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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】情報処理装置および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/50 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
F23G5/50 M
F23G5/50 G ZAB
F23G5/50 H
F23G5/50 L
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020131876
(22)【出願日】2020-08-03
(65)【公開番号】P2022028463
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2022-08-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】薄木 太一
(72)【発明者】
【氏名】中山 剛
(72)【発明者】
【氏名】戸村 啓二
(72)【発明者】
【氏名】狩野 真也
(72)【発明者】
【氏名】田口 昇
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-049830(JP,A)
【文献】特開2015-103075(JP,A)
【文献】特開平06-221536(JP,A)
【文献】特開2019-086255(JP,A)
【文献】特開2003-161421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードウェアを有する制御部を備え、
前記制御部は、
廃棄物を焼却しつつ移動させる火格子を備える廃棄物焼却炉内における、廃棄物供給部から送り出される供給前廃棄物、前記供給前廃棄物が落下する段差壁、前記火格子上を移動する廃棄物、および前記火格子の上面を、火炎を透過した状態で撮像可能な撮像部によって、前記廃棄物を含む領域が撮像されて得られた透過画像データを取得して記憶部に記憶させ、
前記記憶部から読み出した前記透過画像データを入力パラメータとして境界識別学習モデルに入力し、前記廃棄物と、前記廃棄物焼却炉内における前記廃棄物以外の物体との境界に対して境界線を生成して、前記透過画像データに対して前記境界線を描画処理した境界画像データを出力パラメータとして出力し、
前記境界画像データを入力パラメータとして燃焼状態学習モデルに入力し、前記廃棄物の燃焼温度が所定温度以上の既燃領域と、前記廃棄物の燃焼温度が所定温度未満の未燃領域とを区別して、前記既燃領域と前記未燃領域との境界線が描画処理された区別画像データを出力パラメータとして出力し、
前記区別画像データから、
前記既燃領域における既燃廃棄物の量を、前記既燃領域の面積または前記既燃領域における所定領域ごとの温度を積算した温度積算値から得られる前記既燃廃棄物の燃焼量に基づいて導出し、
前記未燃領域における未燃廃棄物の量を、前記未燃領域の面積または前記未燃領域における所定領域ごとの温度を積算した温度積算値から得られる前記未燃廃棄物の燃焼量に基づいて導出する
情報処理装置。
【請求項2】
前記燃焼状態学習モデルは、前記透過画像データ、および境界識別学習モデルによって生成された前記境界画像データの少なくとも一方を学習用入力パラメータとし、前記境界画像データに対して前記既燃領域と前記未燃領域との前記境界線が描画された区別画像データを学習用出力パラメータとして、機械学習によって生成された学習モデルである
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記境界画像データにおける境界線は、前記透過画像データに対して前記火格子上に存在する前記廃棄物の外縁に生成される
請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記既燃領域に基づいて、前記透過画像データにおいて前記火格子上に存在する前記廃棄物の既燃領域の下流側端部である燃焼点の位置を導出する
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記未燃廃棄物の量に対する前記既燃廃棄物の量の比率を導出する
請求項1~4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
ハードウェアを有する制御部を備えた情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
前記制御部は、
廃棄物を焼却しつつ移動させる火格子を備える廃棄物焼却炉内における、廃棄物供給部から送り出される供給前廃棄物、前記供給前廃棄物が落下する段差壁、前記火格子上を移動する廃棄物、および前記火格子の上面を、火炎を透過した状態で撮像可能な撮像部によって、前記廃棄物を含む領域が撮像されて得られた透過画像データを取得して記憶部に記憶させ、
前記記憶部から読み出した前記透過画像データを入力パラメータとして境界識別学習モデルに入力し、前記廃棄物と、前記廃棄物焼却炉内における前記廃棄物以外の物体との境界に対して境界線を生成して、前記透過画像データに対して前記境界線を描画処理した境界画像データを出力パラメータとして出力し、
前記境界画像データを入力パラメータとして燃焼状態学習モデルに入力し、前記廃棄物の燃焼温度が所定温度以上の既燃領域と、前記廃棄物の燃焼温度が所定温度未満の未燃領域とを区別して、前記既燃領域と前記未燃領域との境界線が描画処理された区別画像データを出力パラメータとして出力し、
前記区別画像データから、
前記既燃領域における既燃廃棄物の量を、前記既燃領域の面積または前記既燃領域における所定領域ごとの温度を積算した温度積算値から得られる前記既燃廃棄物の燃焼量に基づいて導出し、
前記未燃領域における未燃廃棄物の量を、前記未燃領域の面積または前記未燃領域における所定領域ごとの温度を積算した温度積算値から得られる前記未燃廃棄物の燃焼量に基づいて導出する
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置および情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低炭素社会および循環型社会を実現するために、廃棄物処理分野においても、様々な要求がなされている。このような要求に対して、具体的に、廃棄物を焼却する廃棄物焼却炉内における廃棄物の燃焼状態を把握する手段として、種々の技術が提案されている。特許文献1には、赤外線カメラを用いて炎越しに廃棄物の層の状況を測定して、燃焼が適正になるように、廃棄物焼却炉における給塵装置を含む各種装置を制御する方法が記載されている。特許文献1に記載された技術によれば、燃焼排ガスの温度やガス組成の変動を極力小さくして、排ガス中のCO濃度、NOx濃度を低く抑制できるとともに、排ガスからの熱回収による蒸気発生量の変動を抑制できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-116252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術においては、燃焼状態を把握する方法や、燃焼状態を適切に把握した上での具体的な制御方法の詳細については検討されていなかった。すなわち、上述した従来技術においては、給塵装置を含む各種装置を適切に制御する制御方法について、さらなる改善の余地があった。そのため、廃棄物焼却炉に供給された廃棄物の燃焼状態を正確に把握することができ、廃棄物焼却炉における各種装置をさらに適切に制御できる技術が求められていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、廃棄物焼却炉において廃棄物の燃焼状態を把握することができ、把握した燃焼状態に基づいて廃棄物焼却炉における各種装置を適切に制御できる情報処理装置および情報処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る情報処理装置は、ハードウェアを有する制御部を備え、前記制御部は、廃棄物を焼却する廃棄物焼却炉内の前記廃棄物を含む領域が測定されて得られた熱画像情報を取得して記憶部に記憶させ、前記記憶部から読み出した前記熱画像情報に基づいて、前記廃棄物の燃焼温度が所定温度以上の既燃領域と、前記廃棄物の燃焼温度が所定温度未満の未燃領域とを区別して抽出し、抽出した前記既燃領域における既燃廃棄物の燃焼量に基づいて、前記既燃廃棄物の量を導出するとともに、前記未燃領域における未燃廃棄物の燃焼量に基づいて、前記未燃廃棄物の量を導出する。
【0007】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、上記の発明において、前記制御部は、前記記憶部から読み出した前記熱画像情報から生成された画像データに対して、前記廃棄物焼却炉内における、前記既燃領域と、前記未燃領域と、前記既燃領域および前記未燃領域以外の領域との境界を識別して、前記境界の少なくとも一部を規定する境界線を生成して、前記境界線を含む処理画像データを生成する。
【0008】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、上記の発明において、前記制御部は、前記記憶部から前記画像データを入力パラメータとして取得し、前記記憶部から読み出した前記画像データを燃焼状態学習モデルに入力し、前記画像データに対して前記境界線が生成された前記処理画像データを出力パラメータとして出力し、前記燃焼状態学習モデルは、前記画像データを学習用入力パラメータとし、前記画像データに対して前記境界線が描画された処理画像データを学習用出力パラメータとして、機械学習によって生成された学習モデルである。
【0009】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、上記の発明において、前記廃棄物焼却炉は、前記廃棄物を移動させる火格子を備え、前記境界線は、前記画像データにおいて前記火格子上に存在する前記廃棄物の外縁に生成される。
【0010】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、上記の発明において、前記制御部は、前記未燃廃棄物の量に対する前記既燃廃棄物の量の比率を導出する。
【0011】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、上記の発明において、前記既燃廃棄物の燃焼量は、前記既燃領域の面積または前記既燃領域における温度積算値に基づく値であり、前記未燃廃棄物の燃焼量は、前記未燃領域の面積または前記未燃領域における温度積算値に基づく値である。
【0012】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、上記の発明において、前記制御部は、抽出した前記燃焼領域に基づいて、前記燃焼量および前記燃焼点の位置を導出する。
【0013】
本発明の一態様に係る燃焼制御装置は、廃棄物を焼却する廃棄物焼却炉内の前記廃棄物を含む領域が測定されて得られた熱画像情報から、前記既燃廃棄物の量および前記未燃廃棄物の量を導出する上記の発明による情報処理装置によって得られた前記既燃廃棄物の量および前記未燃廃棄物の量を取得し、取得した前記既燃廃棄物の量および前記未燃廃棄物の量を記憶部に格納し、前記既燃廃棄物の量および前記未燃廃棄物の量に基づいて、前記廃棄物焼却炉を制御する燃焼制御部を備える。
【0014】
本発明の一態様に係る燃焼制御装置は、上記の発明において、前記廃棄物焼却炉は、前記廃棄物を移動させる火格子と前記廃棄物を前記火格子上に供給する廃棄物供給手段とを備え、前記燃焼制御部は、前記既燃廃棄物の量および前記未燃廃棄物の量に基づいて、前記廃棄物供給手段による前記廃棄物を供給する供給速度と、前記火格子の火格子速度との少なくとも一方を制御する。
【0015】
本発明の一態様に係る燃焼制御装置は、上記の発明において、前記燃焼制御部は、前記既燃廃棄物の量および前記未燃廃棄物の量に基づいて、空気の送風量と空気の温度との少なくとも一方を制御する。
【0016】
本発明の一態様に係る燃焼制御装置は、上記の発明において、前記燃焼制御部は、前記未燃廃棄物の量および前記既燃廃棄物の量の時間変化を前記記憶部から読み出し、前記未燃廃棄物の量に対する前記既燃廃棄物の量の比率の時間変化を取得し、前記比率の時間変化に基づいて、前記廃棄物焼却炉を制御する。
【0017】
本発明の一態様に係る情報処理方法は、ハードウェアを有する制御部を備えた情報処理装置が実行する情報処理方法であって、前記制御部は、廃棄物を焼却する焼却炉内の前記廃棄物を含む領域が測定されて得られた熱画像情報を取得して記憶部に記憶させ、前記記憶部から読み出した前記熱画像情報に基づいて、前記廃棄物の燃焼温度が所定温度以上の既燃領域と、前記廃棄物の燃焼温度が所定温度未満の未燃領域とを区別して抽出し、抽出した前記既燃領域における既燃廃棄物の燃焼量に基づいて前記既燃廃棄物の量を導出し、抽出した前記未燃領域における未燃廃棄物の燃焼量に基づいて前記未燃廃棄物の量を導出する。
【0018】
本発明の一態様に係る燃焼制御方法は、廃棄物を焼却する廃棄物焼却炉を制御する燃焼制御部を備えた燃焼制御装置が実行する燃焼制御方法であって、前記燃焼制御部は、廃棄物を焼却する廃棄物焼却炉内の前記廃棄物を含む領域が測定されて得られた熱画像情報から、前記既燃廃棄物の量および前記未燃廃棄物の量を導出する上記の発明による情報処理方法によって導出された前記既燃廃棄物の量および前記未燃廃棄物の量を取得し、取得した前記既燃廃棄物の量および前記未燃廃棄物の量を記憶部に格納し、前記既燃廃棄物の量および前記未燃廃棄物の量に基づいて、前記廃棄物焼却炉を制御する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る情報処理装置および情報処理方法によれば、廃棄物焼却炉において廃棄物の燃焼状態を把握することができ、把握した燃焼状態に基づいて廃棄物焼却炉における各種装置を適切に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の一実施形態による情報処理装置を適用した廃棄物焼却施設を模式的に示す全体構成図である。
図2図2は、本発明の一実施形態による焼却炉における廃棄物、廃棄物の火格子上への供給部分、および撮像部を示す側面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態による焼却炉における撮像部の視野を示す正面図である。
図4図4は、本発明の一実施形態による燃焼制御装置および燃焼判定装置の構成を示すブロック図である。
図5図5は、本発明の一実施形態による撮像部によって撮像された燃焼中の廃棄物の透過画像データの例を示す図である。
図6図6は、本発明の一実施形態による撮像部により撮像した透過画像データに対して境界線を生成した境界画像データの例を示す図である。
図7図7は、本発明の一実施形態による境界画像データに対して燃焼部を抽出した境界線を生成した区別画像データの例を示す図である。
図8図8は、本発明の一実施形態による情報処理方法および燃焼制御方法を説明するためのフローチャートである。
図9図9は、本発明の一実施形態による情報処理方法および燃焼制御方法を説明するための焼却炉の火格子および廃棄物の側面を模式的に示す図である。
図10図10は、本発明の一実施形態による境界画像データに対して燃焼部を抽出した境界線を生成した区別画像データの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の一実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する一実施形態によって限定されるものではない。
【0022】
まず、本発明者の知見によれば、廃棄物焼却炉として、例えば火格子(ストーカ)式のごみ焼却炉(以下、火格子焼却炉)などの焼却炉を適切に制御するためには、廃棄物の燃焼状態を把握することが重要である。具体的には、焼却炉内に供給された直後の乾燥が進んでいる段階の廃棄物(以下、未燃廃棄物)と、熱分解反応が生じて固体燃焼している段階の廃棄物(以下、既燃廃棄物)とを区別することが有益である。本発明者は、未燃廃棄物と既燃廃棄物とを区別することによって、未燃廃棄物の量および既燃廃棄物の量の時間変化に基づいて、好適には未燃廃棄物の量と既燃廃棄物の量との比率の時間変化に基づいて、廃棄物の燃焼の挙動を予測する方法を案出した。廃棄物の燃焼の挙動を予測することができれば、廃棄物焼却炉における各種装置を適切に制御でき、燃焼変動を抑制することができる。
【0023】
すなわち、本発明者は、特定波長を透過する熱画像カメラなどによって火炎を透過した状態で撮像した撮像データ(以下、透過画像データ)に基づいて、比較的高温の部分を既燃廃棄物の領域、比較的低温の部分を未燃廃棄物の領域としてそれぞれ抽出することを想到した。これによって、既燃廃棄物と未燃廃棄物とを区別することができるので、本発明者は、これらの比率を指標として制御することによって、安定燃焼に寄与する方法を想到した。以下に説明する一実施形態は、以上の本発明者の鋭意検討に基づいて、案出されたものである。
【0024】
(火格子焼却炉)
図1は、本発明の一実施形態による情報処理装置が適用される火格子焼却炉を示す。図1に示すように、廃棄物焼却炉としての火格子焼却炉は、廃棄物の燃焼が行われる炉1、廃棄物を投入する廃棄物投入口2、およびボイラ9を備える。蒸気発生部としてのボイラ9は、炉1の炉出口7の下流側に設置された熱交換器9aおよび蒸気ドラム9bを備える。
【0025】
廃棄物投入口2から投入された廃棄物は、廃棄物供給手段としての廃棄物供給装置3によって火格子4に搬送される。火格子4が往復運動を行うことにより、廃棄物の撹拌および移動が行われる。火格子4上の廃棄物は、火格子4の下方の風箱に燃焼用空気ブロア6により供給される燃焼用空気の吹き込みによって乾燥されながら燃焼されて、排ガスおよび灰が生成される。生成された灰は、灰落下口5を通じて落下して炉1の外部に排出される。
【0026】
火格子4の下から炉1の内部に供給される燃焼用空気の総量は、押込送風機としての燃焼用空気ブロア6の直近に設けた燃焼用空気ダンパ14によって調整される。それぞれの風箱に供給される燃焼用空気の流量は、それぞれの風箱に燃焼用空気を供給する配管にそれぞれ設けられた、火格子下燃焼用空気ダンパ14a,14b,14c,14dによって調整される。換言すると、火格子下燃焼用空気ダンパ14a~14dによって、それぞれの風箱に供給される燃焼用空気の流量の比率が調整される。なお、図1においては、廃棄物の搬送方向に沿って火格子4の下を4つの風箱で分割し、それぞれの風箱を通じて燃焼用空気を供給しているが、火格子下燃焼用空気ダンパ14a~14dおよび風箱の数は必ずしも4つに限定されず、火格子焼却炉の規模や目的などに応じて適宜変更可能である。
【0027】
炉壁1aに設けられた二次空気吹き込み口10からは、二次送風機としての二次空気ブロア11によって二次空気が炉1内に吹き込まれる。二次空気が炉1内に吹き込まれることによって、燃焼ガス中の未燃焼成分がさらに燃焼するとともに、炉壁1aの温度の過度な上昇を抑制する。二次空気吹き込み口10から炉1内に供給される二次空気の流量は、二次空気ブロア11の直近に設けられた二次空気ダンパ15によって調整される。
【0028】
火格子4における廃棄物の搬送方向に沿って、上流側の廃棄物乾燥過程(乾燥段)および主燃焼過程(燃焼段)において発生した可燃性ガスと、下流側の後燃焼過程(後燃焼段)において発生した燃焼排ガスとが、炉1の炉出口7側に設けられたガス混合部において合流する。ガス混合部において合流した可燃性ガスおよび燃焼排ガスは、再度攪拌および混合された後、二次燃焼用空気の供給によって、二次燃焼が行われる。ボイラ9は、二次燃焼が行われる部分(以下、二次燃焼部)に対して、廃棄物の搬送方向に沿った下流側に設置されている。二次燃焼が行われた燃焼ガスは、ボイラ9の熱交換器9aによって熱エネルギーが回収された後に、煙突8から外部に排気される。
【0029】
炉1内には、炉1の高さ方向に沿った上側の位置に中間天井16が設けられている。炉1内に流動するガスは、中間天井16によって、上流側における廃棄物乾燥過程および主燃焼過程で発生した可燃性ガスを多く含むガスと、下流側における後燃焼過程で発生した燃焼排ガスとに、分割して排出できる。具体的には、燃焼排ガスが中間天井16よりも下方の煙道(主煙道)を流れる一方、可燃性ガスを多く含むガスが中間天井16よりも上方の煙道(副煙道)を流れる。燃焼排ガスと可燃性ガスを多く含むガスとがガス混合部において合流することによって、ガス混合部でのガスの攪拌および混合がさらに促進される。これにより、二次燃焼部における燃焼がより安定化し、燃焼過程におけるダイオキシン類の発生を抑制し、廃棄物の未燃分の発生を抑制することができる。なお、炉1内に中間天井16を設けない構成にしても良い。
【0030】
炉1内の複数位置に、炉1内のガス温度を計測するセンサとしての温度計が設けられている。具体的には、炉1の高さ方向に沿って、火格子4と二次空気吹き込み口10との中間位置に燃焼室ガス温度計17が設けられている。炉1の高さ方向に沿って、炉出口7より下方位置に主煙道ガス温度計18が設けられている。炉1の高さ方向に沿って、炉出口7の下部位置に炉出口下部ガス温度計19が設けられている。炉1の高さ方向に沿って、炉出口7の中部位置に炉出口中部ガス温度計20が設けられている。炉1の高さ方向に沿って、炉出口7の下流側位置に燃焼管理温度を測定する炉出口ガス温度計21が設けられている。燃焼室ガス温度計17、主煙道ガス温度計18、炉出口下部ガス温度計19、炉出口中部ガス温度計20、および炉出口ガス温度計21により計測された温度の計測値は、燃焼プロセス測定値として燃焼制御装置30に送信されて記憶部32(図4参照)に記憶される。
【0031】
ボイラ9には、出口側に排ガス中の酸素(O2)の濃度を計測するボイラ出口酸素濃度計22が設けられている。煙突8の入口には、排ガス中の一酸化炭素(CO)および窒素酸化物(NOx)の濃度を計測するガス濃度計23が設けられている。ボイラ9の出口と煙突8とを接続する配管には、排ガス量を計測するための排ガス流量計24が設けられている。ボイラ出口酸素濃度計22、ガス濃度計23、および排ガス流量計24により計測されたガスの濃度や流量の計測値は、燃焼プロセス測定値として燃焼制御装置30に送信されて記憶部32に記憶される。また、ボイラ9には、ボイラ9において発生した蒸気量を計測する蒸気流量計25が設けられている。蒸気流量計25により計測されたボイラ9の蒸気発生量の計測値は、燃焼プロセス測定値として燃焼制御装置30に送信されて記憶部32に記憶される。
【0032】
炉1における廃棄物の搬送方向の下流側には、撮像部26が設けられている。撮像部26は、例えば赤外線カメラから構成される火炎透過カメラ、および撮像した画像データを処理する画像処理部を有して構成される。図2は、撮像部26の設置状態を示す側面図である。撮像部26は、炉壁1aに設けられた監視窓に近接して炉外に配設されても、水冷構造を有して炉1内に配設されても良い。図2に示すように、廃棄物50は、段差壁13の部分で廃棄物供給部12から火格子4上に落下する。火格子4上に落下した廃棄物50は、火格子4の前後移動に伴う往復運動によって攪拌されつつ、撮像部26側である前方に移動される。
【0033】
撮像部26は、火格子4上の廃棄物50(以下、火格子上廃棄物52)のサーモグラフィ情報を熱画像情報として取得できる。ここで、廃棄物50から放射される赤外線の波長と、空間における高温ガスおよび火炎から放射される赤外線の波長とは異なる。そのため、撮像部26においては、測定する赤外線波長を適切に選定することによって測定視野内に火炎が存在していても、火格子上廃棄物52の層の温度分布に対応する熱画像情報を得ることができる。また、撮像部26による炉長方向の測定範囲を設定して、燃焼領域より上流側位置(火炎より上流側)での火格子上廃棄物52の層の熱画像情報を得ることができる。熱画像情報は、火炎を透過した状態の映像データ、すなわち複数の画像データとして扱うことができる。
【0034】
換言すると、撮像部26は、廃棄物供給部12から送り出される廃棄物50(以下、供給前廃棄物51)、廃棄物50が落下する段差を有する段差壁13、火格子上廃棄物52、および火格子4の上面を、火炎を透過した状態で撮像可能である。なお、火格子上廃棄物52の燃焼状態、すなわち火炎自体を撮像する燃焼画像撮像部をさらに設けても良い。撮像部26が撮像した火炎を透過した状態で撮像した画像データ(以下、透過画像データ)は、即時的または所定の時間間隔で、燃焼判定装置40に送信される。なお、撮像部26が撮像した透過画像データを、燃焼制御装置30の記憶部32に記憶させた後に、燃焼制御装置30から燃焼判定装置40に送信しても良い。
【0035】
本実施形態において撮像部26は、例えば、廃棄物供給部12および段差壁13に対して略正対する位置に設置される。なお、撮像部26の設置は、廃棄物供給部12および段差壁13に対して略正対する位置に限定されない。撮像部26の設置位置は、少なくとも火格子上廃棄物52と、他の物体、ここでは段差壁13および火格子4との境界部分が撮像可能であれば、種々の位置に設置可能である。
【0036】
図3は、撮像部26の視野の例を示す正面図である。図3に示すように、撮像部26は例えば、炉1の上下方向および炉幅方向(左右方向)に拡がる測定視野を有する。本実施形態において撮像部26の視野は、廃棄物供給部12、段差壁13、火格子4、および炉壁1aである。撮像部26の視野に含まれる炉壁1aは、廃棄物50の左右方向の外側への移動、すなわち拡がりを規制する。なお、撮像部26の視野としては、火格子4上に存在する火格子上廃棄物52と火格子4および段差壁13との境界部分を撮像可能な視野を有すれば良い。また、撮像部26は、廃棄物供給部12まで搬送された廃棄物50を撮像できるのが好ましい。これにより、段差壁13の位置で落下する廃棄物50を撮像できる。
【0037】
図4は、燃焼制御装置30および燃焼判定装置40の構成を示すブロック図である。燃焼制御装置30と燃焼判定装置40とは、例えば、専用線、インターネットなどの公衆通信網、例えばLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、および携帯電話などの電話通信網や公衆回線、VPN(Virtual Private Network)などの一または複数の組み合わせからなるネットワーク(図示せず)を介して、接続されている。また、燃焼制御装置30および燃焼判定装置40を一体に構成してもよく、燃焼制御装置30および燃焼判定装置40を火格子焼却炉と同じ施設内に設置しても別の施設に設置しても良い。火格子焼却炉と燃焼制御装置30と燃焼判定装置40とを別々の施設に設置する場合には、上述したネットワークを介して各種情報や各種データの通信が行われる。
【0038】
図4に示すように、燃焼制御装置30は、制御部31、記憶部32、および操作量調整部33を備える。燃焼制御部としての制御部31、および操作量調整部33は、具体的に、ハードウェアを有するCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのプロセッサ、およびRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの主記憶部(いずれも図示せず)を備える。記憶部32は、RAMなどの揮発性メモリ、ROMなどの不揮発性メモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(HDD、Hard Disk Drive)、およびリムーバブルメディアなどから選ばれた記憶媒体から構成される。なお、リムーバブルメディアは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、または、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、もしくはBD(Blu-ray(登録商標) Disc)のようなディスク記録媒体である。また、外部から装着可能なメモリカードなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体を用いて記憶部32を構成しても良い。
【0039】
記憶部32には、燃焼制御装置30の動作を実行するための、オペレーティングシステム(Operating System:OS)、各種プログラム、各種テーブル、各種データベースなどが記憶可能である。ここで、各種プログラムには、本実施形態による学習モデルや学習済みモデルなどのモデルに基づいた処理を実現する、情報処理プログラムも含まれる。これらの各種プログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、フレキシブルディスクなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。
【0040】
燃焼制御装置30は、あらかじめ定められた操作量基準値設定関係式(以下、操作量関係式)に基づいて、それぞれの操作端の操作量として、廃棄物50の廃棄物供給速度を調整する廃棄物供給装置送り速度(給塵速度ともいう)、および廃棄物50の移動速度を調整する火格子送り速度(火格子速度とも言う)を制御する。なお、燃焼制御装置30は、廃棄物供給装置送り速度および火格子送り速度については、停止や運転操作の制御も行う。燃焼制御装置30は、必要に応じて、操作量関係式に基づいて、燃焼用空気量および二次空気量を制御する。操作量関係式は、例えば、廃棄物焼却量設定値または廃棄物質設定値と操作量基準値(操作量の目標値)との関係式であって、補正係数としての制御パラメータを含む。制御パラメータは、制御部31によって、廃棄物焼却量設定値、および廃棄物質設定値に適合するように調整される。調整された制御パラメータは、廃棄物焼却量設定値および廃棄物質設定値のうちの少なくとも一方の設定値が変更された際に、変更された設定値に対応して、制御部31により変更される。制御パラメータが変更されることにより、あらかじめ設定された操作量基準値が補正される。
【0041】
制御部31は、廃棄物焼却量設定値に応じて廃棄物質(廃棄物の低位発熱量)を算出する。制御部31は、操作量関係式に含まれる制御パラメータの調整により操作量基準値を調整する。制御部31は、調整した操作量基準値を、例えばPID制御やファジィ演算などの所定の制御アルゴリズムに基づいて補正する。記憶部32は、制御部31によって参照されるデータを記憶する。記憶部32には、あらかじめ定められた操作量関係式、制御アルゴリズム、あらかじめ設定された焼却量設定値、および炉1内の燃焼状態量として取得された燃焼プロセス測定値が記憶されている。
【0042】
操作量調整部33は、操作量基準値に追従するように各操作端のそれぞれの操作量を調整する。具体的に操作量調整部33は、燃焼用空気量調整部331、空気量比率調整部332、二次空気量調整部333、廃棄物供給装置送り速度調整部334、および火格子送り速度調整部335を有する。
【0043】
燃焼用空気量調整部331は、燃焼用空気量が制御部31により補正された操作量基準値(以下、補正操作量基準値)に追従するように操作量を調整する。空気量比率調整部332は、火格子下燃焼用空気ダンパ14a~14dのそれぞれを制御して、それぞれの風箱における流量の相互の比率を調整する。二次空気量調整部333は、二次空気量が補正操作量基準値に追従するように操作量を調整する。ここで、燃焼用空気量および二次空気量の調整は、燃焼用空気ダンパ14、火格子下燃焼用空気ダンパ14a~14d、および二次空気ダンパ15のそれぞれの開度を制御して調整する。
【0044】
廃棄物供給装置送り速度調整部334は、廃棄物供給装置送り速度が補正操作量基準値に追従するように操作量を調整する。火格子送り速度調整部335は、火格子送り速度が補正操作量基準値に追従するように操作量を調整する。操作量調整部33は、制御部31により操作量基準値が補正されなかった場合には、補正されていない操作量基準値に基づいてそれぞれの操作量を調整する。
【0045】
(燃焼判定装置)
情報処理装置としての燃焼判定装置40は、制御部41、出力部42、入力部43、および記憶部44を備える。燃焼判定装置40は、透過画像データに対して境界を識別して境界線を描画処理した処理画像データ(以下、境界画像データ)を生成する、境界画像データの生成装置として機能する。また、燃焼判定装置40は、火格子上廃棄物52を既燃廃棄物52Aと未燃廃棄物52Bとに区分けして廃棄物量を測定する廃棄物量の測定装置として機能する。
【0046】
制御部41は、機能的および物理的には、上述した制御部31と同様の構成を有し、ハードウェアを有するCPU、DSP、FPGAなどのプロセッサ、およびRAMやROMなどの主記憶部(いずれも図示せず)を備える。出力手段としての出力部42は、所定の情報を外部に通知可能に構成される。
【0047】
出力部42は、制御部41による制御に従って、ディスプレイモニタに炉1内の廃棄物50の画像などを表示したり、タッチパネルディスプレイの画面上に文字や図形などを表示したり、スピーカから音声を出力したりする。入力手段としての入力部43は、キーボードや入力用のボタン、レバーや、液晶などのディスプレイに重畳して設けられる手入力のためのタッチパネル、または音声認識のためのマイクロホンなどの、ユーザインターフェースを用いて構成される。ユーザなどが入力部43を操作することによって、制御部41に所定の情報を入力可能に構成される。なお、出力部42および入力部43を一体とした入出力部とし、入出力部をタッチパネルディスプレイやスピーカマイクロホンなどから構成しても良い。
【0048】
記憶部44は、機能的および物理的には、上述した記憶部32と同様の構成を有し、RAMなどの揮発性メモリ、ROMなどの不揮発性メモリ、EPROM、HDD、およびリムーバブルメディアなどから選ばれた記憶媒体から構成される。なお、リムーバブルメディアは、例えば、USBメモリ、または、CD、DVD、もしくはBDのようなディスク記録媒体である。また、外部から装着可能なメモリカードなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体を用いて記憶部44を構成しても良い。
【0049】
記憶部44には、燃焼判定装置40の動作を実行するためのOS、各種プログラム、各種テーブル、各種データベースなどが記憶可能である。ここで、各種プログラムには、本実施形態による学習モデルまたは学習済みモデルを用いた制御を実現する情報処理プログラムが含まれる。記憶部44は、種々のネットワークを介して通信可能な他のサーバに設けても良いし、燃焼制御装置30に設けても良い。具体的に、記憶部44には、境界識別学習モデル44a、燃焼状態学習モデル44b、および廃棄物量情報データベース44cが格納されている。
【0050】
境界識別学習モデル44aおよび燃焼状態学習モデル44bはそれぞれ、少なくとも1つの学習モデルを含む更新可能なモデルである。なお、学習モデルを更新しない場合には、学習済みモデルとして記憶部44に格納される。境界識別学習モデル44aおよび燃焼状態学習モデル44bは、両方の学習モデルを1つの学習モデル、例えば燃焼境界識別学習モデルとして構築されていても良い。また、境界識別学習モデル44aや燃焼状態学習モデル44bの代わりに、入力されたデータに対して所定の情報処理を実行する、学習などを行わずに作成されたルールベースの情報処理プログラムを用いても良い。さらに、燃焼画像撮像部によって撮像された火炎自体の燃焼画像のデータから所定の判断を実行可能な、燃焼画像学習モデルを用いた判断処理を実現する自動判断処理プログラムが含まれていても良い。これらの各種プログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、フレキシブルディスクなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。
【0051】
廃棄物量情報データベース44cは、後述する既燃領域A31に存在する既燃廃棄物52Aの量の経時変化、未燃領域A32に存在する未燃廃棄物52Bの量の経時変化、および未燃廃棄物52Bの量に対する既燃廃棄物52Aの量の比率である廃棄物量比率αの経時変化が、時間に関連付けされて格納されている。また、廃棄物量情報データベース44cには、廃棄物量情報として、後述する既燃領域A31および未燃領域A32のそれぞれにおける、面積の情報および温度積算値の情報の少なくとも一方の情報が格納されている。
【0052】
制御部41は、記憶部44に記憶されたプログラムを主記憶部の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部などを制御することによって、所定の目的に合致した機能を実現できる。本実施形態においては、制御部41は、記憶部44に格納されたプログラムの実行によって、境界生成部411、燃焼判定部412、および学習部413の機能を実行する。具体的に例えば、制御部41は、記憶部44からプログラムである境界識別学習モデル44aを読み込むことによって、境界生成部411の機能を実行する。また、制御部41は、記憶部44からプログラムである燃焼状態学習モデル44bを読み込むことによって、燃焼判定部412の機能を実行する。境界生成部411、燃焼判定部412、および学習部413の機能の詳細については、後述する。
【0053】
(境界識別学習モデル)
ここで、記憶部44に記憶されている境界識別学習モデル44aおよびその生成方法について説明する。図5は、本実施形態の撮像部26によって撮像された燃焼中の廃棄物の透過画像データの例を示す図である。図6は、本実施形態による撮像部26により撮像された透過画像データに対して境界線を生成した境界画像データの例を示す図である。
【0054】
図5に示すように、撮像部26は、炉1内において、廃棄物供給部12ならびに火格子4上に供給される前の供給前廃棄物51、段差壁13、火格子4ならびに火格子4上の火格子上廃棄物52、および炉壁1aを、火炎(輝炎ともいう)を透過した状態で撮像して透過画像データとして出力する。境界識別学習モデル44aは、図6に示すように、撮像部26が撮像した透過画像データに対して、廃棄物50と他の物体との境界に対して境界線53を生成する処理を実行する。図6に示す例では、廃棄物50と、廃棄物供給部12、段差壁13および炉壁1aとの境界に境界線531が描画され、廃棄物50と、段差壁13、炉壁1aおよび火格子4との境界に境界線532が描画される。境界線53の描画によって、境界画像データは、例えば4つの領域A1,A2,A3,A4に区分けすることができる。
【0055】
境界識別学習モデル44aの生成のために用いられるデータは、撮像部26が撮像した透過画像データ、および境界画像データである。透過画像データおよび境界画像データの数は、例えばそれぞれ、100以上とするのが好ましい。すなわち、生成のために用いられる境界画像データは、作業者によって、透過画像データに対して、廃棄物50と、廃棄物供給部12、段差壁13、炉壁1a、および火格子4とのそれぞれの境界に対して境界線53が描画された画像データである。境界識別学習モデル44aを生成する際の入出力データセットとしては、学習用入力パラメータとして透過画像データが用いられ、学習用出力パラメータとして境界画像データが用いられる。制御部41の学習部413は、上述した学習用入力パラメータおよび学習用出力パラメータを教師データとして、例えばニューラルネットワークを用いたディープラーニング(深層学習)などの機械学習によって、境界識別学習モデル44aを生成する。制御部41は、学習部413により学習された内容に基づいて、透過画像データから境界画像データを生成する。また、学習部413は、入力された透過画像データ、および作業者が境界を修正したり描画したりすることで得られた境界画像データを用いて、境界識別学習モデル44aを適宜更新する。
【0056】
(燃焼状態学習モデル)
次に、記憶部44に格納されている燃焼状態学習モデル44bおよびその生成方法について説明する。図7は、本実施形態による境界生成部411により作成された境界画像データに対して火格子上廃棄物52の既燃廃棄物52Aの領域(既燃領域A31)と未燃廃棄物52Bの領域(未燃領域A32)とを区別した処理画像データ(以下、区別画像データ)の例を示す図である。撮像部26は、図5に示す透過画像データを制御部41に送信する。制御部41の境界生成部411は、入力された透過画像データから、境界識別学習モデル44aに基づいて図6に示す境界画像データを生成する。燃焼状態学習モデル44bは、図7に示すように、透過画像データや境界画像データなどの炉1内の画像データに基づいて、境界画像データから既燃廃棄物領域としての既燃領域A31と未燃廃棄物領域としての未燃領域A32を抽出する処理を実行可能な学習モデルである。
【0057】
燃焼状態学習モデル44bの生成のために用いられる学習用入力パラメータは、撮像部26が撮像した透過画像データ、および境界識別学習モデル44aに基づいて境界生成部411が生成した境界画像データの少なくとも一方とする。また、燃焼状態学習モデル44bの生成のために用いられる学習用出力パラメータは、作業者によって、透過画像データまたは境界画像データに対して、火格子上廃棄物52と他の領域との境界、および燃焼温度が所定温度以上の火格子上廃棄物52の領域である既燃領域A31と、所定温度未満の火格子上廃棄物52の領域である未燃領域A32との境界が描画処理された区別画像データである。
【0058】
図7に示す例では、境界画像データに対して、火格子上廃棄物52の燃焼温度が所定温度以上、例えば1000K以上の既燃領域A31が白抜きで描画され、所定温度未満、例えば1000K未満の未燃領域A32が打点で描画されている。図7に示す火格子上廃棄物52において、燃焼温度が所定温度以上の既燃領域A31と他の領域との境界、すなわち既燃領域A31の外縁には境界線532aが描画されている。また、火格子上廃棄物52において、燃焼温度が所定温度未満の未燃領域A32と他の領域との境界、すなわち未燃領域A32の外縁には境界線532bが描画されている。なお、熱画像カメラなどを備えた撮像部26は、廃棄物50の温度分布に基づいた透過画像データを出力することができる。この場合、出力された透過画像データは、例えば、温度が高いほど輝度が高くされ、温度が低いほど輝度が低くされた画像データとして出力できる。これにより、透過画像データから火格子上廃棄物52を抽出し、抽出した火格子上廃棄物52において、所定温度以上となる高温の領域を既燃領域A31として抽出し、所定温度未満の領域を未燃領域A32として抽出できる。このように、輝度によって温度分布が把握できる透過画像データに対して、火格子上廃棄物52の既燃領域A31と未燃領域A32とを抽出した画像データを区別画像データとしても良い。
【0059】
学習に用いる透過画像データ、境界画像データ、および区別画像データの数は、例えばそれぞれ、100以上が好ましい。燃焼状態学習モデル44bを生成する際の入出力データセットとしては、学習用入力パラメータとして透過画像データまたは境界画像データが用いられ、学習用出力パラメータとして区別画像データが用いられる。制御部41の学習部413は、上述した学習用入力パラメータおよび学習用出力パラメータを教師データとして、例えばニューラルネットワークを用いたディープラーニングなどの機械学習によって、燃焼状態学習モデル44bを生成する。制御部41は、学習部413により学習された内容に基づいて、透過画像データまたは境界画像データから区別画像データを生成する。また、学習部413は、入力された透過画像データまたは境界画像データ、および作業者が境界を修正したり描画したりすることで得られた区別画像データを用いて、燃焼状態学習モデル44bを適宜更新する。
【0060】
画像データは、撮像部26が撮像した透過画像データ、透過画像データに対して境界線53が描画処理された境界画像データ、および透過画像データまたは境界画像データに対して、火格子上廃棄物52および既燃領域A31が抽出された区別画像データを含む。画像データとして透過画像データを用いる場合には、撮像部26が撮像した透過画像データが用いられる。画像データとして境界画像データを用いる場合、境界識別学習モデル44aによって生成された境界画像データや、作業者によって生成または修正された境界画像データなどを用いることができる。同様に、画像データとして区別画像データを用いる場合、燃焼状態学習モデル44bによって生成された区別画像データや、作業者によって生成または修正された区別画像データなどを用いることができる。
【0061】
区別画像データからは、少なくとも以下の情報を取得できる。
火格子上廃棄物52の面積(図7中、領域A31,A32の廃棄物50の面積S)
既燃領域A31の面積(図7中、既燃領域A31の面積S1
既燃領域A31の最高温度、平均温度、および温度積算値
未燃領域A32の面積(図7中、未燃領域A32の面積S2
未燃領域A32の最低温度、平均温度、および温度積算値
なお、温度積算値は、画像データの既燃領域A31および未燃領域A32における例えば画素などの所定領域ごとの温度を積算した値である。
【0062】
区別画像データからは、さらに以下の情報を取得できる。
火格子上廃棄物52の高さ(図6および図7中、火格子上廃棄物52の層の局所的な高さ、火格子上廃棄物の層の平均の高さ)
火格子上廃棄物52の燃焼点の位置(既燃領域A31の撮像部26側端部)(図6および図7中、F線)
【0063】
また、上述した燃焼状態学習モデル44bはさらに、火格子上廃棄物52の層(廃棄物層)の高さを導出したり、燃焼点の位置を測定したり、廃棄物量を導出したりする処理を実行可能な学習モデルを含んでいても良い。この場合、燃焼状態学習モデル44bを生成する際の入出力データセットとしては、学習用入力パラメータとして、透過画像データ、または境界画像データが用いられ、学習用出力パラメータとして区別画像データと、廃棄物層高さのデータ、燃焼点の位置のデータ、および既燃領域A31および未燃領域A32の燃焼量(例えば、温度積算値、面積、平均温度など)のデータが用いられる。入出力データセットの数は、例えばそれぞれ、100以上が好ましい。制御部41の学習部413は、上述した学習用入力パラメータおよび学習用出力パラメータを教師データとして、例えばニューラルネットワークを用いたディープラーニングなどの機械学習によって、燃焼状態学習モデル44bを生成する。制御部41は、学習部413により学習された内容に基づいて、透過画像データや境界画像データから区別画像データを生成して、廃棄物層高さ、燃焼点の位置F、燃焼量、廃棄物量をそれぞれ導出できる。なお、区別画像データから、廃棄物層高さ、燃焼点の位置F、燃焼量、廃棄物量をそれぞれ導出する学習モデルを別途生成しても良い。学習部413は、作業者に修正された区別画像データや、画像データからルールベースの燃焼状態導出プログラムによって測定された、廃棄物層高さ、燃焼点の位置F、燃焼量、および廃棄物量の導出値を用いて、燃焼状態学習モデル44bを適宜更新しても良い。
【0064】
(情報処理方法および燃焼制御方法)
次に、本発明の一実施形態による情報処理方法および燃焼制御方法について説明する。図8は、本実施形態による情報処理方法および燃焼制御方法を説明するためのフローチャートである。本実施形態において、ステップST1は炉1における撮像部26、ステップST2,ST3,ST6~ST9は燃焼判定装置40、ステップST4,ST5は作業者、およびステップST10は燃焼制御装置30が行う処理である。
【0065】
図8に示すように、ステップST1において撮像部26は、炉1内を撮像する。撮像部26は、視野内における炉1内の状況を、火炎を透過した画像として撮像する。撮像部26は具体的に、図5に示すように、廃棄物供給部12における供給前廃棄物51、段差壁13、火格子上廃棄物52、火格子4、および炉壁1aを、火炎を透過した状態として撮像する。なお、供給前廃棄物51および炉壁1aについては撮像しなくても良い。撮像部26は、撮像した透過画像データを、燃焼判定装置40の入力部43を通じて、制御部41に送信する。制御部41は、受信した透過画像データを記憶部44に格納する。
【0066】
次に、図8に示すステップST2に移行して燃焼判定装置40の境界生成部411は、境界識別学習モデル44aを読み込んで、撮像部26から取得した透過画像データ(図5参照)を記憶部44から読み出して取得し、読み出した透過画像データに対し、廃棄物50と、廃棄物供給部12、段差壁13、炉壁1a、および火格子4との境界を判別する。なお、境界生成部411は、ルールベースの画像識別アルゴリズムによって、廃棄物50と、廃棄物供給部12と、段差壁13と、炉壁1aと、火格子4とを相互に識別して、それらの境界を判別しても良い。
【0067】
また、制御部41の燃焼判定部412は、燃焼状態学習モデル44bを読み込んで、火格子上廃棄物52と他の領域とを識別し、識別された火格子上廃棄物52における所定温度以上の既燃領域A31と所定温度未満の未燃領域A32とを識別して、それらの境界を判別する。なお、燃焼判定部412は、ルールベースの画像識別アルゴリズムによって、火格子上廃棄物52と他の領域とを識別し、識別された火格子上廃棄物52における所定温度以上の既燃領域A31と所定温度未満の未燃領域A32とを識別して、それらの境界を判別しても良い。
【0068】
次に、ステップST3に移行して境界生成部411は、透過画像データに対して、廃棄物50と他の物体との境界、すなわち廃棄物50と、廃棄物供給部12、段差壁13、炉壁1a、および火格子4とのそれぞれの境界に対して境界線53を描画する。図6に示すように、境界生成部411は、例えば、透過画像データに対して、供給前廃棄物51と、廃棄物供給部12、炉壁1a、および段差壁13との境界、火格子上廃棄物52と、段差壁13、火格子4、および炉壁1aとの境界に対してそれぞれ、境界線531,532を描画する。換言すると、境界生成部411は、供給前廃棄物51の外縁を囲むように境界線531を描画する。また、境界生成部411は、火格子上廃棄物52の外縁を囲むように境界線532を描画する。以上により、境界生成部411は、透過画像データに対して境界線53が描画された境界画像データを生成する。境界生成部411は、生成した境界画像データを燃焼判定部412に出力する。
【0069】
また、ステップST3において燃焼判定部412は、境界生成部411から入力された境界画像データに対して、識別された火格子上廃棄物52における所定温度以上の既燃領域A31と所定温度未満の未燃領域A32とを識別して境界線532a,532bを描画する。換言すると、燃焼判定部412は、境界画像データに対して、既燃領域A31の外縁を囲むように境界線532aを描画するとともに、火格子上廃棄物52における未燃領域A32の外縁を囲むように境界線532bを描画する。以上により、燃焼判定部412は、境界画像データに対して境界線532a,532bが描画された区別画像データを生成する。なお、燃焼判定部412は、境界生成部411による境界の生成処理が行われていない透過画像データに対して、境界線532a,532bが描画された区別画像データを生成しても良い。この場合、境界生成部411による境界画像データの生成処理は実行しなくても良い。また、境界画像データに対して、火格子上廃棄物52が存在する領域A3内において、火格子上廃棄物52の既燃領域A31と未燃領域A32とを分割する境界線532(532a,532b)を生成して区別画像データを生成しても良い。すなわち、区別画像データとしては、火格子上廃棄物52の存在領域を抽出でき、火格子上廃棄物52における所定温度以上の既燃領域A31と所定温度未満の既燃領域A31とが区別可能な画像データであれば良い。また、燃焼判定部412は、境界画像データにおいて火格子上廃棄物52における所定温度以上の領域を既燃領域A31とし、所定温度未満の領域を未燃領域A32として識別した結果を境界生成部411に出力して、境界生成部411が、境界線532a,532bを描画しても良い。
【0070】
次に、図8に示すステップST4に移行して、燃焼判定装置40の作業者は、出力部42に出力された区別画像データを確認する。作業者は、確認した区別画像データに描画された境界線532a,532bが正確であるか否かを判定する。作業者が、境界線532a,532bは正確ではないと判定した場合(ステップST4:No)、学習部413は、学習が必要であるフラグを立てて、ステップST5に移行する。一方、ステップST4において作業者が、境界線53は正確であると判定した場合(ステップST4:Yes)、ステップST7に移行する。ステップST7の処理については、後述する。
【0071】
ステップST5において作業者は、入力部43を用いて、燃焼判定部412が生成した区別画像データに描画されている境界線532a,532bを修正する。これにより、修正区別画像データが作成される。なお、修正区別画像データは、作業者が入力部43を用いて修正する方法に限定されず、区別画像データを印刷した印刷物に対して作業者が境界線532a,532bを修正し、修正後の印刷物を入力部43としてのスキャナなどを用いて燃焼判定装置40に読み込ませて入力しても良い。
【0072】
その後、ステップST6に移行して燃焼判定装置40の学習部413は、境界の識別を学習して、燃焼状態学習モデル44bを更新する。すなわち、学習部413は、ステップST1において取得した透過画像データまたはステップST3において取得した境界画像データを学習用入力パラメータ、入力部43から入力された修正区別画像データを学習用出力パラメータとした入出力データセットを教師データとして、燃焼状態学習モデル44bを更新する。なお、学習部413は、修正区別画像データを用いて、燃焼状態学習モデル44bに対して逆誤差伝播法などによって各パラメータの係数を修正することにより、燃焼状態学習モデル44bを更新しても良い。燃焼状態学習モデル44bの更新が終了した後、学習部413は、学習が必要であるフラグを降ろす。
【0073】
また、以上の燃焼状態学習モデル44bの更新と同様の方法によって、ステップST1において取得した透過画像データを学習用入力パラメータとし、ステップST5において作業者が入力部43から入力した修正後の境界画像データを学習用出力パラメータとした入出力データセットを教師データとして、さらに境界識別学習モデル44aを更新しても良い。ステップST4~ST6の処理は、ステップST4において作業者が、境界線53は正確であると判定(ステップST4:Yes)するまで、繰り返し実行される。なお、ルールベースの画像認識アルゴリズムを採用している場合や、境界識別学習モデル44aおよび燃焼状態学習モデル44bの更新を行わない場合には、ステップST4~ST6の処理を省略しても良い。
【0074】
ステップST7に移行すると燃焼判定部412は、廃棄物量の測定装置として機能して、火格子上廃棄物52における既燃領域A31および未燃領域A32の廃棄物量をそれぞれ算出する。すなわち、図7に示すように、区別画像データにおいて、火格子上廃棄物52の燃焼温度が所定温度以上である領域が境界線532aによって囲まれて既燃領域A31として抽出されている(図7中、白抜き部)。同様に、火格子上廃棄物52の燃焼温度が所定温度未満である領域が境界線532bによって囲まれて未燃領域A32として抽出されている(図7中、打点部)。ここで区別画像データにおいては、例えば画像の画素ごとに燃焼温度に対応した輝度が設定されている。なお、画素の代わりに、燃焼部53Aを複数の所定のメッシュに分割して、それぞれのメッシュ(計算格子)ごとに燃焼温度に対応した輝度が設定されていても良い。また、輝度の代わりに温度の計測値の情報を画素やメッシュに関連付けたメタ情報として区別画像データに埋め込んでも良い。
【0075】
図9は、本発明の一実施形態による情報処理方法を説明するための焼却炉の燃焼部分を模式的に示す図である。図9に示すように、炉1内においては、廃棄物供給装置3の移動に対応して供給前廃棄物51が火格子4上に落下する。火格子4においては、廃棄物50の移動方向の上流側から下流側に沿って、主に、廃棄物50を乾燥させる乾燥段、廃棄物50を燃焼させる燃焼段、および燃焼が終了した廃棄物50の燃焼灰を搬送する後燃焼段が設けられる。通常、火格子上廃棄物52の燃焼温度は燃焼段の部分で最も高温になり、図9中斜線で示す部分が既燃領域A31となる。この場合、図7に示す既燃領域A31の面積は、既燃廃棄物52Aの量に略比例することになる。なお、既燃領域A31の温度積算値が既燃廃棄物52Aの量に相当すると仮定しても良い。すなわち、燃焼判定部412が、透過画像データや境界画像データに対して画像処理を行うことによって、区別画像データを生成し、既燃領域A31における面積または温度積算値を算出することにより、既燃領域A31における既燃廃棄物52Aの量を導出できる。同様に、燃焼判定部412が、区別画像データを生成し、未燃領域A32における面積または温度積算値を算出することにより、火格子上廃棄物52における未燃廃棄物52Bの量を導出できる。燃焼判定部412による既燃廃棄物52Aの量および未燃廃棄物52Bの量の導出は、例えば10秒~1分程度の所定間隔、または随時実行される。燃焼判定部412は、導出した既燃領域A31および未燃領域A32のそれぞれにおける、面積の情報および温度積算値の情報の少なくとも一方の情報を、記憶部44の廃棄物量情報データベース44cに格納する。
【0076】
次に、図8に示すステップST8に移行して燃焼判定部412は、既燃廃棄物52Aの量と未燃廃棄物52Bの量との比率、例えば以下の(1)式に従って、未燃廃棄物52Bの量に対する既燃廃棄物52Aの量の比率である廃棄物量比率αを導出する。燃焼判定部412は廃棄物量比率αを、所定時間間隔、例えば10秒~1分程度の間隔で導出する。燃焼判定部412は、導出した廃棄物量比率αを、記憶部44の廃棄物量情報データベース44cに格納する。
廃棄物量比率α=(既燃廃棄物52Aの量)/(未燃廃棄物52Bの量)…(1)
【0077】
次に、ステップST9に移行して燃焼判定部412は、廃棄物量比率αの時間変化を導出する。燃焼判定部412は、導出した既燃廃棄物52Aの量および未燃廃棄物52Bの量の時間変化の情報と、導出した廃棄物量比率αの値の時間変化の情報とを関連付けて、燃焼制御装置30に送信する。
【0078】
次に、図8に示すステップST10に移行して制御部31は、燃焼判定装置40から送信された廃棄物量比率αの値の時間変化の情報、および関連付けされた既燃廃棄物52Aの量および未燃廃棄物52Bの量の時間変化の情報に基づいて、火格子上廃棄物52の燃焼状態が適切になるように燃焼制御を実行する。すなわち、制御部31は、取得した情報に基づいて、上述した燃焼制御装置30における制御パラメータを補正して、火格子送り速度(以下、火格子速度)、廃棄物供給装置送り速度(以下、給塵速度)、燃焼用空気量(以下、一次送風量)、および燃焼空気温度を調整することにより、炉1を制御する。具体的に、廃棄物量比率αの変化と、既燃廃棄物52Aおよび未燃廃棄物52Bの量の変化とに基づいた制御の例を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1に示すように、未燃廃棄物52Bの量に対する既燃廃棄物52Aの量の割合が大きくなった場合、すなわち、廃棄物量比率αが増加した場合、既燃廃棄物52Aの量の変化および未燃廃棄物52Bの量の変化に応じて、以下の2通りの制御のいずれかの制御が行われる。
【0081】
第1に、未燃廃棄物52Bの量が減少した場合、廃棄物50の供給が減少して未燃廃棄物52Bの量の割合が減少する。これによって、制御部31は、火格子4上において、火格子上廃棄物52が不足するいわゆる「ごみ枯れ」が発生して燃焼が抑制され、蒸気発生量が減少することを予測する。この状況の場合、制御部31は、炉1における各種装置に対して、燃焼を促進する方向に調整する制御を行う。具体的に、火格子速度は、停止を含んだ減速の制御が行われ、給塵速度は増速され、一次空気の送風量(一次送風量)は、燃焼を促進させるために流量が増加され、燃焼空気温度は、温度を上昇させることによって燃焼を促進させる。
【0082】
第2に、既燃廃棄物52Aの量が増加した場合、火格子上廃棄物52のうちの乾燥が進んだ未燃廃棄物52Bに着火することで既燃廃棄物52Aの量が増加する。これにより、制御部31は、火格子4上において、既燃廃棄物52Aの比率が大きくなり、火格子4上での燃焼が活発化して、蒸気発生量が増加することを予測する。この状況の場合、制御部31は、炉1における各種装置に対して、燃焼を抑制する方向に調整する制御を行う。具体的に、火格子速度は、停止を含んだ減速の制御が行われ、給塵速度は速度が維持されて一定量の廃棄物50の供給を維持し、一次送風量は火格子上廃棄物52の乾燥を抑制するために全体的に流量が減少され、燃焼空気温度は、温度を降下させることによって、乾燥段の廃棄物の乾燥を抑制させる。なお、給塵速度を維持するのは、燃焼の抑制のために給塵速度を低下させたり停止させたりする制御を行うと、未燃廃棄物52Bの量が減少して火格子上廃棄物52が不足する、いわゆるごみ枯れの状況を招く可能性があるためである。
【0083】
また、表1に示すように、未燃廃棄物52Bの量に対する既燃廃棄物52Aの量の割合が小さくなった場合、すなわち、廃棄物量比率αが減少した場合、既燃廃棄物52Aの量の変化および未燃廃棄物52Bの量の変化に応じて、以下の2通りの制御のいずれかの制御が行われる。
【0084】
第1に、未燃廃棄物52Bの量が増加した場合、廃棄物50の供給が増加して未燃廃棄物52Bの量の割合が増加する。この場合、制御部31は、火格子4上において、火格子上廃棄物52の全体の量が増加するとともに、供給された未燃廃棄物52Bが既燃廃棄物52Aの既燃領域A31に覆いかぶさる状況になることを予測する。この状況の場合、制御部31は、炉1における各種装置に対して、全体的に燃焼を促進させる方向に調整する制御を行う。具体的に、火格子速度は、増速の制御が行われ、給塵速度は停止を含んだ減速に制御され、一次空気の送風量(一次送風量)は、過剰燃焼を抑制するために流量が減少され、燃焼空気温度は、温度を降下させることによって過剰燃焼を抑制する。
【0085】
第2に、既燃廃棄物52Aの量が減少した場合、既燃廃棄物52Aの燃焼が促進されて未燃廃棄物52Bの量の割合が増加する。この場合、制御部31は、燃焼カロリーの低い廃棄物50が供給された結果、乾燥に時間を要し、既燃ごみの量が徐々に減少する状況になることを予測する。この状況の場合、制御部31は、乾燥段の火格子上廃棄物52の乾燥を促進させて、燃焼を促進する方向に調整する制御を行う。具体的に、火格子速度は、増速の制御が行われ、給塵速度は速度が維持されて、一定量の廃棄物50の供給が維持され、一次送風量は火格子上廃棄物52の乾燥および燃焼を促進するために全体的に流量が増加され、燃焼空気温度は、火格子上廃棄物52の乾燥を促進させるために温度を上昇させる。なお、給塵速度を維持するのは、未燃廃棄物52Bの量が十分である状況にもかかわらず、廃棄物50の供給を増加させると、廃棄物層が厚くなり過剰燃焼を生じる可能性があるためである。以上により、本実施形態による炉1の制御処理が終了する。
【0086】
(変形例)
次に、上述した一実施形態の変形例について説明する。図10は、区別画像データの変形例を示す図である。変形例においては、図8に示すステップST3において燃焼判定部412は、透過画像データに対して、廃棄物50と他の物体との境界、すなわち廃棄物50と、廃棄物供給部12、段差壁13、および火格子4とのそれぞれの境界に対して境界線54を描画する。図10に示すように、境界生成部411は、例えば、透過画像データに対して、供給前廃棄物51と、段差壁13との境界に対して境界線541を描画する。境界生成部411は、火格子上廃棄物52と、段差壁13および火格子4との境界に対してそれぞれ、境界線542,544を描画する。以上により、境界生成部411は、透過画像データに対して境界線53が描画された境界画像データを生成する。境界生成部411は、生成した境界画像データを燃焼判定部412に出力する。
【0087】
続いて、燃焼判定部412は、境界生成部411から入力された境界画像データに対して、火格子上廃棄物52における所定温度以上の既燃領域A31と所定温度未満の未燃領域A32とを識別して境界線543を描画する。以上により、燃焼判定部412は、境界画像データに対して境界線543が描画された区別画像データを生成する。なお、燃焼判定部412は、識別した既燃領域A31に基づいて、境界線544を描画しても良い。また、燃焼判定部412は、撮像部26から入力された透過画像データに対して、境界線542および境界線543,544が描画された区別画像データを生成しても良い。この場合、境界生成部411による境界画像データの生成処理は実行しなくても良い。すなわち、区別画像データとしては、火格子上廃棄物52の存在領域を抽出でき、火格子上廃棄物52における既燃領域A31と未燃領域A32とが区別可能な画像データであれば良い。また、燃焼判定部412は、境界画像データにおいて所定温度以上の既燃領域A31と所定温度未満の未燃領域A32とを識別した結果を境界生成部411に出力して、境界生成部411が、境界線542,543,544を描画しても良い。その他の構成は、上述した一実施形態と同様である。
【0088】
以上説明した一実施形態によれば、焼却炉の炉1内における火格子4上の火格子上廃棄物52を撮像して、火格子上廃棄物52と他の物体が存在する領域との境界に、境界線53,54を生成して重畳させて描画し、さらに火格子上廃棄物52において燃焼温度が所定温度以上の領域を既燃領域A31、所定温度未満の領域を未燃領域A32として識別して、炉1内の燃焼状態を取得していることにより、火格子焼却炉において、火格子4上に供給された廃棄物50の燃焼状態を把握することができる。さらに、取得した廃棄物50の燃焼状態、すなわち火格子上廃棄物52における既燃廃棄物52Aおよび未燃廃棄物52Bのそれぞれの量の時間変化と、廃棄物量比率αの時間変化とに基づいて、炉1における各種装置を制御していることにより、廃棄物50の燃焼を適切に制御でき、燃焼を安定化させることができる。
【0089】
以上、本発明の一実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の一実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよく、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により本発明は限定されることはない。
【0090】
例えば、上述した一実施形態においては、境界識別学習モデル44aや燃焼状態学習モデル44b、および廃棄物量情報データベース44cを記憶部44に格納しているが、ネットワークを通じて通信可能な他のサーバの記憶部に格納することも可能である。すなわち、境界識別学習モデル44aを、公衆回路網などのネットワークを介して燃焼判定装置40と通信可能な画像サーバの記憶部に格納しておくことも可能である。この場合、撮像部26が撮像した透過画像データは、ネットワークを介して画像サーバに送信されて記憶部に格納される。その後、画像サーバの制御部は、燃焼判定装置40からの要求に対応して、透過画像データに対して境界線53,54を描画して境界画像データを生成し、燃焼判定装置40に送信する。同様に、燃焼状態学習モデル44bを、ネットワークを通じて通信可能な判定サーバの記憶部に格納しておくことも可能である。この場合、判定サーバは、画像サーバの記憶部から透過画像データや境界画像データなどの画像データを受信して取得する。判定サーバの制御部は、取得した透過画像データや境界画像データに基づいて、既燃領域A31および未燃領域A32を区別して、既燃廃棄物52Aおよび未燃廃棄物52Bの量の時間変化を導出し、廃棄物量比率αを導出して、燃焼制御装置30に送信する。換言すると、境界生成部411および学習部413の機能を備えた画像学習部と、学習部413および燃焼判定部412の機能を備えた燃焼学習部とを、互いにネットワークを介して通信可能な別の装置に設けても良い。さらに、境界生成部411と、燃焼判定部412と、学習部413とのそれぞれを、ネットワークを介して通信可能な互いに別の装置に設けても良い。
【0091】
また、例えば、上述した一実施形態においては、機械学習の一例としてニューラルネットワークを用いたディープラーニング(深層学習)を用いたが、それ以外の方法に基づく機械学習を行っても良い。例えば、サポートベクターマシン、決定木、単純ベイズ、k近傍法など、他の教師あり学習を用いても良い。また、教師あり学習に代えて半教師あり学習を用いても良い。
【0092】
また、例えば、燃焼判定装置40が生成した区別画像データから導出された、既燃廃棄物52Aおよび未燃廃棄物52Bの量と、これらから導出された廃棄物量比率αの時間変化とに基づいて、燃焼制御装置30が炉1を制御した際の、発電量や蒸気発生量などの結果を報酬とし、強化学習や深層強化学習などの機械学習を行って、境界識別学習モデル44aや燃焼状態学習モデル44bを生成したり更新したりしても良い。
【0093】
また、例えば、上述した一実施形態においては、焼却炉として段差壁13を有する火格子焼却炉を採用した例について説明したが、必ずしも火格子焼却炉に限定されない。段差壁13を有する火格子焼却炉以外の焼却炉の場合、境界画像データや区別画像データとしては、透過画像データに対して、廃棄物50と他の領域との境界以外に、廃棄物50の燃焼温度に基づいた等温線などを境界線として生成して重畳描画した画像データを用いても良い。この場合、廃棄物50の燃焼温度に対して、例えば100℃ごとの等温線を生成して、境界線とすることができる。また、境界画像データとして、透過画像データに対して、廃棄物50と他の領域との境界以外に、焼却炉内の廃棄物を幾何学的に区別して境界線を生成して、重畳描画した画像データを用いても良い。この場合においても、境界画像データに対して、燃焼温度が所定温度以上の領域と所定温度未満の領域とを区別する境界線が描画された区別画像データを生成することができる。すなわち、境界画像データとして、透過画像データに対して、廃棄物50と他の領域との境界以外に、焼却炉の構造に応じた種々の境界を設定して境界線を生成し、重畳描画した画像データを用いることが可能である。さらに、区別画像データとして、廃棄物50の燃焼温度に基づいた等温線などを境界線として生成して、画像データに重畳描画した画像データを用いても良い。
【0094】
また、例えば、制御部41の燃焼判定部412は、火格子上廃棄物52の層の高さ(以下、廃棄物層高さ)を算出しても良い。この場合、具体的に、燃焼判定部412は、境界線532における段差壁13と火格子上廃棄物52との境界部分に基づいて、火格子上廃棄物52の高さ(以下、廃棄物層高さ)を算出する。ここで、境界線532における段差壁13と火格子上廃棄物52との境界部分は凹凸状である(図6および図7参照)。算出部としての燃焼判定部412は、境界画像データにおいて確定している火格子4と段差壁13との交差部分から、境界線532によって得られる火格子上廃棄物52の上部までの高さを幅方向に対して平均化させることにより、廃棄物層高さを算出する。
【0095】
また、燃焼判定部412は、境界画像データや区別画像データにおいて、境界線532と、火格子4と段差壁13との交差部分とによって挟まれた火格子上廃棄物52の面積を導出し、導出した面積を定数である炉1の横幅(図7中、左右の幅)で除して平均化させることで、廃棄物層高さを算出しても良い。算出された廃棄物層高さは、火格子上廃棄物52の量に対応する物理量となる。制御部41は、算出した火格子上廃棄物52の廃棄物層高さの情報を燃焼制御装置30に送信する。燃焼制御装置30の制御部31は、受信した廃棄物層高さの情報を記憶部32に格納する。
【0096】
(記録媒体)
上述の一実施形態において、燃焼制御装置30、または燃焼判定装置40が実行する処理方法を実行させるプログラムを、コンピュータその他の機械やウェアラブルデバイスなどの装置(以下、コンピュータなど、という)が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。コンピュータなどに、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、当該コンピュータなどが移動体制御装置として機能する。ここで、コンピュータなどが読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラムなどの情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータなどから読み取ることができる非一時的な記録媒体をいう。このような記録媒体のうちのコンピュータ等から取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R/W、DVD、BD、DAT、磁気テープ、フラッシュメモリなどのメモリカードなどがある。また、コンピュータなどに固定された記録媒体としてハードディスク、ROMなどがある。さらに、SSDは、コンピュータなどから取り外し可能な記録媒体としても、コンピュータなどに固定された記録媒体としても利用可能である。
【0097】
また、一実施形態による燃焼制御装置30、および燃焼判定装置40に実行させるプログラムは、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。
【0098】
(その他の実施形態)
一実施形態においては、上述した「部」を、「回路」などに読み替えることができる。例えば、制御部は、制御回路に読み替えることができる。
【0099】
なお、本明細書におけるフローチャートの説明では、「まず」、「次に」、「その後」、「続いて」などの表現を用いてステップ間の処理の前後関係を明示していたが、本実施の形態を実施するために必要な処理の順序は、それらの表現によって一意的に定められるわけではない。すなわち、本明細書で記載したフローチャートにおける処理の順序は、矛盾のない範囲で変更することができる。
【0100】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。本開示のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付のクレームおよびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 炉
1a 炉壁
2 廃棄物投入口
3 廃棄物供給装置
4 火格子
5 灰落下口
6 燃焼用空気ブロア
7 炉出口
8 煙突
9 ボイラ
9a 熱交換器
9b 蒸気ドラム
10 二次空気吹き込み口
11 二次空気ブロア
12 廃棄物供給部
13 段差壁
14 燃焼用空気ダンパ
14a,14b,14c,14d 火格子下燃焼用空気ダンパ
15 二次空気ダンパ
16 中間天井
17 燃焼室ガス温度計
18 主煙道ガス温度計
19 炉出口下部ガス温度計
20 炉出口中部ガス温度計
21 炉出口ガス温度計
22 ボイラ出口酸素濃度計
23 ガス濃度計
24 排ガス流量計
25 蒸気流量計
26 撮像部
30 燃焼制御装置
31,41 制御部
32,44 記憶部
33 操作量調整部
40 燃焼判定装置
42 出力部
43 入力部
44a 境界識別学習モデル
44b 燃焼状態学習モデル
44c 廃棄物量情報データベース
50 廃棄物
51 供給前廃棄物
52 火格子上廃棄物
52A 既燃廃棄物
52B 未燃廃棄物
53,531,532,532a,532b,54,541,542,543,544 境界線
331 燃焼用空気量調整部
332 空気量比率調整部
333 二次空気量調整部
334 廃棄物供給装置送り速度調整部
335 火格子送り速度調整部
411 境界生成部
412 燃焼判定部
413 学習部
A31 既燃領域
A32 未燃領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10