(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】生体センサ
(51)【国際特許分類】
G01B 7/16 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
G01B7/16 R
(21)【出願番号】P 2020124741
(22)【出願日】2020-07-21
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】和田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】奥宮 保郎
(72)【発明者】
【氏名】谷高 幸司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克典
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-74574(JP,A)
【文献】特開2000-304628(JP,A)
【文献】特開2018-96870(JP,A)
【文献】実開昭63-122210(JP,U)
【文献】国際公開第2020/013046(WO,A1)
【文献】特開2019-90722(JP,A)
【文献】特開2017-203656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/16
G01L 1/00
G01L 1/22
G01L 5/00
A61B 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のフレームを有する固定部材と、
長手方向に伸縮する糸状又は帯状の第1歪センサ素子及び第2歪センサ素子と
を備え、
前記第1歪センサ素子及び前記第2歪センサ素子が、交差するように前記フレームに架け渡されており、
前記フレームが、少なくとも前記第1歪センサ素子の長手方向及び前記第2歪センサ素子の長手方向に変形可能に構成されている生体センサ。
【請求項2】
前記第1歪センサ素子及び前記第2歪センサ素子の交差位置が、前記フレームの中心位置である請求項1に記載の生体センサ。
【請求項3】
前記フレームが、円環状又は多角環状である請求項1又は請求項2に記載の生体センサ。
【請求項4】
前記固定部材が、前記第1歪センサ素子の長手方向に沿って前記フレームの外縁から互いに逆方向に延出する棒状又は板状の第1補強部及び第2補強部を有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載の生体センサ。
【請求項5】
可撓性を有し、前記固定部材を固定する帯状の基材と、
前記基材の表面に前記第1歪センサ素子の長手方向に沿って延びる棒状又は板状の第1保持部及び第2保持部と
を備え、
前記第1保持部及び第2保持部が、前記フレームの外側に、前記フレームを挟んで前記第2歪センサ素子の長手方向に対向するように配置されている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の生体センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体センサに関する。
【背景技術】
【0002】
人や動物等の測定対象の動きをセンサによって検出して数値データ化する多様な試みがなされている。
【0003】
これらの測定対象の動きを検出する装置として、伸縮に応じて抵抗値の変化する歪センサ素子を用いた歪センサが公知である(例えば国際公開第2019/031381号参照)。動きの検出に歪センサ素子を用いることで、非侵襲で装着感に優れるセンサを構成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
歪センサ素子は、糸状あるいは帯状であり、その長手方向の伸縮による抵抗値の変化で測定対象の動きを検出することができる。この歪センサ素子を測定対象に対して自然長で装着した場合、前記歪センサ素子を伸ばす方向(以下、単に「伸び方向」ともいう)に測定対象が動くと、その伸びにより前記歪センサ素子が伸びて抵抗値が変化するので、測定対象の動きを検出することができる。これに対し、前記歪センサ素子を縮める方向(以下、単に「縮み方向」ともいう)に測定対象が動くと、前記歪センサ素子は自然長で装着されているため、前記歪センサは弛みを誘発するのみで、縮まない。つまり、前記歪センサに抵抗値の変化が生じないため、測定対象の動きを検出することができない。
【0006】
縮み方向に測定対象が動いても測定対象の動きを検出できるようにするため、前記従来の歪センサは、前記歪センサ素子にあらかじめ張力(プリテンション)を与えて、つまり前記歪センサ素子を一定の長さに伸ばした状態で測定対象に装着される。この場合、縮み方向に測定対象が動いても、前記歪センサ素子が自然長へ戻る方向へ縮むため、前記歪センサ素子に抵抗値の変化が生じ、測定対象の動きを検出することができる。
【0007】
このプリテンションは、不足すると前記歪センサ素子が弛むため縮み方向の動きの検出が不可能となる。一方、前記プリテンションが過剰となると、伸び方向に測定対象が動いた際に、計測回路側でレンジオーバーが生じて計測不可能となるといった不都合が生じ得る。このため前記プリテンションは適切に付与する必要があり、前記歪みセンサ素子の装着に手間がかかる。
【0008】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、非侵襲で装着感に優れ、容易に装着可能であるとともに、測定対象の縮み方向の動きも検出することができる生体センサの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る生体センサは、環状のフレームを有する固定部材と、長手方向に伸縮する糸状又は帯状の第1歪センサ素子及び第2歪センサ素子とを備え、前記第1歪センサ素子及び前記第2歪センサ素子が、交差するように前記フレームに架け渡されており、前記フレームが、少なくとも前記第1歪センサ素子の長手方向及び前記第2歪センサ素子の長手方向に変形可能に構成されている。
【0010】
前記第1歪センサ素子及び前記第2歪センサ素子の交差位置が、前記フレームの中心位置であるとよい。
【0011】
前記フレームが、円環状又は多角環状であるとよい。
【0012】
前記固定部材が、前記第1歪センサ素子の長手方向に沿って前記フレームの外縁から互いに逆方向に延出する棒状又は板状の第1補強部及び第2補強部を有するとよい。
【0013】
可撓性を有し、前記固定部材を固定する帯状の基材と、前記基材の表面に前記第1歪センサ素子の長手方向に沿って延びる棒状又は板状の第1保持部及び第2保持部とを備え、前記第1保持部及び第2保持部が、前記フレームの外側に、前記フレームを挟んで前記第2歪センサ素子の長手方向に対向するように配置されているとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様に係る生体センサは、人体等の測定対象の表面に貼り付けて使用することができるので、非侵襲で装着感に優れる。また、当該生体センサは、前記第1歪センサ素子の伸び方向に前記測定対象が動く場合、前記第1歪センサ素子により前記測定対象の動きを検出できる。一方、前記第1歪センサ素子の縮み方向に前記測定対象が動く場合、前記フレームの変形により前記第1歪センサ素子と交差する前記第2歪センサ素子が伸びるので、前記第2歪センサ素子により前記測定対象の動きを検出できる。つまり、当該生体センサは、前記第1歪センサ素子の伸び方向への測定対象の動きに加え、縮み方向への動きも検出することができる。さらに、当該生体センサは、装着持にプリテンションを与えて装着する必要がないので、容易に装着可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る生体センサを示す模式的斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1とは異なる実施形態に係る生体センサのフレーム付近を示す模式的部分拡大平面図である。
【
図4】
図4は、測定対象に動きがない場合における
図1の生体センサのフレーム付近を示す模式的部分拡大平面図である。
【
図5】
図5は、測定対象が第1歪センサ素子の伸び方向に動いた場合における
図1の生体センサのフレーム付近を示す模式的部分拡大平面図である。
【
図6】
図6は、測定対象が第1歪センサ素子の縮み方向に動いた場合における
図1の生体センサのフレーム付近を示す模式的部分拡大平面図である。
【
図7】
図7は、
図1及び
図3とは異なる実施形態に係る生体センサのフレーム付近を示す模式的部分拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0017】
図1及び
図2に示す生体センサ1は、基材10と、固定部材20と、第1歪センサ素子31及び第2歪センサ素子32と、保持部40とを備える。これらの構成要素はいずれも薄いものとすることができるので、当該生体センサ1は全体としても薄いものとすることができる。
【0018】
固定部材20は、環状のフレーム21を有し、第1歪センサ素子31及び第2歪センサ素子32は、交差するようにフレーム21に架け渡されている。また、基材10は、固定部材20を固定する。当該生体センサ1は、呼吸計測等の人体挙動を測定するデバイスとして好適に用いられる。
【0019】
<基材>
基材10は、帯状であり可撓性を有する。
【0020】
基材10としては、固定部材20の伸縮を妨げない可撓性を有するものが好ましく、例えばニット、織物、不織布、ゴム、皮革等が挙げられるが、中でも伸縮性の高いニットが特に好適に用いられる。
【0021】
当該生体センサ1では、
図2に示すように、1枚の基材10の表面に固定部材20と、保持部40及び後述する配線33が固定されている。なお、
図2では、1枚の基材10の表面に固定部材20が固定されている構成を示しているが、この基材10の表面側にさらに1枚の基材10を積層し、2枚の基材10により固定部材20を挟んで固定する構成とすることが好ましい。このように2枚の基材10で固定部材20を挟むことで、装着感を向上できる。
【0022】
基材10は、後述する固定部材20のフレーム21に沿ってくり抜かれていることが好ましい。つまり、基材10は、固定部材20のフレーム21と平面視で重なる孔11を有することが好ましい。このように基材10に孔11を設けることで、固定部材20の環の内側に固定部材20の動きを妨げるものがなくなるため、第1歪センサ素子31及び第2歪センサ素子32に測定対象の動きが集中し易くなり、当該生体センサ1の感度を高めることができる。
【0023】
基材10の大きさは固定部材20等の大きさ等から適宜決定されるが、例えば長手方向が5cm以上15cm以下、幅方向が2cm以上5cm以下とできる。当該生体センサ1の平面視の大きさは、この基材10の大きさで決まるが、このように比較的小型のものとすることが可能である。
【0024】
なお、基材10の裏面(固定部材20等が配設されていない面)に粘着層を設けてもよい。このように基材10の裏面に粘着層を設けることで、測定対象に容易に貼り付けたり、剥がしたりすることができる。
【0025】
<固定部材>
固定部材20は、フレーム21に加え、
図1に示すように、第1歪センサ素子31の長手方向に沿ってフレーム21の外縁から互いに逆方向に延出する棒状又は板状の2つの補強部22(第1補強部22a及び第2補強部22b)を有する。固定部材20は、上述のように基材10に固定されている。固定部材20の固定方法は、特に限定されないが、例えば固定部材20の基材10に接する全面を基材10に接着する方法を挙げることができる。
【0026】
(フレーム)
フレーム21は、少なくとも第1歪センサ素子31の長手方向及び第2歪センサ素子32の長手方向に変形可能に構成されている。
図1の生体センサ1では、フレーム21は円環状であり、フレーム21は任意の方向に変形可能である。このように任意の方向に変改可能とすることで、例えば測定対象の動きが第1歪センサ素子31の長手方向や第2歪センサ素子32の長手方向に沿わないものであってもその動きを捉え易くすることができる。ただし、第1歪センサ素子31の長手方向及び第2歪センサ素子32の長手方向以外の方向に変形することは必須ではない。
【0027】
フレーム21は、測定対象の動きにより変形可能な弾性力を有するように材質及び環の太さ(幅や径)が決定され、例えば幅0.5mm以上1mm以下のウレタンラバー、φ0.1mm以上1.0mm以下のバネ線材等を採用可能である。前記バネ線材としては、硬鋼線、ピアノ線、ステンレス鋼線、バネ用リン青銅などを挙げることができる。なお、フレーム21の環の太さは一様であることが好ましい。フレーム21の環の太さを一様とすることで、測定対象の動きに比例して第1歪センサ素子31及び第2歪センサ素子32を伸ばすことができるので、測定精度が高められる。
【0028】
フレーム21の大きさ(
図1の生体センサ1ではフレーム21が円環状であるので、その外径)は、フレーム21に架け渡される第1歪センサ素子31及び第2歪センサ素子32の感度等に応じて適宜決定されるが、例えば1cm以上3cm以下とできる。
【0029】
(補強部)
補強部22は、測定対象の第1歪センサ素子31の長手方向の動きを適確に捉え、フレーム21の変形を誘導するための部材である。例えば測定対象が人体であり、その動きが呼吸に起因する場合、呼吸による人体表面の動きは一様ではない。この補強部22を設けることで、補強部22が位置するいずれかの部位において人体表面の動きを捉えることができれば、その動きをフレーム21に伝えることができる。
【0030】
2つの補強部22である第1補強部22a及び第2補強部22bは、フレーム21を挟んで対称に設けられる。第1歪センサ素子31の長手方向の対称性を高めることで、測定対象の動きによるフレーム21の変形が不均一となることを抑止し、測定精度が高められる。また、測定精度の観点から、第1補強部22a及び第2補強部22bは、第1歪センサ素子31と一直線となるように配置されるとよい。
【0031】
補強部22の材質としては、フレーム21と同じものを用いることができる。
【0032】
補強部22の幅及び長さは、測定対象に応じて適宜最適化される。補強部22の幅や長さが短過ぎると、測定対象の動きを適確に捉えられないおそれがある。逆に、補強部22の幅や長さが長過ぎると、測定対象の動きにより補強部22を変位させ難くなり、フレーム21の変形量が低下するため、測定感度が低下するおそれがある。
【0033】
なお、補強部22は、測定感度の観点から第1歪センサ素子31の長手方向と平行に配置されることが好ましいが、第1歪センサ素子31の長手方向と角度を持って配置されることを否定するものではない。第1歪センサ素子31の長手方向と角度を持って配置されても当該生体センサ1は同様の効果を奏する。なお、補強部22と第1歪センサ素子31の長手方向とのなす角度は、例えば30度以下とされ、小さいほど好ましい。
【0034】
<歪センサ>
第1歪センサ素子31及び第2歪センサ素子32(以下、まとめて「歪センサ素子」ともいう)は、長手方向に伸縮する糸状又は帯状の部材である。歪センサ素子は、測定対象の動きを直接把握することができる。例えば人体の呼吸を測定する場合にあっては、呼吸の状態変化をリアルタイムに把握することができるので、呼吸に基づく何らかの諸疾患、例えば呼吸不全の予兆データを遅滞なく掌握できる。
【0035】
前記歪センサ素子は、伸縮性を有し、伸縮に応じて電気的特性が変化するものであればよく、伸縮により電気抵抗が変化する歪抵抗素子が好適に用いられる。中でも、前記歪センサ素子としては、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」ともいう)を用いたCNT歪センサが特に好適に用いられる。
【0036】
前記歪センサ素子が糸状である場合、この歪センサ素子は、CNT束を含んで構成される。このCNT束は、複数のCNT(単繊維)をCNT素子の長手方向に概略配向した繊維束であり、樹脂によって被覆される。糸状の歪センサ素子は、径方向の中心から外側に向けて、CNT束からなる導電部と、CNT繊維と樹脂とが複合された導電層と、樹脂製の被覆膜とをこの順で有する。前記歪センサ素子は、中心のCNT束が断裂し、その断裂した間隔が変化をすることで抵抗変化を生じさせることができる。
【0037】
一方、前記歪センサ素子が帯状である場合、この歪センサ素子は多数のCNT繊維を含む樹脂組成物から構成される。具体的には、前記歪センサ素子は、複数のCNT(単繊維)をCNT素子の長手方向に概略配向した複数の繊維束のシートと、これらの繊維束のシートを被覆する樹脂とを有する。この歪センサ素子は、伸長歪が加えられた場合、内部のCNT繊維が切断してCNTの端部が離間したり、伸長歪みが緩和されて再接触したりして抵抗値に変化を生じる。
【0038】
前記CNTとしては、単層のシングルウォールナノチューブ(SWNT)や、多層のマルチウォールナノチューブ(MWNT)のいずれも用いることができる。中でも、導電性及び熱容量等の点から、MWNTが好ましく、直径1.5nm以上100nm以下のMWNTがさらに好ましい。
【0039】
前記CNTは、公知の方法で製造することができ、例えばCVD法、アーク法、レーザーアブレーション法、DIPS法、CoMoCAT法等により製造することができる。中でも、所望するサイズのCNT(MWNT)を効率的に得ることができる点から、鉄を触媒とし、エチレンガスを用いたCVD法により製造することが好ましい。この場合、石英ガラス基板や酸化膜付きシリコン基板等の基板に、触媒となる鉄又はニッケル薄膜を成膜した上に、垂直配向して成長した所望の長さのCNTの結晶を得ることができる。
【0040】
第1歪センサ素子31及び第2歪センサ素子32の両端は、配線33を介して抵抗変化を測定する測定部(不図示)に接続される。なお、配線33は、第1歪センサ素子31及び第2歪センサ素子32の抵抗変化を独立して測定できるよう接続されている。
【0041】
第1歪センサ素子31の長手方向と、第2歪センサ素子32の長手方向とは直交していることが好ましい。第1歪センサ素子31の長手方向と、第2歪センサ素子32の長手方向とは直交していなくとも当該生体センサ1は同様の効果を奏するが、これらを直交させることで、特に第1歪センサ素子31が縮む方向の測定感度を高められる。
【0042】
一方、第1歪センサ素子31の長手方向と、第2歪センサ素子32の長手方向とは必ずしも交わらなくともよい。
図3に示す生体センサ2は、第1歪センサ素子31の長手方向と、第2歪センサ素子32の長手方向とが交わらない場合の構成を示している。この場合、第1歪センサ素子31の長手方向の延長線と、第2歪センサ素子32の長手方向の延長線とが交わるように構成される。なお、
図3の生体センサ2は、2組の第1歪センサ素子31及び第2歪センサ素子32を備えている。このように当該生体センサ2が、複数組の第1歪センサ素子31及び第2歪センサ素子32を備える構成とすることもできる。
【0043】
第1歪センサ素子31及び第2歪センサ素子32の交差位置は、フレーム21内の任意の位置に取り得るが、中でもフレーム21の中心位置であることが好ましい。つまり、円環状であるフレーム21の場合、第1歪センサ素子31及び第2歪センサ素子32の交差位置を円の中心とすることが好ましい。このように前記交差位置をフレーム21の中心位置とすることで、測定感度を高められる。なお、第1歪センサ素子31及び第2歪センサ素子32は、その交差位置で連結されていない。つまり、第1歪センサ素子31及び第2歪センサ素子32は、独立して動作するように配設されている。
【0044】
<保持部>
保持部40は、第1保持部40a及び第2保持部40bの2つの部材から構成されている。2つの保持部40(第1保持部40a及び第2保持部40b)は、棒状又は板状であり、基材10の表面に第1歪センサ素子31の長手方向に沿って延びている。この2つの保持部40は、フレーム21の外側に、フレーム21を挟んで第2歪センサ素子32の長手方向に対向するように配置されている。
【0045】
保持部40は、測定対象が動いた際に、第1歪センサ素子31の長手方向に基材10が動いて、例えば屈曲してしまい、測定対象の動きがフレーム21に十分に伝わらないことを抑止する。
【0046】
保持部40の材質としては、フレーム21と同じものを用いることができる。また、保持部40の幅、長さ及びフレーム21からの離間距離は、測定対象の動きがフレーム21に効果的に伝達されるように適宜決定される。
【0047】
<動作原理>
当該生体センサ1は、第1歪センサ素子31及び第2歪センサ素子32にプリテンションを付与することなく、第1歪センサ素子31の伸び方向及び縮み方向に対する測定対象の動きを検出できる。以下に、
図4から
図6を用いて、その動作原理を説明する。
【0048】
図4は、測定対象に動きがない場合の当該生体センサ1のフレーム21付近を示す図である。測定対象に動きがない場合、フレーム21は当初の形状を維持するため円環状である。
【0049】
測定対象が第1歪センサ素子31の伸び方向に動いた場合を
図5に示す。測定対象が第1歪センサ素子31の伸び方向に動くと、フレーム21は第1歪センサ素子31の長手方向を長軸とする楕円環状に変形する。この場合、第1歪センサ素子31が引き伸ばされるため、第1歪センサ素子31に抵抗変化が生じる。一方、第2歪センサ素子32は、プリテンションが与えられていないため、フレーム21の変化によって弛みが生じることとなり、抵抗変化は生じない。以上から、測定対象が第1歪センサ素子31の伸び方向に動いた場合は、第1歪センサ素子31の抵抗変化から、その動きを検出できる。
【0050】
これに対し、測定対象が第1歪センサ素子31の縮み方向に動いた場合を
図6に示す。測定対象が第1歪センサ素子31の縮み方向に動くと、フレーム21は第2歪センサ素子32の長手方向を長軸とする楕円環状に変形する。この場合、第1歪センサ素子31は、プリテンションが与えられていないため、フレーム21の変化によって弛みが生じることとなり、抵抗変化は生じない。逆に、第2歪センサ素子32が引き伸ばされるため、第2歪センサ素子32に抵抗変化が生じる。以上から、測定対象が第1歪センサ素子31の縮み方向に動いた場合は、第2歪センサ素子32の抵抗変化から、その動きを検出できる。
【0051】
このように当該生体センサ1では、測定対象が第1歪センサ素子31の伸び方向及び縮み方向のいずれに動いても、第1歪センサ素子31の抵抗変化又は第2歪センサ素子32の抵抗変化により、その動きを検出することができる。
【0052】
なお、上述の説明では第1歪センサ素子31及び第2歪センサ素子32にプリテンションが付与されていない場合を説明したが、プリテンションが与えられていても同様に機能する。従って、第1歪センサ素子31及び第2歪センサ素子32にプリテンションを付与することを否定するものではない。ただし、フレーム21が変形するようなプリテンションは与えられていないことが好ましい。
【0053】
<利点>
当該生体センサ1は、人体等の測定対象の表面に貼り付けて使用することができるので、非侵襲で装着感に優れる。また、当該生体センサ1は、第1歪センサ素子31の伸び方向に前記測定対象が動く場合、第1歪センサ素子31により前記測定対象の動きを検出できる。一方、第1歪センサ素子31の縮み方向に前記測定対象が動く場合、フレーム21の変形により第1歪センサ素子31と交差する第2歪センサ素子32が伸びるので、第2歪センサ素子32により前記測定対象の動きを検出できる。つまり、当該生体センサ1は、第1歪センサ素子31の伸び方向への測定対象の動きに加え、縮み方向への動きも検出することができる。さらに、当該生体センサ1は、装着持にプリテンションを与えて装着する必要がないので、容易に装着可能である。
【0054】
[その他の実施形態]
前記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、前記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて前記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0055】
前記実施形態では、固定部材が2つの補強部を有する場合を説明したが、補強部は1つまたは3つ以上であってもよい。この補強部は必須の構成要素ではない。フレームのみで測定対象の動きを捉えられる場合は、前記補強部は省略することができる。
【0056】
前記実施形態では、当該生体センサが2つの保持部を備える場合を説明したが、保持部は1つまたは3つ以上であってもよい。また、この保持部は必須の構成要素ではなく、省略することもできる。保持部を有さない生体センサにあっては、基材を省略することも可能である。本発明の生体センサは、保持部や基材を有さない構成であっても、同様の効果を奏する。
【0057】
前記実施形態では、フレームが円環状である場合を説明したが、少なくとも第1歪センサ素子の長手方向及び第2歪センサ素子の長手方向に変形可能に構成されていれば、他の形状を採用可能である。このようなフレームの形状としては、多角環状のものが挙げられる。
図7に示す生体センサ3では、フレーム23が多角環状の1つである菱形環の場合を示している。
【0058】
このような多角環状のフレーム23の場合には、第1歪センサ素子31の長手方向及び第2歪センサ素子32の長手方向がフレーム23の対角線の一部となるように構成することが好ましい。菱形のフレーム23の場合は、第1歪センサ素子31の長手方向及び第2歪センサ素子32の長手方向が菱形の2本の対角線を構成することとなる。このように構成すると、第1歪センサ素子31の長手方向の伸縮により、第2歪センサ素子32の長手方向にも変形が生じる。
【0059】
さらに、フレーム23が菱形であることで、第1歪センサ素子31及び第2歪センサ素子32は直交し、かつその交差位置がフレーム23の中心位置となる。このような構成とすることで、当該生体センサ3の測定精度及び測定感度を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明したように、本発明に係る生体センサは、非侵襲で装着感に優れ、容易に装着可能であるとともに、測定対象の縮み方向の動きも検出することができる。
【符号の説明】
【0061】
1、2、3 生体センサ
10 基材
11 孔
20 固定部材
21、23 フレーム
22 補強部
22a 第1補強部
22b 第2補強部
31 第1歪センサ素子
32 第2歪センサ素子
33 配線
40 保持部
40a 第1保持部
40b 第2保持部