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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】センサー用光導波路
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/125 20060101AFI20240709BHJP
   G01B 11/16 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G02B6/125 301
G01B11/16 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020135265
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030931
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】今井 洋武
(72)【発明者】
【氏名】藤原 誠
(72)【発明者】
【氏名】兼田 幹也
(72)【発明者】
【氏名】寺田 信介
(72)【発明者】
【氏名】木下 遼太
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-190910(JP,A)
【文献】中国実用新案第203011351(CN,U)
【文献】特開2005-084347(JP,A)
【文献】特開2017-022278(JP,A)
【文献】特開2004-198116(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0232532(US,A1)
【文献】VISHNEVSKIY, A. A. et al.,Correction of dynamic errors of fiber-optic pressure sensor based on estimation of nonlinearity value of membrane stress-strain behavior and adaptive method,2017 2nd International Ural Conference on Measurements (UralCon),2017年10月,DOI: 10.1109/URALCON.2017.8120730
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12 - 6/14
G01B 11/00 - 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体に取り付けられ、前記被着体の変形を検出するセンシングシステムに用いられるセンサー用光導波路であって、
入射端を有する入射コア部と、
出射端を有する出射コア部と、
終端を有するセンシングコア部と、
前記センシングコア部を前記入射コア部と前記出射コア部とに分岐させつつ接続する分岐部と、
が互いに一体になって構成されているシート体、
を備え、
前記センシングコア部の長さは、前記入射コア部の長さおよび前記出射コア部の長さの双方より長く、
前記シート体の一方の面の前記センシングコア部に対応する部分が前記被着体に接着されることを特徴とするセンサー用光導波路。
【請求項2】
前記分岐部は、前記センシングコア部から伝搬してくる光について、前記出射コア部の分岐比が前記入射コア部の分岐比より大きくなるように構成されている請求項1に記載のセンサー用光導波路。
【請求項3】
前記出射コア部の径は、前記入射コア部の径より大きい請求項2に記載のセンサー用光導波路。
【請求項4】
前記終端は、前記センシングコア部を構成する材料と外部空間との界面を含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載のセンサー用光導波路。
【請求項5】
前記終端は、前記センシングコア部よりも単位長さ当たりの伝搬損失が大きい終端コア部を含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載のセンサー用光導波路。
【請求項6】
前記センシングコア部が第1軸に沿って延在しているとき、
前記分岐部を境にして前記第1軸の一端側に前記センシングコア部が位置し、
前記分岐部を境にして前記第1軸の他端側に前記入射コア部および前記出射コア部が位置している請求項1ないし5のいずれか1項に記載のセンサー用光導波路。
【請求項7】
前記シート体と、
前記シート体の一方の面の前記センシングコア部に対応する部分に設けられている接着層と、
備える請求項に記載のセンサー用光導波路。
【請求項8】
前記入射コア部に設けられ、前記分岐部から前記入射端に向かう光の光量を減少させる減衰部を有する請求項1ないしのいずれか1項に記載のセンサー用光導波路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサー用光導波路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建築物のような構造物の健全性を評価するため、構造物の歪を計測するセンシングシステムが開示されている。このセンシングシステムは、光源と、受光部と、光分岐器と、光学フィルターと、センサーと、を備えている。このようなセンシングシステムでは、センサーを構造物に取り付け、センサーにおける透過光の損失量に基づいて、構造物の歪を計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-010449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のセンシングシステムでは、部品同士が光ファイバーを介して結合されている。このため、部品点数が多くなり、製造時の作業工数が多いという課題がある。また、部品同士の結合構造を伴うため、センシングシステムの小型化に限界がある。
【0005】
本発明の目的は、部品点数の少数化および小型化が図られたセンシングシステムを実現可能なセンサー用光導波路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記(1)~(8)の本発明により達成される。
(1) 被着体に取り付けられ、前記被着体の変形を検出するセンシングシステムに用いられるセンサー用光導波路であって、
入射端を有する入射コア部と、
出射端を有する出射コア部と、
終端を有するセンシングコア部と、
前記センシングコア部を前記入射コア部と前記出射コア部とに分岐させつつ接続する分岐部と、
が互いに一体になって構成されているシート体、
を備え、
前記センシングコア部の長さは、前記入射コア部の長さおよび前記出射コア部の長さの双方より長く、
前記シート体の一方の面の前記センシングコア部に対応する部分が前記被着体に接着されることを特徴とするセンサー用光導波路。
【0007】
(2) 前記分岐部は、前記センシングコア部から伝搬してくる光について、前記出射コア部の分岐比が前記入射コア部の分岐比より大きくなるように構成されている上記(1)に記載のセンサー用光導波路。
【0008】
(3) 前記出射コア部の径は、前記入射コア部の径より大きい上記(2)に記載のセンサー用光導波路。
【0009】
(4) 前記終端は、前記センシングコア部を構成する材料と外部空間との界面を含む上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のセンサー用光導波路。
【0010】
(5) 前記終端は、前記センシングコア部よりも単位長さ当たりの伝搬損失が大きい終端コア部を含む上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のセンサー用光導波路。
【0011】
(6) 前記センシングコア部が第1軸に沿って延在しているとき、
前記分岐部を境にして前記第1軸の一端側に前記センシングコア部が位置し、
前記分岐部を境にして前記第1軸の他端側に前記入射コア部および前記出射コア部が位置している上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のセンサー用光導波路。
【0013】
(7) 前記シート体と、
前記シート体の一方の面の前記センシングコア部に対応する部分に設けられている接着層と、
備える上記(6)に記載のセンサー用光導波路。
【0014】
(8) 前記入射コア部に設けられ、前記分岐部から前記入射端に向かう光の光量を減少させる減衰部を有する上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のセンサー用光導波路。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、部品点数の少数化および小型化が図られたセンシングシステムを実現可能なセンサー用光導波路が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係るセンサー用光導波路を用いたセンシングシステム100の概略を示す平面図である。
図2図1に示すセンシングシステムの断面図である。
図3図1に示すセンシングシステムの動作を説明する平面図である。
図4図1に示すセンサー用光導波路の部分拡大斜視図である。
図5図1に示すセンサー用光導波路の部分拡大図である。
図6図1に示す終端の具体的な構造を模式的に示す図である。
図7図1に示す終端の具体的な構造を模式的に示す図である。
図8図5に示すセンサー用光導波路の変形例である。
図9】第2実施形態に係るセンサー用光導波路を示す平面図である。
図10】第3実施形態に係るセンサー用光導波路を示す平面図(a)、前記平面図のB2-B3断面図(b)、および前記平面図のB1-B3断面図(c)である。
図11】第4実施形態に係るセンサー用光導波路を示す平面図(a)、前記平面図のC2-C3断面図(b)、および前記平面図のC1-C3断面図(c)である。
図12】第5実施形態に係るセンサー用光導波路を示す平面図(a)、前記平面図のD2-D3断面図(b)、および前記平面図のD1-D3断面図(c)である。
図13】第6実施形態に係るセンサー用光導波路を示す平面図である。
図14】第7実施形態に係るセンサー用光導波路を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のセンサー用光導波路について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0018】
1.センシングシステム
まず、後述する第1実施形態に係るセンサー用光導波路1を用いたセンシングシステム100について説明する。
【0019】
図1は、第1実施形態に係るセンサー用光導波路1を用いたセンシングシステム100の概略を示す平面図である。図2は、図1に示すセンシングシステム100の断面図である。図3は、図1に示すセンシングシステム100の動作を説明する平面図である。なお、各図では、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸およびZ軸を設定し、矢印で示している。また、Z軸を表す矢印の先端側を「上」といい、基端側を「下」という。
【0020】
図1に示すセンシングシステム100は、センサー用光導波路1と、光を射出する発光素子102、光を受光する受光素子104、および、受光量に基づいて検出結果を出力する制御部106を備える。
【0021】
センサー用光導波路1は、図2に示すように、被着体9に貼り付けられた状態で使用される。これにより、被着体9の機械的な変化を検出するセンシングシステム100を実現する。具体的には、このセンシングシステム100では、被着体9にセンサー用光導波路1を貼り付けた状態で、図1および図2に示すように、発光素子102からセンサー用光導波路1に入射光L1を連続的または断続的に入射する。
【0022】
このように入射光L1を入射している状態で、被着体9の表面に機械的な変化、例えば図3に示す亀裂91等が発生すると、センサー用光導波路1の一部が破断し、破断面8が生じる。そうすると、破断面8で入射光L1が反射し、反射光L2が発生する。この反射光L2を受光素子104で検出し、制御部106で必要な解析を行う。これにより、被着体9の機械的な変化を検出するセンシングシステム100が実現される。
【0023】
発光素子102は、センサー用光導波路1の入射端1410に入射光L1を入射する。発光素子102としては、例えば、半導体レーザー、ガスレーザー、発光ダイオード等が挙げられる。
【0024】
受光素子104は、センサー用光導波路1の出射端1420から出射した反射光L2を受光し、制御部106に受光信号を出力する。受光素子104としては、例えば、フォトダイオード、フォトトランジスター等が挙げられる。
【0025】
制御部106は、受光量に基づいて検出結果を出力する。このような制御部106は、例えば、内部バスで互いに接続されたプロセッサー、メモリーおよび外部インターフェース等を備えるデバイスで構成される。制御部106は、メモリーに記憶されているプログラムをプロセッサーで実行することにより動作する。動作内容としては、例えば、受光量を定量的または定性的に報知する動作の他、メモリーに記憶させておいた、受光量と被着体9に過去に発生した変化との関係に基づき、被着体9の異常の有無または異常内容を推定して報知する動作等が挙げられる。
【0026】
2.センサー用光導波路
2.1.第1実施形態
次に、第1実施形態に係るセンサー用光導波路について説明する。
【0027】
図4は、図1に示すセンサー用光導波路1の部分拡大斜視図である。
本実施形態に係るセンサー用光導波路1は、図2および図4に示すように、下方から、第1カバー層18、クラッド層11、コア層13、クラッド層12、および第2カバー層19がこの順で積層されてなるシート体10を備える。各層は、X-Y面と平行に広がっている。コア層13中には、図1に示すように、長尺状のコア部14と、コア部14の側面に隣接する側面クラッド部15と、が形成されている。
【0028】
図1に示すセンサー用光導波路1の外縁の形状は長方形であるが、この形状は特に限定されず、正方形、六角形のような多角形、真円、楕円、長円のような円形、その他の形状であってもよい。そして、センサー用光導波路1のうち、Y軸と直交する2つの端面に、コア部14の両端が露出している。
【0029】
センサー用光導波路1は、図2に示すように、第1カバー層18の下面を接着面101として、被着体9に接着するように用いられる。接着面101と被着体9との間には、必要に応じて図2に示す接着層2を介在させてもよい。接着層2の接着性を利用して、センサー用光導波路1を被着体9に固定することができる。
以下、センサー用光導波路1の各部についてさらに詳述する。
【0030】
2.1.1.コア層
コア部14は、図4に示すように、その側面が、側面クラッド部15およびクラッド層11、12で囲まれている。そして、コア部14の屈折率は、側面クラッド部15やクラッド層11、12の屈折率よりも高くなっている。これにより、コア部14に光を閉じ込めて伝搬させることができる。
【0031】
コア層13において、コア部14の光路に直交する面内における屈折率分布は、いかなる分布であってもよく、例えば屈折率が不連続的に変化した、いわゆるステップインデックス(SI)型の分布であってもよく、屈折率が連続的に変化した、いわゆるグレーデッドインデックス(GI)型の分布であってもよい。
【0032】
Y-Z面によるコア部14の断面形状、つまりコア部14の横断面形状は、特に限定されないが、例えば、真円、楕円形、長円形等の円形、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形、その他の異形状が挙げられる。
【0033】
コア層13の平均厚さは、特に限定されないが、1~200μm程度であるのが好ましく、5~100μm程度であるのがより好ましく、10~70μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、コア部14に必要とされる光学的特性および機械的強度が確保される。
【0034】
コア層13の構成材料(主材料)としては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料等が挙げられる。なお、樹脂材料には、異なる組成のものを組み合わせた複合材料も用いられる。また、本明細書において「主材料」とは、構成材料の50質量%以上を占める材料のことをいい、好ましくは70質量%以上を占める材料のことをいう。
【0035】
2.1.2.クラッド層
クラッド層11、12の平均厚さは、それぞれ1~200μm程度であるのが好ましく、3~100μm程度であるのがより好ましく、5~60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、クラッド層11、12に必要とされる光学的特性および機械的強度が確保される。
【0036】
また、クラッド層11、12の主材料は、例えば、前述したコア層13の構成材料として挙げた材料から適宜選択して用いられる。
【0037】
なお、クラッド層11、12は、必要に応じて設けられればよく、省略されてもよい。このとき、例えばコア層13が外気(空気)に曝されていれば、その外気がクラッド層11、12として機能する。
【0038】
本実施形態に係るセンサー用光導波路1は、コア層13と第1カバー層18との間に設けられているクラッド層11と、コア層13と第2カバー層19との間に設けられているクラッド層12と、を有しているので、コア部14とその外部との間で、安定した屈折率差を形成し、維持することができる。このため、コア部14の伝送効率をより高めることができる。
【0039】
クラッド層11、12のいずれか一方または双方は、側面クラッド部15と一体になっていてもよい。
【0040】
2.1.3.カバー層
第1カバー層18は、クラッド層11の下面に設けられている。第2カバー層19は、クラッド層12の上面に設けられている。このような第1カバー層18および第2カバー層19を設けることにより、コア層13やクラッド層11、12を保護し、外部環境等に起因したコア部14の伝送効率の低下を抑制することができる。
【0041】
第1カバー層18および第2カバー層19の平均厚さは、特に限定されないが、1~200μm程度であるのが好ましく、3~100μm程度であるのがより好ましく、5~50μm程度であるのがさらに好ましい。
【0042】
第1カバー層18および第2カバー層19は、互いに同じ構成であっても互いに異なる構成であってもよい。例えば、第1カバー層18および第2カバー層19は、平均厚さが互いに同じでもよいし、互いに異なっていてもよい。第1カバー層18および第2カバー層19の少なくとも一方は、必要に応じて設けられればよく、省略されていてもよい。
【0043】
第1カバー層18および第2カバー層19の主材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂を含む材料が挙げられる。
【0044】
このうち、第1カバー層18および第2カバー層19の主材料は、それぞれポリイミド系樹脂であるのが好ましい。ポリイミド系樹脂は、弾性率が比較的大きく、熱分解温度も高いことから、外力や外部環境に対する十分な耐久性を有している。
【0045】
なお、第1カバー層18および第2カバー層19の構成材料には、必要に応じて、フィラー、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、劣化防止剤、帯電防止剤等が添加されていてもよい。このうち、フィラーを添加することにより、第1カバー層18および第2カバー層19の熱膨張係数を調整することができる。
【0046】
2.1.4.接着層
図2に示す接着層2は、センサー用光導波路1を被着体9に貼り付けるとき、双方の間を接着する。接着層2は、被着体9に設けられていてもよいが、図2に示すように、あらかじめセンサー用光導波路1側に設けておくようにしてもよい。すなわち、センサー用光導波路1は、第1カバー層18の下面に設けられた、未硬化の接着層2を備えていてもよい。これにより、センサー用光導波路1を被着体9に貼り付ける作業を効率よく行うことができる。
【0047】
接着層2を構成する接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤の他、ポリエステル系、変性オレフィン系の各種ホットメルト接着剤等が挙げられる。
【0048】
未硬化の接着層2は、未硬化の状態が液状であっても、固形または半固形であってもよく、硬化反応が一部進行している状態であってもよい。また、接着層2を構成する接着剤が硬化性材料を含む場合の硬化原理は、熱硬化性であっても、光硬化性であってもよい。さらに、未硬化の接着層2は、第1カバー層18の下面全体に設けられていてもよいし、一部のみに設けられていてもよい。硬化後の接着層2の厚さは、特に限定されないが、1~100μmであるのが好ましく、5~60μmであるのがより好ましい。
【0049】
2.1.5.分岐パターン
図2に示すコア層13は、途中で2つに分岐するパターンを有するコア部14を備えている。具体的には、コア部14は、図1に示すように、入射端1410を有する入射コア部141と、出射端1420を有する出射コア部142と、終端1430を有するセンシングコア部143と、これらを接続する分岐部161と、を有している。
【0050】
このうち、センシングコア部143は、Y軸に沿って延在している。センシングコア部143の平面視形状は、直線であっても、曲線であっても、双方を組み合わせた形状であってもよい。図1では、センシングコア部143が、Y軸と平行な直線状に延びている。なお、センシングコア部143の平面視形状が曲線を含む場合、センシングコア部143のうち、分岐部161に隣接する部位の延在方向がY軸と平行であるものとする。
【0051】
入射端1410および出射端1420は、シート体10の互いに同一の端面に露出している。これにより、発光素子102と受光素子104とを互いに近づけることができ、素子の実装作業が容易になる。なお、発光素子102とセンサー用光導波路1との接続、および、受光素子104とセンサー用光導波路1との接続には、各種コネクターを介するようにしてもよい。また、接続部には、必要に応じて、光を集束するレンズが設けられていてもよい。
【0052】
発光素子102から射出された入射光L1が入射端1410から入射すると、入射光L1は、分岐部161を介して、センシングコア部143に伝搬する。そして、終端1430で終端処理される。終端処理とは、終端1430で入射光L1を減衰、吸収、散乱等を生じさせ、終端1430への入射光L1よりも戻り光の光量を少なくする処理のことをいう。図1では、一例として、外部に放射される放射光L3を図示している。このような終端処理により、入射端1410から入射した入射光L1は、平常時、終端1430で反射することなく、センシングコア部143を一方向に伝搬する。この状態が、平常時における光の伝搬状態である。
【0053】
被着体9に貼り付けられることにより、センサー用光導波路1は、被着体9の表面から機械的な影響を敏感に受けることになる。被着体9の表面に例えば亀裂等の機械的な変化が発生すると、それに伴ってセンサー用光導波路1には破断が発生する。以下、被着体9の表面の機械的な変化を「変形」という。図3では、一例として、被着体9に発生した変形である亀裂91がセンサー用光導波路1に進展し、センシングコア部143を途切れさせる破断面8が生じている状態を示している。この破断面8は、空隙との界面であるため、センシングコア部143に入射した入射光L1は、破断面8で反射し、反射光L2を発生させる。このような状態は、被着体9の変形が被着体9の異常であると仮定した場合、異常時における光の伝搬状態ということができる。
【0054】
破断面8で発生した反射光L2は、センシングコア部143を入射光L1とは逆方向に伝搬する。そして、分岐部161を介して、出射コア部142に伝搬する。そして、出射端1420から出射する反射光L2を受光素子104で受光する。受光素子104は、反射光L2の光量に応じた受光信号を出力する。この受光信号をモニターすることにより、反射光L2の光量を測定し、破断面8の発生の有無や破断面の大きさを特定することができる。これにより、被着体9の表面に変形が発生したことを間接的に検出することができる。
【0055】
分岐部161は、入射コア部141と、出射コア部142と、センシングコア部143と、を接続する部位である。この分岐部161は、入射コア部141から分岐部161に向かう入射光L1を少なくともセンシングコア部143側に入射させ、センシングコア部143から分岐部161に向かう反射光L2を、少なくとも出射コア部142側に入射させる機能を有している。
【0056】
したがって、分岐部161では、入射光L1を出射コア部142にも入射させることがあってもよいが、入射光L1について、出射コア部142に比べてセンシングコア部143の分岐比が大きいことが好ましい。これにより、センシングシステムにおいて被着体9の異常を検出するために必要な、センシングコア部143を伝搬する光量を、より多く確保することができる。その結果、反射光L2の光量も多くすることができるので、センシングシステムにおけるS/N比(信号対雑音比)を高めることができる。
【0057】
分岐部161における入射光L1の分岐比は、センシングコア部143側に分配される強度と出射コア部142側に分配される強度との比で表されるが、一例として、センシングコア部143側の分岐比が60/100以上であるのが好ましく、70/100以上であるのがより好ましい。
【0058】
図5は、図1に示すセンサー用光導波路1の部分拡大図である。
上記のような分岐特性を実現するためには、一例として、図5に示すセンシングコア部143の延長線ELと入射コア部141とのなす角度θ1、および、延長線ELと出射コア部142とのなす角度θ2を、それぞれ好ましくは0°以上30°以下、より好ましくは0°超15°以下に設定すればよい。なお、角度θ1および角度θ2のいずれか一方が0°超であれば、他方を0°以上とすることができる。
【0059】
また、角度θ1および角度θ2は、互いに同じであっても異なっていてもよい。なお、特に限定されるものではないが、一例として、角度θ1/角度θ2の比は、0.5~1.5程度であるのが好ましく、0.8~1.2程度であるのがより好ましい。これにより、分岐部161における入射光L1および反射光L2双方の分岐損失が抑えられる。
【0060】
終端1430は、前述したように、入射光L1に対して終端処理を行い得る構造であれば、いかなる構造を有していてもよい。一例として、終端1430の構造としては、コア部14の伝送損失を大きくして損失分を外部に放射する構造、入射光L1を外方に反射または散乱させる構造、入射光L1をコア層13の端面から外部に放射する構造等が挙げられる。
【0061】
図6および図7は、それぞれ、図1に示す終端1430の具体的な構造を模式的に示す図である。なお、図6(a)~(c)および図7(d)~(f)のうち、図6(a)~(c)および図7(d)は平面図であり、図7(e)、(f)は断面図である。
【0062】
図6(a)~(c)は、いずれも、入射光L1の伝送損失を大きくする構造を有する終端1430の例である。
【0063】
図6(a)に示す終端1430aは、コア部14がコア層13の端面まで到達せず、途中で途切れているとともに、平面視したときに蛇行した形状を有している。このような形状には、コア部14の延伸方向が急に変化する曲がり部1431が1つまたは複数形成されている。このような曲がり部1431では、一部の入射光L1がコア部14の外部に向かって放射光L3として放射される。これにより、曲がり部1431では、コア部14の単位長さ当たりの伝送損失が、センシングコア部143におけるコア部14の単位長さ当たりの伝送損失よりも大きくなる。その結果、終端1430aでは終端処理が実現される。
【0064】
図6(b)に示す終端1430bは、平面視したときの蛇行した形状が、終端1430aとは異なる例である。終端1430bでは、コア部14の延伸方向が鋭角状に変化する屈曲部1432が1つまたは複数形成されている。このような屈曲部1432では、一部の入射光L1がコア部14の外部に向かって放射光L3として放射される。これにより、終端1430bでは、終端1430aと同様、コア部14の伝送損失が大きくなり、終端処理が実現される。
【0065】
図6(c)に示す終端1430cは、コア部14がコア層13の端面まで到達せず、途中で途切れているとともに、平面視したときにUターンした形状を有している。つまり、終端1430cは、Uターン部1433を有している。このようなUターン部1433においても、終端1430a、1430bと同様、コア部14の伝送損失が大きくなり、終端処理が実現される。
【0066】
以上のような終端1430a、1430b、1430cは、曲がり部1431、屈曲部1432およびUターン部1433のような終端コア部を含んでいる。これらの終端コア部は、センシングコア部143よりも単位長さ当たりの伝搬損失が大きい。このため、面積が小さくても良好な終端処理を行うことができる。また、コア部14の形状を特定の形状にするだけで、終端処理が可能になる。これにより、終端1430a、1430b、1430cの構造の簡素化を図りつつ、終端処理を行うことができ、かつ、センサー用光導波路1の小型化も図られる。
【0067】
図7(d)~(f)は、いずれも、入射光L1を外方に反射または散乱させる構造を有する終端1430の例である。
【0068】
図7(d)に示す終端1430dは、平面視したときに、コア部14の軸線ALに対して斜めに交わる傾斜面1434を有している。このような傾斜面1434に入射光L1が入射すると、傾斜面1434で反射し、コア部14の外方へと導かれる。これにより、戻り光の発生を抑制し、終端処理が実現される。なお、傾斜面1434とコア部14の軸線ALとのなす角度αは、特に限定されないが、10°以上80°以下であるのが好ましく、30°以上60°以下であるのがより好ましい。
【0069】
図7(e)に示す終端1430eは、断面において、コア部14の軸線ALに対して斜めに交わる傾斜面1435を有している。このような傾斜面1435に入射光L1が入射すると、傾斜面1435で反射し、コア部14の外方へと導かれる。これにより、戻り光の発生を抑制し、終端処理が実現される。なお、傾斜面1435とコア部14の軸線ALとのなす角度βは、特に限定されないが、10°以上80°以下であるのが好ましく、30°以上60°以下であるのがより好ましい。
【0070】
図7(f)に示す終端1430fは、コア部14と外部空間との界面がランダムな形状になっている散乱面1436を有している。このような散乱面1436に入射光L1が入射すると、様々な方向に散乱される。これにより、戻り光の発生を抑制し、終端処理が実現される。
【0071】
以上のような終端1430d、1430e、1430fは、傾斜面1434、1435および散乱面1436のような、センシングコア部143を構成する材料(コア部14)と外部空間との界面を含んでいる。これらの界面は、反射面または散乱面として機能し、戻り光の発生を抑制するため、面積が小さくても良好な終端処理を行うことができる。また、傾斜面1434、1435または散乱面1436を設けるだけで、終端処理が可能になる。これにより、終端1430d、1430e、1430fの構造の簡素化を図りつつ、終端処理を行うことができ、かつ、センサー用光導波路1の小型化も図られる。
【0072】
なお、終端1430は、上記の他に、入射光L1を吸収する吸収部材を設けた構造を有していてもよい。
【0073】
また、センシングコア部143の平面視形状は、前述したように、直線であっても、曲線であってもよい。また、途中で分岐していてもよい。つまり、入射コア部141および出射コア部142が分岐部161でセンシングコア部143に合流した後、このセンシングコア部143自体が、再び複数に分岐していてもよい。これにより、より広い範囲にセンシングコア部143を配置することができる。
【0074】
本実施形態に係るセンサー用光導波路1は、前述したように、入射コア部141、出射コア部142、センシングコア部143、および分岐部161を有しているが、図1に示すセンシングコア部143の長さL143は、入射コア部141の長さL141および出射コア部142の長さL142の双方より長くなっている。これらの長さL141、L142、L143とは、Y軸方向と平行な成分の長さのことをいう。
【0075】
このようにセンシングコア部143の長さL143を長くすることにより、被着体9にセンサー用光導波路1を貼り付けるとき、センシングコア部143を広範囲にわたって配置することができる。その結果、被着体9のより広範囲において、被着体9の変形を検出可能なセンシングシステム100を実現することができる。
【0076】
そして、センサー用光導波路1では、このような広範囲に適用可能なセンシングシステム100を実現可能であるにもかかわらず、センシングシステム100の部品点数の少数化に寄与する。センサー用光導波路1では、入射コア部141、出射コア部142、センシングコア部143および分岐部161が、1つの構造物中に設けられているため、センシングシステム100の構築にあたって、これらの接続作業が不要である。このため、センサー用光導波路1は、センシングシステム100の製造を容易にし、低コスト化を図ることができる。
【0077】
また、部品点数を少数化することによって、接続に必要な追加部品も不要になる。このため、センサー用光導波路1の小型化が図られ、センシングシステム100の小型化を図ることができる。
【0078】
センシングコア部143の長さL143は、特に限定されないが、長さL141および長さL142の双方の5倍以上であるのが好ましく、10倍以上であるのがより好ましい。長さL143は、具体的には、被着体9に応じて適宜設定されるが、一例として10cm以上とされ、必要に応じて1m以上1000m以下としてもよい。これにより、センシングコア部143が十分に長くなるので、被着体9の広範囲にセンシングエリアを広げることができ、かつ、発光素子102や受光素子104とセンシングエリアとの距離を十分にとることができる。
【0079】
また、入射コア部141の長さL141と出射コア部142の長さL142との差は、特に限定されないが、20cm以下であるのが好ましく、10cm以下であるのがより好ましい。これにより、入射端1410と出射端1420との距離を十分に短くすることができるので、発光素子102と受光素子104を1つの基板上にまとめて配置することができる。これにより、センシングシステムの小型化を容易に図ることができる。
【0080】
センシングコア部143の幅W143は、特に限定されないが、5~200μm程度であるのが好ましく、10~150μm程度であるのがより好ましい。
【0081】
また、図1に示すセンサー用光導波路1では、前述したように、Y軸(第1軸)に沿ってセンシングコア部143が延在している。図1に示すセンサー用光導波路1では、分岐部161を境にして、コア部14をY軸(第1軸)の一端側と他端側とに分けたとき、入射コア部141および出射コア部142の双方はY軸の一端側(図1の-Y軸側)に位置し、センシングコア部143はY軸の他端側(図1の+Y軸側)に位置している。
【0082】
このような配置をとることで、発光素子102や受光素子104等の外部要素と光学的に接続する必要がある部位、具体的には、入射端1410と出射端1420とを、互いに近接させて配置することができる。また、センシングコア部143については、これらの外部要素と接続される部位から十分に距離をとることができる。
【0083】
その結果、被着体9においてセンシングコア部143を貼り付ける箇所の自由度が高くなる。つまり、発光素子102や受光素子104等の受発光素子を厳しい環境から保護しなければならない場合、その影響を受けてセンシングコア部143を貼り付ける箇所に制約が生じるが、センシングコア部143の長さL143が十分に長ければ、センシングコア部143と入射端1410や出射端1420との距離を、十分に長くすることができる。これにより、センシングコア部143については制約を受けることなく厳しい環境下に置くことができる。このため、本実施形態に係るセンサー用光導波路1を用いることにより、使い勝手の良いセンシングシステム100を実現することができる。
【0084】
また、分岐部161では、反射光L2を入射コア部141にも入射させる機能があってもよいが、反射光L2、すなわち、センシングコア部143から分岐部161に伝搬してくる光について、入射コア部141の分岐比に比べて出射コア部142の分岐比が大きいことが好ましい。
【0085】
これにより、出射端1420から出射して受光素子104に受光される光量を、より多く確保することができる。その結果、センシングシステム100におけるS/N比を高めることができる。これにより、例えば、被着体9の変形が微小であって、それに伴うセンサー用光導波路1の破断面8も微小である場合でも、破断面8を検出し得るセンシングシステム100を実現することができる。また、上記構成によれば、受光素子104の最小受光感度制限が低い場合でも、その制限を上回る光量を確保することができるので、受光素子104の低コスト化、ひいては、センシングシステム100の低コスト化を図ることができる。
【0086】
上記のような分岐特性を実現するためには、分岐部161における出射コア部142の径を、入射コア部141の径より大きくすればよい。
【0087】
図8は、図5に示すセンサー用光導波路1の変形例である。
図8に示す変形例では、出射コア部142の幅W142を、入射コア部141の幅W141より大きくしている。これにより、反射光L2について、入射コア部141の分岐比に比べて出射コア部142の分岐比を大きくするという構成を、簡単な構造で実現することができる。
【0088】
分岐部161における反射光L2の分岐比は、出射コア部142側に分配される強度と入射コア部141側に分配される強度の比で表されるが、一例として、出射コア部142側の分岐比が60/100以上であるのが好ましく、70/100以上であるのがより好ましい。
【0089】
上記のような分岐特性を実現するためには、一例として、出射コア部142の幅W142と入射コア部141の幅W141との比を、好ましくは60:40以上99:1以下にすればよく、より好ましくは70:30以上95:5以下にすればよい。
【0090】
入射コア部141の幅W141および出射コア部142の幅W142は、それぞれ、特に限定されないが、5~200μm程度であるのが好ましく、10~150μm程度であるのがより好ましい。
【0091】
また、センサー用光導波路1では、入射コア部141、出射コア部142、センシングコア部143および分岐部161が、互いに分離していてもよいが、本実施形態では、互いに一体になっている。つまり、センサー用光導波路1は、それぞれコア層13中に形成されることで互いに一体になった、入射コア部141、出射コア部142、センシングコア部143および分岐部161を有するシート体10を備えている。すなわち、このシート体10は、図4に示す第1カバー層18、クラッド層11、コア層13、クラッド層12および第2カバー層19の積層体である。
【0092】
このような構成によれば、センサー用光導波路1を1つの構造体として取り扱うことができるので、光学部品同士の接続作業等が不要になり、取り扱い性が高くなるとともに、センサー用光導波路1のさらなる小型化を図ることができる。また、センサー用光導波路1もシート状になるので、被着体9への貼り付け作業が容易になり、貼り付け後にも剥がれにくいセンサー用光導波路1が得られる。
【0093】
また、図2に示すセンサー用光導波路1は、シート体10と、シート体10の一方の面に設けられている前述の接着層2と、を有している。これにより、前述したように、センサー用光導波路1を被着体9に貼り付ける作業を効率よく行うことができる。
【0094】
2.2.第2実施形態
次に、第2実施形態に係るセンサー用光導波路について説明する。
【0095】
図9は、第2実施形態に係るセンサー用光導波路1Aを示す平面図である。
以下、第2実施形態について説明するが、以下の説明では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、図9において、第1実施形態と同様の構成については、先に説明したのと同じ符号を付している。
【0096】
図9に示すセンサー用光導波路1Aは、入射コア部141から分岐した反射光減衰部1411を備えていること以外、図3に示すセンサー用光導波路1と同様である。
【0097】
図9に示す反射光減衰部1411は、入射コア部141から分岐し、センサー用光導波路1Aの端面まで至ることなく、途中で途切れている。なお、反射光減衰部1411は、センサー用光導波路1Aの端面まで延在していてもよい。
【0098】
入射光L1が破断面8で反射し、反射光L2が生じると、反射光L2は、分岐部161から出射コア部142を経て、受光素子104に入射する。一方、分岐部161の分岐比によっては、一部の反射光L2が入射コア部141にも入射、発光素子102に到達する。このような反射光L2は、発光素子102における入射光L1の射出を不安定にするといった不具合をもたらすことがある。
【0099】
そこで、図9では、入射コア部141から分岐する反射光減衰部1411が設けられている。反射光減衰部1411は、入射光L1の分岐比を小さく抑え、かつ、反射光L2の分岐比が大きくなるように、入射コア部141から分岐している。これにより、反射光減衰部1411が入射光L1の伝搬に影響を及ぼしにくくなり、かつ、反射光L2を反射光減衰部1411に導きやすくなる。その結果、発光素子102まで到達する反射光L2の光量を少なく抑えることができる。
【0100】
反射光減衰部1411に入射した反射光L2は、側面クラッド部15内に放射され、減衰する。なお、必要に応じて、反射光減衰部1411には、反射光L2をより減衰させる構造が設けられていてもよい。
【0101】
入射コア部141に設けられる反射光減衰部1411の数は、1つであっても、複数であってもよい。
【0102】
以上のように、本実施形態に係るセンサー用光導波路1Aは、入射コア部141に設けられ、分岐部161から入射端1410に向かう反射光L2の光量を減少させる反射光減衰部1411を有する。
【0103】
このような構成によれば、発光素子102に入射する反射光L2の光量を少なく抑え、発光素子102の発光安定性をより十分に担保することができる。これにより、センシングシステム100の信頼性を高めることができる。
以上のような第2実施形態においても、前記実施形態と同様の効果が得られる。
【0104】
2.3.第3実施形態
次に、第3実施形態に係るセンサー用光導波路について説明する。
【0105】
図10は、第3実施形態に係るセンサー用光導波路1Bを示す平面図(a)、前記平面図のB2-B3断面図(b)、および前記平面図のB1-B3断面図(c)である。
【0106】
以下、第3実施形態について説明するが、以下の説明では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、図10において、第1実施形態と同様の構成については、先に説明したのと同じ符号を付している。
【0107】
図10に示すセンサー用光導波路1Bは、出射コア部142と光学的に接続されたミラー172を備えていること以外、センサー用光導波路1と同様である。ミラー172は、シート体10の下面に開口する凹部の内面に設けられており、出射コア部142を伝搬する、図3に示す反射光L2の伝搬方向を変換する。図10では、一例として、上方に向けて変換する。これにより、出射端1420は、シート体10の上面に位置することなる。このため、シート体10の上面に受光素子104を設けることにより、反射光L2を受光素子104に受光させることができる。
【0108】
このような実装構造では、受光素子104の実装方法として表面実装方式を適用することができる。このため、センサー用光導波路1Bを用いることにより、受光素子104の素子タイプの選択自由度を高められる。
【0109】
以上のような第3実施形態においても、前記実施形態と同様の効果が得られる。
【0110】
なお、図10では、受光素子104の実装方法に表面実装方式を適用しているが、受光素子104に代えて、発光素子102の実装方法に表面実装方式を適用するようにしてもよい。
【0111】
2.4.第4実施形態
次に、第4実施形態に係るセンサー用光導波路について説明する。
【0112】
図11は、第4実施形態に係るセンサー用光導波路1Cを示す平面図(a)、前記平面図のC2-C3断面図(b)、および前記平面図のC1-C3断面図(c)である。
【0113】
以下、第4実施形態について説明するが、以下の説明では、第3実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、図11において、第3実施形態と同様の構成については、先に説明したのと同じ符号を付している。
【0114】
図11に示すセンサー用光導波路1Cは、入射コア部141と光学的に接続されたミラー171を備えていること以外、センサー用光導波路1Bと同様である。つまり、図11に示すセンサー用光導波路1Cは、入射端1410および出射端1420の双方が、シート体10の上面に位置し、発光素子102および受光素子104の双方の実装方法として表面実装方式が適用される。
【0115】
ミラー171は、シート体10の下面に開口する凹部の内面に設けられており、入射コア部141に入射する、図1に示す入射光L1の伝搬方向を変換する。図11では、一例として、入射端1410をシート体10の上面に設け、下方に向けて入射した入射光L1の伝搬方向を、右方に向けて変換する。このため、シート体10の上面に発光素子102を設けることにより、入射光L1を入射コア部141に入射させることができる。
【0116】
このような実装構造では、受光素子104だけでなく、発光素子102の実装方法としても表面実装方式を適用することができる。このため、センサー用光導波路1Cを用いることにより、発光素子102および受光素子104の素子タイプの選択自由度を高められる。
以上のような第4実施形態においても、前記実施形態と同様の効果が得られる。
【0117】
2.5.第5実施形態
次に、第5実施形態に係るセンサー用光導波路について説明する。
【0118】
図12は、第5実施形態に係るセンサー用光導波路1Dを示す平面図(a)、前記平面図のD2-D3断面図(b)、および前記平面図のD1-D3断面図(c)である。
【0119】
以下、第5実施形態について説明するが、以下の説明では、第3、第4実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、図12において、第3、第4実施形態と同様の構成については、先に説明したのと同じ符号を付している。
【0120】
図12に示すセンサー用光導波路1Dは、図11に示すコア部14と同様のコア部14を2つ備えている。そして、各コア部14では、入射コア部141の長さが出射コア部142より長くなっている。このため、各コア部14では、Y軸方向における入射端1410の位置と、出射端1420の位置と、をずらすことができる。その結果、図12では、入射コア部141をまたぐようにして、2つの受光部を備えるアレイタイプの受光素子104を配置することが可能になる。また、同様に、2つの発光部を備えるアレイタイプの発光素子102を配置することが可能になる。このため、センサー用光導波路1Dが複数のチャンネルを備えている場合でも、発光素子102や受光素子104の実装作業の効率を高めることができる。
以上のような第5実施形態においても、前記実施形態と同様の効果が得られる。
【0121】
なお、図12では、受光素子104が発光素子102よりも+Y軸側に配置されているが、これと逆の配置になっていてもよい。
【0122】
2.6.第6実施形態
次に、第6実施形態に係るセンサー用光導波路について説明する。
【0123】
図13は、第6実施形態に係るセンサー用光導波路1Eを示す平面図である。
以下、第6実施形態について説明するが、以下の説明では、第3実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、図13において、第3実施形態と同様の構成については、先に説明したのと同じ符号を付している。
【0124】
図13に示すセンサー用光導波路1Eは、図10に示すコア部14と同様のコア部14を2つ備えている。そして、2つの入射コア部141同士が、分岐部162により、1つの入射コア部144に接続されている。そして、入射コア部144の端面が入射端1410になっている。
【0125】
このような構成によれば、入射端1410から入射した入射光L1が、分岐部162で2つに分配され、2つの入射コア部141に入射する。このため、1つの発光素子102で、2つのセンシングコア部143に入射光L1を入射することができる。これにより、チャンネル数よりも発光素子102の数、またはアレイタイプの発光素子102の場合には発光部の数を減らすことができる。その結果、センシングシステム100のチャンネル数を増やしつつ、組立工数の削減を図るとともに、低コスト化を図ることができる。
以上のような第6実施形態においても、前記実施形態と同様の効果が得られる。
【0126】
2.7.第7実施形態
次に、第7実施形態に係るセンサー用光導波路について説明する。
【0127】
図14は、第7実施形態に係るセンサー用光導波路1Fを示す平面図である。
以下、第7実施形態について説明するが、以下の説明では、第6実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、図14において、第6実施形態と同様の構成については、先に説明したのと同じ符号を付している。
【0128】
前述した図13に示すセンサー用光導波路1Eでは、2つの入射コア部141同士が、分岐部162により、1つの入射コア部144に接続されている。これに対し、図14に示すセンサー用光導波路1Fでは、2つの出射コア部142同士が、分岐部163により、1つの出射コア部145に接続されている。そして、出射コア部145の端面が出射端1420になっている。この点以外、センサー用光導波路1Fは、センサー用光導波路1Eは同様である。
【0129】
このような構成によれば、センサー用光導波路1Fの一部が破断し、破断面8が生じたとき、入射光L1が反射し、各コア部14で反射光L2が発生する。反射光L2は、分岐部163で合流し、出射端1420から出射して受光素子104に受光される。図1に示す制御部106では、受光信号を解析し、破断の有無等を検出する。これにより、1つの受光素子104で、2つのセンシングコア部143からの反射光L2を受光することができる。その結果、チャンネル数よりも受光素子104の数、またはアレイタイプの受光素子104の場合には受光部の数を減らすことができる。これにより、センシングシステム100のチャンネル数を増やしつつ、組立工数の削減を図るとともに、低コスト化を図ることができる。
【0130】
なお、本実施形態では、2つの発光素子102と1つの受光素子104が用いられるが、2つのセンシングコア部143のいずれに破断面8が生じたかを特定するためには、制御部106において、時分割での解析を行うようにすればよい。
【0131】
具体的には、第1期間では、2つの発光素子102のうちの一方のみから入射光L1を射出させる。このとき、他方の発光素子102では発光動作を停止させる。そして、仮に、第1期間で反射光L2が生じた場合には、受光素子104で受光する。これにより、第1期間に受光素子104から制御部106が受信した受光信号は、2つのセンシングコア部143のうちの一方で発生した反射光L2に由来する信号であることがわかる。
【0132】
また、第1期間とは異なる第2期間では、2つの発光素子102のうちの他方のみから入射光L1を射出させる。このとき、一方の発光素子102では発光動作を停止させる。これにより、第2期間で受光素子104から制御部106が受信した受光信号は、2つのセンシングコア部143のうちの他方で発生した反射光L2に由来する信号であることがわかる。
【0133】
このような時分割での制御により、2つのセンシングコア部143のいずれに破断面8が生じたかを特定することができる。
以上のような第7実施形態においても、前記実施形態と同様の効果が得られる。
【0134】
以上、本発明のセンサー用光導波路を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0135】
例えば、センサー用光導波路は、接着層を覆う保護層をさらに有していてもよい。この保護層は、センサー用光導波路を被着体に接着する作業の直前に接着層から剥がされることにより、清浄な接着面を容易に準備することを可能にする。これにより、異物の巻き込みを抑えることができ、より密着性の高い接着を行うことができる。その結果、被着体に発生する異常をより感度よく検出可能なセンサー用光導波路を実現することができる。
【符号の説明】
【0136】
1 センサー用光導波路
1A センサー用光導波路
1B センサー用光導波路
1C センサー用光導波路
1D センサー用光導波路
1E センサー用光導波路
1F センサー用光導波路
2 接着層
8 破断面
9 被着体
10 シート体
11 クラッド層
12 クラッド層
13 コア層
14 コア部
15 側面クラッド部
18 第1カバー層
19 第2カバー層
91 亀裂
100 センシングシステム
101 接着面
102 発光素子
104 受光素子
106 制御部
141 入射コア部
142 出射コア部
143 センシングコア部
144 入射コア部
145 出射コア部
161 分岐部
162 分岐部
163 分岐部
171 ミラー
172 ミラー
1410 入射端
1411 反射光減衰部
1420 出射端
1430 終端
1430a 終端
1430b 終端
1430c 終端
1430d 終端
1430e 終端
1430f 終端
1431 曲がり部
1432 屈曲部
1433 Uターン部
1434 傾斜面
1435 傾斜面
1436 散乱面
AL 軸線
EL 延長線
L1 入射光
L2 反射光
L3 放射光
L141 長さ
L142 長さ
L143 長さ
W141 幅
W142 幅
α 角度
β 角度
θ1 角度
θ2 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図12
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図14