IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-偽造防止媒体 図1
  • 特許-偽造防止媒体 図2
  • 特許-偽造防止媒体 図3
  • 特許-偽造防止媒体 図4
  • 特許-偽造防止媒体 図5
  • 特許-偽造防止媒体 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】偽造防止媒体
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/41 20140101AFI20240709BHJP
   B42D 25/333 20140101ALI20240709BHJP
   B41M 3/14 20060101ALI20240709BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240709BHJP
【FI】
B42D25/41
B42D25/333
B41M3/14
B32B7/023
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020125304
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021626
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】前平 誠
(72)【発明者】
【氏名】浦田 誠子
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-176593(JP,A)
【文献】特開平07-266763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 7/023
B32B 27/36
B41M 3/14
B42D 25/333
B42D 25/41
G02B 5/128
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリカーボネート樹脂を主成分とするコア層と、ポリカーボネート樹脂を主成分とするレーザー発色層と、ポリカーボネート樹脂を主成分とするオーバーレイ層をこの順に積層し、
前記コア層とレーザー発色層との間に再帰反射層を一部の領域に備え、
前記レーザー発色層と前記オーバーレイ層の間に可視光のうちフラッシュ光よりも弱い光を遮蔽し、かつ赤外線レーザー光を透過する隠蔽層を一部の領域に備えることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項2】
前記隠蔽層と前記レーザー発色層の間に絵柄層が挟まれていることを特徴とする請求項1に記載の偽造防止媒体。
【請求項3】
前記隠蔽層が混色墨インキまたは特定波長を吸収する黒色材料またはカーボンブラックのいずれかである、またはこれらの材料をそれぞれ所定のパターンに組み合わせて成ることを特徴とする請求項1または2に記載の偽造防止媒体。
【請求項4】
前記レーザー発色層に、レーザー光描画により可変情報を潜像として記録してなることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の偽造防止媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
偽造防止媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在世界的にもポリカーボネート素材のIDカードを使用する動きが増えている。これはカード内部にレーザーエングレービング(レーザー描画)によってID情報を記録することでカード外部から物理的にID情報を改竄することを防止するのに有効である。
【0003】
しかしながらID情報以外のカード自体のセキュリティ技術は依然としてOVIなどの特殊インキの印刷や内挿ホログラムがメインであり、これらの技術は目視でしか真贋の判断ができないため、信頼性に乏しいものとなっており、実際に多くの変偽造品が横行している。このため、例えばスマートフォンによる撮像画像を画像認識判定するような、目視によらない簡易な検証方法が求められている。
【0004】
氏名や顔写真などのID情報(可変情報)におけるセキュリティ技術はレンチキュラーレンズ(MLI/CLI)が主流となっている。これについては裏面から削り取って改竄する手法による変造品が報告されており、対策が必要である。
【0005】
これらに対して、再帰反射技術を用いることによってカード自体の真正性を確保し、セキュリティを高める技術が提案されている(下記特許文献1)。これは基材上に、再帰反射性ガラスビーズと無機蛍光体を含む再帰反射性ガラスビーズを印刷によって所定のパターンに配置することで、複製が困難な媒体を提供するものである。
【0006】
また更に、再帰反射材上に隠蔽層を設けて変偽造を困難にする対策も提案されている(下記特許文献2)。これは黒色の隠蔽層で再帰反射層の存在の有無の認識または再帰反射層の図柄の判別を困難にすることによって、変偽造防止対策とするものである。
【0007】
偽造防止の観点からは潜像を再帰反射層上に形成する技術も提案されている(下記特許文献3)。これは再帰反射層上に少なくとも一層のパターン配置された光学異性体を含む多層複屈折パターンを備えることで、特定の光学条件でのみ潜像が観察されるようにするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2002-189433号公報
【文献】特開2019-048397号公報
【文献】特開2013-073021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし上記特許文献1の技術では、再帰反射層としてのガラスビーズの粒子径が大きいため、パターンの付与にはスクリーン印刷が用いられることから、ID用途で可変情報を記録するためのオンデマンド印刷ができない。
【0010】
また上記特許文献2または3の技術では、再帰反射層上にインクジェットプリンタを用いてオンデマンド印刷をすることは可能であるが、可変情報が最表層に存在するため、物理的に削り取るなどして容易に変偽造されてしまうという欠点を有している。
【0011】
そこで、本発明は、上記のような課題に対処するためになされたものであって、再帰反射技術をポリカーボネート樹脂を主成分とする媒体に組み込んで、氏名、顔写真、QRコード(登録商標)などの可変情報を、レーザーエングレービングでポリカーボネート樹脂を主成分とする層の内部に潜像、すなわち特定の光学条件でのみ観察できる像として記録でき、またこの可変情報を外部から削り取るなどの物理的な手段で変造することを困難にしたセキュリティ性の高い偽造防止媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1 に記載の発明は、少なくともポリカーボネート樹脂を主成分とするコア層と、ポリカーボネート樹脂を主成分とするレーザー発色層と、ポリカーボネート樹脂を主成分とするオーバーレイ層をこの順に積層し、
前記コア層とレーザー発色層との間に再帰反射層を一部の領域に備え、
前記レーザー発色層と前記オーバーレイ層の間に可視光のうちフラッシュ光よりも弱い光を遮蔽し、かつ赤外線レーザー光を透過する隠蔽層を一部の領域に備えることを特徴とする偽造防止媒体である。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、前記隠蔽層と前記レーザー発色層の間に絵柄層が挟まれていることを特徴とする請求項1に記載の偽造防止媒体である。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、前記隠蔽層が混色墨インキまたは特定波長を吸収する黒色材料またはカーボンブラックのいずれかである、またはこれらの材料をそれぞれ所定のパターンに組み合わせて成ることを特徴とする請求項1または2に記載の偽造防止媒体である。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、前記レーザー発色層に、レーザー光描画により可変情報を潜像として記録してなることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の偽造防止媒体である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、隠蔽層の上からレーザーエングレービングすることによって、容易に可変情報を潜像として記録することができる。
【0017】
また、記録される可変情報は本媒体の中間層であるレーザー発色層に描画されるため、媒体の表面または裏面のいずれ側からも物理的に削り取って変造することが困難な構造となっている。
【0018】
特により目立たないことから狙われやすい裏側からの削り取りに対しては、可変情報が再帰反射層によって覆われていることから、変造がより困難な構造となっており、セキュリティ性が高く保たれている。
【0019】
また本発明によれば、セキュリティ要素としての潜像の形成が隠蔽層、レーザー発色層および再帰反射層の組み合わせだけでなされることから、潜像の観察を、従来から用いられているUVライトや偏光板フィルターなどの特別な光学的装置を用いることなく、例えばスマートフォンに具備されたフラッシュライトとデジタルカメラだけで簡便に、また外光の多寡によらず行うことが可能となる(図2
【0020】
また再帰反射層からの反射光は観察用入射光の方向にのみ戻ってくるため、検証用の撮影位置でのみ潜像が観察され、目視位置がこれと異なる場合は観察できない。このため第三者による盗み見を防止することができる(図3)。
【0021】
また本発明の一態様によれば、隠蔽層の形成方法の選択によって、観察波長に対して異なる潜像を付与することができることから、セキュリティ性をより高度に確保することができる。
【0022】
また本発明の実施に際しては、ポリカーボネート樹脂を主成分とするレーザー発色層の片面に再帰反射層を、その反対面に隠蔽層を設けるだけであることから、既にポリカーボネート基材を用いたIDカードやパスポートデータページの製造のために運用されている製造設備をそのまま使用することができ、導入が容易である。
【0023】
更に発行に用いるレーザー描画機についても、一般に使用されているものと同じものを用いることができるため、本構成の偽造防止媒体の使用にあたって、使用者側で特別な変更を行う必要がなく、汎用性が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態1におけるレーザーエングレービング前の偽造防止媒体の断面図。
図2】実施形態1における正面からの潜像観察を示す偽造防止媒体断面模式図。
図3】実施形態1における斜めからの潜像観察を示す偽造防止媒体断面模式図。
図4】A 実施形態1におけるレーザーエングレービング後の偽造防止媒体の断面図。 B 実施例1におけるレーザーエングレービング前後の観察条件毎の平面図。
図5】A 実施形態2におけるレーザーエングレービング後の偽造防止媒体の断面図。 B 実施例2におけるレーザーエングレービング前後の観察条件毎の平面図。
図6】A 実施形態3におけるレーザーエングレービング後の偽造防止媒体の断面図。 B 実施例3におけるレーザーエングレービング前後の観察条件毎の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下図1図4A図5Aおよび図6Aを用いて、各実施形態について説明する。
【0026】
<実施形態1>
図1は請求項1に記載の偽造防止媒体1の断面構造を示す模式図である。ポリカーボネートを主成分とするコア層11とポリカーボネートを主成分とするレーザー発色性基材によるレーザー発色層12の間に再帰反射印刷層21が、また前記レーザー発色層12とポリカーボネートを主成分とするオーバーレイ層13の間に混色墨インキによる隠蔽層22が形成されている。
【0027】
また図4A図1に示した偽造防止媒体1にレーザーエングレービングを施した後の断面構造を示す模式図である。レーザー光の入射を受けた部分12aが黒く変色している様子を表している。
【0028】
本実施形態によれば、偽造防止媒体の基材がポリカーボネートを主成分とすることからレーザーエングレービング時の昇温に対して耐熱性が高く、またレーザーエングレービングされるレーザー発色層が再帰反射印刷層と隠蔽層22に挟まれることによって、物理的切削変造が困難な構造となっている。
【0029】
<実施形態2>
図5Aは請求項2に記載の偽造防止媒体2のレーザーエングレービング後の断面構造を示すものである。図4Aで示した実施形態1との違いは、前記レーザー発色層12と前記隠蔽層22の間にカラー絵柄層31が形成されていることである。
【0030】
本実施形態によって、後述の実施例のようにフラッシュ撮影下では再帰反射層21上に形成されたレーザー発色層12aの潜像に加えて、カラー絵柄層31による着色された絵
柄も観察され、多様な識別要素を含ませることができる。
【0031】
<実施形態3>
図6Aは請求項3に記載の偽造防止媒体3のレーザーエングレービング後の断面構造を示すものである。図4Aで示した実施形態1との違いは、前記隠蔽層22の一部を特定波長の赤外線を透過する黒色インキに置き換えた隠蔽層23を有することである。
【0032】
本実施形態によれば、後述の実施例のように観察用の光源波長を選択することでそれぞれ異なる潜像を観察することができ、より多様な識別要素を含ませてセキュリティ性を向上することができる。
【0033】
以下、上述の各部材の詳細な構成について説明する。
【0034】
<コア層>
コア層11は、非晶性樹脂を主成分として含む。コア層11は、例えば、白色である。コア層11の主成分は、コア層11を構成する成分のなかで最も高い含有率を有する成分であり、例えば、コア層11のなかで50質量%以上の含有率を有する成分である。
【0035】
具体的には、コア層11は、ポリカーボネート、もしくは、ポリカーボネートと非晶質ポリエステルとのポリマーアロイを主成分として含むことが好ましい。非晶性ポリエステルおよびポリカーボネートは、非晶性樹脂の一例である。非晶性ポリエステルとしては、例えば、テレフタル酸とシクロヘキサンジメタノールおよびエチレングリコールとの共重合体、テレフタル酸とイソフタル酸およびエチレングリコールとの共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。コア層11を構成するポリマーは、イソシアネート等によって架橋されていてもよい。
【0036】
また、成形時の流動性の調整のために、コア層11の形成材料には、タルクやシリカが添加されていてもよいし、白色度の向上のために、コア層11の形成材料に、二酸化チタンが添加されていてもよい。
【0037】
<レーザー発色層>
レーザー発色層12は、ポリカーボネート、もしくは、ポリカーボネートと非晶質ポリエステルとのポリマーアロイなどを主成分として含み、レーザー光の照射を受けて不可逆的に着色するレーザー着色性を有する。レーザー発色層12の主成分は、レーザー発色層12を構成する成分のなかで最も高い含有率を有する成分であり、例えば、レーザー発色層12のなかで50質量%以上の含有率を有する成分である。レーザー発色層の厚みは50~200μmであることが好ましい。
【0038】
レーザー発色層12の主成分は、レーザー着色性を有する成分として、例えば炭素を含有する。そして、レーザー光の吸収によってレーザー発色層12が発熱し、その熱によって炭化が生じることによって、レーザー発色層12は黒く着色し、図4Aに示したようにレーザー発色層12aとなる。レーザーとしては、例えばYAGレーザー、YVO4レーザー、Coレーザーなどが用いられる。
【0039】
<オーバーレイ層>
オーバーレイ層13は、ポリカーボネート、もしくは、ポリカーボネートと非晶質ポリエステルとのポリマーアロイなどを主成分として含む。オーバーレイ層13は可視光域、観察光波長域およびレーザーエングレービングに用いるレーザー光波長域において十分な透過性を有する。オーバーレイ層13の主成分は、オーバーレイ層13を構成する成分のなかで最も高い含有率を有する成分であり、例えば、オーバーレイ層13のなかで50質
量%以上の含有率を有する成分である。
【0040】
<再帰反射層>
再帰反射層21はガラスビーズを主体とするインキを用いてスクリーン印刷などの印刷方法によって形成される。印刷後の乾燥方法としては、熱風乾燥、赤外線や紫外線照射による乾燥等が挙げられる。
【0041】
<カラー絵柄層>
カラー絵柄層31の印刷に用いられるインキの着色には、染料や顔料が用いられる。また、顔料として、アルミニウム、酸化チタン、真鍮等の金属顔料やパール顔料を用いてもよい。インキに含まれる樹脂としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ABSやそれらの共重合体、ポリマーアロイ等が挙げられる。
【0042】
なお、インキが溶剤型インキあるいは水系インキである場合には、上記乾燥方法のうち、熱風乾燥が行われ、インキが紫外線硬化型インキである場合には、上記乾燥方法のうち紫外線照射による硬化が行われればよい。
【0043】
<隠蔽層>
隠蔽層22は、直下に描画された可変情報を目視では確認できないように隠蔽するため濃色であること、かつフラッシュ撮影のためのフラッシュ光およびレーザーエングレービングのためのレーザー光を透過すること、これらの条件を満たす必要があることから、混色墨インキが望ましい。
【0044】
これに加えて実施形態3に示したように、特定波長の赤外線を透過する黒色インキ、カーボンブラックなど、混色墨と異なる材料を適宜組み合わせたパターンを形成することによってセキュリティ効果を高めることもできる。
【0045】
前記特定波長の赤外線を透過する黒色インキはある波長よりも長い波長に対して100パーセントの透過率を有し、また逆に短い波長の光は吸収する特徴を有するものである。ある波長とは、例えば700nm、900nm、1000nmなどを指す。
【実施例
【0046】
<実施例1>
実施形態1について、以下の条件で本発明の偽造防止媒体を作製した。図4を用いてその詳細について説明する。
【0047】
(シート作成)レーザー発色層12として100μm程度のレーザー発色性ポリカーボネートシートを準備し、片方の面に再帰反射層21を図4B下段の楕円に囲まれた白い四角状に示された部分にスクリーン印刷で形成した。また他方の面には隠蔽層22を前記再帰反射層21が完全に隠れるように図4Bの楕円状に示された部分にスクリーン印刷で形成した。
【0048】
(カード作成)コア層11であるコアシート、前記レーザー発色シート、オーバーレイ層13であるオーバーレイシートをこの順に重ねて、熱ラミネートしてカードを作成した。
【0049】
層構成はこの3層構造に限らず、コアシートの両側にレーザー発色シートとオーバーレイシートを積層して5層構成にすることもできる。またICインレットを組み込んでも良い。また必要に応じてオーバーレイシートに下地印刷を施したりホログラムを転写したり
しても良い。
【0050】
(レーザーエングレービング)カードにオーバーレイ層側から隠蔽層で覆われた部分に対して、隠蔽する文字列(図4B下段右の「ABCDE」で示されている部分)を描画して潜像を形成した。文字列の代わりに顔写真やQRコード(登録商標)などを描画しても良い。
【0051】
また図示していないが、同時に隠蔽層の無い部分にもレーザー光を照射して、顔写真やID情報などの可変情報を実像として描画することもできる。
【0052】
(検証)レーザーエングレービングされたカードを通常光源で観察した場合、図4B上段右のように隠蔽層のみが観察され、隠蔽層に覆われた潜像は観察することができない。
【0053】
しかしスマートフォンのフラッシュ光のように強い光を用いて撮影すると、光が隠蔽層を透過して再帰反射層に到達することで再帰反射した光と、前記レーザーエングレービングによって黒く変色して光を吸収する部分とのコントラストによって、図4B下段右のように隠蔽された文字列が観察される。
【0054】
また撮影された画像情報は、画像を目視確認するだけでなく、OCRやその他の画像解析ツールを用いて他の情報と連携して検証に使用することもできる。
【0055】
以上のように、実施例1においては、目視では観察されないレーザーエングレービングで形成した潜像を、スマートフォンに具備されたフラッシュライトとデジタルカメラだけで簡便に検証することができた。
【0056】
<実施例2>
実施形態2について、以下の条件で本発明の偽造防止媒体を作製した。図5を用いてその詳細について説明する。
【0057】
(シート作成)レーザー発色層12として100μm程度のレーザー発色性ポリカーボネートシートを準備し、片方の面に再帰反射層21を図5B下段の楕円に囲まれた白い四角状に示された部分にスクリーン印刷で形成した。また他方の面に、まず図5B下段の星形状に示された部分に所定の色のカラー絵柄層31を印刷した。
【0058】
更にその上に隠蔽層22を前記カラー絵柄層31と再帰反射層21が完全に隠れるように図5Bの楕円状に示された部分にスクリーン印刷で形成した。
【0059】
(カード作成)カード形成工程は実施例1と同様に行った。
【0060】
(レーザーエングレービング)カードにオーバーレイ層側から隠蔽層で覆われた部分に対して、隠蔽する絵柄として顔写真を描画して潜像を形成した。潜像としては顔写真に限らず文字列やQRコード(登録商標)などを描画しても良い。
【0061】
また図示していないが、同時に隠蔽層の無い部分にもレーザー光を照射して、ID情報などの可変情報を実像として描画することもできる。
【0062】
(検証)レーザーエングレービングされたカードを通常光源で観察した場合、図5B上段右のように隠蔽層のみが観察され、隠蔽層に覆われた潜像は観察することができない。
【0063】
しかしフラッシュ光のように強い光を用いて撮影すると、光が隠蔽層を透過して再帰反
射層に到達することで再帰反射した光と、前記レーザーエングレービングによって黒く変色して光を吸収する部分、およびカラー絵柄層によって所定の色に発光した部分のコントラストによって、図5B下段右のように隠蔽された顔写真と星形の絵柄部分が観察される。
【0064】
以上のように、実施例2においては、目視では観察されないカラー絵柄層とレーザーエングレービングで形成された潜像を、スマートフォンに具備されたフラッシュライトとデジタルカメラだけで簡便に検証することができた。
【0065】
<実施例3>
実施形態3について、以下の条件で本発明の偽造防止媒体を作製した。図6を用いてその詳細について説明する。
【0066】
(シート作成)レーザー発色層12として100μm程度のレーザー発色性ポリカーボネートシートを準備し、片方の面に再帰反射層21を図6B中段の楕円に囲まれた白い四角状に示された部分にスクリーン印刷で形成した。
【0067】
また他方の面には第一の隠蔽層22を図6B上段の楕円の上半分に波長800nm以上を透過する混色墨インクで、また第二の隠蔽層23を図6B上段の楕円の下半分に波長900nm以上を透過する特殊黒色材料で、それぞれスクリーン印刷によって形成し、前記再帰反射層21を覆い隠した。
【0068】
(カード作成)カード形成工程は実施例1と同様に行った。
【0069】
(レーザーエングレービング)カードにオーバーレイ層側から隠蔽層で覆われた部分に対して、隠蔽する文字列(図6B中段右の「ABCD」と「1234」で示されている部分)を描画して潜像を形成した。文字列「ABCD」は前記隠蔽層22に、文字列「1234」は前記隠蔽層23に、それぞれ隠されている。
【0070】
また図示していないが、同時に隠蔽層の無い部分にもレーザー光を照射して、ID情報などの可変情報を実像として描画することもできる。
【0071】
(検証)レーザーエングレービングされたカードを通常光源で観察した場合、図6B上段右のように隠蔽層のみが観察され、隠蔽層に覆われた潜像は観察することができない。しかしフラッシュ光のように強い光を用いて撮影すると、光が隠蔽層を透過して再帰反射層に到達することで再帰反射した光と、前記レーザーエングレービングによって黒く変色して光を吸収する部分とのコントラストによって、図6B中段右のように隠蔽された文字列が観察される。
【0072】
更に波長850nmのLED光源と、800nm以下の波長を吸収するフィルターを備えた撮影機器からなる検証機を準備する。この装置でカードを観察すると、第一の隠蔽層22は850nmの光を透過させるので、その下に描画された文字列「ABCD」は観察されるが、第二の隠蔽層23は850nmの光を吸収するため黒色のままに観察されることから、その下に描画された文字列「1234」は観察されず、図6B下段右のような画像となる。
【0073】
以上のように、実施例3においては、目視では観察されないレーザーエングレービングで形成された潜像を、スマートフォンに具備されたフラッシュライトとデジタルカメラだけで簡便に検証することができると共に、観察波長を限定する特殊な条件下においては、特定の潜像のみが観測されることから、よりセキュリティの高い応用例となっている。
【符号の説明】
【0074】
1 実施形態1の偽造防止媒体
2 実施形態2の偽造防止媒体
3 実施形態3の偽造防止媒体
11 コア層
12 レーザー発色層
12a 発色したレーザー発色層
13 オーバーレイ層
22 隠蔽層または第一の隠蔽層
23 第二の隠蔽層
31 カラー絵柄層
図1
図2
図3
図4
図5
図6