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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】通信端末装置及び通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 88/04 20090101AFI20240709BHJP
   H04W 92/18 20090101ALI20240709BHJP
   H04W 4/06 20090101ALI20240709BHJP
   H04B 1/3827 20150101ALI20240709BHJP
   G02C 11/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H04W88/04
H04W92/18
H04W4/06 170
H04B1/3827 130
G02C11/00
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020122390
(22)【出願日】2020-07-16
(65)【公開番号】P2021111955
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2020003159
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水沼 隆賢
(72)【発明者】
【氏名】田中 聡
(72)【発明者】
【氏名】山本 靖久
(72)【発明者】
【氏名】板橋 明子
【審査官】桑江 晃
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-507604(JP,A)
【文献】特開2018-113665(JP,A)
【文献】特表2019-517751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 1/3827
G02C 11/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学透過型のディスプレイを搭載した眼鏡型の通信端末装置が無線基地局のカバレッジエリア内に複数配置された通信システムであって、
前記通信端末装置は、受信信号を再送信するリピータ動作機能を有し、
受信信号強度が所定の第1閾値未満である場合に、他の通信端末装置に対して、当該他の通信端末装置の受信信号強度を要求する通信品質要求信号を送信し、
他の通信端末装置からの通信品質要求信号に応じて、前記受信信号強度を他の通信端末装置に送信し、
他の通信端末装置から送信された受信信号強度が所定の第2閾値以上である場合に、当該他の通信端末装置に対して、リピータ動作を要求するリピータ動作要求信号を送信し、
他の通信端末装置から送信された受信信号強度が前記第2閾値未満である場合に、当該他の通信端末装置に対して、リピータ動作の停止を要求するリピータ動作不要信号を送信し、
他の通信端末装置から送信されたリピータ動作要求信号を受信したか否かを判定し、当該リピータ動作要求信号を受信していない場合に、他の通信端末装置から送信されたリピータ動作不要信号を受信したか否かを判定し、
他の通信端末装置から送信されたリピータ動作要求信号を受信した場合に、リピータ動作中であるか否かを判定し、リピータ動作中でなければ、リピータ動作を開始し、
他の通信端末装置から送信されたリピータ動作不要信号を受信した場合に、リピータ動作中であるか否かを判定し、リピータ動作中であれば、リピータ動作を停止する、
通信システム。
【請求項2】
請求項に記載の通信システムであって、
前記第2閾値は、前記第1閾値よりも大きい、
通信システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の通信システムであって、
前記通信端末装置は、
複数の通信端末装置が多数同時接続される場合に、前記受信信号の再送信を行う、
通信システム。
【請求項4】
請求項からの何れか一項に記載の通信システムであって、
眼鏡型の前記通信端末装置である第1通信端末装置と、
前記第1通信端末装置のユーザーが所持する第2通信端末装置と、
を有し、
前記第2通信端末装置は、前記カバレッジエリア内で受信した第1信号を前記第1通信端末装置に送信し、
前記第1通信端末装置は、前記第1信号を受信すると共に、前記第2通信端末装置が前記第1信号を再送信するための第2信号を送信し、
前記第2通信端末装置は、前記第2信号を受信して、前記第1信号の再送信を行う、
通信システム。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の通信システムであって、
前記通信端末装置は、
高周波信号処理を行う2つのRFモジュールと、
2つの前記RFモジュールとそれぞれ通信線を介して通信可能に接続され、ベースバンド信号処理を行うベースバンドモジュールと、
を備え、
2つの前記RFモジュールは、前記ベースバンドモジュールによって選択的に切り替えられて受信動作を行い、2つの前記RFモジュールの一方で受信動作を行っているとき、当該一方のRFモジュールの受信信号を他方のRFモジュールから再送信する、
通信システム。
【請求項6】
請求項5に記載の通信システムであって、
前記通信端末装置は、
2つの前記RFモジュールの一方と前記ベースバンドモジュールとの間の通信線の信号を分岐する第1カプラ回路と、
2つの前記RFモジュールの他方と前記ベースバンドモジュールとの間の通信線の信号を分岐する第2カプラ回路と、
前記第1カプラ回路の分岐端子と前記第2カプラ回路の分岐端子との間に設けられた通信経路と、
を備える、
通信システム。
【請求項7】
請求項6に記載の通信システムであって、
前記通信端末装置は、前記第1カプラ回路の分岐端子と前記第2カプラ回路の分岐端子との間に設けられた通信線を介してリピータ動作を行う、
通信システム。
【請求項8】
請求項6に記載の通信システムであって、
前記通信端末装置は、前記第1カプラ回路の分岐端子に接続されたアンテナと前記第2カプラ回路の分岐端子に接続されたアンテナとを介した無線通信によりリピータ動作を行う、
通信システム。
【請求項9】
請求項5から8の何れか一項に記載の通信システムであって、
2つの前記RFモジュールは、それぞれ左右のテンプルに設けられている、
通信システム。
【請求項10】
請求項5から8の何れか一項に記載の通信システムであって、
前記通信端末装置のレンズに設けられたアンテナを備える、
通信システム。
【請求項11】
光学透過型のディスプレイを搭載した眼鏡型の通信端末装置であって、
高周波信号処理を行う2つのRFモジュールと、
2つの前記RFモジュールとそれぞれ通信線を介して通信可能に接続され、ベースバンド信号処理を行うベースバンドモジュールと、
を備え、
2つの前記RFモジュールのうち一方が、左右いずれか一方のテンプルに設けられ、2つの前記RFモジュールのうち他方が、左右いずれか他方のテンプルに設けられ、
2つの前記RFモジュールは、前記ベースバンドモジュールによって選択的に切り替えられて受信動作を行い、2つの前記RFモジュールの一方で受信動作を行っているとき、当該一方のRFモジュールの受信信号を他方のRFモジュールから再送信する、
通信端末装置。
【請求項12】
光学透過型のディスプレイを搭載した眼鏡型の通信端末装置であって、
高周波信号処理を行う2つのRFモジュールと、
2つの前記RFモジュールとそれぞれ通信線を介して通信可能に接続され、ベースバンド信号処理を行うベースバンドモジュールと、
前記通信端末装置のレンズに設けられたアンテナと、
を備え、
2つの前記RFモジュールは、前記ベースバンドモジュールによって選択的に切り替えられて受信動作を行い、2つの前記RFモジュールの一方で受信動作を行っているとき、当該一方のRFモジュールの受信信号を他方のRFモジュールから再送信する、
通信端末装置。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の通信端末装置であって、
2つの前記RFモジュールの一方と前記ベースバンドモジュールとの間の通信線の信号を分岐する第1カプラ回路と、
2つの前記RFモジュールの他方と前記ベースバンドモジュールとの間の通信線の信号を分岐する第2カプラ回路と、
前記第1カプラ回路の分岐端子と前記第2カプラ回路の分岐端子との間に設けられた通信経路と、
を備える、
通信端末装置。
【請求項14】
請求項13に記載の通信端末装置であって、
前記通信端末装置は、前記第1カプラ回路の分岐端子と前記第2カプラ回路の分岐端子との間に設けられた通信線を介してリピータ動作を行う、
通信端末装置。
【請求項15】
請求項13に記載の通信端末装置であって、
前記通信端末装置は、前記第1カプラ回路の分岐端子に接続されたアンテナと前記第2カプラ回路の分岐端子に接続されたアンテナとを介した無線通信によりリピータ動作を行う、
通信端末装置。
【請求項16】
請求項11から15の何れか一項に記載の通信端末装置が無線基地局のカバレッジエリア内に複数配置された通信システムであって、
前記通信端末装置は、
受信信号強度が所定の第1閾値未満である場合に、他の通信端末装置に対して、当該他の通信端末装置の受信信号強度を要求する通信品質要求信号を送信し、
他の通信端末装置からの通信品質要求信号に応じて、前記受信信号強度を他の通信端末装置に送信し、
他の通信端末装置から送信された受信信号強度が所定の第2閾値以上である場合に、当該他の通信端末装置に対して、リピータ動作を要求するリピータ動作要求信号を送信し、
前記リピータ動作要求信号に応じて、前記受信信号を再送信する、
通信システム。
【請求項17】
請求項16に記載の通信システムであって、
前記通信端末装置は、
他の通信端末装置から送信された受信信号強度が前記第2閾値未満である場合に、当該他の通信端末装置に対して、リピータ動作の停止を要求するリピータ動作不要信号を送信し、
他の通信端末装置から送信されたリピータ動作不要信号に応じて、前記受信信号の再送信を停止する、
通信システム。
【請求項18】
請求項17に記載の通信システムであって、
前記通信端末装置は、
少なくとも1つの他の通信端末装置から送信される前記リピータ動作要求信号に基づき、前記受信信号を再送信する、
通信システム。
【請求項19】
請求項18に記載の通信システムであって、
前記通信端末装置は、
少なくとも1つの他の通信端末装置から前記リピータ動作不要信号が送信され、且つ、他の何れの通信端末装置から前記リピータ動作要求信号が送信されていない場合に、前記受信信号の再送信を停止する、
通信システム。
【請求項20】
請求項16から19の何れか一項に記載の通信システムであって、
前記第2閾値は、前記第1閾値よりも大きい、
通信システム。
【請求項21】
請求項16から20の何れか一項に記載の通信システムであって、
前記通信端末装置は、
複数の通信端末装置が多数同時接続される場合に、前記受信信号の再送信を行う、
通信システム。
【請求項22】
請求項16から21の何れか一項に記載の通信システムであって、
眼鏡型の前記通信端末装置である第1通信端末装置と、
前記第1通信端末装置のユーザーが所持する第2通信端末装置と、
を有し、
前記第2通信端末装置は、前記カバレッジエリア内で受信した第1信号を前記第1通信端末装置に送信し、
前記第1通信端末装置は、前記第1信号を受信すると共に、前記第2通信端末装置が前記第1信号を再送信するための第2信号を送信し、
前記第2通信端末装置は、前記第2信号を受信して、前記第1信号の再送信を行う、
通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末装置及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現実の画像情報と当該画像情報に関連するバーチャルな情報とを重畳して表示し、現実の知覚体験を拡張する拡張現実(AR:Augmented Reality)機能の利用が拡大している。このようなAR機能を実現するための通信端末装置(以下、「AR端末」とも称する)として、例えば眼鏡型の通信端末装置が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
AR機能を実現するためには、動画像情報等の膨大な情報を端末間で頻繁に送受信する必要がある。このため、高速かつ大容量の低遅延通信が可能な、例えばWiGig(登録商標)等のミリ波通信を利用することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2018-507604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、例えばコンサートホールやスタジアム等の競技場のような特定のエリア内において、無線基地局から観客がそれぞれ所持した複数のAR端末にミュージシャンやプレイヤーの情報をブロードキャスト(Broadcast)配信するようなコンテンツの一斉同報配信サービスが考えられている。このように、複数のAR端末が多数同時接続されるような状態では、大容量のデータを低遅延かつ高速にリアルタイム配信する必要があるため、携帯端末の新たな通信規格である第5世代移動通信システム(以下、単に「5G」とも称する)やWiGig(Wireless Gigabit:登録商標)等のようなミリ波通信が適している。一方、ミリ波通信は伝搬損失が大きく狭指向性であるため、例えば構造物や人体等の障害物により受信信号強度が低下し、良好な通信状態を維持できない場合がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、複数の通信端末装置が多数同時接続される際の通信のロバスト性を高めること(トラブル耐性の向上、つまり通信品質を安定させること)が可能な通信端末装置及び通信システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面の通信端末装置は、光学透過型のディスプレイを搭載した眼鏡型の通信端末装置であって、高周波信号処理を行う2つのRFモジュールと、2つの前記RFモジュールとそれぞれ通信線を介して通信可能に接続され、ベースバンド信号処理を行うベースバンドモジュールと、を備え、2つの前記RFモジュールは、前記ベースバンドモジュールによって選択的に切り替えられて受信動作を行い、2つの前記RFモジュールの一方で受信動作を行っているとき、当該一方のRFモジュールの受信信号を他方のRFモジュールから再送信する。
【0008】
この構成では、2つのRFモジュールの一方で受信動作を行い、残る他方のRFモジュールで受信信号の再送信を行う。これにより、例えば無線基地局のカバレッジエリア内に複数の通信端末装置が配置され、複数の通信端末装置が多数同時接続される場合に、複数の通信端末装置間で相互に連携してリレーコネクションを構築することで、カバレッジエリア内の通信品質を高めることができ、通信のロバスト性を高めること(トラブル耐性の向上、つまり通信品質を安定させること)ができる。
【0009】
本発明の一側面の通信システムは、上記の通信端末装置が無線基地局のカバレッジエリア内に複数配置された通信システムであって、前記通信端末装置は、受信信号強度が所定の第1閾値未満である場合に、他の通信端末装置に対して、当該他の通信端末装置の受信信号強度を要求する通信品質要求信号を送信し、他の通信端末装置からの通信品質要求信号に応じて、前記受信信号強度を他の通信端末装置に送信し、他の通信端末装置から送信された受信信号強度が所定の第2閾値以上である場合に、当該他の通信端末装置に対して、リピータ動作を要求するリピータ動作要求信号を送信し、前記リピータ動作要求信号に応じて、前記受信信号を再送信する。
【0010】
この構成では、無線基地局のカバレッジエリア内に複数の通信端末装置が配置され、複数の通信端末装置が多数同時接続される場合に、複数の通信端末装置間で相互に連携することで、複数の通信端末装置間でリレーコネクションが構築される。これにより、カバレッジエリア内の通信品質を高めることができ、通信のロバスト性を高めること(トラブル耐性の向上、つまり通信品質を安定させること)ができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の通信端末装置が多数同時接続される際の通信のロバスト性を高めること(トラブル耐性の向上、つまり通信品質を安定させること)が可能な通信端末装置及び通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1に係る通信システムの概略構成を示す模式図である。
図2A】実施形態1に係る通信端末装置の第1例を示す概略図である。
図2B】実施形態1に係る通信端末装置の第2例を示す概略図である。
図3A図2Aに示す通信端末装置のブロック構成の第1例を示す図である。
図3B図2Bに示す通信端末装置のブロック構成の第1例を示す図である。
図3C図2Aに示す通信端末装置のブロック構成の第2例を示す図である。
図3D図2Bに示す通信端末装置のブロック構成の第2例を示す図である。
図4】実施形態1に係る通信端末装置におけるダイバーシティ動作の概略フローチャートである。
図5】実施形態1に係る通信端末装置におけるリピータ動作要求処理の一例を示すフローチャートである。
図6】実施形態1に係る通信端末装置におけるリピータ動作処理の一例を示すフローチャートである。
図7】実施形態1に係る通信システムにおける具体的な第1処理例を説明する上での概念図である。
図8】実施形態1に係る通信システムにおける具体的な第1処理例を示すフローチャートである。
図9】実施形態1に係る通信システムにおける具体的な第2処理例を説明する上での概念図である。
図10】実施形態1に係る通信システムにおける具体的な第2処理例を示すフローチャートである。
図11】実施形態1に係る複数の通信端末装置による連携動作例を示す概念図である。
図12】実施形態2に係る通信端末装置のブロック構成の一例を示す図である。
図13A】実施形態2に係る第1カプラ回路及び第2カプラ回路のブロック構成の一例を示す第1図である。
図13B】実施形態2に係る第1カプラ回路及び第2カプラ回路のブロック構成の一例を示す第2図である。
図14】実施形態3に係る通信端末装置のブロック構成の一例を示す図である。
図15A】実施形態3に係る第1カプラ回路及び第2カプラ回路のブロック構成の一例を示す第1図である。
図15B】実施形態3に係る第1カプラ回路及び第2カプラ回路のブロック構成の一例を示す第2図である。
図16】実施形態4に係る通信端末装置の一例を示す概略図である。
図17A】実施形態5に係る通信システムの概略構成の第1例を示す模式図である。
図17B】実施形態5に係る通信システムの概略構成の第2例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、実施形態に係る通信端末装置及び通信システムを図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。
【0014】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る通信システムの概略構成を示す模式図である。図1に示すように、本実施形態に係る通信システム100は、無線基地局200のカバレッジエリア300内に配置された複数の通信端末装置1_1,1_2,・・・,1_n(nは自然数)で構成される。
【0015】
本開示において、通信端末装置1_1,1_2,・・・,1_nは、拡張現実(AR:Augmented Reality)機能を実現するAR端末であり、例えば光学透過型のディスプレイを搭載した眼鏡型のウェアラブル通信端末装置である。以下、特に各通信端末装置1_1,1_2,・・・,1_nを区別する必要がない場合には、各通信端末装置1_1,1_2,・・・,1_nを単に「通信端末装置1」とも称する。
【0016】
各通信端末装置1_1,1_2,・・・,1_nには、無線基地局200から各種情報がブロードキャスト(Broadcast)配信される。無線基地局200と各通信端末装置1_1,1_2,・・・,1_nとの間の通信は、例えば、第5世代移動通信システム(5G)やWiGig(Wireless Gigabit:登録商標)等のミリ波帯通信が想定されるが、これに限定されず、例えばSub6やWiFi(IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)802.11:登録商標)の5GHz帯通信であっても良いし、第4世代移動通信システム(4G)による通信であっても良い。また、超広帯域無線通信(UWB:Ultra Wide Band)であっても良い。
【0017】
本開示において、各通信端末装置1_1,1_2,・・・,1_nは、互いに通信品質指標を要求する。通信品質指標としては、例えば、受信信号強度(Received Signal Strength Indicator:RSSI)、ユーザスループット、接続端末数、パケット再送率、変調レートなどがあるが、本開示では、通信品質指標としてRSSIを用いる例について説明する。
【0018】
また、本開示において、各通信端末装置1_1,1_2,・・・,1_nは、互いの要求に応じて受信信号を中継する。
【0019】
図2Aは、実施形態1に係る通信端末装置の第1例を示す概略図である。図2Bは、実施形態1に係る通信端末装置の第2例を示す概略図である。図3Aは、図2Aに示す通信端末装置のブロック構成の第1例を示す図である。図3Bは、図2Bに示す通信端末装置のブロック構成の第1例を示す図である。図3Cは、図2Aに示す通信端末装置のブロック構成の第2例を示す図である。図3Dは、図2Bに示す通信端末装置のブロック構成の第2例を示す図である。
【0020】
まず、図2A及び図3Aに示す第1例について説明する。図2A及び図3Aに示すように、通信端末装置1は、送受信信号の高周波信号処理を行う第1RFモジュール(RF1)2a及び第2RFモジュール(RF2)2bと、ベースバンド信号処理を行うベースバンドモジュール(BB)3とを備える。図2Aに示す例では、第1RFモジュール2a及び第2RFモジュール2bがそれぞれ左右のテンプル10に設けられ、ベースバンドモジュール3が一方のテンプル10に設けられた例を示している。
【0021】
第1RFモジュール2aは、通信線4aを介してベースバンドモジュール3と接続されている。第2RFモジュール2bは、通信線4bを介してベースバンドモジュール3と接続されている。通信線4a,4bは、第1RFモジュール2aとベースバンドモジュール3との間、及び、第2RFモジュール2bとベースバンドモジュール3との間でそれぞれIF(Intermediate Frequency)信号及び各種コマンドの送受を行うためのIFケーブルである。通信線4a,4bは、メタルケーブルであっても良いし、光ファイバケーブルであっても良い。通信線4a,4bは、例えば、テンプル10やフレーム11の内部に配設された構成であっても良いし、テンプル10やフレーム11に沿って配線されていても良い。通信線4a,4bの配設構造により本開示が限定されるものではない。また、図3Cに示すように、第1RFモジュール2aと第2RFモジュール2bとが通信線4dで接続された構成であっても良い。この場合、第2RFモジュール2bは、通信線4a、第1RFモジュール2a、及び通信線4dを介してベースバンドモジュール3と接続される。なお、通信線4dを複数本設けた態様であっても良い。
【0022】
次に、図2B及び図3Bに示す第2例について説明する。図2B及び図3Bに示すように、通信端末装置1は、送受信信号の高周波信号処理を行う第1RFモジュール(RF1)2a及び第2RFモジュール(RF2)2bと、ベースバンド信号処理を行う第1ベースバンドモジュール(BB1)3a及び第2ベースバンドモジュール(BB2)3bとを備える。図2Bに示す例では、第1RFモジュール2a及び第1ベースバンドモジュール(BB1)3aが一方のテンプル10に設けられ、第2RFモジュール2b及び第2ベースバンドモジュール(BB2)3bが他方のテンプル10に設けられた例を示している。
【0023】
第1RFモジュール2aは、通信線4aを介して第1ベースバンドモジュール3aと接続されている。第2RFモジュール2bは、通信線4bを介して第2ベースバンドモジュール3bと接続されている。通信線4aは、第1RFモジュール2aと第1ベースバンドモジュール3aとの間でIF(Intermediate Frequency)信号及び各種コマンドの送受を行うためのIFケーブルである。通信線4bは、第2RFモジュール2bと第2ベースバンドモジュール3bとの間でIF信号及び各種コマンドの送受を行うためのIFケーブルである。通信線4cは、第1ベースバンドモジュール3aと第2ベースバンドモジュール3bとの間で各種コマンドの送受を行うためのIFケーブルである。通信線4a,4b,4cは、メタルケーブルであっても良いし、光ファイバケーブルであっても良い。通信線4a,4bは、例えば、テンプル10やフレーム11の内部に配設された構成であっても良いし、テンプル10やフレーム11に沿って配線されていても良い。通信線4cは、図2Bに示すように、例えば両方のテンプル10の間に設けられたケーブルであっても良いし、通信線4a,4bと同様に、例えば、テンプル10やフレーム11の内部に配設された構成であっても良いし、テンプル10やフレーム11に沿って配線されていても良い。通信線4a,4b,4cの配設構造により本開示が限定されるものではない。また、図3Dに示すように、第1RFモジュール2aと第2RFモジュール2bとが通信線4eで接続された構成であっても良い。この場合、第1ベースバンドモジュール3aと第2ベースバンドモジュール3bとの間での各種コマンドの送受は、通信線4a、第1RFモジュール2a、通信線4e、第2RFモジュール2b、及び通信線4bを介して行われる。なお、通信線4eを複数本設けた態様であっても良い。
【0024】
本開示において、第1RFモジュール2a及び第2RFモジュール2bは、アンテナとRFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)とが一体化されて構成される。具体的に、例えば、第1RFモジュール2a及び第2RFモジュール2bは、可撓性を有するフレキシブル基板の表面に複数のパッチアンテナを配列したアレーアンテナが設けられ、フレキシブル基板の背面、すなわち、パッチアンテナが設けられた面とは反対側の面にRFICが設けられた構成であっても良い。この場合、フレキシブル基板を屈曲させることで、アンテナの放射面を複数方向に設けることができる。
【0025】
このような構成において、例えば、コンサートホールやスタジアム等の競技場のような特定のエリア内において、無線基地局200から複数の通信端末装置1_1,1_2,・・・,1_nに各種情報をブロードキャスト配信するような、複数の通信端末装置1_1,1_2,・・・,1_nが多数同時接続される状態を想定した場合、ユーザーの上方に無線基地局200もしくは中継基地局(不図示)が配置されることが考えられる。このような使用環境では、ユーザーが通信端末装置1を装着した状態において、少なくとも第1RFモジュール2a及び第2RFモジュール2bに設けられたアンテナの放射面の一方が上側に向くように配置されていることが望ましい。このように、アンテナの放射面は、想定される通信端末装置1の使用環境に応じて最適化すれば良い。
【0026】
また、第1RFモジュール2a及び第2RFモジュール2bの態様はこれに限らず、例えば、誘電体基板の表面に複数のパッチアンテナを配列した態様であっても良い。この場合、アレーアンテナを設ける誘電体基板の材料としては、例えば、低温同時焼成セラミックス多層基板(LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)多層基板)、エポキシ、ポリイミドなどの樹脂から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、より低い誘電率を有する液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer:LCP)から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、フッ素系樹脂から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、セラミックス多層基板(低温焼成セラミック多層基板を除く)等が例示される。第1RFモジュール2a及び第2RFモジュール2bの具体的な構成により本開示が限定されるものではない。
【0027】
図2A及び図3Aに示す第1例において、ベースバンドモジュール3は、ベースバンド信号処理を担うBBIC(Base Band Integrated Circuit)の他に、第1RFモジュール2a及び第2RFモジュール2bの送受信制御を行うプロセッサを備えている。具体的に、例えば、ベースバンドモジュール3は、フレキシブル基板上にBBICやプロセッサが設けられた構成であっても良い。また、上記構成に依らず、プロセッサがベースバンド信号処理を行う態様であっても良い。ベースバンドモジュール3の具体的な構成により本開示が限定されるものではない。
【0028】
図2B及び図3Bに示す第2例において、第1ベースバンドモジュール3aは、ベースバンド信号処理を担うBBIC(Base Band Integrated Circuit)の他に、第1RFモジュール2aの送受信制御を行うプロセッサを備えている。また、図2B及び図3Bに示す第2例において、第2ベースバンドモジュール3bは、ベースバンド信号処理を担うBBIC(Base Band Integrated Circuit)の他に、第2RFモジュール2bの送受信制御を行うプロセッサを備えている。具体的に、例えば、第1ベースバンドモジュール3a及び第2ベースバンドモジュール3bは、フレキシブル基板上にBBICやプロセッサが設けられた構成であっても良い。また、上記構成に依らず、プロセッサがベースバンド信号処理を行う態様であっても良い。第1ベースバンドモジュール3a及び第2ベースバンドモジュール3bの具体的な構成により本開示が限定されるものではない。
【0029】
本開示における通信端末装置1は、受信動作において第1RFモジュール2a及び第2RFモジュール2bを選択的に切り替えるダイバーシティ動作を行う。すなわち、通信端末装置1は、第1RFモジュール2a及び第2RFモジュール2bのうち電波状態の良い何れか一方を選択して受信動作を行う。
【0030】
ここで、実施形態1に係る通信端末装置1におけるダイバーシティ動作について、図4を参照して簡単に説明する。図4は、実施形態1に係る通信端末装置におけるダイバーシティ動作の概略フローチャートである。なお、以下の説明では、図2A及び図3Aに示す第1例について説明する。また、以下に示す各フローチャートにおける制御主体は、通信端末装置1のベースバンドモジュール(BB)3に備えられたプロセッサであるが、ここでは、通信端末装置1を主体として説明する。
【0031】
通信端末装置1は、第1RFモジュール2a及び第2RFモジュール2bにおいて所望の電波を受信する(ステップS101)。ここでは、第1RFモジュール2aの受信電波をRF1信号SIGrf1とし、第2RFモジュール2bの受信電波をRF2信号SIGrf2としている。
【0032】
続いて、通信端末装置1は、RF1信号SIGrf1の受信信号強度RSSIrf1及びRF2信号SIGrf2の受信信号強度RSSIrf2を測定し(ステップS102)、RF1信号SIGrf1の受信信号強度RSSIrf1とRF2信号SIGrf2の受信信号強度RSSIrf2とを比較する。具体的に、通信端末装置1は、RF1信号SIGrf1の受信信号強度RSSIrf1がRF2信号SIGrf2の受信信号強度RSSIrf2以上であるか否かを判定する(ステップS103)。
【0033】
RF1信号SIGrf1の受信信号強度RSSIrf1がRF2信号SIGrf2の受信信号強度RSSIrf2以上であれば(ステップS103;Yes)、通信端末装置1は、RF1信号SIGrf1の受信信号強度RSSIrf1を自装置における受信信号強度RSSIrfとして、第1RFモジュール(RF1)2aに対して受信設定を行う(ステップS104)。これにより、通信端末装置1は、第1RFモジュール(RF1)2aにより受信されるRF1信号SIGrf1に基づき機能動作(例えば、AR機能動作)を行う。
【0034】
RF1信号SIGrf1の受信信号強度SGSTrf1がRF2信号SIGrf2の受信信号強度SGSTrf2未満であれば(ステップS103;No)、通信端末装置1は、RF2信号SIGrf2の受信信号強度RSSIrf2を自装置における受信信号強度RSSIrfとして、第2RFモジュール(RF2)2bに対して受信設定を行う(ステップS105)。これにより、通信端末装置1は、第2RFモジュール(RF2)2bにより受信されるRF2信号SIGrf2に基づき機能動作(例えば、AR機能動作)を行う。
【0035】
また、本開示において、各通信端末装置1_1,1_2,・・・,1_nは、上述したように、それぞれ互いの要求に応じて受信信号を中継して再送信(リピート送信)する。このリピート動作では、ダイバーシティ動作により受信動作を行っていない第1RFモジュール2a及び第2RFモジュール2bのうちの他方で受信信号の再送信(リピート送信)を行う。
【0036】
次に、実施形態1に係る通信端末装置の動作概念について説明する。
【0037】
例えば、上述したように、コンサートホールやスタジアム等の競技場のような特定のエリア内において、無線基地局200から複数の通信端末装置1_1,1_2,・・・,1_nに各種情報をブロードキャスト配信するような、複数の通信端末装置1_1,1_2,・・・,1_nが多数同時接続される状態を想定した場合、例えば会場内の柱等の構造物や人体等の障害物により受信信号強度が低下し、良好な通信状態を維持できない場合がある。
【0038】
本開示では、例えば眼鏡型のウェアラブル通信端末装置である通信端末装置1に、受信した無線信号を中継して再送信(リピート送信)する。これにより、複数の通信端末装置1_1,1_2,・・・,1_nの何れかで通信品質が低下した場合には、他の通信端末装置1により無線信号を中継して再送信(リピート送信)する。これにより、各通信端末装置1_1,1_2,・・・,1_nの通信品質を良好に維持することを可能としている。
【0039】
以下、上述した実施形態1に係る通信端末装置1の動作について、図5及び図6を参照して説明する。
【0040】
図5は、実施形態1に係る通信端末装置におけるリピータ動作要求処理の一例を示すフローチャートである。図6は、実施形態1に係る通信端末装置におけるリピータ動作処理の一例を示すフローチャートである。
【0041】
ここでは、まず、実施形態1に係る通信端末装置1におけるリピータ動作要求処理について説明する。
【0042】
図5において、通信端末装置1は、自装置の受信信号強度RSSIrfが所定の自装置受信信号強度閾値(第1閾値)RSSIth1未満であるか否かを判定する(ステップS201)。ここで、自装置受信信号強度閾値(第1閾値)RSSIth1は、通信端末装置1において自装置の機能動作(例えば、AR機能動作)を行うために必要な受信信号強度が得られているか否かを判定するための閾値である。すなわち、ステップS201では、自装置の受信信号強度RSSIrfが自装置受信信号強度閾値(第1閾値)RSSIth1以上であれば(ステップS201;No)、通信端末装置1において自装置の機能動作(例えば、AR機能動作)を行うために必要十分な受信信号強度が得られているものと判定する。
【0043】
自装置の受信信号強度RSSIrfが自装置受信信号強度閾値(第1閾値)RSSIth1以上であれば(ステップS201;No)、通信端末装置1は、ステップS201の処理を繰り返し実行する。自装置の受信信号強度RSSIrfが自装置受信信号強度閾値(第1閾値)RSSIth1未満であれば(ステップS201;Yes)、通信端末装置1は、他の通信端末装置1に対して通信品質要求信号CQREQを送信する(ステップS202)。以下、他の通信端末装置1を単に「他装置」と称する。
【0044】
他装置は、通信品質要求信号CQREQを受信すると、自装置における受信信号強度RSSIrfを送信する。
【0045】
通信端末装置1は、他装置から送信された受信信号強度RSSIrfを、他装置受信信号強度RSSIext(1~p)として取得する(ステップS203)。ここで、通信端末装置1は、受信信号強度を送信した他装置ごとに、「1」,「2」,・・・,「p」(pはn以下の自然数)にナンバリングし、他装置「1」,「2」,・・・,「p」ごとの他装置受信信号強度RSSIext(1~p)として記憶する。具体的に、通信端末装置1は、他装置「1」の受信信号強度を「RSSIext(1)」、他装置「2」の受信信号強度を「RSSIext(2)」、以下順に、他装置「p」の受信信号強度を「RSSIext(p)」として記憶する。
【0046】
他装置受信信号強度RSSIext(1~p)を取得できなければ(ステップS203;No)、通信端末装置1は、ステップS201からステップS203までの処理を繰り返し実行する。
【0047】
他装置受信信号強度RSSIext(1~p)を取得すると(ステップS203;Yes)、通信端末装置1は、カウンタ値mをリセットする(ステップS204)。ここで、カウンタ値mは、他装置受信信号強度RSSIext(1~p)を取得した他装置のナンバーを示している。
【0048】
通信端末装置1は、カウンタ値mを上げ(ステップS205)、他装置「m」の受信信号強度RSSIext(m)が他装置受信信号強度閾値(第2閾値)RSSIth2以上であるか否かを判定する(ステップS206)。ここで、他装置受信信号強度閾値(第2閾値)RSSIth2は、他の通信端末装置1において自装置の機能動作(例えば、AR機能動作)を行い、且つ、他装置に対して受信信号の再送信を行うために必要な受信信号強度が得られているか否かを判定するための閾値である。すなわち、ステップS206では、他装置「m」の受信信号強度RSSIext(m)が他装置受信信号強度閾値(第2閾値)RSSIth2以上であれば(ステップS206;Yes)、他装置「m」において自装置の機能動作(例えば、AR機能動作)を行い、且つ、他装置に対して受信信号の再送信を行うために必要十分な受信信号強度が得られているものと判定する。
【0049】
他装置「m」の受信信号強度RSSIext(m)が他装置受信信号強度閾値(第2閾値)RSSIth2以上であれば(ステップS206;Yes)、通信端末装置1は、他装置「m」に対してリピータ動作要求信号REPREQを送信する(ステップS207)。
【0050】
他装置「m」の受信信号強度RSSIext(m)が他装置受信信号強度閾値(第2閾値)RSSIth2以上であれば(ステップS206;No)、通信端末装置1は、他装置「m」に対してリピータ動作不要信号NOTREPを送信する(ステップS208)。
【0051】
通信端末装置1は、カウンタ値mがpでなければ(ステップS209;No)ステップS204の処理に戻り、カウンタ値mがpとなるまで(ステップS209;Yes)、ステップS204からステップS209までの処理を繰り返し実施する。これにより、受信信号強度RSSIrfが自装置受信信号強度閾値(第1閾値)RSSIth1以上の他装置に対して、リピート動作要求信号が送信される。
【0052】
なお、ステップS201における自装置受信信号強度閾値(第1閾値)RSSIth1と、ステップS206における他装置受信信号強度閾値(第2閾値)RSSIth2とは、同値であっても良いし、それぞれ異なる値であっても良いが、自装置において受信信号に余力がある通信端末装置1にリピータ動作を行わせるという観点において、自装置受信信号強度閾値(第1閾値)RSSIth1と他装置受信信号強度閾値(第2閾値)RSSIth2との大小関係は、RSSIth1<RSSIth2であることが望ましい。このようにすれば、自装置において受信信号に余力がある通信端末装置1に対してリピート動作要求を行うことができる。
【0053】
続いて、実施形態1に係る通信端末装置1におけるリピータ動作処理について説明する。
【0054】
図6において、通信端末装置1は、他装置から通信品質要求信号CQREQを受信したか否かを判定する(ステップS301)。
【0055】
通信品質要求信号CQREQを受信していなければ(ステップS301;No)、通信端末装置1は、ステップS301の処理を繰り返し実行する。
【0056】
通信品質要求信号CQREQを受信すると(ステップS301;Yes)、通信端末装置1は、自装置における受信信号強度RSSIrfを測定し(ステップS302)、通信品質要求信号CQREQを送信した他装置に対して、自装置における受信信号強度RSSIrfを送信する(ステップS303)。なお、上述したダイバーシティ動作(図4参照)において測定した受信信号強度RSSIrfを保持している場合には、ステップS302の処理を省略し、ステップS303において、保持している自装置の受信信号強度RSSIrfを送信する態様であっても良い。
【0057】
通信端末装置1は、受信信号強度RSSIrf送信後の経過時間tが所定時間T未満である所定期間において(ステップS304;Yes)、他装置からのリピータ動作要求信号REPREQを受信したか否かを判定する(ステップS305)。他装置からのリピータ動作要求信号REPREQを受信していなければ(ステップS305;No)、通信端末装置1は、他装置からのリピータ動作不要信号NOTREPを受信したか否かを判定する(ステップS306)。他装置からのリピータ動作不要信号NOTREPを受信していなければ(ステップS306;No)、受信信号強度RSSIrf送信後の経過時間tが所定時間T以上となるまで(ステップS304;No)、ステップS304以降の処理を繰り返し実行する。受信信号強度RSSIrf送信後の経過時間tが所定時間T以上となると(ステップS304;No)、通信端末装置1は、ステップS301以降の処理を繰り返し実行する。
【0058】
ステップS305において他装置からのリピータ動作要求信号REPREQを受信すると(ステップS305;Yes)、通信端末装置1は、自装置がリピート動作中であるか否かを判定する(ステップS307)。
【0059】
自装置がリピート動作中であれば(ステップS307;Yes)、通信端末装置1は、ステップS301以降の処理を繰り返し実行する。
【0060】
自装置がリピート動作中でなければ(ステップS307;No)、通信端末装置1は、上述したダイバーシティ動作(図4参照)において受信設定していないRFモジュールに対して送信設定を行い(ステップS308)、リピータ動作を開始する(ステップS309)。具体的に、上述したダイバーシティ動作(図4参照)において、第1RFモジュール(RF1)2aに対して受信設定を行った場合には、第2RFモジュール(RF2)2bに対して送信設定を行う。あるいは、上述したダイバーシティ動作(図4参照)において、第2RFモジュール(RF2)2bに対して受信設定を行った場合には、第1RFモジュール(RF1)2aに対して送信設定を行う。
【0061】
ステップS306において他装置からのリピータ動作不要信号NOTREPを受信すると(ステップS306;Yes)、通信端末装置1は、自装置がリピート動作中であるか否かを判定する(ステップS310)。
【0062】
自装置がリピート動作中でなければ(ステップS310;No)、通信端末装置1は、ステップS301以降の処理を繰り返し実行する。
【0063】
自装置がリピート動作中であれば(ステップS310;Yes)、通信端末装置1は、送信設定されているRFモジュールの送信設定を解除してリピータ動作を停止する(ステップS311)。具体的に、第1RFモジュール(RF1)2aに対して送信設定されている場合には、第1RFモジュール(RF1)2aの送信設定を解除してリピータ動作を停止する。あるいは、第2RFモジュール(RF2)2bに対して送信設定されている場合には、第2RFモジュール(RF2)2bの送信設定を解除してリピータ動作を停止する。
【0064】
このような処理とすることにより、リピータ動作要求信号REPREQに基づくリピータ動作の開始(ステップS309)の優先順位を、リピータ動作不要信号NOTREPに基づくリピータ動作の停止(ステップS311)よりも高くすることができる。すなわち、複数の他装置がリピータ動作不要信号NOTREPを送信していたとしても、リピータ動作要求信号REPREQを送信している他装置がある場合には、リピータ動作要求信号REPREQに基づくリピータ動作が開始される(ステップS309)。
【0065】
これにより、無線基地局200のカバレッジエリア300内に配置された各通信端末装置1_1,1_2,・・・,1_nにおいて、それぞれ図4図5、及び図6に示した各処理を行うことにより、カバレッジエリア300内の通信品質が向上し、良好な通信状態を維持することができる。すなわち、無線基地局200のカバレッジエリア300内において、各通信端末装置1_1,1_2,・・・,1_nが多数同時接続される際の通信のロバスト性を高めること(トラブル耐性の向上、つまり通信品質を安定させること)ができる。
【0066】
以下、実施形態1に係る通信システムにおける具体的な処理例について説明する。
【0067】
図7は、実施形態1に係る通信システムにおける具体的な第1処理例を説明する上での概念図である。図8は、実施形態1に係る通信システムにおける具体的な第1処理例を示すフローチャートである。
【0068】
図7では、無線基地局200のカバレッジエリア300内の3つの通信端末装置1_1,1_2,1_3を例示している。
【0069】
通信端末装置1_1及び通信端末装置1_3は、図5に示すフローチャートにおいて、自装置の受信信号強度RSSIrfが自装置受信信号強度閾値(第1閾値)RSSIth1以上であり(ステップS201;No)、自装置のRF1信号SIGrf1(又はRF2信号SIGrf2)に基づき機能動作(例えば、AR機能動作)を行っているものとする。なお、通信端末装置1_1の受信信号強度RSSIrf、すなわち通信端末装置1_2における他装置受信信号強度RSSIext(1_1)は、他装置受信信号強度閾値(第2閾値)RSSIth2以上であり、通信端末装置1_3の受信信号強度RSSIrf、すなわち通信端末装置1_2における他装置受信信号強度RSSIext(1_3)は、他装置受信信号強度閾値(第2閾値)RSSIth2未満であるものとする。
【0070】
通信端末装置1_2は、図5に示すフローチャートにおいて、自装置の受信信号強度RSSIrfが自装置受信信号強度閾値(第1閾値)RSSIth1未満であり(ステップS201;No)、通信端末装置1_1又は通信端末装置1_3による無線信号の再送信(リピート送信)を必要としているものとする。
【0071】
通信端末装置1_2は、図5に示すフローチャートのステップS202において、通信端末装置1_1及び通信端末装置1_3に対して通信品質要求信号CQREQを送信する(図8、ステップS401)。
【0072】
通信端末装置1_1は、図6に示すフローチャートのステップS301において、通信端末装置1_2からの通信品質要求信号CQREQを受信すると(図8、ステップS402)、図6に示すフローチャートのステップS302において、自装置の受信信号強度RSSIrfを測定し(図8、ステップS403)、図6に示すフローチャートのステップS303において、測定した受信信号強度RSSIrfを通信端末装置1_2に送信する(図8、ステップS404)。
【0073】
通信端末装置1_3は、図6に示すフローチャートのステップS301において、通信端末装置1_2からの通信品質要求信号CQREQを受信すると(図8、ステップS405)、図6に示すフローチャートのステップS303において、自装置の受信信号強度RSSIrfを測定し(図8、ステップS406)、当該受信信号強度RSSIrfを通信端末装置1_2に送信する(図8、ステップS407)。
【0074】
通信端末装置1_2は、図5に示すフローチャートのステップS203において、通信端末装置1_1からの受信信号強度RSSIrfを受信して他装置受信信号強度RSSIext(1_1)として取得すると共に、通信端末装置1_3からの受信信号強度RSSIrfを受信して他装置受信信号強度RSSIext(1_3)として取得する(図8、ステップS408)。
【0075】
通信端末装置1_2は、他装置受信信号強度判定処理として、例えば、図5に示すフローチャートのステップS204からステップS206までの処理を行う(図8、ステップS409)。これにより、通信端末装置1_1の他装置受信信号強度RSSIext(1_1)は、他装置受信信号強度閾値(第2閾値)RSSIth2以上であり(ステップS206;Yes)、通信端末装置1_1がリピータ動作要求の対象装置であることが導出される。また、通信端末装置1_3の他装置受信信号強度RSSIext(1_3)は、他装置受信信号強度閾値(第2閾値)RSSIth2未満であり(ステップS206;No)、通信端末装置1_3がリピータ動作要求の非対象装置であることが導出される。
【0076】
通信端末装置1_2は、図5に示すフローチャートのステップS207において、通信端末装置1_1に対してリピータ動作要求信号REPREQを送信すると共に、図5に示すフローチャートのステップS208において、通信端末装置1_3に対してリピータ動作不要信号NOTREPを送信する(図8、ステップS410)。
【0077】
通信端末装置1_1は、図6に示すフローチャートのステップS305において、通信端末装置1_2からのリピータ動作要求信号REPREQを受信すると(図8、ステップS411)、図6に示すフローチャートのステップS307においてリピート動作行っていない場合に、図6に示すフローチャートのステップS308において、上述したダイバーシティ動作(図4参照)において受信設定していないRFモジュールに対して送信設定を行い、リピータ動作を開始する(図8、ステップS412)。
【0078】
通信端末装置1_3は、図6に示すフローチャートのステップS306において、通信端末装置1_2から送信されたリピータ動作不要信号NOTREPを受信すると(図8、ステップS413)、図6に示すフローチャートのステップS310においてリピート動作行っている場合に、図6に示すフローチャートのステップS311において、リピータ動作を停止する(図8、ステップS414)。
【0079】
上述した処理により、通信端末装置1_2の通信品質が向上し、良好な通信状態を維持することができる。
【0080】
図9は、実施形態1に係る通信システムにおける具体的な第2処理例を説明する上での概念図である。図10は、実施形態1に係る通信システムにおける具体的な第2処理例を示すフローチャートである。
【0081】
図9では、上述した第1処理例と同様に、無線基地局200のカバレッジエリア300内の3つの通信端末装置1_1,1_2,1_3を例示している。
【0082】
通信端末装置1_1は、図5に示すフローチャートにおいて、自装置の受信信号強度RSSIrfが自装置受信信号強度閾値(第1閾値)RSSIth1以上であり(ステップS201;No)、自装置のRF1信号SIGrf1(又はRF2信号SIGrf2)に基づき機能動作(例えば、AR機能動作)を行っているものとする。なお、通信端末装置1_1の受信信号強度RSSIrf、すなわち通信端末装置1_2における他装置受信信号強度RSSIext(1_1)は、他装置受信信号強度閾値(第2閾値)RSSIth2以上であるものとする。
【0083】
通信端末装置1_2及び通信端末装置1_3は、図5に示すフローチャートにおいて、自装置の受信信号強度RSSIrfが自装置受信信号強度閾値(第1閾値)RSSIth1未満であり(ステップS201;No)、通信端末装置1_1による無線信号の再送信(リピート送信)を必要としているものとする。
【0084】
通信端末装置1_2は、図5に示すフローチャートのステップS202において、通信端末装置1_1及び通信端末装置1_3に対して通信品質要求信号CQREQを送信する(図10、ステップS501)。
【0085】
通信端末装置1_3は、図5に示すフローチャートのステップS202において、通信端末装置1_1及び通信端末装置1_2に対して通信品質要求信号CQREQを送信する(図10、ステップS502)。
【0086】
通信端末装置1_1は、図6に示すフローチャートのステップS301において、通信端末装置1_2及び通信端末装置1_3からの通信品質要求信号CQREQを受信すると(図10、ステップS503)、図6に示すフローチャートのステップS302において、自装置の受信信号強度RSSIrfを測定し(図10、ステップS504)、当該受信信号強度RSSIrfを通信端末装置1_2及び通信端末装置1_3に送信する(図10、ステップS505)。
【0087】
通信端末装置1_2は、図6に示すフローチャートのステップS301において、通信端末装置1_1及び通信端末装置1_3からの通信品質要求信号CQREQを受信すると(図10、ステップS506)、図6に示すフローチャートのステップS302において、自装置の受信信号強度RSSIrfを測定し(図10、ステップS507)、当該受信信号強度RSSIrfを通信端末装置1_1及び通信端末装置1_3に送信する(図10、ステップS508)。
【0088】
通信端末装置1_3は、図6に示すフローチャートのステップS301において、通信端末装置1_1及び通信端末装置1_2からの通信品質要求信号CQREQを受信すると(図10、ステップS509)、図6に示すフローチャートのステップS302において、自装置の受信信号強度RSSIrfを測定し(図10、ステップS510)、当該受信信号強度RSSIrfを通信端末装置1_1及び通信端末装置1_2に送信する(図10、ステップS511)。
【0089】
通信端末装置1_2は、図5に示すフローチャートのステップS203において、通信端末装置1_1からの受信信号強度RSSIrfを受信して他装置受信信号強度RSSIext(1_1)として取得すると共に、通信端末装置1_3からの受信信号強度RSSIrfを受信して他装置受信信号強度RSSIext(1_3)として取得する(図10、ステップS512)。
【0090】
通信端末装置1_2は、他装置受信信号強度判定処理として、例えば、図5に示すフローチャートのステップS204からステップS206までの処理を行う(図10、ステップS513)。これにより、通信端末装置1_1の他装置受信信号強度RSSIext(1_1)は、他装置受信信号強度閾値(第2閾値)RSSIth2以上であり(ステップS206;Yes)、通信端末装置1_1がリピータ動作要求の対象装置であることが導出される。また、通信端末装置1_3の他装置受信信号強度RSSIext(1_3)は、他装置受信信号強度閾値(第2閾値)RSSIth2未満であり(ステップS206;No)、通信端末装置1_3がリピータ動作要求の非対象装置であることが導出される。
【0091】
通信端末装置1_2は、図5に示すフローチャートのステップS207において、通信端末装置1_1に対してリピータ動作要求信号REPREQを送信すると共に、通信端末装置1_3に対してリピータ動作不要信号NOTREPを送信する(図10、ステップS514)。
【0092】
通信端末装置1_3は、図5に示すフローチャートのステップS203において、通信端末装置1_1からの受信信号強度RSSIrfを受信して他装置受信信号強度RSSIext(1_1)として取得すると共に、通信端末装置1_2からの受信信号強度RSSIrfを受信して他装置受信信号強度RSSIext(1_2)として取得する(図10、ステップS515)。
【0093】
通信端末装置1_3は、他装置受信信号強度判定処理として、例えば、図5に示すフローチャートのステップS204からステップS206までの処理を行う(図10、ステップS516)。これにより、通信端末装置1_1の他装置受信信号強度RSSIext(1_1)は、他装置受信信号強度閾値(第2閾値)RSSIth2以上であり(ステップS206;Yes)、通信端末装置1_1がリピータ動作要求の対象装置であることが導出される。また、通信端末装置1_2の他装置受信信号強度RSSIext(1_2)は、他装置受信信号強度閾値(第2閾値)RSSIth2未満であり(ステップS206;No)、通信端末装置1_2がリピータ動作要求の非対象装置であることが導出される。
【0094】
通信端末装置1_3は、図5に示すフローチャートのステップS207において、通信端末装置1_1に対してリピータ動作要求信号REPREQを送信すると共に、通信端末装置1_2に対してリピータ動作不要信号NOTREPを送信する(図10、ステップS517)。
【0095】
通信端末装置1_1は、図6に示すフローチャートのステップS305において、通信端末装置1_2及び通信端末装置1_3からのリピータ動作要求信号REPREQを受信すると(図10、ステップS518)、図6に示すフローチャートのステップS307においてリピート動作行っていない場合に、図6に示すフローチャートのステップS308において、上述したダイバーシティ動作(図4参照)において受信設定していないRFモジュールに対して送信設定を行い、リピータ動作を開始する(図10、ステップS519)。
【0096】
通信端末装置1_2は、図6に示すフローチャートのステップS306において、通信端末装置1_3から送信されたリピータ動作不要信号NOTREPを受信すると(図10、ステップS520)、図6に示すフローチャートのステップS310においてリピート動作行っている場合に、図6に示すフローチャートのステップS311において、リピータ動作を停止する(図10、ステップS521)。
【0097】
通信端末装置1_3は、図6に示すフローチャートのステップS306において、通信端末装置1_2から送信されたリピータ動作不要信号NOTREPを受信すると(図10、ステップS522)、図6に示すフローチャートのステップS310においてリピート動作行っている場合に、図6に示すフローチャートのステップS311において、リピータ動作を停止する(図10、ステップS523)。
【0098】
上述した処理により、通信端末装置1_2及び通信端末装置1_3の通信品質が向上し、良好な通信状態を維持することができる。
【0099】
図4から図6に示した処理を無線基地局200のカバレッジエリア300内の複数の通信端末装置1が連携して複合的に行うことにより、複数の通信端末装置1間でリレーコネクションが構築される。図11は、実施形態1に係る複数の通信端末装置による連携動作例を示す概念図である。
【0100】
図11に示すように、無線基地局200のカバレッジエリア300内の通信端末装置A,B,Cがそれぞれ図4から図6に示す処理を行うことで、例えば、通信端末装置Aが再送信した無線信号を通信端末装置Bがさらに再送信し、通信端末装置Bが再送信した無線信号を通信端末装置Cが受信するというようなリレーコネクションが構築される。このように、複数の通信端末装置間で相互に連携してリレーコネクションを構築することにより、無線基地局200のカバレッジエリア300内における通信品質を高めることができ、通信のロバスト性を高めること(トラブル耐性の向上、つまり通信品質を安定させること)ができる。
【0101】
(実施形態2)
図12は、実施形態2に係る通信端末装置のブロック構成の一例を示す図である。図12に示すように、実施形態2に係る通信端末装置1aでは、実施形態1の構成に加えて、第1カプラ回路(COP1)5a及び第2カプラ回路(COP2)5bを備えている。なお、通信システム100の概略構成及び通信端末装置1aの動作フローチャートについては、実施形態1と同様であるので説明を省略する。また、図12に示すブロック構成は、図2A及び図3Aに示す第1例に対比した構成であるが、図2B及び図3Bに示す第2例に対比した構成であっても良い。
【0102】
図13Aは、実施形態2に係る第1カプラ回路及び第2カプラ回路のブロック構成の一例を示す第1図である。図13Bは、実施形態2に係る第1カプラ回路及び第2カプラ回路のブロック構成の一例を示す第2図である。
【0103】
第1カプラ回路5aは、カプラ51a及びスイッチ52aを備えている。
【0104】
第2カプラ回路5bは、カプラ51b及びスイッチ52bを備えている。
【0105】
第1カプラ回路5a及び第2カプラ回路5bは、第1RFモジュール2a及び第2RFモジュール2bと同様に、例えば、可撓性を有するフレキシブル基板上に各構成部が構成される態様であっても良いし、誘電体基板上に各構成部が構成される態様であっても良い。第1カプラ回路5a及び第2カプラ回路5bの具体的な構成により本開示が限定されるものではない。
【0106】
カプラ51aは、通信線4aのIF信号を分岐する。カプラ51bは、通信線4bのIF信号を分岐する。カプラ51aの分岐端子53aとカプラ51bの分岐端子53bとは、スイッチ52a,52bを介して、通信線6により互いに接続されている。
【0107】
通信線4a及び通信線4bがメタルケーブルである場合、通信線6もメタルケーブルであることが望ましい。この場合、カプラ51a及びカプラ51bは、RF受動素子で構成される。
【0108】
通信線4a及び通信線4bが光ファイバケーブルである場合、通信線6も光ファイバケーブルであることが望ましい。この場合、カプラ51a及びカプラ51bは、光ファイバカプラで構成される。
【0109】
次に、第1カプラ回路5a及び第2カプラ回路5bの動作について説明する。
【0110】
実施形態2に係る通信端末装置1aにおいてリピータ動作を行わない場合、図13Aに示すように、スイッチ52a,52bはオフされる。一方、通信端末装置1aにおいてリピータ動作を行う場合、図13Bに示すように、スイッチ52a,52bはオンされる。具体的には、実施形態1において説明した図6に示すフローチャートのステップS308において送信設定を行う際、スイッチ52a,52bはオンされる。これにより、ベースバンドモジュール3を経由することなく、通信線6を介して、リピータ動作を行うことができる。
【0111】
(実施形態3)
図14は、実施形態3に係る通信端末装置のブロック構成の一例を示す図である。図14に示すように、実施形態3に係る通信端末装置1bでは、第1カプラ回路(COP1)7aと第2カプラ回路(COP2)7bとの間で通信を行うことにより、リピータ動作を行う構成である。なお、通信システム100の概略構成及び通信端末装置1bの動作フローチャートについては、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0112】
図15Aは、実施形態3に係る第1カプラ回路及び第2カプラ回路のブロック構成の一例を示す第1図である。図15Bは、実施形態3に係る第1カプラ回路及び第2カプラ回路のブロック構成の一例を示す第2図である。
【0113】
第1カプラ回路7aにおいて、カプラ71aは、実施形態2のカプラ51aに相当する構成部である。また、スイッチ72aは、実施形態2のスイッチ52aに相当する構成部である。第1カプラ回路7aは、カプラ71a及びスイッチ72aに加えて、アンテナ74aを備えている。
【0114】
第2カプラ回路7bにおいて、カプラ71bは、実施形態2のカプラ51bに相当する構成部である。また、スイッチ72bは、実施形態2のスイッチ52bに相当する構成部である。第2カプラ回路7bは、カプラ71b及びスイッチ72bに加えて、アンテナ74bを備えている。
【0115】
第1カプラ回路7a及び第2カプラ回路7bは、実施形態2の第1カプラ回路5a及び第2カプラ回路5bと同様に、例えば、可撓性を有するフレキシブル基板上に各構成部が構成される態様であっても良いし、誘電体基板上に各構成部が構成される態様であっても良い。第1カプラ回路7a及び第2カプラ回路7bの具体的な構成により本開示が限定されるものではない。
【0116】
カプラ71aは、通信線4aのIF信号を分岐する。カプラ71aの分岐端子73aには、スイッチ72aを介して、アンテナ74aが接続されている。
【0117】
カプラ71bは、通信線4bのIF信号を分岐する。カプラ71bの分岐端子73bには、スイッチ72bを介して、アンテナ74bが接続されている。
【0118】
次に、第1カプラ回路7a及び第2カプラ回路7bの動作について説明する。
【0119】
実施形態3に係る通信端末装置1bにおいてリピータ動作を行わない場合、図15Aに示すように、スイッチ72a,72bはオフされる。一方、通信端末装置1bにおいてリピータ動作を行う場合、図15Bに示すように、スイッチ72a,72bはオンされる。具体的には、実施形態1において説明した図6に示すフローチャートのステップS308において送信設定を行う際、スイッチ72a,72bはオンされる。これにより、ベースバンドモジュール3を経由することなく、アンテナ74a及びアンテナ74bを介した無線通信によりリピータ動作を行うことができる。
【0120】
(実施形態4)
図16は、実施形態4に係る通信端末装置の一例を示す概略図である。
【0121】
上述した実施形態1では、第1RFモジュール2a及び第2RFモジュール2bがアンテナとRFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)とが一体化された態様について説明したが、本実施形態では、図16に示すように、例えば眼鏡型のウェアラブル通信端末装置である通信端末装置1cのレンズ12に誘電体基板8a,8bの上にパッチアンテナ9とダイポールアンテナ20が配置された態様について説明する。なお、本実施形態では、誘電体基板8a,8bにパッチアンテナ9とダイポールアンテナ20の両方が配置されているが、一方のアンテナのみが配置されていても良い。ダイポールアンテナで信号を送受信する場合、グランドプレーンを備える必要はない。パッチアンテナで信号を送受信する場合、グランドプレーンが必要となるが、指向性を視野方向に集中させることが可能となる。
【0122】
本実施形態において、パッチアンテナ9およびダイポールアンテナ20は、図16に示すように、平面視において通信端末装置1cのレンズ12と重なる。なお、誘電体基板8a,8bはフィルム形状で、レンズに張り付けられても良い。また、本実施形態では、誘電体基板8a,8bは矩形形状であるが、レンズと同じ形状を有し、レンズ全面の上に貼りつけられていてもよい。
【0123】
アレーアンテナを設ける誘電体基板8a,8bとしては、レンズの視認性を妨げないようにするために、透明の基板が用いられている。さらに、パッチアンテナ9、ダイポールアンテナ20、グランドプレーン、給電線等は、酸化インジウムスズ等の透明導電材料で形成される。誘電体基板8a,8bは、例えば透明接着剤により通信端末装置1cのレンズ12の表面に貼り付けられる。この場合、例えば通信端末装置1cのレンズ12の透明保護膜が、誘電体基板8a,8bとして利用される態様であっても良く、透明保護膜の内部に、透明導電材料からなるパッチアンテナ9、ダイポールアンテナ20、グランドプレーン、給電線等が配置される態様であっても良い。
【0124】
本実施形態のように、誘電体基板8a,8b、パッチアンテナ9、及びダイポールアンテナ20を透明材料で形成することにより、アンテナの配置の自由度を高めることができる。
【0125】
図16では、通信端末装置1cのレンズ12の表面に貼り付ける構成としたが、通信端末装置1cのレンズ12の裏面や、通信端末装置1cのレンズ12の内層に、パッチアンテナ9、ダイポールアンテナ20、またはその両方を配置してもよい。
【0126】
(実施形態5)
図17Aは、実施形態5に係る通信システムの概略構成の第1例を示す模式図である。図17Bは、実施形態5に係る通信システムの概略構成の第2例を示す模式図である。
【0127】
本実施形態では、図17A及び図17Bに示すように、眼鏡型のウェアラブル通信端末装置である第1通信端末装置1dと、第1通信端末装置1dのユーザーが所持する第2通信端末装置1e,1fと、を有している。例えば第2通信端末装置1e,1fは、少なくとも第1通信端末装置1dとの間で信号の送受信を行う。
【0128】
図17A及び図17Bにおいて、第2通信端末装置1eは、例えばスマートフォンやタブレットPC等の携帯型情報通信端末装置である。図17A及び図17Bでは、第2通信端末装置1eがユーザーのポケットやバッグ等に収納された例を示している。また、図17A及び図17Bにおいて、第2通信端末装置1fは、例えば腕時計型のウェアラブル端末である。第2通信端末装置1e,1fの態様により本開示が限定されるものではない。
【0129】
図17Aに示す第1例では、第1通信端末装置1dの受信信号強度よりも第2通信端末装置1eの受信信号強度が大きい場合を想定している。この場合、第2通信端末装置1eは、無線基地局200のカバレッジエリア300内で受信した第1信号を第1通信端末装置1dに送信し、第1通信端末装置1dは、第2通信端末装置1eから送信された第1信号を受信する。また、第1通信端末装置1dは、第2通信端末装置1eが無線基地局200のカバレッジエリア300内で受信した第1信号を再送信するための第2信号を第2通信端末1eに送信する。第2通信端末1eは、当該第2信号を受信すると、第1信号の再送信を行う。これにより、第2通信端末装置1eが受信した第1信号を、例えば、無線基地局200のカバレッジエリア300内に存在する他の第1通信端末装置1dに再送信することができる。
【0130】
図17Bに示す第1例では、第1通信端末装置1dの受信信号強度よりも第2通信端末装置1fの受信信号強度が大きい場合を想定している。この場合、第2通信端末装置1fは、無線基地局200のカバレッジエリア300内で受信した第1信号を第1通信端末装置1dに送信し、第1通信端末装置1dは、第2通信端末装置1fから送信された第1信号を受信する。また、第1通信端末装置1dは、第2通信端末装置1fが無線基地局200のカバレッジエリア300内で受信した第1信号を再送信するための第2信号を第2通信端末1fに送信する。第2通信端末1fは、当該第2信号を受信すると、第1信号の再送信を行う。これにより、第2通信端末装置1fが受信した第1信号を、例えば、無線基地局200のカバレッジエリア300内に存在する他の第1通信端末装置1dに再送信することができる。
【0131】
このように、第1通信端末装置1dの受信信号強度が低い場合に、第1通信端末装置1dのユーザーが所持する第2通信端末装置1e,1fの受信信号を第1通信端末装置1dが再送信する態様とすることで、カバレッジエリア内の通信品質をより高めることができ、通信のロバスト性をより高めること(トラブル耐性の向上、つまり通信品質をより安定させること)ができる。
【0132】
上記した各実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0133】
また、本開示は、上述したように、あるいは、上述に代えて、以下の構成をとることができる。
【0134】
(1)本発明の一側面の通信端末装置は、光学透過型のディスプレイを搭載した眼鏡型の通信端末装置であって、高周波信号処理を行う2つのRFモジュールと、2つの前記RFモジュールとそれぞれ通信線を介して通信可能に接続され、ベースバンド信号処理を行うベースバンドモジュールと、を備え、2つの前記RFモジュールは、前記ベースバンドモジュールによって選択的に切り替えられて受信動作を行い、2つの前記RFモジュールの一方で受信動作を行っているとき、当該一方のRFモジュールの受信信号を他方のRFモジュールから再送信する。
【0135】
この構成では、2つのRFモジュールの一方で受信動作を行い、残る他方のRFモジュールで受信信号の再送信を行う。これにより、例えば無線基地局のカバレッジエリア内に複数の通信端末装置が配置され、複数の通信端末装置が多数同時接続される場合に、複数の通信端末装置間で相互に連携してリレーコネクションを構築することで、カバレッジエリア内の通信品質を高めることができ、通信のロバスト性を高めること(トラブル耐性の向上、つまり通信品質を安定させること)ができる。
【0136】
(2)上記(1)の通信端末装置において、2つの前記RFモジュールの一方と前記ベースバンドモジュールとの間の通信線の信号を分岐する第1カプラ回路と、2つの前記RFモジュールの他方と前記ベースバンドモジュールとの間の通信線の信号を分岐する第2カプラ回路と、前記第1カプラ回路の分岐端子と前記第2カプラ回路の分岐端子との間に設けられた通信経路と、を備えると良い。
【0137】
(3)上記(2)の通信端末装置において、前記通信端末装置は、前記第1カプラ回路の分岐端子と前記第2カプラ回路の分岐端子との間に設けられた通信線を介してリピータ動作を行うと良い。
【0138】
この構成では、ベースバンドモジュールを経由することなく、通信線を介して、リピータ動作を行うことができる。
【0139】
(4)上記(2)の通信端末装置において、前記通信端末装置は、前記第1カプラ回路の分岐端子に接続されたアンテナと前記第2カプラ回路の分岐端子に接続されたアンテナとを介した無線通信によりリピータ動作を行うと良い。
【0140】
この構成では、ベースバンドモジュールを経由することなく、アンテナを介した無線通信によりリピータ動作を行うことができる。
【0141】
(5)上記(1)から(4)の何れかの通信端末装置において、2つの前記RFモジュールは、それぞれ左右のテンプルに設けられている。
【0142】
(6)上記(1)から(4)の何れかの通信端末装置において、前記通信端末装置のレンズに設けられたアンテナを備える。
【0143】
この構成では、アンテナを透明材料で形成することにより、アンテナの配置の自由度を高めることができる。
【0144】
(7)本発明の一側面の通信システムは、上記(1)から(6)の何れかの通信端末装置が無線基地局のカバレッジエリア内に複数配置された通信システムであって、前記通信端末装置は、受信信号強度が所定の第1閾値未満である場合に、他の通信端末装置に対して、当該他の通信端末装置の受信信号強度を要求する通信品質要求信号を送信し、他の通信端末装置からの通信品質要求信号に応じて、前記受信信号強度を他の通信端末装置に送信し、他の通信端末装置から送信された受信信号強度が所定の第2閾値以上である場合に、当該他の通信端末装置に対して、リピータ動作を要求するリピータ動作要求信号を送信し、前記リピータ動作要求信号に応じて、前記受信信号を再送信する。
【0145】
この構成では、無線基地局のカバレッジエリア内に複数の通信端末装置が配置され、複数の通信端末装置が多数同時接続される場合に、複数の通信端末装置間で相互に連携することで、複数の通信端末装置間でリレーコネクションが構築される。これにより、カバレッジエリア内の通信品質を高めることができ、通信のロバスト性を高めること(トラブル耐性の向上、つまり通信品質を安定させること)ができる。
【0146】
(8)上記(7)の通信システムにおいて、前記通信端末装置は、他の通信端末装置から送信された受信信号強度が前記第2閾値未満である場合に、当該他の通信端末装置に対して、リピータ動作の停止を要求するリピータ動作不要信号を送信し、他の通信端末装置から送信されたリピータ動作不要信号に応じて、前記受信信号の再送信を停止すると良い。
【0147】
(9)上記(8)の通信システムにおいて、前記通信端末装置は、少なくとも1つの他の通信端末装置から送信される前記リピータ動作要求信号に基づき、前記受信信号を再送信すると良い。
【0148】
(10)上記(9)の通信システムにおいて、前記通信端末装置は、少なくとも1つの他の通信端末装置から前記リピータ動作不要信号が送信され、且つ、他の何れの通信端末装置から前記リピータ動作要求信号が送信されていない場合に、前記受信信号の再送信を停止すると良い。
【0149】
(11)上記(7)から(10)の何れかの通信システムにおいて、前記第2閾値は、前記第1閾値よりも大きいと良い。
【0150】
(12)上記(7)から(11)の何れかの通信システムにおいて、前記通信端末装置は、複数の通信端末装置が多数同時接続される場合に、前記受信信号の再送信を行うと良い。
【0151】
(13)上記(7)から(12)の何れかの通信システムにおいて、眼鏡型の前記通信端末装置である第1通信端末装置と、前記第1通信端末装置のユーザーが所持する第2通信端末装置と、を有し、前記第2通信端末装置は、前記カバレッジエリア内で受信した第1信号を前記第1通信端末装置に送信し、前記第1通信端末装置は、前記第1信号を受信すると共に、前記第2通信端末装置が前記第1信号を再送信するための第2信号を送信し、前記第2通信端末装置は、前記第2信号を受信して、前記第1信号の再送信を行うと良い。
【0152】
この構成では、カバレッジエリア内の通信品質をより高めることができ、通信のロバスト性をより高めること(トラブル耐性の向上、つまり通信品質をより安定させること)ができる。
【0153】
本開示により、ミリ波帯通信に対応した通信回路の性能を十分に活かせる通信装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0154】
1,1_1,1_2,1_3,1_n,1a,1b,1c 通信端末装置
1d 第1通信端末装置
1e,1f 第2通信端末装置
2a 第1RFモジュール
2b 第2RFモジュール
3 ベースバンドモジュール
3a 第1ベースバンドモジュール
3b 第2ベースバンドモジュール
4a,4b,4c,4d,4e 通信線
5a,7a 第1カプラ回路
5b,7b 第2カプラ回路
6 通信線
8a,8b 誘電体基板
9 パッチアンテナ
10 テンプル
11 フレーム
12 レンズ
20 ダイポールアンテナ
51a,51b,71a,71b カプラ
52a,52b,72a,72b スイッチ
53a,53b,73a,73b 分岐端子
74a,74b アンテナ
100 通信システム
200 無線基地局
300 カバレッジエリア
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15A
図15B
図16
図17A
図17B