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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/68 20160101AFI20240709BHJP
   H02P 29/64 20160101ALI20240709BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20240709BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20240709BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20240709BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20240709BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20240709BHJP
   B62D 107/00 20060101ALN20240709BHJP
【FI】
H02P29/68
H02P29/64
B62D6/00
B62D5/04
B62D101:00
B62D119:00
B62D113:00
B62D107:00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020120653
(22)【出願日】2020-07-14
(65)【公開番号】P2022024275
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 健宏
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-012662(JP,A)
【文献】国際公開第2018/008633(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/68
H02P 29/64
B62D 6/00
B62D 5/04
B62D 101/00
B62D 119/00
B62D 113/00
B62D 107/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの作動を制御するための制御信号を出力する処理回路と、前記制御信号に基づいて前記モータに駆動電力を供給する駆動回路とを備えたモータ制御装置であって、
前記モータのコイル群に印加する駆動電圧よりも低く設定される制御電圧に基づいて作動する制御関連部品を備え、
前記処理回路は、
前記コイル群に供給する電流の目標値である電流指令値を演算する電流指令値演算処理と、
前記コイル群への通電に伴って電流が流れる保護対象の推定温度を演算する推定温度演算処理と、
前記推定温度に基づいて前記電流指令値の上限値である電流制限値を演算する電流制限値演算処理と、
前記電流指令値を前記電流制限値で制限した値に基づいて前記制御信号を演算する制御信号演算処理と、を実行し、
前記処理回路は、前記推定温度演算処理において、
温度センサにより検出される前記保護対象の基準温度と、
前記コイル群への通電に起因する前記保護対象の自己温度変化量と、
前記制御関連部品から伝わる熱に起因する前記温度センサの伝熱温度変化量及び前記制御関連部品から伝わる熱に起因する前記保護対象の伝熱温度変化量の少なくとも一方と、に基づいて前記推定温度を演算し、
前記推定温度演算処理は、
前記温度センサの伝熱温度変化量と前記保護対象の伝熱温度変化量との差分である差分温度変化量を演算する処理と、
前記基準温度と前記自己温度変化量との和から前記差分温度変化量を減算することにより得られる値を前記推定温度として演算する処理と、を含むモータ制御装置。
【請求項2】
請求項に記載のモータ制御装置において、
前記差分温度変化量は、前記制御関連部品への前記制御電圧の印加が開始されてからの経過時間に基づいて変化するように演算されるモータ制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のモータ制御装置において、
前記制御関連部品は、前記処理回路であり、
前記温度センサは、前記処理回路が実装される回路基板の基板温度を前記基準温度として検出するモータ制御装置。
【請求項4】
請求項に記載のモータ制御装置において、
前記駆動回路及び前記温度センサを含む他の構成部品は、前記処理回路と同一の前記回路基板に実装されるモータ制御装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載のモータ制御装置において、
前記モータは、操舵装置にモータトルクを付与するものであるモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載されるように、電動パワーステアリング装置の駆動源として用いられるモータを制御するモータ制御装置がある。同文献のモータ制御装置では、過熱保護の対象である保護対象の温度を推定し、推定された温度に基づいてモータに供給する電流の上限値を制限する。保護対象の温度は、回路基板の基板温度と保護対象を流れる電流とに基づいて推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-17898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、モータ制御装置においては、保護対象の温度をより正確に推定することが要求されるようになっている。そのため、上記のような構成を採用しても、要求される水準に達しているとは言い切れないのが実情である。そこで、保護対象の温度を正確に推定することのできる新たな技術の創出が求められていた。
【0005】
本発明の目的は、保護対象の温度を正確に推定できるモータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するモータ制御装置は、モータの作動を制御するための制御信号を出力する処理回路と、前記制御信号に基づいて前記モータに駆動電力を供給する駆動回路とを備えたものであって、前記モータのコイル群に印加する駆動電圧よりも低く設定される制御電圧に基づいて作動する制御関連部品を備え、前記処理回路は、前記コイル群に供給する電流の目標値である電流指令値を演算する電流指令値演算処理と、前記コイル群への通電に伴って電流が流れる保護対象の推定温度を演算する推定温度演算処理と、前記推定温度に基づいて前記電流指令値の上限値である電流制限値を演算する電流制限値演算処理と、前記電流指令値を前記電流制限値で制限した値に基づいて前記制御信号を演算する制御信号演算処理と、を実行し、前記処理回路は、前記推定温度演算処理において、温度センサにより検出される前記保護対象の基準温度と、前記コイル群への通電に起因する前記保護対象の自己温度変化量と、前記制御関連部品から伝わる熱に起因する前記温度センサの伝熱温度変化量及び前記制御関連部品から伝わる熱に起因する前記保護対象の伝熱温度変化量の少なくとも一方と、に基づいて前記推定温度を演算する。
【0007】
制御関連部品は、駆動電圧とは異なる制御電圧に基づいて作動するため、コイル群への非通電時にも作動する。そのため、コイル群への通電が行われず、保護対象が自身を流れる電流によって発熱しない場合にも、制御関連部品は発熱する。そして、制御関連部品の発熱による温度上昇は、温度センサ及び保護対象の温度に影響を与える。この点を踏まえ、上記構成では、基準温度と、コイル群への通電に伴う保護対象の自己温度変化量とに加え、制御関連部品から伝わる熱に起因する伝熱温度変化量を考慮して保護対象の推定温度を演算する。これにより、保護対象の温度を正確に推定できる。
【0008】
上記モータ制御装置において、前記推定温度演算処理は、前記温度センサの伝熱温度変化量から前記保護対象の伝熱温度変化量を減算することにより得られる値を差分温度変化量として演算する処理と、前記基準温度と前記自己温度変化量との和から前記差分温度変化量を減算することにより得られる値を前記推定温度として演算する処理と、を含むことが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、温度センサの伝熱温度変化量と保護対象の伝熱温度変化量とを個別に演算する場合に比べ、保護対象の推定温度の演算が容易になる。
上記モータ制御装置において、前記伝熱温度変化量は、前記制御関連部品への前記制御電圧の印加が開始されてからの経過時間に基づいて変化するように演算されることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、制御関連部品への制御電圧の印加が開始されてから徐々に該制御関連部品の温度が上昇することを踏まえ、適切な伝熱温度変化量を用いて保護対象の温度を正確に推定できる。
【0011】
上記モータ制御装置において、前記制御関連部品は、前記処理回路であり、前記温度センサは、前記処理回路が実装される回路基板の基板温度を前記基準温度として検出することが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、制御関連部品である処理回路が実装される回路基板の基板温度を保護対象の基準温度とするため、保護対象の基準温度が処理回路から伝わる熱の影響によって変化しやすい。したがって、基準温度と自己温度変化量とに加え、温度センサの伝熱温度変化量及び保護対象の伝熱温度変化量の少なくとも一方を考慮して保護対象の推定温度を演算する効果は大である。
【0013】
上記モータ制御装置において、前記駆動回路及び前記温度センサを含む他の構成部品は、前記処理回路と同一の前記回路基板に実装されることが好ましい。
上記構成によれば、モータ制御装置の構成部品が1枚の回路基板に実装されるため、これら構成部品を複数の回路基板に分けて実装する場合に比べて、装置の小型化を図ることができる。一方、温度センサ及び保護対象が処理回路に近接して配置されやすくなる。そのため、保護対象の推定温度が処理回路から伝わる熱の影響によって変化しやすい。したがって、基準温度と自己温度変化量とに加え、温度センサの伝熱温度変化量及び保護対象の伝熱温度変化量の少なくとも一方を考慮して保護対象の推定温度を演算する効果は大である。
【0014】
上記モータ制御装置において、前記モータは、操舵装置にモータトルクを付与するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、保護対象の温度を正確に推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】電動パワーステアリング装置の概略構成図。
図2】操舵制御装置及びモータのブロック図。
図3】操舵制御装置の機械的構成を示す平面図。
図4】マイクロコンピュータのブロック図。
図5】電源電圧と電流制限値との関係を示すグラフ。
図6】推定温度と電流制限値との関係を示すグラフ。
図7】電流及び自己温度変化量の時間変化を示すグラフ。
図8】温度センサの伝熱温度変化量及びコイル群の伝熱温度変化量と、マイクロコンピュータへの制御電圧の印加が開始されてからの経過時間との関係を示すグラフ。
図9】差分温度変化量と、マイクロコンピュータへの制御電圧の印加が開始されてからの経過時間との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、モータ制御装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、モータ制御装置である操舵制御装置1の制御対象となる操舵装置2は、電動パワーステアリング装置(EPS)として構成されている。操舵装置2は、運転者によるステアリングホイール3の操作に基づいて転舵輪4を転舵させる操舵機構5を備えている。また、操舵装置2は、操舵機構5にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与するEPSアクチュエータ6を備えている。
【0018】
操舵機構5は、ステアリングホイール3が固定されるステアリングシャフト11と、ステアリングシャフト11に連結されたラック軸12と、ラック軸12が往復動可能に挿通されるラックハウジング13とを備えている。また、操舵機構5は、ステアリングシャフト11の回転をラック軸12の往復動に変換するラックアンドピニオン機構14を備えている。なお、ステアリングシャフト11は、ステアリングホイール3が位置する側から順にコラム軸15、中間軸16及びピニオン軸17を連結することにより構成されている。
【0019】
ラック軸12とピニオン軸17とは、ラックハウジング13内に所定の交差角をもって配置されている。ラックアンドピニオン機構14は、ラック軸12に形成されたラック歯12aとピニオン軸17に形成されたピニオン歯17aとが噛合されることにより構成されている。また、ラック軸12の両端には、その軸端部に設けられたボールジョイント18を介してタイロッド19がそれぞれ回動自在に連結されている。タイロッド19の先端は、転舵輪4が組付けられた図示しないナックルに連結されている。したがって、操舵装置2では、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト11の回転がラックアンドピニオン機構14によりラック軸12の軸方向移動に変換され、この軸方向移動がタイロッド19を介してナックルに伝達されることにより、転舵輪4の転舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。
【0020】
EPSアクチュエータ6は、駆動源であるモータ21と、モータ21の回転を伝達する伝達機構22と、伝達機構22を介して伝達された回転をラック軸12の往復動に変換する変換機構23とを備えている。そして、EPSアクチュエータ6は、モータ21の回転を伝達機構22を介して変換機構23に伝達し、変換機構23にてラック軸12の往復動に変換することで操舵機構5にアシスト力を付与する。なお、本実施形態のモータ21には、例えば三相の表面磁石同期モータが採用され、伝達機構22には、例えばベルト機構が採用され、変換機構23には、例えばボールネジ機構が採用されている。
【0021】
次に、本実施形態の電気的構成について説明する。
操舵制御装置1は、モータ21を操作する。操舵制御装置1は、図示しない中央処理装置(CPU)やメモリを備えている。操舵制御装置1による各種制御は、所定の演算周期ごとにメモリに記憶されたプログラムをCPUが実行することによって実行される。
【0022】
操舵制御装置1には、イグニッションスイッチ等の車両の起動スイッチ31のオンオフを示す起動信号Sigが入力される。また、操舵制御装置1には、各種のセンサにより検出される状態量が入力される。操舵制御装置1は、これらの状態量に基づいてモータ21を制御する。各種のセンサには、例えば車速センサ32、トルクセンサ33、及び回転角センサ34が含まれる。車速センサ32は車速SPDを検出する。トルクセンサ33は、操舵機構5に入力される操舵トルクThを検出する。トルクセンサ33は、ピニオン軸17に配置されている。回転角センサ34は、モータ21の回転角θmを360°の範囲内の相対角で検出する。
【0023】
そして、操舵制御装置1は、これら各センサから入力される各状態量に基づいて、モータ21に駆動電力を供給することにより、EPSアクチュエータ6の作動、すなわち操舵機構5にラック軸12を往復動させるべく付与するトルクを制御する。
【0024】
次に、モータ21の構成について説明する。
図2に示すように、モータ21は、ロータ41と、図示しないステータに巻回されたコイル群42とを備えている。コイル群42は、U、V、Wの三相のコイルを有している。コイル群42は、接続線43を介して操舵制御装置1に接続されている。なお、図2では、説明の便宜上、各相の接続線43を1つにまとめて図示している。
【0025】
次に、操舵制御装置1の構成について説明する。
操舵制御装置1は、モータ21の作動を制御するための制御信号Scを出力するマイクロコンピュータ51と、制御信号Scに基づいてモータに駆動電力を供給する駆動回路52とを備えている。本実施形態では、マイクロコンピュータ51が処理回路及び制御関連部品に相当する。
【0026】
駆動回路52は、電源線53を介して車載電源Bに接続されている。車載電源Bには、例えば定格電圧が12Vのものが用いられている。電源線53には、車載電源Bに接続される上流側から順に電源リレー54と、駆動リレー55と、電流の平滑化を目的とした平滑コンデンサ56とが設けられている。電源リレー54は、起動スイッチ31からの起動信号Sigに応じてオンオフする。駆動リレー55は、マイクロコンピュータ51から出力されるリレー信号Srlに応じてオンオフする。そして、駆動回路52は、電源リレー54及び駆動リレー55がオン状態となることで、車載電源Bの電源電圧Vbを駆動電圧としてコイル群42に印加することが可能となる。
【0027】
マイクロコンピュータ51は、電源線53における電源リレー54と駆動リレー55との間の分岐点Pから分岐した分岐線57を介して車載電源Bに接続されている。分岐線57には、レギュレータ回路58が設けられている。レギュレータ回路58は、車載電源Bの電源電圧Vbに基づいてマイクロコンピュータ51に供給する一定の制御電圧を生成する。制御電圧は、駆動電圧である電源電圧Vbよりも低い値、例えば5Vに設定される。そして、マイクロコンピュータ51は、電源リレー54がオン状態となることで、レギュレータ回路58から一定の制御電圧が供給されることにより作動する。
【0028】
図2及び図3に示すように、駆動回路52には、例えばFET等の複数のスイッチング素子52a~52fを有する周知のPWMインバータが採用されている。制御信号Scは、各スイッチング素子52a~52fのオンオフ状態を規定するゲートオンオフ信号である。そして、駆動回路52は、制御信号Scに応じてスイッチング素子52a~52fをオンオフさせることにより、車載電源Bから供給される直流電力を三相交流電力に変換し、接続線43を介してコイル群42に供給する。これにより、操舵制御装置1は、コイル群42への駆動電力の供給を通じてコイル群42で発生するトルクを制御する。
【0029】
マイクロコンピュータ51には、電流センサ61、電圧センサ62及び温度センサ63が接続されている。電流センサ61は、接続線43を流れる各相の実電流値Imを検出する。電流センサ61には、例えばシャント抵抗の電圧降下に基づいて実電流値Imを検出するものを採用できる。電圧センサ62は、電源線53の電圧、すなわち車載電源Bの電源電圧Vbを検出する。温度センサ63は、マイクロコンピュータ51が実装される回路基板64の基板温度Tebを検出する。
【0030】
ここで、操舵制御装置1の機械的な構成について説明する。
図3に示すように、本実施形態の操舵制御装置1は、該操舵制御装置1を構成する各種部品が一枚の回路基板64に実装されている。なお、説明の便宜上、同図では、マイクロコンピュータ51、駆動回路52を構成する複数のスイッチング素子52a~52f、平滑コンデンサ56及び温度センサ63のみを図示し、他の回路部品を省略している。
【0031】
マイクロコンピュータ51は、回路基板64における上側寄りに配置されている。各スイッチング素子52a~52fは、回路基板64における下側寄りに配置されている。平滑コンデンサ56は、回路基板64における中央付近に配置されている。温度センサ63は、マイクロコンピュータ51に対して各スイッチング素子52a~52fが配置される側と反対側に配置されている。温度センサ63は、各スイッチング素子52a~52f及び平滑コンデンサ56よりもマイクロコンピュータ51に近接して配置されている。なお、コイル群42は、各スイッチング素子52a~52fよりも温度センサ63から離間した位置に配置されている。したがって、本実施形態では、温度センサ63、平滑コンデンサ56、各スイッチング素子52a~52f、コイル群42の順で、マイクロコンピュータ51から遠ざかるように配置されている。
【0032】
次に、マイクロコンピュータ51の構成について説明する。マイクロコンピュータ51は、所定の演算周期ごとに以下の各制御ブロックに示される各演算処理を実行することにより、制御信号Scを演算する。
【0033】
図2に示すように、マイクロコンピュータ51には、起動信号Sig、車速SPD、操舵トルクTh、回転角θm、実電流値Im、電源電圧Vb、及び基板温度Tebが入力される。そして、マイクロコンピュータ51は、これらの状態量に基づいて制御信号Sc及びリレー信号Srlを出力する。
【0034】
詳しくは、図4に示すように、マイクロコンピュータ51は、制御信号Scを出力するモータ制御部71と、リレー信号Srlを出力するリレー制御部72とを備えている。
リレー制御部72には、起動信号Sigが入力される。リレー制御部72は、起動信号Sigが起動スイッチ31のオン状態を示す場合には、駆動リレー55をオン状態とするリレー信号Srlを出力する。一方、起動信号Sigが起動スイッチ31のオフ状態を示す場合には、駆動リレー55をオフ状態とするリレー信号Srlを出力する。
【0035】
モータ制御部71は、電流指令値Im*を演算する電流指令値演算部81と、制御信号Scを演算する制御信号演算部82とを備えている。電流指令値演算部81が電流指令値演算処理を実行し、制御信号演算部82が制御信号演算処理を実行する。また、マイクロコンピュータ51は、保護対象であるコイル群42、駆動回路52及び平滑コンデンサ56の推定温度Te_l,Te_c,Te_fを演算する推定温度演算部83と、電流指令値Im*の上限値である電流制限値Ilimを演算する電流制限値演算部84とを備えている。推定温度演算部83が推定温度演算処理を実行し、電流制限値演算部84が電流制限値演算処理を実行する。
【0036】
電流制限値演算部84には、電源電圧Vb及び推定温度演算部83において後述するように演算される推定温度Te_l,Te_c,Te_fが入力される。電流制限値演算部84は、電源電圧Vbに基づく電流制限値Ilim_v、推定温度Te_lに基づく電流制限値Ilim_l、推定温度Te_cに基づく電流制限値Ilim_c、及び推定温度Te_fに基づく電流制限値Ilim_fを演算する。そして、電流制限値Ilim_v,Ilim_l,Ilim_c,Ilim_fのうち、最も小さな値を電流制限値Ilimとして演算する。
【0037】
具体的には、電流制限値演算部84は、電源電圧Vbと電流制限値Ilim_vとの関係を定めたマップを備えている。電流制限値演算部84は、このマップを参照することにより電源電圧Vbに応じた電流制限値Ilim_vを演算する。
【0038】
図5に示すように、このマップは、電源電圧Vbが第1電圧閾値Vth1よりも大きい場合には、電流制限値Ilim_vが定格電流Irと等しい値で一定となる。つまり、電流制限値Ilim_vは、コイル群42に供給する電流を制限しない値となる。電源電圧Vbが第1電圧閾値Vth1以下である場合、電流制限値Ilim_vは、電源電圧Vbの低下に基づいて小さくなる。そして、電源電圧Vbの値が第2電圧閾値Vth2以下である場合には、コイル群42に供給する電流がゼロに制限される。
【0039】
また、電流制限値演算部84は、推定温度Te_lと電流制限値Ilim_lとの関係を定めたマップを備えている。電流制限値演算部84は、このマップを参照することにより推定温度Te_lに応じた電流制限値Ilim_lを演算する。
【0040】
図6に示すように、このマップは、推定温度Te_lが第1温度閾値Teth1_l以下の場合には、電流制限値Ilim_lが定格電流Irと等しい値で一定となる。つまり、電流制限値Ilim_lは、コイル群42に供給する電流を制限しない値となる。推定温度Te_lが第1温度閾値Teth1_lよりも大きい場合には、電流制限値Ilim_lは、推定温度Te_lの増大に基づいて小さくなる。そして、推定温度Te_lの値が第2温度閾値Teth2_l以上である場合には、コイル群42に供給する電流が最低電流値Iminに制限される。最低電流値Iminは、コイル群42に供給しても、操舵制御装置1及びモータ21の温度が上昇しないような値に設定されている。
【0041】
電流制限値演算部84は、推定温度Te_cと電流制限値Ilim_cとの関係を定めたマップ、及び推定温度Te_fと電流制限値Ilim_fとの関係を定めたマップを備えている。これらのマップは、図6に示すマップと同様の傾向をそれぞれ有するため、その説明を省略する。電流制限値演算部84は、こうしたマップを参照することにより推定温度Te_cに応じた電流制限値Ilim_c、及び推定温度Te_fに応じた電流制限値Ilim_fを演算する。
【0042】
そして、図4に示すように、電流制限値演算部84は、電流制限値Ilim_v,Ilim_l,Ilim_c,Ilim_fのうち、最も小さな値を電流制限値Ilimとして演算する。このように演算された電流制限値Ilimは、電流指令値演算部81に出力される。
【0043】
電流指令値演算部81には、操舵トルクTh、車速SPD及び電流制限値Ilimが入力される。電流指令値演算部81は、これらの状態量に基づいて電流指令値Im*を演算する。電流指令値Im*は、モータ21で発生すべきトルクに応じた電流を示す。
【0044】
具体的には、電流指令値演算部81は、操舵トルクThの絶対値が大きくなるほど、また車速SPDが低くなるほど、より大きな絶対値を有する仮電流指令値Im*_tを演算する。電流指令値演算部81は、仮電流指令値Im*_tが電流制限値Ilim以下である場合には、この値をそのまま電流指令値Im*として演算する。一方、電流指令値演算部81は、仮電流指令値Im*_tの値が電流制限値Ilimよりも大きい場合には、電流制限値Ilimを電流指令値Im*として演算する。このように演算された電流指令値Im*は、制御信号演算部82に出力される。
【0045】
制御信号演算部82には、電流指令値Im*、実電流値Im及び回転角θmが入力される。制御信号演算部82は、実電流値Imを電流指令値Im*に追従させるべく、実電流値Im、電流指令値Im*及び回転角θmに基づいてベクトル制御を実行することにより、制御信号Scを演算する。そして、このように演算された制御信号Scが駆動回路52に出力されることにより、コイル群42に制御信号Scに応じた駆動電力が供給される。これにより、コイル群42で電流指令値Im*に示されるトルクが発生する。
【0046】
なお、電流指令値Im*は、d軸電流指令値Id*とq軸電流指令値Iq*とからなるベクトル指令値であり、実電流値Imはd軸電流値Idとq軸電流値Iqとからなるベクトル値である。通常時には、d軸電流指令値Id*にはゼロが代入され、q軸電流指令値Iq*には電流指令値Im*が代入される。なお、3相モータのベクトル制御は周知技術であるため、詳細な説明は省略するが、実電流値Imと、d軸電流値Id及びq軸電流値Iqとの間には、下記(1)式の関係が成立する。
【0047】
【数1】
次に、推定温度演算部83による推定温度Te_l,Te_c,Te_fの演算について説明する。推定温度演算部83には、実電流値Im、基板温度Teb及び起動信号Sigが入力される。推定温度演算部83は、これらの状態量に基づいて推定温度Te_l,Te_c,Te_fを演算する。推定温度Te_l,Te_c,Te_fの演算方法は基本的に同様であるため、コイル群42の推定温度Te_lの演算を例に挙げて説明する。
【0048】
コイル群42の温度は、大まかには、温度センサ63により検出されるコイル群42の基準温度を、コイル群42への通電に起因する温度変化に応じて増減させることで推定される。本実施形態のコイル群42の基準温度は、温度センサ63により検出される回路基板64の基板温度Tebである。
【0049】
すなわち、モータ21の駆動時において、コイル群42の温度は、コイル群42に電流が流れて発熱することで上昇する。こうしたコイル群42への通電に起因する自己温度変化量ΔTes_lは、例えば図7に示すようにコイル群42に流れる実電流値Imが時刻t1においてステップ状に増加した場合、コイル群42での発熱に伴って1次遅れの傾向で増加する。また、コイル群42の自己温度変化量ΔTes_lは、コイル群42に流れる実電流値Imが時刻t2においてゼロに減少した場合、コイル群42からの放熱に伴って1次遅れの傾向で減少する。なお、同図において、実電流値Imを細線で示し、自己温度変化量ΔTes_lを太線で示す。
【0050】
こうした特性を反映させるため、推定温度演算部83は、1次遅れフィルタを含む下記(2)式を用いて現在の演算周期における自己温度変化量ΔTes_lを演算する。なお、各状態量の参照符号に付加された下付き文字は、各状態量の演算周期を示し、基準となる現在の演算周期を「k」としている。
【0051】
【数2】
ただし、「Ks_l」はコイル群42に応じて設定されるゲインを示し、「τs_l」はコイル群42に応じて設定される遅れフィルタの時定数を示し、「t」は演算周期の時間間隔を示す。なお、ゲインKs_l及び時定数τs_lは、コイル群42への通電を行った状態で、コイル群42の温度を測定した実験結果等に基づいて予め設定されている。
【0052】
ところで、マイクロコンピュータ51は、コイル群42に駆動電力を供給するための駆動電圧とは異なり、レギュレータ回路58から供給される制御電圧に基づいて作動する。つまり、マイクロコンピュータ51は、コイル群42への非通電時にも作動する。そのため、コイル群42への通電が行われず、コイル群42が自身を流れる電流によって発熱しない場合にも、マイクロコンピュータ51は発熱する。そして、マイクロコンピュータ51の発熱による温度上昇は、温度センサ63により検出される基板温度Teb、及びコイル群42の温度に影響を与える。つまり、基板温度Teb及びコイル群42の温度は、モータ21の非駆動時にも上昇する。そして、上記のように温度センサ63は、コイル群42よりもマイクロコンピュータ51に近接して配置されているため、温度センサ63により検出される基板温度Tebの変化量は、コイル群42の温度の変化量よりも大きくなる。
【0053】
この点を踏まえ、推定温度演算部83は、基板温度Tebと、コイル群42への通電に起因するコイル群42の自己温度変化量ΔTes_lとに加え、マイクロコンピュータ51からの放熱を考慮してコイル群42の推定温度Te_lを演算する。
【0054】
詳しくは、推定温度演算部83は、マイクロコンピュータ51から伝わる熱に起因する温度センサ63の伝熱温度変化量ΔTep_sと、マイクロコンピュータ51から伝わる熱に起因するコイル群42の伝熱温度変化量ΔTep_lとの差分である差分温度変化量ΔTed_lを演算する。そして、推定温度演算部83は、下記(3)式のように、基板温度Tebと自己温度変化量ΔTes_lとの和から差分温度変化量ΔTed_lを減算した値をコイル群42の推定温度Te_lとして演算する。
【0055】
Te_l=Teb+ΔTes_l-ΔTed_l…(3)
つまり、コイル群42の推定温度Te_lは、基板温度Tebと自己温度変化量ΔTes_lとの和に対して、温度センサ63の伝熱温度変化量ΔTep_sを減算するとともにコイル群42の伝熱温度変化量ΔTep_lを加算することにより得られる値である。
【0056】
ここで、図8に示すように、温度センサ63の伝熱温度変化量ΔTep_sは、起動スイッチ31がオン状態となってからの経過時間、すなわちマイクロコンピュータ51への制御電圧の印加が開始されてからの経過時間Eに伴って、1次遅れの傾向で上昇する。同様に、コイル群42の伝熱温度変化量ΔTep_lは、マイクロコンピュータ51への制御電圧の印加が開始されてからの経過時間Eに伴って、1次遅れの傾向で上昇する。したがって、図9に示すように、伝熱温度変化量ΔTep_sから伝熱温度変化量ΔTep_lを減算することにより得られる差分温度変化量ΔTed_lは、1次遅れの傾向で上昇する。
【0057】
こうした特性を反映させるため、推定温度演算部83は、下記(4)式を用いて差分温度変化量ΔTed_lを演算する。なお、推定温度演算部83は、オン状態を示す起動信号Sigが入力されてからの時間を計測しており、当該時間を経過時間Eとする。また、推定温度演算部83は、起動信号Sigが入力されてから演算を開始する。そのため、下記(4)式において演算周期を示す「k」は、経過時間Eに応じた数値である。
【0058】
【数3】
このように(4)式に示される差分温度変化量ΔTed_lは、経過時間Eに基づいて変化するように演算される。ただし、(4)式中の係数は、「Kp_l」は回路基板64及びコイル群42に応じて設定されるゲインを示し、「τp_l」は回路基板64及びコイル群42に応じて設定される遅れフィルタの時定数を示し、「t」は演算周期の時間間隔を示す。なお、ゲインKp_l及び時定数τp_lは、マイクロコンピュータ51に制御電圧を供給しつつ、コイル群42への通電を停止した状態で、基板温度Teb及びコイル群42の温度を測定した実験結果等に基づいて予め設定されている。
【0059】
上記のように温度センサ63は、コイル群42よりもマイクロコンピュータ51に近接して配置されているため、差分温度変化量ΔTed_lは正の値となる。つまり、マイクロコンピュータ51から伝わる熱を考慮することで、考慮しない場合に比べ、コイル群42の推定温度Te_lは低くなる。
【0060】
なお、平滑コンデンサ56の推定温度Te_cの演算では、上記(2)式の適用に際して、平滑コンデンサ56に応じて設定されたゲインKs_c及び時定数τs_cが用いられる。また、平滑コンデンサ56の推定温度Te_cの演算では、上記(4)式の適用に際して、回路基板64及び平滑コンデンサ56に応じて設定されたゲインKp_c及び時定数τp_cが用いられる。
【0061】
駆動回路52の推定温度Te_fの演算では、上記(2)式の適用に際して、駆動回路52に応じて設定されたゲインKs_f及び時定数τs_fが用いられる。駆動回路52の推定温度Te_fの演算では、上記(4)式の適用に際して、回路基板64及び駆動回路52に応じて設定されたゲインKp_f及び時定数τp_fが用いられる。本実施形態では、駆動回路52の推定温度Te_fには、駆動回路52を構成するスイッチング素子のうち、最も温度が上昇しやすい位置に配置されたスイッチング素子の推定温度を採用している。
【0062】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)マイクロコンピュータ51は、基板温度Tebと、保護対象の自己温度変化量とに加え、マイクロコンピュータ51から温度センサ63及び保護対象に伝わる熱を考慮して保護対象の推定温度を演算する。これにより、保護対象の温度を正確に推定できる。
【0063】
(2)マイクロコンピュータ51は、基板温度Tebと保護対象の自己温度変化量との和から差分温度変化量を減算することにより得られる値を推定温度として演算する。そのため、温度センサ63の伝熱温度変化量ΔTep_sと保護対象の伝熱温度変化量とを個別に演算する場合に比べ、保護対象の推定温度の演算が容易になる。
【0064】
(3)差分温度変化量は、マイクロコンピュータ51への制御電圧の印加が開始されてからの経過時間Eに基づいて変化するように演算される。そのため、上記のようにマイクロコンピュータ51への制御電圧の印加が開始されてから徐々に該マイクロコンピュータ51の温度が上昇することを踏まえ、適切な差分温度変化量を用いて保護対象の温度を正確に推定できる。
【0065】
(4)温度センサ63は、マイクロコンピュータ51が実装される回路基板64の基板温度Tebを保護対象の基準温度として検出する。そのため、保護対象の基準温度がマイクロコンピュータ51から伝わる熱によって変化しやすい。したがって、温度センサ63の伝熱温度変化量ΔTep_s及び保護対象の伝熱温度変化量を考慮して保護対象の推定温度を演算する効果は大である。
【0066】
(5)操舵制御装置1を構成する各種部品を一枚の回路基板64に実装したため、各構成部品を複数の回路基板に分けて実装する場合に比べて、操舵制御装置1の小型化を図ることができる。一方、温度センサ63及び保護対象がマイクロコンピュータ51に近接して配置されやすくなる。そのため、保護対象の推定温度がマイクロコンピュータ51から伝わる熱の影響によって変化しやすい。したがって、基板温度Tebと自己温度変化量とに加え、差分温度変化量を考慮して保護対象の推定温度を演算する効果は大である。
【0067】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、操舵制御装置1の構成部品を一枚の回路基板64に実装したが、これに限らず、操舵制御装置1の構成部品を複数の回路基板に分けて実装してもよい。
【0068】
・上記実施形態では、温度センサ63を、コイル群42、駆動回路52及び平滑コンデンサ56よりもマイクロコンピュータ51に近接して配置したが、これに限らず、例えば温度センサ63を平滑コンデンサ56よりもマイクロコンピュータ51から離間させて配置してもよい。この場合、温度センサ63の伝熱温度変化量ΔTep_sと平滑コンデンサ56の伝熱温度変化量ΔTep_cとの差分である差分温度変化量ΔTed_cは、負の値となる。つまり、マイクロコンピュータ51から伝わる熱を考慮することで、考慮しない場合に比べ、推定温度Te_cは高くなる。
【0069】
・上記実施形態では、保護対象の基準温度として基板温度Tebを用いたが、これに限らず、例えば操舵制御装置1内の雰囲気温度を保護対象の基準温度として用いてもよい。
・上記実施形態では、コイル群42の推定温度Te_lを、基板温度Tebと自己温度変化量ΔTes_lとの和から差分温度変化量ΔTed_lを減算することにより得られる値としたが、これに限らない。例えば、基板温度Tebと自己温度変化量ΔTes_lとの和から温度センサ63の伝熱温度変化量ΔTep_sを減算するとともに保護対象の伝熱温度変化量を加算することにより得られる値を保護対象の推定温度としてもよい。また、例えば基板温度Tebと自己温度変化量ΔTes_lとの和から、温度センサ63の伝熱温度変化量ΔTep_sのみ又は保護対象の伝熱温度変化量のみを減算することにより得られる値を保護対象の推定温度としてもよい。こうした推定温度の演算方法の変更は、平滑コンデンサ56の推定温度Te_c及び駆動回路52の推定温度Te_fの演算についても適用可能である。
【0070】
・上記実施形態では、差分温度変化量を経過時間Eに基づいて変化するように演算したが、これに限らず、差分温度変化量を経過時間Eに関わらず一定の所定値となるように演算してもよい。
【0071】
・上記実施形態では、コイル群42、平滑コンデンサ56、及び駆動回路52を保護対象としたが、これに限らない。これらの回路素子に加えて又は代えて、例えば電流センサ61等、大電流が流れる回路素子を保護対象としてもよい。また、マイクロコンピュータ51を保護対象としてもよい。
【0072】
・上記実施形態では、マイクロコンピュータ51を制御関連部品としたが、これに限らず、例えば特定の処理を実行する専用のハードウェア回路(例えばASIC)等、コイル群42への非通電時にも作動する他の回路素子を制御関連部品としてもよい。
【0073】
・上記実施形態では、操舵装置2をEPSとして構成したが、これに限らない。例えば操舵装置2を操舵部と転舵部との間の動力伝達が分離したステアバイワイヤ式のものとして構成し、操舵制御装置1が転舵輪4を転舵させる転舵トルクを付与するモータ、あるいはステアリングホイール3に操舵反力を付与するモータの作動を制御してもよい。また、操舵装置以外の装置にモータトルクを付与するモータの作動を制御してもよい。
【0074】
・上記実施形態において、操舵制御装置1の制御対象であるモータ21は、複数のコイル群を有するものであってもよい。この場合、操舵制御装置1は、複数のコイル群の各々に対応する個別の駆動回路を含みコイル群ごとに駆動電力を供給する複数の通電系統と、複数の駆動回路の作動をそれぞれ制御する複数の制御信号を出力する少なくとも1つの処理回路とを備える。そして、複数の通電系統の各々について、本実施形態のように保護対象の推定温度を演算する。
【0075】
・上記実施形態において、操舵制御装置1としては、CPU及びメモリを備えてソフトウェア処理を実行するものに限らない。たとえば、上記実施形態において実行されるソフトウェア処理の少なくとも一部を処理する専用のハードウェア回路(たとえばASIC等)を備えてもよい。すなわち、転舵制御装置は、以下の(a)~(c)のいずれかの構成であればよい。(a)上記処理の全てを、プログラムに従って実行する処理装置と、プログラムを記憶するROM等のプログラム格納装置とを備える。(b)上記処理の一部をプログラムに従って実行する処理装置およびプログラム格納装置と、残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備える。(c)上記処理の全てを実行する専用のハードウェア回路を備える。ここで、処理装置およびプログラム格納装置を備えたソフトウェア処理回路や、専用のハードウェア回路は複数であってもよい。すなわち、上記処理は、1または複数のソフトウェア処理回路および1または複数の専用のハードウェア回路の少なくとも一方を備えた処理回路(processing circuitry)によって実行されればよい。
【符号の説明】
【0076】
1…操舵制御装置
21…モータ
42…コイル群
51…マイクロコンピュータ(処理回路)
52…駆動回路
63…温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9