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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240709BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G21/00 370
G03G15/20 510
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020135201
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030887
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 豊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友哉
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-120787(JP,A)
【文献】特開2017-116870(JP,A)
【文献】特開平07-248697(JP,A)
【文献】特開2012-198455(JP,A)
【文献】特開2019-128476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱部により加熱された加熱回転体に加圧部材を圧接してニップ部を形成し、当該ニップ部に未定着トナー像が形成されたシートを通紙して、定着ジョブを実行する定着装置であって、
前記加熱回転体と加圧部材間の摩擦係数の、当該定着装置の新品時からの変化量を指標する第1指標値を取得する第1取得部と、
前記加熱回転体前記加圧部材を含むニップ部形成部材の温まり具合を示す第1パラメーターを含む第2指標値を取得する第2取得部と、
前記第1指標値と第2指標値に基づき、定着ジョブ実行後の空回転時における前記加熱回転体の温度および当該空回転を開始してから停止するまでの時間を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記第1指標値は、前記加熱回転体の総走行距離および前記ニップ部へのシートの総通紙枚数の少なくとも一方であり、
記制御部は、
前記第1指標値が第1閾値以上であり、かつ、第2指標値が第2閾値以上である場合に、前記定着ジョブ実行後の空回転時において、初期設定の条件よりも、前記加熱回転体の温度を低くすると共に当該空回転を開始してから停止するまでの時間を長くする
ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記第2取得部は、前記空回転に先行して実行される前記加熱回転体が回転した回転時間と当該加熱回転体が停止した停止時間の履歴に基づき、前記第1パラメーターを取得する
ことを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記第2取得部は、
少なくとも定着ジョブ実行時における前記加熱回転体の回転時間を計測し、計測した回転時間を第1のタイミングで履歴として記憶する回転時間記憶部と、
前記空回転開始までに前記加熱回転体の回転停止時間が介在する場合に、当該回転停止の直前における回転時間の履歴の総和を、その直後の回転停止期間の長さに応じて補正して補正回転時間を得る回転時間補正部と、
を備え、
前記補正回転時間にその後の回転時間の履歴を加算した総回転時間を、前記第1パラメーターとして取得する
ことを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記第1のタイミングは、定着ジョブの終了時、装置への電力供給終了時、前記加熱回転体の回転停止時のうちいずれか一つを含む
ことを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記回転時間補正部は、予め求められた、第1テーブルもしくは第1演算式に基づき、前記回転停止の直前における回転時間の履歴の総和を、その直後の回転停止期間の長さに応じて補正する
ことを特徴とする請求項4または5に記載の定着装置。
【請求項7】
前記第2取得部は、
前記第1パラメーターに加えて、前記空回転に先行して実行された前記加熱部の加熱制御時間に基づき第2パラメーターを取得し、
前記第1パラメーターの値と前記第2パラメーターの値とに基づいて前記第2指標値を取得する
ことを特徴とする請求項4から6までのいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項8】
前記第2取得部は、
少なくとも定着ジョブ実行時における前記加熱部の加熱制御時間を計測し、計測した加熱制御時間を第2のタイミングで履歴として記憶する制御時間記憶部と、
前記第2のタイミング直後におけるウォームアップ開始時の前記加熱部の温度に基づき、当該ウォームアップ直前における加熱制御時間の履歴の総和を補正して補正制御時間を得る制御時間補正部と、をさらに備え、
前記補正制御時間にその後の加熱制御時間を加算した総加熱制御時間を、前記第2パラメーターとして取得する
ことを特徴とする請求項7に記載の定着装置。
【請求項9】
前記第2取得部は、
前記加熱部の加熱制御開始時における前記加熱部の温度を検出し、検出された温度が所定の閾値以下の場合には、前記補正回転時間の履歴をリセットして前記第1パラメーターを取得する
ことを特徴とする請求項8に記載の定着装置。
【請求項10】
前記第2取得部は、前記加熱部の加熱制御開始の時点で、前記補正制御時間が、前記補正回転時間より少ない場合には、前記補正回転時間の代わりに前記補正制御時間を用いて、前記第1パラメーターを取得する
ことを特徴とする請求項8に記載の定着装置。
【請求項11】
前記加熱部の加熱制御開示の時点は、ウォームアップ制御開始時である
ことを特徴とする請求項9または10に記載の定着装置。
【請求項12】
前記第2のタイミングは、定着ジョブの開始時、定着ジョブの終了時、加熱部への電力供給終了時のうちいずれか一つを含む
ことを特徴とする請求項8から11までのいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項13】
前記制御時間補正部は、予め求められた、第2テーブルもしくは第2演算式を利用して、前記ウォームアップ直前における加熱制御時間の履歴の総和を、ウォームアップ制御開始における前記加熱部の温度に基づき補正する
ことを特徴とする請求項8から12までのいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項14】
前記第2取得部は、
前記第1パラメーターに代えて、前記空回転に先行して実行された前記加熱部の加熱制御時間に基づき第2パラメーターを取得し、
前記第2パラメーターの値を前記第2指標値とする
ことを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項15】
前記加熱回転体と前記加圧部材間の相対的な圧接力を指標する第3指標値を取得する第3取得部をさらに備え、
前記制御部は、前記第1指標値と前記第2指標値および前記第3指標値に基づき、定着ジョブ実行後の空回転時における前記加熱回転体の温度および当該空回転を開始してから停止するまでの時間を制御する
ことを備えたことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項16】
前記第1取得部または第2取得部に代えて、前記加熱回転体と加圧部材間の相対的な圧接力を指標する第3指標値を取得する第3取得部を備え、
前記制御部は、前記第2取得部に代えて前記第3取得部を備える場合には、前記第1指標値と第3指標値に基づき、あるいは、前記第1取得部に代えて前記第3取得部を備える場合には、第2指標値と第3指標値に基づき、定着ジョブ実行後の空回転時における前記加熱回転体の温度および当該空回転を開始してから停止するまでの時間を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項17】
前記加圧部材は、加圧回転体であって、
前記加圧回転体と前記加熱回転体の一方の回転体が駆動源によって回転駆動されると共に、他方の回転体が従動回転される構成であって、
前記回転駆動される一方の回転体の駆動トルクを検出するトルク検出部を備え、
前記第3指標値は、前記検出された駆動トルクである
ことを特徴とする請求項15または16に記載の定着装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記加熱回転体の空回転を停止させる際に、段階的に減速させる
ことを特徴とする請求項1から17までのいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項19】
前記加熱部による加熱回転体の加熱位置と、加熱回転体の前記ニップ部となる位置が異なっている
ことを特徴とする請求項1から18までのいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項20】
前記加熱回転体は、周回する無端状のベルトであり、
前記加熱部は、前記ベルトの1周分のうち、周回方向に前記ニップ部とは離間している領域を加熱する
ことを特徴とする請求項1から19までのいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項21】
シート上に未定着トナー像を形成する作像部と、前記未定着トナー像をシートに熱定着する定着部とを備えた画像形成装置であって、
前記定着部として、請求項1から20までのいずれか1項に記載の定着装置が用いられることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シート上の未定着画像を熱定着させる定着装置および当該定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、シート上に形成された未定着トナー像を熱定着する定着装置を備える。この定着装置は、熱源により加熱された加熱回転体の周面に、加圧回転体を圧接してニップ部を形成し、当該ニップ部に未定着のシートを通紙する構成となっている。
【0003】
熱定着における定着むらが発生しないように、ニップ部のシート通紙方向における幅(以下、「ニップ幅」という。)は、所定の大きさが必要とされ、そのため、加熱回転体もしくは加圧回転体の双方もしくは一方に弾性層が形成されている。
【0004】
シートを定着後、すぐに加熱回転体および加圧回転体(以下、両者を「ニップ部形成回転体」と総称する場合もある。)の回転を停止させると、ニップ部が高熱となってニップ部形成回転体が劣化してしまうので、通常は、所定の時間だけ空回転(シートの通紙なしでの回転)をさせてニップ部の熱を拡散し、定着装置全体を温めるようにしている。
【0005】
ニップ部形成回転体は、その一方の回転体(通常は加圧回転体である場合が多い)のみを回転駆動し、他方の回転体は従動回転するように構成されているので、ニップ部にシートを通紙しない空回転時には、ニップ部の弾性層において回転体同士に微小な滑りが断続的に生じるいわゆる「スティックスリップ」現象が発生し、異音が発生する場合がある。
【0006】
異音が発生すると、特に静かなオフィス内にあっては、大変耳障りであり、また、画像形成装置が故障していると誤解される場合もあるので、このような異音の発生はできるだけ抑制することが望まれる。
【0007】
経験的に、ニップ部形成回転体の走行速度(シート通紙方向における送り速度)を大きくすればするほど、スティックスリップ現象による異音(以下、単に「スティックスリップ音」という。)が発生しにくくなるとされており、例えば、特許文献1においては、空回転時における走行速度が比較的高速になるように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2008-20533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、空回転は、予め定められている時間(例えば、15秒)が経過すると停止されるが、上記のように比較的高速な走行状態(例えば、100mm/s)から急激に回転を停止するとニップ部形成回転体の材料に対するダメージが大きく、定着装置の短寿命化を招くため、通常は、段階的に回転速度を低下させるようにしている。
【0010】
そうすると、せっかく、空回転開始時には高速回転してスティックスリップ音の発生を回避できていても、空回転を停止するため回転速度を段階的に減速させる際に、一定の低速域においてスティックスリップ音が発生してしまうことがある。
【0011】
本開示は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、特に、空回転の停止制御時において短寿命化を惹起することなく、スティックスリップ音の発生を可及的に抑止することができる定着装置および当該定着装置を有する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本開示の一態様に係る定着装置は、加熱部により加熱された加熱回転体に加圧部材を圧接してニップ部を形成し、当該ニップ部に未定着トナー像が形成されたシートを通紙して、定着ジョブを実行する定着装置であって、前記加熱回転体と加圧部材間の摩擦係数の、当該定着装置の新品時からの変化量を指標する第1指標値を取得する第1取得部と、前記加熱回転体前記加圧部材を含むニップ部形成部材の温まり具合を示す第1パラメーターを含む第2指標値を取得する第2取得部と、前記第1指標値と第2指標値に基づき、定着ジョブ実行後の空回転時における前記加熱回転体の温度および当該空回転を開始してから停止するまでの時間を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本開示の別の態様では、前記第1指標値は、前記加熱回転体の総走行距離および前記ニップ部へのシートの総通紙枚数の少なくとも一方であり、前記制御部は、前記第1指標値が第1閾値以上であり、かつ、第2指標値が第2閾値以上である場合に、前記定着ジョブ実行後の空回転時において、初期設定の条件よりも、前記加熱回転体の温度を低くすると共に当該空回転を開始してから停止するまでの時間を長くすることを特徴とする。
【0014】
また、本開示の別の態様では、前記第2取得部は、前記空回転に先行して実行される前記加熱回転体が回転した回転時間と当該加熱回転体が停止した停止時間の履歴に基づき、前記第1パラメーターを取得することを特徴とする。
【0015】
また、本開示の別の態様では、前記第2取得部は、少なくとも定着ジョブ実行時における前記加熱回転体の回転時間を計測し、計測した回転時間を第1のタイミングで履歴として記憶する回転時間記憶部と、前記空回転開始までに前記加熱回転体の回転停止時間が介在する場合に、当該回転停止の直前における回転時間の履歴の総和を、その直後の回転停止期間の長さに応じて補正して補正回転時間を得る回転時間補正部と、を備え、前記補正回転時間にその後の回転時間の履歴を加算した総回転時間を、前記第1パラメーターとして取得することを特徴とする。
【0016】
また、本開示の別の態様では、前記第1のタイミングは、定着ジョブの終了時、装置への電力供給終了時、前記加熱回転体の回転停止時のうちいずれか一つを含むことを特徴とする。
【0017】
また、本開示の別の態様では、前記回転時間補正部は、予め求められた、第1テーブルもしくは第1演算式に基づき、前記回転停止の直前における回転時間の履歴の総和を、その直後の回転停止期間の長さに応じて補正することを特徴とする。
【0018】
また、本開示の別の態様では、前記第2取得部は、前記第1パラメーターに加えて、前記空回転に先行して実行された前記加熱部の加熱制御時間に基づき第2パラメーターを取得し、前記第1パラメーターの値と前記第2パラメーターの値とに基づいて前記第2指標値を取得することを特徴とする。
【0019】
また、本開示の別の態様では、前記第2取得部は、少なくとも定着ジョブ実行時における前記加熱部の加熱制御時間を計測し、計測した加熱制御時間を第2のタイミングで履歴として記憶する制御時間記憶部と、前記第2のタイミング直後におけるウォームアップ開始時の前記加熱部の温度に基づき、当該ウォームアップ直前における加熱制御時間の履歴の総和を補正して補正制御時間を得る制御時間補正部と、をさらに備え、前記補正制御時間にその後の加熱制御時間を加算した総加熱制御時間を、前記第2パラメーターとして取得することを特徴とする。
【0020】
また、本開示の別の態様では、前記第2取得部は、前記加熱部の加熱制御開始時における前記加熱部の温度を検出し、検出された温度が所定の閾値以下の場合には、前記補正回転時間の履歴をリセットして前記第1パラメーターを取得することを特徴とする。
【0021】
また、本開示の別の態様では、前記第2取得部は、前記加熱部の加熱制御開始の時点で、前記補正制御時間が、前記補正回転時間より少ない場合には、前記補正回転時間の代わりに前記補正制御時間を用いて、前記第1パラメーターを取得することを特徴とする。
【0022】
また、本開示の別の態様では、前記加熱部の加熱制御開示の時点は、ウォームアップ制御開始時であることを特徴とする。
【0023】
また、本開示の別の態様では、前記第2のタイミングは、定着ジョブの開始時、定着ジョブの終了時、加熱部への電力供給終了時のうちいずれか一つを含むことを特徴とする。
【0024】
また、本開示の別の態様では、前記制御時間補正部は、予め求められた、第2テーブルもしくは第2演算式を利用して、前記ウォームアップ直前における加熱制御時間の履歴の総和を、ウォームアップ制御開始における前記加熱部の温度に基づき補正することを特徴とする。
【0025】
また、本開示の別の態様では、前記第2取得部は、前記第1パラメーターに代えて、前記空回転に先行して実行された前記加熱部の加熱制御時間に基づき第2パラメーターを取得し、前記第2パラメーターの値を前記第2指標値とすることを特徴とする。
【0026】
また、本開示の別の態様では、前記加熱回転体と前記加圧部材間の相対的な圧接力を指標する第3指標値を取得する第3取得部をさらに備え、前記制御部は、前記第1指標値と前記第2指標値および前記第3指標値に基づき、定着ジョブ実行後の空回転時における前記加熱回転体の温度および当該空回転を開始してから停止するまでの時間を制御することを特徴とする。
【0027】
また、本開示の別の態様では、前記第1取得部または第2取得部に代えて、前記加熱回転体と加圧部材間の相対的な圧接力を指標する第3指標値を取得する第3取得部を備え、前記制御部は、前記第2取得部に代えて前記第3取得部を備える場合には、前記第1指標値と第3指標値に基づき、あるいは、前記第1取得部に代えて前記第3取得部を備える場合には、第2指標値と第3指標値に基づき、定着ジョブ実行後の空回転時における前記加熱回転体の温度および当該空回転を開始してから停止するまでの時間を制御することを特徴とする。
【0028】
また、本開示の別の態様では、前記加圧部材は、加圧回転体であって、前記加圧回転体と前記加熱回転体の一方の回転体が駆動源によって回転駆動されると共に、他方の回転体が従動回転される構成であって、前記回転駆動される一方の回転体の駆動トルクを検出するトルク検出部を備え、前記第3指標値は、前記検出された駆動トルクであることを特徴とする。
【0029】
また、本開示の別の態様では、前記制御部は、前記加熱回転体の空回転を停止させる際に、段階的に減速させることを特徴とする。
【0030】
また、本開示の別の態様では、前記加熱部による加熱回転体の加熱位置と、加熱回転体の前記ニップ部となる位置が異なっていることを特徴とする。
【0031】
また、本開示の別の態様では、前記加熱回転体は、周回する無端状のベルトであり、前記加熱部は、前記ベルトの1周分のうち、周回方向に前記ニップ部とは離間している領域を加熱することを特徴とする。
【0032】
また、本開示の別の態様では、シート上に未定着トナー像を形成する作像部と、前記未定着トナー像をシートに熱定着する定着部とを備えた画像形成装置であって、前記定着部として、上記定着装置が用いられることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0033】
上記開示の態様によれば、ニップ部におけるスティックスリップの発生条件に大きな影響を及ぼす加熱回転体と加圧部材間の摩擦係数の変化量を指標する第1指標値と、前記加熱回転体および/または加圧部材の弾性層の剛性率の変化量を指標する第2指標値に基づき、空回転時における前記加熱回転体の温度やその空回転時間を制御することにより、空回転停止のための減速制御時において、段階的に減速して加熱回転体や加圧回転体に大きなダメージを与えることなく、スティックスリップ音の発生を可及的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】実施の形態に係るプリンターの全体構成を示す概略図である。
図2】上記プリンターの定着部の概略構成を示す断面図である。
図3】スティックスリップ現象の発生メカニズムを説明するためのモデル図である。
図4】定着ベルトの回転時間とニップ幅の変化との関係を示すグラフである。
図5】定着ベルトの停止時間とニップ幅の変化との関係を示すグラフである。
図6】定着ジョブの実行と定着ベルト回転と停止の状態を説明するためのタイムチャートである。
図7】補正回転時間Tδと定着ベルトの停止時間Tsとの相関関係を示すグラフである。
図8】前回の定着ベルトの回転後、停止時間を挟んで再度回転させる場合における蓄熱量の指標値の変化を示すグラフである。
図9】定着ジョブとその後に続く空回転、および待機モードにおける目標設定温度の変化を示す図である。
図10】空回転停止時における段階的減速を示すタイムチャートである。
図11】プリンター全体の制御系統を示すブロック図である。
図12】制御部で実行される空回転停止速度制御の手順を示すフローチャートである。
図13】定着モーターの駆動トルクをその駆動電流の変化によって検出するための回路を示すブロック図である。
図14】加圧ローラーの定着ベルトに対する荷重(圧接力)を検出するための構成を示す図である。
図15】定着部の温まり具合の程度を、ウォームアップ開始時の加熱ローラーの温度によって補正する際のシミュレーションの結果を示すテーブルである。
図16】定着部の温まり具合の程度を、ウォームアップ開始時の加熱ローラーの温度によって補正の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本開示の実施の形態に係る画像形成装置として、タンデム型のカラープリンター(以下、単に「プリンター」という。)を例にして図面を参照しながら説明する。
【0036】
(1)プリンターの全体構成
図1は、プリンター1の全体構成を示す概略断面図である。
【0037】
同図に示すようにプリンター1は、電子写真方式によるものであり、給送部10、作像部20、定着部30、排出部40および両面搬送部50を含み、記録用のシートSの片面(表面)のみに画像をプリントする片面プリントジョブと、シートSの両面(表面と裏面)に画像をプリントする両面プリントジョブを実行可能である。
【0038】
給送部10は、シートSを収容する給紙トレイ11と、給紙トレイ11に設けられ、シートSを搬送路19に向けて1枚ずつ繰り出す繰り出しローラー12Pと、繰り出されたシートSを給紙搬送する給紙ローラー12Fと、二次転写位置29にシートSを送り出すタイミングをとるためのタイミングローラー13などを備えている。
【0039】
作像部20は、給送部10から送られたシートS上にトナー像を形成する。具体的には、4つの作像ユニット21Y、21M、21C、21Kでは、帯電された感光体ドラム25Y、25M、25C、25Kの表面を、画像データに基づき変調駆動された露光部26からのレーザー光で露光して、その表面に静電潜像を作成し、その静電潜像をイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の各色のトナーで現像する。
【0040】
現像により可視像化された4色のトナー像は、感光体ドラム25Y、25M、25C、25Kと、これに中間転写ベルト23を介して対向する1次転写ローラー22Y、22M、22C、22Kとの間の電界によって、各感光体ドラムの表面から中間転写ベルト23の表面上に一次転写される。この一次転写において、Y~Kの各色トナー像が中間転写ベルト23上の同じ位置に転写されるように、作像ユニット21Y~21Kにおいてトナー像の形成タイミングがずらされる。これにより中間転写ベルト23上にY~K色トナー像が多重転写されてなるカラートナー像が形成される。
【0041】
中間転写ベルト23は、感光体ドラム25Y~25Kよりも上に位置し、駆動ローラー23R、従動ローラー23Lを含む複数のローラーに張架されており、矢印A方向に周回走行される。中間転写ベルト23上のカラートナー像は、中間転写ベルト23の周回走行により、中間転写ベルト23と2次転写ローラー24との接触位置である二次転写位置29に移動する。
【0042】
中間転写ベルト23上のカラートナー像は、二次転写位置29において、中間転写ベルト23と2次転写ローラー24との間の電界により、給送部10から搬送されて来たシートSが中間転写ベルト23と2次転写ローラー24の間を通過する際に、そのシートSの表面(第1面)へ二次転写される。カラートナー像が二次転写されたシートSは、2次転写ローラー24により矢印E方向に搬送されて定着部30へ向かう。
【0043】
定着部30には、定着ベルト311(加熱回転体)と加圧ローラー32(加圧部材)とを含み、両者の間に形成されたニップ部NpにシートSが通紙されることにより、トナー像がシートS上に熱定着される。
【0044】
排出部40は、排出ローラー41と排紙口45を含み、カラートナー像が定着したシートSを排紙口45から排出する。排出ローラー41は、排紙口45の内側に配置され、矢印B方向に回転(正転)しながら、定着部30から搬送されて来たシートSを排紙口45から搬送して機外に排出する。排出された用紙Sは、排紙トレイ46へ収容される。これにより、シートSの第1面のみにプリントする片面プリントが完了する。
【0045】
また、両面プリントジョブの場合、表面(第1面)に対するプリント時に二次転写位置29を通過したシートSは、定着部30から排出ローラー41に搬送される。排出ローラー41により搬送されるシートSの搬送方向後端が光学センサーからなる排出センサーESの検出位置を通過すると、排出ローラー41が正転から逆転(矢印C方向に回転)に切り換わる。
【0046】
この排出ローラー41の逆転により、シートSが反転して両面搬送部50に導かれ、両面搬送ローラー51、52、53、54、55により両面搬送路を矢印D方向に搬送され、タイミングローラー13を介して、再度、二次転写位置29まで搬送され、シートSの裏面(第2面)に、カラートナー像が二次転写され、定着部30で熱定着された後、排出ローラー41を介して排紙トレイ46に排出される。
【0047】
給送部10と作像部20において、給紙、搬送のローラー類や駆動ローラー23R、感光体ドラム25Y~25Kなどを含む回転部材は、作像部20に配された駆動モーターM1の駆動力により回転する。また、定着部30における加圧ローラー32は、駆動モーター(定着モーター)M2により回転駆動され、排出ローラー41は、排出部40に配された駆動モーターM3の駆動力により正逆転し、両面搬送ローラー51~55は、両面搬送部50に配された駆動モーターM4の駆動力により回転する。
【0048】
また、制御部100は、ネットワークインターフェース(I/F)110を通じて不図示のネットワークを介して外部の端末装置と接続され、この端末装置から送られて来るプリントジョブのデータを受信して、受信したプリントジョブのデータから印刷すべき画像データを生成し、生成した画像データをプリントに供する。
【0049】
(2)定着部の構成
図2は、定着部30の構成を示す概略断面図である。
【0050】
同図に示すように定着部30は、加熱ユニット31と加圧ローラー32を有する。加熱ユニット31は、無端状の定着ベルト311と、定着ベルト311を張架する加熱ローラー312(加熱部)および定着部材313と、加熱ローラー312に熱を付与するヒーター部314と、定着ベルト311の温度を検出するための温度センサー315とを含む。
【0051】
定着ベルト311は、ポリイミドやSUS(ステンレス鋼)等からなる基層の上に、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性の高い材料からなる弾性層と、PFA(パーフルオロアルコキシフッ素樹脂)などのフッ素系樹脂からなる離型性を付与した離型層とがこの順に積層されてなる。
【0052】
加熱ローラー312は、円筒状のアルミ中空芯金の外周面にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなるコート層が積層されてなり、その軸方向両端部が定着部30の筐体を構成する不図示のフレームに回転自在に支持されている。
【0053】
円筒状の加熱ローラー312の内周側にヒーター部314が内挿されており、加熱ローラー312の軸方向(長手方向:図2における紙面奥手方向)のほぼ全範囲を加熱する第1ヒーター3141と、軸方向中央部を加熱する第2ヒーター3142とからなり、不図示の電源からの電力供給により発熱し、加熱ローラー312が加熱される。なお、本実施の形態では、第1ヒーター3141や第2ヒーター3142はハロゲンヒーターからなるが、他の加熱源であっても構わない。
【0054】
定着部材313は、定着ベルト311の裏面に当接する樹脂パッド3131と、樹脂パッド3131を支持する支持部材3132とからなり、樹脂パッド3131の定着ベルト311との摺接面には摩擦を低減するための潤滑剤が塗布される。支持部材3132は、不図示の定着部30のフレームに固定されている。
【0055】
加圧ローラー32は、アルミや鉄などからなる円筒状の芯金の外周面に、シリコーンゴム等の弾性層と、PFAなどの離型層とがこの順に積層されてなる。加圧ローラー32の軸方向両端部が上記のフレームに回転自在に支持されるとともに、バネなどの弾性部材(不図示)の付勢力により、所定の荷重(圧接力)で加圧ローラー32の外周面が定着ベルト311の外周面に圧接される。この圧接により、加圧ローラー32の外周面と定着ベルト311の外周面との間にニップ部Npが形成される。
【0056】
加圧ローラー32は、定着モーターM2(図1)の回転駆動力により矢印P方向に所定の回転速度で回転駆動される。この加圧ローラー32の回転により、加熱ローラー312と定着部材313に張架されている定着ベルト311が矢印Q方向に従動回転(走行)する(なお、場合によっては、加熱回転体側が駆動され、加圧回転体が従動回転するような構成もあり得る。)。
【0057】
定着ジョブ実行時において、ニップ部Npを通過するシートSの搬送速度が所定のシステム速度(基準速度)で安定するように定着モーターM2の回転速度が制御される。
【0058】
定着ベルト311の周回走行中にヒーター部314に通電されると、ヒーター部314から発せられた熱が加熱ローラー312(加熱部)から定着ベルト311に伝わり、定着ベルト311の周回走行によりニップ部Npに至る。
【0059】
これにより、定着ベルト311の熱が加圧ローラー32や定着部材313に供給され、定着ベルト311と加圧ローラー32との接触領域であるニップ部Npの温度が上昇する。
【0060】
温度センサー315は、例えば、サーミスターであり、定着ベルト311における加熱ローラー312の外周面と接する部分の近傍位置に配され、定着ベルト311の表面温度を検出して、その検出結果を制御部100に送る。
【0061】
制御部100は、その検出結果に基づき、ヒーター部314における第1ヒーター3141、第2ヒーター3142に供給する電力をオンオフして、定着ベルト311が目標の温度になるように制御する。
【0062】
具体的に、例えば,温度センサー315による検出温度をTwとすると、温度センサー315の位置とニップ部Npとは所定距離だけ離間しているため、ニップ部Npにおける温度TNは、検出温度Twそのままではなく、これに一定の温度調整用補正係数A1(A1<1)を乗じて補正したものとなる(TN=A1*Tw)。
【0063】
したがって、制御部100は、この補正後の温度TNが、目標の設定温度と等しくなるように、ヒーター部314における各ヒーター3141、3142のオンオフ制御を行う。
【0064】
ニップ部Npの温度を定着可能な目標温度まで上昇させる温度制御(ウォームアップ制御)は、装置に電源が投入されたときや、ジャム発生後、ユーザーによるジョブ処理完了後、メンテナンス用の前扉などが閉じられたとき、消費電力を節約するためのスリープモードから復帰するときなどに実行される。
【0065】
このウォームアップ制御では,早期に定着可能温度に上昇させるために,第1ヒーター3141(ロングヒーター)を点灯する。定着のための目標設定温度TNが、例えば155℃であれば、当該TNを入力して,加熱ローラー312の目標加熱温度(TN/A1:例えば約170℃程度)になるように第1ヒーター3141をオンオフ制御し、定着ベルト311を、所定の走行速度(線速度)(例えば、135mm/s)で回転させることにより、ニップ部Npが加熱される。
【0066】
ウォームアップ完了後、第2ヒーター3142(ショートヒーター)による加熱制御に切換えて、プリントジョブが実行される。その後プリント指示がなければ、再び第1ヒーター3141により加熱ローラー312の目標設定温度を、定着ジョブ実行時よりも低い待機温度(150℃~155℃程度)に設定して温度制御しながら所定時間だけ空回転を実行した後に、定着ベルト311を停止させて待機モードに移行する。この間、加熱ローラー312は上記待機温度に維持される。
【0067】
なお、プリントジョブにおいて小サイズのシートを大量に出力する場合などには、軸方向中央部の熱量のみ奪われて、軸方向端部の温度が過剰に上昇する場合があるので、軸方向(主走査方向)中央部の温度を検出する温度センサー315のほかに、軸方向端部の温度を検出する温度センサーを別途設けて、端部の温度が過剰に上昇しないように、適宜第1ヒーター3141と第2ヒーター3142を切り換えて加熱するのが望ましい。
【0068】
(3)スティックスリップの発生条件
次に、定着部30のニップ部Npにおけるスティックスリップの発生条件について考察する。
【0069】
図3は、一般化したスティックスリップ現象の発生メカニズムを説明するためのモデル図である。
【0070】
同図において、弾性を有する第1部材301(本実施の形態では、定着ベルト311に相当)上に第2部材302(本実施の形態では、加圧ローラー32に相当)を、荷重Wで押し付けて、第2部材302を矢印方向に速度Vで移動させる(図3(ア))。
【0071】
荷重Wを受けて、第1部材301の上面と第2部材302の下面は、最初は密着(stick)した状態であり、第2部材302の水平方向の移動に連れて、第1部材301の表層部が弾性変形する(図3(イ))。
【0072】
そして、第1部材301の表層部の弾性復元力が、第2部材302下面との静止摩擦力を上回ると、第1部材301の表層部と第2部材302との下面との間で滑り(slip)が発生して、第1部材301の表層部が元の姿勢に復帰する(図3(ウ))。この際にスティックスリップ音が発生すると考えられる。
【0073】
以下、上記図3(ア)~(ウ)の挙動が繰り返される。
【0074】
このようなモデルケースにおいて、スティックスリップ現象の発生のしやすさを示すパラメーターλが次式(1)で示される。
【0075】
【数1】
・・・式(1)
式(1)において、Δμ=μs-μk
ここで、μs:第1部材と第2部材間の静止摩擦係数
μk:第1部材と第2部材間の動摩擦係数
また、W:第2部材から第1部材に加えられる荷重
m:第2部材の質量
k:ばね剛性係数(剛性率)
V:第2部材の初速
上記式(1)で定義されるパラメーターλの値が小さいほど、スティックスリップが発生じにくいことが知られており、この式(1)を、定着部30のニップ部Npにおけるスティックスリップ現象の解析に適用すると、次のようになる。
【0076】
(a)定着部30への総印字枚数(総通紙枚数)および/または総走行距離が大きくなればなるほど、Δμが大きくなる。
【0077】
通常、定着部30においては、トナーと接触する回転体の外表面(本実施の形態では、定着ベルト311の外表面)は、トナーの離型性を向上させるためにフッ素系樹脂などでコーティングされている。
【0078】
印字枚数や走行距離が増加すれば、摩耗により徐々に定着ベルト311外表面の当該コーティングが剥がれていき、定着ベルト311表面の摩擦係数が徐々に大きくなっていく。
【0079】
このとき、静止摩擦係数μsと動摩擦係数μkが共に大きくなるが、その増加の程度は、静止摩擦係数μsの方が動摩擦係数μkよりも大きいことが、経験的に知られており、そのため、Δμの値は、耐久と共に大きくなる傾向にある。
【0080】
このΔμを、画像形成装置内で、直接測定することはできないので、本実施の形態では、総印字枚数および/または総走行距離を、Δμの値を指標する指標値として使用するようにしている。
【0081】
(b)通常、弾性体の剛性率kは、その蓄熱量が多ければ多いほど、小さくなる(弾性が増す)という特性を有する。
【0082】
この剛性率は、せん断力による変形のしにくさを決める物性値であり、定着部30のニップ形成回転体に使用されるゴムなどの弾性材料は、その部材の温度上昇と共に、剛性率が小さくなることが知られている。
【0083】
スティックスリップの発生条件としては、第1部材301と第2部材302の接触面に面した弾性材料における剛性率が問題となるが、この剛性率を温度で指標する場合には、その表面の温度だけでは十分ではなく、ニップ部を形成する部分全体(以下、「ニップ部形成部材」という。)の温まり具合(以下、「蓄熱量」という。)が重要なパラメーターとなる。
【0084】
本実施の形態では、ニップ部形成部材として、定着部材313(特に、樹脂パッド3131)、加圧ローラー32および定着ベルト311が含まれる。
【0085】
したがって、定着部30における上記ニップ部形成部材の蓄熱量が多ければ多いほど、剛性率は小さくなる。
【0086】
式(1)と上記(a)、(b)の考察より、総印字枚数(または、総走行距離)が多くなるほど、もしくは、ニップ部形成部材の蓄熱量が大きくなるほどλの値が大きくなり、スティックスリップが発生しやすいことが分かる。
【0087】
(4)各指標値の取得について
(4-1)Δμの変動量の指標値について
上述のようにΔμの変動量は、総印字枚数および/または総走行距離と相関関係があるので、これらを指標値とすることが可能である。
【0088】
ここで、総印字枚数は、新品の画像形成装置が最初に駆動されてから、もしくは、定着部のユニットが新品に交換されてから、直近の印刷にいたるまでの印字枚数の累計(すなわち、定着ジョブにおけるニップ部Npの通紙枚数の累計)を意味する。
【0089】
本実施の形態では原則として、標準のA4サイズ横通しのシートへの印刷枚数でカウントすることとする。それ以外のシートサイズへの印刷の場合には、例えば面積比によりA4横通しの枚数に換算するか、それほどサイズに差がない場合は、そのまま1枚としてカウントしても構わない。
【0090】
総走行距離は、新品の画像形成装置が最初に駆動されてから、もしくは定着ユニットが新品に交換されてから、直近の印刷にいたるまでの加圧ローラー32の回転数を累計し、これに加圧ローラー32の周長を乗じることにより求めることができる。
【0091】
以下では、総印字枚数および/または総走行距離を、単に「耐久指標値」と総称する場合がある(第1指標値)。
【0092】
(4-2)剛性率の変動量の指標値について
ニップ部Npを形成するための弾性層における剛性率は、上述のように当該ニップ部形成部材全体の蓄熱量(温まり具合)により推定することが可能である(具体的には剛性率の絶対値ではなく、その変動量が指標されると考えられる。)。
【0093】
しかしながら、ニップ部形成部材の蓄熱量を装置内で実際に測定することはできないので、これを定量的に推定できるパラメーター(第1パラメーター)を設定する必要がある。
【0094】
そこで、本願発明者らは、加熱ローラー312を介して加熱制御された定着ベルト311の走行する時間(以下では、「ベルト回転時間」という。)が、ニップ部形成部材の蓄熱量を評価する一つの基準となると考えた。
【0095】
加熱ローラー312により定着ベルト311に加えられた熱量がその回転により、やがて定着部材313や加圧ローラー32などに伝搬されて、ニップ部形成部材の温まり具合を左右するからである。
【0096】
本実施の形態では、一つの定着ジョブの実行に際して発生するベルト回転時間は、原則として、ニップ部Npに通紙されたシートを定着するための回転時間(狭義の定着ジョブ)のみならず、定着ジョブ実行前のウォームアップ時における空回転時間および定着ジョブ実行後の空回転時間も含まれる(広義の定着ジョブ)。
【0097】
このような定着ジョブ前後の空回転時であっても定着ベルト311の回転を介して,加熱ローラー312で供給された熱量が、定着ベルト311を介してニップ部Npに供給されるからである。
【0098】
厳密には、(i)前処理空回転時と、(ii)定着ジョブ実行時(狭義)と、(iii)後処理空回転時とでは、加熱ローラー312から定着ベルト311に供給される単位時間当たりの熱量は異なるが、全体のベルト回転時間で平均して、単位時間当たり均一な熱量が供給されるものとみなすことができるからである。
【0099】
もっとも、狭義の定着ジョブ実行時の設定温度が一番高く、ニップ部形成部材の蓄熱量に与える影響が大きいと考えられるので、少なくともこの定着ジョブの実行時間をベルト回転時間として選択的に計測しても構わない。
【0100】
以下では、説明の便宜上、定着ジョブ実行前のウォームアップ時における空回転を「前処理空回転」、定着ジョブ実行後の空回転を「後処理空回転」として両者を区別する。また、特に、断らない限り「定着ジョブ」は、狭義の定着ジョブを意味する。
【0101】
後処理空回転は、予め設定された時間経過後に停止され、待機モードに移行するが、この待機モード期間中は、加熱ローラー312の温度は、次のプリントジョブを受け付けてすぐに定着温度に到達できるような温度(待機温度)に維持される。
【0102】
待機温度は、本実施の形態では、定着ジョブ実行時における加熱ローラー312の加熱温度よりも約10℃~30℃程度低い温度としている。
【0103】
ここで、まず、後処理空回転開始時におけるニップ部形成部材の蓄熱量の指標値(第2指標値)について説明する。
【0104】
後処理空回転開始のタイミングにおいて、その直前に実行した定着ジョブ(以下、「直前ジョブ」という。)の実行に際して行われた直前ベルト回転時間Tr(但し、ここでは後処理空回転時間が除かれる)が、ニップ部Npの蓄熱量に一番影響を与える指標となる。
【0105】
しかし、当該直前ジョブより先行して実行した定着ジョブ(以下、「先行ジョブ」という。)の実行に際して加えられた熱量も残留している可能性が高い。
【0106】
本実施の形態では、この先行ジョブにおける残存蓄熱量を、直前ジョブにおけるベルト回転時間に換算した補正回転時間Tδを、上記直前ジョブのベルト回転時間Trに加算した総回転時間R(=Tr+Tδ)を求め、これをニップ部形成部材の蓄熱量を指標する第1パラメーターとしている。
【0107】
この補正回転時間Tδは、先行ジョブにおけるベルト回転時間を、その後の停止時間の長さを考慮して補正することにより取得できる。
【0108】
本願発明者らは、上記先行ジョブにおける残存蓄熱量を指標する補正回転時間Tδを得るべく、ニップ部Npのシート搬送方向における幅(ニップ幅:図2)Ndの変化量に着目した。
【0109】
具体的には、ニップ部形成部材の蓄熱量が多いほど、加圧ローラー32の熱膨張が大きくなり、加圧ローラー32の熱膨張の度合いが大きいほど、定着ベルト311とのシート搬送方向における接触長さであるニップ幅Nd(図2)が広くなる。
【0110】
加圧ローラー32の熱膨張は、加熱された定着ベルト311から加圧ローラー32に加えられる熱量により変動し、加圧ローラー32に加えられる熱量は、定着ベルト311の回転中と停止中とで異なる。
【0111】
熱源のヒーター部314により加熱される加熱ローラー312と、ニップ部Npを形成する加圧ローラー32とが離間しているため、プリント実行中などのように定着ベルト311が回転すれば、ヒーター部314により加熱された加熱ローラー312の熱が定着ベルト311から直にニップ部Npに伝えられるからである。
【0112】
逆に、プリントジョブの待機中などで定着ベルト311が停止状態にあれば、加熱ローラー312と離れているニップ部Npへ伝わる熱が大きく減少する。
【0113】
定着ベルト311の回転中と停止中とでニップ幅Ndは、図4図5に示すように変動する。図4は、加熱ローラー312により所定量の熱量が定着ベルト311に付与されてニップ部Npの温度が所定値以上(例えば、100℃以上)の高温になるように制御されているとき(以下、「加熱制御時」という。)における定着ベルト311のベルト回転時間(秒)とニップ幅Nd(mm)の関係を示す図である。
【0114】
また、図5は、上記定着ベルト311の回転による蓄熱後の、定着ベルト311の停止時間(定着ベルト停止時間Ts)とニップ幅Ndの関係を示す図である。
【0115】
図4図5はそれぞれ、ベルト回転時間Trと定着ベルト停止時間Tsとニップ幅Ndの関係の実測の一例を示している。
【0116】
図4に示すようにベルト回転時間Trが増えるのに伴ってニップ幅Ndが広くなっていることが判る。具体的には、定着ベルト311の回転開始時には、ニップ幅Ndが4.85mmであるが、300秒後には、ニップ幅Ndが5.4mmになり、900秒後にはニップ幅Ndが5.6mmに広がっている。
【0117】
この状態から定着ベルト311の回転を停止すると、加圧ローラー32に伝わる熱の量が減少するため、図5に示すように定着ベルト停止時間Tsが増えるのに伴ってニップ幅Ndが狭くなる。具体的には、定着ベルト311の停止時に5.6mmであったニップ幅Ndが、600秒後には5.4mmになり、1800秒後には5.2mmに狭くなっている。
【0118】
図5において、ニップ幅Ndが元の大きさである4.8mmまで戻らないのは、定着ベルト311の回転が停止しても、加熱ローラー312からの熱が停止中の定着ベルト311を通じて加圧ローラー32に伝わるとともに加熱ローラー312の輻射熱も加圧ローラー32に伝わるためであると考えられる。
【0119】
なお、上記のニップ幅Ndの大きさは一例であり、定着部30の装置構成が異なれば、ニップ幅Ndの大きさも異なる場合があることはいうまでもない。
【0120】
このようにニップ幅Ndは、ヒーター部314で加熱されている定着ベルト311の回転時間に応じて大きくなり、定着ベルト311の停止時間に応じて小さくなる。
【0121】
そして、定着ベルト311の回転時間が長いほどニップ部Npを介してニップ部形成部材に供給される熱量が増えるので、それだけニップ部形成部材の蓄熱量が多くなり、これに続く定着ベルト311の停止時間が長いほど放熱によりニップ部形成部材の蓄熱量が少なくなるという関係があるから、ニップ部形成部材の蓄熱量は、定着ベルト311の回転時間および停止時間と明確な相関関係があるといえる。
【0122】
図6は、所定の時間をおいて受け付けた(n-1)番目とn番目の2つのプリントジョブについて実行される定着ジョブについて、定着ベルト311の回転・停止動作の一例を示すタイムチャートである。なお、「n」は自然数であって、本例では、装置に電源を投入した直後のプリントジョブを初期値「1」として、順にカウントアップしたものである。
【0123】
まず、(n-1)番目のプリントジョブの実行開始を受け付けると(時刻t1)、ウォームアップwu1(前処理空回転)を開始し、ニップ部Npが所定の定着温度になると(時刻t2)、当該(n-1)番目のプリントジョブにおける未定着トナー像をシートに熱定着する(n-1)番目の定着ジョブを実行する。
【0124】
(n-1)番目の定着ジョブが終了すると(時刻t3)、後処理空回転1を実行して、ニップ部Npにおける熱を拡散させた後、時刻t4に定着ベルト311の回転を停止し、待機モードに移行する。
【0125】
そして、次のn番目のプリントジョブnの実行開始に合わせて、ウォームアップwu2を開始し(時刻t5)、その後、時刻t6にn番目の定着ジョブの実行を開始し、その終了後(時刻t8)に、後処理空回転2を実行した後、時刻t8に定着ベルト311の回転を停止して、待機モードに移行する。
【0126】
今、ここで、後処理空回転2を開始する時刻t7に、当該後処理空回転2における空回転の条件(設定温度および空回転時間)の変更の要否を判定する場合、そのときのニップ部形成部材の蓄熱量を指標するものとして、直前の定着ジョブ(n)の実行に際して行われたベルト回転時間Tr(n)(=t7-t5)が、一番影響が大きいが、より正確に蓄熱量を反映するためには、それ以前に実行された定着ジョブの実行に際して、ニップ部Npに残留している残留熱量を考慮に入れるのが望ましい。
【0127】
定着ジョブの終了後、定着ベルト停止時間が介在すると、図5で説明したようにその定着ベルト停止時間に応じて放熱が進んでニップ幅Ndが小さくなっているため、以前の定着ジョブ(n-1)におけるベルト回転時間T(n-1)をそのまま蓄熱量を指標としてベルト回転時間Tr(n)に加算することは望ましくなく、何らかの補正が必要である。
【0128】
図7は、前回の定着ジョブ(n-1)に関連してなされたベルト回転時間Tr(n-1)が30秒の場合における、その後の定着ベルト311の停止時間Tsに対するニップ幅Ndの変化を、当該ニップ幅Ndと等しいニップ幅Ndとなる直前ジョブにおけるベルト回転時間に換算した値(補正回転時間Tδ)を図5の実験結果により求めてプロットしたグラフであり、横軸が定着ベルト停止時間Tsを示し、縦軸が補正回転時間Tδを示している。
【0129】
本実験により、定着ベルト311の回転が停止後、およそ100秒間は、ほとんどニップ幅Ndの幅の変化が認められなったため、図7に示すように、停止時間(Ts)が100に至るまでは補正回転時間Tδも30秒のまま変化しないが、100秒を超えると徐々に補正回転時間Tδが小さくなる。
【0130】
このような補正回転時間Tδと停止時間Tsとの相関関係が、回転停止時における蓄熱量を指標する回転時間の値ごとに予め求められて制御部100の例えばROM103(図11参照)に換算テーブル(第1テーブル)として格納されている。
【0131】
今、前回の(n-1)番目の定着ジョブ終了時における残留熱量を指標するベルト回転時間をR(n-1)とし、その後、定着ベルト回転停止時間Ts(n)を経過して減衰した後における残留熱量を指標するための補正回転時間Tδ(n)とすると、上記実験結果から、Tδ(n)は、次の式(2)(第1演算式)で近似することができる。
【0132】
【数2】
…式(2)
ここで、「Td(n)」は、n番目の定着ジョブの実行開始直前の定着ベルト回転停止時間Ts(n)のうち、実質的に残留蓄熱量の減衰に寄与する時間(以下、「減衰寄与時間」という。)を示すものである。
【0133】
上述の実験結果に基づき、回転停止後100秒は、ニップ幅Ndが変化しなかったのであるから、減衰寄与時間Td(n)は、次のようになる。
【0134】
Ts(n)>100のとき、Td(n)=Ts(n)-100
Ts(n)≦100のとき、Td(n)=0
また、「β」は、減衰の程度を決めるための正の定数であって、定着部30の構造や、定着ローラー、定着ベルト、加圧ローラーなどの材料や形状などによって異なり、具体的な数値は実験などにより求められる。
【0135】
したがって、n番目の定着ジョブ終了時におけるニップ部Npの蓄熱量(残留蓄熱量)を指標するためのベルト回転時間R(n)とすると、R(n)は、n番目の定着ジョブ終了時におけるベルト回転時間Tr(n)と、前回以前の定着ジョブによってニップ部Npに残存している残留熱量を、直前のn番目の定着ジョブにおける回転時間に換算した補正回転時間Tδ(n)との総和として得ることができる。
【0136】
【数3】
・・・式(3)
この式(3)に上記式(2)を代入すると、次の式(4)が得られる。
【0137】
【数4】
・・・式(4)
上述のように、nは、自然数(1,2,3・・・)であって、通常は、朝一番に装置に電源が投入された後に実行したプリントジョブの順を示す。
【0138】
なお、途中(n-1)番目の定着ジョブの終了時から次の(n)番目の定着ジョブの実行開始までの停止時間が非常に長く、所定の閾値以上(例えば、2時間以上)であるような場合には、以前の定着ジョブによる残留熱量がほとんど放熱されて無視してもよく、この場合にはn=1にリセットするようにしてもよい。このとき、R(0)=0とみなす。
【0139】
また、節電のためのスリープモードの時間(非加熱制御時間)が長く、ニップ部形成部材の放熱が進んでいる場合にも、加熱ローラー312の温度も下がっているので、温度センサー315による加熱ローラー312の検出温度が、所定温度(例えば、50℃)である場合にも、n=1にリセットしても構わない。
【0140】
反対に、装置本体の電源がOFFにされても、制御部100で、回転停止時間のカウントは継続して行うようにしておき、次に電源がONになって次の定着ジョブの実行開始までの停止時間が上記閾値以上になっていなければ、nをリセットせずに、電源がOFFされる前の残留熱量を考慮してニップ部Npの蓄熱量を指標する総回転時間R(n)(第1パラメーター)を得ることができる。
【0141】
また、Tr(n)やTd(n)の値は、制御部100内のカウンター104(図11参照)によって計数され、所定のタイミング(第1のタイミング)でバックアップメモリ105に保存される(例えば、Tr(n)については、n番目の定着ジョブ終了時またはその後の後処理空回転の停止時、Td(n)については、次の定着ジョブにおけるウォームアップ開始時、Ts(n)、Tδ(n)については、回転停止状態から次の回転開始に移行する時)にバックアップされると共に、カウンター104におけるカウント値はリセットされる。なお、上記各カウンター値は、突然プリンターの電源がオフにされた時点でもバックアップされるようになっており、それらの履歴が消去されないようにしている。
【0142】
図8は、図6のように(n-1)番目、n番目の定着ジョブが実行される場合における上記ニップ部Npの蓄熱量の指標値Rの変化を示すグラフであり、縦軸が蓄熱量の指標値R[秒]、横軸が経過時間[秒]を示す。
【0143】
時刻t1から(n-1)番目の定着ジョブが実行されるが、この時点で(n-2)番目以前の定着ジョブによる残留熱量を指標する補正回転時間Tδ(n-1)に、(n-1)番目の定着ジョブ(広義)のベルト回転時間の履歴が徐々に加算されていき、時刻t4で回転が停止した時点での指標値R(n-1)=Tr(n-1)+Tδ(n-1)となる。
【0144】
その後、回転停止時間が経過し、時刻t5に次のn番目の定着ジョブの実施が開始されると、その時点での補正回転時間Tδ(n)に、n番目の定着ジョブにおけるベルト回転時間Tr(n)が徐々に加算される。
【0145】
そしてn番目の定着ジョブ終了時におけるニップ部Npの蓄熱量を示す指標値R(n)=Tr(n)+Tδ(n)となる。補正回転時間Tδ(n)は、上記式(2)で求められる。
【0146】
このようにニップ部形成部材の蓄熱量の指標値は、基本的に直前の定着ジョブまでに実行された定着ジョブにおける定着ベルト311の回転時間の履歴の総和で求まり、先行する定着ジョブと次の定着ジョブとの間に定着ベルト311の停止時間が介在した場合には、当該停止時間(減衰寄与時間)の長さに応じて、それまでの回転時間の総和を補正した上で加算して求めることにより、現実のニップ部形成部材の蓄熱量をより反映した指標値(以下、「蓄熱指標値」という場合もある。)を得ることができる。
【0147】
(5)空回転時における目標設定温度および空回転時間の決定
上述のようにして、定着ベルト311の回転時間の履歴から広義の定着ジョブ終了時におけるニップ部形成部材の蓄熱指標値R(n)を求めることができ、これにより空回転停止時おけるスティックスリップ音の発生の蓋然性を判定することが可能となる。
【0148】
既述のようにスティックスリップ現象の発生率を示すパラメーターλ(式(1)参照)は、ニップ部を形成する部材の剛性率kが小さいほど大きくなり、当該剛性率kはニップ部を形成する部材の蓄熱量が多いほど(蓄熱指標値R(n)が大きいほど)、小さくなるという相関関係があるからである。
【0149】
図9における、実線は、従来の定着ジョブ終了後における空回転時および待機モードにおける制御部100により設定されるニップ部Npの目標温度(目標設定温度)と空回転時間の制御(制御A)を示すタイムチャートであり、横軸が経過時間、縦軸が目標温度をそれぞれ示している。
【0150】
同図に示すように、従来では、定着ジョブ実行時には、ニップ部Npを熱定着に必要な温度に維持するため加熱ローラー312の目標設定温度T1(例えば、170℃)に設定して加熱制御するが、後処理空回転時においては、待機モード時と同じT2(例えば、150℃)に設定して加熱制御されている。このときの後処理空回転時間taは、15数秒程度である。
【0151】
このように、定着ジョブ終了後も、定着時の温度T1よりも若干低いとは言え、比較的高い温度T2(150℃)で短時間しか空回転されないので、この空回転により、蓄熱指標値はほとんど減少しない。
【0152】
図10は、図6の時刻t7における後処理空回転とその停止制御の様子を拡大して示すタイムチャートである。横軸が経過時間の経過、縦軸が定着ベルト311の回転速度を示している。なお、本明細書において、「回転速度」を示す単位は、rpm(1分間における回転数)ではなく、走行速度(シートの送り速度:mm/s)で示すものとする。
【0153】
時刻t7に後処理空回転を開始する。このときの回転速度は、本例では100mm/sであり、十分大きいので、ニップ部形成部材の蓄熱量が大きくても(すなわち、蓄熱指標値が大きくても)、スティックスリップが発生するおそれがない。
【0154】
上述のように定着むらを防止するため、加圧ローラー32の定着ベルト311に対する圧接力が大きく設定されており、定着モーターM2への電力供給を停止すると、加圧ローラー32などが急停止する。
【0155】
高速回転から急停止させると、加圧ローラー32や定着ベルト311へのダメージが大きいため(高速回転からいきなり停止すると、特に、熱がオーバーシュートして高温になり、ニップを形成する材料に熱的なダメージを与えやすい)、段階的に減速する。すなわち、時刻t71に減速を開始し、時刻t72までに回転速度を一旦例えば50mm/sまで落とし、時刻t8において、定着モーターM2への電力供給を停止して、回転を一挙に停止させるように制御させる。比較的低速の回転速度50mm/sから急停止させても各部材に与えるダメージはそれほどない。
【0156】
もっとも、回転速度が50mm/sまで低下した時点で(時刻t72)において、そのまま回転を停止させるようにしてもよい。
【0157】
しかしながら、上記式(1)で説明したようにニップ部形成部材の蓄熱量が多いほど(蓄熱指標値が大きいほど)、また、Δμの指標値(耐久指標値)が大きいほどスティックスリップが発生しやすい。
【0158】
そのため、耐久指標値が一定以上の場合、蓄熱指標値の大きさによっては、例えば、図10に例示するように回転速度が減速途中の例えば70mm/s(時刻t73)のときにスティックスリップ音が発生し始める場合があり、その後、時刻t8に急停止するまでの間、スティックスリップ音が発生し続ける。
【0159】
そこで、本実施の形態では、このような不都合が生じる事態を避けるため、後処理空回転開始時t7における、耐久指標値が一定以上より大きく、かつ、蓄熱指標値が所定の閾値以上の場合には、後処理空回転の減速時におけるスティックスリップ音の発生を避けるため、当該後処理空回転における目標設定温度を下げると共に、当該後処理空回転の開始から減速するまでの時間を長くするようにした。
【0160】
すなわち、図9の太字の破線で示すに示すように定着ジョブが時刻t7に終了すると、設定温度を待機温度T2よりもさらに低いT3に設定し、後処理空回転時間を時刻t9まで延長する。
【0161】
本実施の形態では、従来の制御における空回転時間が15秒程度なのに対し60秒(1分)まで延長している(制御B)。
【0162】
後処理空回転時における設定温度が低い上、長時間回転されるため、この間に放熱が進み、空回転の減速を開始する時点(図10の時刻t71)では、蓄熱指標値が従来の制御Aの場合に比べて低下しており、そのため回転速度が50mm/sに低下した時点では、まだスティックスリップ音の発生条件を満足しておらず、その後、時刻t9に回転速度を瞬時に停止させることにより、スティックスリップ音を発生させる余地なく、定着ベルト311や加圧ローラー32などの回転を停止させることが可能となる。
【0163】
後処理空回転の停止後(時刻t9)、設定温度をT2まで上昇させて、待機モードに移行する(図9参照)。
【0164】
(6)制御系統
図11は、本実施の形態に係るプリンター1の全体の制御系統の構成を示すブロック図である。
【0165】
同図に示すように制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101と、RAM(Random Access Memory)102と、ROM(Read Only Memory)103と、カウンター104と、バックアップメモリ105とを含む。
【0166】
CPU101は、給送部10と、作像部20と、定着部30と、排出部40と、両面搬送部50と、ネットワークI/F110と相互に通信することができる。
【0167】
ROM103は、予め、プリントジョブを実行させるための制御プログラムなどを記憶している。
【0168】
CPU101は、外部の端末装置からネットワーク(例えばLANなど)を通じて送られて来るプリントジョブのデータをネットワークI/F110が受信すると、ROM103から、必要なプログラムを読み出して、RAM102をワークエリアとして、給送部10、作像部20、定着部30、排出部40、両面搬送部50の動作を統括的に制御して、受信したプリントジョブのデータに基づくプリントジョブを円滑に実行させる。
【0169】
カウンター104は、定着ベルト311のベルト回転時間Trや回転停止時間Tsをカウントする。バックアップメモリ105は、不揮発メモリからなり、上記した所定のタイミング(第1のタイミング)でカウンター104のカウント値や、印字枚数などをバックアップする。バックアップする際に印字枚数などは累積して加算されるが、ベルト回転時間Trや、回転停止時間Ts、補正回転時間Tδなどは上書きされていく。
【0170】
バックアップメモリ105にバックアップされると、カウンター104は、各カウント値をリセットし、次の定着ジョブについてのカウントをスタートする。
【0171】
CPU101は、温度センサー315の検出結果に基づき、ヒーター部314への電力の供給を制御してニップ部Npの温度を目標温度に維持させる。また、定着ジョブの実行に際して定着モーターM2の回転速度を制御する。
【0172】
また、バックアップメモリ105に記憶されている数値により算出される耐久指標値、蓄熱指標値に基づき、後処理空回転を停止させる際において、スティックスリップ音が発生しないように後処理空回転時における目標設定温度とその回転時間を制御する空回転制御を実行する。
【0173】
(7)空回転制御
図12は、制御部100で実行される上記空回転制御の手順を示すフローチャートである。
【0174】
まず、定着ジョブが終了したか否かを判定する(ステップS11)。CPU101は、RAM102から当該プリントジョブのジョブ情報を取得し、これにより指定された枚数だけプリントアウトが終了したときに定着ジョブが終了したと判定する。
【0175】
定着ジョブが終了しておれば(ステップS11で「Yes」)、次に、定着ベルト311の総走行距離が、所定の閾値Hth以上であるか否かを判定する(ステップS12)。総走行距離が、閾値Hth以上になっていない場合には(ステップS12で「No」)、次に、総印字枚数が、閾値Mth以上であるか否かを判定する(ステップS13)。
【0176】
上述の通り、総走行距離や、総印字枚数(定着ジョブのみに着目すれば、総通紙枚数)などの耐久指標値が大きくなれば、式(1)におけるΔμが大きくなるので、スティックスリップの発生可能性を示すパラメーターλが大きくなる。逆に言えば、総印字枚数が当該閾値未満であれば、定着ベルト311の走行速度はある程度低い状態で、ニップ部Npでの蓄熱量が多少大きくなっても、スティックスリップ音が発生するおそれがないような閾値HthやMth(第1閾値)が、機種ごとに事前に実験などにより決定され、ROM103内に格納されている。
【0177】
本実施の形態では、Hthは、例えば、500Kmに設定され、Mthは、例えば、50万枚に設定されている。
【0178】
本実施の形態では、通紙時の摩耗率の方がより大きく、Δμへの影響も大きいと考えられるので、まず、ステップS12において総走行距離により判定を行った後、ステップS13において総印字枚数で判定することにより、スティックスリップ音の発生の蓋然性をより的確に判断するようにしている。もっとも、どちらか一方の判定のみ(例えば、ステップS13のみの判定)であっても構わない。
【0179】
ステップS12およびステップS13の双方で「No」と判定された場合には、空回転停止時に段階的に減速しても、スティックスリップが発生するおそれがないと判断して、空回転時間を、装置に初期設定されている条件(初期条件)のままta[秒](例えば、15秒)に設定し、目標設定温度を待機モードにおける目標設定温度をT2[℃](例えば、150℃)に設定する。
【0180】
そして、空回転を実行してから、ステップS14で設定された時間が経過すると(ステップS18で「Yes」)、回転速度を一旦S1(図10の例では50mm/s)まで減速し(ステップS19)、その後、一気に回転を停止して(ステップS20)、待機モードに移行し(ステップS21)、加熱ローラー312の温度を待機温度T2のまま維持するように温調する。
【0181】
また、ステップS12もしくはステップS13のいずれかにおいて、「Yes」と判定された場合には、スティックスリップが発生する蓋然性が高くなっているので、ステップS15に移って、ニップ部形成部材の蓄熱指標値を取得する。
【0182】
図8のタイムチャートからも分かるように、n番目の狭義の定着ジョブの終了後の時刻t7に行われる後処理空回転の場合には、蓄熱指標値は、補正回転時間Tδ(n)に、n番目の定着ジョブに関するウォームアップ時間と狭義の定着ジョブの実行時間を加えたベルト回転時間(t7-t5)を加算した値となる。
【0183】
そして、ステップS16において、上記取得した蓄熱指標値が、閾値Tth[秒]以上であるか否かを判定する。
【0184】
この閾値Tth(第2閾値)として、定着ベルト311の回転速度が50mm/s以上であって100mm/s未満である場合に、スティックスリップが発生する蓋然性が高くなる数値を予め実験などにより求めて、ROM103に格納されている。本実施の形態では、閾値Tthは、60秒に設定している。
【0185】
指標値が、閾値Tth[秒]以上であれば(ステップS16で「Yes」)、空回転時間をta[秒]よりも大きなtb[秒](例えば、60秒)に設定すると共に、そのときの加熱ローラー312の加熱目標となる温度を、T2[℃]よりも低いT3[℃](例えば、140℃)に設定して加熱制御しながら空回転する(ステップS17)。
【0186】
そして、空回転を実行してから、ステップS17で設定された時間が経過すると(ステップS18で「Yes」)、回転速度を一旦S1まで減速し(ステップS19)、その後、一気に回転を停止して(ステップS20)、待機モードに移行し(ステップS21)、加熱ローラー312を待機温度T2[℃]まであげて維持させる。
【0187】
T3[℃]は、低ければ低いほどスティックスリップは生じにくいが、空回転停止後すぐに待機温度に復帰できるように、本実施の形態では待機温度よりも10℃~20℃程度低い値が望ましい。
【0188】
このように低いT3(℃)で、空回転としては比較的長時間空回転を継続することで、放熱によりニップ部形成部材の蓄熱指標値が低下するため、ニップ部形成回転体における剛性率が上昇し、定着ベルト311の回転速度を50mm/sまで減速してもスティックスリップ音の発生を抑制することができる。
【0189】
ステップS15で、蓄熱指標値が、Tth(秒)未満であれば(ステップS16で「No」)、減速してもまだスティックスリップ音が発生するおそれがないと判断してステップS14に移行し、目標設定温度T2[℃]でta[秒]だけ回転した後(ステップS18で「Yes」)、空回転の回転速度を段階的に減速し、回転が完全に停止させた後、待機モードに移行して(ステップS19、S20、S21)、空回転制御を終了する。
【0190】
なお、通常は、上記待機モード移行後、所定時間経過しても、次のプリントジョブを受け付けない場合には、ヒーター部314への電力供給を停止もしくは目標設定温度を待機温度より大幅に低くすることにより消費電力を節約するモード(スリープモード)に移行する。スリープモードに移行するまでの所定時間は、例えば、10~30分間程度であるが、当該装置の使用頻度に応じて装置管理者が任意に変更できる構成としてもよい。
【0191】
以上のように本実施の形態によれば、総走行距離や総印字枚数の指標値(耐久指標値)とニップ部形成部材の蓄熱指標値により、空回転停止処理におけるスティックスリップ音発生の蓋然性を判定して、その蓋然性が高い場合のみ、空回転時の目標設定温度を低くして長時間回転させた後に停止させて蓄熱量を低下させているので、ニップ部形成回転体に対するダメージを避けるため、空回転の停止時に段階的に減速しても、途中でスティックスリップ音が発生するのを効果的に抑止することができる。
【0192】
<変形例>
以上、実施の形態に基づいて説明してきたが、本開示は、上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
【0193】
(1)上記実施の形態では、式(1)に示すスティックスリップの発生条件のうち、Δμ(静止摩擦係数と動摩擦係数の差分)とニップ部形成部材における弾性材料の剛性率kの2つのパラメーターについてについて、それぞれの指標値(耐久指標値および蓄熱指標値)を求めて、これらの指標値と閾値とを比較してスティックスリップ音の発生の蓋然性を判定するようにしたが、これらの指標値に加えて、式(1)におけるW(荷重)を指標する指標値をパラメーターとして加えて判定すれば、より正確にスティックスリップ音の発生の蓋然性を判定することができると考えられる。
【0194】
前述のように、通常、加熱回転体と加圧回転体とは、ばねなどの弾性材料によって相手方に一定の圧接力(上記の荷重Wに相当)で付勢されており、ニップ部形成部材が加熱されて上記ばねの付勢力に抗して膨張することにより、ばねの変位量が増加して荷重が増加する。
【0195】
式(1)から分かるように、荷重(W)が増加すれば、パラメーターλの値も大きくなるので、スティックスリップ音が発生する蓋然性も高くなる。
【0196】
ニップ部Npにおける荷重が増加すると、目標とする回転速度を維持するために、より大きな駆動トルクで回転体(実施の形態では、加圧ローラー32)を回転駆動する必要がある。したがって、上記駆動トルクの変動を検出すれば、荷重Wの大きさを推定することができる。
【0197】
上記駆動トルクの変動を検出するためには、定着モーターM2(図1図11)の駆動軸などにトルクセンサーを設けてもよいが、本変形例では、所定の回転速度で加圧ローラー32を駆動する際に、定着モーターM2に供給する電流を検出する駆動電流検出部(不図示)により駆動電流の変化を取得して、この値に基づき駆動トルクの変動量を取得するようにしている。
【0198】
定着モーターM2の回転速度は、例えば、当該モーターM2に内蔵された光学式エンコーダーからの単位時間当たりの出力パルス数により取得することができる。制御部100は、当該出力パルスを参考して、定着モーターM2が一定の回転速度になるように供給する電流を制御する。
【0199】
駆動トルクが増大すれば、一定の回転速度を維持するための定着モーターM2に供給すべき電流量も増加するので、その変動量を検出すれば駆動トルクの変動量、ひいては、荷重の大きさを推定することができる。
【0200】
したがって、本変形例では、荷重の大きさを指標する指標値(第3指標値)として、定速回転制御時における定着モーターの駆動電流の変動量を指標値としている(以下、「荷重指標値」という)。
【0201】
なお、本変形例では、空回転の直前に実行された定着ジョブ実行時の定速回転制御時における駆動電流が荷重指標値として取得されるものとする。
【0202】
図13は、本変形例を実施するための制御部100のうち、駆動トルクの検出に関連のある部分のみを抽出したブロック図である。
【0203】
例えば、定着ジョブ実行時において、CPU101は、その際における一定の回転速度(システム速度)を得るための定着モーターM2の回転速度の値を、ROM103から取得して、モーター駆動回路106に指示する。モーター駆動回路106は、当該回転速度で定着モーターM2を回転させるべく所定の電流を供給する。
【0204】
定着モーターM2の回転速度は、回転速度検出部107(光学式エンコーダー)により検出され、モーター駆動回路106に入力される。これにより定着モーターM2の回転速度が、フィードバック制御されて目的の回転速度に制御される。
【0205】
駆動電流検出部108は、モーター駆動回路106から定着モーターM2に供給される電流値を検出する。トルクテーブル記憶部109は、不揮発性メモリからなり、当該駆動電流値の大きさと加圧ローラー32の駆動トルクとの関係を示すテーブルが、予め求められて格納されており、CPU101は、当該テーブルを参照して得られた駆動トルクの値を、当該定着ジョブの間サンプリングし、定着ジョブ終了時におけるサンプリング値もしくは、定着ジョブの間中のサンプリングした値の平均値をバックアップメモリ105内の所定のメモリ領域にバックアップさせる。
【0206】
この変形例における空回転制御では、例えば、図12のフローチャートにおいて、ステップS16とステップS17との間に荷重指標値の判定ステップ(荷重判定ステップ)を介在させる。
【0207】
この荷重判定ステップでは、直前に定着ジョブ実行時における駆動トルクの値をバックアップメモリ105から読み出して、当該駆動トルクの値が所定の閾値(第3閾値)(例えば、0.8Nm)以上になった場合には、スティックスリップ音の発生の蓋然性がより高まったと判定して、ステップS17に移行して、空回転時間tb、目標設定温度T3に設定して空回転するようにすればよい。
【0208】
駆動トルクが所定の閾値未満の場合には、ステップS14に移って空回転時間ta、目標設定温度T2に設定する。
【0209】
なお、本変形例では、Δμ(静止摩擦係数と動摩擦係数の差分)とニップ形成部材のk(剛性率)の2つのパラメーターの耐久指標値および蓄熱指標値に加えて、W(荷重)を指標する荷重指標値について判定してスティックスリップ音の蓋然性を判断し、空回転時における回転時間、目標設定温度を制御するようにしたが、耐久指標値と蓄熱指標値の2つの指標値のいずれか一つの判定に置き換えて、荷重指標値について判定を行うようにすることも可能である。
【0210】
すなわち、荷重指標値と蓄熱指標値による2段階の判定、もしくは、耐久摩指標値と荷重指標値による2段階の判定により、空回転時間および目標設定温度を制御するようにしても構わない。
【0211】
(2)上記(1)の変形例においては、式(1)における荷重Wのパラメーターとして、加圧回転体(加圧ローラー)の駆動トルクを駆動電流の変動量より求めて荷重指標値としたが、加圧回転体を加熱回転体に向けて付勢する引っ張りばね(もしくは圧縮ばね)の変位量を測定して、当該変位量とばね係数からばねの付勢力を取得することも可能である。
【0212】
図14は、この場合における定着部30の構成の一例を示す概略図である。
【0213】
加圧ローラー32の軸321は、その軸方向両端部において一対の揺動アーム33(図では手前側の揺動アームしか見えていない)に回転可能に軸支されており、揺動アーム33はその下端部において支軸331を介して定着部30のフレーム(不図示)に揺動可能に軸支される。
【0214】
揺動アーム33の上端部は、引張りばね34により矢印F方向に付勢されている。同じく揺動アーム33の上部には、検出板35が立設されており、変位検出計36により当該検出板35の位量を検出してサンプリングすることにより、その検出板35の位置の変動量が分かるので、これにより加圧回転体の膨張・収縮による引張りばね34の伸び量の変化を得ることができ、当該加熱引張りばね34の付勢力を計算により求めることができる。
【0215】
この場合には、引張りばね34の付勢力が得られれば、支軸331から軸321までの距離と支軸331から引張りばね34の係止位置341までの距離の比により、加圧ローラー32の定着ベルト311への相対的な圧接力を求めることができるので、これをそのまま荷重指標値として捉えることができる。
【0216】
本変形例では、ニップ部Npにおける荷重Wと検出板35の変位量との対応テーブルを予め求めて、ROM103などに格納し、このテーブルを参照することにより、実際の引張りばね34の伸びの変動量に基づく荷重Wを取得するようにしている。
【0217】
このようにして、直接、加圧ローラー32の定着ベルト311に対する荷重(圧接力)を指標値とする場合における閾値(第3閾値)は、例えば、100Nに設定される。
【0218】
当該取得された荷重が100Nより大きければ、スティックスリップ音の発生の蓋然性が十分高いと判断して、空回転時のける目標設定温度を低くすると共に、その回転時間を長くすることになる。
【0219】
なお、変位検出計36としては、光学式変位センサー、磁気式近接センサー、超音波変位センサー、差動トランス式変位センサーなどが適宜使用される。
【0220】
(3)駆動トルクとΔμとの関係
上記(2)の変形例においては、式(1)における荷重Wのパラメーターとして、加圧回転体(加圧ローラー)の駆動トルクを駆動電流の変動量より求めて荷重指標値としたが、駆動トルクの変動量は、Δμの変動量の指標値ともなり得る。
【0221】
すなわち、耐久劣化により加熱回転体(定着ベルト311)の表層のコーティングが剥がれて摩擦係数μが大きくなると、加圧回転体(加圧ローラー32)の駆動トルクも増加する傾向にあることが知られており、特に、駆動開始した瞬間における駆動トルクが大きくなるため、耐久劣化により動摩擦係数よりも静止摩擦力の方がより大きくなっていると解される。これによりΔμが大きくなって、スティックスリップ音が発生しやくなることが本願発明者によって知見されている。
【0222】
したがって、駆動トルクの変動量は、Δμの変動量の指標ともなり得る。具体的に、スティックスリップの発生の蓋然性を駆動トルクで判断する方法としては、例えば、駆動開始時の駆動トルク(静止摩擦力が影響)とその後回転中の駆動トルク(動摩擦力が影響)との差分を求めることによりΔμの変動量を推定し、これを予め決定した閾値と比較することにより行うことができる。
【0223】
もちろん、上述の通り荷重Wの変化も駆動トルクの変動として表れるので、駆動トルクを、荷重WおよびΔμの双方のパラメーターの指標として用いることが可能である。
【0224】
(4)加熱ローラーからの輻射熱などの影響について
上記実施の形態の定着部30のように熱源(ヒーター部314)とニップ部Npが離間しており、定着ベルト311を介してニップ部Npが加熱される構成においては、ニップ部形成部材の蓄熱量は、加熱制御中における定着ベルト311の回転時間が大きな影響を与えるため、当該ベルト回転時間の履歴に基づいてニップ部形成部材の蓄熱指標値を求めた。
【0225】
しかし、定着ベルト311が回転していなくても、加熱ローラー312からの輻射熱や空気を介しての熱伝導および対流(以下、「輻射熱等」という。)によって、定着部30全体が温まるため、これによって定着部材313や定着ベルト311、加圧ローラー32なども蓄熱されるので、このような輻射熱等による温まり具合を考慮することによってニップ部形成部材の蓄熱量を、より正確を反映した指標値を得ることが期待できる。
【0226】
今、ウォームアップ制御や空回転を含む広義の定着ジョブ実行時や、待機モード時におけるように加熱ローラー312(加熱部)を比較的高温になるように加熱制御する時間を、「加熱制御時間」と定義すると、この加熱制御時間の間は、加熱ローラー312からの輻射熱等による熱量がニップ部形成回転体にも付与されるので、この加熱制御時間の履歴を加算して総加熱制御時間を求めることにより、上記輻射熱等による温まり具合を示すパラメーター(第2パラメーター)になり得る。
【0227】
このような加熱制御時間は、加熱制御開始から、カウンター104(図11)によりカウントされ、例えば、ウォームアップの終了時、定着ジョブの終了時、加熱部への電力供給終了時のうちのいずれか一つを含むタイミング(第2のタイミング)、さらには後処理空回転の停止時、待機モードの終了時などのタイミングにおいて、バックアップメモリ105にバックアップされる。
【0228】
なお、この「加熱制御時間」は、必ずしも、加熱ローラー312の加熱時間をすべて、計測する必要はなく、狭義の定着ジョブ実行時の設定温度が一番高く、ニップ部形成部材の蓄熱量に与える影響が一番大きいと考えられるので、少なくともこの定着ジョブの実行時間における加熱制御の時間を選択的に計測するようにしても構わない。
【0229】
ところが、加熱ローラー312は、常時加熱制御されているわけではなく、通常は待機モードに移行後所定時間経過すると、節電のため、いわゆるスリープモードを実行する。
【0230】
このスリープモード実行時には、加熱制御を完全に停止するか(一切加熱しない)、もしくは、加熱しても極めて低い温度に維持されるため、輻射熱等による温まり具合が徐々に低下していき、当該スリープモード開始時における総加熱制御時間に補正を加えた時間(以下、「補正制御時間」という。)を、その後の加熱制御時間に加算して現在の総加熱制御時間を、輻射熱等による温まり具合(蓄熱量)の指標値として求めるのが望ましい。
【0231】
今、n番目の定着ジョブ(広義)の実行に際して実行される加熱制御時間をCt(n)とし、それ以前の定着ジョブに関連して実行され、スリープモードの時間経過により補正された前回以前の定着ジョブ実行における総加熱制御時間に補正を加えた補正制御時間をCδ(n)とし、さらにn番目の定着ジョブに関連して実行された加熱制御終了時点での定着部30全体の温まり具合を指標する総加熱制御時間をS(n)とすると、上記ベルト回転時間で考察したのと同様な考え方により、S(n)=Ct(n)+Cδ(n)と表すことが可能である。
【0232】
ここで、Cδ(n)は、前回の待機モード終了時にバックアップした総加熱制御時間P(n-1)をその後の経過時間(スリープ時間を含む)による放熱状態を鑑みて補正したものであり、本変形例では、バックアップ後のウォームアップ開始時に温度センサー315で検出された加熱ローラー312の温度に基づき補正するようにしている。
【0233】
加熱ローラー312の温度の低下が、前回バックアップした時点からの放熱量を反映していると考えられるからである。
【0234】
なお、図2にも示すように、厳密に言えば、温度センサー315は、定着ベルト311の表面温度を検出しているが、温度センサー315の検出位置では、定着ベルト311と加熱ローラー312とがほぼ密着しており、かつ、定着ベルト311の厚みが小さいので温度センサー315の検出温度を加熱ローラー312の温度とみなすことができる。
【0235】
図15は、前回の定着ジョブにおける待機モード終了時にバックアップされた総加熱制御時間S(n-1)を、その後のウォームアップ(WU)開始における加熱ローラー312の表面温度に基づき補正した補正値Cδ(n)を示すテーブルである(なお、同図では、簡略化のため一部表記を省略している。)。
【0236】
例えば、本例では、ウォームアップ開始の加熱ローラー312の温度が、30℃以下の場合にはほぼ室温まで加熱ローラー312の温度が低下しているので、それ以前の加熱制御により蓄熱された熱量は、ほぼ放熱されたものと見做して、補正制御時間Cδ(n)は、バックアップされたS(n-1)の大きさに拘わらず、全て「0」となっている。
【0237】
そして、ウォームアップ開始時の加熱ローラー312の表面温度が、30℃から徐々に上昇するに連れて(すなわち、前回のスリープモードに移行してウォームアップを開始するまでの経過時間が少なくなるに連れて)、放熱量も少なくなり、前回バックアップされた総加熱制御時間S(n-1)の大きさに応じて、補正制御時間Cδの値も大きくなっていく。
【0238】
図16は、上記図15のテーブルをグラフ化したものである。同グラフにおいて、横軸が、ウォームアップ(WU)開始時における加熱ローラー312の表面温度[℃]を示し、縦軸が、当該表面温度補正された後の補正制御時間Cδ(n)の値を示す。
【0239】
グラフBU0~BU9は、それぞれ、補正前の前回の総加熱制御時間S(n-1)の時間[S]が、1000、800、600、480、300、210、150、90、30、0である場合の、補正制御時間Cδ(n)の変化を示している。
【0240】
したがって、図15に示すような相関関係を示すテーブル(第2テーブル)や、近似式(第2演算式:図16に示す総加熱制御時間毎のグラフに基づく関係式。)を予め求めて、例えばROM103に記憶させておけば、前回スリープモード移行直前にバックアップメモリ105にバックアップされた総加熱制御時間SS(n-1)と、n回目の定着ジョブにおけるウォームアップ開始時における加熱ローラー312の温度とに基づき、補正制御時間Cδを求めることができる。
【0241】
また、ウォームアップ開始後の加熱制御時間Ct(n)は、n回目の定着ジョブに関連して行われる加熱制御時間であり、n回目の定着ジョブに関連してバックアップされる時間であるから、これにより、加熱ローラー312の輻射熱によるニップ部形成回転体の温まり具合を示す指標としての総加熱制御時間S(n)=Ct(n)+Cδ(n)を求めることができる。
【0242】
上述のように、本変形例では、ニップ部形成部材の蓄熱指標値を、定着ベルト311の総回転時間R(n)によって示されるパラメーター(第1パラメーター)に、加熱ローラー312(加熱源)に対する総加熱制御時間S(n)によって示されるパラメーター(第2パラメーター)を加算して求めることにより、特に、図2にように、加熱ローラー312を使用し、加熱源である加熱ローラー312の加熱位置とニップ部Npとの距離が離されている場合には、より正確な蓄熱指標値を得ることが可能になると解される。
【0243】
なお、通常の制御においては、ヒーター部314の加熱制御を実施していない状態で定着ベルト311が回転することがない場合は、「加熱制御時間」>「ベルト回転時間」になるので、加熱制御時間とベルト回転時間の算出による不整合が生じる場合があり得るので、次のように調整するようにしても構わない。
【0244】
(i)例えば、加熱制御時間のカウントを開始するときに、装置がある程度冷却された状態であれば(この際、例えば、温度センサー315の検出温度が参照される)、一旦、ベルト回転時間の履歴をリセットしてもよい。つまり、補正回転時間Tδを「0」に設定する。
【0245】
装置温度が低ければ、ニップ部Npの残存蓄熱量は十分少なくなっており、過去の回転時間の履歴を考慮する必要性がなくなるからである。
【0246】
(ii)また、例えば装置がある程度冷却されていない状態で、電源を断続的にオフオン制御して加熱制御を開始する場合には、「実質的な加熱制御時間(通電をオンにしている時間)」<「ベルト回転時間」の関係になる場合もあるので、回転時間の履歴を示す補正回転時間Tδの代わりに、補正制御時間Cδの値を代入するようにして、不整合を回避するようにしてもよい。
【0247】
上記(i)、(ii)のような第1パラメーターと第2パラメーター間の不整合を回避するための調整は、特に、ウォームアップ制御開始のタイミングで行うと効果的である。
【0248】
すなわち、ウォームアップ制御開始時において、温度センサー315の温度が例えば、50℃未満の場合には、ベルト回転時間の履歴を示す補正ベルト回転時間Tδを「0」にし、その後のベルト回転時間を第1パラメーターとする。
【0249】
また、ウォームアップ制御開始時において補正制御時間Cδが補正回転時間Tδより小さければ、補正回転時間Tδに代わりに補正制御時間Cδを用いて、第1パラメーターを求める。
【0250】
なお、厳密に言えば、この総加熱制御時間はあくまでも輻射等によるニップ部形成部材の温まり具合を指標しているので、上記のように定着ベルト311の回転を介して直接ニップ部Npを加熱する場合に比べて、ニップ部Npの蓄熱量の増大に与える貢献の程度が異なる。
【0251】
そこで、輻射熱等によってニップ部形成部材に蓄積される蓄熱量を、ベルト回転時間に換算して、上記実施の形態で求めた指標値R(n)に加算することにより、ニップ部Npの現在の蓄熱量をより正確に反映した指標値を得るようにしてもよい。
【0252】
輻射熱等によってニップ部Npに蓄積される蓄熱量の指標値(総加熱制御時間)を、上記実施の形態におけるベルト回転時間による蓄熱量の指標値(総回転時間)に換算するには、例えば、加熱ローラー312が、目的の温度に加熱制御されているときにおける輻射熱等による単位時間当たりのニップ部形成回転体に付与する熱量と、ベルト回転による単位時間当たりのニップ部形成回転体に付与する熱量とを、それぞれ予め実験もしくはシミュレーションにより求めておき、両者の単位時間当たりの付与熱量の比率を求めて、当該比率を「総加熱制御時間」に乗じて、「総回転時間」による指標値に変換するようにすればよい。
【0253】
(5)上記実施の形態では、総回転時間R(n)(第1パラメーター)を用いてニップ部形成部材の蓄熱指標値とし、上記変形例(3)では、定着ベルト311の総回転時間R(第1パラメーター)に加えて、総加熱制御時間S(n)(第2パラメーター)をも用いて、ニップ部形成部材の蓄熱指標値としたが、例えば、定着ベルト311の代わりに定着ローラーを用いて、加熱源を定着ローラー内に配置して、定着ローラーと加圧ローラー間で、ニップ部Npを形成する場合には、総回転時間で示される第1パラメーターがなくても、総加熱制御時間で示される第2パラメーターのみを、蓄熱指標値とすることも可能である。
【0254】
(6)上記実施の形態では、空回転の停止時において、まず、加圧ローラー32の回転速度を50mm/sに減速し、その後一気に完全停止するようにしたが、段階的に減速するのであれば、例えば、70mm/s、40mm/sと減速した後、一気に停止させるような場合であってもよい。
【0255】
この場合には、完全停止直前の回転速度(上記の例では40mm/s)の段階で、スティックスリップ音が発生しない範囲までニップ部Npの蓄熱量が十分下がるように、空回転時における目標加熱温度を低くし、および/または、回転時間をより長くする。
【0256】
なお、段階的な減速における最後の回転停止時において加圧ローラー32などの慣性により、定着モーターM2への電力供給を停止しても、加圧ローラー32などの回転が即時停止しないような場合も有り得る。これにより徐々に速度が低下しながら回転が停止すると、上記のようにニップ部形成部材の蓄熱量を低減させても、一瞬スティックスリップ音が発生するおそれがあるので、最後には一気に回転を停止させたい。そのため、別途ブレーキ手段を設けるようにしてもよい。
【0257】
この際におけるブレーキ手段は、特に限定されず、例えば、加圧ローラー32の回転軸にブレーキローターを固着し、一対のブレーキパッドを、ソレノイドなどの適当なアクチュエーターによって付勢して、前記ブレーキローターを挟み込んで、加圧ローラー32の回転を強制的に制動する構成(ディスクブレーキ)や、あるいは、定着モーターM2の回転停止時に一瞬だけ逆回転の駆動トルクを発生するように電力供給制御するようにしてもよい。
【0258】
(7)上記実施の形態では、本開示に係る画像形成装置をタンデム型カラープリンターに適用した場合の例を説明したが、ニップ部を形成して熱定着する定着装置を有する電子写真方式の画像形成装置であれば、例えば複写機、ファクシミリ装置、MFP(Multiple Function Peripheral)であってもよいし、モノクロ印刷専用機であってもよい。
【0259】
(8)また、定着装置も、上記実施の形態に限られず、ニップ部Npを形成するため定着ベルト311をバックアップする樹脂パッド3131(図2)の代わりに、定着ローラーを配しても構わない。
【0260】
さらには、加熱回転体は、定着ベルトに限られず、例えばローラー状(定着ローラー)でも良い。この場合には、定着ローラーと加圧ローラーを「ニップ部形成部材」と捉えることができる。なお、ベルト状の構成と同様に、ヒーターなどの熱源は、ローラー状の加熱回転体の1周のうち、回転方向にニップ部Npとは離間している領域(回転方向にニップ部Npとは異なる位置に存する部分)を加熱する位置に配置されることにより、上述の実施の形態における空回転の停止制御を有効に適用できる。
【0261】
また、上記実施の形態では、定着ベルト(加熱回転体)に、加圧部材として加圧ローラー(加圧回転体)を圧接させてニップ部Npを形成するようにしたが、場合によっては加圧パッドのような加圧部材を圧接してニップ部Npを形成するようにしてもよい。
【0262】
(9)上記実施の形態における各部材の大きさ、形状、材料、個数などは一例であり、装置構成に応じて適した大きさ、形状、材料、個数等が予め決められる。また、ニップ部Npの蓄熱量を指標する指標値を求めることができる式であれば、例えば、厳密に上記の式(2)などに限定されず、別の複雑な近似式を用いることも可能である。
【0263】
また、上記実施の形態で挙げた各指標値に対する閾値の数値もあくまでも一例であって、機種に応じて、あるいは仕様に応じて、予め実験などにより適切な数値が求められてROM103等に格納される。
【0264】
本開示の効果を得られる範囲で、定着部などの各部の機構や各部材を別の機構や別の形状の部材に代えて適用することとしても良い。
【0265】
≪補足≫
以上、本発明に係る定着装置および画像形成装置について、実施の形態および変形例に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態および変形例に限定されるものではない。上記実施の形態および変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態および変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0266】
本開示は、未定着画像が形成されたシートをニップ部に通紙して熱定着する定着装置を有する画像形成装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0267】
1 プリンター
20 作像部
30 定着部
31 加熱ユニット
32 加圧ローラー(加圧部材)
33 揺動アーム
34 引張りばね
36 変位検出計
100 制御部(第1取得部、第2取得部、第3取得部としても機能)
101 CPU
104 カウンター
105 バックアップメモリ(回転時間記憶部、制御時間記憶部)
106 モーター駆動回路
107 回転速度検出部
108 駆動電流検出部
109 トルクテーブル記憶部
311 定着ベルト(加熱回転体)
312 加熱ローラー(加熱部)
313 定着部材
3131 樹脂パッド
314 ヒーター部
315 温度センサー(温度検出部)
Np ニップ部
Nd ニップ幅
M2 定着モーター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16