(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20240709BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240709BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240709BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240709BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20240709BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/36
C08K3/04
C08L101/00
C08K3/38
B60C1/00 Z
(21)【出願番号】P 2020134656
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】堀口 卓也
(72)【発明者】
【氏名】中島 郭葵
(72)【発明者】
【氏名】遠矢 昴
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-108515(JP,A)
【文献】国際公開第2019/116701(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン系ゴム及び
平均シス含量が90質量%以下であるブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカと、樹脂成分とを含有し、
前記ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴムの含有量(質量%)及び前記ブタジエンゴムの含有量(質量%)、前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量(質量部)、加硫後のゴム組成物のアセトン抽出量(質量%)が、
前記シリカの含有量<前記イソプレン系ゴムの含有量であり、
前記シリカの含有量>前記ブタジエンゴムの含有量であり、
前記ブタジエンゴムの含有量>
前記アセトン抽出量であ
り、
前記イソプレン系ゴムの含有量/前記シリカの含有量は、1.30以下であるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
イソプレン系ゴム及び平均シス含量が90質量%以下であるブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカと、樹脂成分とを含有し、
前記ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴムの含有量(質量%)及び前記ブタジエンゴムの含有量(質量%)、前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量(質量部)、加硫後のゴム組成物のアセトン抽出量(質量%)が、
前記シリカの含有量<前記イソプレン系ゴムの含有量であり、
前記シリカの含有量>前記ブタジエンゴムの含有量であり、
前記ブタジエンゴムの含有量>前記アセトン抽出量であり、
前記シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積が180m
2
/g以上であるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
イソプレン系ゴム及び平均シス含量が90質量%以下であるブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、樹脂成分とを含有し、
前記ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴムの含有量(質量%)及び前記ブタジエンゴムの含有量(質量%)、前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量(質量部)及び前記樹脂の含有量(質量部)、加硫後のゴム組成物のアセトン抽出量(質量%)が、
前記シリカの含有量<前記イソプレン系ゴムの含有量であり、
前記シリカの含有量>前記ブタジエンゴムの含有量であり、
前記ブタジエンゴムの含有量>前記アセトン抽出量であり、
前記樹脂成分の含有量/前記シリカの含有量は、0.40以下であり、
前記シリカの含有量/前記カーボンブラックの含有量は、5以上であるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記樹脂成分がテルペン系樹脂を含む請求項1
~3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記テルペン系樹脂がファルネセン系樹脂である請求項
4記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
ホウ酸塩化合物を含有する請求項1~
5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
前記ブタジエンゴム
は、平均シス含量が60質量%以上である請求項1~
6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
前記シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積が180m
2/g以上である請求項1
又は3記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項9】
前記アセトン抽出量100質量%中、前記樹脂成分の含有量が20~80質量%である請求項1~
8のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項10】
バイオマスナノ材料を含有する請求項1~
9のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれかに記載のゴム組成物を用いたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、雪上性能を改善する手法が種々検討されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、近年では、走行後期における雪上性能について、更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記課題を解決し、走行後期における雪上性能を改善できるタイヤ用ゴム組成物及びタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、イソプレン系ゴム及びシス量90質量%以下のブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカと、樹脂成分とを含有し、前記シリカの含有量<前記イソプレン系ゴムの含有量であり、前記シリカの含有量>前記ブタジエンゴムの含有量であり、前記ブタジエンゴムの含有量>アセトン抽出量であるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0006】
前記樹脂成分がテルペン系樹脂を含むことが好ましい。
【0007】
前記テルペン系樹脂がファルネセン系樹脂であることが好ましい。
【0008】
前記ブタジエンゴムは、ホウ酸塩化合物を含有することが好ましい。
【0009】
前記ブタジエンゴムのシス量が60質量%以上であることが好ましい。
【0010】
前記シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積が180m2/g以上であることが好ましい。
【0011】
前記アセトン抽出量100質量%中、前記樹脂成分の含有量が20~80質量%であることが好ましい。
【0012】
前記ブタジエンゴムは、バイオマスナノ材料を含有することが好ましい。
【0013】
本発明はまた、前記ゴム組成物を用いたタイヤに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、イソプレン系ゴム及びシス量90質量%以下のブタジエンゴム(ローシスブタジエンゴム)を含むゴム成分と、シリカと、樹脂成分とを含有し、シリカの含有量<イソプレン系ゴムの含有量であり、シリカの含有量>ローシスブタジエンゴムの含有量であり、ローシスブタジエンゴムの含有量>アセトン抽出量であるタイヤ用ゴム組成物であるので、走行後期における雪上性能が良好となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、イソプレン系ゴム及びシス量90質量%以下のブタジエンゴム(ローシスブタジエンゴム)を含むゴム成分と、シリカと、樹脂成分とを含有し、シリカの含有量<イソプレン系ゴムの含有量であり、シリカの含有量>ローシスブタジエンゴムの含有量であり、ローシスブタジエンゴムの含有量>アセトン抽出量である。
【0016】
上記ゴム組成物で前述の効果が得られる理由は、以下のように推察される。
走行後期の雪上性能を良化させるためには耐摩耗性も高める必要があると考えられるが、そのためには、ゴム組成物中のシリカの分散及びそれによる補強効果の向上が重要であると考えられる。
上記ゴム組成物は、イソプレン系ゴム、ローシスブタジエンゴム及びシリカを含有し、さらに、イソプレン系ゴムの含有量>シリカの含有量>ローシスブタジエンゴムの含有量の関係を満たす。ローシスブタジエンゴムはシリカとの馴染みが良いため、ローシスブタジエンゴムを配合することで、ゴム成分へのシリカの分散促進が期待される。そして、ローシスブタジエンゴムよりもシリカを多くすることで、ローシスブタジエンゴムへのシリカの偏在が抑制され、かつ、耐摩耗性に優れたイソプレン系ゴムよりもシリカを少なくすることで、イソプレン系ゴム中でのシリカの分散不良が抑制される。
また、上記ゴム組成物では、ローシスブタジエンゴムの含有量>アセトン抽出量の関係を満たすことで、混練時において、シリカを多量に含むローシスブタジエンゴムに対して機械せん断が伝わりやすくなり、シリカの分散性及び補強性を更に向上させることができる。
さらに、上記ゴム組成物では、樹脂成分を含有することで、イソプレン系ゴム相とローシスブタジエンゴム相との相溶性が高くなる。その結果、シリカが均一に分散されることで、充分な補強効果を維持しながら、ゴム全体を軟化させ、雪上性能を向上することが可能となる。
これらの作用により、走行後期における雪上性能が顕著に改善されると考えられる。
【0017】
上記ゴム組成物は、ゴム成分を含有する。
ここで、ゴム成分は、架橋に寄与する成分であり、一般的に、重量平均分子量(Mw)が1万以上のものである。
【0018】
ゴム成分の重量平均分子量は、好ましくは5万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは20万以上であり、また、好ましくは200万以下、より好ましくは150万以下、更に好ましくは100万以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0019】
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0020】
ゴム成分中の総ビニル量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0021】
ここで、ゴム成分中の総ビニル量は、ゴム成分全量中に含まれるビニル部の合計含有量(単位:質量%)であり、Σ(各ゴム成分の含有量×各ゴム成分中のビニル量/100)で算出できる。例えば、ゴム成分100質量%中、ビニル量:30質量%のSBRが85質量%、ビニル量:20質量%のSBRが5質量%、ビニル量:10質量%のBRが10質量%である場合、ゴム成分中の総ビニル量は、27.5質量%(=85×30/100+5×20/100+10×10/100)である。
【0022】
なお、各ゴム成分中のビニル量は、核磁気共鳴(NMR)法によって測定できる。
また、ゴム成分中の総ビニル量について、本明細書の実施例では、上述の計算式に沿って算出しているが、例えば、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析装置(Py-GC/MS)等により、タイヤから分析してもよい。
【0023】
上記ゴム組成物は、ゴム成分として、イソプレン系ゴムを含有する。
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、NRが好ましい。
【0024】
ゴム成分100質量%中、イソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは55質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0025】
上記ゴム組成物は、ゴム成分として、シス量90質量%以下のブタジエンゴム(ローシスブタジエンゴム(ローシスBR))を含有する。
BRの市販品としては、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品が挙げられる。
【0026】
ローシスBRのシス量(シス含量)は、90質量%以下であればよいが、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下であり、また、好ましくは40質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、BRのシス量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0027】
なお、BRのシス量は、BRが1種である場合、当該BRのシス量を意味し、複数種である場合、平均シス量を意味する。すなわち、ローシスBRは、シス量が90質量%以下のBRと、シス量が90質量%を超えるBRとの混合物であってもよい。シス量が90質量%を超えるBRとしては、ネオジム含有化合物(Nd系触媒)等の希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(希土類系BR)を好適に使用できる。
BRの平均シス量は、{Σ(各BRの含有量×各BRのシス量)}/全BRの合計含有量で算出でき、例えば、ゴム成分100質量%中、シス量:90質量%のBRが20質量%、シス量:40質量%のBRが10質量%である場合、BRの平均シス量は、73.3質量%(=(20×90+10×40)/(20+10))である。
【0028】
ゴム成分100質量%中、ローシスBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは35質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0029】
イソプレン系ゴム、ローシスBR以外に使用できるゴム成分としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
ゴム成分は、変性により、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基が導入されていてもよい。
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0031】
上記官能基を有する化合物(変性剤)の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0032】
上記ゴム組成物は、シリカを含有する。
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、EVONIK社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)比表面積は、好ましくは160m2/g以上、より好ましくは180m2/g以上、更に好ましくは200m2/g以上であり、また、好ましくは250m2/g以下、より好ましくは230m2/g以下、更に好ましくは220m2/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、シリカのCTAB比表面積は、ASTM D3765-92に準拠して測定される。
【0034】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは45質量部以上、更に好ましくは60質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは85質量部以下、更に好ましくは70質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0035】
上記ゴム組成物では、シリカの含有量<イソプレン系ゴムの含有量である。
【0036】
イソプレン系ゴムの含有量/シリカの含有量は、好ましくは1.04以上、より好ましくは1.06以上、更に好ましくは1.08以上であり、また、好ましくは1.50以下、より好ましくは1.30以下、更に好ましくは1.10以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0037】
なお、これらの関係において、イソプレン系ゴムの含有量は、ゴム成分100質量%中の含有量(単位:質量%)であり、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対する含有量(単位:質量部)である。
【0038】
上記ゴム組成物では、シリカの含有量>ローシスBRの含有量である。
【0039】
シリカの含有量/ローシスBRは、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.4以上、更に好ましくは1.6以上であり、また、好ましくは3.5以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.0以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0040】
なお、これらの関係において、ローシスBRの含有量は、ゴム成分100質量%中の含有量(単位:質量%)であり、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対する含有量(単位:質量部)である。
【0041】
上記ゴム組成物は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド等のスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン等のメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ系等があげられる。市販されているものとしては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフィド系が好ましい。
【0042】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは6質量部以上、更に好ましくは8質量部以上であり、また、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0043】
上記ゴム組成物は、樹脂成分を含有する。
樹脂成分としては特に限定されないが、芳香族系樹脂、テルペン系樹脂を好適に使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、テルペン系樹脂が好ましい。
【0044】
芳香族系樹脂は、芳香族系単量体を構成モノマーとして含むポリマーであり、例えば、芳香族系単量体1種を単独で重合した単独重合体、2種以上の芳香族系単量体を共重合した共重合体の他、芳香族系単量体及びこれと共重合し得る他の単量体との共重合体も挙げられる。
【0045】
芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等のスチレン系単量体;フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール等のフェノール系単量体;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール等のナフトール系単量体;クマロン、インデン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、スチレン系単量体が好ましく、スチレン、α-メチルスチレンがより好ましい。
【0046】
走行後期における雪上性能等の観点から、芳香族系樹脂は、α-メチルスチレン系樹脂(α-メチルスチレン単独重合体、α-メチルスチレン及びスチレンの共重合体等)が好ましく、α-メチルスチレン及びスチレンの共重合体がより好ましい。
【0047】
芳香族系樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0048】
テルペン系樹脂は、テルペン化合物(テルペン系単量体)を構成モノマーとして含むポリマーであり、例えば、テルペン化合物1種を単独で重合した単独重合体、2種以上のテルペン化合物を共重合した共重合体の他、テルペン化合物及びこれと共重合し得る他の単量体との共重合体も挙げられる。
【0049】
テルペン化合物は、(C5H8)nの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C10H16)、セスキテルペン(C15H24)、ジテルペン(C20H32)等に分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、ファルネセン、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオール等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、ファルネセン、β-ピネンが好ましく、ファルネセンがより好ましい。
【0050】
テルペン化合物と共重合し得る単量体としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン等の共役ジエン化合物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、1,3-ブタジエンが好ましい。
【0051】
走行後期における雪上性能等の観点から、テルペン系樹脂は、ファルネセン系樹脂(ファルネセン単独重合体、ファルネセン及び共役ジエン化合物の共重合体等)が好ましく、ファルネセン及び1,3-ブタジエンの共重合体がより好ましい。
【0052】
ファルネセン系樹脂は、常温で液体状態の液状ファルネセン系樹脂であることが好ましい。液状ファルネセン系樹脂の数平均分子量(Mn)は、好ましくは1万以上、より好ましくは3万以上、より好ましくは5万以上であり、また、好ましくは30万以下、より好ましくは20万以下、更に好ましくは15万以下、特に好ましくは10万以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0053】
テルペン系樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは40質量部以下、より好ましくは35質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0054】
上述の樹脂の市販品としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXTGエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0055】
樹脂成分の含有量(複数種の樹脂を併用する場合、その合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは40質量部以下、より好ましくは35質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0056】
走行後期における雪上性能等の観点から、上記ゴム組成物では、イソプレン系ゴムの含有量≧樹脂成分の含有量であることが好ましい。
【0057】
イソプレン系ゴムの含有量/樹脂成分の含有量は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上であり、また、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0058】
なお、これらの関係において、イソプレン系ゴムの含有量は、ゴム成分100質量%中の含有量(単位:質量%)であり、樹脂成分の含有量は、ゴム成分100質量部に対する含有量(単位:質量部)である。
【0059】
上記ゴム組成物において、樹脂成分の含有量/シリカの含有量は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.25以上であり、また、好ましくは0.80以下、より好ましくは0.60以下、更に好ましくは0.40以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、この関係において、樹脂成分の含有量、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対する含有量(単位:質量部)である。
【0060】
上記ゴム組成物は、加工助剤として、ホウ酸塩化合物を含有することが好ましい。
ホウ酸塩化合物としては、例えば、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等のアルカリ金属塩、ホウ酸マグネシウム等のアルカリ土類金属塩や、これらの水和物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、アルカリ金属塩及びその水和物が好ましく、ホウ酸ナトリウム及びその水和物がより好ましく、四ホウ酸ナトリウムの十水和物(ホウ砂)が更に好ましい。
【0061】
ホウ酸塩化合物の市販品としては、キシダ化学(株)、健栄製薬(株)等の製品を使用できる。
【0062】
ホウ酸塩化合物の含有量は、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、更に好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは6質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0063】
上記ゴム組成物は、加工助剤として、カルシウム化合物を含有することが好ましい。
カルシウム化合物は、カルシウムを有する化合物であり、例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭化カルシウム等の無機塩;炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム等のオキソ酸塩等が挙げられる。オキソ酸塩には、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸塩も含まれる。また、カルシウム化合物を含有するものとして、卵殻(主成分:炭酸カルシウム)や、ストラクトール社製のWB16(脂肪酸カルシウム、脂肪酸アミド及び脂肪酸アミドエステルの混合物)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、オキソ酸塩が好ましく、脂肪酸塩(脂肪酸カルシウム)がより好ましい。
【0064】
上記ゴム組成物において、カルシウム化合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、カルシウム元素に換算して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上、更に好ましくは0.05質量部以上であり、また、好ましくは0.80質量部以下、より好ましくは0.50質量部以下、更に好ましくは0.20質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0065】
上記ゴム組成物は、バイオマスナノ材料を含有することが好ましい。
バイオマスナノ材料は、バイオマスから製造されるナノサイズの材料であり、例えば、セルロースナノファイバー(CNF)、セルロースナノクリスタル(CNC)等のナノセルロース;キチンナノファイバー;キトサンナノファイバー等が挙げられる。市販品としては、(株)スギノマシン等の製品が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、ナノセルロースが好ましい。
【0066】
ナノセルロースの平均繊維長は、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下であり、また、好ましくは100nm以上、より好ましくは500nm以上、更に好ましくは1μm以上、特に好ましくは2μm以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0067】
ナノセルロースの平均繊維径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは1μm以下、更に好ましくは500nm以下、特に好ましくは100nm以下であり、また、好ましくは1nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは20nm以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0068】
ナノセルロースのアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は、好ましくは10以上、より好ましくは50以上、更に好ましくは80以上であり、また、好ましくは200以下、より好ましくは150以下、更に好ましくは120以下、特に好ましくは100以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0069】
なお、本明細書において、ナノセルロースの平均繊維径及び平均繊維長は、走査型電子顕微鏡写真による画像解析、透過型電子顕微鏡写真による画像解析、原子間力顕微鏡写真による画像解析、X線散乱データの解析、細孔電気抵抗法(コールター原理法)等によって測定できる。なお、本明細書において、ナノセルロース(セルロース繊維)の平均繊維径、平均繊維長は、典型的には、セルロース分子の集合により形成されているセルロース繊維の集合体の平均繊維径、平均繊維長である。
【0070】
バイオマスナノ材料の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0071】
上記ゴム組成物は、カーボンブラックを含有してもよい。
カーボンブラックとしては、特に限定されず、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
カーボンブラックのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)比表面積は、好ましくは90m2/g以上、より好ましくは100m2/g以上、更に好ましくは110m2/g以上であり、また、好ましくは160m2/g以下、より好ましくは140m2/g以下、更に好ましくは130m2/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックのCTAB比表面積は、JIS K6217-3:2001に準拠して測定される値である。
【0073】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0074】
走行後期における雪上性能等の観点から、上記ゴム組成物では、カーボンブラックの含有量<シリカの含有量であることが好ましい。
【0075】
上記ゴム組成物において、シリカの含有量/カーボンブラックの含有量は、好ましくは5以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、また、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは12以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0076】
なお、これらの関係において、カーボンブラックの含有量、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対する含有量(単位:質量部)である。
【0077】
上記ゴム組成物は、オイルを含有してもよい。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等を用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、JXTGエネルギー(株)、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0078】
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0079】
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含有してもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤等が挙げられる。市販品としては、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0080】
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3.5質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0081】
上記ゴム組成物は、ワックスを含有してもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックス等が挙げられる。市販品としては、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0083】
上記ゴム組成物は、ステアリン酸を含有してもよい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、市販品としては、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0084】
ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0085】
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、市販品としては、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0086】
酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0087】
上記ゴム組成物は、硫黄を含有してもよい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄等が挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、更に好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは6質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0089】
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N′-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。市販品としては、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下、更に好ましくは4質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0091】
上記ゴム組成物には、上記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、有機過酸化物等を更に配合してもよい。添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましい。
【0092】
上記ゴム組成物において、アセトン抽出量は、好ましくは35質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下であり、また、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは12質量%以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、アセトン抽出量は、加硫後の上記ゴム組成物について、JIS K 6229:2015に準拠した方法で、24時間アセトン抽出することで測定したものである。
【0093】
アセトン抽出量100質量%中、樹脂成分の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは50質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、アセトン抽出量100質量%中の樹脂成分の含有量は、アセトン抽出量の分析結果と、樹脂成分の配合量から算出できる。また、樹脂のタイプ(テルペン系、スチレン系等)が既知の場合、同タイプの樹脂を変量して作成した基準サンプルを用いて推定することも可能である。
【0094】
上記ゴム組成物では、ローシスBRの含有量>アセトン抽出量である。
【0095】
ローシスBRの含有量/アセトン抽出量は、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上、更に好ましくは2.5以上であり、また、好ましくは4.5以下、より好ましくは3.5以下、更に好ましくは3.0以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0096】
なお、これらの関係において、ローシスBRの含有量は、ゴム成分100質量%中の含有量(単位:質量%)であり、アセトン抽出量は、上述の方法で24時間アセトン抽出することで測定されたもの(単位:質量%)である。
【0097】
上記ゴム組成物は、例えば、上述の各成分をオープンロール、バンバリーミキサー等のゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0098】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは85~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫等の加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。加硫時間は、通常5~15分である。
【0099】
上記ゴム組成物は、例えば、トレッド(キャップトレッド)、サイドウォール、ベーストレッド、アンダートレッド、ショルダー、クリンチ、ビードエイペックス、ブレーカークッションゴム、カーカスコード被覆用ゴム、インスレーション、チェーファー、インナーライナー等や、ランフラットタイヤのサイド補強層などのタイヤ部材に(タイヤ用ゴム組成物として)用いることができる。なかでも、トレッドに好適である。
【0100】
本発明のタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、上記ゴム組成物を、未加硫の段階でトレッド等の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤを得る。
【0101】
上記タイヤ(空気入りタイヤ等)は、乗用車用タイヤ;トラック・バス用タイヤ;二輪車用タイヤ;高性能タイヤ;スタッドレスタイヤ等の冬用タイヤ;サイド補強層を備えるランフラットタイヤ;スポンジ等の吸音部材をタイヤ内腔に備える吸音部材付タイヤ;パンク時に封止可能なシーラントをタイヤ内部又はタイヤ内腔に備える封止部材付タイヤ;センサや無線タグ等の電子部品をタイヤ内部又はタイヤ内腔に備える電子部品付タイヤ等に使用可能であり、乗用車用タイヤに好適である。
【0102】
上記タイヤのサイズは特に限定されず、例えば、タイヤ幅は100~400mmの範囲内で、扁平率は25~85%の範囲内で、リム径は10~25インチの範囲内で、適宜選択可能である。具体例としては、105/50R16、115/50R17、125/55R20、135/45R21、145/45R21、155/45R18、165/45R22、175/45R23、185/60R20、195/55R14、205/40R16、215/40R16、225/40R17、235/40R17、245/40R16、255/40R17、265/40R17、275/35R18、285/30R19、295/45R20等が挙げられる。
【0103】
上記タイヤは、タイヤ外径Dt及びタイヤ断面幅Wtが下記式の関係式を満たすことが好ましい。
【数1】
なお、タイヤ外径(Dt)とは、タイヤを適用リムに装着して内圧250kPa・無負荷とした状態のタイヤの外径である。タイヤ断面幅(Wt)とは、タイヤを適用リムに装着して内圧250kPa・無負荷とした状態のタイヤ側面の模様又は文字など全てを含むサイドウォール間の直線距離、つまり総幅からタイヤの側面の模様、文字などを除いた幅である。
【0104】
上記式を満たしうるタイヤとしては、具体的には、145/60R18、145/60R19、155/55R18、155/55R19、155/70R17、155/70R19、165/55R20、165/55R21、165/60R19、165/65R19、165/70R18、175/55R19、175/55R20、175/55R22、175/60R18、185/55R19、185/60R20、195/50R20、195/55R20等が挙げられる。
【0105】
上記式を満たすタイヤは、乗用車用空気入りタイヤに適用することが好ましい。上記式を満たす乗用車用空気入りタイヤは、本件の課題解決により好適となる傾向があるためである。
【実施例】
【0106】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0107】
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
【0108】
(ゴム成分)
イソプレン系ゴム:TSR20(NR)
BR1:LANXESS社製のBuna CB24(Nd系触媒を用いて合成されたBR、シス量:96質量%、ビニル量:0.7質量%)
BR2:旭化成ケミカルズ(株)製のN103(シス量:38質量%、ビニル量:12質量%)
【0109】
(ゴム成分以外の薬品)
カーボンブラック:N220(CTAB:111m2/g)
シリカ1:エボニックデグッサ社製のウルトラシルVN3(CTAB:165m2/g)
シリカ2:Rhodia社製のZeosil Premium 200MP(CTAB:203m2/g)
バイオマスナノ材料:(株)スギノマシン製のバイオマスナノファイバー(ナノセルロース、製品名「BiNFi-s セルロース」、平均繊維長:約2μm、平均繊維径:約0.02μm、固形分:2質量%)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
オイル:H&R社製のVIVATEC500(TDAEオイル)
樹脂1:アリゾナケミカル社製のSylvatraxx4401(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体)
樹脂2:アリゾナケミカル社製のSylvatraxx4150(β-ピネン樹脂)
樹脂3:(株)クラレ製のFBR-746(ファルネセン及び1,3-ブタジエンの共重合体(液状ファルネセン系樹脂)、Mn:10万)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
老化防止剤1:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
老化防止剤2:大内新興化学工業(株)製のノクラックRD(ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン))
加工助剤1:ストラクトール社製のWB16(脂肪酸カルシウム、脂肪酸アミド及び脂肪酸アミドエステルの混合物、カルシウム元素量:約5質量%)
加工助剤2:キシダ化学(株)製の四ホウ酸ナトリウムの十水和物
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(ジフェニルグアニジン)
【0110】
(実施例及び比較例)
表1に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、150℃の条件下で12分間プレス加硫し、試験用タイヤ(サイズ:175/60R18)を製造した。得られた試験用タイヤを用いて下記評価を行い、結果を表1に示した。
なお、表1において、油展ゴム中のゴム分はゴムの欄に記載し、油展ゴム中のオイル分はオイルの欄に加算している。
【0111】
(アセトン抽出量)
上記試験用タイヤのトレッドからサンプル(加硫ゴム組成物)を採取し、JIS K 6229:2015に準拠した方法でサンプルを24時間アセトン抽出することで、アセトン抽出量(質量%)を測定した。
【0112】
(老化後の雪上性能)
経年劣化後の状態を再現するために、上記試験用タイヤをオーブン内で80℃168時間加熱して熱劣化させた後、国産2000ccのFR車に装着し、試験場所:北海道名寄テストコース、気温:-2℃~-10℃の条件下で雪上を実車走行し、雪上性能を評価した。具体的には、上記車両を用いて雪上を走行し、時速30km/hでロックブレーキを踏み、停止させるまでに要した停止距離(雪上制動停止距離)を測定し、比較例2を100として指数表示した(雪上性能指数)。指数が大きいほど、停止距離が短く、雪上でのグリップ性能が良好であることを示す。
【0113】
【0114】
表1より、実施例は、目的とする走行後期における雪上性能が比較例より優れていた。