(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】圧電素子デバイス、圧電素子装置および荷重検出方法
(51)【国際特許分類】
G01L 1/10 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
G01L1/10 A
(21)【出願番号】P 2020112700
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 力
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-130994(JP,A)
【文献】特開2007-171059(JP,A)
【文献】特開2016-224020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00-1/26
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の振動部を有する基板と、
前記複数の振動部のそれぞれに設けられた圧電素子が互いに並列接続された圧電素子群と、
前記圧電素子群を被覆する樹脂層と、を備え、
前記振動部
と前記圧電素子とによって構成される各荷重検出素子は、互いに異なる共振周波数で共振し、
前記荷重検出素子の前記共振周波数は、前記樹脂層を介して前記荷重検出素子に加えられる荷重に応じて変化し、
前記共振周波数の変化可能な範囲である各共振周波数変化範囲は、互いに重ならない
ことを特徴とする圧電素子デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電素子デバイスと、
複数の前記荷重検出素子の振動により前記圧電素子群から出力される検出信号に基づいて、前記荷重検出素子ごとに前記共振周波数の変化を検出する共振周波数検出部と、を備える
ことを特徴とする圧電素子装置。
【請求項3】
請求項2に記載の圧電素子装置であって、
前記共振周波数検出部は、
各前記荷重検出素子に対応して設けられ、前記検出信号から、対応する前記荷重検出素子の前記共振周波数変化範囲に含まれる信号成分を抽出信号として選択的に抽出する複数のバンドパスフィルターと、
各前記バンドパスフィルターにより抽出された前記抽出信号の周期に基づいて、前記荷重検出素子ごとの前記共振周波数の変化を算出する変化算出部と、を備える
ことを特徴とする圧電素子装置。
【請求項4】
請求項2に記載の圧電素子装置であって、
前記共振周波数検出部は、フーリエ変換を用いて前記検出信号に含まれる各前記荷重検出素子に対応した前記共振周波数変化範囲の信号成分を解析することにより、前記荷重検出素子ごとの前記共振周波数の変化を算出する
ことを特徴とする圧電素子装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の圧電素子装置であって、
前記圧電素子群に対して、複数の前記荷重検出素子を振動させる駆動信号を入力する駆動回路をさらに備える
ことを特徴とする圧電素子装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の圧電素子装置であって、
前記共振周波数検出部により検出される前記荷重検出素子ごとの前記共振周波数の変化に基づいて、各前記荷重検出素子に加えられた前記荷重を算出する荷重算出部をさらに備える
ことを特徴とする圧電素子装置。
【請求項7】
複数の振動部を有する基板と、前記複数の振動部のそれぞれに設けられた圧電素子が互いに並列接続された圧電素子群と、前記圧電素子群を被覆する樹脂層と、を備え、前記振動部
と前記圧電素子とによって構成される各荷重検出素子は、互いに異なる共振周波数で共振し、前記荷重検出素子の前記共振周波数は、前記樹脂層を介して前記荷重検出素子に加えられる荷重に応じて変化し、前記共振周波数の変化可能な範囲である各共振周波数変化範囲は、互いに重ならない圧電素子デバイスを用いて、
複数の前記荷重検出素子の振動により前記圧電素子群から出力される検出信号に基づいて、前記荷重検出素子ごとに前記共振周波数の変化を検出する共振周波数検出ステップと、
前記共振周波数検出ステップにより検出される前記荷重検出素子ごとの前記共振周波数の変化に基づいて、各前記荷重検出素子に加えられた前記荷重を算出する荷重算出ステップと、を実施する
ことを特徴とする荷重検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子デバイス、圧電素子装置および荷重検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷重を検出する触覚センサーには、複数の圧電素子を有する圧電素子デバイスが用いられている。
例えば、特許文献1に開示の触覚センサーは、圧電素子デバイスとしてのセンサー本体を備え、このセンサー本体は、基板と、基板上に配置された複数の超音波素子と、複数の超音波素子を被覆する弾性膜とを有する。このセンサー本体において、圧電素子を含んで構成された超音波素子は、弾性膜内に設けられた反射体に対して超音波を発信するとともに、反射体により反射された超音波を受信する。この触覚センサーでは、超音波発信タイミングから超音波受信タイミングまでの時間を計測することで、各超音波素子から反射体までの距離の変化を検出でき、この距離の変化に基づいて弾性膜に作用する応力を算出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1に開示される圧電素子デバイスでは、基板に配置された各超音波素子から反射体までの距離の変化を検出するために、各超音波素子を構成する圧電素子に対して個別の配線を接続する必要がある。このような圧電素子デバイスでは、基板上の圧電素子同士の間に配線を設けるスペースが必要であるため、圧電素子を高密度に配置することが困難である。これにより、触覚センサーなど、圧電素子デバイスを用いた圧電素子装置の分解能を向上させることが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一適用例に係る圧電素子デバイスは、複数の振動部を有する基板と、前記複数の振動部のそれぞれに設けられた圧電素子が互いに並列接続された圧電素子群と、前記圧電素子群を被覆する樹脂層と、を備え、前記振動部と当該振動部に設けられた前記圧電素子とによって構成される各荷重検出素子は、互いに異なる共振周波数で共振し、前記共振周波数は、前記樹脂層を介して前記荷重検出素子に加えられる荷重に応じて変化し、前記共振周波数の変化可能な範囲である各共振周波数変化範囲は、互いに重ならないことを特徴とする。
【0006】
本発明の一適用例に係る圧電素子装置は、上述の圧電素子デバイスと、複数の前記荷重検出素子の振動により前記圧電素子群から出力される検出信号に基づいて、前記荷重検出素子ごとに前記共振周波数の変化を検出する共振周波数検出部とを、備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の一適用例に係る荷重検出方法は、複数の振動部を有する基板と、前記複数の振動部のそれぞれに設けられた圧電素子が互いに並列接続された圧電素子群と、前記圧電素子群を被覆する樹脂層と、を備え、前記振動部と当該振動部に設けられた前記圧電素子とによって構成される各荷重検出素子は、互いに異なる共振周波数で共振し、前記荷重検出素子の前記共振周波数は、前記樹脂層を介して前記荷重検出素子に加えられる荷重に応じて変化し、前記共振周波数の変化可能な範囲である各共振周波数変化範囲は、互いに重ならない圧電素子デバイスを用いて、複数の前記荷重検出素子の振動により前記圧電素子群から出力される検出信号に基づいて、前記荷重検出素子ごとに前記共振周波数の変化を検出する共振周波数検出ステップと、前記共振周波数検出ステップより検出される前記荷重検出素子ごとの前記共振周波数の変化に基づいて、各前記荷重検出素子に加えられた前記荷重を算出する荷重算出ステップと、を実施することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態にかかる触覚センサーの概略構成を示すブロック図。
【
図2】第1実施形態にかかる圧電素子デバイスの概略構成を示す平面図。
【
図3】
図2におけるA-A線で切断した荷重検出素子を模式的に示す断面図。
【
図4】第1実施形態の検出回路の概略構成を示すブロック図。
【
図5】荷重検出素子に加わる荷重と当該超荷重検出素子の撓み位置との関係を表すグラフ。
【
図6】荷重検出素子の撓み位置と当該荷重検出素子の共振周波数の変化率との関係を表すグラフ。
【
図7】第1実施形態における複数の荷重検出素子に関して、共振周波数および共振周波数変化範囲を説明するためのグラフ。
【
図8】第1実施形態における荷重検出方法を説明するためのフローチャート。
【
図9】第1実施形態において圧電素子群から出力される検出信号を例示するグラフ。
【
図10】第1実施形態における複数の抽出信号の1つを例示するグラフ。
【
図11】第2実施形態にかかる触覚センサーの概略構成を示すブロック図。
【
図12】第2実施形態において圧電素子群から出力される検出信号をフーリエ変換した波形を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本開示の第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る触覚センサー1の概略構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の触覚センサー1は、圧電素子デバイス10と、圧電素子デバイス10を制御する制御装置60とを備えており、圧電素子デバイス10に設けられた接触面に対して加わる荷重の分布を検出する圧電素子装置である。
【0010】
[圧電素子デバイス10の構成]
図2は、圧電素子デバイス10の概略構成を示す平面図であり、
図3は、
図2のA-A線で圧電素子デバイス10を切断した場合の断面図である。
図2に示すように、本実施形態の圧電素子デバイス10は、複数の荷重検出素子群51を備えており、各荷重検出素子群51は、複数(n個)の荷重検出素子50-1~50-nを備えている。この荷重検出素子50-1~50-nは、それぞれ、圧電素子30を含んで構成されており、荷重検出素子群51に含まれる荷重検出素子50-1~50-nの各圧電素子30は、互いに並列接続されている。すなわち、荷重検出素子群51は、複数(n個)の圧電素子30が互いに並列接続された圧電素子群35を含んで構成されている。
【0011】
なお、荷重検出素子群51の数、すなわち圧電素子群35の数は、
図2,
図3に示す例に限られない。圧電素子デバイス10は、少なくとも1つの圧電素子群35と、当該圧電素子群35を含む荷重検出素子群51とを有していればよい。また、各荷重検出素子群51が含む荷重検出素子50-1~50-nの数、すなわち圧電素子群35が含む圧電素子30の数は、任意の複数に設定可能である。
また、荷重検出素子50-1~50-nの配置は、
図2に示すように一列に配置されることに限られず、アレイ状に配置されてもよい。
【0012】
以下、圧電素子デバイス10の具体的構成について説明する。なお、以下では、荷重検出素子50-1~50-nをまとめて荷重検出素子50と称する場合がある。
【0013】
図2,
図3に示すように、圧電素子デバイス10は、基板20と、基板20上に配置される複数(n個)の圧電素子30と、当該複数の圧電素子30を覆う樹脂層40と、を含んで構成されている。なお、
図2では、樹脂層40の図示を省略している。
以下の説明では、基板20の厚み方向をZ方向とする。また、Z方向に直交する方向をX方向とし、X方向およびZ方向に直交する方向をY方向とする。
【0014】
図3に示すように、基板20は、基板本体部21と、基板本体部21の一面側に設けられる振動板22と、を備える。
基板本体部21は、振動板22を支持する部材であり、Si等の半導体基板で構成される。
この基板本体部21には、基板本体部21をZ方向に沿って貫通する複数の開口部210が設けられている。複数の開口部210は、基板本体部21に対して、X方向およびY方向に沿った2次元アレイ状に配置されている。これにより、基板本体部21において、X方向およびY方向に隣り合う開口部210の間には、壁部211が設けられている。
【0015】
振動板22は、例えばSiO2およびZrO2の積層体等より構成されている。振動板22は、基板本体部21により支持され、開口部210のZ方向の一方側(Z方向-側)を閉塞する。振動板22のうち、Z方向から見た際に開口部210に重なる領域、すなわち基板20の壁部211の縁に囲われる領域は、振動部23を構成している。
【0016】
圧電素子30は、複数の振動部23のそれぞれに設けられている。これにより、基板20には、複数の圧電素子30がX方向およびY方向に沿った2次元アレイ状に配置されている。
圧電素子30は、振動部23を振動させる撓み型の振動素子であり、振動部23のZ方向-側の面に対して、下部電極31、圧電膜32および上部電極33を順に積層することで構成されている。
圧電素子30を構成する下部電極31および上部電極33は、それぞれ、信号線等を介して回路部61に電気的に接続されている(
図1参照)。
本実施形態では、基板20に形成された振動部23と当該振動部23上に配置された圧電素子30とによって、荷重検出素子50が構成されている。
【0017】
樹脂層40は、基板20のZ方向-側に形成され、基板20上における複数の圧電素子30を被覆している。この樹脂層40は、Z方向に略垂直な接触面41を形成している。本実施形態では、検出対象物が樹脂層40の接触面41に接触して荷重を加えることにより、当該荷重が樹脂層40を介して各荷重検出素子50に伝達される。
【0018】
以上の圧電素子デバイス10では、上述したように、複数(n個)の圧電素子30が、互いに並列接続されることで一群の圧電素子群35を構成している(
図2参照)。この圧電素子群35では、各圧電素子30の上部電極33が駆動信号線36を介して並列に接続されており、駆動信号線36は、圧電素子群35に対応する駆動端子37に接続されている。駆動端子37は、例えば基板20の外周部に設けられている。
また、図示を省略するが、複数の圧電素子30の下部電極31は、バイアス信号線を介して共通端子に接続されている。
【0019】
駆動端子37に駆動信号が入力され、共通端子にバイアス信号が入力されることにより、当該駆動端子37に接続された圧電素子群35の各圧電素子30が駆動される。具体的には、各圧電素子30では、下部電極31と上部電極33との間に電圧が印加されることにより圧電膜32が伸縮する。圧電膜32が伸縮すると、振動部23は、開口部210の開口幅等に応じた共振周波数で振動する。これにより、荷重検出素子50は、当該荷重検出素子50に対応した共振周波数で共振する。
【0020】
各荷重検出素子50に電圧が印加された場合、圧電素子30の下部電極31と上部電極33との間で電位差により、各圧電素子30から当該電位差に応じた電流信号が出力される。また、各荷重検出素子50が共振した場合、当該電位差と当該電流との比に極値が発生する。これにより、圧電素子群35は、各圧電素子30の電流信号を含む検出信号を出力する。
【0021】
本実施形態では、荷重検出素子群51に含まれる荷重検出素子50-1~50-nは、各開口部210の開口幅に応じて、互いに異なる共振周波数で共振する。
例えば、
図3に例示される3つの荷重検出素子50-1~50-3では、各開口部210の開口幅W1~W3が、W3<W2<W1の関係を有するため、各荷重検出素子50-1~50-3の共振周波数f1~f3は、f1<f2<f3の関係を有する。
なお、荷重検出素子50の共振周波数は、後述するように検出対象物から荷重検出素子50に加えられる荷重によって変化するが、本明細書では、単に共振周波数と記載されている場合、荷重検出素子50に検出対象物からの荷重が加えられていない無荷重状態の共振周波数を意味するものとする。
【0022】
[制御装置60の構成]
図1に示すように、制御装置60は、回路部61、演算部62、記憶部63および表示部64などを備える。
【0023】
回路部61は、選択回路611、駆動回路612および検出回路613を備える。
選択回路611は、演算部62の制御に基づいて、駆動回路612に接続する駆動接続と、検出回路613に接続する検出接続とを切り替える。また、選択回路611は、演算部62の制御に基づいて、圧電素子デバイス10における複数の駆動端子37に順に接続される。
【0024】
駆動回路612は、選択回路611が駆動接続に切り替えられた際、選択回路611を介して駆動端子37に接続され、この駆動端子37に駆動信号Saを出力する。これにより、駆動信号Saは、駆動端子37に接続された圧電素子群35に入力される。
【0025】
検出回路613は、選択回路611が検出接続に切り替えられた際、選択回路611を介して駆動端子37に接続される。この接続時、検出回路613は、この駆動端子37を介して圧電素子群35から検出信号Sbの入力を受け付け、この検出信号Sbを処理して演算部62に出力する。
【0026】
なお、回路部61は、図示を省略するが、圧電素子デバイス10の共通端子に接続され、当該共通端子を介して各荷重検出素子50の上部電極33に基準電位(例えば0V等)を印加する基準電位回路をさらに備える。
【0027】
図4は、検出回路613の概略構成を示すブロック図である。
図4に示すように、検出回路613は、荷重検出素子群51のn個の荷重検出素子50に対応して設けられたn個のバンドパスフィルターBPF1~BPFnと、各バンドパスフィルターBPF1~BPFnに接続されたn個のアナログ/デジタルコンバーターADC1~ADCnとを有する。
n個のバンドパスフィルターBPF1~BPFnは、互いに並列に接続されており、検出回路613に入力される検出信号Sbは、複数のバンドパスフィルターBPF1~BPFnのそれぞれに分配される。
各バンドパスフィルターBPF1~BPFnは、検出信号Sbから、対応する荷重検出素子50の共振周波数変化範囲に含まれる信号成分を抽出信号Sc1~Scnとして選択的に抽出する。すなわち、各バンドパスフィルターBPF1~BPFnは、対応する荷重検出素子50-1~50-nの共振周波数変化範囲を通過させ(抽出し)、他の信号成分を遮断する。
具体的には、
図4に示す例において、バンドパスフィルターBPF1は、対応する荷重検出素子50-1の共振周波数f1に対応した所定の共振周波数変化範囲FW1の信号成分を通過させる。
また、バンドパスフィルターBPF2は、対応する荷重検出素子50-2の共振周波数f2に対応した所定の共振周波数変化範囲FW2の信号成分を通過させる。
同様に、バンドパスフィルターBPF3は、対応する荷重検出素子50-3の共振周波数f3に対応した所定の共振周波数変化範囲FW3の信号成分を通過させる。
なお、共振周波数変化範囲FW1~FW3は、互いに重なり合わない範囲である。共振周波数変化範囲FW1~FW3の詳細については後述する。
各アナログ/デジタルコンバーターADC1~ADCnは、各バンドパスフィルターBPF1~BPFnを通過した抽出信号Sc1~Scnをアナログ/デジタル変換し、演算部62に出力する。
【0028】
また、
図4での図示を省略するが、検出回路613は、入力された検出信号Sbに対して、ノイズ成分の除去や所望信号レベルへの増幅等の信号処理を施す各種の回路をさらに含んでいる。
【0029】
図1に示す演算部62は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算回路や、メモリー等の記憶回路により構成されている。そして、演算部62は、記憶部63に記憶された各種プログラムを読み込み実行することで、駆動制御部621、変化算出部622および荷重算出部623として機能する。
【0030】
駆動制御部621は、選択回路611を制御することで、選択回路611の接続先を駆動回路612と検出回路613との間で切り替える。また、駆動制御部621は、駆動回路612を制御することで、圧電素子デバイス10の各圧電素子群35に対して所定のタイミングで駆動信号Saを入力させる。
変化算出部622は、検出回路613から入力される各抽出信号Sc1~Scnの周期に基づいて、圧電素子デバイス10における各荷重検出素子50の共振周波数の変化(例えば変化率)を算出する。この変化算出部622は、検出回路613におけるバンドパスフィルターBPF1~BPFnと共に、共振周波数検出部624を構成する。
荷重算出部623は、変化算出部622により算出された各荷重検出素子50の共振周波数の変化に基づいて、各荷重検出素子50に加わった荷重を算出する。
【0031】
記憶部63は、触覚センサー1を制御するための各種プログラムや各種データを記憶する。例えば、記憶部63には、各荷重検出素子50の共振周波数に関する情報が記憶されている。
表示部64は、例えば液晶ディスプレイ等により構成され、画像を表示させる。
【0032】
[荷重検出素子50の共振周波数の変化]
本実施形態の圧電素子デバイス10では、検出対象物が樹脂層40の接触面41に接触して荷重を加えると、当該荷重が樹脂層40を介して各荷重検出素子50に伝達され、各荷重検出素子50の共振周波数が変化する。
【0033】
以下、任意の荷重検出素子50を用いて、荷重と共振周波数との関係について説明する。
図5は、荷重検出素子50に加わる荷重と、当該荷重検出素子50の撓み位置との関係を示すグラフである。なお、荷重検出素子50の撓み位置は、荷重検出素子50の撓みの程度を表す指数であって、例えば荷重検出素子50のうち最も大きな撓みを生じる中央部分のZ方向の位置である。
図6では、荷重検出素子50に対して外部からの荷重が加わっていない状態(無荷重状態)の撓み位置を「0nm」としている。
図5に示すように、荷重検出素子50に加わる荷重が大きくなるほど、当該荷重検出素子50の撓み位置は、対数関数的に大きくなる。なお、荷重検出素子50に加えられる最大荷重は、荷重検出素子50が破損しない程度の荷重に制限される。
【0034】
図6は、荷重検出素子50の撓み位置と荷重検出素子50の共振周波数の変化率との関係を示すグラフである。
図6に示すように、荷重検出素子50の撓み位置が大きくなるほど、当該荷重検出素子50の共振周波数の変化率は、指数関数的に大きくなる。これは、荷重検出素子50の撓み位置が大きくなるほど、荷重検出素子50に加わる張力が大きくなり、周波数に対する荷重検出素子50の振幅のピーク点が周波数の高い方向にずれることによる。
【0035】
以上によれば、荷重検出素子50に加わる荷重が大きくなるほど、荷重検出素子50の共振周波数の変化率は大きくなることが分かる。
本実施形態では、圧電素子群35に含まれる荷重検出素子50ごとに、荷重と共振周波数との関係が求められ、記憶部63に記憶されるものとする。
【0036】
次に、荷重検出素子50の共振周波数の変化範囲について説明する。
荷重検出素子50の共振周波数変化範囲は、荷重検出素子50の共振周波数が変化可能な周波数範囲、すなわち、無荷重状態の荷重検出素子50の共振周波数から最大荷重を加えられた状態の荷重検出素子50の共振周波数までの周波数範囲に相当する。
なお、荷重検出素子50に加えられる最大荷重は、上述したように、荷重検出素子50が破損しない程度に制限される。特に、本実施形態では、荷重検出素子50に加えられる最大荷重は、触覚センサー1が保証する検出精度を確保できる程度に制限されることが望ましい。
【0037】
同一の荷重検出素子群51内において、各荷重検出素子50-1~50-nの共振周波数変化範囲は互いに重ならない。
例えば、
図7の紙面上段には、
図3に例示された共振周波数f1~f3の3種の荷重検出素子50-1~50-3が例示されている。
図7の紙面中段に示すように、荷重検出素子50-1~50-3に対応する座標P1~P3に対して荷重が加えられた場合、各荷重検出素子50-1~50-3の共振周波数f1~f3は、
図7の紙面下段に矢印で示すように、より高い周波数である共振周波数f1’~f3’に変化する。
ここで、荷重検出素子50-1の共振周波数f1が変化可能な範囲を共振周波数変化範囲FW1とし、荷重検出素子50-2の共振周波数f2が変化可能な範囲を共振周波数変化範囲FW2とし、荷重検出素子50-3の共振周波数f3が変化可能な範囲を共振周波数変化範囲FW3とする。
図7に示す例において、荷重検出素子50-1,50-2の開口幅W1,W2は、荷重検出素子50-1の共振周波数f1と荷重検出素子50-2の共振周波数f2との差が、荷重検出素子50-1の共振周波数変化範囲FW1の幅よりも大きくなるように形成されている。
同様に、荷重検出素子50-2,50-3の開口幅W2,W3は、荷重検出素子50-2の共振周波数f2と荷重検出素子50-3の共振周波数f3との差が、荷重検出素子50-2の共振周波数変化範囲FW2の幅よりも大きくなるように形成されている。
このような構成によれば、各荷重検出素子50-1~50-3の共振周波数変化範囲FW1~FW3は、互いに重ならない。
【0038】
[荷重検出方法]
図8は、制御装置60における荷重検出方法の流れを説明するフローチャートである。本実施形態における荷重検出方法について、
図8等を参照して説明する。
なお、以下では、説明の簡略化のために、任意の1つの荷重検出素子群51を用いて説明するが、他の荷重検出素子群51についても同様の説明を適用できる。また、以下では、圧電素子デバイス10に荷重が加わっている場合の処理について説明する。
【0039】
まず、演算部62の制御により、選択回路611が接続先を駆動回路612に切り替えたタイミングで、駆動回路612が駆動信号Saを出力する(ステップS1)。この駆動信号Saは、周波数が一定速度で減少もしくは増加する周波数掃引信号か、または、全周波数を含むインパルス信号かのいずれかであり、選択回路611を介して圧電素子群35に入力される。
なお、選択回路611の切り替えタイミングは、従来の超音波装置における超音波の送受信切り替えタイミングと同様であればよい。
【0040】
駆動信号Saが各圧電素子30に入力されることにより、各荷重検出素子50-1~50-nは、各荷重検出素子50-1~50-nの開口幅および荷重状態に応じた共振周波数で振動する。これにより、各圧電素子30は、振動状態に応じた電圧信号を出力し、圧電素子群35は、各圧電素子30から出力される電圧信号が混在した検出信号Sbを出力する。
図9は、圧電素子群35から出力される検出信号Sbを例示するグラフである。この
図9では、無荷重状態の圧電素子群35から出力される検出信号Sbが実線で示され、任意の荷重状態の圧電素子群35から出力される検出信号Sbが点線で示される。
【0041】
選択回路611は、駆動信号Saの出力直後、接続先を駆動回路612から検出回路613に切り替える。これにより、検出回路613には、圧電素子群35から選択回路611を介して検出信号Sbが入力される(ステップS2)。
【0042】
検出回路613は、圧電素子群35から入力される検出信号Sbから、各荷重検出素子50-1~50-nの共振周波数変化範囲に含まれる信号成分を選択的に抽出し、各抽出信号Sc1~Scnとして出力する。すなわち、検出回路613は、複数の抽出信号Sc1~Scnを生成する(ステップS3)。
【0043】
図10は、複数の抽出信号Sc1~Scnのうちの任意の1つを例示する図である。
この
図10において、無荷重状態の検出信号Sbから分離された抽出信号Scは、実線で示されており、無荷重状態の荷重検出素子50の共振周波数に対応する周期Taを有する。また、荷重状態の検出信号Sbから分離された抽出信号Scは、点線で示されており、荷重を加えられて変化した荷重検出素子50の共振周波数に対応する周期Tbを有する。
【0044】
演算部62において、変化算出部622は、各抽出信号Sc1~Scnの周期に基づいて、各荷重検出素子50-1~50-nの共振周波数の変化を算出する(ステップS4)。
具体的には、変化算出部622は、各抽出信号Sc1~Scnについて、無荷重状態の周期Taと、荷重状態の周期Tbとの差を算出し、無荷重状態の周期Taに対する当該差の割合を、共振周波数の変化率として算出する。
なお、無荷重状態の周期Taは、触覚センサー1の稼働開始時に取得されてもよいし、記憶部63に予め記憶されていてもよい。
【0045】
次いで、荷重算出部623は、変化算出部622により算出された各共振周波数の変化率に基づいて、各荷重検出素子50-1~50-nに加えられた荷重を算出する(ステップS5)。
本実施形態では、荷重検出素子50-1~50-nごとの共振周波数の変化率と荷重との関係を表すテーブルが記憶部63に記憶されており、荷重算出部623は、このテーブルを参照することによって荷重を算出できる。
【0046】
以上により、本実施形態の触覚センサー1は、各荷重検出素子50-1~50-nに加えられた荷重を検出できる。
その後、演算部62は、各荷重検出素子50-1~50-nに加えられた荷重と、各荷重検出素子50-1~50-nの座標情報とに基づいて、圧電素子デバイス10における荷重分布を表示部64に表示させてもよい。
【0047】
なお、他の荷重検出素子群51に加えられる荷重についても、上述の方法と同様の方法によって検出できる。
例えば、選択回路611が接続先となる圧電素子群35を切り替えるごとに、上述の方法を繰り返してもよい。また、検出回路613が、複数の荷重検出素子群51のそれぞれに対応する構成を有する場合、複数の荷重検出素子群51に加えられる荷重を同時に検出してもよい。
【0048】
[第1実施形態の効果]
本実施形態の圧電素子デバイス10では、基板20に配置された複数の圧電素子30が互いに並列接続されているため、複数の圧電素子30を共通の配線で電気的に接続することができる。よって、本実施形態の圧電素子デバイス10では、複数の圧電素子30のそれぞれに個別の配線を接続する場合と比べて、基板20の面積に占める配線の割合を小さくすることができ、基板20に対して複数の圧電素子30を高密度に配置することができる。
また、本実施形態の圧電素子デバイス10において、荷重検出素子群51は、並列接続された複数の圧電素子30を含んでおり、各荷重検出素子50は、互いに異なる共振周波数で共振する。この共振周波数は、樹脂層40を介して加えられる荷重に応じて変化し、共振周波数の変化可能な範囲である共振周波数変化範囲は、同一の荷重検出素子群51における荷重検出素子50間で互いに重ならない。
このような構成によれば、ある荷重検出素子50の共振周波数が当該荷重検出素子50に加わる荷重によって変化した場合であっても、変化後の共振周波数と、他の荷重検出素子50の共振周波数とが重なることがない。よって、圧電素子群35から出力される検出信号Sbを解析することで、各荷重検出素子50の共振周波数の変化を検出することができる。その結果、各荷重検出素子50に加わる荷重を検出することができる。
したがって、本実施形態の圧電素子デバイス10を用いた触覚センサー1は、高密度に配置された圧電素子30によって、圧電素子デバイス10に加わる荷重を高分解能で検出可能である。
【0049】
本実施形態の触覚センサー1は、上述の圧電素子デバイス10と、各荷重検出素子50の振動により圧電素子群35から出力される検出信号Sbに基づいて、荷重検出素子50ごとに、共振周波数の変化を検出する共振周波数検出部624と、を備える。
このような触覚センサー1は、上述の圧電素子デバイス10を備えることにより、上述と同様の効果を奏する。
【0050】
本実施形態の触覚センサー1において、共振周波数検出部624は、各荷重検出素子50に対応して複数設けられ、検出信号Sbから対応する荷重検出素子50の共振周波数変化範囲に含まれる信号成分を抽出信号Sc1~Scnとして選択的に抽出するバンドパスフィルターBPF1~BPFnと、バンドパスフィルターBPF1~BPFnにより抽出された抽出信号Sc1~Scnの周期に基づいて、荷重検出素子50ごとの共振周波数の変化を算出する変化算出部622とを備える。
このような構成では、高負荷なフーリエ変換を行わずに各荷重検出素子50の共振周波数の変化を算出できるため、荷重の検出にかかる時間を短縮できる。
【0051】
本実施形態の触覚センサー1は、圧電素子群35に対して、複数の荷重検出素子50を振動させる駆動信号Saを入力する駆動回路612をさらに備える。
このような構成では、検出対象物が樹脂層40に接触したままの状態であっても、各荷重検出素子50を振動させることができ、各荷重検出素子50の共振周波数の変化を検出することができる。
【0052】
本実施形態の触覚センサー1は、共振周波数検出部624により検出される荷重検出素子50ごとの共振周波数の変化に基づいて、各荷重検出素子50に加えられた荷重を算出する荷重算出部623をさらに備える。
本実施形態では、圧電素子デバイス10に加わる荷重の分布を高分解能で検出することができる。
このような本実施形態の触覚センサー1は、例えば職人の微妙な力感覚を定量化し、非経験者等に伝達するためのツールとして好適に利用できる。
【0053】
[第2実施形態]
以下、本開示の第2実施形態について説明する。なお、上記第1実施形態と同様の構成については、上記第1実施形態と同様の符号を用いて説明を省略する場合がある。
【0054】
第2実施形態の触覚センサー1Aは、
図11に示すように、第1実施形態の触覚センサー1と基本的に同様の構成を備えている。ただし、第2実施形態の検出回路614は、第1実施形態で説明したようなバンドパスフィルターを備えておらず、検出信号Sbをアナログ/デジタル変換するA/Dコンバーターや、ノイズ成分の除去や所望信号レベルへの増幅等の信号処理を施す各種の回路を含んでいればよい。
【0055】
また、第2実施形態において、共振周波数検出部625は、フーリエ変換を用いて検出信号Sbに含まれる各荷重検出素子50に対応した周波数変化範囲の信号成分を解析することにより、各荷重検出素子50の共振周波数の変化を算出する。
【0056】
具体的には、共振周波数検出部625は、
図9に例示するような時間に対する振幅変化を表す検出信号Sbをフーリエ変換することで、
図12に例示するような周波数に対する振幅変化を表す周波数スペクトルを生成する。
図12では、無荷重状態に対応する検出信号Sbをフーリエ変換した周波数スペクトルが実線で示され、荷重状態の検出信号Sbをフーリエ変換した周波数スペクトルが点線で示される。なお、
図12では、
図3に例示する任意の3つの荷重検出素子50-1~50-3の共振周波数f1~f3の変化が例示されている。
【0057】
次いで、共振周波数検出部625は、生成された周波数スペクトルに基づいて、荷重を加えられた各荷重検出素子50の共振周波数と、無荷重状態の各荷重検出素子50の共振周波数との差、すなわち各荷重検出素子50の共振周波数の変化量(
図12で例示する共振周波数f1~f3の変化量Δf1~Δf3)を検出する。そして、共振周波数検出部625は、検出された各荷重検出素子50の共振周波数の変化量に基づいて、各荷重検出素子50の共振周波数の変化率を算出する。
なお、無荷重状態の各荷重検出素子50の共振周波数は、触覚センサー1の稼働開始時に取得されてもよいし、記憶部63に予め記憶されていてもよい。
その後、荷重算出部623は、上記実施形態と同様、共振周波数検出部625により算出された各荷重検出素子50の共振周波数の変化率に基づいて、各荷重検出素子50に加えられた荷重を算出する。
このような第2実施形態では、検出回路614の構造を第1実施形態よりも簡略化することができる。
【0058】
[変形例]
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良、および各実施形態を適宜組み合わせる等によって得られる構成は本発明に含まれるものである。
【0059】
[変形例1]
上記各実施形態では、基板20は、基板本体部21および振動板22を備えており、振動板22のうち基板本体部21の開口部210を塞ぐ部分が振動部23となるが、他の構成であってもよい。例えば、基板20に対してエッチングが行われ、基板20のうちの厚みが薄くなった部分を振動部23としてもよい。
【0060】
[変形例2]
上記各実施形態において、荷重検出素子50の共振周波数や共振周波数変化範囲は、荷重検出素子群51内の荷重検出素子50ごとに、開口部210の開口幅、すなわち振動部23の寸法によって設定されているが、他の構成によって設定されてもよい。
例えば、荷重検出素子50の共振周波数は、圧電素子30の厚みによって調整されてもよいし、振動部23の曲げ剛性によって調整されてもよい。振動部23の曲げ剛性は、振動板22に対してエッチング等を行うことにより調整できる。
【0061】
[変形例3]
上記各実施形態では、圧電素子装置の一形態である触覚センサー1について説明しているが、本開示の圧電素子装置は、荷重検出素子に加えられた荷重を算出する荷重算出部を有さず、共振周波数の変化を検出することで荷重以外の物理量を算出する他のセンサーとして構成されてもよい。例えば、荷重検出素子を振動させることにより、樹脂内に超音波を発生し、その伝搬時間と荷重から樹脂の硬さを算出することができる。
【0062】
[本開示のまとめ]
以下、本開示のまとめを付記する。
本発明の一態様の圧電素子デバイスは、複数の振動部を有する基板と、前記複数の振動部のそれぞれに設けられた圧電素子が互いに並列接続された圧電素子群と、前記圧電素子群を被覆する樹脂層と、を備え、前記振動部と当該振動部に設けられた前記圧電素子とによって構成される各荷重検出素子は、互いに異なる共振周波数で共振し、前記荷重検出素子の前記共振周波数は、前記樹脂層を介して前記荷重検出素子に加えられる荷重に応じて変化し、前記共振周波数の変化可能な範囲である各共振周波数変化範囲は、互いに重ならないことを特徴とする。
本態様では、基板に配置された複数の圧電素子が互いに並列接続されているため、複数の圧電素子を共通の配線で電気的に接続することができる。よって、本態様の圧電素子デバイスでは、複数の圧電素子のそれぞれに個別の配線を接続する場合と比べて、基板の面積に占める配線の割合を小さくすることができ、基板に対して複数の圧電素子を高密度に配置することができる。
また、本態様では、ある荷重検出素子の共振周波数が当該荷重検出素子に加わる荷重によって変化した場合であっても、変化後の共振周波数と、他の荷重検出素子の共振周波数とが重なることがない。よって、圧電素子群から出力される信号を解析することで、各荷重検出素子の共振周波数の変化を検出することができる。その結果、各荷重検出素子に加わる荷重を検出することができる。
したがって、本態様の圧電素子デバイスを用いた圧電素子装置は、高密度に配置された圧電素子によって、圧電素子デバイスに加わる荷重、または当該荷重に対応する物理量を高分解能で検出可能である。
【0063】
本態様の圧電素子装置は、上述の圧電素子デバイスと、複数の前記荷重検出素子の振動により前記圧電素子群から出力される検出信号に基づいて、前記荷重検出素子ごとに前記共振周波数の変化を検出する共振周波数検出部とを、備える。
本態様の圧電素子装置では、上述の圧電素子デバイスを備えることにより、上述と同様の効果を奏する。
【0064】
本態様の圧電素子装置において、前記共振周波数検出部は、各前記荷重検出素子に対応して設けられ、前記検出信号から、対応する前記荷重検出素子の前記共振周波数変化範囲に含まれる信号成分を抽出信号として選択的に抽出する複数のバンドパスフィルターと、各前記バンドパスフィルターにより抽出された前記抽出信号の周期に基づいて、前記荷重検出素子ごとの前記共振周波数の変化を算出する変化算出部と、を備えることが好ましい。
本態様では、高負荷なフーリエ変換を行わずに各荷重検出素子の共振周波数の変化を算出できるため、荷重に対応する物理量を検出することにかかる時間を短縮できる。
【0065】
本態様の圧電素子装置において、前記共振周波数検出部は、フーリエ変換を用いて前記検出信号に含まれる各前記荷重検出素子に対応した前記共振周波数変化範囲の信号成分を解析することにより、前記荷重検出素子ごとの前記共振周波数の変化を算出してもよい。
本態様では、共振周波数検出部を構成する回路構造を簡略化することができる。
【0066】
本態様の圧電素子装置は、前記圧電素子群に対して、複数の前記荷重検出素子を振動させる駆動信号を入力する駆動回路をさらに備えることが好ましい。
本態様では、検出対象物が樹脂層に接触したままの状態であっても、各荷重検出素子を振動させることができ、各荷重検出素子の共振周波数の変化を検出することができる。
【0067】
本態様の圧電素子装置は、前記共振周波数検出部により検出される前記荷重検出素子ごとの前記共振周波数の変化に基づいて、各前記荷重検出素子に加えられた前記荷重を算出する荷重算出部をさらに備えることが好ましい。
本態様では、圧電素子デバイスに加わる荷重の分布を高分解能で検出することができる。
【0068】
本態様の荷重検出方法は、複数の振動部を有する基板と、前記複数の振動部のそれぞれに設けられた圧電素子が互いに並列接続された圧電素子群と、前記圧電素子群を被覆する樹脂層と、を備え、前記振動部と当該振動部に設けられた前記圧電素子とによって構成される各荷重検出素子は、互いに異なる共振周波数で共振し、前記荷重検出素子の前記共振周波数は、前記樹脂層を介して前記荷重検出素子に加えられる荷重に応じて変化し、前記共振周波数の変化可能な範囲である各共振周波数変化範囲は、互いに重ならない圧電素子デバイスを用いて、複数の前記荷重検出素子の振動により前記圧電素子群から出力される検出信号に基づいて、前記荷重検出素子ごとに前記共振周波数の変化を検出する共振周波数検出ステップと、前記共振周波数検出ステップにより検出される前記荷重検出素子ごとの前記共振周波数の変化に基づいて、各前記荷重検出素子に加えられた前記荷重を算出する荷重算出ステップと、を実施することを特徴とする。
本態様の荷重検出方法は、上述の圧電素子デバイスを用いることにより、上述と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0069】
1,1A…触覚センサー、10…圧電素子デバイス、20…基板、21…基板本体部、210…開口部、211…壁部、22…振動板、23…振動部、30…圧電素子、31…下部電極、32…圧電膜、33…上部電極、35…圧電素子群、36…駆動信号線、37…駆動端子、40…樹脂層、41…接触面、50,50-1~50-n…荷重検出素子、51…荷重検出素子群、60…制御装置、61…回路部、611…選択回路、612…駆動回路、613,614…検出回路、62…演算部、621…駆動制御部、622…変化算出部、623…荷重算出部、624,625…共振周波数検出部、63…記憶部、64…表示部、ADC1~ADCn…A/Dコンバーター、BPF1~BPFn…バンドパスフィルター、f1~f3…共振周波数、FW1~FW3…共振周波数変化範囲、Sa…駆動信号、Sb…検出信号、Sc,Sc1~Scn…抽出信号。