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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】封止用シートおよび粘着組成物層
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240709BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240709BHJP
   C08L 23/20 20060101ALI20240709BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20240709BHJP
   C09J 123/22 20060101ALI20240709BHJP
   C09J 123/26 20060101ALI20240709BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20240709BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B32B27/32 A
C08K3/013
C08L23/20
C08L23/26
C09J123/22
C09J123/26
H01L33/56
H05B33/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020125486
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021717
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122345
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 繁久
(72)【発明者】
【氏名】大橋 賢
(72)【発明者】
【氏名】馬場 英治
(72)【発明者】
【氏名】名取 直輝
(72)【発明者】
【氏名】細井 麻衣
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/012905(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/062167(WO,A1)
【文献】特開2015-191799(JP,A)
【文献】特開2003-168555(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189723(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/32
C08K 3/013
C08L 23/20
C08L 23/26
C09J 123/22
C09J 123/26
H01L 33/56
H05B 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体および粘着組成物層を含む積層構造を有する封止用シートであって、
粘着組成物層が、
(A)イソブテン-イソプレン共重合体鎖を有する架橋重合体、
(B)液状ポリオレフィン系樹脂および/または液状ゴム、並びに
(C)吸湿性無機フィラー
を含み、並びに
イソブテン-イソプレン共重合体鎖を有する架橋重合体が、エポキシ基を有するイソブテン-イソプレン共重合体と、カルボキシ基および/または酸無水物基を有するオレフィン系重合体との反応生成物、並びにカルボキシ基および/または酸無水物基を有するイソブテン-イソプレン共重合体と、エポキシ基を有するオレフィン系重合体との反応生成物からなる群から選ばれる少なくとも一つである封止用シート。
【請求項2】
吸湿性無機フィラーの含有量が、粘着組成物層の不揮発分100質量%に対して30質量%以上である請求項1に記載の封止用シート。
【請求項3】
吸湿性無機フィラーの含有量が、粘着組成物層の不揮発分100質量%に対して80質量%以下である請求項1または2に記載の封止用シート。
【請求項4】
電子デバイスの封止に用いられる請求項1~のいずれか一項に記載の封止用シート。
【請求項5】
(A)イソブテン-イソプレン共重合体鎖を有する架橋重合体、
(B)液状ポリオレフィン系樹脂および/または液状ゴム、並びに
(C)吸湿性無機フィラー
を含み、並びに
イソブテン-イソプレン共重合体鎖を有する架橋重合体が、エポキシ基を有するイソブテン-イソプレン共重合体と、カルボキシ基および/または酸無水物基を有するオレフィン系重合体との反応生成物、並びにカルボキシ基および/または酸無水物基を有するイソブテン-イソプレン共重合体と、エポキシ基を有するオレフィン系重合体との反応生成物からなる群から選ばれる少なくとも一つである粘着組成物層。
【請求項6】
吸湿性無機フィラーの含有量が、粘着組成物層の不揮発分100質量%に対して30質量%以上である請求項に記載の粘着組成物層。
【請求項7】
吸湿性無機フィラーの含有量が、粘着組成物層の不揮発分100質量%に対して80質量%以下である請求項またはに記載の粘着組成物層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスの封止に有用な封止用シートおよび粘着組成物層に関する。
【背景技術】
【0002】
フォルダブルデバイスの開発が進む中で、多数の屈曲後にもボイド、クラック等の発生を抑制し得る(即ち、耐屈曲性に優れた)封止層を形成し得る封止用シートが求められている。そのような封止用シートとして、例えば、特許文献1には、ポリオレフィン系樹脂および/またはポリオレフィン系ゴム、無機フィラー、並びに二つの配位原子がともに酸素原子である二座配位子および配位原子が酸素原子である単座配位子が中心金属に結合した金属錯体を含む組成物の層を有する封止用シートが開示されている。
【0003】
また、フォルダブルデバイスに多く用いられるOLED素子、OPV素子等の有機物質を使用した素子は、水分に極めて弱い。そのような素子を保護するために、水分遮断性に優れた封止層を形成し得る封止用シートが求められている。そのような封止用シートとして、例えば、特許文献2には、ポリオレフィン系樹脂、並びにハイドロタルサイトおよび半焼成ハイドロタルサイトからなる群から選ばれる金属水酸化物を含む樹脂組成物層を有する封止用シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/189723号
【文献】国際公開第2017/057708号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、耐屈曲性および水分遮断性に優れた封止層を形成し得る封止用シートが求められている。また、高温時の接着性に優れた封止層を形成し得る封止用シートが求められている。本発明はこのような事情に着目してなされたものであって、その目的は、耐屈曲性、水分遮断性および高温時の接着性に優れた封止層を形成し得る封止用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成し得る本発明は、以下の通りである。
[1] 支持体および粘着組成物層を含む積層構造を有する封止用シートであって、
粘着組成物層が、
(A)イソブテン-イソプレン共重合体鎖を有する架橋重合体、
(B)液状ポリオレフィン系樹脂および/または液状ゴム、並びに
(C)吸湿性無機フィラー
を含む封止用シート。
[2] 吸湿性無機フィラーの含有量が、粘着組成物層の不揮発分100質量%に対して30質量%以上である前記[1]に記載の封止用シート。
[3] 吸湿性無機フィラーの含有量が、粘着組成物層の不揮発分100質量%に対して80質量%以下である前記[1]または[2]に記載の封止用シート。
[4] イソブテン-イソプレン共重合体鎖を有する架橋重合体が、エポキシ基を有するイソブテン-イソプレン共重合体と、カルボキシ基および/または酸無水物基を有するオレフィン系重合体との反応生成物、並びにカルボキシ基および/または酸無水物基を有するイソブテン-イソプレン共重合体と、エポキシ基を有するオレフィン系重合体との反応生成物からなる群から選ばれる少なくとも一つである前記[1]~[3]のいずれか一つに記載の封止用シート。
[5] 電子デバイスの封止に用いられる前記[1]~[4]のいずれか一つに記載の封止用シート。
[6] (A)イソブテン-イソプレン共重合体鎖を有する架橋重合体、
(B)液状ポリオレフィン系樹脂および/または液状ゴム、並びに
(C)吸湿性無機フィラー
を含む粘着組成物層。
[7] 吸湿性無機フィラーの含有量が、粘着組成物層の不揮発分100質量%に対して30質量%以上である前記[6]に記載の粘着組成物層。
[8] 吸湿性無機フィラーの含有量が、粘着組成物層の不揮発分100質量%に対して80質量%以下である前記[6]または[7]に記載の粘着組成物層。
[9] イソブテン-イソプレン共重合体鎖を有する架橋重合体が、エポキシ基を有するイソブテン-イソプレン共重合体と、カルボキシ基および/または酸無水物基を有するオレフィン系重合体との反応生成物、並びにカルボキシ基および/または酸無水物基を有するイソブテン-イソプレン共重合体と、エポキシ基を有するオレフィン系重合体との反応生成物からなる群から選ばれる少なくとも一つである前記[6]~[8]のいずれか一つに記載の粘着組成物層。
【発明の効果】
【0007】
本発明の封止用シートを用いることによって、耐屈曲性、水分遮断性および高温時の接着性に優れた封止層を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、支持体および粘着組成物層を含む積層構造を有する封止用シートを提供する。また、本発明は、封止層として使用し得る粘着組成物層自体も提供する。
【0009】
本発明の粘着組成物層は、イソブテン-イソプレン共重合体(即ち、ブチルゴム)鎖を有する架橋重合体(以下「(A)成分」と記載することがある)を含むことを特徴の一つとする。(A)成分は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。(A)成分を使用することによって、良好な耐屈曲性を達成することができる。
【0010】
(A)成分は、反応性官能基(以下「第1の反応性官能基」と記載することがある)を有するイソブテン-イソプレン共重合体(即ち、第1の反応性官能基を有するブチルゴム)と、第1の反応性官能基と反応し得る反応性官能基(以下「第2の反応性官能基」と記載することがある)を有するオレフィン系重合体とを反応させることによって形成することができる。ここで、「オレフィン系重合体」とは、オレフィンに由来する構成単位(以下「オレフィン単位」と略称することがある)が主たる構成単位である(即ち、オレフィン単位の量が全構成単位の中で最大である)重合体を意味する。なお、以下では、オレフィン単位である「ブテンに由来する構成単位」等を「ブテン単位」等と略称することがある。
【0011】
オレフィンとしては、1個のオレフィン性炭素-炭素二重結合を有するモノオレフィンおよび/または2個のオレフィン性炭素-炭素二重結合を有するジオレフィンが好ましい。モノオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン(イソブチレン)、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等のα-オレフィンが挙げられる。ジオレフィンとしては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン等が挙げられる。
【0012】
オレフィン系重合体は、単独重合体でもよく、共重合体でもよい。共重合体は、ランダム共重合体でもよく、ブロック共重合体でもよい。また、オレフィン系重合体は、オレフィンとオレフィン以外のモノマーとの共重合体でもよい。オレフィン系共重合体としては、例えば、エチレン-非共役ジエン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン-非共役ジエン共重合体、スチレン-イソブテン共重合体、スチレン-イソブテン-スチレン共重合体等が挙げられる。
【0013】
第2の反応性官能基を有するオレフィン系重合体は、好ましくは第2の反応性官能基を有するブテン系重合体である。ここで、「ブテン系重合体」とは、ブテン単位が主たる構成単位である(即ち、ブテン単位の量が全構成単位の中で最大である)重合体を意味する。ブテンとしては、例えば1-ブテン、イソブテン等が挙げられる。ブテン系重合体としては、例えばポリブテン、イソブテン-イソプレン共重合体等が挙げられる。ポリブテンは、単独重合体(例えば、1-ブテン単独重合体、イソブテン単独重合体)でもよく、共重合体(例えば、1-ブテンおよびイソブテンの共重合体)でもよい。
【0014】
(A)成分を形成するために、第1の反応性官能基を有するイソブテン-イソプレン共重合体、および第2の反応性官能基を有するオレフィン系重合体は、いずれも、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
第1の反応性官能基と第2の反応性官能基との組合せとしては、例えば、エポキシ基とカルボキシ基および/または酸無水物基(即ち、カルボニルオキシカルボニル基(-CO-O-CO-))との組合せ、カルボキシ基および/または酸無水物基とエポキシ基との組合せ、エポキシ基とアミノ基との組合せ、アミノ基とエポキシ基との組合せ、ヒドロキシ基とイソシアネート基(即ち、イソシアナト基)との組合せ、イソシアネート基とヒドロキシ基との組合せ等が挙げられる。これらの中で、水分遮断性の観点から、エポキシ基とカルボキシ基および/または酸無水物基との組合せ、並びにカルボキシ基および/または酸無水物基とエポキシ基との組合せが好ましく、エポキシ基と酸無水物基との組合せおよび酸無水物基とエポキシ基との組合せがより好ましい。なお、前記組合せにおいて、前者の反応性官能基が第1の反応性官能基を表し、後者の反応性官能基が第2の反応性官能基を表す。
【0016】
本発明の一態様において、(A)成分は、好ましくはエポキシ基を有するイソブテン-イソプレン共重合体と、カルボキシ基および/または酸無水物基を有するオレフィン系重合体との反応生成物、並びにカルボキシ基および/または酸無水物基を有するイソブテン-イソプレン共重合体と、エポキシ基を有するオレフィン系重合体との反応生成物からなる群から選ばれる少なくとも一つである。前記態様において、オレフィン系重合体は、好ましくはブテン系重合体であり、より好ましくはポリブテンまたはイソブテン-イソプレン共重合体である。前記態様において、カルボキシ基および/または酸無水物基は、好ましくは酸無水物基である。
【0017】
本発明の一態様において、(A)成分は、好ましくはエポキシ基を有するイソブテン-イソプレン共重合体と、カルボキシ基および/または酸無水物基を有するポリブテンとの反応生成物である。前記態様において、カルボキシ基および/または酸無水物基は、好ましくは酸無水物基である。
【0018】
本発明の一態様において、(A)成分は、好ましくはエポキシ基を有するイソブテン-イソプレン共重合体と、カルボキシ基および/または酸無水物基を有するイソブテン-イソプレン共重合体との反応生成物である。前記態様において、カルボキシ基および/または酸無水物基は、好ましくは酸無水物基である。
【0019】
反応性官能基(例えば、エポキシ基、カルボキシ基および/または酸無水物基)を有するイソブテン-イソプレン共重合体の使用量は、(A)成分を形成するための重合体の使用量の合計(例えば、第1の反応性官能基を有するイソブテン-イソプレン共重合体および第2の反応性官能基を有するオレフィン系重合体の使用量の合計)に対して、好ましくは15~100質量%、より好ましくは20~100質量%、さらに好ましくは30~100質量%である。なお、(A)成分を形成するために、第1の反応性官能基を有するイソブテン-イソプレン共重合体および第2の反応性官能基を有するイソブテン-イソプレン共重合体を使用する場合、「反応性官能基を有するイソブテン-イソプレン共重合体の使用量」とは、「第1の反応性官能基を有するイソブテン-イソプレン共重合体および第2の反応性官能基を有するイソブテン-イソプレン共重合体の使用量の合計」を表す。
【0020】
(A)成分を形成するための、反応性官能基(例えば、エポキシ基、カルボキシ基および/または酸無水物基)を有するイソブテン-イソプレン共重合体の数平均分子量は、好ましくは5,000~500,000、より好ましくは10,000~400,000、さらに好ましくは20,000~300,000である。なお、本発明における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)で測定される。GPC法による数平均分子量は、具体的には、測定装置として島津製作所社製「LC-9A/RID-6A」を、カラムとして昭和電工社製「Shodex K-800P/K-804L/K-804L」を、移動相としてトルエン等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0021】
(A)成分を形成するための、第2の反応性官能基(例えば、エポキシ基、カルボキシ基および/または酸無水物基)を有するオレフィン系重合体(但し、イソブテン-イソプレン共重合体を除く)の数平均分子量は、好ましくは500~500,000、より好ましくは1,000~300,000、さらに好ましくは1,500~200,000である。
【0022】
耐屈曲性の観点から、(A)成分を形成するための、反応性官能基(例えば、エポキシ基、カルボキシ基および/または酸無水物基)を有するイソブテン-イソプレン共重合体中のイソプレン単位の量は、それぞれ、イソブテン単位およびイソプレン単位の合計あたり、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは0.3~10質量%、さらに0.5~15質量%である。なお、前記イソプレン単位の量は、変性部分(例えば、酸無水物基を導入するための無水マレイン酸に由来する部分)を除いたイソブテン単位およびイソプレン単位を基準とする。
【0023】
(A)成分を形成するための、エポキシ基を有するオレフィン系重合体(例えば、エポキシ基を有するイソブテン-イソプレン共重合体、エポキシ基を有するポリブテン)中のエポキシ基の濃度は、好ましくは0.01~10mmol/g、より好ましくは0.05~5mmol/gである。エポキシ基濃度は、JIS K 7236-1995に基づいて得られるエポキシ当量から求められる。
【0024】
(A)成分を形成するための、カルボキシ基を有するオレフィン系重合体(例えば、カルボキシ基を有するイソブテン-イソプレン共重合体、カルボキシ基を有するポリブテン)中のカルボキシ基の濃度は、好ましくは0.01~10mmol/g、より好ましくは0.05~5mmol/gである。カルボキシ基の濃度は、JIS K 2501の記載に従い、樹脂1g中に存在する酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として定義される酸価の値より得られる。
【0025】
(A)成分を形成するための、酸無水物基を有するオレフィン系重合体(例えば、酸無水物基を有するイソブテン-イソプレン共重合体、酸無水物基を有するポリブテン)中の酸無水物基の濃度は、好ましくは0.01~10mmol/g、より好ましくは0.05~5mmol/gである。酸無水物基の濃度は、JIS K 2501の記載に従い、樹脂1g中に存在する酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として定義される酸価の値より得られる。
【0026】
(A)成分を形成するための、カルボキシ基および酸無水物基を有するオレフィン系重合体(例えば、カルボキシ基および酸無水物基を有するイソブテン-イソプレン共重合体、カルボキシ基および酸無水物基を有するポリブテン)中のカルボキシ基の濃度と酸無水物基の濃度との合計は、好ましくは0.01~10mmol/g、より好ましくは0.05~5mmol/gである。
【0027】
エポキシ基を有するイソブテン-イソプレン共重合体と、カルボキシ基を有するオレフィン系重合体(例えば、カルボキシ基を有するイソブテン-イソプレン共重合体、カルボキシ基を有するポリブテン)との使用量は、架橋重合体である(A)成分が形成できれば特に限定されないが、エポキシ基の量(mol)とカルボキシ基の量(mol)との比(即ち、エポキシ基の量(mol):カルボキシ基の量(mol))は、好ましくは100:10~100:500、より好ましくは100:25~100:475、さらに好ましくは100:40~100:450である。
【0028】
エポキシ基を有するイソブテン-イソプレン共重合体と、酸無水物基を有するオレフィン系重合体(例えば、酸無水物基を有するイソブテン-イソプレン共重合体、酸無水物基を有するポリブテン)との使用量は、架橋重合体である(A)成分が形成できれば特に限定されないが、エポキシ基の量(mol)と酸無水物基の量(mol)との比(即ち、エポキシ基の量(mol):酸無水物基の量(mol))は、好ましくは100:10~100:500、より好ましくは100:25~100:475、さらに好ましくは100:40~100:450である。
【0029】
エポキシ基を有するイソブテン-イソプレン共重合体と、カルボキシ基および酸無水物基を有するオレフィン系重合体(例えば、カルボキシ基および酸無水物基を有するイソブテン-イソプレン共重合体、カルボキシ基および酸無水物基を有するポリブテン)との使用量は、架橋重合体である(A)成分が形成できれば特に限定されないが、「エポキシ基の量(mol)」と「カルボキシ基の量(mol)および酸無水物基の量(mol)の合計」との比(即ち、エポキシ基の量(mol):(カルボキシ基の量(mol)+酸無水物基の量(mol))は、好ましくは100:10~100:500、より好ましくは100:25~100:475、さらに好ましくは100:40~100:450である。
【0030】
エポキシ基を有するオレフィン系重合体(例えば、エポキシ基を有するイソブテン-イソプレン共重合体、エポキシ基を有するポリブテン)は、エポキシ基を有する不飽和化合物(例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル)で、オレフィン系重合体をラジカル反応条件下にてグラフト変性することによって得ることができる。
【0031】
エポキシ基を有するオレフィン系重合体は市販品を使用してもよい。エポキシ基を有するイソブテン-イソプレン共重合体の市販品としては、例えば、星光PMC社製「ER866」(グリシジルメタクリレート変性ブチルゴム)、星光PMC社製「ER850」(グリシジルメタクリレート変性ブチルゴム)等が挙げられる。エポキシ基を有するオレフィン系重合体(但し、イソブテン-イソプレン共重合体を除く)の市販品としては、例えば、星光PMC社製「T-YP341」(グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体)、星光PMC社製「T-YP276」(グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体)、星光PMC社製「T-YP313」(グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体)等が挙げられる。
【0032】
カルボキシ基および/または酸無水物基を有するオレフィン系重合体(例えば、カルボキシ基および/または酸無水物基を有するイソブテン-イソプレン共重合体、カルボキシ基および/または酸無水物基を有するポリブテン)は、カルボキシ基および/または酸無水物基を有する不飽和化合物(例えば、無水マレイン酸)で、オレフィン系重合体をラジカル反応条件下にてグラフト変性することによって得ることができる。
【0033】
カルボキシ基および/または酸無水物基を有するオレフィン系重合体は、市販品を使用してもよい。カルボキシ基および/または酸無水物基を有するイソブテン-イソプレン共重合体の市販品としては、例えば、星光PMC社製「ER661」(無水マレイン酸変性ブチルゴム)、星光PMC社製「ER641」(無水マレイン酸変性ブチルゴム)等が挙げられる。カルボキシ基および/または酸無水物基を有するオレフィン系重合体(但し、イソブテン-イソプレン共重合体を除く)の市販品としては、例えば、東邦化学工業社製「HV-300M」(無水マレイン酸変性ポリブテン)、星光PMC社製「T-YP279」(無水マレイン酸変性プロピレン-ブテンランダム共重合体)、星光PMC社製「T-YP312」(無水マレイン酸変性プロピレン-ブテンランダム共重合体)、三井化学社製「ルーカントA-5260」(無水マレイン酸変性エチレン-α―オレフィンランダム共重合体)、「ルーカントA-5320」(無水マレイン酸変性エチレン-α―オレフィンランダム共重合体)等が挙げられる。
【0034】
粘着組成物層中の(A)成分の含有量は、耐屈曲性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、水分遮断性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。なお、前記含有量は、粘着組成物層の不揮発分100質量%に対する値である。
【0035】
本発明の粘着組成物層は、液状ポリオレフィン系樹脂および/または液状ゴム(以下「(B)成分」)を含むことを特徴の一つとする。本発明において「液状」とは、25℃での粘度が5,000Pa・s以下であることを意味する。また、本発明において「25℃での粘度」とは、動的粘弾性測定装置で測定される25℃での動粘度に、密度を掛けて算出される粘度を意味する。動的粘弾性測定装置としては、例えば、TAインスツルメント社製レオメーター(商品名:DISCOVERY HR-2)等が挙げられる。
【0036】
本発明の(B)成分に関して、「液状ポリオレフィン系樹脂」とは、25℃での粘度が5,000Pa・s以下であり、且つ架橋によってゴム弾性体を形成できないオレフィン系重合体を意味し、「液状ゴム」とは、25℃での粘度が5,000Pa・s以下であり、且つ架橋によってゴム弾性体を形成し得るものを意味する。例えば、液状ポリイソプレンは、架橋によってゴム弾性体を形成し得るため、液状ゴムに分類される。
【0037】
液状ポリオレフィン系樹脂および液状ゴムの25℃での粘度は、それぞれ、好ましくは5~5,000Pa・s、より好ましくは10~4,000Pa・s、さらに好ましくは20~3,000Pa・sである。
【0038】
(B)成分は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。(B)成分を使用することによって、良好な接着性(特に高温時の接着性)を達成することができる。また、本発明の粘着組成物層は、吸湿性無機フィラーを含むが、多量の吸湿性無機フィラーを使用すると、粘着組成物層の接着性が低下する。この点、(B)成分を使用することによって、多量の吸湿性無機フィラーを使用しても、良好な接着性を達成することができる。
【0039】
液状ポリオレフィン系樹脂の数平均分子量は、好ましくは500~15,000、より好ましくは750~12,500、さらに好ましくは1,000~10,000である。また、液状ゴムの数平均分子量は、500~15,000、より好ましくは750~12,500、さらに好ましくは1,000~10,000である。
【0040】
液状ポリオレフィン系樹脂および/または液状ゴムは、好ましくは液状ポリブテンである。液状ポリブテンは、単独重合体(例えば、1-ブテン単独重合体、イソブテン単独重合体)でもよく、共重合体(例えば、1-ブテンおよびイソブテンの共重合体)でもよい。
【0041】
液状ポリオレフィン系樹脂および/または液状ゴムは、市販品を使用することができる。液状ポリオレフィン系樹脂の市販品としては、例えば、ENEOS社製「HV-300」(液状ポリブテン)、ENEOS社製「HV-1900」(液状ポリブテン)、ENEOS社製「HV-50」(液状ポリブテン)、ENEOS社製「HV-35」(液状ポリブテン)、Kothari社製「950MW」(液状ポリブテン)、Kothari社製「2400MW」、INEOS社製「H-1900」(液状ポリブテン)、INEOS社製「H-6000」(液状ポリブテン)、INEOS社製「H-18000」(液状ポリブテン)、日油社製「200N」(液状ポリブテン)、日本曹達社製「BI-2000」(水素化ポリブタジエン)、日本曹達社製「BI-3000」(水素化ポリブタジエン)、日本曹達社製「GI-3000」(水素化ポリブタジエン)、三井化学社製「ルーカントLX100」(液状オレフィン系重合体)、三井化学社製「ルーカントLX400」(液状オレフィン系重合体)等が挙げられる。
【0042】
液状ゴムの市販品としては、例えば、出光昭和シェル社製「Poly bd R-45HT」(ブタジエン系液状ゴム)、出光昭和シェル社製「Poly bd R-15HT」(ブタジエン系液状ゴム)、出光昭和シェル社製「Poly ip」(液状ポリイソプレン)、日本曹達社製「B-1000」(液状ポリブタジエン)、日本曹達社製「B-3000」(液状ポリブタジエン)、日本曹達社製「G-3000」(液状ポリブタジエン)、クラレ社製「LIR-30」(液状ポリイソプレン)、クラレ社製「LIR-390」(液状ポリイソプレン)、クラレ社製「LIR-290」(液状ポリイソプレン)、クラレ社製「LBR-302」(液状ポリブタジエン)、クラレ社製「LBR-305」(液状ポリブタジエン)、クラレ社製「LBR-361」(液状ポリブタジエン)、クラレ社製「L-SBR-820」(液状スチレン-ブタジエンランダム共重合体)、CRAY VALLEY社製「Ricon154」(液状ブタジエン)、CRAY VALLEY社製「RICON 184」(液状スチレン-ブタジエンランダム共重合体)等が挙げられる。
【0043】
粘着組成物層中の(B)成分の含有量(液状ポリオレフィン系樹脂および液状ゴムの両方を使用する場合は、これらの含有量の合計)は、接着性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7.5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、高温時の接着性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。なお、前記含有量は、粘着組成物層の不揮発分100質量%に対する値である。
【0044】
本発明の粘着組成物層は、吸湿性無機フィラー(以下「(C)成分」)を含むことを特徴の一つとする。(C)成分は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。(C)成分を使用することによって、良好な水分遮断性を達成させることができる。
【0045】
(C)成分としては、例えば、未焼成ハイドロタルサイト、半焼成ハイドロタルサイト、焼成ハイドロタルサイト、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、焼成ドロマイト(酸化カルシウムおよび酸化マグネシウムを含む混合物)、水素化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化バリウム、モレキュラーシーブ、シリカ等が挙げられる。(C)成分は、好ましくは半焼成ハイドロタルサイトおよび酸化カルシウム、水素化カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも一つであり、より好ましくは半焼成ハイドロタルサイトおよび酸化カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも一つである。
【0046】
ハイドロタルサイトは、未焼成ハイドロタルサイト、半焼成ハイドロタルサイト、および焼成ハイドロタルサイトに分類することができる。
【0047】
未焼成ハイドロタルサイトは、例えば、天然ハイドロタルサイト(MgAl(OH)16CO・4HO)に代表されるような層状の結晶構造を有する金属水酸化物であり、例えば、基本骨格となる層[Mg1-XAl(OH)X+と中間層[(COX/2・mHO]X-からなる。未焼成ハイドロタルサイトは、合成ハイドロタルサイト等のハイドロタルサイト様化合物を含む概念である。ハイドロタルサイト様化合物としては、例えば、下記式(I)および下記式(II)で表されるものが挙げられる。
【0048】
[M2+ 1-x3+ (OH)x+・[(An-x/n・mHO]x- (I)
(式中、M2+は、Mg2+、Zn2+等の2価の金属イオンを表し、M3+は、Al3+、Fe3+等の3価の金属イオンを表し、An-は、CO 2-、Cl、NO 等のn価のアニオンを表し、0<x<1であり、0≦m<1であり、nは、正の数である。)
式(I)中、M2+は、好ましくはMg2+であり、M3+は、好ましくはAl3+であり、An-は、好ましくはCO 2-である。
【0049】
2+ Al(OH)2x+6-nz(An-・mHO (II)
(式中、M2+は、Mg2+、Zn2+等の2価の金属イオンを表し、An-は、CO 2-、Cl、NO 等のn価のアニオンを表し、xは、2以上の正の数であり、zは、2以下の正の数であり、mは、正の数であり、nは、正の数である。)
式(II)中、M2+は、好ましくはMg2+であり、An-は、好ましくはCO 2-である。
【0050】
半焼成ハイドロタルサイトは、未焼成ハイドロタルサイトを焼成して得られる、層間水の量が減少または消失した層状の結晶構造を有する金属水酸化物をいう。「層間水」とは、組成式を用いて説明すれば、上述した未焼成の天然ハイドロタルサイトおよびハイドロタルサイト様化合物の組成式に記載の「HO」を指す。
【0051】
一方、焼成ハイドロタルサイトは、未焼成ハイドロタルサイトまたは半焼成ハイドロタルサイトを焼成して得られ、層間水だけでなく、水酸基も縮合脱水によって消失した、アモルファス構造を有する金属酸化物をいう。
【0052】
未焼成ハイドロタルサイト、半焼成ハイドロタルサイトおよび焼成ハイドロタルサイトは、飽和吸水率により区別することができる。半焼成ハイドロタルサイトの飽和吸水率は、1質量%以上20質量%未満である。一方、未焼成ハイドロタルサイトの飽和吸水率は、1質量%未満であり、焼成ハイドロタルサイトの飽和吸水率は、20質量%以上である。
【0053】
「飽和吸水率」とは、測定試料(例えば、半焼成ハイドロタルサイト)を天秤にて1.5g量り取り、初期質量を測定した後、大気圧下、60℃、90%RH(相対湿度)に設定した小型環境試験器(エスペック社製SH-222)に200時間静置した場合の、初期質量に対する質量増加率を言い、下記式(i):
飽和吸水率(質量%)
=100×(吸湿後の質量-初期質量)/初期質量 (i)
で求めることができる。
【0054】
半焼成ハイドロタルサイトの飽和吸水率は、好ましくは3質量%以上20質量%未満、より好ましくは5質量%以上20質量%未満である。
【0055】
また、未焼成ハイドロタルサイト、半焼成ハイドロタルサイトおよび焼成ハイドロタルサイトは、熱重量分析で測定される熱重量減少率により区別することができる。半焼成ハイドロタルサイトの280℃における熱重量減少率は、15質量%未満であり、かつその380℃における熱重量減少率は、12質量%以上である。一方、未焼成ハイドロタルサイトの280℃における熱重量減少率は、15質量%以上であり、焼成ハイドロタルサイトの380℃における熱重量減少率は、12質量%未満である。
【0056】
熱重量分析は、日立ハイテクサイエンス社製TG/DTA EXSTAR6300を用いて、アルミニウム製のサンプルパンにハイドロタルサイトを5mg秤量し、蓋をせずオープンの状態で、窒素流量200mL/分の雰囲気下、30℃から550℃まで昇温速度10℃/分の条件で行うことができる。熱重量減少率は、下記式(ii):
熱重量減少率(質量%)
=100×(加熱前の質量-所定温度に達した時の質量)/加熱前の質量 (ii)で求めることができる。
【0057】
また、未焼成ハイドロタルサイト、半焼成ハイドロタルサイトおよび焼成ハイドロタルサイトは、粉末X線回折で測定されるピークおよび相対強度比により区別することができる。半焼成ハイドロタルサイトは、粉末X線回折により2θが8~18°付近に二つにスプリットしたピーク、または二つのピークの合成によりショルダーを有するピークを示し、低角側に現れるピークまたはショルダーの回折強度(=低角側回折強度)と、高角側に現れるピークまたはショルダーの回折強度(=高角側回折強度)の相対強度比(低角側回折強度/高角側回折強度)は、0.001~1,000である。一方、未焼成ハイドロタルサイトは、8~18°付近で一つのピークしか有しないか、または低角側に現れるピークまたはショルダーと高角側に現れるピークまたはショルダーの回折強度の相対強度比が前述の範囲外となる。焼成ハイドロタルサイトは、8°~18°の領域に特徴的ピークを有さず、43°に特徴的なピークを有する。粉末X線回折測定は、粉末X線回折装置(パナリティカル(PANalytical)社製、エンピリアン(Empyrean))により、対陰極CuKα(1.5405Å)、電圧:45V、電流:40mA、サンプリング幅:0.0260°、走査速度:0.0657°/s、測定回折角範囲(2θ):5.0131~79.9711°の条件で行った。ピークサーチは、回折装置付属のソフトウエアのピークサーチ機能を利用し、「最小有意度:0.50、最小ピークチップ:0.01°、最大ピークチップ:1.00°、ピークベース幅:2.00°、方法:2次微分の最小値」の条件で行うことができる。
【0058】
半焼成ハイドロタルサイトのBET比表面積は、1~250m/gが好ましく、5~200m/gがより好ましい。これらのBET比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(Macsorb HM Model 1210 マウンテック社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて算出することができる。
【0059】
半焼成ハイドロタルサイトの粒子径は、1~1,000nmが好ましく、10~800nmがより好ましい。これらの粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定(JIS Z 8825)により粒度分布を体積基準で作成したときの該粒度分布のメジアン径である。
【0060】
半焼成ハイドロタルサイトは、表面処理剤で表面処理したものを用いることができる。表面処理に使用する表面処理剤としては、例えば、高級脂肪酸、アルキルシラン類、シランカップリング剤等を使用することができ、なかでも、高級脂肪酸、アルキルシラン類が好適である。表面処理剤は、1種または2種以上を使用できる。
【0061】
半焼成ハイドロタルサイトは、市販品を使用することができる。その市販品としては、例えば、協和化学工業社製「DHT-4C」、「DHT-4A-2」等が挙げられる。
【0062】
酸化カルシウムは、市販品を使用することができる。その市販品としては、例えば、井上石灰工業社製「QC-X」;三共製粉社製「モイストップ#10」;吉澤石灰工業社製「HAL-G」、「HAL-J」、「HAL-F」;Filgen社製「CaO Nano Powder」等が挙げられる。
【0063】
酸化カルシウムの粒子径および酸化カルシウムを含む混合物の粒子径は、それぞれ、好ましくは0.03~10μm、より好ましくは0.05~5μm、さらに好ましくは0.1~3μmである。これらの粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定(JIS Z 8825)により粒度分布を体積基準で作成したときの該粒度分布のメジアン径である。
【0064】
粘着組成物層中の(C)成分の含有量は、水分遮断性の観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上であり、接着性及び屈曲性の観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。なお、前記含有量は、粘着組成物層の不揮発分100質量%に対する値である。
【0065】
粘着組成物層は、本発明の効果を阻害しない範囲で、(A)成分~(C)成分以外の成分(以下「他の成分」と記載することがある)を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、粘着付与剤、硬化促進剤、酸化防止剤、可塑剤、二つの配位原子がともに酸素原子である二座配位子および配位原子が酸素原子である単座配位子が中心金属に結合した金属錯体等が挙げられる。これらは、いずれも1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
粘着付与剤は、粘着組成物層に粘着性を付与する成分である。本発明において粘着付与剤に特に限定はなく、公知のものを使用することができる。
【0067】
粘着付与剤の軟化点は、粘着組成物層の耐熱性等の観点から、50~200℃が好ましく、90~180℃がより好ましく、100~150℃がさらに好ましい。なお、軟化点は、JIS K2207に従い環球法により測定される。
【0068】
粘着付与剤は市販品を使用することができる。その市販品としては、例えば、荒川化学工業社製「アルコン P-90」、「アルコン P-100」、「アルコン P-115」、「アルコン P-125」、「アルコン P-140」、「アルコン M-90」、「アルコン M-100」、「アルコン M-115」、「アルコン M-135」(いずれもシクロヘキサン環含有水素化石油樹脂)等が挙げられる。
【0069】
粘着付与剤の含有量は、粘着組成物層の粘着性および封止性の観点から、粘着組成物層の不揮発分100質量%に対して、好ましくは0~30質量%、より好ましくは0~25質量%、さらに好ましくは0~22.5質量%である。
【0070】
硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、3級・4級アミン系化合物、ジメチルウレア化合物、有機ホスフィン化合物等が挙げられる。
【0071】
イミダゾール化合物としては、例えば、1H-イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、2-フェニル-4,5-ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ドデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。イミダゾール化合物の具体例としては、キュアゾール2MZ、2P4MZ、2E4MZ、2E4MZ-CN、C11Z、C11Z-CN、C11Z-CNS、C11Z-A、2PHZ、1B2MZ、1B2PZ、2PZ、C17Z、1.2DMZ、2P4MHZ-PW、2MZ-A、2MA-OK(いずれも四国化成工業社製)等が挙げられる。
【0072】
3級・4級アミン系化合物としては、特に制限はないが、例えば、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩;DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7)、DBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5)、DBU-フェノール塩、DBU-オクチル酸塩、DBU-p-トルエンスルホン酸塩、DBU-ギ酸塩、DBU-フェノールノボラック樹脂塩等のジアザビシクロ化合物;ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(TAP)等の3級アミンまたはそれらの塩、芳香族ジメチルウレア、脂肪族ジメチルウレア等のジメチルウレア化合物;等が挙げられる。
【0073】
ジメチルウレア化合物としては、例えば、DCMU(3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア)、U-CAT3512T(サンアプロ社製)等の芳香族ジメチルウレア;U-CAT3503N(サンアプロ社製)等の脂肪族ジメチルウレア等が挙げられる。中でも硬化性の点から、芳香族ジメチルウレアが好ましく用いられる。
【0074】
有機ホスフィン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等が挙げられる。有機ホスフィン化合物の具体例としては、TPP、TPP-MK、TPP-K、TTBuP-K、TPP-SCN、TPP-S(いずれも北興化学工業社製)等が挙げられる。
【0075】
硬化促進剤を使用する場合、その含有量は、(A)成分(即ち、イソブテン-イソプレン共重合体鎖を有する架橋重合体)の形成促進等のために、粘着組成物層の不揮発分100質量%に対して、好ましくは0.0001~0.1質量%、より好ましくは0.0002~0.075質量%、さらに好ましくは0.0002~0.05質量%である。
【0076】
本発明において酸化防止剤に特に限定はなく、公知のものを使用することができる。酸化防止剤を使用する場合、その含有量は、粘着組成物層の不揮発分100質量%に対して、好ましくは0.01~0.5質量%、より好ましくは0.05~0.4質量%、さらに好ましくは0.1~0.3質量%である。
【0077】
可塑剤としては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、流動パラフィン、ワセリン等の鉱物油、ヒマシ油、綿実油、菜種油、大豆油、パーム油、ヤシ油、オリーブ油等の植物油が挙げられる。
【0078】
粘着組成物層の接着性および耐屈曲性を向上させるために、二つの配位原子がともに酸素原子である二座配位子(以下「酸素-二座配位子」と記載することがある)および配位原子が酸素原子である単座配位子(以下「酸素-単座配位子」と記載することがある)が中心金属に結合した金属錯体を使用してもよい。
【0079】
前記金属錯体は、好ましくは、下記式(1)で表される金属錯体(以下「金属錯体(1)」と記載する)である。
【0080】
【化1】
【0081】
式(1)中、
Mは、金属錯体の中心金属であり、周期表の第2周期から第6周期の金属を表し、
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、またはアラルキルオキシ基を表し、
は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルコキシカルボニル基、またはアルケニルオキシカルボニル基を表し、
Xは、酸素-単座配位子を表し、
[ ]内の酸素原子(O)とMとの間の実線は、共有結合を表し、[ ]内の酸素原子(O)とMとの間の破線は、配位結合を表し、並びに
mは、3または4の整数を表し、nは、1~3の整数を表し、m>nである。
【0082】
式(1)中のMは、好ましくは第3周期から第5周期の金属であり、より好ましくはAl、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Zr、In、またはSnであり、さらに好ましくはAl、Ti、またはZrである。
【0083】
本明細書において、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0084】
本明細書において、アルキル基は、直鎖状または分枝鎖状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~20、さらに好ましくは1~10、特に好ましくは1~6である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基等が挙げられる。アルキル基は、置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0085】
本明細書において、アルケニル基は、直鎖状または分枝鎖状のいずれでもよい。アルケニル基の炭素数は、好ましくは2~20である。アルケニル基としては、例えば、エテニル基(即ち、ビニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、オクタデセニル基(例、9-オクタデセニル基)等が挙げられる。アルケニル基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0086】
本明細書において、アルキニル基は、直鎖状または分枝鎖状のいずれでもよい。アルキニル基の炭素数は、好ましくは2~10、より好ましくは2~6である。例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、4-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、4-メチル-2-ペンチニル基等が挙げられる。アルキニル基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0087】
本明細書において、アリール基の炭素数は、好ましくは6~18、より好ましくは6~14である。アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基等が挙げられる。アリール基は置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0088】
本明細書において、アラルキル基の炭素数は、好ましくは7~16である。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。アラルキル基は置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0089】
本明細書において、置換基を有していてもよいアミノ基としては、例えば、アミノ基、モノ-またはジ-アルキルアミノ基(例、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジブチルアミノ基)、モノ-またはジ-シクロアルキルアミノ基(例、シクロプロピルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基)、モノ-またはジ-アリールアミノ基(例、フェニルアミノ基)、モノ-またはジ-アラルキルアミノ基(例、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基)、複素環アミノ基(例、ピリジルアミノ基)等が挙げられる。
【0090】
本明細書において、アルコキシ基(即ち、アルキルオキシ基)中のアルキル基の説明は、上述のアルキル基の説明と同じである。アルコキシ基は置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0091】
本明細書において、アルケニルオキシ基中のアルケニル基の説明は、上述のアルケニル基の説明と同じである。アルケニルオキシ基は置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0092】
本明細書において、アリールオキシ基中のアリール基の説明は、上述のアリール基の説明と同じである。アリールオキシ基は置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0093】
本明細書において、アラルキルオキシ基中のアラルキル基の説明は、上述のアラルキル基の説明と同じである。アラルキルオキシ基は置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0094】
本明細書において、アルコキシカルボニル基(即ち、アルキルオキシカルボニル基)中のアルキル基の説明は、上述のアルキル基の説明と同じである。アルコキシカルボニル基は置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0095】
本明細書において、アルケニルオキシカルボニル基中のアルケニルの説明は、上述のアルケニルの説明と同じである。アルケニルオキシカルボニル基は置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0096】
式(1)中のXで表される酸素-単座配位子は、通常、ブレンステッド酸の共役塩基であり、例えば、RO(R:有機基)、RCOO(R:有機基)等が挙げられる。
【0097】
ROにおいて、有機基Rは、脂肪族基または芳香族基のいずれでもよい。また、脂肪族基は、飽和脂肪族基または不飽和脂肪族基のいずれでもよい。有機基Rの炭素数は、好ましくは1~20、さらに好ましくは1~10、特に好ましくは1~6である。ROとしては、例えば、メトキシドアニオン、エトキシドアニオン、プロポキシドアニオン、イソプロポキシドアニオン、ブトキシドアニオン、イソブトキシドアニオン、sec-ブトキシドアニオン、tert-ブトキシドアニオン、ペンチルオキシドアニオン、ヘキシルオキシドアニオン等が挙げられる。
【0098】
RCOOにおいて、有機基Rは、脂肪族基または芳香族基のいずれでもよい。また、脂肪族基は、飽和脂肪族基または不飽和脂肪族基のいずれでもよい。有機基Rの炭素数は、好ましくは1~20、さらに好ましくは1~10、特に好ましくは1~6である。RCOOとしては、例えば、酢酸、プロピオン酸、安息香酸等のカルボン酸に対応するアニオン等が挙げられる。
【0099】
式(1)中の[ ]内が酸素-二座配位子を表す。酸素-二座配位子の具体例としては、アセチルアセトン、3-メチル-2,4-ペンタンジオン、アセチルアセトアルデヒド、2,4-ヘキサンジオン、2,4-ヘプタンジオン、5-メチル-2,4-ヘキサンジオン、5,5-ジメチル-2,4-ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトン、ベンゾイルアセトフェノン、サリチルアルデヒド、1,1,1-トリフルオロアセチルアセトン、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトン、3-メトキシ-2,4-ペンタンジオン、3-シアノ-2,4-ペンタンジオン、3-ニトロ-2,4-ペンタンジオン、3-クロロ-2,4-ペンタンジオン、アセト酢酸、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、サリチル酸、サリチル酸メチル、マロン酸、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等が挙げられる。中心金属に配位した状態では、酸素-二座配位子は、それからプロトンを一つまたはそれ以上取り去った構造となる。
【0100】
中心金属MがAlである金属錯体(1)としては、例えば、(オクタデセニルアセトアセテート)アルミニウムジイソプロピレート、(エチルアセトアセテート)アルミニウムジイソプロピレート、(エチルアセトアセテート)アルミニウムジn-ブチレート、(プロピルアセトアセテート)アルミニウムジイソプロピレート、(n-ブチルアセトアセテート)アルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0101】
中心金属MがTiである金属錯体(1)としては、例えば、チタンアリルアセトアセテートトリイソプロポキサイド、チタンジ-n-ブトキサイド(ビス-2,4-ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタンジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)、チタンメチルフェノキサイド、チタンオキシドビス(ペンタンジオネート)等が挙げられる。
【0102】
中心金属MがZrである金属錯体(1)としては、例えば、ジルコニウムアリルアセトアセテートトリイソプロポキサイド、ジルコニウムジ-n-ブトキシド(ビス-2,4-ペンタンジオネート)、ジルコニウムジイソプロポキシド(ビス-2,4-ペンタンジオネート)、ジルコニウムジイソプロポキシドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、ジルコニウムジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムブトキシド(アセチルアセテート)(ビスエチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0103】
酸素-二座配位子および酸素-単座配位子が中心金属に結合した金属錯体(特に、金属錯体(1))を使用する場合、その含有量は、粘着組成物層の不揮発分100質量%に対して、好ましくは0.05~5.0質量%、より好ましくは0.1~4.0質量%、さらに好ましくは0.15~3.0質量%である。
【0104】
本発明の封止用シートは、支持体および粘着組成物層を含む積層構造を有する。本発明では保護シートを使用してもよい。即ち、本発明の封止用シートは、支持体、粘着組成物層、および保護シートをこの順に含む積層構造を有していてもよい。支持体と粘着組成物層との間、および粘着組成物層と保護シートとの間に、他の層(例えば離型層)が存在していてもよい。
【0105】
支持体および保護シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン;シクロオレフィンポリマー;ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と記載することがある)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリイミド等のプラスチックフィルム等が挙げられる。支持体および保護シートは、いずれも単層フィルムでもよく、積層フィルムでもよい。
【0106】
支持体および保護シートとして、例えば、バリア層を有する低透湿性フィルム、またはバリア層を有する低透湿性フィルムと別のフィルムとの積層フィルムを使用することができる。バリア層としては、例えば、シリカ蒸着膜、窒化ケイ素膜、酸化ケイ素膜等の無機膜が挙げられる。バリア層は、複数の無機膜の複数層(例えば、シリカ蒸着膜)で構成されていてもよい。また、バリア層は、有機物と無機物から構成されていてもよく、有機層と無機膜の複合多層であってもよい。
【0107】
保護シートでは、粘着組成物層と接する面が離型処理されていることが好ましい。一方、支持体は、離型処理されていてもよく、されていなくてもよい。離型処理としては、例えば、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等の離型剤による離型処理が挙げられる。
【0108】
支持体および保護シートの厚さは、特に限定されないが、封止用シートの取り扱い性等の観点から、それぞれ、好ましくは10~150μm、より好ましくは20~100μmである。なお、支持体および保護シートが積層フィルムである場合、前記厚さは、積層フィルムの厚さである。一方、粘着組成物層の厚さは、封止性等の観点から、好ましくは5~200μm、より好ましくは5~150μm、さらに好ましくは5~100μmである。
【0109】
本発明の封止用シートおよび粘着組成物層は、例えば、(1)上述の成分を有機溶剤に溶かして、粘着組成物のワニスを調製し、(2)得られたワニスを支持体上に塗布して塗膜を形成し、(3)得られた塗膜を加熱することによって、有機溶剤を除去し、且つ(A)成分の原料(例えば、エポキシ基を有するイソブテン-イソプレン共重合体、並びにカルボキシ基および/または酸無水物基を有するオレフィン系重合体)を反応させることによって、製造することができる。
【0110】
ワニスの調製に使用し得る有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ等のセロソルブ類;ブチルカルビトール等のカルビトール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンのアミド類;等を挙げることができる。有機溶剤は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。有機溶剤として市販品を使用してもよい。その市販品としては、例えば、丸善石油化学社製「スワゾール」、出光興産社製「イプゾール」等が挙げられる。ワニスの塗布は、公知の方法(例えば、ダイコーターを使用する方法)で行えばよく、塗布方法に特に限定はない。
【0111】
塗膜の加熱温度は、好ましくは50~200℃、より好ましくは80~150℃であり、その時間は、好ましくは1~60分、より好ましくは10~30分である。塗膜の加熱は、常圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。
【0112】
本発明の封止用シートは、電子デバイスの封止に用いることができる。電子デバイスとしては、例えば、有機ELデバイス、太陽電池、センサーデバイス等が挙げられる。電子デバイスは、より好ましくは有機ELデバイスまたは太陽電池等の水分に弱い電子デバイスである。また、本発明の封止用シートは、導電性基板等の封止に用いることができる。
【0113】
さらに最近では、次世代のデバイスとして、自由自在に屈曲可能なフォルダブルデバイスが注目を浴びている。フォルダブルデバイスにおいても、有機ELデバイス、太陽電池等の水分に弱い電子デバイスが主に使われている。フォルダブルデバイスには、柔軟な薄いガラス基板やプラスチック基板が用いられることから、封止用シートには、粘着性に加えて、屈曲時にボイド等の発生が無いことが要求されており、本発明の封止用シートは、フォルダブルデバイスの封止にも用いることが出来る。
【実施例
【0114】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、成分の量および共重合単位の量における「部」および「%」は、特に断りがない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を意味する。
【0115】
<成分>
実施例および比較例で用いた成分を以下に示す。
(1)イソブテン-イソプレン共重合体鎖を有する架橋重合体((A)成分)の原料
「ER866」(星光PMC社製、グリシジルメタクリレート変性ブチルゴム(グリシジルメタクリレート変性イソブテン-イソプレン共重合体)、エポキシ基濃度:1.63mmol/g、数平均分子量:113,000、イソブテン単位/イソプレン単位:98.9%/1.1%)
「ER661」(星光PMC社製、無水マレイン酸変性ブチルゴム(無水マレイン酸変性イソブテン-イソプレン共重合体)、酸無水物基濃度:0.77mmol/g、数平均分子量:40,000、イソブテン単位/イソプレン単位:98.9%/1.1%)
「HV-300M」(東邦化学工業社製、無水マレイン酸変性液状ポリブテン、酸無水物基濃度:0.77mmol/g、数平均分子量:2,100)
【0116】
(2)液状ポリオレフィン系樹脂および/または液状ゴム((B)成分)
「HV-1900」(ENEOS社製、液状ポリブテン、数平均分子量:2,900、25℃での粘度:460Pa・s)
【0117】
(3)吸湿性無機フィラー((C)成分)
半焼成ハイドロタルサイト(協和化学工業社製、「DHT-4C」、粒子径(メジアン径):400nm、BET比表面積:15m/g)
酸化カルシウム(吉澤石灰工業社製、粒子径(メジアン径):2.1μm)
【0118】
(4)粘着付与剤
「アルコン P-125」(荒川化学工業社製、シクロヘキサン環含有水素化石油樹脂、軟化点:125℃)
【0119】
(5)他の重合体
「BUTYL065」(JSR社製、ブチルゴム(イソブテン-イソプレン共重合体))、ムーニー粘度(125℃):32)
「ER829」(星光PMC社製、グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン単位/ブテン単位71%/29%、エポキシ基濃度0.67mmol/g、数平均分子量180,000)
「ER645」(星光PMC社製):無水マレイン酸変性プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン単位/ブテン単位71%/29%、酸無水物基濃度2.01mmol/g、数平均分子量58,000)
【0120】
(6)金属錯体
「プレンアクト Al-M」(味の素ファインテクノ社製、(オクタデセニルアセトアセテート)アルミニウムジイソプロピレート)
【0121】
(7)酸化防止剤
「Irganox1010」(BASF社製、ヒンダードフェノール系酸化防止剤)
(8)硬化剤促進剤
2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(以下「TAP」と略記する。)(化薬アクゾ社製)
【0122】
<実施例1>
下記表に示す配合比のワニスを以下の手順で作製し、得られたワニスを用いて封止用シートを作製した。なお、下記表に記載の各成分の使用量(部)は、ワニス中の各成分の不揮発分の量を示す。また、下記表には、ワニスの不揮発分100%に対する、イソブテン-イソプレン共重合体鎖を有する架橋重合体((A)成分)、液状ポリオレフィン系樹脂および/または液状ゴム((B)成分)、および吸湿性無機フィラー((C)成分)の含有量(%)を示す。
【0123】
具体的には、シクロヘキサン環含有水素化石油樹脂(粘着付与剤、荒川化学工業社製「アルコン P-125」)のスワゾール溶液(不揮発分:60%)に、無水マレイン酸変性液状ポリブテン(東邦化学工業社製「HV-300M」)、ポリブテン(ENEOS社製「HV-1900」)、半焼成ハイドロタルサイト(協和化学工業社製「DHT-4C」)、および金属錯体(味の素ファインテクノ社製「プレンアクト Al-M」)を3本ロールで分散させて、混合物を得た。得られた混合物に、グリシジルメタクリレート変性ブチルゴム(星光PMC社製「ER866」)のトルエン溶液(不揮発分:25%)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF社製「Irganox1010」)、硬化剤促進剤(TAP、化薬ヌーリオン社製)およびトルエンを配合し、得られた混合物を高速回転ミキサーで均一に分散して、粘着組成物のワニスを得た。得られたワニスを、シリコーン系離型剤で処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋クロス社製「SP4020」、PETフィルムの厚さ:50μm)の離型処理面上に、ダイコーターにて均一に塗布し、130℃で30分間加熱し、厚さ20μmの粘着組成物層を有する封止用シートを得た。
【0124】
<実施例2>
半焼成ハイドロタルサイト(協和化学工業社製「DHT-4C」)の使用量を140部から220部に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法にて、粘着組成物のワニス、および厚さ20μmの粘着組成物層を有する封止用シートを作製した。
【0125】
<実施例3>
半焼成ハイドロタルサイト(協和化学工業社製「DHT-4C」)140部を酸化カルシウム(吉澤石灰工業社製、メジアン径2.1μm)140部に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法にて、粘着組成物のワニス、および厚さ20μmの粘着組成物層を有する封止用シートを作製した。
【0126】
<実施例4>
シクロヘキサン環含有水素化石油樹脂(粘着付与剤、荒川化学工業社製「アルコン P-125」)のスワゾール溶液(不揮発分:60%)に、ポリブテン(ENEOS社製「HV-1900」)、半焼成ハイドロタルサイト(協和化学工業社製「DHT-4C」)、および金属錯体(味の素ファインテクノ社製「プレンアクト Al-M」)を3本ロールで分散させて、混合物を得た。得られた混合物に、グリシジルメタクリレート変性ブチルゴム(星光PMC社製「ER866」)のトルエン溶液(不揮発分:25%)、無水マレイン酸変性ブチルゴム(星光PMC社製「ER661」)のトルエン溶液(不揮発分:35%)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(Irganox1010、BASF社製)、硬化剤促進剤(TAP、化薬ヌーリオン社製)およびトルエンを配合し、得られた混合物を高速回転ミキサーで均一に分散して、粘着組成物のワニスを得た後、実施例1と同様の方法にて、粘着組成物のワニス、および厚さ20μmの粘着組成物層を有する封止用シートを作製した。
【0127】
<実施例5>
ポリブテン(ENEOS社製「HV-1900」)、無水マレイン酸変性液状ポリブテン(東邦化学工業社製「HV-300M」)、半焼成ハイドロタルサイト(協和化学工業社製「DHT-4C」)、および金属錯体(味の素ファインテクノ社製「プレンアクト Al-M」)に適宜スワゾールを加えた後、3本ロールで混合して、混合物を得た。得られた混合物に、グリシジルメタクリレート変性ブチルゴム(星光PMC社製「ER866」)のトルエン溶液(不揮発分:25%)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF社製「Irganox1010」)、硬化剤促進剤(TAP、化薬ヌーリオン社製)およびトルエンを配合し、得られた混合物を高速回転ミキサーで均一に分散して、粘着組成物のワニスを得た後、実施例1と同様の方法にて、粘着組成物のワニス、および厚さ20μmの粘着組成物層を有する封止用シートを作製した。
【0128】
<比較例1>
シクロヘキサン環含有水素化石油樹脂(粘着付与剤、荒川化学工業社製「アルコン P-125」)のスワゾール溶液(不揮発分:60%)に、ポリブテン(ENEOS社製「HV-1900」)、半焼成ハイドロタルサイト(協和化学工業社製「DHT-4C」)、および金属錯体(味の素ファインテクノ社製「プレンアクト Al-M」)を3本ロールで分散させて、混合物を得た。得られた混合物に、ブチルゴム(JSR社製「BUTYL065」)のトルエン溶液(不揮発分:15%)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF社製「Irganox1010」)、硬化剤促進剤(TAP、化薬ヌーリオン社製)およびトルエンを配合し、得られた混合物を高速回転ミキサーで均一に分散して、粘着組成物のワニスを得た。その後、実施例1と同様の方法にて、粘着組成物のワニス、および厚さ20μmの粘着組成物層を有する封止用シートを作製した。
【0129】
<比較例2>
ブチルゴム(JSR社製「BUTYL065」)を、グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体(星光PMC社製「ER829」)のトルエン溶液(不揮発分:15%)および無水マレイン酸変性プロピレン-ブテンランダム共重合体(星光PMC社製「ER645」)のイプゾール溶液(不揮発分:20%)に変えたこと以外は、比較例1と同様の方法にて、粘着組成物のワニス、および厚さ20μmの粘着組成物層を有する封止用シートを作製した。
【0130】
<比較例3>
シクロヘキサン環含有水素化石油樹脂(粘着付与剤、荒川化学工業社製「アルコン P-125」)のスワゾール溶液(不揮発分:60%)に、半焼成ハイドロタルサイト(協和化学工業社製「DHT-4C」)および金属錯体(味の素ファインテクノ社製「プレンアクト Al-M」)を3本ロールで分散させて、混合物を得た。得られた混合物に、グリシジルメタクリレート変性ブチルゴム(星光PMC社製「ER866」)のトルエン溶液(不揮発分:25%)、無水マレイン酸変性ブチルゴム(星光PMC社製「ER661」)のトルエン溶液(不揮発分:35%)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF社製「Irganox1010」)、硬化剤促進剤(TAP、化薬ヌーリオン社製)およびトルエンを配合し、得られた混合物を高速回転ミキサーで均一に分散して、粘着組成物のワニスを得た後、得られたワニスを、実施例1と同様にダイコーターにて実施例1と同じ支持体に均一に塗布し、130℃で30分間加熱し、厚さ20μmの粘着組成物層を有する封止用シートを得た。
【0131】
<比較例4>
グリシジルメタクリレート変性ブチルゴム(星光PMC社製「ER866」)のトルエン溶液(不揮発分:25%)、無水マレイン酸変性液状ポリブテン(東邦化学工業社製「HV-300M」)、液状ポリブテン(ENEOS社製「HV-1900」)、金属錯体(味の素ファインテクノ社製「プレンアクト Al-M」)、シクロヘキサン環含有水素化石油樹脂(粘着付与剤、荒川化学工業社製「アルコン P-125」)のスワゾール溶液(不揮発分:60%)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF社製「Irganox1010」)、硬化剤促進剤(TAP、化薬ヌーリオン社製)およびトルエンを配合し、得られた混合物を高速回転ミキサーで均一に分散して、粘着組成物のワニスを得た後、実施例1と同様にしてダイコーターにて実施例1と同じ支持体に均一に塗布し、130℃で30分間加熱し、厚さ50μmの粘着組成物層を有する封止用シートを得た。
【0132】
<接着性の評価方法>
実施例および比較例で作製した封止用シートを長さ50mmおよび幅20mmにカットした。次いでバッチ式真空ラミネーター(ニチゴー・モートン社製、Morton-724)を用いて、アルミニウム箔およびポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを備える複合フィルム(東海東洋アルミ販売社製「PETツキAL1N30」、アルミニウム箔の厚さ:30μm、PETフィルムの厚さ:25μm)を、封止用シートの粘着組成物層にラミネートした。ラミネートは、温度80℃、時間30秒、圧力0.3MPaの条件で行った。そして、得られたシートから支持体(PETフィルム)を剥離し、露出した粘着組成物層上に、ポリイミドフィルム(宇部興産社製「ユーピレックス-S」、厚さ:50μm)を上記と同じ条件でラミネートして、「複合フィルム/粘着組成物層/ポリイミドフィルム」との積層構造を有する積層体を得た。得られた積層体について、アルミニウム箔の長さ方向に対して180度方向に、引張り速度を300mm/分として、ポリイミドフィルムから「複合フィルム/粘着組成物層」を常温で剥離したときの接着強度(常温接着強度)を測定した。また、上記と同様に作製した積層体を、60℃の環境下で同様に剥離したときの接着強度(高温接着強度)を測定した。
【0133】
粘着組成物の高温時の接着性について、以下の基準で評価した。
(高温時の接着性)
◎:高温接着強度が400gf/cm以上
〇:高温接着強度が200gf/cm以上400gf/cm未満
△:高温接着強度が100gf/cm以上200gf/cm未満
×:高温接着強度が100gf/cm未満
【0134】
<水分遮断性の評価方法>
支持フィルムとして、アルミニウム箔およびポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを備える複合フィルム(東海東洋アルミ販売社製「PETツキAL1N30」、アルミニウム箔の厚さ:30μm、PETフィルムの厚さ:25μm)を用意した。この複合フィルムを支持体として用いたこと以外は、各実施例および各比較例と同様にして、「支持体(複合フィルム)/粘着組成物層」との積層構造を有する試験用シートを得た。なお、粘着組成物層は、複合フィルムのアルミニウム箔上に形成した。
【0135】
無アルカリガラスで形成された50mm×50mm角のガラス板を用意した。このガラス板を、煮沸したイソプロピルアルコールで5分間洗浄し、150℃において30分以上乾燥した。
【0136】
乾燥後のガラス板の片面に、前記ガラス板の端部からの距離0mm~2mmの周縁エリアを覆うマスクを用いて、カルシウムを蒸着した。これにより、ガラス板の片面の、前記ガラス板の端部からの距離0mm~2mmの周縁エリアを除く中央部分に、厚さ200nmのカルシウム膜(純度:99.8%)が形成された。
【0137】
窒素雰囲気内で、上述した試験用シートの粘着組成物層と、前記ガラス板のカルシウム膜側の面とを、熱ラミネーター(フジプラ社製 ラミパッカーDAiSY A4(LPD2325))を用いて貼合せ、積層体を得た。この積層体を評価サンプルとして使用した。
【0138】
一般に、カルシウムが水と接触して酸化カルシウムになると、透明になる。また、前記の評価サンプルでは、ガラス板およびアルミニウム箔が充分に高い水蒸気浸入バリア性を有するので、水分は、通常、粘着組成物層の端部を通って面内方向(厚み方向に垂直な方向)に移動して、カルシウム膜に到達する。カルシウム膜に水分が到達すると、カルシウム膜は端部から次第に酸化されて透明になるので、カルシウム膜の縮小が観察される。したがって、評価サンプルへの水分侵入は、評価サンプルの端部からカルシウム膜までの封止距離(mm)を測定することによって、評価できる。そのため、カルシウム膜を含む評価サンプルを、電子デバイスのモデルとして使用できる。
【0139】
まず、評価サンプルの端部からカルシウム膜の端部までの封止距離X1(mm)を、顕微鏡(ミツトヨ社製「Measuring Microscope MF-U」)により測定した。
【0140】
次いで、温度60℃湿度90%RHに設定した恒温恒湿槽に、評価サンプルを収納した。収納から100時間経過後に、評価サンプルを恒温恒湿槽から取り出し、カルシウム膜の端部までの間の封止距離X2(mm)を測定した。
【0141】
前記の封止距離X1およびX2を用いて、下記式:
D(mm)=X2(mm)-X1(mm)
から、D(即ち、X2とX1との差)を算出し、これを用いて水蒸気浸入バリア性を以下の基準で評価した。
(水蒸気浸入バリア性の基準)
○:Dが2.0mm未満
×:Dが2.0mm以上
【0142】
<耐屈曲性の評価方法>
実施例および比較例で作製した封止用シートを長さ110mmおよび幅20mmにカットした。次いバッチ式真空ラミネーター(ニチゴー・モートン社製、Morton-724)を用いて、ポリイミドフィルム(宇部興産社製「ユーピレックス-S」、厚さ:25μm)にラミネートした。ラミネートは、温度80℃、時間30秒、圧力0.3MPaの条件で行った。そして、得られたシートから支持体(PETフィルム)を剥離し、露出した粘着組成物層上に、同じポリイミドフィルム(宇部興産社製「ユーピレックス-S」、厚さ:25μm)を上記と同じ条件でラミネートして、「ポリイミドフィルム/粘着組成物層/ポリイミドフィルム」との積層構造を有する積層体を得た。得られた積層体をクラムシェル型屈曲試験装置「CL40R type-E02」(ユアサシステム機器社製)に設置し、温度60℃、湿度90%RH、曲率半径2.5mmおよび速度60rpmの条件にて50,000回、積層体を屈曲し、屈曲後の積層体における屈曲部の周辺部分を、キーエンス社製デジタルマイクロスコープ「VHX-5000」を用いて観察し(倍率:20倍)、ボイド発生の有無を調べた。耐屈曲性を、以下の基準で評価した。
(耐屈曲性の基準)
○:50,000回屈曲後にボイド発生有り
×:50,000回屈曲後にボイド発生無し
【0143】
【表1】
【0144】
表1に示されるように、粘着組成物層が、イソブテン-イソプレン共重合体鎖を有する架橋重合体((A)成分)、液状ポリオレフィン系樹脂および/または液状ゴム((B)成分)、並びに吸湿性無機フィラー((C)成分)を含有する実施例1~5の封止用シートは、優れた高温時の接着性、水分遮断性および耐屈曲性を示した。
【0145】
一方、粘着組成物層が(A)成分を含有しない比較例1の封止用シート、および粘着組成物層がイソブテン-イソプレン共重合体鎖を有さない架橋重合体を(A)成分の代わりに含有する比較例2の封止用シートは、いずれも耐屈曲性に劣っていた。
また、粘着組成物層が(B)成分を含有しない比較例3の封止用シートは、接着性に劣っていた。なお、比較例3の封止用シートは、常温接着強度および高温接着強度がゼロであったため、水分遮断性および耐屈曲性を測定しなかった。
また、粘着組成物層が(C)成分を含有しない比較例3の封止用シートは、水分遮断性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明の封止用シートは、電子デバイス(例えば、有機ELデバイス、太陽電池、センサーデバイス等)、導電性基板等の封止に有用である。