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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】印刷装置及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
B41J2/01 129
B41J2/01 303
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020120443
(22)【出願日】2020-07-14
(65)【公開番号】P2022017731
(43)【公開日】2022-01-26
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】吉川 英伸
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-145072(JP,A)
【文献】特開2020-019256(JP,A)
【文献】特開2018-034316(JP,A)
【文献】特開2015-037870(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0207223(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体にインクを吐出するノズル列と、
主走査方向において、前記印刷媒体と前記ノズル列との相対位置を変化させる主走査部
と、
前記ノズル列が設けられる基準領域に対して前記主走査方向の一方に設けられ、紫外線
を照射する第1照射部と、
前記基準領域に対して前記主走査方向の他方に設けられ、前記紫外線を照射する第2照
射部と、を備え、
前記紫外線が照射される位置を照射位置とすると、
前記第1照射部と前記第2照射部との内の少なくとも一方は、真下に前記紫外線が照射
された際の真下照射位置と異なる前記照射位置に前記紫外線を照射し、
前記基準領域の中心と前記第1照射部の前記照射位置の中心との間の距離を第1距離、
前記基準領域の中心と前記第2照射部の前記照射位置の中心との間の距離を第2距離、前
記基準領域の中心と前記第1照射部の前記真下照射位置の中心との間の距離を第3距離、
前記基準領域の中心と前記第2照射部の前記真下照射位置の中心との間の距離を第4距離
、とした場合に、
前記ノズル列、前記第1照射部、及び前記第2照射部は、前記第3距離と前記第4距
離とが異なるように設けられ、
前記第1照射部及び前記第2照射部は、|第1距離―第2距離|<|第3距離―第4
距離|を満たすように照射し、
前記第1照射部及び前記第2照射部のうちの少なくとも一方の前記紫外線の照射方向を
変更可能な照射位置制御部を備え、
前記第1照射部と前記第2照射部とのうちの少なくとも一方は、前記照射位置制御部を
介して、前記照射位置が前記主走査方向において前記真下照射位置よりも前記基準領域に
近い位置になるように前記照射方向に変更可能であること
を特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記第1照射部と前記第2照射部との内の少なくとも一方は、前記主走査方向と交差す
る副走査方向を軸にして傾斜して設けられること
を特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記照射位置制御部は、前記主走査部を往復移動させて前記印刷媒体に印刷を行う印刷
パス数が少なくなるにつれて、前記照射位置と、前記基準領域、との間の距離を小さくす
ること
を特徴とする請求項1または請求項に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記ノズル列を第1ノズル列とし、
前記第1ノズル列とは異なる第2ノズル列をさらに備え、
前記第2ノズル列は、前記第1ノズル列の位置に対して、前記主走査方向の位置及び前
記主走査方向と交差する副走査方向の位置が異なる位置に設けられ、
前記第2ノズル列が設けられる第1基準領域の中心と前記第1照射部の照射位置の中心
との間の距離を第5距離、前記第1基準領域の中心と前記第2照射部の照射位置の中心と
の間の距離を第6距離、前記第1基準領域の中心と前記第1照射部の前記真下照射位置の
中心との間の距離を第7距離、前記第1基準領域の中心と前記第2照射部の前記真下照射
位置の中心との間の距離を第8距離、とした場合に、
前記第2ノズル列、前記第1照射部、及び前記第2照射部は、前記第7距離と前記第
8距離とが異なるように設けられ、
前記第1照射部及び前記第2照射部は、|第5距離―第6距離|<|第7距離―第8
距離|を満たすように照射すること
を特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
印刷媒体にインクを吐出するノズル列と、
主走査方向において、前記印刷媒体と前記ノズル列との相対位置を変化させる主走査部
と、
前記ノズル列が設けられる基準領域に対して前記主走査方向の一方に設けられ、紫外線
を照射する第1照射部と、
前記基準領域に対して前記主走査方向の他方に設けられ、紫外線を照射する第2照射部
と、
前記第1照射部及び前記第2照射部のうちの少なくとも一方の前記紫外線の照射方向を
変更可能な照射位置制御部を備える印刷装置における印刷方法であって、
前記第1照射部と前記第2照射部との内の少なくとも一方は、前記紫外線が照射される
位置である照射位置を、真下に照射された際の真下照射位置よりも前記基準領域に近い照
射位置に照射し、
前記基準領域の中心と前記第1照射部の照射位置の中心との間の距離を第1距離、前記
基準領域の中心と前記第2照射部の照射位置の中心との間の距離を第2距離、前記基準領
域の中心と前記第1照射部の前記真下照射位置の中心との間の距離を第3距離、前記基準
領域の中心と前記第2照射部の前記真下照射位置の中心との間の距離を第4距離、とした
場合に、
前記ノズル列、前記第1照射部、及び前記第2照射部は、前記第3距離と前記第4距
離とが異なるように設けられ、
前記第1照射部及び前記第2照射部は、|第1距離―第2距離|<|第3距離―第4
距離|を満たすように、
前記第1照射部を点灯させる第1照射部点灯工程と、前記第2照射部を点灯させる第2
照射部点灯工程と、を含み、
前記第1照射部点灯工程と前記第2照射部点灯工程との少なくとも一方は、前記照射位
置が前記主走査方向において前記真下位置よりも前記基準領域に近い位置になるように変
更可能であること
を特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線硬化型インクを用いる印刷装置としては、走査方向に沿って紫外線照射器を印刷ヘッドの両端に備えるシリアル方式のインクジェットプリンターが知られている。
例えば、特許文献1には、カラーインクによる画像形成後にクリアインクを吐出して、双方向印刷時に発生する光沢ムラを抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-1288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光沢ムラは、往路と復路とで、紫外線硬化型インクが印刷媒体に着弾してから紫外線が照射されるまでの時間が異なることで生じる。特許文献1に記載の技術は、光沢ムラを抑制させるのにクリアインクを使用する必要があるが、両端に配置された紫外線照射器までの距離が非対称となるスタガ構造の印刷ヘッドを用いた場合でも、クリアインクを使用せずに光沢ムラを抑制させる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
印刷装置は、印刷媒体にインクを吐出するノズル列と、主走査方向において、前記印刷媒体と前記ノズル列との相対位置を変化させる主走査部と、前記ノズル列が設けられる基準領域に対して前記主走査方向の一方に設けられる第1照射部と、前記基準領域に対して前記主走査方向の他方に設けられる第2照射部と、を備え、前記第1照射部と前記第2照射部との内の少なくとも一方は、真下に照射された際の真下照射位置と異なる照射位置に照射し、前記基準領域の中心と前記第1照射部の前記照射位置の中心との間の距離を第1距離、前記基準領域の中心と前記第2照射部の前記照射位置の中心との間の距離を第2距離、前記基準領域の中心と前記第1照射部の前記真下照射位置の中心との間の距離を第3距離、前記基準領域の中心と前記第2照射部の前記真下照射位置の中心との間の距離を第4距離、とした場合に、前記ノズル列、前記第1照射部、及び前記第2照射部は、前記第3距離と前記第4距離とが異なるように設けられ、前記第1照射部及び前記第2照射部は、|第1距離―第2距離|<|第3距離―第4距離|を満たすように照射する。
【0006】
印刷方法は、印刷媒体にインクを吐出するノズル列と、主走査方向において、前記印刷媒体と前記ノズル列との相対位置を変化させる主走査部と、前記ノズル列が設けられる基準領域に対して前記主走査方向の一方に設けられる第1照射部と、前記基準領域に対して前記主走査方向の他方に設けられる第2照射部と、を備える印刷装置における印刷方法であって、前記第1照射部と前記第2照射部との内の少なくとも一方は、真下に照射された際の真下照射位置とは異なる照射位置に照射し、前記基準領域の中心と前記第1照射部の照射位置の中心との間の距離を第1距離、前記基準領域の中心と前記第2照射部の照射位置の中心との間の距離を第2距離、前記基準領域の中心と前記第1照射部の前記真下照射位置の中心との間の距離を第3距離、前記基準領域の中心と前記第2照射部の前記真下照射位置の中心との間の距離を第4距離、とした場合に、前記ノズル列、前記第1照射部、及び前記第2照射部は、前記第3距離と前記第4距離とが異なるように設けられ、前記第1照射部及び前記第2照射部は、|第1距離―第2距離|<|第3距離―第4距離|を満たすように、前記第1照射部を点灯させる第1照射部点灯工程と、前記第2照射部を点灯させる第2照射部点灯工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に係るプリンター全体を示す斜視図。
図2】プリンターを上方から透視した透視平面図。
図3】主走査部の上方から透視した透視平面図。
図4】主走査部を下流側から見た透視正面図。
図5】プリンターの制御図。
図6】印刷方法を示したフローチャート図。
図7】印刷パス数と照射時間による光沢ムラの関係を示した概念図。
図8A】印刷媒体にUVインクが着弾してから吸収される様子を示した模式図。
図8B】印刷媒体にUVインクが着弾してから吸収される様子を示した模式図。
図8C】印刷媒体にUVインクが着弾してから吸収される様子を示した模式図。
図9】印刷パス数による一対の紫外線照射部の傾斜の様子を示した模式図。
図10】実施形態2に係るプリンター全体を示す斜視図。
図11】主走査部の上方から透視した透視平面図。
図12】主走査部を下流側から見た透視正面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.実施形態1
以下、本発明の一実施形態に係る印刷装置について説明する。本実施形態において、印刷装置の一例としてシリアル方式のインクジェットプリンターを挙げる。以下シリアル方式のインクジェットプリンターを単にプリンターという。
尚、各図において示すX-Y-Z座標系は、X方向が幅方向もしくは主走査方向、Y方向が奥行方向もしくは副走査方向、Z方向が高さ方向もしくは鉛直方向を示している。
Y方向を示す矢印の先端側を前方もしくは下流とし、基端側を後方もしくは上流とする。また、装置前方から見てX方向を示す矢印の先端側を右とし、基端側を左とする。また、Z方向を示す矢印の先端側を上方とし、基端側を下方とする。なお、副走査方向とは、Y方向を示す矢印の基端側から先端側に向かう方向である。副走査方向とは、主走査方向と交差する方向である。
【0009】
図1は、本発明に係るインクジェット方法を実施し得るプリンター1の全体を示す斜視図である。図2は、プリンター1を上方から見た場合の透視平面図である。図3は、プリンター1の印刷ヘッド24を搭載したキャリッジ15の上方から透視した透視平面図である。
【0010】
1.1.主走査部
図1から図3に示すように、プリンター1は、インクの一例としての紫外線硬化型インクを吐出する印刷ヘッド24及び紫外線硬化型インクに紫外線を照射する第1照射部41及び第2照射部42等を含む主走査部28と、印刷ヘッド24に紫外線硬化型インクを供給するインク供給部25と、を備えている。以下、紫外線硬化型インクをUVインクという。
印刷ヘッド24は、印刷媒体Pにインクを吐出する複数のノズル孔が設けられ、4色で1セットのノズル列23が設けられ、図3に示すように、副走査方向と平行に1色につき1列のノズルを割り当てる。例えば、ノズル列23は、ノズル列23Yをイエロー、ノズル列23Mをマゼンタ、ノズル列23Cをシアン、ノズル列23Kをブラックに割り当て、ノズル列23を含む設置範囲を基準領域30という。図3に示すように、基準領域30は、平面視で主走査方向に長い長方形をしており、印刷ヘッド24の中央に配置されている。各色ノズル列23Y、23M、23C、23Kは、基準領域30の中央に主走査方向に等間隔で配置されている。
【0011】
なお、図3で示す印刷ヘッド24のノズル列23は、1色につき1列に限らず1色につき複数列で形成されていてもよい。また、ノズル列23は、副走査方向と平行に並べているが、図示しない、ノズル列23が、副走査方向に対して傾斜して並べる構造にしてもよい。
【0012】
プリンター1は、図3に示すように、印刷ヘッド24の左側面の下方に印刷媒体Pの紙幅を光学的に検出するPWセンサー32が設けられている。PWセンサー32は、後述する主走査部28に付随して往復移動しながら、紙端を光学的に検知することで紙幅を検出する。PWセンサー32は、例えば、紙幅いっぱいに印刷するフチなし印刷などで必要である。また、PWセンサー32は、紙幅の検出の他に印刷された印刷媒体P上のインク濃度を測定する機能を兼ねさせることもできる。
【0013】
印刷ヘッド24を搭載するキャリッジ15を備えた主走査部28は、後述するキャリッジモーター18により主走査方向において、印刷媒体Pとノズル列23との相対位置を変化させて画像形成する。キャリッジ15は、印刷ヘッド24を挟んで左右一対の紫外線照射部を備え、右側に第1照射部41及び左側に第2照射部42を備えている。
【0014】
主走査部28を支持し、X方向に延設されたガイド軸14は、図2に示すように、主走査部28の後方側にX方向に沿って設けられる。ガイド軸14は、キャリッジ15の主走査方向における可動範囲である装置の3/4の幅まで延設されている。そして、ガイド軸14の右側後方の装置筐体12には、主走査部28を独立して駆動するキャリッジモーター18が設置されている。キャリッジモーター18は、回転軸をY方向に沿って設けられている。そして、その回転軸の先端には、駆動プーリー16が連結されている。駆動プーリー16の反対側である左側には、回転自在に設けられた従動プーリー17が装置筐体12に回転軸をY方向に沿って設置されている。そして、左右のプーリー16、17間には無端状のタイミングベルト19が掛装されている。キャリッジ15を含む主走査部28は、その後方をタイミングベルト19と接続されており、キャリッジモーター18の回転によりタイミングベルト19が駆動される。それによって、キャリッジ15を含む主走査部28は、ガイド軸14に沿って主走査方向に往復移動する。
【0015】
1.2.インク供給部
図2に示すように、プリンター1の装置筐体12の右側の約1/4のスペースに箱形のカートリッジホルダー20が設けられている。カートリッジホルダー20には、例えば、UVインクを収容したインクカートリッジ21が、色毎に4個備えられている。インクカートリッジ21は、各色ごとに着脱可能に装着されている。各インクカートリッジ21は、カートリッジホルダー20に装着され、インク供給チューブ22の上流端と接続されている。また、各インク供給チューブ22の下流端は、キャリッジ15上に搭載された印刷ヘッド24に接続されている。そして、インク供給部25は、図示しない供給ポンプにて印刷ヘッド24の下面にて構成されたインク流路を経由して複数のノズル孔を有したノズル列23へとUVインクを供給している。
【0016】
なお、本実施形態では、カートリッジホルダー20とインクカートリッジ21をキャリッジ15に搭載した所謂オンキャリッジ方式にしてもよい。
【0017】
また、インクカートリッジ21に収容するUVインクは、4色に限られず、更に色数を増やしても良い。また、カラーインクの他にクリアインク、ホワイトインク、などの特殊インクを含んでいてもよい。
【0018】
1.3.紫外線照射部
図3図4に示すように、ノズル列23が設けられる基準領域30に対して主走査方向の一方である右側に設けられる第1照射部41と、基準領域30に対して主走査方向の他方である左側に第2照射部42とは、主走査方向に対して左右対称に設けるのが望ましい。そして、印刷ヘッド24に設けられた基準領域30を主走査方向において2等分する中心線CLは、ノズル列23Mとノズル列23Cとの間を主走査方向において2等分する。
【0019】
本実施形態において第1照射部41と第2照射部42とは、PWセンサー32を印刷ヘッド24と第2照射部42との間に設けた都合上、基準領域30を主走査方向において2等分する中心線CLに対して左右非対称に配置される。
【0020】
なお、本実施形態で示したPWセンサー32は、撮像素子等のセンサー等に置き換えたり、または追加して設置されていてもよい。このように、物理的な理由により、第1照射部41及び第2照射部42が、基準領域30を主走査方向において2等分する中心線CLに対して左右非対称に配置される場合、後述する紫外線の照射位置を変更することで左右対称に設けられた紫外線照射部と同じ効果が得られる。
【0021】
第1照射部41及び第2照射部42から発生させる光としては、例えば、400nmから200nmの紫外線を用いることができる。他の実施形態としての第1照射部41及び第2照射部42から発生させる光としては、可視光、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、又はX線等の電磁波を用いて構成することもできる。第1照射部41及び第2照射部42の光発生手段としては、例えば、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプや、Hランプ、Dランプ、Vランプなどの光を、光ガイド、光ファイバー等によって、照射部に導くものが挙げられる。特に第1照射部41及び第2照射部42には、紫外線発光ダイオードや紫外線発光半導体レーザーが好ましい。
【0022】
本実施形態の第1照射部41及び第2照射部42は、特に波長が365nm以上410nm以下の紫外線発光素子を用いている。更に、第1照射部41及び第2照射部42に紫外線発光ダイオードを用いると、小型軽量化することができ、発光素子の配置の自由度を高めることができる。例えば、図3に示すように、第1照射部41及び第2照射部42は、紫外線発光ダイオードを副走査方向に沿って単数配列させた構成を有している。以下、本実施形態では、紫外線発光ダイオードを単にLEDという。
【0023】
第1照射部41及び第2照射部42は、少なくとも一方、好ましくは両方が、照射ピーク強度が200mW/cm2以上とすることが好ましく、より好ましくは800mW/cm2以上である。照射ピーク強度がこのような範囲であると、主走査方向の1回の主走査で、十分にUVインクをピニングすることができる。また、照射ピーク強度は、2000mW/cm2以下であることが好ましく、さらに好ましくは1500mW/cm2以下である。このような範囲とすることにより、設計の自由度を高めエネルギーの無駄を抑制することができる。さらに、第1照射部41及び第2照射部42の少なくとも一方、好ましくは両方において1回の主走査で、UVインクを照射する照射エネルギー40mJ/cm2以上であり、より好ましくは100mJ/cm2以上である。このような範囲とすることにより、1回の主走査で、十分にUVインクをピニングすることができる。
【0024】
図4に示すように、第1照射部41及び第2照射部42は、主走査方向に印刷ヘッド24が走査された場合に、ノズル孔から吐出され、印刷媒体Pに着弾したUVインクに対して、紫外線を照射できる構成となす。第1照射部41と第2照射部42との内の少なくとも一方は、印刷媒体Pに対する照射方向を変更可能な照射位置制御部50により、主走査方向と交差する副走査方向の回転軸を中心に傾斜させることができる。
【0025】
図4に示すように、照射位置制御部50は、左右一対の紫外線照射部にそれぞれ内蔵された照射位置変更機構33を駆動する。照射位置変更機構33は、例えば、紫外線照射部の中央から副走査方向に沿って設けられた回動軸に図示しない偏芯カムとリンクとを連結させることで構成される。照射位置制御部50からの制御信号により、図示しないモーターを回転させることによりリンクを回転させて偏芯カムに伝達させることで、紫外線照射部が所定の傾斜になるまで駆動させる。
【0026】
図3図4に示すように、照射位置制御部50により照射位置を変更しない場合、第1照射部41及び第2照射部42から出射される光は、印刷媒体P上における紫外線照射部の真下位置に照射される。この照射位置を真下照射位置43、44という。以下、真下照射位置43、44を第1照射位置ともいう。一方、照射位置制御部50により照射位置を変更する場合は、真下照射位置43、44とは異なる照射位置45という。以下真下照射位置とは異なる照射位置は、第2照射位置ともいう。
すなわち、第1照射部41及び第2照射部42の内の少なくとも一方は、照射位置制御部50を介して第1照射位置とは異なるように変更された照射位置である第2照射位置に照射することができる。
【0027】
図4で示すように、第2照射部42は、主走査方向に沿って印刷ヘッド24側に傾斜させて、第2照射位置に照射位置を変更させる。これにより、ノズル列23から吐出されたUVインクが印刷媒体Pに着弾してから、第1照射部41及び第2照射部42により紫外線が照射されるまでの照射時間を往路と復路とで略同等にできる。
【0028】
尚、第1照射部41及び第2照射部42は、適宜任意に、印刷媒体Pとの間の距離、照射光の強度の増減等を制御してもよい。
また、UVインクをピニングする際に、印刷パスを複数回実施する場合、一対の紫外線照射部を同時にオンにするように制御にしてもよい。
【0029】
1.4.プリンターの制御
図5は、プリンター1におけるプリンター全体の制御を行うコントローラー60の制御概略図を示している。
プリンター1のコントローラー60は、画像処理や制御信号を制御するCPU62と、ROMやRAM等の内部メモリー63と、ボタンやタッチパネルを備えた図示しない操作部と、液晶ディスプレイにより構成された表示部と、複数のモーターを独立して制御できる制御回路64と、を備えている。コントローラー60は、更にパーソナルコンピューター11等の外部機器と接続するためのI/F部61を備えている。プリンター1の各構成要素は、バスを介して互いに接続される。
【0030】
I/F部61は、外部機器との間でデータやコマンドのやり取りを行うためのI/Fであり、プリンター1は、I/F部61を介して有線あるいは無線で接続した携帯端末等の外部機器から画像データを入力することができる。外部機器の一例としては、パーソナルコンピューター11を挙げている。パーソナルコンピューター11またはコントローラー60、もしくは両者を用いて、ユーザーから指定された印刷対象の画像データの印刷処理を行う。
【0031】
内部メモリー63には、搬送モーター29、キャリッジモーター18の駆動制御や第1照射部41及び第2照射部42の制御をCPU62に実行させるためのファームウェアを記憶している。プリンター1のフロント部に設けられるコントロールパネルからの操作により、液晶ディスプレイの表示部には、所定のメッセージやユーザーインターフェイス(UI)画面等を表示させることができる。尚、内部メモリー63に記憶してあるファームウェアは、ユーザーにより紫外線の照射条件などを適宜、任意に書き換えることができる。また、主走査部28を往復移動させて画像形成する印刷パス数は、ユーザーによりパーソナルコンピューター11にインストールされたプリンタードライバーのUI画面から設定できる。
【0032】
図5に示すように、制御回路64は、キャリッジ15を含む主走査部28を往復移動させるキャリッジモーター18と、印刷媒体Pを搬送させる搬送モーター29と、照射位置変更機構33に設けられ第1照射部41及び第2照射部42を傾斜させる図示しないモーターと、を独立して制御できる。
【0033】
そのため、制御回路64は、図1に示すように、装置筐体12の後方の右端の下部に備えた搬送モーター29の駆動を制御して、図示しない搬送ローラーを介して印刷媒体Pを下方から支持するプラテン13へ搬送できる。プラテン13に支持された印刷媒体Pは、印刷ヘッド24により印刷されて更に下流へと搬送される。
また、制御回路64は、照射位置制御部50を含み、照射位置変更機構33により第1照射部41及び第2照射部42の照射角度を変更する。具体的には、図3の紙面上に点線で示した左側の円形は、図4に示す照射位置制御部50からの制御信号により照射位置変更機構33を介して第2照射部42を、第2照射位置に変更した照射範囲である。
【0034】
1.5.プリンターの印刷方法
図6は、プリンター1の印刷方法をフローチャートで示した図である。
ステップS001は、第1照射部41及び第2照射部42の照射位置を確認し、且つ照射条件を決定する準備工程である。まず準備工程では、第1照射部41と第2照射部42とが、基準領域30を主走査方向において2等分する中心線CLから左右対称に配置されているかどうかを判断する。本実施形態のプリンター1の場合、第2照射部42が、基準領域30を主走査方向において2等分する中心線CLから左右非対称であると判断される。内部メモリー63の照射位置変更データを参照して、照射位置制御部50の制御信号により照射位置変更機構33を駆動して第2照射部42を傾斜させる。
【0035】
具体的に照射条件は、以下の式に従ってプリンター1の紫外線照射部の照射位置が決定される。図3に戻って、プリンター1は、ノズル列23が設けられる基準領域30に対して主走査方向の一方に設けられる第1照射部41と、基準領域30に対して主走査方向の他方に設けられる第2照射部42との内の少なくとも一方は、真下照射位置43、44または真下照射位置43、44とは異なる照射位置45に照射させる。
基準領域30を主走査方向に2等分する中心線CLと第1照射部41の実際の照射位置の中心を通る線との間の距離を第1距離W1、
基準領域30を主走査方向に2等分する中心線CLと第2照射部42の実際の照射位置の中心を通る線との間の距離を第2距離W2、
基準領域30を主走査方向に2等分する中心線CLと第1照射部41の真下照射位置43の間の距離を第3距離W3、
基準領域30を主走査方向に2等分する中心線CLと第2照射部42の真下照射位置44の間の距離を第4距離W4、とした場合に、
ノズル列23、第1照射部41、及び第2照射部42は、第3距離W3と第4距離W4とが異なるように設定され、
プリンター1は、|第1距離W1―第2距離W2|<|第3距離W3―第4距離W4|の関係を満たすように決定する。
このようにして、ステップS001では、図4で示すように第2照射部42の照射位置を第2照射位置へ変更させる。
【0036】
ステップS002は、印刷媒体Pを搬送する搬送工程である。コントローラー60は、印刷データに基づいて印刷媒体Pを副走査方向に搬送する。
【0037】
ステップS003は、次のパスが往路パスであるかどうかを判断する。往路パスの場合(ステップS003:YES)は、ステップS005に進む。復路パスの場合(ステップS003:NO)は、ステップS004に進む。ステップS005では、キャリッジ15の進行方向と反対側にある第1照射部41を点灯させる。
【0038】
ステップS004は、第2照射部42を点灯させる第2照射部点灯工程である。コントローラー60は、第2照射部42を点灯させる。
【0039】
ステップS005は、第1照射部41を点灯させる第1照射部点灯工程である。コントローラー60は、第1照射部41を点灯させる。
【0040】
ステップS003に戻って、次のパスが往路パスかどうかを判断する。ここでは、復路パスと判断される(ステップS003:NO)。次にステップS004に進む。ステップS004は、キャリッジ15の進行方向と反対側にある第2照射部42を点灯させる。
【0041】
ステップS006は、キャリッジ15を主走査方向に走査して1パス分を印刷をする1パス印刷実行工程である。コントローラー60は、キャリッジ15に搭載された印刷ヘッド24からUVインクを吐出させながら、キャリッジ15を左右のどちらか一方から他方へ移動させて画像を形成する。
なお、コントローラー60は、1パスが終了したら第1照射部41及び第2照射部42を消灯する。
【0042】
ステップS007は、次パスの印刷があるかを判断する工程である。コントローラー60は、内部メモリー63に格納された画像データに基づいて、プリンター1に印刷を実行させるための印刷データを生成する。次パスの印刷データがある場合(ステップS007:YES)はステップS002に戻って、ステップS002からステップS006を繰り返す。次パスの印刷データがない場合(ステップS007:NO)は、印刷媒体Pを排出し、本フローを終了する。
【0043】
図3及び図4で示すように、第2照射部42が仮に真下照射位置44のままで画像形成された場合に、図1で示す主走査部28が、紙面の左からホームポジションがある右方向へ走査する場合は、反対方向から走査する場合より|W4-W3|の距離だけ印刷媒体Pに着弾したUVインクへの照射タイミングが遅れることになる。そのため、複数回パスにより画像形成を完成させた場合に、常に主走査部28を左から右方向へ走査させる印刷パスは、印刷媒体PにUVインクをより吸収させた状態となる。
【0044】
以下、印刷媒体Pに対するUVインクの吸収状態の違いが、光沢ムラの原因になる理由を図7を用いて述べる。
図7に示す概念グラフは、横軸は印刷パス数を示し、縦軸はUVインクが印刷媒体Pに着弾して、主走査方向の進行方向とは反対側の紫外線照射部により、着弾されたUVインクが照射されるまでの時間を表す。以下、単に照射時間ともいう。
図7で示す領域Aは、印刷媒体P上に着弾して硬化したUVインクの状態(図8A)を示す。図7で示す領域Bは、印刷媒体P上に着弾して硬化したUVインクの状態(図8B)を示す。図7で示す領域Cは、印刷媒体P上に着弾して硬化したUVインクの状態(図8C)を示す。
【0045】
例えば、印刷パス数が多く、印刷媒体P上のUVインクへの照射時間が早い場合、すなわち領域Aは、少量のUVインクが印刷媒体Pにほぼ吸収されず伸び広がる前に硬化する。そのため、印刷媒体P上に着弾されたUVインクは、ドット形状を維持したまま硬化する。結果として、印刷媒体Pから着弾したUVインクの上面の高さは、着弾したほぼインク滴の高さとなりパス数分だけ積層される。これらインク滴のドット形状を残して積層される画像は、インク滴が一体化していないので乱反射し、いわゆるマット画像になる。
【0046】
逆に、印刷パス数が少なくて、印刷媒体P上のUVインクへの照射時間が遅い場合、すなわち領域Cは、多量のUVインクが印刷媒体P上に着弾されるのでドット形状が自重等で潰れる。更に、照射時間も遅いためにUVインクが印刷媒体P上で一体化し伸び広がってから硬化する。結果として、インク滴の高さが維持されず潰れて濡れ広がり平面状となり、正反射するので光沢が増し、いわゆるグロス画像となる。これら、図8Aから図8Cの状態が混在した画像は、光沢ムラとなってユーザーに認識される。例えば、本実施形態に示すプリンター1が、双方向印刷時に図8Bの状態でほぼ揃えられるため、ユーザーにより光沢ムラと認識されるのを抑制できる。
【0047】
そこで、本実施形態に示すプリンター1は、図7で示す領域Bとなるように、照射位置制御部50により、第2照射部42を、主走査方向において印刷ヘッド24側に向けて照射する。そのため、UVインクが印刷媒体Pに着弾してからそのUVインクに紫外線が照射されるまでの時間が往路と復路とで略同等となる。
【0048】
以上のように、プリンター1は、第1照射部41と第2照射部42との内の少なくとも一方は、真下に照射された際の真下照射位置43、44と異なる照射位置45に照射させるならば、
基準領域30を主走査方向に2等分する中心線CLと第1照射部41の実際の照射位置の中心を通る線との間の距離を第1距離W1、
基準領域30を主走査方向に2等分する中心線CLと第2照射部42の実際の照射位置の中心を通る線との間の距離を第2距離W2、
基準領域30を主走査方向に2等分する中心線CLと第1照射部41の真下照射位置43の間の距離を第3距離W3、
基準領域30を主走査方向に2等分する中心線CLと第2照射部42の真下照射位置44の間の距離を第4距離W4、とした場合に、
プリンター1のノズル列、第1照射部41及び第2照射部42は、第3距離W3と第4距離W4とが異なるように設けられるならば、
プリンター1の第1照射部41及び第2照射部42は、|第1距離W1―第2距離W2|<|第3距離W3―第4距離W4|の関係を満たすように照射させる。
【0049】
この関係を満すならば、大判印刷に対応した業務用のプリンター、コンシューマー向けの家庭用プリンター、DPE向けの業務用印刷装置、捺染プリンター等、のいかなる双方向印刷を行うプリンターであっても適用できる。
【0050】
また、図9に示すように、例えば、8回の走査で印刷画像形成を完成させる印刷パス数PS8の場合は、1パス当たりの液滴の吐出数量は減る。そのため、UVインクは印刷媒体Pに吸収されずらく、印刷媒体PにUVインクを浸透させる時間を稼ぐ必要がある。そのため、第1照射部41と第2照射部42との内の少なくとも一方は、主走査方向において基準領域30とは反対側の領域を照射する。ここでは、第1照射部41及び第2照射部42は、共に照射位置制御部50を介して照射位置を主走査方向において基準領域30とは反対側の領域に変更させる。
【0051】
また、例えば、4回の走査で画像形成を完成させる印刷パス数PS4の場合は、プリンター1がデフォルト値に設定されているため、第1照射部41及び第2照射部42が真下照射位置43、44となるように制御される。
【0052】
また、例えば、2回の走査で画像形成を完成させる印刷パス数PS2の場合は、1パス当たりの液滴の吐出数量は増える。そのため、UVインクは印刷媒体Pに吸収され易く、印刷媒体Pに浸透させる時間を短縮させる必要がある。そのため、第1照射部41及び第2照射部42は、基準領域30の側に向けて傾斜させるように照射位置制御部50を介して照射位置変更機構33を駆動させて照射位置を変更する。
つまり、照射位置制御部50は、主走査部28を往復移動させて印刷媒体Pに印刷を行う際に、印刷パス数が少なくなるにつれて、照射位置と基準領域30との間の距離を小さくする制御を行う。
【0053】
以上述べたように、実施形態1としてのプリンターによれば以下の効果を得ることができる。
印刷ヘッド24を挟んで主走査方向に一対の紫外線照射部を備えたプリンター1は、双方向印刷の際、少なくとも一方の紫外線照射部の照射位置を真下以外に照射させるように照射位置を設ける。そうすることで、基準領域30に対して主走査方向に非対称の位置に設けられた一対の紫外線照射部は、UVインクが印刷媒体Pに着弾してから、その着弾したUVインクに紫外線が照射されるまでの時間を、往路と復路とで略同等にできる。そのため、プリンター1は、印刷媒体Pに着弾したUVインクの高さを図8Bの状態で略均一に揃え、光沢ムラの原因を抑制して、画像品質を向上させる。
【0054】
印刷ヘッド24を挟んで主走査方向に一対の紫外線照射部を備えたプリンター1は、双方向印刷させる場合、少なくとも一方の紫外線照射部の照射位置を真下以外に照射させる照射位置制御部50を設ける。そうすることで、基準領域30に対して主走査方向に非対称の位置に配置された紫外線照射部は、UVインクが印刷媒体Pに着弾してから、その着弾したUVインクに紫外線が照射されるまでの時間を、往路と復路とで略同等にできる。そのため、プリンター1は、印刷媒体Pに着弾したUVインクの高さが図8Bの状態で略均一に揃えられ、光沢ムラの原因を抑制して、画像品質が向上する。
【0055】
印刷ヘッド24を挟んで主走査方向に一対の紫外線照射部を備えたプリンター1は、双方向印刷させる場合、少なくとも一方の紫外線照射部の照射位置を真下以外に照射させるように光軸を主走査方向と交差する副走査方向を軸にして傾斜して配置させる。そうすることで、基準領域30に対して主走査方向に非対称の位置に配置された紫外線照射部は、UVインクが印刷媒体Pに着弾してから、その着弾したUVインクに紫外線が照射されるまでの時間を、往路と復路とで略同等にできる。そのため、プリンター1は、印刷媒体Pに着弾したUVインクの高さが図8Bの状態で略均一に揃えられ、光沢ムラの原因を抑制して、画像品質が向上する。
【0056】
印刷ヘッド24を挟んで主走査方向に一対の紫外線照射部を備えたプリンター1は、双方向印刷させる場合、少なくとも一方の紫外線照射部の照射位置を真下以外に照射させるように印刷ヘッド24の外側に光軸を傾けて配置できる。そうすることで、基準領域30に対して主走査方向に非対称の位置に配置された紫外線照射部は、UVインクが印刷媒体Pに着弾してから、その着弾したUVインクに紫外線が照射されるまでの時間を、往路と復路とで略同等にできる。そのため、印刷媒体Pに着弾したUVインクの高さが図8Bの状態で略均一に揃えられ、光沢ムラの原因を抑制して、画像品質が向上する。
【0057】
印刷ヘッド24を挟んで主走査方向に一対の紫外線照射部を備えたプリンター1は、印刷パス数が多くなるのに比例して1パス当たりの液滴の吐出数量は減る。そのため、印刷パス数が少ない場合は、紫外線照射部を副走査方向を軸として印刷ヘッド24側に傾けるように照射位置制御部50の制御を行う。この印刷パス数が少ない場合は、1パス当たりの液滴の吐出数量は増えるため、印刷媒体Pへの浸透が早く、紫外線をできるだけ早く照射してピニングを行う必要がある。
【0058】
また、印刷パス数が多い場合は、紫外線照射部を副走査方向を軸として印刷ヘッド24の外側に傾けるように照射位置制御部50の制御を行う。この印刷パス数が多い場合は、1パス当たりの液滴の吐出数量が少なく、印刷媒体Pへの浸透が遅いため、紫外線をできるだけ遅く照射したほうが図8Bの状態に近づくためである。このように印刷パス数により照射位置制御部50の制御を行うことで、紫外線照射部は、UVインクが印刷媒体Pに着弾してから、その着弾したUVインクに紫外線が照射されるまでの時間を、往路と復路とで略同等にできる。そのため、印刷媒体Pに着弾したUVインクの高さが図8Bの状態で略均一に揃えられ、光沢ムラの原因を抑制して、画像品質が向上する。
【0059】
印刷ヘッド24を挟んで主走査方向に一対の紫外線照射部を備えたプリンター1の印刷方法としては、搬送工程の前に、少なくとも一方の紫外線照射部の照射位置を真下以外に照射させるように光軸を主走査方向と交差する副走査方向を軸にして傾斜させて双方向印刷する準備工程を設ける。そうすることで、基準領域30に対して主走査方向に非対称の位置に配置された一対の紫外線照射部は、UVインクが印刷媒体Pに着弾してから、その着弾したUVインクに紫外線が照射されるまでの時間を、往路と復路とで略同等にできる第1照射部点灯工程及び第2照射部点灯工程を設ける。紫外線照射部の準備工程及び照射部点灯工程等が設けられたプリンター1は、印刷媒体Pに着弾したUVインクの高さが図8Bの状態で略均一に揃えられ、光沢ムラの原因を抑制して、画像品質が向上する。
【0060】
2.実施形態2
特に説明がない限りは、実施形態1と同じ構成とする。実施形態2のプリンター2は、実施形態1と印刷ヘッド、及び第1、第2照射部の構成が異なる。
2.1.印刷ヘッド
図10に示すように、プリンター2は、キャリッジ15に第1印刷ヘッド26及び第2印刷ヘッド27が搭載される。図11に示すように、第1印刷ヘッド26に備えるノズル列としての第1ノズル列51と第2印刷ヘッド27に備えるノズル列としての第2ノズル列52は、第1ノズル列51の位置に対して、主走査方向の位置及び副走査方向の位置が異なる位置に設けられる、いわゆるスタガ構造である。以後、第1ノズル列51が設けられる基準領域53に対して、第2ノズル列52が設けられる基準領域を第1基準領域54という。このスタガ構造に設置した印刷ヘッド26、27の第1ノズル列51及び第2ノズル列52は、第1照射部55及び第2照射部56に対して、いずれも左右非対称の位置関係にある。
尚、図10で示すように、実施形態2では、第1ノズル列51及び第2ノズル列52を、副走査方向に平行に並べた構造を説明する。また、図示しないが、第1ノズル列51及び第2ノズル列52が、副走査方向に対して傾斜して並べた構造にしてもよい。また、第1ノズル列51または、第2ノズル列52のいずれか一方が、副走査方向に対して傾斜した構造にしてもよい。
【0061】
2.2.紫外線照射部
図11に示すように、第1照射部55及び第2照射部56は、それぞれの内部を中央線CLCに沿って上流側と下流側とで照射方向を変更している。上流側と下流側に2分割された第1照射部55は上流側にLED群70と下流側にLED群71とが設けられている。LED群70とLED群71は、共にY方向に沿って並べられている。上流側と下流側に2分割された第2照射部56は上流側にLED群72と下流側にLED群73が設けられている。LED群72とLED群73は、共にY方向に沿って並べられている。
【0062】
図12は、図10をY方向に沿って下流側から見た模式図である。
図12に示すように、第1照射部55の下流側に設けたLED群71は、すべてZ方向の下方に沿って紫外線が照射される。LED群71の下方には、照射位置制御部10RNが設けられている。照射位置制御部10RNは、LED群71の発する紫外線を第2照射位置である主走査方向に2等分する中心を通る線5nとなる照射位置へ変更させる。照射位置制御部10RNは、例えば、LED群71の下方に対向してフレネルレンズ群81を設け、そのフレネルレンズ群81の下方に対向して片側プリズム群91を備える。LED群71の光は、フレネルレンズ群81を介して片側プリズム群91の光を印刷ヘッド27側にある主走査方向に2等分する中心を通る線5nとなる照射位置へ変更させる。
【0063】
また、図12に示していない第1照射部の上流側に設けたLED群70は、すべてZ方向の下方に沿って紫外線が照射される。LED群70の下方には、図示しない照射位置制御部10ROが設けられている。照射位置制御部10ROは、LED群70の発する紫外線を主走査方向に2等分する中心線5fとなる照射位置へ変更させる。照射位置制御部10ROは、例えば、LED群70の下方に対向してフレネルレンズ群80を設け、そのフレネルレンズ群80の下方に対向して片側プリズム群90を備える。LED群70の光は、フレネルレンズ群80を介して片側プリズム群90の光を印刷ヘッド24とは反対側の照射位置の中心を通る線5fに光軸を変更させる。ただ違うのは、上流側の照射位置制御部10ROは、下流側の片側プリズム群90を180°回転させたものが上流の片側プリズム群90として備えらえれている。そのため、下流側の照射位置制御部10RNと上流側の照射位置制御部10ROとは、第1照射部55の真下照射位置43に対して左右対称の位置である、それぞれ線5nと線5fとに光軸が変更される。
【0064】
図12に示すように、第2照射部56は下流側に設けたLED群73は、すべてZ軸の下方に沿って紫外線が照射される。LED群73の下方には、照射位置制御部10LOが設けられている。照射位置制御部10LOは、LED群73から発する紫外線を第2照射位置である主走査方向に2等分する中心を通る線6fとなる照射位置へ変更させる。照射位置制御部10LOは、例えば、LED群73の下方に対向してフレネルレンズ群83を設け、そのフレネルレンズ群83の下方に対向して片側プリズム群93を備える。LED群73の光は、フレネルレンズ群83を介して片側プリズム群93の光を印刷ヘッド26の外側の第2照射位置である主走査方向に2等分する中心を通る線6fとなる照射位置へ変更させる。
【0065】
また、図12に示していない第2照射部56の上流側に設けたLED群72は、すべてZ方向の下方に沿って紫外線が照射される。LED群72の下方には、図示しない照射位置制御部10LNが設けられている。照射位置制御部10LNは、LED群72から発せられる紫外線を真下照射位置44とは異なる照射位置の中心を通る線6nに変更可能にさせる。照射位置制御部10LNは、例えば、LED群72の下方に対向してフレネルレンズ群82を設け、そのフレネルレンズ群82の下方に対向して片側プリズム群92を備えられる。LED群72の光は、フレネルレンズ群82を介して片側プリズム群92の光を印刷ヘッド24側の照射位置の中心を通る線6nに光軸を変更させる。ただ違うのは、上流側の照射位置制御部10LNは、下流側の片側プリズム群92を180°回転させたものが上流の片側プリズム群92として備えられている。そのため、下流側の照射位置制御部10LOと上流側の照射位置制御部10LNとは、第2照射部56の真下照射位置44に対して左右対称の位置である、それぞれ線6nと線6fとに光軸が変更される。
【0066】
尚、実施形態2の照射位置制御部として、フレネルレンズ群と片側プリズム群を用いたが、平面レンズの一例として片側プリズムのみ用いてもよい。また、片側プリズムとは異なる角度に光軸を変更する片側プリズムや、他の形状をした平面レンズや、これらに集光レンズを組み合わせたレンズ群を構成して光軸を変更してもよい。
【0067】
2.3.プリンターの印刷方法
プリンター2は、図6で示したプリンター1のステップS001がない。第1照射部55及び第2照射部56の照射位置を予め後述する式により求められた値で設定されているからである。
なお、プリンター1のステップS001を組み入れて、第1照射部55及び第2照射部56のそれぞれの上流及び下流を照射位置変更機構により自動で照射位置を設定できるようにしてもよい。
【0068】
プリンター2は、光沢ムラを抑制するためにUVインクが印刷媒体Pに着弾してからキャリッジ15の進行方向の後方の紫外線照射部に照射されるまでの時間を往路と復路とを略同等にする。そして、図11で示すように、第2ノズル列52は、第1ノズル列51の位置に対して、主走査方向における位置及び副走査方向における位置が異なる位置に設けられるプリンター2は、
第2ノズル列52が設けられる第1基準領域54の主走査方向に2等分する中心を通る線CL1と実際の第1照射部55の照射位置の中心を通る線5n、5fとの間の距離を第5距離W5n、W5f、
第1基準領域54の主走査方向に2等分する中心を通る線CL1と実際の第2照射部56の照射位置の中心を通る線6n、6fとの間の距離を第6距離W6n、W6f、
第1基準領域54の主走査方向に2等分する中心を通る線CL1と第1照射部55の真下照射位置43との間の距離を第7距離W7、
第1基準領域54の主走査方向に2等分する中心を通る線CL1と第2照射部56の真下照射位置44との間の距離を第8距離W8、とした場合に、
プリンター2のノズル列、第1照射部55及び第2照射部56は、第7距離W7と第8距離W8とが異なるように設けられるならば、
プリンター2の第1照射部55及び第2照射部56は、
|第5距離W5f―第6距離W6f|<|第7距離W7―第8距離W8| かつ
|第5距離W5n―第6距離W6n|<|第7距離W7―第8距離W8|
の関係を満たすように照射される。
【0069】
例えば、図12に示すように、照射位置制御部10RN、10LO及び図示しない上流側の照射位置制御部10RO、10LNは、第1照射部55及び第2照射部56の真下照射位置43、44から異なる照射位置5n、6f及び図示しない照射位置5f、6nをZ方向に平行な下方からそれぞれ主走査方向へ光軸を略±20°傾斜させる。
上述の式を満たす関係にある、プリンター2は、スタガ構造の印刷ヘッド26、27から吐出されたUVインクが印刷媒体Pに着弾してから、第1照射部55及び第2照射部56により、その着弾されたUVインクに紫外線照射されるまでの時間を往路と復路とで略同等にできる。
また、上述の式を満たす関係にあるならば、適宜任意に、第1照射部55及び第2照射部56は、印刷媒体Pとの間の距離、照射光の強度の増減、を制御させることができる。
【0070】
以上述べたように、実施形態2としてのプリンター2によれば以下の効果を得ることができる。
印刷ヘッド26、27を挟んで主走査方向に一対の紫外線照射部を備えたプリンター2は、第1ノズル列51の位置に対して、第2ノズル列52の位置が主走査方向及び副走査方向ともに異なって配置されるスタガ構造で構成されている。そして、双方向印刷させる場合に、プリンター2は、紫外線照射部の照射位置を真下以外に照射させる照射位置制御部10RO、10RN、10LN、10LOを設けている。例えば、第1照射部55及び第2照射部56は、内部を中央線CLCに沿って上流側と下流側とで紫外線の照射方向をそれぞれ変更させることができる。そうすることで、第1照射部55及び第2照射部56は、スタガ構造で構成される第1ノズル列51及び第2ノズル列52から吐出されるUVインクが印刷媒体Pに着弾してから、その着弾したUVインクに紫外線が照射されるまでの時間を往路と復路とで略同等にできる。そのため、プリンター2は、印刷媒体Pに着弾したUVインクの高さが図8Bの状態で略均一に揃えられ、光沢ムラの原因を抑制して、画像品質が向上する。
【符号の説明】
【0071】
1,2…印刷装置としてのプリンター、10RO,10RN,10LN,10LO,50…照射位置制御部、23…ノズル列、28…主走査部、30…基準領域、41,55…第1照射部、42,56…第2照射部、43,44…真下照射位、51…第1ノズル列、52…第2ノズル列、53…第1ノズル列設けられる基準領域、54…第1基準領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12