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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20240709BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240709BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20240709BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20240709BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/32 Z
C08L23/06
C08L23/12
C08L23/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020121457
(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公開番号】P2022018380
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】515107720
【氏名又は名称】MCPPイノベーション合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】日比野 美智子
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-222844(JP,A)
【文献】特開2012-184392(JP,A)
【文献】特開2016-023268(JP,A)
【文献】特開2009-215427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B32B 27/32
C08L 23/06
C08L 23/12
C08L 23/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分と(B)成分を含む熱可塑性樹脂組成物であって、(A)成分と(B)成分の合計100質量%に対し、(A)成分を45~92質量%、(B)成分を8~55質量%含有する熱可塑性樹脂組成物より形成されたイージーピール性シーラント層を含む積層体を用いた易開封性包装物用蓋材と容器とを有する易開封性包装物であり、
前記容器の少なくとも表層が、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂及びメタロセンポリエチレン樹脂よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の樹脂を含む、易開封性包装物
(A)成分:メタロセン触媒を用いて合成されたポリプロピレン
(B)成分:ポリオレフィン系エラストマー
【請求項2】
下記(A)成分と(B)成分を含む熱可塑性樹脂組成物であって、(A)成分と(B)成分の合計100質量%に対し、(A)成分を45~92質量%、(B)成分を8~55質量%含有する熱可塑性樹脂組成物より形成されたイージーピール性シーラント層と保持層及び/又は基材とを積層した積層体を用いた易開封性包装物用蓋材と容器とを有する易開封性包装物であり、
前記容器の少なくとも表層が、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂及びメタロセンポリエチレン樹脂よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の樹脂を含む、易開封性包装物
(A)成分:メタロセン触媒を用いて合成されたポリプロピレン
(B)成分:ポリオレフィン系エラストマー
【請求項3】
前記(B)成分:ポリオレフィン系エラストマーが、ポリプロピレン系エラストマー及び/又はポリエチレン系エラストマーである、請求項1又は2に記載の易開封性包装物
【請求項4】
前記(A)成分:メタロセン触媒を用いて合成されたポリプロピレンの融点が、115℃以上140℃以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の易開封性包装物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易開封性包装物用蓋材のイージーピール性シーラント層に好適な熱可塑性樹脂組成物、この熱可塑性樹脂組成物を用いたイージーピール性シーラント層を含む積層体、易開封性包装物用蓋材及び易開封性包装物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種食品、飲料の包装物の包装容器として、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、熱可塑性ポリエステル等の熱可塑性樹脂が広く用いられている。このような包装物の包装手法として、包装容器に被包装物を入れ、包装容器の開口部(蓋材取付部)にシーラント層を有する蓋材を当接してヒートシールにより密封する方法が広く採用されている。このような形態の包装物は、被包装物を取り出す際に蓋材を引き剥がす必要があることから、容器から被包装物の漏洩等がないことに加えて、被包装物を取り出す際には、容器から蓋材を容易に剥離できることが必要とされる。
【0003】
容器から蓋材を容易に剥離するために蓋材に用いられるイージーピールの方式には、主として界面剥離方式と層間剥離方式と凝集剥離方式の3つの方式がある。
【0004】
界面剥離方式は、一般的に被着体である容器に対して粘接着によってシール状態を保つ方式である。この方式は、雰囲気温度によるシール性能変動が大きく、かつ容器との熱融着によるシール状態を保っていないため、衝撃を加えられた際にパンク(被包装物が漏洩)しやすい欠点がある。一方で開封時に容器に剥離痕が残らないためクリーンな開口部を提供できる利点がある。
【0005】
層間剥離方式は、シーラント層を含む積層体から構成される蓋材と容器とを熱融着し強固なシール状態を保つ方式である。
例えば、シーラント層と保持層と基材とから構成される蓋材に層間剥離方式を適用する場合、シーラント層を容器の蓋材取付位置である開口部と同種の樹脂で形成することで熱融着による強固なシール状態を可能とし、保持層をシーラント層と異種の樹脂で形成することで、シーラント層と保持層との層間で剥がれ易くなり、易開封性を付与することができる。
しかし、層間剥離方式を適用した場合、開封時にシーラントの一部が容器側に残ってしまったり、開封時の膜残りが起きたりする問題がある。
【0006】
凝集剥離方式はシーラント層を含む積層体から構成される蓋材と容器とが部分的に熱融着するようにする方式であり、剥離時にはシーラント層を構成する樹脂の界面でシーラント層自体を凝集破壊しながら剥離していく。
例えば、シーラント層と保持層と基材とから構成される蓋材に凝集剥離方式を適用する場合、シーラント層を構成する樹脂組成物は、少なくとも容器と同種の樹脂と、保持層又は基材と同種の樹脂、の2種の樹脂のポリマーブレンドで形成されている。これによりヒートシール時に、シーラント層は、部分的に容器と熱融着し、剥離時にはポリマーブレンドした樹脂の界面でシーラント層自体を凝集破壊しながら剥離していく。
【0007】
イージーピール性を有する樹脂組成物に関して、特許文献1には、ポリエチレン系樹脂(A)20重量%以上60重量%以下、ポリプロピレン系樹脂(B)30重量%以上80重量%以下、ポリスチレン成分およびポリオレフィン成分を含有するエラストマー(C)10重量%以上30重量%以下を含有する押出しラミネート用樹脂組成物とすることで、シール温度依存性が小さく、イージーピール性、封緘性に優れ、且つ蓋材のポリエチレン面に積層した場合に十分なラミネート強度が得られ、ネックインの小さなエチレン系樹脂製容器、エチレン系樹脂がラミネートされた紙製容器の蓋材に使用できることが記載されている。
この特許文献1では、ポリプロピレン系樹脂(B)として、具体的に日本ポリケム社製「ノバテックPP」シリーズのポリプロピレン系樹脂を用いているが、これらはいずれも、チーグラー・ナッタ触媒により合成されたものである。
【0008】
特許文献2には、基材層(A)、中間層(B)及びシール層(C)の積層フィルムよりなり、シール層(C)が、ポリプロピレン系樹脂(c1)55~95重量%とメルトフローレートが10~200g/10分の範囲であるポリエチレン系樹脂(c2)45~5重量%を混合した樹脂組成物からなり、ポリプロピレン系樹脂(c1)中のシングルサイト触媒を用いて合成されたポリプロピレン系樹脂の割合が30重量%以上である易開封性多層フィルムとすることで、広い温度範囲で安定してシールでき良好な易開封性を有し、更に流通時の内容物保護を満足することができることが記載されている。
【0009】
特許文献3には、少なくとも基材層とシール層とを有する共押出積層フィルムであって、前記基材層は、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン若しくは高密度ポリエチレン、又はポリプロピレンから選ばれる少なくとも1種を主成分とする樹脂組成物で構成され、前記シール層は、60~90質量%のポリプロピレンと40~10質量%の低密度ポリエチレンとからなる樹脂組成物で構成され、前記プロピレンは、20~80質量%のメタロセン触媒を用いて製造されたポリプロピレン(m-PP)と、80~20質量%のチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたポリプロピレン(z-PP)とからなるイージーピール性シーラントフィルムとすることで、180℃以上のヒートシール温度範囲においても安定した剥離強度で剥離することができ、また剥離外観が良好となることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2007-084581号公報
【文献】特開2016-055433号公報
【文献】特開2019-034549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ドリンクボトルのような直接容器に口が接触する用途においては、上記した3つのイージーピール方式のうちで、剥離時に容器の開口部に剥離痕が残らない界面剥離方式が好まれる。
また、被包装物がボイル殺菌やレトルト殺菌されるものや開封時に加熱される用途においては、以下の理由から、加熱処理の前後で剥離強度が変動しない耐熱性が求められる。
即ち、加熱処理後に剥離強度が低下すると、被包装物が漏洩するおそれがある一方で、剥離強度が上がりすぎると開封しにくくなるおそれがある。このため、加熱処理の前後で剥離強度が変動しないことが望まれる。
【0012】
しかしながら、従来において、このような要求特性をすべて満たす樹脂組成物は提供されていない。
例えば、特許文献1に記載の樹脂組成物は、チーグラー・ナッタ触媒より合成されたポリプロピレンを用いていることから低分子量成分の析出により耐熱性が不十分である。
特許文献2に記載の樹脂組成物では、シングルサイト触媒より合成されたポリプロピレンとポリエチレンとの界面強度が弱いため剥離形態が凝集剥離となり、剥離性に課題が残る。
特許文献3に記載の樹脂組成物は、チーグラー・ナッタ触媒により合成されたポリプロピレンとポリエチレンを用いていることから、耐熱性と剥離性の両立ができていない。
【0013】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、その課題は、易開封性包装物用蓋材のイージーピール性シーラント層として優れた剥離性と耐熱性を与える熱可塑性樹脂組成物、この熱可塑性樹脂組成物を用いたイージーピール性シーラント層を含む積層体、易開封性包装物用蓋材、及び易開封性包装物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、メタロセン触媒で合成されたポリプロピレンとポリオレフィン系エラストマーとを特定の割合で含む熱可塑性樹脂組成物が、優れた剥離性と耐熱性を与えることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0015】
[1] 下記(A)成分と(B)成分を含む熱可塑性樹脂組成物であって、(A)成分と(B)成分の合計100質量%に対し、(A)成分を45~92質量%、(B)成分を8~55質量%含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
(A)成分:メタロセン触媒を用いて合成されたポリプロピレン
(B)成分:ポリオレフィン系エラストマー
【0016】
[2] 前記(B)成分:ポリオレフィン系エラストマーが、ポリプロピレン系エラストマー及び/又はポリエチレン系エラストマーである、[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0017】
[3] 前記(A)成分:メタロセン触媒を用いて合成されたポリプロピレンの融点が、115℃以上140℃以下である、[1]又は[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0018】
[4] [1]~[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物より形成されたイージーピール性シーラント層を含む積層体。
【0019】
[5] [1]~[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物より形成されたイージーピール性シーラント層と保持層及び/又は基材とを積層した積層体。
【0020】
[6] [4]又は[5]に記載の積層体を用いた易開封性包装物用蓋材。
【0021】
[7] [6]に記載の易開封性包装物用蓋材と容器とを有する易開封性包装物。
【0022】
[8] 前記容器の少なくとも表層が、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂及びメタロセンポリエチレン樹脂よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の樹脂を含む、[7]に記載の易開封性包装物。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、易開封性包装物用蓋材のイージーピール性シーラント層として、剥離時に容器の開口部に剥離痕が残らない界面剥離方式であって、優れた剥離性と耐熱性を与える熱可塑性樹脂組成物、この熱可塑性樹脂組成物を用いたイージーピール性シーラント層を含む積層体、易開封性包装物用蓋材、及び易開封性包装物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
なお、以下において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
【0025】
また、本発明において、樹脂の、密度、メルトフローレート(MFR)、融点、硬度は、以下のようにして測定された値である。
【0026】
<密度>
(A)成分の密度はJIS K7112に従い、水中置換法で測定される。
(A’)成分の密度はJIS K6921-2に従い測定される。
(B)成分の密度はASTM D1505に従い測定される。
(B’)成分のうちポリエチレンの密度はJIS K7112に従い、水中置換法で測定される。スチレン系エラストマーの密度はISO 1183に従い測定される
【0027】
<MFR>
(A)成分のMFRはJIS K7210に従い、温度230℃、荷重2.16kg、10分の条件で測定される。
(A’)成分のMFRはJIS K6921-2に従い、温度230℃、荷重2.16kg、10分の条件で測定される。
(B)成分のMFRはASTM D1238に従い、温度190℃、荷重2.16kg、10分の条件で測定される。
(B’)成分のうちポリエチレンのMFRはJIS K6922-2に従い、温度190℃、荷重2.16kg、10分の条件で測定される。スチレン系エラストマーのMFRはISO 1133に従い、温度230℃、荷重2.16kg、10分の条件で測定される。
【0028】
<融点>
(A)成分、(A’)成分の融点は示差走査熱量測定(DSC)によって以下の方法で測定される融解ピーク温度である。
<DSC(示差走査熱量測定)>
融解ピーク温度は、DSC6220(Seiko Instrument Inc.社製)を用いて以下の手順で測定される。
まず、試料約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、サンプルをセットする。次に、窒素雰囲気下、40℃から10℃/分で200℃まで昇温し、200℃に到達したら3分間ホールドし、熱履歴をリセットする。次いで200℃から10℃/分で-40℃まで降温し、3分間ホールドする。その後、再び-40℃から10℃/分で200℃まで昇温し、TA7000(Seiko Instrument Inc.社製)中の解析プログラムを用いて、2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、昇温2回目の吸熱ピーク温度を解析する。
【0029】
〔熱可塑性樹脂組成物〕
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、下記(A)成分と(B)成分を含む熱可塑性樹脂組成物であって、(A)成分と(B)成分の合計100質量%に対し、(A)成分を45~92質量%、(B)成分を8~55質量%含有する。
(A)成分:メタロセン触媒を用いて合成されたポリプロピレン
(B)成分:ポリオレフィン系エラストマー
【0030】
[(A)成分]
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる(A)成分はメタロセン触媒を用いて合成されたポリプロピレンである。
メタロセン触媒は、活性点が均質であるため、メタロセン触媒を用いて合成されたポリプロピレンを用いると、熱可塑性樹脂組成物よりなるイージーピール性シーラント層を加熱処理した際の低分子量、低結晶成分の析出を抑制でき、安定した剥離強度を与えることができる。
【0031】
ポリプロピレンとは、全単量体単位に対するプロピレン単位の含有率が50質量%よりも多いポリオレフィンである。
【0032】
ポリプロピレンとしては、その種類は特に制限されず、プロピレン単独重合体、プロピレンランダム共重合体、プロピレンブロック共重合体等のプロピレン共重合体のいずれも使用することができる。
【0033】
ポリプロピレンがプロピレンランダム共重合体である場合、プロピレンと共重合する単量体としては、エチレン、1-ブテン、2-メチルプロピレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンを例示することができる。また、ポリプロピレンがプロピレンブロック共重合体である場合、多段階で重合して得られるプロピレンブロック共重合体が挙げられ、より具体的には、第一段階でポリプロピレンを重合し、第二段階でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られるプロピレンブロック共重合体が挙げられる。
【0034】
ポリプロピレンにおけるプロピレン単位の含有率は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは75質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。プロピレン単位の含有率が上記下限値以上であることにより、耐熱性が良好となる傾向にある。一方、ポリプロピレンにおけるプロピレン単位の含有率の上限については特に制限されず、通常100質量%である。なお、ポリプロピレンのプロピレン単位の含有率は、赤外分光法により求めることができる。
【0035】
(A)成分として用いることができるメタロセン触媒を用いて合成されたポリプロピレンとしては、成形性の観点からMFR(230℃、荷重2.16kg)が1.0~60g/10分のものが好ましく、2.0~40g/10分がより好ましい。
【0036】
(A)成分の融点はヒートシール性および耐熱性の観点から115~140℃が好ましく、120~135℃がより好ましい。
【0037】
(A)成分のメタロセン触媒を用いて合成されたポリプロピレンは市販品として入手することができる。市販品としては、日本ポリプロピレン社製「WELNEX(登録商標)」、「WINTEC(登録商標)」シリーズ等から該当するものを適宜選択して用いることができる。
【0038】
これら(A)成分は、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0039】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、(A)成分は主として融着性および耐熱性をもたらす成分である。本発明の熱可塑性樹脂組成物において、(A)成分の含有率を(A)成分と後述の(B)成分との合計100質量%に対して、45~92質量%とすることで、十分な剥離性(ヒートシール強度を指標とする)と耐熱性を両立できる。以上の観点から、(A)成分の含有率は、(A)成分と(B)成分との合計100質量%に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下である。
【0040】
[(B)成分]
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる(B)成分はポリオレフィン系エラストマーであり、中でもエチレン・α-オレフィン共重合体であるエチレン系エラストマーおよびプロピレン・α-オレフィン共重合体であるプロピレン系エラストマーが好ましい。
【0041】
(B)成分のポリオレフィン系エラストマーの密度は、成形加工性の観点から、0.855~0.910g/cmであることが好ましく、0.860~0.900g/cmであることがより好ましい。
【0042】
(B)成分のポリオレフィン系エラストマーのMFRは、成形加工性の観点から、0.1~60g/10分であることが好ましく、0.2~40g/10分であることがより好ましい。
【0043】
(B)成分として用いることのできるエチレン・α-オレフィン共重合体としては、エチレンと好ましくは炭素数3~20のα-オレフィンの1種又は2種以上とを共重合して得られる共重合体が挙げられる。炭素数3~20のα-オレフィンとしては、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンが挙げられる。
エチレン・α-オレフィン共重合体の市販品としては、例えば、日本ポリエチレン社製「カーネル(登録商標)」、三井化学社製「タフマー(登録商標)」のAシリーズやダウ社製「ENGAGE」シリーズが挙げられる。
【0044】
(B)成分として用いることのできるプロピレン・α-オレフィン共重合体としては、プロピレンと好ましくは炭素数2~20(3を除く)のα-オレフィンの1種又は2種以上とを共重合して得られる共重合体が挙げられる。炭素数2~20(3を除く)のα-オレフィンとしては、例えばエチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンが挙げられる。
プロピレン・α-オレフィン共重合体の市販品としては、例えば、エクソンモービル社製「Vistamaxx(登録商標)」やダウ社製「Versify」シリーズが挙げられる。
【0045】
これら(B)成分は、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0046】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、(B)成分は主として融着性をもたらす成分である。本発明の熱可塑性樹脂組成物において、(B)成分の含有率を(B)成分と前述の(A)成分との合計100質量%に対して、8~55質量%とすることで、十分な剥離強度を発現できる。以上の観点から、(B)成分の含有率は、(B)成分と前述の(A)成分との合計100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下である。
【0047】
[その他の成分]
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、上記の各成分に加え、本発明の効果を著しく損なわない範囲で各種目的に応じ他の任意の添加剤、(A)成分及び(B)成分以外の樹脂やエラストマー等各種の他の成分を配合することができる。その他の成分は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
【0048】
他の任意の添加剤としては、具体的には、プロセス油、中和剤、加工助剤、可塑剤、結晶核剤、衝撃改良剤、難燃剤、難燃助剤、架橋剤、架橋助剤、帯電防止剤、滑剤、充填材、相溶化剤、耐熱安定剤、耐候安定剤(酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等)、防曇剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、抗菌剤、カーボンブラック、着色剤(顔料、染料等)が挙げられる。
【0049】
このうち、難燃剤は、ハロゲン系難燃剤と非ハロゲン系難燃剤に大別されるが、非ハロゲン系難燃剤が好ましく、具体的には、金属水酸化物、リン系難燃剤、窒素含有化合物(メラミン系、グアニジン系)難燃剤及び無機系化合物(硼酸塩、モリブデン化合物)難燃剤が挙げられる。
【0050】
耐熱安定剤及び酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物が挙げられる。
【0051】
充填材は、有機充填材と無機充填材に大別される。有機充填材としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然由来のポリマーやこれらの変性品等が挙げられる。また、無機充填材としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維等が挙げられる。
【0052】
これらの添加剤を用いる場合、その含有量は限定されないが、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、通常0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上であり、また、通常5質量部以下、好ましくは2質量部以下であることが望ましい。
【0053】
また、その他の樹脂としては、例えば、(A)成分及び(B)成分以外のポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ロジンとその誘導体、テルペン樹脂や石油樹脂とその誘導体、アルキッド樹脂、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、合成テルペン樹脂、アルキレン樹脂、ポリアミド・ポリオール共重合体等のポリアミド系エラストマー;ポリ塩化ビニル系エラストマー、ポリブタジエン系エラストマー、スチレン系エラストマー、これらの水添物や、酸無水物等により変性して極性官能基を導入させたもの、更に他の単量体をグラフト、ランダム及び/又はブロック共重合させたものが挙げられる。
【0054】
[製造方法]
(A)成分及び(B)成分と、必要に応じて添加されるその他の成分を用いて、本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造するための方法は、溶融法、溶液法、懸濁分散法等があり、特に限定されない。実用的には溶融混練法が好ましい。
【0055】
溶融混練のための具体的な方法としては、粉状又は粒状の(A)成分及び(B)成分、並びに必要に応じて添加されるその他の成分を、所定の配合割合にて、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等を用いて均一に混合した後、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、単軸又は二軸等の多軸混練押出機等の通常の混練機を用いて混練する方法が例示できる。
【0056】
各成分の溶融混練の温度は、通常100~300℃、好ましくは120~280℃、より好ましくは150~250℃である。更に、各成分の混練順序及び方法は、特に限定されるものではなく、(A)成分及び(B)成分と必要に応じて用いられるその他の成分とを一括して混練する方法でもよく、(A)成分及び(B)成分と必要に応じて用いられるその他の成分の一部を予め混練しておき、その後残りの成分を混練する方法でもよい。
【0057】
[イージーピール性シーラント層]
本発明の熱可塑性樹脂組成物をフィルム成形することでイージーピール性シーラント層を成膜することができる。熱可塑性樹脂組成物をフィルム成形する方法としは、押出ラミネート成形、Tダイ成形、空冷インフレーション成形等の各種のフィルム成形法が使用できる。
【0058】
本発明の熱可塑性樹脂組成物により形成されたイージーピール性シーラント層の厚さは、十分なヒートシール強度を得る観点、易開封性包装物の易開封性包装物用蓋材への適用において、蓋材の厚さを適切な範囲とする観点等から、通常2~100μm、好ましくは5~30μmである。イージーピール性シーラント層はフィルムの形態であることが好ましい。
【0059】
〔積層体・易開封性包装物用蓋材・易開封性包装物〕
本発明の熱可塑性樹脂組成物により形成されたイージーピール性シーラント層は、易開封性包装物用蓋材のイージーピール性シーラント層として有用である。また、この易開封性包装物用蓋材は、本発明の熱可塑性樹脂組成物よりなるイージーピール性シーラント層を、他の材料からなる層と積層一体化して積層体とすることができる。この積層体は積層フィルム、積層シートの形態が好ましい。例えば、イージーピール性シーラント層を基材と積層一体化することにより、易開封性包装物の易開封性包装物用蓋材として好適に使用することができる。また、イージーピール性シーラント層と基材との間に保持層としてポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂層を介在させることもできる。保持層の厚さは、通常5~500μmで、10~100μmであることが好ましい。
【0060】
易開封性包装物用蓋材の基材としては、アルミ箔、紙、延伸ナイロンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂フィルムを用いることができる。ポリエステル系樹脂フィルムの具体例としては延伸ポリエステルフィルム、シリカ蒸着延伸ポリエステルフィルム、アルミ蒸着延伸ポリエステルフィルムが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂フィルムの具体例としてはポリエチレンフィルム、延伸ポリプロピレンフィルムが挙げられる。その他バリア性フィルム等、一般に軟包装材の基材として使用されるものであれば適用可能であり、被包装物や用途によって、適宜最適な基材を選定して用いることができる。
【0061】
このような基材に本発明の熱可塑性樹脂組成物よりなるイージーピール性シーラント層を積層一体化して積層体を得る方法としては、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系等の接着剤により接着する方法が挙げられる。また、基材フィルムと本発明の熱可塑性樹脂組成物よりなるイージーピール層とを共押出ラミネート成形により一体成形してもよい。
【0062】
また、イージーピール性シーラント層と基材との間に保持層を介在させた易開封性包装物用蓋材を製造するには、本発明の熱可塑性樹脂組成物をインフレーション法、Tダイ法等のフィルム成形法により製造する際に、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂よりなる保持層と積層して成形したり、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂との共押出ラミネート成形で保持層とイージーピール性シーラント層とを積層成形した後、更に基材を貼り合せる方法や、アルミ箔、紙、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等の各種熱可塑性樹脂からなる基材層にイージーピール性シーラント層と保持層を押出ラミネート成形することによってラミネートフィルムを形成することにより製造する方法が挙げられる。
【0063】
以上まとめると、イージーピール性シーラント層/保持層/基材の積層体よりなる易開封性包装物用蓋材を製造するには、
(1) 本発明の熱可塑性樹脂組成物と、保持層を形成するポリオレフィン系樹脂とをインフレーション法、Tダイ法、共押出ラミネート成形等により2層積層構造に成形した後、更に基材と貼り合わせる方法
(2) 基材層上に、保持層、イージーピール性シーラント層を共押出ラミネート成形する方法
を採用することができる。
【0064】
得られたイージーピール性シーラント層/基材、或いは、イージーピール性シーラント層/保持層/基材の積層体よりなる易開封性包装物用蓋材は、各種包装物の容器の開口部に配置し、開口部のフランジ部に沿って加熱加圧してヒートシールすることにより容器の密封に用いることができる。
【0065】
この際のヒートシール条件としては、本発明の熱可塑性樹脂組成物の主成分となる(A)成分の融解ピーク温度に応じて、(A)成分の融点ないし融点より20℃以上高い温度、例えば160~200℃程度で、圧力0.1~0.3MPa、ヒートシール時間1~10秒程度とすることが好ましい。
【0066】
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いた易開封性包装物用蓋材を適用する易開封性包装物を構成する容器の構成材料としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、これらのブレンド材等が挙げられ、これらの中でも容器は、少なくともその表層が直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、メタロセンポリエチレン樹脂、及び/又は直鎖状低密度ポリエチレン樹脂組成物、高密度ポリエチレン樹脂組成物、メタロセンポリエチレン樹脂組成物で構成されていることが好ましい。ここで、容器の表層とは、易開封性包装物用蓋材と当接されてヒートシールされる面を含む層である。
【0067】
本発明の熱可塑性樹脂組成物により形成されたイージーピール性シーラント層を有する易開封性包装物用蓋材、及びこの易開封性包装物用蓋材を有する易開封性包装物は、蓋材の易開封性が要求されるいずれの用途にも好適に用いることができるが、飲食料品用包装物において特に好適に用いることができる。
【実施例
【0068】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0069】
[原料]
以下の実施例及び比較例で用いた原料は、次の通りである。
【0070】
<(A)成分:メタロセン触媒を用いて合成されたポリプロピレン>
A-1:日本ポリプロピレン社製 「WINTEC(登録商標)WFW4M(プロピレンランダム共重合体)」
密度(JIS K7112):0.9g/cm
MFR(230℃、2.16kg(JIS K7210)):7g/10分
融点(DSC融解ピーク温度):135℃
A-2:日本ポリプロピレン社製 「WELNEX(登録商標)RFG4MC(プロピレンランダム共重合体)」
密度(JIS K7112):0.89g/cm
MFR(230℃、2.16kg(JIS K7210)):6g/10分
融点(DSC融解ピーク温度):127℃
【0071】
<(A’)成分:チーグラー・ナッタ触媒を用いて合成されたポリプロピレン>
A’-1:サンアロマー社製 「PC630A(プロピレンランダム共重合体)」
密度(JIS K6921-2):0.9g/cm
MFR(230℃、2.16kg(JIS K6921-2)):7.5g
/10分
融点(DSC融解ピーク温度):137℃
【0072】
<(B)成分:ポリオレフィン系エラストマー>
B-1(ポリプロピレン系エラストマー):エクソンモービル社製 「Vistamax
x(登録商標)6102」
密度(ASTM D1505):0.862g/cm
MFR(190℃、2.16kg(ASTM D1238)):1.4g/10分
B-2(ポリエチレン系エラストマー):三井化学社製 「タフマー(登録商標)A40
90S」
密度(ASTM D1505):0.893g/cm
MFR(190℃、2.16kg(ASTM D1238)):3.6g/10分
【0073】
<(B’)成分>
B’-1(ポリエチレン):低密度ポリエチレン
密度(JIS K7112):0.919g/cm
MFR(190℃、2.16kg(JIS K6922-2)):8.5g/10分
B’-2(スチレン系エラストマー):旭化成ケミカルズ社製 スチレン系熱可塑性エラストマー「タフテック(登録商標)H1052」
スチレン・ブタジエン・スチレン水添ブロック共重合体
スチレン含有率:20質量%
密度(ISO 1183):0.89g/cm
MFR(230℃、2.16kg(ISO 1133)):13g/10分
【0074】
[実施例1~4、比較例1~5]
<積層フィルムの作製>
表-1に示す各原料成分、配合割合で二軸押出機で160~200℃で混練し、熱可塑性樹脂組成物を得た。三層シート成形機を用い、イージーピール性シーラント層として前記熱可塑性樹脂組成物、保持層としてポリプロピレン樹脂(日本ポリプロピレン社製 「ノバテックPP(登録商標)FW4B」)を成形温度200~220℃でそれぞれ共押出を行うことで、厚さ45μm(イージーピール性シーラント層:15μm/保持層:30μm)の積層フィルムを作製した。
【0075】
<評価用フィルムの作製>
評価用フィルムの作製に用いたPETフィルムとしては、東洋紡社製「東洋紡ポリエステルフィルム」(厚さ25μm)を用い、接着剤としては、東洋モートン社製二液硬化型ポリウレタン系接着剤の主剤「TM329」と硬化剤「CAT-8B」を酢酸エチルで希釈したものを用いた。
PETフィルムの一方の面にコーター(テスター産業製)を用いて接着剤を塗布し、溶剤を蒸発させた後、この接着剤塗布面に作製した積層フィルムの保持層面を張り合わせ、40℃のオーブン中にて1昼夜乾燥させて、評価用フィルムとした。
【0076】
<加熱処理前後の剥離強度>
評価用フィルム及び下記被着体を50mm×100mmの大きさに切り出し、被着体の上に評価用フィルムを、評価用フィルムのイージーピール性シーラント層と被着体とが合わさるように置いた。
次いで、ヒートシーラー((有)佐川製作所製)を用いて以下の条件でヒートシールを行って、評価用フィルムの長さ方向の中央部分を5mmの幅にヒートシールした。
圧力:0.2MPa
時間:1.0秒
シールバー:5mm
温度:180℃、200℃
被着体:厚み0.3mmの高密度ポリエチレンシート
その後、評価用フィルムを15mm幅にカットし、被着体にヒートシールされていない部分を被着体に対して離反方向に引っ張って引き剥がすことによりヒートシール強度を測定し、これを加熱処理前の剥離強度として表-1に示した。
上記の15mm幅にカットする前のヒートシールしたサンプルを高圧蒸気滅菌器(アルプ株式会社製)を用いて121℃で30分間加熱処理した。その後、23℃50%RH下で一晩状態放置した後、上記と同様に15mm幅にカットし、ヒートシール強度を測定し、これを加熱処理後の剥離強度として表-1に示した。
加熱処理前の剥離強度、加熱処理後の剥離強度が9~23N/15mmである場合を実用可能とする。
【0077】
<剥離性>
ヒートシール強度を測定する際に、剥離外観を目視にて観察し、下記の基準で評価した。結果を表-1に示す。
〇:剥離した際に、剥離痕の残らない界面剥離である。
×:剥離した際に、剥離痕が残る。
【0078】
<耐熱性>
加熱処理前後の剥離強度を下記の基準で評価した。結果を表-1に示す。
〇:加熱処理前後の剥離強度の差が5N/15mm以下である。
×:加熱処理前後の剥離強度の差が5N/15mmを超える。
【表1】
【0079】
[評価結果]
表-1に示すように、実施例1~4は、剥離強度、剥離性、耐熱性いずれにも優れることがわかる。
一方、比較例1は、(A)成分を40質量%、(B)成分を60質量%含む例であり、耐熱性が不十分であった。比較例2は、(A)成分を95質量%、(B)成分を5質量%含む例であり、180℃の剥離強度が不十分であった。比較例3は(B’)成分としてポリエチレンを用いた例であり、剥離性が不十分であった。比較例4は(A’)成分としてチーグラー・ナッタ触媒を用いて合成されたポリプロピレンを用いた例であり、耐熱性が不十分であった。比較例5は(B’)成分としてスチレン系エラストマーを用いた例であり、耐熱性が不十分であった。