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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】二次電池の劣化度判定装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20240709BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20240709BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/42 P
H02J7/00 Y
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020113172
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011803
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】淺井 知美
(72)【発明者】
【氏名】山本 信雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 広康
(72)【発明者】
【氏名】林 克樹
(72)【発明者】
【氏名】三鍋 雄也
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/125213(WO,A1)
【文献】特開2019-020392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R31/36-31/396
H01M10/42-10/48
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の二次電池(21~26)が互いに接続されて組電池(2)を構成した状態で、上記二次電池の電圧を個別に測定しながら該組電池の充放電を行う充放電制御部(71)と、
上記複数の二次電池の少なくとも一部について、所定の電圧区間にわたる電池状態の推移に関する電池特性を取得する電池特性取得部(61)と、
上記電池特性又は上記電池特性に基づいて算出された電池特性関係値に基づいて、上記複数の二次電池の少なくとも一部の上記二次電池の劣化度を判定する判定部(63)と、
を備え
上記充放電制御部は、上記組電池を充放電する際に、上記二次電池の電圧が予め設定された通常使用範囲を逸脱することを許容するように構成されている、二次電池の劣化度判定装置(1)。
【請求項2】
上記組電池を構成する上記複数の二次電池には、上記電池特性を取得するための所定の電圧区間が、上記複数の二次電池のうちの他の二次電池と異なる電圧区間に設定されたものが含まれる、請求項1に記載の二次電池の劣化度判定装置。
【請求項3】
複数の二次電池(21~26)が互いに接続されて組電池(2)を構成した状態で、上記二次電池の電圧を個別に測定しながら該組電池の充放電を行う充放電制御部(71)と、
上記複数の二次電池の少なくとも一部について、所定の電圧区間にわたる電池状態の推移に関する電池特性を取得する電池特性取得部(61)と、
上記電池特性又は上記電池特性に基づいて算出された電池特性関係値に基づいて、上記複数の二次電池の少なくとも一部の上記二次電池の劣化度を判定する判定部(63)と、
を備え、
上記組電池を構成する上記複数の二次電池には、上記電池特性を取得するための所定の電圧区間が、上記複数の二次電池のうちの他の二次電池と異なる電圧区間に設定されたものが含まれる、二次電池の劣化度判定装置(1)。
【請求項4】
上記組電池を構成する上記複数の二次電池には、上記電池特性を取得するための所定の電圧区間として、互いに共通する電圧区間が設定されたものが含まれる、請求項2又は3に記載の二次電池の劣化度判定装置。
【請求項5】
上記充放電制御部は、上記組電池を充放電する際に、上記二次電池の電圧が予め設定された通常使用範囲を逸脱することを許容するように構成されている、請求項3又は4に記載の二次電池の劣化度判定装置。
【請求項6】
上記充放電制御部は、上記組電池を充放電する際に、上記二次電池の電圧が予め設定された使用可能範囲を逸脱することを許容するように構成されている、請求項1~のいずれか一項に記載の二次電池の劣化度判定装置。
【請求項7】
上記電池特性取得部(61)、判定部(63)及び充放電制御部(71)は、クラウド上に設けられており、
上記組電池は、通信機能を有するスキャンツールを介して上記クラウドに接続可能に構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の二次電池の劣化度判定装置。
【請求項8】
上記組電池は車両用であって、上記充放電制御部は上記組電池が上記車両に搭載された状態で上記充放電を行うように構成されている、請求項1~のいずれか一項に記載の二次電池の劣化度判定装置。
【請求項9】
上記充放電制御部は、上記車両に搭載された機器を介して二次電池の充放電を行うように構成されている、請求項に記載の二次電池の劣化度判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の劣化度判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用に伴って劣化する二次電池の劣化度を診断することが行われている。例えば、特許文献1には、車両に搭載された蓄電部を構成するバッテリの劣化診断に関する構成が開示されている。当該構成では、劣化診断を行うサービスモードにおいて、バッテリの残容量が零に至るまでバッテリの放電を行った後、満充電となるまでバッテリの充電を行うことにより当該バッテリの充電可能容量を判定して、バッテリの劣化診断を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-16163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリが複数の二次電池を備える組電池からなる場合、バッテリの使用に伴って二次電池毎の劣化度がばらつくこととなる。そのため、バッテリの一部の二次電池の劣化度が基準を超えた場合でもバッテリ全体として劣化度が高く、使用不可と判定される。従って、使用不可と判定されたバッテリは、一部の二次電池の劣化度が基準を超えたにすぎず、他の二次電池の劣化度は低い場合がある。そこで、二次電池の再利用率を向上するために、劣化度の高い二次電池を取り除き、劣化度の低いもの同士で組電池を再構成したリビルト品として再利用することが行われている。従って、組電池を構成する個々の二次電池の劣化度を取得することにより、二次電池の利用率の向上が図られる。
【0005】
しかしながら、従来の方法では、組電池に備えられた複数の二次電池について個々の劣化度を判定するには、組電池から個々の二次電池を取り出した状態で個別に判定する必要あるため、車両用のバッテリに含まれた複数の二次電池の劣化度を判定するには、まず、バッテリを車両から取り外し、さらにバッテリから二次電池を取り出したうえで、個々の二次電池を劣化度判定装置や電気的負荷などに接続する必要がある。そのため、劣化度の判定作業が煩雑となっており、作業負荷が高くなっている。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、組電池を構成する二次電池の劣化度の判定作業の負荷を低減することができる二次電池の劣化度判定装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、複数の二次電池(21~26)が互いに接続されて組電池(2)を構成した状態で、上記二次電池の電圧を個別に測定しながら該組電池の充放電を行う充放電制御部(71)と、
上記複数の二次電池の少なくとも一部について、所定の電圧区間にわたる電池状態の推移に関する電池特性を取得する電池特性取得部(61)と、
上記電池特性又は上記電池特性に基づいて算出された電池特性関係値に基づいて、上記複数の二次電池の少なくとも一部の上記二次電池の劣化度を判定する判定部(63)と、
を備え
上記充放電制御部は、上記組電池を充放電する際に、上記二次電池の電圧が予め設定された通常使用範囲を逸脱することを許容するように構成されている、二次電池の劣化度判定装置(1)にある。
また、本発明の他の態様は、複数の二次電池(21~26)が互いに接続されて組電池(2)を構成した状態で、上記二次電池の電圧を個別に測定しながら該組電池の充放電を行う充放電制御部(71)と、
上記複数の二次電池の少なくとも一部について、所定の電圧区間にわたる電池状態の推移に関する電池特性を取得する電池特性取得部(61)と、
上記電池特性又は上記電池特性に基づいて算出された電池特性関係値に基づいて、上記複数の二次電池の少なくとも一部の上記二次電池の劣化度を判定する判定部(63)と、
を備え、
上記組電池を構成する上記複数の二次電池には、上記電池特性を取得するための所定の電圧区間が、上記複数の二次電池のうちの他の二次電池と異なる電圧区間に設定されたものが含まれる、二次電池の劣化度判定装置(1)にある。
【発明の効果】
【0008】
上記二次電池の劣化度判定装置においては、複数の二次電池が互いに接続されて組電池を構成した状態で充放電を行い、少なくとも一部の二次電池について所定の電圧区間にわたる電池状態の推移に関する電池特性を取得する。そして、当該電池特性又は当該電池特性に基づいて算出された電池特性関係値に基づいて当該少なくとも一部の二次電池の劣化度を判定する。これにより、当該少なくとも一部の二次電池は、組電池から取り出すことなく劣化度を判定することができる。当該劣化度を判定するに際して、組電池を形成する複数の二次電池は既に互いに接続された状態であるため、これらを組電池から二次電池を取り出して個々の二次電池を劣化度判定装置に配線する作業は不要となる。そのため、二次電池の劣化度を判定する際の作業性を向上することができる。
【0009】
以上のごとく、上記態様によれば、組電池を構成する二次電池の劣化度を判定する際の作業性を向上することができる二次電池の劣化度判定装置を提供することができる。
【0010】
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1における、劣化度判定装置の構成を表す概念図。
図2】実施形態1における、組電池の構成を示す概念図。
図3】実施形態1における、劣化度判定装置の使用状態を示す概念図。
図4】実施形態1における、電池特性を表す概念図。
図5】実施形態1における、電池特性を表す他の概念図。
図6】実施形態1における、二次電池の劣化度の判定方法を示すフロー図。
図7】実施形態1における、組電池の製造方法を示すフロー図。
図8】変形形態1における、電池特性を表す概念図。
図9】変形形態2における、電池特性を表す概念図。
図10】変形形態3における、電池特性を表す概念図。
図11】実施形態1における、劣化度判定装置の他の使用状態を示す概念図。
図12】変形形態4における、二次電池の劣化度の判定方法を示すフロー図。
図13】実施形態2における、電池特性を表す概念図。
図14】実施形態3における、劣化度判定装置の構成を表す概念図。
図15】実施形態4における、劣化度判定装置の構成を表す概念図。
図16】実施形態4における、電池特性を表す概念図。
図17】変形形態5における、劣化度判定装置の構成を表す概念図。
図18】実施形態5における、劣化度判定装置の構成を表す概念図。
図19】実施形態5における、電池特性を表す概念図。
図20】変形形態6における、電池特性を表す概念図。
図21】変形形態7における、電池特性を表す概念図。
図22】実施形態6における、二次電池のSOC-OCV曲線を表す概念図。
図23】実施形態6における、二次電池の劣化度の判定方法を示すフロー図。
図24】実施形態6における、(a)二次電池の放電カーブ、(b)二次電池の充電カーブを表す概念図。
図25】実施形態7における、二次電池の劣化度の判定方法を示すフロー図。
図26】実施形態8における、二次電池のSOC-OCV曲線を表す概念図。
図27】実施形態9における、二次電池の劣化度の判定方法を示すフロー図。
図28】実施形態9における、(a)二次電池の放電カーブ、(b)二次電池の他の放電カーブを表す概念図。
図29】実施形態10における、推定結果の例を表す概念図。
図30】実施形態11における、劣化度判定装置の構成を表す概念図。
図31】実施形態11における、二次電池の劣化度の判定方法を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
上記二次電池の劣化度判定装置の実施形態について、図1図7を用いて説明する。
本実施形態の二次電池の劣化度判定装置1は、充放電制御部71、電池特性取得部61、判定部63を備える。
充放電制御部71は、複数の二次電池21~26が互いに接続されて組電池2を構成した状態で、二次電池21~26の電圧を個別に測定しながら組電池2の充放電を行う。
電池特性取得部61は、複数の二次電池21~26の少なくとも一部について、所定の電圧区間にわたる電池状態の推移に関する電池特性を取得する。
そして、判定部63は、電池特性又は電池特性に基づいて算出された電池特性関係値に基づいて、複数の二次電池21~26の少なくとも一部の劣化度を判定する。
【0013】
以下、本実施形態の二次電池の劣化度判定装置1について、詳述する。
図1に示す劣化度判定装置1は、組電池2を構成している二次電池21~26を判定対象とすることができる。ここで、「二次電池」とは、充電可能な電池であって、単一のセルや複数のセルから構成されたものを含む。また、「組電池」とは、複数の上記二次電池を互いに電気的に接続してなる電池パックを構成するものをいう。本実施形態において二次電池21~26の種類は限定されず、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池などの公知の二次電池を対象とすることができ、単一又は複数のセルを有していてよい。本実施形態では、図2(a)に示すように、二次電池21~26は個別に着脱可能なモジュールである二次電池モジュールを構成している。組電池2に備えられる二次電池の数は特に限定されず、本実施形態では6個としている。そして、図2(b)に示すように、二次電池21~26は直列に接続されている。なお、二次電池21~26が個別に着脱可能なモジュールを構成しており、当該モジュール内においてセル同士が並列に接続されている場合は、当該モジュール同士は並列に接続されていてもよい。
【0014】
図1に示すように、劣化度判定装置1は、検出部3、格納部4、記憶部5、演算部6及び制御部7を備える。
検出部3は、電圧値検出部31、電流値検出部32を備える。電圧値検出部31は所定の電圧計からなり、図2(b)に示すように、組電池2における個々の二次電池21~26の電圧値を検出する。電流値検出部32は所定の電流計からなり、二次電池21~26に接続されて二次電池21~26に流れた電流値を取得する。なお、電圧値検出部31により検出された電圧値に基づいて、二次電池21~26の開放電圧が取得されるように構成されている。
【0015】
図1に示す格納部4は書き換え可能な不揮発性メモリからなり、電圧値格納部41、電流値格納部42を備える。電圧値格納部41には電圧値検出部31が検出した電圧値が格納され、電流値格納部42には電流値検出部32が検出した電流値が格納される。
【0016】
図1に示す記憶部5は不揮発性メモリからなり、対応関係記憶部51、基準値記憶部52を備える。対応関係記憶部51には、電池特性と全容量との対応関係が記憶されている。当該対応関係の形態は特に限定されず、例えば、算出式、マップ、グラフ、表などの形態とすることができる。当該対応関係は、測定用の二次電池を用いた機械学習により作成したり、測定用の二次電池を用いて加速劣化試験を行って得られた実測定値を基に作成したり、二次電池のモデルを用いて所定の電圧区間における電池特性と全容量との対応関係を論理的に導き出す算出式により作成したりすることができる。なお、対応関係記憶部51に記憶された対応関係は、後述の電池特性取得部61により取得される電池特性に応じて適宜設定される。
【0017】
上記全容量は充電時における完全放電状態から満充電状態までの容量とすることができる。若しくは、全容量は放電時における満充電状態から完全放電状態までの容量とすることもできる。ここで完全放電状態とは、組電池2が搭載される車両等のシステムで規定される実効的な完全放電状態でも良く、劣化度判定装置1を使用する使用者が定める下限電圧に到達した状態でも良い。また、満充電状態とは、上記車両等のシステムで規定される実効的な満充電状態でも良く、上記使用者が定める上限電圧に到達した状態でも良い。
【0018】
また、図1に示す基準値記憶部52には、後述の判定部63において使用される劣化度を判定するための基準値が予め記憶されている。当該基準値は、判定部63において判定する態様に応じて適宜設定され、本実施形態では、劣化度を5段階に分けて判定できるように複数の基準値が設定されている。
【0019】
図1に示す制御部7は、充放電制御部71を備える。充放電制御部71は、電圧値検出部31により二次電池21~26の電圧を個別に測定しながら、組電池2の充放電を行うように充放電を制御する。これにより、組電池2を構成する二次電池21~26は組電池2を構成した状態で、同時に充放電されることとなる。これにより、図3に示すように、組電池2から二次電池21~26を取り出すことなく、車両100に搭載したままの状態で、二次電池21~26のそれぞれの劣化度を判定することができる。車両100に搭載したままの状態で劣化度の判定を行う場合は、充放電制御部71は、図3に示すように当該車両100に搭載されたエアコン、ヘッドライトなどの車載電装装置101により二次電池21~26を放電したり、エンジンによる回生や車両に接続した外部充電装置102により二次電池21~26を強制的に充電したりすることができる。また、サービスステーションに持ち込まれた車両100をサービスマンが運転走行したり、サービスステーションに備えられたシャーシダイナモを利用したりして二次電池21~26を充放電させてもよい。なお、充放電制御部71による組電池2の充放電は、充電のみする場合、放電のみする場合、放電して充電する場合、及び充電して放電する場合のいずれの場合も含む。
【0020】
そして、本実施形態では、充放電制御部71は、組電池2を構成する二次電池21~26のうちいずれか一つが、予め設定された放電目標電圧VPに達するまで放電し、又は予め設定された充電目標電圧に達するまで充電することができる。本実施形態では、充放電制御部71は、図4に示すように、第1の二次電池21の電圧が放電目標電圧VPに達するまで放電を継続する。本実施形態では、放電目標電圧VPは通常使用範囲Vnの外側に設定されており、充放電制御部71は、二次電池21~26の充放電の際に当該通常使用範囲Vnを逸脱することを許容するように構成されている。なお、通常使用範囲とは、二次電池21~26が使用される際に許容される電圧範囲であって、二次電池21~26の構成や組電池2の構成等に応じて予め適宜設定されるものである。
【0021】
なお、二次電池21~26のいずれかが早期に放電目標電圧を超えて使用限界下限Vminに到達したときには、二次電池21~26のうち、その他のもののいずれかが充電目標電圧に達するまで放電を継続する。例えば、図5に示すように、第1の二次電池21が早期に放電目標電圧VPを超えて使用限界下限Vminに到達しているため、他の二次電池22~26のいずれかが放電目標電圧に達するまで放電を継続する。なお、使用可能範囲とは、二次電池21~26において過放電や過充電を引き起こさない範囲として予め設定された電圧範囲である。使用限界下限Vminは、二次電池21~26において予め設定された使用可能範囲の下限を示す。
【0022】
図1に示す演算部6は所定の演算装置からなり、電池特性取得部61、推定部としての容量推定部62、判定部63を有する。電池特性取得部61は、二次電池21~26の電池特性を取得する。二次電池21~26の電池特性は、例えば、所定の電圧区間Vsにおける二次電池2の電圧推移や温度推移に基づく特性とすることができる。なお、電池特性取得部61は、取得した値の絶対値を電池特性として取得することとしてもよい。二次電池21~26の電池特性を取得する所定の電圧区間Vsは、二次電池21~26ごとに設定したり、適宜変更したりすることができる。
【0023】
組電池2を構成する二次電池21~26の電池状態は必ずしも均一ではなく、組電池2の使用に伴って電池状態のバラツキが大きくなる。従って、同じ電圧区間における電圧推移も劣化状態に応じてそれぞれ異なったものとなる。そして、当該電圧推移は、例えば、所定の電圧区間における二次電池21~26の区間容量、所定の電圧区間における二次電池2の容量変化に対する二次電池21~26の電圧変化の割合、所定の電圧区間における経過時間に対する二次電池21~26の電圧変化の割合の少なくとも一つに基づいて算出することができる。所定の電圧区間は、二次電池21~26の劣化度と電池状態の推移とが相関関係を示す電圧区間とすることができる。かかる電圧区間は、二次電池21~26の種類や構成に基づいて設定したり、二次電池を用いた機械学習により導き出したりすることができる。
【0024】
そして、本実施形態では、図4に示すように、組電池2を構成する複数の二次電池21~26において、二次電池21~23は電圧V1aから電圧V1bまでの第1の電圧区間Vs1が設定され、二次電池24~26は第1の電圧区間とは異なる電圧V2aから電圧V2bまでの第2の電圧区間Vs2が設定されている。また、組電池2を構成する複数の二次電池21~26において、第1の二次電池21、第2の二次電池22及び第3の二次電池23は互いに共通する電圧区間Vs2に設定され、第4の二次電池24、第5の二次電池25及び第6の二次電池26は互いに共通する電圧区間Vs2に設定されている。
【0025】
本実施形態では、電池特性として放電電圧特性を用いる。放電電圧特性は、組電池2を放電したときの電圧推移に基づいて算出される。組電池2を放電したときの電圧推移は、二次電池21~26毎に異なっている。本実施形態では、図4に示すように、二次電池21~26のうち、第1の二次電池21と第4の二次電池24を比較すると、第1の二次電池21の電圧は、放電開始時T0において第4の二次電池24の電圧よりも低くなっており、放電終了時Teには第1の二次電池21の電圧は使用限界下限Vminに近い値まで低下している。一方、第4の二次電池24の電圧は、放電開始時T0から放電終了時Teまで徐々に電圧は低下するが、いずれの時点でも第1の二次電池21よりも高くなっており、放電終了時Teにおいても使用限界下限Vminよりも十分高い値を維持している。
【0026】
そして、電池特性取得部61は、図4に示すように、第1の二次電池21に対して、電圧V1aから電圧V1bまでの第1の電圧区間Vs1における第1の電池特性を算出する。一方、第4の二次電池24では、第1の電圧区間Vs1の一部の電圧推移が取得されていないため、第1の電圧区間Vs1における電池特性を取得することができない。そこで、電池特性取得部61は、第4の二次電池24に対しては、放電終了時Teまでに取得された電圧区間から電池特性を取得可能な区間として電圧V2aから電圧V2bまでの第2の電圧区間Vs2を選出し、当該第2の電圧区間Vs2における第2の電池特性を算出する。
【0027】
電池特性取得部61は、他の二次電池22、23について第1の二次電池21と同様に第1の電圧区間Vs1における電圧推移に基づいて電池特性を取得し、他の二次電池25、26について第4の二次電池24と同様に第2の電圧区間Vs2における電圧推移に基づいて電池特性を取得する。
【0028】
そして、本実施形態1では、図1に示す容量推定部62は、電池特性取得部61により取得された電池特性に基づいて、二次電池21~26の全容量を推定する。全容量の推定は、回帰式などの予測モデルを利用することができ、例えば、線形回帰、LASSO回帰、Ridge回帰、決定木、サポートベクター回帰などを利用することができる。
【0029】
図1に示す判定部63は、電池特性又は電池特性関係値に基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定する。電池特性関係値は電池特性に基づいて算出される値であって、本実施形態1では、電池特性関係値として容量推定部62による二次電池21~26の全容量の推定結果を採用している。従って、本実施形態1では、判定部63は容量推定部62の推定結果に基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定する。判定方法は、容量推定部62の推定結果と、基準値記憶部52に予め記憶された基準値とを比較して行うことができる。
【0030】
なお、図5に示す変形形態1における第1の二次電池21のように、放電開始時T0から放電終了時Teまでに、電圧が使用限界下限Vminを下回った場合には、当該第1の二次電池21は再利用できないため、電池特性を取得せずに劣化度を判定することなく、分解等して個々の部品をリサイクルすることができる。
【0031】
なお、劣化度判定装置1において、例えば、図3に示すように、検出部3及び格納部4は、組電池2が搭載された車両に予め備え付けられた機器や装置から構成するとともに、記憶部5、演算部6及び制御部7は、車両100の点検や修理を行うサービスステーション等で所持されるスキャンツール110から構成することができる。
【0032】
本実施形態の劣化度判定装置1による劣化度の判定方法について、以下に説明する。
まず、本実施形態では、図6に示すステップS1において、準備工程として、組電池2が搭載された車両をサービスステーションに持ち込み、当該車両に劣化度判定装置1の記憶部5、演算部6及び制御部7を構成するスキャンツール110に接続する。
【0033】
次に、図6に示すステップS2において、各二次電池21~26の少なくとも一つの開放電圧が放電目標電圧VPに到達するまで放電させる。これにより、各二次電池21~26の残容量の放電が行われる。本実施形態では、図4に示すように、第1の二次電池21が放電目標電圧に到達するまで放電を継続する。さらに、本実施形態では、二次電池21~26はニッケル水素電池であるため、当該二次電池21~26にメモリ効果が生じている場合があるが、二次電池21~26のうち放電目標電圧VPやこれに近い電圧まで放電されたものにおいてはメモリ効果の解除も同時に行われる。
【0034】
ステップS2における残容量の放電とともに、図6に示すステップS3において、電池特性取得部61により各二次電池21~26の電池特性を取得する。本実施形態では、電池特性として上述の放電電圧特性を取得する。
【0035】
本実施形態では、図4に示すように、電池特性取得部61は、二次電池21~26に対して、電圧推移として放電開始時T0から放電終了時Teまでの時間経過に対して、個別に取得された電圧変化の関係を示す電圧時間変化を取得する。そして、電池特性取得部61は、組電池2を構成する二次電池21~26のうち、第1の電圧区間Vs1の全範囲で電圧推移を取得できた二次電池21~23については、当該第1の電圧区間における電圧推移に基づいて放電電圧特性を取得する。一方、第1の電圧区間Vs1の全範囲で電圧推移を取得できなかった二次電池24~26については、電池特性取得部61は、電圧推移を取得できた範囲に含まれる第2の電圧区間Vs2における電圧推移に基づいて放電電圧特性を取得する。
【0036】
そして、二次電池21~23ではそれぞれ、第1の電圧区間Vs1内の所定電圧における微分値、すなわち図4に示す電圧時間変化のグラフにおける第1の電圧区間Vs1内の所定電圧での接線の傾きを算出し、これを二次電池21~23のそれぞれの放電電圧特性とする。また、図4に示すように、二次電池24~26ではそれぞれ、第2の電圧区間Vs2内の所定電圧における微分値、すなわち図4に示す電圧時間変化のグラフにおける第2の電圧区間Vs2内の所定電圧での接線の傾きを算出し、これを二次電池24~26のそれぞれの放電電圧特性とする。
【0037】
なお、本実施形態では放電電圧特性として、電圧推移として電圧時間変化を取得して所定の電圧区間Vs1、Vs2内の所定電圧における微分値を用いたが、これに替えて、電圧推移として導き出した電圧時間変化における2点間の電圧変化の割合、すなわち電圧時間変化のグラフにおける当該2点を通る直線の傾きを算出して、これを放電電圧特性として用いてもよい。例えば、図4に示す二次電池21~23の電圧時間変化における2点として、電圧区間Vs1の開始時間と終了時間の2点を採用するとともに、二次電池24~26の電圧時間変化における2点として、電圧区間Vs2の開始時間と終了時間の2点を採用することができる。
【0038】
また、本実施形態では放電電圧特性として、電圧推移として電圧時間変化を取得して所定の電圧区間Vs内の所定電圧における微分値を用いたが、これに替えて、電圧推移として放電開始時の容量Q0から放電終了時の容量QP1までの容量に対する電圧変化の関係を示す電圧-容量変化を取得してもよい。そして、電圧区間Vs1、Vs2内の所定電圧における微分値、すなわち電圧-容量変化のグラフにおける所定電圧での接線の傾きを算出し、これを二次電池21~26のそれぞれの放電電圧特性としてもよい。
【0039】
次いで、図6に示すステップS4において、容量推定部62により、電池特性取得部61が取得した電池特性に基づいて、二次電池21~26の全容量すなわち満充電容量又は満放電容量を推定する。本実施形態では、容量推定部62は対応関係記憶部51に記憶された予測モデルに基づく放電電圧特性と全容量との対応関係に基づいて、電池特性取得部61が取得した電池特性としての放電電圧特性から二次電池21~26の全容量を推定する。
【0040】
そして、図6に示すステップS5において、判定部63により、容量推定部62が推定した全容量に基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定する。
【0041】
車両に搭載された状態の組電池2において、個別に判定された劣化度に応じて、二次電池21~26の組み換えや交換を適宜行って新たに組電池に組み上げてリビルト品を製造することができる。当該リビルト品の製造について、本実施形態では以下のように行うことができる。
【0042】
まず、図7に示すステップS10において、上述の如く取得した劣化度に応じて二次電池をランク付けする。本実施形態では、劣化度の絶対値を5段階の所定範囲に分けて、劣化度の絶対値の小さいものから順にAランク、Bランク、Cランク、Dランク、Eランクとする。これにより、同一ランクに含まれる二次電池は劣化度が同程度となる。なお、ランク付けの基準は適宜設定することができる。
【0043】
そして、図7に示すステップS11において、組電池から二次電池を取り出し、ランクごとに分別する。他の組電池からも同様に分別された二次電池が収集される。そして、ステップS12において、二次電池のランクが所望の組み合わせとなるように二次電池を組み上げてリビルト品としての組電池を作製する。二次電池のランクの組み合わせは、適宜設定することができる。例えば、同一ランクの二次電池を組み合わせて組電池2を組み上げることにより、当該組電池2に含まれる二次電池における劣化度の差分を所定の基準値以下とすることができる。これに限らず、所定範囲のランク内で組電池2を作成してもよく、例えば、Aランク及びBランクに含まれる二次電池から組電池を作成するなどしてもよい。なお、最低ランクのEランクにランク付けされた二次電池は、使用不可として破棄したり、分解して部材のリサイクルに供したりしてもよい。その後、本実施形態では、図7に示すステップS13において、組電池の補充電を行う。これにより、二次電池が組電池として使用可能な状態となる。
【0044】
次に、本実施形態の劣化度判定装置1における作用効果について、詳述する。
当該劣化度判定装置1では、複数の二次電池21~26が互いに接続されて組電池2を構成した状態で充放電を行い、少なくとも一部の二次電池21~26について所定の電圧区間Vs1、Vs2にわたる電池状態の推移に関する電池特性を取得する。そして、当該電池特性又は当該電池特性に基づいて算出された電池特性関係値に基づいて当該少なくとも一部の二次電池21~26の劣化度を判定する。当該劣化度を判定するに際して、組電池2を形成する複数の二次電池21~26は既に互いに接続された状態であるため、これらを組電池2から二次電池21~26を取り出して個別に充放電させるために劣化度判定装置に配線する作業が不要である。そのため、二次電池21~26の劣化度を判定する作業負荷を低減することができる。
【0045】
また、本実施形態では、組電池2を構成する複数の二次電池21~26には、電池特性を取得するための所定の電圧区間が、複数の二次電池21~26のうちの他の二次電池と異なる電圧区間に設定されたものが含まれる。すなわち、複数の二次電池21~26の一部は、上記所定の電圧区間として第1の電圧区間Vs1が設定され、他の一部は上記所定の電圧区間として第2の電圧区間Vs2が設定される。これにより、第1の電圧区間Vs1における電圧推移を取得しきれなかった二次電池24~26について、第1の電圧区間Vs1と異なる第2の電圧区間Vs2における電圧推移を取得できればこれに基づいて劣化度の判定が可能となるため、組電池から二次電池21~26を取り出さずに個々の二次電池21~26の劣化度を判定することが容易となる。
【0046】
また、本実施形態では、組電池2を構成する複数の二次電池21~26には、電池特性を取得するための所定の電圧区間として、互いに共通する電圧区間Vs1、Vs2が設定されたものが含まれる。すなわち、複数の二次電池21~26のうち、二次電池21~23は共通する上記電圧区間として第1の電圧区間Vs1が設定されており、二次電池24~26は共通する上記電圧区間として第2の電圧区間Vs2が設定されている。これにより、電圧区間の管理が容易となり、電池特性の算出の負荷を軽減できる。
【0047】
また、本実施形態では、充放電制御部71は、組電池2を充放電する際に、二次電池21~26の電圧が予め設定された通常使用範囲を逸脱することを許容するように構成されている。これにより、電池特性を取得するための電圧区間を広く確保できるため、劣化度の判定精度を高めることができる。
【0048】
また、本実施形態では、充放電制御部71は、組電池2を充放電する際に、二次電池2の電圧が予め設定された使用可能範囲を逸脱することを許容するように構成されている。これにより、組電池2を構成する二次電池21~26の中に他のものよりも劣化が大きく進行したものが含まれている場合、組電池2の状態で充放電すると、当該劣化の進行した二次電池の使用可能範囲内での充放電期間では、他の二次電池においては所定の電圧区間全域の電圧推移を取得しきることができない場合がある。そのため、一部の二次電池が使用可能範囲を逸脱することを許容することで、他の二次電池において所定の電圧区間全域の電圧推移を取得することが可能となり、他の二次電池の劣化度の判定精度を向上できる。なお、使用可能範囲を逸脱して充放電された二次電池は、二次電池としては使用できないため、分解して部品等をリサイクルすることができる。
【0049】
また、本実施形態では、組電池2は車両用であって、充放電制御部71は組電池2が車両に搭載された状態で充放電を行うように構成されている。これにより、二次電池21~26の劣化度を判定する際に、車両から組電池2を取り外す作業が不要となるため、作業性を向上することができる。
【0050】
なお、組電池2が車両に搭載された状態で充放電を行うことに替えて、組電池2を車両から降ろして、組電池2の状態のまま、充放電制御部71により充放電を行うこととしてもよい。この場合には、組電池2を劣化度判定装置1に配線すればよいため、組電池2から二次電池21~26をそれぞれ取り出して個別に劣化度判定装置1に配線する場合に比べて配線作業の手間を低減することができ、作業性を向上することができる。
【0051】
また、本実施形態では、充放電制御部71は、上記車両に搭載された機器を介して二次電池の充放電を行うように構成されている。これにより、二次電池21~26の充放電のために別途、充電装置や放電装置を用意する必要がないため、劣化度判定装置1の構成を簡素化して製造コストを低減できる。
【0052】
なお、本実施形態では、電池特性取得部61が取得した電池特性から容量推定部62が二次電池21~26の全容量を推定して、判定部63が当該推定結果に基づいて二次電池21~26の劣化度を判定することとしたが、これに替えて、容量推定部62による全容量の推定を行わずに、判定部63は電池特性取得部61が取得した電池特性に基づいて二次電池21~26の劣化度を判定することとしてもよい。また、電池特性取得部61は取得した値の絶対値を電池特性として取得し、判定部63は当該絶対値に基づいて劣化度を判定することとしてもよい。また、判定部63は、電池特性取得部61が取得した電池特性の差分に基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定することとしてもよい。
【0053】
そして、本実施形態では、二次電池21~26の劣化度が所定範囲内となるように二次電池21~26をクラス分けして組電池2を組み上げることとしたが、二次電池21~26の劣化度の差分が所定範囲内となるように二次電池21~26をクラス分けして組電池2を組み上げてもよい。
【0054】
また、本実施形態では、電池特性は、二次電池21~26における所定の電圧区間Vs1、Vs2での電圧推移に基づく放電電圧特性としている。二次電池21~26がニッケル水素電池である場合には、使用済みの二次電池21~26を再利用する際に、メモリ効果の解除などを目的として放電させることがあるが、当該放電の際に上記放電電圧特性を取得することにより、二次電池21~26の再利用のための作業工程を簡略化できる。
【0055】
なお、本実施形態では、二次電池21~26の放電中の電圧推移に基づいて放電電圧特性を算出したが、これに替えて又はこれとともに、放電終了後に二次電池21~26の電圧が開放電圧まで戻る電圧緩和時の電圧推移に基づいて、放電電圧特性を算出することとしてもよい。図8に示す変形形態1では、二次電池21~26はそれぞれ放電終了時Te以降に電圧緩和が生じている。そして、第1の二次電池21では当該電圧緩和が生じている電圧範囲に含まれる第1の電圧区間Vs1における電圧推移に基づいて、実施形態1の場合と同様に当該電圧区間の微分値を算出して放電電圧特性を取得することができる。これと同様に、第2の二次電池22及び第3の二次電池23では第2の電圧区間Vs2における電圧推移に基づいて放電電圧特性取得することができ、第4の二次電池24では第3の電圧区間Vs3における電圧推移に基づいて放電電圧特性取得することができ、第5の二次電池25及び第6の二次電池26では第4の電圧区間Vs4における電圧推移に基づいて放電電圧特性取得することができる。この場合も、本実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0056】
そして、本実施形態の劣化度判定装置1によれば、使用履歴を有する複数の二次電池を含む組電池であって、複数の二次電池の放電電圧特性を用いて全容量を推定して、該全容量に基づいて判定されたそれぞれの劣化度の差分が所定範囲内である組電池を提供することができる。かかる組電池では、組電池に含まれる二次電池の劣化度のバラツキがより小さくなるため、リビルト品としての組電池の長寿命化や品質向上を図ることができる。
【0057】
なお、電池特性取得部61は、電圧推移として、所定の電圧区間Vsにおける経過時間に対する二次電池21~26の電圧変化の割合を算出することに替えて又はこれとともに、所定の電圧区間における各二次電池21~26の容量変化量を区間容量Qpとして算出し、これを放電電圧特性としてもよい。例えば、図4に示す本実施形態においては、二次電池21~23の区間容量Qpは、電流値検出部32により検出した電圧区間Vs1における二次電池21~23に流れた電流値と電流が流れた時間とから算出できる。同様に、二次電池24~26の区間容量Qpは、電流値検出部32により検出した電圧区間Vs1における二次電池24~25に流れた電流値と電流が流れた時間とから算出できる。そして、それぞれの区間容量Qpは図9に示すように表すことができる。この場合も放電電圧特性としての当該区間容量Qpに基づき、二次電池21~26の劣化度を高精度かつ簡便に判定することができる。
【0058】
また、図4に示すように、各二次電池21~26における放電時の全区間T0~Teの容量として図9に示す総充放電容量Qtを算出し、当該総充放電容量Qtに対する区間容量Qpの比である容量比を算出し、これを放電電圧特性としてもよい。また、総充放電容量Qtに替えて、電池特性を算出するための電圧区間を含む特定の電圧区間の容量である特定区間容量Qt’を算出し、当該特定区間容量Qt’に対する区間容量Qpの比である容量比を算出し、これを放電電圧特性としてもよい。この場合も当該放電電圧特性に基づき、二次電池21~26の劣化度を高精度かつ簡便に判定することができる。
【0059】
また、さらに、電圧推移として、所定の電圧区間Vs1、Vs2における容量変化に対する二次電池21~26の電圧変化の割合、すなわち電圧容量変化において、電圧区間Vs1、Vs2内の電圧における微分値を算出し、これを放電電圧特性としてもよい。この場合も、本実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0060】
また、さらに、図10に示す変形形態3のように、電圧推移として、所定の電圧区間における容量変化に対する二次電池21~26の電圧変化の割合、すなわち電圧容量変化において、電圧区間内の電圧における微分値を算出し、これを放電電圧特性としてもよい。当該変形形態3では、上記電圧区間として二次電池21~23では第1の電圧区間Vs1が設定され、二次電池24~26では第2の電圧区間Vs2が設定されている。この場合も、本実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0061】
そして、本実施形態の劣化度判定装置1によれば、使用履歴を有する複数の二次電池を含む組電池であって、複数の二次電池が、所定の電圧区間Vs1、Vs2における二次電池の容量変化量、電圧区間Vs1、Vs2における二次電池の容量変化に対する二次電池の電圧変化の割合、電圧区間Vs1、Vs2における経過時間に対する二次電池21~26の電圧変化の割合の少なくとも一つに基づいて算出した電圧推移に基づく電池特性を用いて全容量を推定して、該全容量に基づいて判定されたそれぞれの劣化度の差分が所定範囲内である組電池を提供することができる。かかる組電池では、組電池に含まれる二次電池の劣化度のバラツキがより小さくなるため、リビルト品としての組電池の品質向上を図ることができる。
【0062】
なお、本実施形態では、劣化度判定装置1に備えられた電池特性取得部61において電池特性を算出して電池特性を取得することとしたが、これに替えて、劣化度判定装置1が外部入力部を有するとともに、外部に設けられた演算装置を用いて電池特性を算出して、外部入力部を介して当該電池特性が電池特性取得部61に入力されることにより、電池特性取得部61が電池特性を取得することとしてもよい。
【0063】
また、本実施形態の劣化度判定装置1の記憶部5、演算部6及び制御部7は、車両用のサービスステーションで所持されるスキャンツール110に備えられることとしたが、これに替えて、図11に示すように、劣化度判定装置1のうち、記憶部5、演算部6及び制御部7の少なくとも一つを外部サーバ120等に設けるとともに、サービスステーション等に設けられたクライアント端末として通信機能を有するスキャンツール110からネットワークを介して外部サーバ等に接続することで構成したり、インターネットを介したクラウドサービス130を利用して構成したりしてもよい。また、劣化度判定装置1の記憶部5、演算部6及び制御部7を外部サーバに設けるとともに、車両に通信機能を設けてクラウドサービス130を利用して外部サーバと通信可能とすることで、劣化度判定装置1を構成してもよい。なお、クラウドサービス130を利用して劣化度判定を行う場合は、スキャンツール110や車両100に表示部111、103を設けて、診断結果や診断結果に応じて行うべき処置等を表示部することができる。
【0064】
なお、本実施形態の劣化度判定装置1による劣化度の判定において、図12に示す変形形態4のように、上述の準備工程S1の後、ステップS20において、二次電池21~26の温度を所定の温度に制御する温度調整を行ってもよい。当該温度調整は、組電池2が搭載された車両が格納された部屋の温度を制御したり、車両に搭載された車室用エアコンを利用して組電池2を含む車両の温度を制御したりすることができる。当該温度調整により上記温度を調整して二次電池21~26をソークすることにより、二次電池21~2の温度を予め設定された設定温度とすることができる。なお、設定温度として複数の温度を設定してもよい。
【0065】
当該変形形態4において、組電池2の温度は、組電池2に設けられた図示しない温度センサにより検出することができる。なお、二次電池21~26毎に温度センサが設けられている場合は各温度センサで検出した温度を二次電池21~26の温度とするが、二次電池21~26毎に温度センサが設けられていない場合は、温度センサで検出された温度から、組電池2の構成や二次電池21~26の配置などを考慮して各二次電池21~26の温度を推定することとしてもよい。当該温度の推定は、二次電池の温度を論理的に導き出す推定式や、組電池のモデルに基づいて作成した検出温度と二次電池温度のマップ等を利用して行うことができる。図12に示すステップS20の後は、図6のS2~S5と同様に行う。当該判定方法によれば、二次電池21~26の温度を予め設定された設定温度にして劣化度の判定を行うことができるため、判定精度を向上することができる。
【0066】
本実施形態では、図4に示すように、二次電池21~26において放電開始時T0の電圧である初期電圧はばらついているが、二次電池21~26がリチウムイオン電池である場合には、劣化度の判定の前に、二次電池21~26における初期電圧を同等するための均等化を実施してもよい。当該均等化は、組電池2において二次電池21~26のいずれかをバイパスした状態で充放電を行うことにより実施することができる。当該均等化を行うことにより、二次電池21~26の電圧推移を共通の電圧区間で検出しやすくなるため、判定精度を向上することができる。
【0067】
以上のごとく、本態様によれば、組電池2を構成する二次電池21~26の劣化度を判定する際の作業性を向上することができる二次電池の劣化度判定装置1を提供することができる。
【0068】
(実施形態2)
上述の実施形態1では、電池特性として放電電圧特性を採用したが、実施形態2では、図13に示すように放電終了後、充電開始時T1から充電終了時Teまで充電を行う。そして、電池特性として、実施形態1の放電電圧特性とともに、二次電池21~26のうちの一つが所定の充電目標電圧VQまで充電される際の電圧推移に基づく充電電圧特性を取得する。充電目標電圧VQは特に限定されないが、本実施形態では通常使用範囲Vn内の値としている。
【0069】
そして、図13に示すように、複数の二次電池21~26のうち、二次電池21~23については、電圧推移を取得する所定の電圧区間として第1の電圧区間Vs1が設定され、これに基づいて電池特性取得部61は電池特性として第1の充電電圧特性を取得する。一方、その他の二次電池24~26については、第1の電圧区間Vs1の一部の電圧推移が取得されていないため、これに替えて、充電開始時T1から充電終了時Teまでに取得された電圧区間から電池特性を取得可能な区間として第2の電圧区間Vs2を選出し、これに基づいて電池特性取得部61は電池特性として第2の充電電圧特性を取得する。なお、本実施形態における電池特性としての充電電圧特性は、実施形態1及び各変形形態における放電電圧特性と同様に算出することができる。その他の構成要素は実施形態1の場合と同様であり、本実施形態においても実施形態1の場合と同一の符号を用いてその説明を省略する。
【0070】
なお、充電電圧特性は、上述の実施形態1において放電電圧特性を算出する場合と同様に、所定の電圧区間Vs1、Vs2の開始時間と終了時間の2点間の電圧変化の割合としたり、電圧区間Vs1、Vs2における区間容量としたり、充電時の全区間の容量である総充放電容量に対する区間容量の容量比としたりしてもよい。また、総充放電容量に替えて、電池特性を算出するための電圧区間を含む特定の電圧区間の容量である特定区間容量を算出し、当該特定区間容量に対する区間容量の容量比を算出し、これを充電電圧特性としてもよい。
【0071】
そして、本実施形態2では、電池特性取得部61は、放電電圧特性と充電電圧特性の両方を取得し、容量推定部62はこれらに基づいて二次電池21~26の全容量を推定する。これにより、一層精度よく、二次電池21~26の劣化度を判定することができる。
【0072】
なお、本実施形態2の劣化度判定装置1を用いて、リビルト品の組電池を製造する場合は、組電池2を組み上げる前に各二次電池の充電がなされることとなるため、図7におけるステップS13の組電池の補充電は不要となる。
【0073】
また、本実施形態2では、電池特性取得部61は、二次電池21~26の放電後に充電を行うことにより、放電電圧特性を取得した後に充電電圧特性を取得することとしたがこれに限らず、二次電池21~26の充電後に放電を行うことにより、充電電圧特性を取得した後に放電電圧特性を取得することとしてもよい。
【0074】
また、本実施形態2では、電池特性取得部61は、放電電圧特性と充電電圧特性の両方を取得することとしたが、これに替えて、充電電圧特性のみを取得することとしてもよい。この場合は、放電電圧特性と充電電圧特性の両方を取得する場合に比べて判定精度が劣るおそれがある。その一方で、二次電池21~26がニッケル水素電池である場合にはメモリ効果が生じている場合があり、放電電圧特性のみを取得する際に、放電電圧特性はメモリ効果の影響により電圧推移にバラツキが生じて判定精度の向上が抑制されるおそれがある。しかしながら、残容量の放電後に充電電圧特性のみを取得する場合には、二次電池21~26のうち放電目標電圧VPやこれに近い電圧まで放電されたものにおいては、充電電圧特性はメモリ効果の解除が図られた後に取得されるため、メモリ効果の影響が少ないことから、判定精度の向上が期待できる。
【0075】
また、本実施形態2における充電電圧特性は、実施形態1の放電電圧特性の場合と同様に、充電が停止された後に開放電圧まで戻る電圧緩和時の電圧推移に基づいて算出することとしてもよい。この場合も、本実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0076】
なお、本実施形態2でも、実施形態1の場合の変形形態と同様に、容量推定部62による全容量の推定を行わずに、判定部63は電池特性取得部61が取得した電池特性に基づいて二次電池21~26の劣化度を判定することとしてもよい。また、電池特性取得部61は取得した値の絶対値を電池特性として取得し、判定部63は当該絶対値に基づいて劣化度を判定することとしてもよい。また、判定部63は、電池特性取得部61が取得した電池特性の差分に基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定することとしてもよい。また、二次電池21~26の劣化度の差分が所定範囲内となるように二次電池2をクラス分けして組電池2を組み上げてもよい。
【0077】
(実施形態3)
本実施形態3の劣化度判定装置1では、実施形態1の構成に加えて、図14に示すように、演算部6がインピーダンス特性関係値取得部64を備える。インピーダンス特性関係値取得部64は、電圧値検出部31及び電流値検出部32の検出値に基づいて、DC-IR測定や低周波AC-IR測定により、二次電池21~26のインピーダンス特性関係値を取得する。その他の構成は実施形態1と同様であって、実施形態1の同様の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0078】
本実施形態3では、電池特性取得部61は実施形態1の場合と同様に、図4に示す所定の電圧区間Vs1、Vs2における放電電圧特性を取得する。そして、インピーダンス特性関係値取得部64は放電終了時Teにおける二次電池21~26のインピーダンス特性関係値を取得する。
【0079】
なお、対応関係記憶部51には、インピーダンス特性関係値と全容量との対応関係が予め記憶されている。当該対応関係は、測定用の二次電池を用いた機械学習により作成したり、測定用の二次電池を用いて加速劣化試験を行って得られた実測定値を基に作成したり、二次電池のモデルを用いて所定の電圧におけるインピーダンス特性関係値と全容量との対応関係を論理的に導き出す算出式により作成したりすることができる。
【0080】
本実施形態3では、図14に示す容量推定部62は、電池特性取得部61が取得した放電電圧特性とインピーダンス特性関係値取得部64が取得したインピーダンス特性関係値とに基づき、二次電池21~26の全容量を推定する。判定部63は実施形態1の場合と同様に容量推定部62の推定結果に基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定する。本実施形態3によれば、放電電圧特性とインピーダンス特性関係値とに基づいて全容量を推定されるため、判定精度を一層向上することができる。
【0081】
なお、本実施形態では、インピーダンス特性関係値取得部64がインピーダンス特性関係値の取得を行うタイミングは、特に限定されず、例えば、実施形態2のように電池特性取得部61が充電電圧特性を取得する場合には、充電終了時であってもよい。
【0082】
そして、本実施形態3の劣化度判定装置1によれば、使用履歴を有する複数の二次電池を含む組電池であって、複数の二次電池が、電池特性と、二次電池が放電又は充電されたときのインピーダンスに関するインピーダンス特性関係値とを用いて推定した全容量に基づいて判定されたそれぞれの劣化度の差分が所定範囲内である組電池を提供することができる。かかる組電池では、組電池に含まれる二次電池の劣化度のバラツキがより小さくなるため、リビルト品としての組電池の長寿命化や品質向上を図ることができる。
【0083】
(実施形態4)
本実施形態4では、実施形態1の構成に加えて、図15に示すように、初期電圧取得部65を備える。初期電圧取得部65は、図16に示すように、放電開始時T0における二次電池21~26の開放電圧である初期電圧VI1~VI6をそれぞれ取得する。そして、対応関係記憶部51には、初期電圧の値と電池特性と全容量との対応関係が予め記憶されている。当該対応関係は実施形態1の場合と同様に作成することができる。その他の構成は実施形態1と同様であって、実施形態1の同様の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0084】
本実施形態4の劣化度判定装置1によれば、電池特性に加えて初期電圧も考慮されて二次電池21~26の劣化度が判定されるため、簡易な構成で判定精度を一層向上することができる。なお、初期電圧に替えて、初期電圧に基づいて算出された初期電圧関係値を用いてもよい。初期電圧関係値として例えば、初期電圧の絶対値としたり、初期電圧取得部65により取得された初期電圧の差分としたりすることができる。
【0085】
そして、本実施形態4の劣化度判定装置1によれば、使用履歴を有する複数の二次電池を含む組電池であって、複数の二次電池が、電池特性の取得を開始するときの二次電池の開放電圧である初期電圧と電池特性とを用いて推定した全容量に基づいて判定されたそれぞれの劣化度の差分が所定範囲内である組電池を提供することができる。かかる組電池では、組電池に含まれる二次電池の劣化度のバラツキがより小さくなるため、リビルト品としての組電池の長寿命化や品質向上を図ることができる。
【0086】
なお、本実施形態4でも、実施形態1の場合の変形形態と同様に、容量推定部62による全容量の推定を行わずに、判定部63は電池特性取得部61が取得した電池特性に基づいて二次電池21~26の劣化度を判定することとしてもよい。電池特性取得部61が取得した電池特性と初期電圧とに基づいて、判定部63が二次電池21~26の劣化度を判定することとしてもよい。また、電池特性取得部61は取得した値の絶対値を電池特性として取得し、判定部63は当該絶対値に基づいて劣化度を判定することとしてもよい。また、判定部63は電池特性取得部61が取得した電池特性の差分に基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定することとしてもよい。また、二次電池の劣化度の差分が所定範囲内となるように二次電池をクラス分けして組電池を組み上げてもよい。
【0087】
また、他の変形形態5として、図17に示すように、演算部6が二次電池21の内部抵抗を取得する内部抵抗取得部66を有しており、対応関係記憶部51に内部抵抗と電池特性と全容量との対応関係が予め記憶されていることとしてもよい。内部抵抗取得部66において、内部抵抗は、電圧値検出部31により検出された電圧値そのものである測定電圧と、二次電池21~26の開放電圧と、二次電池21~26に流れる電流とから算出して取得することができる。なお、二次電池21~26の開放電圧は、二次電池21~26の残放電量と初期電圧との対応関係を示すマップを用いて時間ごとに推定して取得することができる。また、内部抵抗についても二次電池の内部抵抗を論理的に導き出す推定式を用いて推定して取得することができる。本変形形態5の劣化度判定装置1によれば、電池特性に加えて内部抵抗も考慮されて二次電池21~26の劣化度が判定されるため、簡易な構成で判定精度を一層向上することができる。
【0088】
当該変形形態5では、電池特性とは別に内部抵抗を取得して劣化度を判定することとしたが、これに替えて、電池特性として、所定の電圧区間における電圧推移に基づく内部抵抗の変化を取得することとしてもよい。
【0089】
(実施形態5)
本実施形態5の劣化度判定装置1は、図18に示すように、図1に示す実施形態1の構成に加え、温度検出部33を備え、組電池2は二次電池21、22を備える。図19(a)、図19(b)に示すように、温度検出部33は充放電中の二次電池21、22の温度を取得する。そして、上述の実施形態1では電池特性取得部61は、電池特性として所定の電圧区間Vsにおける二次電池21、22の電圧推移に基づく放電電圧特性を取得するように構成したが、本実施形態5では、これに替えて、電池特性取得部61は、図19(a)に示すように、電池特性として所定の電圧区間VsA、VsBにおける二次電池21、22の温度推移に基づく温度特性を取得する。本実施形態5では、電圧区間VsAは電圧V1から電圧V2までの電圧区間を示し、電圧区間VsBは電圧V3から電圧V4までの電圧区間を示す。
【0090】
そして、本実施形態では、図19(a)、図19(b)に示すように、当該温度特性として、第1の二次電池21において電圧区間VsAに対応する第1の放電温度特性TA1と、電圧区間VsBに対応する第1の充電温度特性TB1が設定されている。また、当該温度特性として、第2の二次電池22において電圧区間VsAに対応する第2の放電温度特性TA2、電圧区間VsBに対応する第2の充電温度特性TB2が設定されている。その他の構成は実施形態1と同様であって、実施形態1の同様の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。なお、電圧区間VsAは二次電池21、22の劣化度に応じて放電電圧特性の差異が顕著となっている区間であり、電圧区間VsBは二次電池21、22の劣化度に応じて、充電電圧特性の差異が顕著となっている区間である。
【0091】
二次電池21、22は同一の組電池2に組み込まれているが、充放電における温度推移は、二次電池21、22の配置や温度環境等によって異なる挙動を示すことがある。本実施形態5では、図19(b)に示すように、第1の二次電池21と第2の二次電池22における温度推移は、測定した室温設定範囲Tn内に収まっているが、互いに若干異なる挙動を示している。そして、本実施形態5では、電池特性取得部61は、放電における所定の電圧区間VsAと放電後の充電における所定の電圧区間VsBとの両方において温度検出部33により検出した電池温度に基づいて、放電における温度特性である放電温度特性TA1、TA2と、充電における温度特性である充電温度特性TB1、TB2とを取得する。そして、容量推定部62が両温度特性に基づいて各二次電池21、22の全容量を推定して、判定部63が劣化度を判定する。
【0092】
電池特性取得部61が取得する温度特性は、実施形態1の場合の放電電圧特性を算出する場合及び実施形態2の場合の充電電圧特性を算出する場合と同様に、所定の電圧区間VsA、VsBにおける所定電圧での温度変化の微分値としたり、所定の電圧区間VsA、VsBにおける2点間の温度変化の割合としたり、電圧区間VsA、VsBにおける二次電池21、22の容量変化に対する二次電池21、22の温度変化の割合としたりすることができる。
【0093】
本実施形態5においても、実施形態1の場合と同様の作用効果を奏することができる。なお、本実施形態5では、温度特性として、放電と充電の両方において取得することとしたが、これに限らず、放電と充電の一方のみとしてもよい。
【0094】
そして、本実施形態5の劣化度判定装置1によれば、使用履歴を有する複数の二次電池を含む組電池であって、複数の二次電池が、所定の電圧区間VsA、VsBにおける二次電池の温度推移に基づく温度特性を含む電池特性を用いて推定した全容量に基づいて判定されたそれぞれの劣化度の差分が所定範囲内である組電池を提供することができる。かかる組電池では、組電池に含まれる二次電池2の劣化度のバラツキがより小さくなるため、リビルト品としての組電池の品質向上を図ることができる。
【0095】
なお、本実施形態5でも、実施形態1の場合の変形形態と同様に、容量推定部62による全容量の推定を行わずに、判定部63は電池特性取得部61が取得した温度特性に基づいて二次電池21、22の劣化度を判定することとしてもよい。また、電池特性取得部61は取得した値の絶対値を温度特性として取得し、判定部63は当該絶対値に基づいて劣化度を判定することとしてもよい。また、判定部63は電池特性取得部61が取得した温度特性の差分に基づいて、二次電池の劣化度を判定することとしてもよい。また、二次電池の劣化度の差分が所定範囲内となるように二次電池をクラス分けして組電池を組み上げてもよい。
【0096】
本実施形態5では、図19(a)に示すように、充電時の温度特性として充電目標電圧VQが通常使用範囲Vn内であって通常使用範囲Vn内に所定の電圧区間VsBがあるときの温度特性を取得することとしたが、これ替えて、図20(a)に示す変形形態6のように、充電時の温度特性として、充電目標電圧VQが通常使用範囲Vnを超えており通常使用範囲Vnを超えた領域に所定の電圧区間VsBがあるときの温度特性を取得することとしてもよい。この場合、図20(b)に示すように二次電池21、27の温度は上昇しやすいため、温度推移に劣化度が反映されやすくなる。その結果、判定精度の向上を図ることができる。なお、本変形形態6では、二次電池21、27を充電目標電圧VQまで充電した後に放電を行って二次電池21、22の電圧を通常使用範囲Vn内に戻している。
【0097】
また、変形形態6では二次電池2の放電を行った後、充電を行ってその後再度放電を行うこととしたが、これに替えて、図21に示す変形形態7のように、最初に放電を行わずに、先に充電を行ってから放電を行うこととしてもよい。この場合、電池特性取得部61は、充電時に充電時の温度特性を取得した後、放電時に放電時の温度特性を取得することとしてもよい。この場合も実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0098】
(実施形態6)
上述の実施形態1では、推定部としての容量推定部62は、電池特性取得部61が取得した電池特性に基づいて、二次電池2の全容量を推定することとしたが、これに限らず、容量推定部62は、正極容量、負極容量、負極SOCと正極SOCとの相対関係のズレ量、二次電池21~26を構成する複数のセル間の全容量バラツキ、上記二次電池21~26の電池抵抗、正極抵抗、負極抵抗のうちの少なくともいずれか一つを推定することとしてもよい。そして、実施形態6では、容量推定部62は二次電池21~26のそれぞれの正極容量Qcを推定することとする。さらに、対応関係記憶部51には、電池特性と正極容量Qcとの対応関係が記憶されている。当該対応関係の形態及び作成方法は特に限定されず、実施形態1の場合と同様に、例えば、算出式、マップ、グラフ、表などの形態とすることができる。当該対応関係は、測定用の二次電池2を用いた機械学習により作成したり、測定用の二次電池2を用いて加速劣化試験を行って得られた実測定値を基に作成したり、二次電池2のモデルを用いて所定の電圧区間における電池特性と全容量との対応関係を論理的に導き出す算出式により作成したりすることができる。本実施形態では、対応関係記憶部51には、例えば、図22(a)~(c)に示す予測モデルに基づき、電池特性と正極容量Qcとの対応関係が記憶されている。その他の構成は、実施形態1の場合と同等であって、実施形態1の場合と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0099】
次に、本実施形態6の劣化度判定装置1による劣化度の判定方法について、以下に説明する。なお、図6に示す実施形態1の場合と同様のステップについては、同一の符号を用いてその説明を省略する場合がある。
まず、本実施形態6では、図6に示す実施形態1の場合と同様に、図23に示すステップS1~S3を行う。これにより、図24(a)に示すように、電池特性取得部61により各二次電池21~26の電池特性として放電カーブを、所定の電圧区間Vsにおいて取得する。なお、所定の電圧区間は、特定のSOC範囲に対応する区間とすることができる。
【0100】
次いで、図23に示すステップS40において、容量推定部62により、対応関係記憶部51に記憶された予測モデルに基づき、電池特性と正極容量Qcとの対応関係に基づいて、電池特性取得部61が取得した放電カーブから、二次電池21~26の正極容量Qcを推定する。その後、図23に示すステップS5において、判定部63により、容量推定部62が推定した正極容量Qcに基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定する。
【0101】
本実施形態6においても実施形態1と同等の作用効果を奏する。なお、本実施形態6では、電池特性取得部61により図24(a)に示す放電カーブを取得したが、これに替えて、図24(b)に示す充電カーブを取得してもよい。この場合も実施形態1と同等の作用効果を奏する。
【0102】
(実施形態7)
上記実施形態6では、容量推定部62は、正極容量Qcを推定することとしたが、これに替えて、実施形態7では、容量推定部62は負極容量QAを推定する。すなわち、実施形態7では、図25に示すように、ステップS41において、図22(a)~(c)に示す予測モデルに基づき、電池特性と負極容量QAとの対応関係に基づいて二次電池21~26の負極容量QAを推定する。当該実施形態7においても実施形態1と同等の作用効果を奏する。
【0103】
(実施形態8)
本実施形態8では、容量推定部62は二次電池21~26のそれぞれの負極SOCと正極SOCとの相対関係のズレ量を推定する。さらに、対応関係記憶部51には、電池特性と負極SOCと正極SOCとの相対関係のズレ量との対応関係が記憶されている。当該対応関係の形態及び作成方法は特に限定されず、実施形態1の場合と同様とすることができる。
【0104】
例えば、二次電池21~26がニッケル水素電池からなる場合は、図26に示すように、電槽容器中から水素が反応系から抜け出ると、負極SOCと正極SOCとの相対関係がずれるため、負極のOCV曲線は図の右側にずれることとなる。例えば、二次電池21~26がリチウムイオン電池からなる場合は、図26に示すように、電解液中のリチウムがSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜の形成で消費されることにより、負極SOCと正極SOCとの相対関係がずれるため、負極のOCV曲線は図の右側にずれることとなる。
【0105】
本実施形態8では、図26に示す予測モデルに基づき、負極SOCと正極SOCとの相対関係のズレ量Qxと、電池特性との対応関係が対応関係記憶部51に記憶されている。その他の構成は、実施形態1の場合と同等であって、実施形態1の場合と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0106】
本実施形態8の劣化度判定装置1による劣化度の判定方法では、上述の実施形態6の場合と同様に行うが、図27に示すようにステップS3において、電池特性取得部61は電池特性として電池としての低SOC範囲に対応する所定の電圧区間Vsの放電カーブを取得する。その後、ステップS42において、当該放電カーブから算出される電池特性との対応関係記憶部51に記憶された負極SOCと正極SOCとの相対関係のズレ量Qxとの対応関係に基づいて、二次電池21~26のズレ量Qxを推定する。その後、図27に示すステップS5において、判定部63により、容量推定部62が推定したズレ量Qxに基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定する。本実施形態においても実施形態1と同等の作用効果を奏する。なお、本実施形態8では電池特性を電池としての低SOC範囲から取得したが、これに替えて高SOC範囲から取得してもよい。また、本実施形態8では電池特性として放電カーブを取得したが充電カーブを取得してもよい。
【0107】
(実施形態9)
本実施形態9では、対応関係記憶部51には、二次電池21~26ごと電池特性と充放電カーブにおける放電容量の変化量との対応関係が記憶されており、容量推定部62は、所定の電圧区間Vsにおける充放電カーブにおける放電容量の変化量を推定し、判定部63は、劣化度として推定結果に基づいてセルの自己放電量が大きくなっているかを検知する。本実施形態9では、その他の構成は、実施形態1の場合と同等であって、実施形態1の場合と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0108】
本実施形態9では、二次電池21~26はそれぞれ6つのセルを有している。そして、例えば、図28(a)に示す放電カーブは初期状態を示す放電カーブとして対応関係記憶部51に記憶されており、図28(b)に示す放電カーブはセルの一つが自己放電量が大きくなっていることを示す放電カーブとして対応関係記憶部51に記憶されている。容量推定部62により所定の電圧区間Vsの電池特性に基づいて、図28(a)に示す放電カーブに推定された場合は、判定部63において自己放電量が大きくなっているセルがないと判定される。一方、容量推定部62により所定の電圧区間Vsの電池特性に基づいて、図28(b)に示す放電カーブに推定された場合は、判定部63において自己放電量が大きくなっているセルがあると判定される。なお、図28(b)に示す放電カーブに推定された場合は、使用下限を二次電池モジュールにおいて自己放電量が大きくなっているセルがない場合の第1使用下限Vmin1よりも高い値である第2使用下限Vmin2に設定することができる。これにより、各セルが過剰に放電することを防止できる。
【0109】
(実施形態10)
本実施形態10では、二次電池21~26はそれぞれ、6個のセルを含む。そして、対応関係記憶部51には、一つの二次電池21~26内におけるセル間の全容量バラツキと電池特性との対応関係が記憶されている。セル間の全容量バラツキとは、一つの二次電池21~26に含まれた複数のセルにおいて、各セルの全容量のバラツキの程度を示す。本実施形態10では、セル間の全容量バラツキとして、図29に示すように、複数のセルの全容量における最大Qmaxから最小Qminを差し引いた差分Qmax-minを採用する。その他の構成は、実施形態1の場合と同等であって、実施形態1の場合と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0110】
本実施形態10では、容量推定部62は、電池特性取得部61が取得した電池特性に基づいて、対応関係記憶部51に記憶された対応関係から差分Qmax-minを推定する。そして、判定部63は、推定した差分Qmax-minに基づいてセルの特異的な容量劣化の有無を検知する。例えば、推定した差分Qmax-minが所定値以上であると判定した場合は、当該二次電池モジュールのセルのいずれかに特異的な容量劣化が生じていると判定する。
【0111】
(実施形態11)
図30に示すように、実施形態11では、推定部として抵抗推定部621を有する。抵抗推定部621は、二次電池21~26の電池特性に基づいて、二次電池21~26の内部抵抗を推定する。対応関係記憶部51には、一つの二次電池21~26の内部抵抗と電池特性との対応関係が記憶されている。電池特性取得部61は、二次電池21~26が互いに接続されたスタックの状態で、パルス充放電を行って電池特性を取得することができる。電池特性を取得する電圧区間は、特定のSOC範囲に対応する所定の電圧区間とすることができる。
【0112】
また、二次電池21~26間で、温度やSOCが異なっている場合は、温度と充放電中の電圧変化又は充放電終了後の電圧緩和中の電圧変化とを電池特性として取得して、温度及びSOCが同条件となる場合の抵抗値を推定することができる。この場合は、対応関係記憶部51には、一つの二次電池21~26の内部抵抗と温度と電池特性との対応関係が記憶されているものとする。なお、二次電池21~26を個別に充放電して電池特性を取得することとしてもよい。この場合は、温度及びSOCを同条件に合わせる必要がなく、判定時間の短縮を図れる。
【0113】
次に、本実施形態11の劣化度判定装置1による劣化度の判定方法について、以下に説明する。まず、本実施形態11では、図6に示す実施形態1の場合と同様に、図31に示すステップS1~S3を行う。次いで、図31に示すステップS43において、抵抗推定部621により、電池特性取得部61が取得した電池特性から、対応関係記憶部51に記憶された二次電池21~26の内部抵抗と電池特性との対応関係に基づいて、二次電池21~26の内部抵抗を取得する。その後、図31に示すステップS5において、判定部63により、抵抗推定部621が推定した内部抵抗に基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定する。本実施形態11においても実施形態1と同等の作用効果を奏する。
【0114】
(実施形態12)
実施形態12の劣化度判定装置1では、抵抗推定部621により、二次電池21~26の負極抵抗を推定し、判定部63により二次電池21~26の劣化度を判定する。
【0115】
二次電池21~26の電圧カーブにおける周波数特性から、二次電池21~26における正極や負極やその他の電池要素の抵抗値を算出することができる。そして、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池では、電圧カーブにおいて高周波領域に負極抵抗が顕著に反映され、低周波領域に正極抵抗が顕著に反映される。本実施形態12では、二次電池21~26としてニッケル水素電池を用いることとし、電池特性取得部61は、電池特性として、高周波領域における所定電圧区間の電圧カーブを取得する。対応関係記憶部51には、電池特性としての高周波領域における電圧カーブと負極抵抗との対応関係が予め記憶されている。その他の構成要素は実施形態11の場合と同様であって、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0116】
そして、二次電池21~26の劣化度と相関関係を有する内部抵抗において、劣化モードによって支配的となる抵抗要素が異なる。まず、二次電池の内部抵抗は、電子抵抗、反応抵抗、内部物質移動の抵抗の3つの抵抗成分の関係性から決まり、二次電池はこれらの3つの抵抗成分の直列等価回路と考えることができる。一般的に、電子抵抗は電池に定電流を付加した直後の時間領域で主に生じる抵抗成分である。また、反応抵抗は電子抵抗が生じる時間領域後の時間領域で主に生じる抵抗成分である。また、内部物質移動の抵抗は定電流を長時間付加した際に生じ、反応抵抗の時間領域後の時間領域に主に生じる抵抗成分である。そして、負極反応抵抗支配領域とは、上記3つの抵抗成分において、放電期間における負極の反応抵抗の占める割合が最も大きい時間的領域である。当該負極反応抵抗支配領域では、負極の反応抵抗が二次電池2の内部抵抗を支配的に決定する。本実施形態12では、判定部63は、当該負極反応抵抗支配領域において、抵抗推定部621により推定された負極抵抗に基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定する。
【0117】
本実施形態12の劣化度判定装置1による劣化度の判定方法では、実施形態11の場合と同様に、図31に示すステップS1~S3を行う。そして、ステップS43において、抵抗推定部621により、電池特性取得部61が取得した電圧カーブと、対応関係記憶部51に記憶された対応関係とに基づいて、二次電池21~26の負極抵抗を推定する。そして、判定部63は、推定された負極抵抗から二次電池21~26の劣化度を判定する。本実施形態12においても実施形態1と同等の作用効果を奏する。
【0118】
(実施形態13)
実施形態13の劣化度判定装置1では、抵抗推定部621により、二次電池21~26の正極抵抗を推定し、判定部63により二次電池21~26の劣化度を判定する。本実施形態13では、二次電池21~26としてニッケル水素電池を用いることとし、電池特性取得部61は、電池特性として、低周波領域における所定電圧区間の電圧カーブを取得する。対応関係記憶部51には、電池特性としての電圧カーブと正極抵抗との対応関係が予め記憶されている。そして、判定部63は、正極反応抵抗支配領域において、抵抗推定部621により推定された正極抵抗に基づいて、二次電池21~26の劣化度を判定する。その他の構成要素は実施形態12の場合と同様であって、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0119】
本実施形態13の劣化度判定装置1による劣化度の判定方法では、実施形態12の場合と同様に、図31に示すステップS1~S3を行う。そして、ステップS43において、抵抗推定部621により、電池特性取得部61が取得した電圧カーブと、対応関係記憶部51に記憶された対応関係とに基づいて、二次電池21~26の正極抵抗を推定する。そして、判定部63は、推定された正極抵抗から二次電池21~26の劣化度を判定する。本実施形態13においても実施形態1と同等の作用効果を奏する。
【0120】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0121】
1 劣化度判定装置
2 組電池
21~26 二次電池
33 温度検出部
61 電池特性取得部
62 容量推定部
63 判定部
64 インピーダンス特性関係値取得部
65 初期電圧取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31