部材22の上面に開口した接続口32cが設けられている。
【0024】
4つの第1帰還流路33は、それぞれが配列方向に延び、4つの第1供給流路32と交互に紙幅方向に並んでいる。各第1帰還流路33の配列方向の中央部には、第1共通流路部材22の上面に開口した接続口33aが設けられている。
【0025】
また、左側から1,2,3番目の第1帰還流路33は、それぞれ、左側から1,2番目、3,4番目、及び、5,6番目のノズル列9に対応している。また、最も右側の第1帰還流路33は、最も右側のノズル列9に対応している。
【0026】
2つのバイパス流路34は、それぞれ、紙幅方向に延びている。一方のバイパス流路34は、4つの第1供給流路32の前側の端及び4つの第1帰還流路33の前側の端を互いに接続する。他方のバイパス流路34は、4つの第1供給流路32の後側の端及び4つの第1帰還流路33の後側の端を互いに接続する。
【0027】
複数の個別帰還流路35は、複数のディセンダ31に対して個別に設けられている。個別帰還流路35は、対応するディセンダ31の下端部に接続され、ディセンダ31との接続部分から配列方向における左前側に延び、途中で水平で且つ配列方向と直交する方向に折れ曲がって、第1帰還流路33に接続されている。
【0028】
アクチュエータ部材23は、シリコンなどからなり、第1共通流路部材22の上面に配置されている。
図2、
図5、
図8~
図10に示すように、アクチュエータ部材23は、複数の圧力室41と、振動板42と、複数の駆動素子43と、4つの供給連通流路44と、4つの帰還連通流路45とを有する。
【0029】
複数の圧力室41は、複数のノズル10に個別に設けられており、アクチュエータ部材23の下面に開口した凹部によって形成されている。圧力室41は、水平で且つ配列方向と直交する方向を長手方向とする長方形に形成されており、上記長手方向及び配列方向の中央部において対応するノズル10及びディセンダ31と鉛直方向に重なっている。これにより、対応するノズル10と圧力室41とが、ディセンダ31を介して連通している。
【0030】
また、各圧力室41の長手方向の一方側の端部は、接続口32cと鉛直方向に重なっている。これにより、圧力室41は、接続口32cを介して第1供給流路32と連通している。ここで、圧力室41の長手方向の一方側とは、紙幅方向の左から奇数番目のノズル列9に対応する圧力室41については、左後側のことであり、紙幅方向の左から偶数番目のノズル列9に対応する圧力室41については、右前側のことである。
【0031】
そして、インクジェットヘッド11では、各ノズル10と、各ノズル10に対応するディセンダ31、個別帰還流路35及び圧力室41とによって個別流路40が形成されている。また、インクジェットヘッド11では、7列のノズル列9が紙幅方向に並んでいるのに対応して、複数の個別流路40が配列方向に配列されることによって形成された個別流路列39が、紙幅方向に7列に並んでいる。
【0032】
図8に示すように、振動板42は、アクチュエータ部材23の上端部によって形成されており、複数の圧力室41にわたって連続的に延び、複数の圧力室41を覆っている。複数の駆動素子43は、複数の圧力室41に対応しており、振動板42の上面の、対応する圧力室41の中央部と鉛直方向に重なる部分に配置されている。駆動素子43は、例えば、圧電体と電極とを有する圧電素子である。そして、駆動素子43は、振動板42の圧力室41と鉛直方向に重なる部分を変形させることによって、圧力室41内のインクに圧力を付与して、圧力室41に連通するノズル10からインクを吐出させる。
【0033】
4つの供給連通流路44は、4つの第1供給流路32に対応している。各供給連通流路44は、対応する第1供給流路32の接続口32aと鉛直方向に重なっている。供給連通流路44は、アクチュエータ部材23を鉛直方向に貫通して延び、その下端が接続口32aに接続されている。
【0034】
4つの帰還連通流路45は、4つの第1帰還流路33に対応している。各帰還連通流路45は、対応する第1帰還流路33の接続口33aと鉛直方向に重なっている。帰還連通流路45は、アクチュエータ部材23を鉛直方向に貫通して延び、その下端が接続口33aに接続されている。
【0035】
また、アクチュエータ部材23の上面の、搬送方向における両端部には、それぞれ、ドライバIC47が配置されている。ドライバIC47は、紙幅方向が長手方向となるような向きで配置されている。前側のドライバIC47は、図示しない配線などを介して、複数の駆動素子43のうち、前側の半分の駆動素子43と接続され、これらの駆動素子43を駆動する。後側のドライバIC47は、図示しない配線などを介して、複数の駆動素子43のうち、後側の半分の駆動素子43と接続され、これらの駆動素子43を駆動する。
【0036】
第3共通流路部材24は、シリコンなどからなり、アクチュエータ部材23の上面に配置されている。
図2、
図6、
図8~
図10に示すように、第3共通流路部材24は、4つの第3供給流路51の一部分と、4つの第3帰還流路52と、4つのバイパス流路53と、14個の素子収容部54と、2つのIC収容部55とを有する。第3供給流路51の上記一部分、第3帰還流路52、バイパス流路53、素子収容部54及びIC収容部55は、第3共通流路部材24の下面に開口した凹部によって形成されている。なお、第1実施形態では、第3供給流路51、第3帰還流路52及びバイパス流路53が、本発明の「接続流路」に相当する。
【0037】
4つの第3供給流路51は、4つの第1供給流路32に対応している。第3供給流路51の上記一部分は、対応する第1供給流路32の前側の半分にわたって配列方向に延び、右後側の端部が、対応する供給連通流路44と接続されている。また、第3供給流路51の上記一部分は、左前側の端部において、第3共通流路部材24の上面まで延びている。第3供給流路51の残りの部分については、第2共通流路部材25に形成されているが、これについては後程説明する。
【0038】
4つの第3帰還流路52は、4つの第1帰還流路33に対応している。第3帰還流路52は、対応する第1帰還流路33の後側の半分にわたって配列方向に延び、左前側の端部が、対応する帰還連通流路45と接続されている。また、配列方向に延びた第3帰還流路52の、右後側の端部には、第3共通流路部材24の上面に開口した接続口52aが設けられている。
【0039】
4つのバイパス流路53は、それぞれ、流路部分53a~53cを有する。
【0040】
4つのバイパス流路53を構成する4つの流路部分53aは、配列方向に延び、第3供給流路51と紙幅方向に交互に並んでいる。また、各流路部分53aは、配列方向において、第3帰還流路52の延長線上に位置している。また、配列方向に延びた流路部分53aの、左前側の端部には、第3共通流路部材24の上面に開口した接続口53a1が設けられている。
【0041】
4つのバイパス流路53を構成する4つの流路部分53bは、配列方向に延び、第3帰還流路52と紙幅方向に交互に並んでいる。また、各流路部分53bは、配列方向において、第3供給流路51の上記一部分の延長線上に位置している。また、配列方向に延びた流路部分53bの、右後側の端部には、第3共通流路部材24の上面に開口した接続口53b1が設けられている。
【0042】
4つのバイパス流路53を構成する4つの流路部分53cは、それぞれ、流路部分53aの右後側の端部と、流路部分53bの左前側の端部とを接続する。
【0043】
14個の素子収容部54は、その2つずつが、1つのノズル列9に対応している。そして、1つのノズル列9に対応する2つの素子収容部54は、それぞれ、ノズル列9に対応する複数の駆動素子43のうち、前側の半分の駆動素子43、及び、後側半分の駆動素子43と鉛直方向に重なっている。これにより、各素子収容部54に、1つのノズル列9に対応する複数の駆動素子43のうち半分の駆動素子43が収容されている。
【0044】
2つのIC収容部55は、2つのドライバIC47と鉛直方向に重なっており、各IC収容部55にドライバIC47が収容されている。また、2つのIC収容部55が、上記のように配置されていることにより、第3供給流路51、第3帰還流路52、バイパス流路53及び素子収容部54が、IC収容部55よりも、第3共通流路部材24の配列方向における内側の部分に配置されている。また、IC収容部55には、熱伝導性部材56が充填されており、ドライバIC47と第3共通流路部材24との間に熱伝導性部材56が介在している。熱伝導性部材56は、例えば、エポキシ系接着剤によって形成されている。
【0045】
第2共通流路部材25は、例えばアルミナ等からなる3枚のプレート25a~25cが積層されることによって形成されている。
図2、
図7~
図13に示すように、第2共通流路部材25は、第2供給流路61と、第2帰還流路62と、第3供給流路51の上記一部分以外の部分とを有している。なお、第1実施形態では、第2供給流路61及び第2帰還流路62が、本発明の「第2共通流路」に相当する。また、
図7では、第2供給流路61と接続口52a、及び、第2帰還流路62と接続口53a1、53b1との位置関係をわかりやすくするために、第3共通流路部材24に形成された接続口52a、53a1、53b1の位置を二点鎖線で示している。
【0046】
第2供給流路61は、流路部分61a~61cを有する。流路部分61aは、第2共通流路部材25の前側の部分において、紙幅方向に延び、その底面61a1において接続口53a1と接続されている。
【0047】
また、
図7に示すように、流路部分61aは、左端部(本発明の「第2共通流路の長さ方向の一端部」)及びその近傍の部分において、左側に向かう(先端に近づく)ほど搬送方向の長さが短くなっている。また、
図11に示すように、流路部分61aの底面61a1は、左端部及びその近傍の部分において、左側に向かうほど上方に向かうように、紙幅方向に対して傾斜している。
【0048】
また、各第3供給流路51は、第3共通流路部材24において配列方向に延びた部分の前側の端部から、第2共通流路部材25の流路部分61aよりも上側の部分まで、鉛直方向に延びている。そして、第3供給流路51は、鉛直方向に延びた部分の上端において、配列方向における左前側に折れ曲がり、さらに下方に折れ曲がって、流路部分61aの天井面61a2に接続されている。
【0049】
そして、4つの第3供給流路51のうち、最も左側の第3供給流路51(本発明の「1つの接続流路」、「1つの第3供給流路」)は、天井面61a2の左端部に接続されている。より詳細に説明すると、第3供給流路51の流路部分61aとの接続口51aは、直径D1の円形である。そして、流路部分61aの左側の端面61a3(本発明の「第2共通流路の長さ方向における一端面」)と、最も左側の第3供給流路51の接続口51aとの距離L1が、接続口51aの直径D1(紙幅方向の長さ)よりも短い。なお、距離L1は0であってもよい。すなわち、端面61a3と接続口51aの左端の、紙幅方向の位置が同じであってもよい。例えば、直径D1は100~500μm程度であり、距離L1は、50~200μm程度である。
【0050】
流路部分61bは、流路部分61aの右端部に接続され、流路部分61aとの接続部分から、搬送方向における第2共通流路部材25の中央部まで、配列方向に延びている。流路部分61cは、流路部分61bの後端部に接続され、流路部分61bとの接続部分から左側に延びている。流路部分61cの左端部には、第2共通流路部材25の上面に開口した供給口61e(本発明の「連通口」)が設けられている。
【0051】
供給口61eは、ポンプ71aを介してサブタンク72に接続されている。ポンプ71aは、サブタンク72から供給口61eに向かう方向にインクを送る。サブタンク72は、図示しないチューブを介して、インクカートリッジ等の図示しないメインタンクに接続されており、メインタンクからインクが供給される。
【0052】
第2帰還流路62は、流路部分62a~62cを有する。流路部分62aは、第2共通流路部材25の後側の部分において、4つの接続口52a及び4つの接続口53b1にわたって紙幅方向に延び、これらの接続口52a、53b1が、流路部分62aの底面62a1に接続されている。
【0053】
また、
図7に示すように、流路部分62aは、右端部(本発明の「第2共通流路の一端部」)及びその近傍の部分において、右側に向かう(先端に近づく)ほど搬送方向の長さが短くなっている。なお、流路部分62aの底面62a1は、その全域にわたって水平な面である。また、
図12に示すように、流路部分62aの天井面62a2は、右端部及びその近傍の部分において、右側に向かうほど下方に向かうように、紙幅方向に対して傾斜している。
【0054】
そして、4つの第3帰還流路52のうち、最も右側の第3帰還流路52(本発明の「1つの接続流路」、「1つの第3帰還流路」)は、流路部分62aの底面62a1の右端部に接続されている。より詳細に説明すると、第3帰還流路52の接続口52aは、直径がD2の円形である。そして、流路部分62aの右側の端面62a3(本発明の「第2共通流路の長さ方向における一端面」)と、最も右側の第3帰還流路52の接続口52aとの距離L2が、接続口52aの直径D2(紙幅方向の長さ)よりも短い。なお、距離L2は0であってもよい。すなわち、端面62a3と接続口52aの右端の、紙幅方向の位置が同じであってもよい。例えば、直径D2は100~500μm程度であり、距離L2は、50~200μm程度である。
【0055】
流路部分62bは、流路部分62aの左端部に接続され、流路部分62aとの接続部分から、搬送方向における第3共通流路部材25の中央部まで、配列方向に延びている。流路部分62cは、流路部分62bの前端部に接続され、流路部分62bとの接続部分から右側に延びている。流路部分62cの右端部には、第2共通流路部材25の上面に開口した排出口62eが設けられている。
【0056】
排出口62eは、ポンプ71bを介してサブタンク72に接続されている。ポンプ71bは、排出口62eからサブタンク72に向かう方向にインクを送る。
【0057】
ポンプ71a,71bを駆動させると、サブタンク72内のインクが、供給口61eから第2供給流路61に流入する。第2供給流路61内のインクは、その一部が、接続口51aから第3供給流路51に流入し、別の一部が、接続口53a1からバイパス流路53に流入する。
【0058】
第3供給流路51内のインクは、供給連通流路44に流れ、接続口32aから第1供給流路32に流入する。第1供給流路32内のインクの一部は、対応する複数の個別流路40に流入し、これら複数の個別流路40から、各第1供給流路32と紙幅方向に隣接する第1帰還流路33に流入する。また、第1供給流路32内のインクの別の一部は、バイパス流路34を介して、各第1供給流路32と紙幅方向に隣接する第1帰還流路33に流入する。
【0059】
第1帰還流路33内のインクは、接続口33aから帰還連通流路45に流れ、第3帰還流路52に流入する。第3帰還流路52内のインクは、接続口52aから第2帰還流路62に流入する。また、バイパス流路53内のインクも、接続口53b1から第2帰還流路62に流入する。第2帰還流路62内のインクは、排出口62eから排出され、サブタンク72に戻される。
【0060】
そして、第1実施形態では、ポンプ71a,71bを駆動させたときに上述したようにインクが流れることによってインクジェットヘッド11とサブタンク72との間でインクが循環する。なお、ポンプ71a,71bのうち片方のみが設けられていてもよい。この場合でも、当該片方のポンプを駆動させることによって、上述したのと同様に、インクジェットヘッド11とサブタンク72との間でインクを循環させることができる。
【0061】
<効果>
第1実施形態では、第2供給流路61の、長さ方向における供給口61eと反対側の端部、すなわち、流路部分61aの左端部に気泡が溜まりやすい。また、第2帰還流路62の、長さ方向における排出口62eと反対側の端部、すなわち、流路部分62aの右端部に気泡が溜まりやすい。
【0062】
これに対して、第1実施形態では、流路部分61aの左端部に、1つの第3供給流路51が接続されている。これにより、第2供給流路61から上記1つの第3供給流路51にインクが流れるときに、流路部分61aの左端部にインクの流れが生じる。その結果、当該インクの流れによって、第2供給流路61に溜まった気泡を確実に排出させることができる。
【0063】
また、第1実施形態では、流路部分62aの右端部に、1つの第3帰還流路52が接続されている。これにより、上記1つの第3帰還流路52から第2帰還流路62にインクが流れるときに、流路部分62aの右端部にインクの流れが生じる。その結果、当該インクの流れによって、第2帰還流路62に溜まった気泡を確実に排出させることができる。
【0064】
また、第1実施形態では、流路部分61aの左側の端面61a3と、最も左側の第3供給流路51の接続口51aとの距離L1が、接続口51aの直径D1よりも短い。これにより、流路部分61aの左端部に溜まった、接続口51aの直径D1よりも直径(紙幅方向の長さ)の大きい気泡を確実に排出させることができる。
【0065】
また、第1実施形態では、流路部分62aの右側の端面62a3と、最も右側の第3帰還流路52の接続口52aとの距離L2が、接続口52aの直径D2よりも短い。これにより、流路部分62aの右端部に溜まった、接続口52aの直径D2よりも直径(紙幅方向の長さ)の大きい気泡を確実に排出させることができる。
【0066】
また、流路部分61a内の気泡は浮き上がる。そのため、第1実施形態と異なり、第3供給流路51が、流路部分61aの底面61a1に接続されているとすると、流路部分61aから第3供給流路51に気泡が流れにくい。これに対して、第1実施形態では、
図13(a)に示すように、流路部分61aの左端部に接続された第3供給流路51が、流路部分61aの左端部の天井面61a2に接続されている。これにより、流路部分61aの左端部に溜まった気泡を第3供給流路51に流れやすくすることができる。
【0067】
また、第3帰還流路52内の気泡は浮き上がろうとする。これに対して、第1実施形態では、
図13(b)に示すように、第3帰還流路52が流路部分62aの底面62a1に接続されている。これにより、第3帰還流路52内の気泡を、流路部分62aに流れやすくすることができる。
【0068】
また、流路部分61a内の気泡は浮き上がる。これに対して、第1実施形態では、流路部分61aの底面61a1が、その左端部及びその近傍の部分において、左側に向かう(先端に近づく)ほど上側に向かうように紙幅方向(水平面)に対して傾斜している。これにより、流路部分61aの左端部に溜まった気泡を、第3供給流路51に流れやすくすることができる。
【0069】
また、第1実施形態では、流路部分61aの左端部及びその近傍の部分において、左側に向かうほど搬送方向の長さが短くなっているとともに、流路部分61aの底面61a1が、その左端部及びその近傍の部分において、上述したように紙幅方向に対して傾斜した傾斜面となっている。これにより、流路部分61aは、その左端部において、それ以外の部分よりも、長さ方向と直交する断面の断面積が小さくなっている。その結果、流路部分61aの左端部におけるインクの流速が速くなり、流路部分61aの左端部に溜まった気泡を確実に排出させることができる。
【0070】
また、第1実施形態では、流路部分62aの右端部及びその近傍の部分において、右側に向かうほど搬送方向の長さが短くなっているとともに、流路部分62aの天井面62a2は、右端部及びその近傍の部分において、右側に向かうほど下方に向かうように、紙幅方向に対して傾斜している。これにより、流路部分62aは、その右端部において、それ以外の部分よりも、長さ方向と直交する断面の断面積が小さくなっている。その結果、流路部分62aの右端部におけるインクの流速が速くなり、流路部分62aの右端部に溜まった気泡を確実に排出させることができる。
【0071】
[第2実施形態]
次に、本発明の好適な第2実施形態について説明する。第2実施形態では、
図14~
図16に示すように、第3供給流路111は、その全体が第3共通流路部材101に形成されており、第2共通流路部材102までは延びていない。第3供給流路111は、第1実施形態の第3供給流路51のうち第3共通流路部材24に形成された部分と同様の構造を有しており、前側の端部に、第3共通流路部材101の上面に開口した接続口111aを有している。そして、接続口111aが、第2共通流路部材102に形成された第2供給流路121の流路部分121aの底面121a1に接続されている。
【0072】
また、第2実施形態では、バイパス流路112が、第3共通流路部材101と第2共通流路部材102とにわたって延びている。バイパス流路112の第3共通流路部材101に形成された部分は、第1実施形態のバイパス流路53と同様の構造を有する。そして、バイパス流路112は、第2共通流路部材102において、第1実施形態の第3供給流路51の第2共通流路部材25に形成された部分と同様に延びて、流路部分121aの天井面121a2に接続されている。
【0073】
そして、4つのバイパス流路112のうち、最も右側のバイパス流路112(本発明の「1つの接続流路」、「1つのバイパス流路」)が、天井面121a2の右端部(本発明の「第2共通流路の長さ方向の一端部」)に接続されている。
【0074】
また、第2実施形態では、
図15、
図16(b)に示すように、バイパス流路112の後側の端部に設けられた接続口112a及び第3帰還流路52の接続口52aが、第2帰還流路122の流路部分122aの底面122a1に接続されている。
【0075】
また、第2実施形態では、
図15に示すように、第2供給流路121において、流路部分121aの左端部に流路部分121bが接続され、流路部分121bの後端部に流路部分121cが接続され、流路部分121cの右端部に供給口121eが設けられている。また、第2帰還流路122において、流路部分122aの右端部に流路部分122bが接続され、流路部分122bの後端部に流路部分122cが接続され、流路部分122cの左端部に排出口122eが設けられている。
【0076】
なお、第2実施形態では、第2共通流路部材102は、3枚のプレート102a~102cが積層されることによって形成されている。また、第2実施形態における上記以外の構成については、第1実施形態とほぼ同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0077】
<効果>
第2実施形態では、第2供給流路121の、長さ方向における供給口121eと反対側の端部、すなわち、流路部分121aの右端部に気泡が溜まりやすい。また、第2帰還流路122の、長さ方向における排出口122eと反対側の端部、すなわち、流路部分122aの左端部に気泡が溜まりやすい。
【0078】
これに対して、第2実施形態では、流路部分121aの右端部に、1つのバイパス流路112が接続されている。これにより、第2共通流路121から上記1つのバイパス流路112にインクが流れるときに、流路部分121aの右端部にインクの流れが生じる。これにより、流路部分121aの右端部に溜まった気泡を確実に排出させることができる。
【0079】
また、第2実施形態では、流路部分122aの左端部に、1つのバイパス流路112が接続されている。これにより、上記1つのバイパス流路112から第2帰還流路122にインクが流れるときに、流路部分122aの左端部にインクの流れが生じる。これにより、流路部分122aの左端部に溜まった気泡を確実に排出させることができる。
【0080】
また、流路部分121a内に溜まった気泡は浮き上がる。そのため、第2実施形態と異なり、バイパス流路112が、流路部分121aの底面121a1に接続されているとすると、流路部分121aからバイパス流路112に気泡が流れにくい。これに対して、第2実施形態では、流路部分121aの右端部に接続されたバイパス流路112が、流路部分121aの右端部の天井面121a2に接続されている。これにより、流路部分121aの右端部に溜まった気泡をバイパス流路112に流れやすくすることができる。
【0081】
また、バイパス流路112内の気泡は浮き上がろうとする。これに対して、第2実施形態では、バイパス流路112が流路部分122aの底面62a1に接続されている。これにより、バイパス流路112内の気泡を、流路部分122aに流れやすくすることができる。
【0082】
[変形例]
以上、本発明の好適な第1、第2実施形態について説明したが、本発明は、第1、第2実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0083】
第1実施形態では、第2供給流路61の流路部分61aの底面61a1が、左端部及びその近傍の部分において紙幅方向に対して傾斜していることによって、左端部において、右側の部分よりも上方に位置していたが、これには限られない。
【0084】
変形例1では、
図17に示すように、第2共通流路部材201に形成された第2供給流路203の、第1実施形態における流路部分61aに対応する流路部分203aのうち、上側の部分203a1は、最も左側の第3供給流路51と鉛直方向に重なる位置まで延びているが、下側の部分203a2は、最も左側の第3供給流路51と鉛直方向に重なる位置まで延びていない。これにより、流路部分203aの底面203a3は、左端部において、左端部以外の部分よりも上方に位置するような段差を有している。また、流路部分203aのうち、上側の部分203a1の下側の部分よりも左側まで延びている部分の高さは、例えば、流路部分203aの高さの半分以下である。なお、変形例1では、第2共通流路部材201は、3枚のプレート201a~201cが積層されることによって形成されている。
【0085】
流路部分203a内の気泡は浮き上がるが、変形例1では、流路部分203aの底面203a3が、左端部において左端部以外の部分よりも上方に位置する段差を有するものとなっている。これにより、流路部分203aの左端部から第3供給流路51にインクが流れるときに、流路部分203aの左端部に溜まった気泡が第3供給流路51に流れやすい。また、流路部分203aの底面203a3をこのような段差のあるものとすることにより、第1実施形態の場合のような、紙幅方向に対して傾斜した面とする場合よりも、第2流路部材における第2供給流路の形成が容易となる。
【0086】
また、第1実施形態や変形例1では、流路部分61a,203aの底面61a1,203a3は、流路部分61a,203aの左端部を画定する部分において、流路部分61a,203aの左端部以外の部分よりも上方に位置していたが、これには限られない。例えば、第2供給流路の底面は、その全域にわたって水平であってもよい。
【0087】
また、第1実施形態では、第2供給流路61,121は、長さ方向の一端部(流路部分61aの左端部、流路部分121aの右端部)において、それ以外の部分よりも、長さ方向(紙幅方向)と直交する断面の断面積が小さい。また、第2帰還流路62,122は、長さ方向の一端部(流路部分62aの右端部、流路部分122aの左端部)において、それ以外の部分よりも、長さ方向(紙幅方向)と直交する断面の断面積が小さい。しかしながら、これには限られない。流路部分61a,62a,121a,122aは、紙幅方向の位置によらず、紙幅方向と直交する断面の断面積が一定であってもよい。
【0088】
また、第1実施形態では、第3供給流路51が、第2供給流路61の流路部分61aの天井面61a2に接続されていたが、これには限られない。
【0089】
変形例2では、
図18に示すように、第3供給流路212の第2共通流路部材211において鉛直方向に延びた部分の上端と、流路部分61aの上端の鉛直方向の位置が、ほぼ同じとなっている。そして、第3供給流路212は、流路部分61aの後側の側壁面61a4の上端部に接続されている。なお、変形例2では、第2共通流路部材21は、2枚のプレート211a,211bが積層されることによって形成されている。また、第3供給流路212は、側壁面61a4のうち、より下側の部分に接続されていてもよい。
【0090】
また、第3供給流路212の、側壁面61a4に設けられた接続口212aの高さH3は、第3供給流路212の鉛直方向に延びた部分の直径D3、及び、第3供給流路212の第3共通流路部材24において配列方向に延びた部分の高さH4よりも小さい。例えば、高さH3は50~200μ程度であり、直径D3及び高さH4は、高さH3の2倍程度である。これにより、第3供給流路212は、接続口212aにおいて、それ以外の部分よりも、インクの流れる方向と直交する断面の断面積が小さい、すなわち、流路抵抗が大きい。
【0091】
変形例2でも、流路部分61a内の気泡は浮き上がる。これに対して、変形例2では、流路部分61aの左端部に接続された第3供給流路212が、流路部分61aの左端部の側壁面61a4に接続されている。これにより、流路部分61aの左端部に接続された第3供給流路が、流路部分61aの底面61a1に接続されている場合と比較して、流路部分61aの左端部に溜まった気泡を第3供給流路212に流れやすくすることができる。
【0092】
また、変形例2では、第3供給流路212が、接続口212aにおいて、それ以外の部分よりも、インクの流れる方向と直交する断面の断面積が小さい、すなわち、流路抵抗が大きい。したがって、流路部分61aから第3供給流路212にインクが流れるときに、接続口212aでのインクの流速が速くなり、流路部分61aの左端部に溜まった気泡を確実に排出させることができる。
【0093】
また、変形例2では、第3供給流路212は、流路部分61aの後側の側壁面61a4の上端部に接続されているが、変形例2において、第3供給流路212が、側壁面61a4のうち、上端部より下側の部分に接続されていてもよい。
【0094】
また、第2実施形態においても、変形例2と同様に、バイパス流路112が、第2供給流路121の流路部分121aの搬送方向の側壁面に接続されていてもよい。
【0095】
また、変形例2以外の例において、第3供給流路あるいはバイパス流路が、第2供給流路との接続部分において、それ以外の部分よりもインクの流れる方向と直交する断面の断面積が小さくなっていてもよい。また、第3帰還流路あるいはバイパス流路が、第2帰還流路との接続部分において、それ以外の部分よりもインクの流れる方向と直交する断面の断面積が小さくなっていてもよい。
【0096】
また、第3供給流路あるいはバイパス流路は、第2供給流路との接続部分において、それ以外の部分よりもインクの流れる方向と直交する断面の断面積が大きくなっていてもよい。また、第3帰還流路あるいはバイパス流路は、第2帰還流路との接続部分において、それ以外の部分よりもインクの流れる方向と直交する断面の断面積が大きくなっていてもよい。また、第3供給流路、第3帰還流路、あるいはバイパス流路は、その部分によらず、インクの流れる方向と直交する断面の断面積がほぼ一定であってもよい。
【0097】
また、第1実施形態では、第2供給流路61の流路部分61aに接続される4つの第3供給流路51が全て、流路部分61aの天井面61a2に接続されている。また、第2実施形態では、第2供給流路121の流路部分121aに接続される4つのバイパス流路112が全て、流路部分121aの天井面61a2に接続されている。しかしながら、これには限られない。
【0098】
例えば、第1実施形態において、4つの第3供給流路51のうち、少なくとも最も左側の第3供給流路51を含む一部の第3供給流路51のみが、流路部分61aの天井面61a2に接続され、残りの第3供給流路51は、流路部分61aの底面61a1に接続されていてもよい。変形例2のように、第3供給流路が流路部分61aの側壁面61a4に接続される場合についても同様である。
【0099】
同様に、第2実施形態では、4つのバイパス流路112のうち、少なくとも最も右側のバイパス流路112を含む一部のバイパス流路112のみが、流路部分121aの天井面121a2に接続され、残りのバイパス流路112は、流路部分121aの底面121a1に接続されていてもよい。バイパス流路が流路部分121aの側壁面に接続される場合についても同様である。
【0100】
さらには、第2供給流路に接続される全ての第3供給流路及びバイパス流路が、第2供給流路の底面に接続されていてもよい。
【0101】
また、以上の例では、第2帰還流路に接続される第3帰還流路及びバイパス流路が全て、第2帰還流路の底面に接続されていたが、これには限られない。例えば、これらの流路のうち少なくとも一部は、第2共通流路部材まで延びて、第2帰還流路の天井面や側壁面に接続されていてもよい。
【0102】
また、第1、第2実施形態では、第2供給流路の長さ方向の一端部(流路部分61aの左端部、流路部分121aの右端部)、1つの第3供給流路又は1つのバイパス流路が接続されているとともに、第2帰還流路の長さ方向の一端部(流路部分62aの右端部、流路部分121aの左端部)に、1つの第3帰還流路又は1つのバイパス流路が接続されていたが、これには限られない。
【0103】
例えば、第2供給流路の長さ方向の一端部に、1つの第3供給流路又は1つのバイパス流路が接続され、且つ、全ての第3帰還流路及びバイパス流路が、第2帰還流路の長さ方向の一端部以外の部分に接続されていてもよい。
【0104】
あるいは、全ての第3供給流路及びバイパス流路が、第2供給流路の一端部以外の部分に接続され、且つ、第2帰還流路の一端部に、1つの第3帰還流路又は1つのバイパスが接続されていてもよい。
【0105】
あるいは、第3共通流路部材が、第3供給流路、第3帰還流路及びバイパス流路以外の、第2供給流路あるいは第2帰還流路と接続される接続流路を有し、この接続流路が、第2供給流路あるいは第2帰還流路の一端部に接続されていてもよい。
【0106】
また、第1実施形態では、流路部分61aの左側の端面61a3と、最も左側の第3供給流路51の接続口51aとの距離L1が、接続口51aの直径D1よりも短く、流路部分62aの右側の端面62a3と、最も右側の第3帰還流路52の接続口52aとの距離L2が、接続口52aの直径D2よりも短い。また、第2実施形態では、流路部分121aの右側の端面121a3と、最も右側のバイパス流路112の接続口112bとの距離L3が、接続口112bの直径D3よりも短く、流路部分122aの左側の端面62a3と、最も左側のバイパス流路112の接続口112aとの距離L4が、接続口112aの直径D4よりも短い。しかしながら、これには限られない。
【0107】
例えば、接続口51a,52a,112b,112aが円形以外の形状であり、距離L1~L4が、それぞれ、接続口51a,52a,112b,112aの紙幅方向の長さよりも短くてもよい。
【0108】
あるいは、接続口51a,52a,112b,112aの形状によらず、距離L1~L4が、それぞれ、接続口51a,52a,112b,112aの紙幅方向の長さとほぼ同じであってもよい。
【0109】
また、第1実施形態では、第1共通流路部材22に、第1供給流路32と第1帰還流路33とが形成され、第3共通流路部材24に、第3供給流路51と第3帰還流路52とが形成され、第2共通流路部材25に、第2供給流路61と第2帰還流路62とが形成されている。そして、インクジェットヘッド11とサブタンク72との間でインクを循環させることができるようになっている。しかしながら、これには限られない。
【0110】
例えば、第1共通流路部材22の第1帰還流路33及びバイパス流路34、第3共通流路部材24の第3帰還流路52やバイパス流路53、第2共通流路部材25の第2帰還流路62等、個別流路40からサブタンク72にインクを戻すための流路が形成されていなくてもよい。そして、この場合に、例えば、第1実施形態で説明したのと同様に、第2供給流路61の流路部分61aの左端部に、第3供給流路51が接続されていてもよい。なお、この場合には、例えば、複数ノズル10をキャップで覆ったうえで、キャップに接続された吸引ポンプを駆動させることによって、複数のノズル10からインクジェットヘッド11内のインクを排出させる、いわゆる吸引パージによって気泡を排出することができる。
【0111】
なお、この場合には、第1共通流路部材22、第3共通流路部材24及び第2共通流路部材25に形成された、サブタンク72から個別流路40にインクを供給するための流路が、それぞれ、本発明の「第1共通流路」、「接続流路」及び「第2共通流路」に相当する。第2実施形態についても同様である。
【0112】
また、以上の例では、第2供給流路において、長さ方向の片側の端部に供給口が設けられ、長さ方向における供給口と反対側の端部に、第3供給流路あるいはバイパス流路が接続されている。また、第2帰還流路において、長さ方向の片側の端部に排出口が設けられ、長さ方向における排出口と反対側の端部に、第3帰還流路あるいはバイパス流路が接続されている。しかしながら、これには限られない。
【0113】
例えば、第2供給流路において、長さ方向の途中部分に供給口が設けられ、長さ方向における少なくとも片方の端部に、第3供給流路あるいはバイパス流路が接続されていてもよい。同様に、第2帰還流路において、長さ方向の途中部分に排出口が設けられ、長さ方向における少なくとも片方の端部に、第3帰還流路あるいはバイパス流路が接続されていてもよい。
【0114】
また、以上では、ラインヘッドを構成するインクジェットヘッドに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。例えば、キャリッジに搭載され、キャリッジとともに移動しながら複数のノズルからインクを吐出する、いわゆるシリアルヘッドに本発明を適用することも可能である。
【0115】
また、以上では、ノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。インク以外の液体を吐出する液体吐出ヘッドに本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0116】
10 ノズル
11 インクジェットヘッド
21 ノズル部材
22 第1流路部材
23 アクチュエータ部材
24 第3流路部材
25 第2流路部材
32 第1供給流路
33 第1帰還流路
39 個別流路列
40 個別流路
51 第3供給流路
51a 接続口
52 第3帰還流路
52a 接続口
53 バイパス流路
53a1 接続口
53b1 接続口
61 第2供給流路
61a1 底面
61a2 天井面
61a3 端面
61e 供給口
61a4 側壁面
62 第2帰還流路
62a2 底面
62a3 端面
101 第3流路部材
102 第2流路部材
111 第3供給流路
111a 接続口
112 バイパス流路
112a,112b 接続口
121 第2供給流路
121a1 底面
121a2 天井面
121a3 端面
121e 供給口
122 第2帰還流路
122a1 底面
122a3 端面
122e 排出口
201 第2流路部材
203 第2供給流路
203a3 底面
211 第2流路部材
212 第3供給流路
212a 接続口